(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】車体フレーム構造
(51)【国際特許分類】
B62D 21/02 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
B62D21/02 A
B62D21/02 Z
(21)【出願番号】P 2020059784
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】片桐 希
(72)【発明者】
【氏名】川尻 将司
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-085921(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102011109033(DE,A1)
【文献】特開平10-338160(JP,A)
【文献】特開2006-188103(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0007096(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/00-25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に沿って起立するサイドメンバ縦板部の上端縁部及び下端縁部からサイドメンバ上板部及びサイドメンバ下板部が車幅方向内側へ延びるU状断面を有し、車幅方向両側で車両前後方向に延びる左右のサイドメンバと、
前記サイドメンバ縦板部に車幅方向内側から対向する補強縦板部の上端縁部及び下端縁部から補強上板部及び補強下板部が車幅方向外側へ延びるU状断面を有し、前記サイドメンバ上板部に前記補強上板部の車幅方向外側領域が下方から重なって固定され、前記サイドメンバ下板部に前記補強下板部が上方又は下方から重なって固定され、前記サイドメンバとの間に閉断面を形成する左右の連結補強部材と、
前記左右のサイドメンバの間で車幅方向に延び、車幅方向の両端に平板状の
左右のクロスメンバ端板部を有し、前記サイドメンバ上板部よりも車幅方向内側に配置される前記補強上板部の車幅方向内側領域に前記クロスメンバ端板部が上方から重なって固定され、前記左右のサイドメンバを前記左右の連結補強部材を介して連結するクロスメンバと、を備え
、
前記クロスメンバは、前記左右のクロスメンバ端板部と、前記左右のクロスメンバ端板部の車幅方向内側端部から車幅方向内側へ向かって斜め下方へ曲折して延びる左右のクロスメンバ傾斜板部と、前記左右のクロスメンバ傾斜板部の車幅方向内側端部から車幅方向内側へ延び、前記左右のクロスメンバ傾斜板部を接続するクロスメンバ底板部と、を有し、前記サイドメンバ下板部及び前記補強下板部よりも上方で車幅方向に延びて、前記左右のサイドメンバの間に配置される被支持部材を吊支下げ支持し、
前記クロスメンバ底板部及び前記左右のクロスメンバ傾斜板部の車両前後方向の中央部には、上方へ膨出するように逆U状に曲折するクロスメンバ膨出部が形成され、
前記クロスメンバ膨出部の上面は、前記クロスメンバ端板部の上面よりも上方へ突出しない
ことを特徴とする車体フレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車体フレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トランスミッションを上方から支持するクロスメンバが開示されている。クロスメンバは、車幅方向に延びるクロスメンバ本体を備え、クロスメンバ本体の両端部は、左右のサイドメンバの上板部に載置され固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構造では、サイドメンバ上板部にクロスメンバ本体の両端部を載置して固定するので、サイドメンバの上面とクロスメンバの上面との間に段差が生じる。係る段差はサイドメンバの上方に部品や部材等を配置する際に妨げとなり易いため、サイドメンバの上方を部品等の配置スペースとして有効に活用できない可能性がある。
