(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】固定胴型製茶機の熱風発生器
(51)【国際特許分類】
A23F 3/06 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
A23F3/06 K
(21)【出願番号】P 2018200244
(22)【出願日】2018-10-24
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000145116
【氏名又は名称】株式会社寺田製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】394023780
【氏名又は名称】株式会社相良製作所
(72)【発明者】
【氏名】相良 正典
(72)【発明者】
【氏名】山内 英樹
(72)【発明者】
【氏名】一ノ宮 正光
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-058983(JP,U)
【文献】特開2012-034590(JP,A)
【文献】実開昭61-120386(JP,U)
【文献】実開昭53-155600(JP,U)
【文献】実開昭63-150297(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第105202904(CN,A)
【文献】実開昭53-104797(JP,U)
【文献】特開2001-292699(JP,A)
【文献】特開平08-061665(JP,A)
【文献】実開昭52-051399(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/06
F24H 3/00- 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定胴型製茶機において、送風ファンによる空気の送風経路にガスを燃料とするバーナを設けて、該バーナで直接加熱した熱風を前記送風ファンで送風して、前記固定胴型製茶機の
後方から乾燥室内へ供給することを特徴とする固定胴型製茶機の熱風発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荒茶を製造する固定胴型製茶機の熱風発生器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製茶ラインは、おおまかに、蒸機、粗揉機、揉捻機、中揉機、精揉機、乾燥機などの製茶機によって構成されている。蒸機により蒸熱された茶葉は、良質な荒茶ができるよう、粗揉機以降の製茶機により適正な速度で乾燥される。そのために、製茶中には、様々な熱風供給の制御が行なわれている(例えば、特許文献1)。通常、加熱乾燥手段としては、粗揉機および中揉機、乾燥機では熱風乾燥、精揉機では伝熱乾燥が行われている。きわめて水分の高い茶生葉(約400%D.B.)からほぼ絶乾状態の茶(約5%D.B.)まで乾燥させるため、使用する熱エネルギーは非常に大きい。
【0003】
一般的に朝から夕方に茶生葉の摘採を行ない、製茶工場ではそれに合わせて茶生葉の受入を行ない、昼過ぎから翌日の朝にかけて製茶を行なう。製茶の準備のため、昼頃に製茶機の電源を入れると、翌日の朝に終了するまで製茶機の電源を切らず、入れっぱなしになる。つまり、茶葉が投入される前に、製茶機を温めて、準備を完了していなければならず、早めに電源を入れておく。
【0004】
茶葉が投入されている製茶機は、製茶に最適な熱風の温度と風量が制御され、茶葉が排出されたあとの空の製茶機は、次の茶葉の投入に備えて投入時の設定値になるように熱風の温度と風量が制御されている。各製茶機の時間はスムーズに製茶が行なわれるように設定してあり、茶葉の水分を基に制御している場合は、茶葉の水分等の状態により設定時間より早く排出されることがある。また、製茶ラインは茶葉が滞留すると困るため、少し余裕を持って配置してある。よって、常時、全ての製茶機に茶葉が入って製茶しているとは限らず、次の茶葉が投入されるのを待機している空の製茶機が存在する。この時も、製茶機は熱風の温度と風量を投入時の設定値になるように制御し、バーナを燃焼しており、常に大きな熱エネルギーが使用されていた。
【0005】
そのため、省エネルギー化を図ろうと、近年、特許文献2のような製茶機が発明されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭60-75235号公報
【文献】特開2012-34590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の固定胴型製茶機の熱風発生器は熱交換をするタイプのものであり、空気をあたためるためには時間がかかった。そのため、茶葉を投入するよりも前にバーナを起動させなければならず、また、バーナを停止した後も熱風発生器内が熱く、送風ファンを停止させることはできない等の、問題をかかえていた。
【0008】
本発明は、このような問題を解決し、一層、燃料や電気の使用を削減することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1手段は、固定胴型製茶機において、送風ファンによる空気の送風経路にガスを燃料とするバーナを設けて、該バーナで直接加熱した熱風を前記送風ファンで送風して、前記固定胴型製茶機の後方から乾燥室内へ供給することを特徴とする固定胴型製茶機の熱風発生器。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1手段により、熱交換することなく熱風を供給するので、燃料の消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は製茶ラインの一例を示した説明図である。
【
図2】