【0005】
そこで本開示は、クロスメンバの支持剛性を確保しつつ、サイドメンバの上方を部品等の配置スペースとして有効に活用することが可能な車体フレーム構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本開示の一つの態様の車体フレーム構造は、車幅方向両側で車両前後方向に延びる左右のサイドメンバと、左右の連結補強部材と、左右のサイドメンバの間で車幅方向に延びるクロスメンバとを備える。
【0007】
左右のサイドメンバの各々は、車両前後方向に沿って起立するサイドメンバ縦板部の上端縁部及び下端縁部からサイドメンバ上板部及びサイドメンバ下板部が車幅方向内側へ延びるU状断面を有する。左右の連結補強部材の各々は、サイドメンバ縦板部に車幅方向内側から対向する補強縦板部の上端縁部及び下端縁部から補強上板部及び補強下板部が車幅方向外側へ延びるU状断面を有する。補強上板部の車幅方向外側領域は、サイドメンバ上板部に下方から重なって固定され、補強下板部は、サイドメンバ下板部に上方又は下方から重なって固定され、左右の連結補強部材は、左右のサイドメンバとの間に閉断面を形成する。クロスメンバは、車幅方向の両端に平板状の左右のクロスメンバ端板部を有する。クロスメンバ端板部は、サイドメンバ上板部よりも車幅方向内側に配置される補強上板部の車幅方向内側領域に上方から重なって固定され、クロスメンバは、左右のサイドメンバを左右の連結補強部材を介して連結する。クロスメンバは、上記左右のクロスメンバ端板部と、左右のクロスメンバ端板部の車幅方向内側端部から車幅方向内側へ向かって斜め下方へ曲折して延びる左右のクロスメンバ傾斜板部と、左右のクロスメンバ傾斜板部の車幅方向内側端部から車幅方向内側へ延び、左右のクロスメンバ傾斜板部を接続するクロスメンバ底板部と、を有し、サイドメンバ下板部及び補強下板部よりも上方で車幅方向に延びて、左右のサイドメンバの間に配置される被支持部材を吊支下げ支持する。クロスメンバ底板部及び左右のクロスメンバ傾斜板部の車両前後方向の中央部には、上方へ膨出するように逆U状に曲折するクロスメンバ膨出部が形成され、クロスメンバ膨出部の上面は、クロスメンバ端板部の上面よりも上方へ突出しない。
【0008】
上記構成では、連結補強部材の補強上板部の車幅方向外側領域を、サイドメンバ上板部に下方から重ねて固定し、クロスメンバのクロスメンバ端板部を、サイドメンバ上板部よりも車幅方向内側に配置される補強上板部の車幅方向内側領域に上方から重ねて固定する。サイドメンバ上板部は、補強上板部の車幅方向外側領域に上方から重なり、クロスメンバ端板部は、サイドメンバ上板部と重ならない補強上板部の車幅方向内側領域に上方から重なるので、サイドメンバ(サイドメンバ上板部)の上面とクロスメンバ(クロスメンバ端板部)の上面との段差を小さく抑えることができる。従って、サイドメンバの上方を部品等の配置スペースとして有効に活用することができる。
【0009】
クロスメンバ端板部が固定される補強上板部の下方で連結補強部材がサイドメンバとの間で閉断面を形成するので、クロスメンバを連結補強部材及びサイドメンバによって強固に支持することができる。
【0010】
クロスメンバの左右のクロスメンバ端板部を左右の連結補強部材(サイドメンバ側)にそれぞれ載置して固定するので、クロスメンバによって被支持部材(例えばトランスミッション)を吊下げ支持した状態(上方から支持した状態)でクロスメンバをサイドメンバ側に組付けて固定することができる。このため、クロスメンバを左右のサイドメンバ側に固定した後、クロスメンバによって吊下げ支持されるように被支持部材を組付ける場合に比べて、組付作業性が向上する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、クロスメンバの支持剛性を確保しつつ、サイドメンバの上方を部品等の配置スペースとして有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係るクロスメンバを左右のサイドメンバに組付ける前の車体フレームを示す斜視図である。
【
図2】
図1の車体フレームの要部拡大斜視図である。