図2は固定胴型製茶機の一例を示した斜視図である。
【
図3】
図3は固定胴型製茶機の一例を示した後方斜視図である。
【
図4】
図4は固定胴型製茶機の一例を示した側面図である。
【
図5】
図5は固定胴型製茶機の一例を示した上面図である。
【
図6】
図6は制御方法の一例を示した説明図である。
【
図7】
図7は熱風温度の変化を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
製茶ラインの一例について
図1を参照して説明をする。製茶ラインは、粗揉機1、粗揉機2、揉捻機3、中揉機4、中揉機5、搬送機6等によって構成されている(この前には蒸機等があり、この後も精揉機、乾燥機等続くが、本実施例では記載しない)。この中の粗揉機1、2が固定胴型製茶機である。これらの製茶機1~5にはそれぞれに制御手段(粗揉機制御装置1A、2A、揉捻機制御装置3A、中揉機制御装置4A、5A)を備えており、それぞれ運転状況を制御している。搬送機6は搬送機制御装置6Aを備え、複数台の搬送機6を全体的に制御している。粗揉機1の前には計量器7を設置し、この計量器7の計量値は計量器制御装置7Aで設定する。これらの制御装置1A~7Aはネットワークで接続されており、ライン制御装置8Aは制御装置1A~7Aの運転状況を全体的に制御する。
図1はあくまでも製茶ラインの一例であり、製茶機の種類、各製茶機の台数、配置などは、この限りではない。
【0013】
図2~5は粗揉機1である。粗揉機1は主に半円筒形の固定胴の乾燥室11であり、加熱乾燥手段である熱風発生器16を設ける。本実施例では熱風発生器16を2セット備えているが、熱風発生器16の数はこの限りではない。乾燥室11内には回転する主軸12に装着した揉手13、葉浚い手14を備え、熱風発生器16にはバーナ17と送風ファン18を備えている。乾燥室11内では、熱風発生器16による熱風をダクト20により送風し、茶葉を乾燥する。ダクト20内に整流板(図示しない)を設けることにより、乾燥室11へ供給する熱風を調整することができる。熱風発生器16では、送風ファン18によって送られた空気を、燃料にガスを用いたバーナ17により加熱し、この加熱された空気を送風ファン18により送風し、ダクト20を通って乾燥室11内へ供給している。従来、製茶機の燃料には重油を用いることが多かったが、重油の臭いが茶葉へ付着するのを防ぐため、ガスの方が良好である。送風ファン18にはインバータ(図示しない)が接続されており、風量を無段階に調節できる。乾燥室11内には温度測定手段(図示しない)を設け、熱風発生器16により送風される熱風の温度を測っている。熱風の温度が設定した温度になるように、バーナ17を比例制御する。比例制御でなくてもよいが、比例制御をすることにより熱風の温度が安定する。
【0014】
茶葉は、搬送機6によって乾燥室11の上方の投入口21より投入され、製茶が完了すると、下部の取出扉22が開いて、搬送機6上に排出される。粗揉機制御装置1Aは、粗揉機1の主軸12の駆動、バーナ17および送風ファン18、温度センサや、茶葉の水分を計測するための水分計(図示しない)の制御等を行なう。
【0015】
本発明の制御に関する基本的な流れについて、
図6を参照して説明する。粗揉機制御盤1Aの電源を入れ、粗揉機1を起動して、バーナ17と送風ファン18の電源を入れると、バーナ17と送風ファン18の待機が始まり、バーナ17は停止、送風ファン18は最低風量となって、茶葉が粗揉機1へ投入された信号を待つ。最低風量は、本実施例では送風ファンの能力の20%とするが、15%でも25%でも30%でもよく、バーナ17の周囲が室温程度になれば停止してもよく、その場合最低風量は0%となる。茶葉が粗揉機1へ投入された信号が来ると、バーナ17を燃焼させ、送風ファン18の送風を設定値にし、供給する熱風を設定値になるように制御する。設定した熱風温度より計測した熱風温度が高くなればバーナ17の燃焼を弱くし、設定した熱風温度より計測した熱風温度が低くなればバーナ17の燃焼を強くする。製茶中は、設定値になるように、熱風の温度と風量を制御する。設定した温度と風量の熱風により、茶葉は製茶がおこなわれる。あらかじめ設定した時間または水分になると、茶葉は粗揉機1から取り出される。この茶葉が取り出されたときの信号または粗揉機1の中が空であることを検知すると、バーナ17が停止し、送風ファン18は最低風量とする。この送風ファン18を最低風量にするタイミングは、バーナ17を停止させると同時、またはバーナ17を停止させてから一定時間経過後のどちらでもよい。次に再び茶葉が粗揉機1へ投入された信号が来るまで、この待機状態を保つ。再び茶葉が粗揉機1へ投入されると、バーナ17が燃焼し、送風ファンを設定風量にして、1~2分の短い時間で熱風温度を設定値(茶期や茶葉の性状によって異なるが、80~100℃程度)にする。なお、乾燥室11内が空になるとほぼ同時に茶葉が投入され、乾燥室11内が空にならない場合は、製茶のための制御が再びおこなわれる。茶葉の投入、取出の信号は、粗揉機1に備えられた茶葉検知手段による信号、搬送制御盤6Aによる信号、ライン制御盤8Aによる信号のいずれでもよい。
【0016】
本実施例における省エネルギー率は約20%と高い。本実施例の装置は、省スペースともなり、製茶工場内で作業スペースや通路を確保することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 粗揉機
1A 粗揉機制御装置
2 粗揉機
2A 粗揉機制御装置
3 揉捻機
3A 揉捻機制御装置
4 中揉機
4A 中揉機制御装置
5 中揉機
5A 中揉機制御装置
6 搬送機
6A 搬送機制御装置
6B 通信線
7 計量器
7A 計量器制御装置
8A ライン制御装置
8B 通信線
11 乾燥室
12 主軸
13 揉手
14 葉浚い手
16 熱風発生器
17 バーナ
18 送風ファン
20 ダクト
21 投入口
22 取出口