【
図3】クロスメンバを組付けた後の車体フレームを車両前方から視た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0014】
図1に示すように、本開示に係る車両1の車体フレーム3は、ラダーフレームであり、車幅方向両側で車両前後方向に延びる左右1対のサイドメンバ4と、左右のサイドメンバ4の間で車幅方向に延びて左右のサイドメンバ4を連結する複数のクロスメンバ5,6とによって構成される。複数のクロスメンバ5,6には、トランスミッション(被支持部材)2を吊下げて支持するクロスメンバ6が含まれる。
【0015】
図2及び
図3に示すように、左右のサイドメンバ4の各々は、車幅方向内側へ開口するU状断面であり、車両前後方向に沿って起立するサイドメンバ縦板部7と、サイドメンバ縦板部7の上端縁部及び下端縁部から曲折して車幅方向内側へ相対向して延びるサイドメンバ上板部8及びサイドメンバ下板部9とを有する。左右のサイドメンバ4のうちクロスメンバ6が取付けられる部分には、左右の連結補強部材(クロージングプレート)10がそれぞれ固定される。
【0016】
左右の連結補強部材10の各々は、車幅方向外側へ開口するU状断面であり、サイドメンバ縦板部7に車幅方向内側から対向する補強縦板部11と、補強縦板部11の上端縁部及び下端縁部から曲折して車幅方向外側へ相対向して延びる補強上板部12及び補強下板部13とを有する。補強縦板部11は、補強上板部12の車幅方向内端縁部から略鉛直下方へ曲折して延びる上側領域11Aと、上側領域11Aの下端縁から車幅方向外側に向かって斜め下方へ曲折して延びる下側領域11Bとを有する。
【0017】
補強上板部12の車幅方向外側領域12Aは、サイドメンバ上板部8に下方から重なって固定され、補強上板部12の車幅方向内側領域12Bは、サイドメンバ上板部8の車幅方向内端縁よりも車幅方向内側へ突出する。補強下板部13の略全域は、サイドメンバ下板部9に上方から重なって固定され、連結補強部材10は、サイドメンバ4との間に閉断面14を形成する。補強上板部12及び補強下板部13は、車両前後方向に並ぶ複数(
図3には左右それぞれ1つのみ図示)のボルト15によって、サイドメンバ上板部8及びサイドメンバ下板部9にそれぞれ締結固定される。なお、
図2ではボルト15、ナット、及びボルト15が挿通するボルト挿通孔の図示を省略している。サイドメンバ4に連結補強部材10を固定する形態はボルト15による締結に限定されず、他の形態(リベットによる締結や溶接等)であってもよい。また、補強下板部13を、サイドメンバ下板部9に下方から重ねて固定してもよい。
【0018】
クロスメンバ6は、車幅方向の両端で上下方向と交叉する平板状の左右のクロスメンバ端板部21と、クロスメンバ端板部21の車幅方向内側端部から車幅方向内側へ向かって斜め下方へ曲折して延びる左右のクロスメンバ傾斜板部22と、クロスメンバ傾斜板部22の車幅方向内側端部から車幅方向内側へ延び、左右のクロスメンバ傾斜板部22を接続するクロスメンバ底板部23とを有する。クロスメンバ底板部23及び左右のクロスメンバ傾斜板部22の車両前後方向の中央部には、上方へ膨出するように逆U状に曲折するクロスメンバ膨出部24が形成される。クロスメンバ端板部21は、サイドメンバ上板部8よりも車幅方向内側に配置される補強上板部12の車幅方向内側領域12Bに上方から重なって固定され、クロスメンバ6は、左右の連結補強部材10を介して左右のサイドメンバ4を連結する。補強上板部12の車幅方向内側領域12Bは、サイドメンバ上板部8と重ならない領域であり、クロスメンバ6は、左右の連結補強部材10を介して左右のサイドメンバ4を連結する。クロスメンバ端板部21と補強上板部12とは、車両前後方向に並ぶ複数(
図2の例では4つ)のボルト16によって締結固定される。クロスメンバ端板部21の板厚は、サイドメンバ上板部8の板厚と略同じ又はそれ以下であり、クロスメンバ膨出部24の上面24aは、クロスメンバ端板部21の上面21aよりも上方へ突出しない。なお、クロスメンバ端板部21と補強上板部12とを固定する形態はボルト16による締結に限定されず、他の形態(リベットによる締結や溶接等)であってもよい。
【0019】
トランスミッション2には、車幅方向に互いに離間する左右のブラケット17が取付けられる。左右のブラケット17の上端部は、クロスメンバ底板部23に下方から重なり、ボルトの締結等によってクロスメンバ底板部23に固定され、トランスミッション2は、ブラケット17を介してクロスメンバ6に吊下げ支持される。
【0020】
本実施形態によれば、連結補強部材10の補強上板部12の車幅方向外側領域12Aを、サイドメンバ上板部8に下方から重ねて固定し、クロスメンバ6のクロスメンバ端板部21を、サイドメンバ上板部8よりも車幅方向内側に配置される補強上板部12の車幅方向内側領域12Bに上方から重ねて固定する。サイドメンバ上板部8は、補強上板部12の車幅方向外側領域12Aに上方から重なり、クロスメンバ端板部21は、サイドメンバ上板部8と重ならない補強上板部12の車幅方向内側領域12Bに上方から重なるので、サイドメンバ4の上面(サイドメンバ上板部8の上面8a)とクロスメンバ6の上面(クロスメンバ端板部21の上面21a)との段差を小さく抑えることができる。特に本実施形態では、クロスメンバ端板部21の板厚は、サイドメンバ上板部8の板厚と略同じ又はそれ以下であるため、クロスメンバ端板部21の上面21aの高さは、サイドメンバ上板部8の上面8aの高さ以下となる。従って、サイドメンバ4の上方を部品等の配置スペースとして有効に活用することができる。
【0021】
クロスメンバ端板部21が固定される補強上板部12の下方で連結補強部材10がサイドメンバ4との間で閉断面14を形成するので、クロスメンバ6を連結補強部材10及びサイドメンバ4によって強固に支持することができる。
【0022】
クロスメンバ6の左右のクロスメンバ端板部21を左右の連結補強部材10(サイドメンバ4側)にそれぞれ載置して固定するので、クロスメンバ6によってトランスミッション2を吊下げ支持した状態でクロスメンバ6をサイドメンバ4側に組付けて固定することができる。このため、クロスメンバ6を左右のサイドメンバ4側に固定した後、クロスメンバ6によって吊下げ支持されるようにトランスミッション2を組付ける場合に比べて、組付作業性が向上する。
【0023】
また、クロスメンバ底板部23及び左右のクロスメンバ傾斜板部22の車両前後方向の中央部に、上方へ膨出するように逆U状に曲折するクロスメンバ膨出部24を形成し、クロスメンバ膨出部24の上面24aは、クロスメンバ端板部21の上面21aよりも上方へ突出しないので、クロスメンバ膨出部24によってクロスメンバ6の剛性を確保するとともに、クロスメンバ6の上方を部品等の配置スペースとして有効に活用することができる。
【0024】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0025】
例えば、上記実施形態では、トランスミッション2を上方から支持するクロスメンバ6について説明したが、クロスメンバ6によって他の被支持部材を上方から支持してもよい。また、クロスメンバ6及び連結補強部材10の形状は、上記実施形態に限定されず、他の形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、左右のサイドメンバをクロスメンバが連結する車体フレームを備えた車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1:車両
2:トランスミッション(被支持部材)
3:車体フレーム
4:サイドメンバ
5,6:クロスメンバ
7:サイドメンバ縦板部
8:サイドメンバ上板部
8a:サイドメンバ上板部の上面
9:サイドメンバ下板部
10:連結補強部材
11:補強縦板部
11A:補強縦板部の上側領域
11B:補強縦板部の下側領域
12:補強上板部
12A:補強上板部の車幅方向外側領域
12B:補強上板部の車幅方向内側領域
13:補強下板部
14:閉断面
15,16:ボルト
17:ブラケット
21:クロスメンバ端板部
21a:クロスメンバ端板部の上面
22:クロスメンバ傾斜板部
23:クロスメンバ底板部
24:クロスメンバ膨出部
24a:クロスメンバ膨出部の上面