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特許7320208ベンチレーテッド型ブレーキディスク用ディスクのブレーキングバンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】ベンチレーテッド型ブレーキディスク用ディスクのブレーキングバンド
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/12 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
F16D65/12 B
F16D65/12 U
F16D65/12 T
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020543373
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 IB2019051113
(87)【国際公開番号】W WO2019175682
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】102018000002652
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】501016696
【氏名又は名称】ブレンボ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】BREMBO S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ファブリツィオ・パッジ
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0067018(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00 - 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンチレーテッド型ディスクブレーキ(2)用ディスクのブレーキングバンド(1)であって、
前記ブレーキングバンド(1)は、前記ブレーキングバンド(1)の回転軸(X-X)の近くの内径(D1)と軸方向を定義する前記回転軸(X-X)から離れた外径(D2)との間に延在しており、
前記ブレーキングバンド(1)は、前記軸方向(X-X)にほぼ垂直な径方向(R-R)と、前記軸方向(X-X)と前記径方向(R-R)の両方に垂直な周方向(C-C)とを定義しており、
前記ブレーキングバンド(1)は、互いに対向する2つのプレート(3,4)を有し、
前記プレート(3,4)は、直接又は間接に対向して隙間(7)の範囲を定める内面(5,6)を有し、
前記プレート(3,4)は外面(8,9)を有し、
前記外面(8,9)は、ブレーキング面(10,11)を形成する対向する平坦な周方向部分を有し、
前記プレート(3,4)は、前記軸方向(X-X)又は前記プレート(14,15)の厚さ方向の延長部を備えたプレート本体(12,13)を有し、
前記プレート(3,4)は、放熱要素又は連結要素(16,17,18,19)によって互いに結合されており、
前記連結要素(16,17,18,19)は、前記プレート(3,4)を連結する橋の形をして一方のプレートから他方のプレートに向かって突出する柱及び/又はリブの形をしており、
前記プレート(3,4)の少なくとも一方は少なくとも一つの突起(20,21,22)を有し、
前記突起は、前記プレート(3,4)から前記隙間(7)に突出するが、反対側のプレート(4,3)には到達せず、
これにより、前記隙間(7)は少なくとも部分的に狭くなる一方で前記プレート本体(12,13)が厚くなり、前記プレート(14,15)の厚みが部分的に大きくなっており、
前記少なくとも一つの突起(20,21,22)は、少なくとも第1連結要素(16,17,18,19)から隣接する連結要素(16,17,18,19)に延在して、前記連結要素(16,17,18,19)を連結しており、
前記少なくとも一つの突起(20,21,22)は、少なくとも前記周方向に延在して、少なくとも周方向(C-C)に並列に配置された少なくとも2つの隣接する前記連結要素(16,17,18,19)を連結しており、
各突起(20,21,22)のグループは、不連続な環状経路に沿って周方向に延在して、前記周方向への不均一な分布が解消されており、
各突起(20,21,22)のグループは、閉じられた環状経路ではなく、不連続な円形扇部に沿って周方向に延在している、ブレーキングバンド。
【請求項2】
前記連結要素(16,17,18,19)は、周方向に配置された少なくとも2つの列又はライン(23,24,25)にグループ化されており、
前記複数のラインのうちの第1ライン(23)は、径方向に又は前記内径(D1)に近くで前記軸(X-X)に向かって内側に配置されており、
前記複数のラインのうちの第2ライン(24)は、前記外径(D2)の近くで前記軸(X-X)から径方向に離れて最も外側に配置されており、
前記複数のラインのうちの少なくとも一つの第3ライン(25)は、前記内側の第1内側ライン(23)と前記第2ライン(24)の間で径方向に配置されており、及び/又は
前記連結要素(16,17,18,19)の少なくとも2つは柱(26)で、前記柱は前記隙間(7)に沿った空気の流れにほぼ平行な面上で円形断面を有し、及び/又は
前記連結要素(16,17,18,19)の少なくとも2つはタブ(27)又はリブで、前記タブ又は前記リブは前記隙間(7)に沿った前記空気の流れにほぼ平行な面上で径方向(R-R)方向に細長い形状を有し、
前記連結要素(16,17,18,19)の少なくとも2つは、前記隙間(7)に沿った前記空気の流れにほぼ平行な面上で、4つの側部(29)によって連結された4つの頂点(28)を有するひし形又はダイヤモンド形状を有し、前記断面の範囲を定める前記側部(29)はほぼ直線形状であり、及び/又は
前記少なくとも一つの突起(20,21,22)は、同じライン(23,24,25)の前記連結要素(16,17,18,19)を連結する少なくとも複数の突起を有し、及び/又は
前記少なくとも一つの突起(20,21,22)は、円形扇部において同じライン(23,24,25)の前記連結要素(16,17,18,19)を連結する少なくとも複数の突起を有し、及び/又は
前記少なくとも一つの突起(20,21,22)は、周方向に隣接しない複数の円形扇部において同じライン(23,24,25)の前記連結要素(16,17,18,19)を連結する少なくとも複数の突起を有し、及び/又は
前記少なくとも一つの突起(20,21,22)は、円形扇部においてすべてのライン(23,24,25)の前記連結要素(16,17,18,19)を連結し、及び/又は
前記少なくとも一つの突起(20,21,22)は、周方向に隣接しない複数の円形扇部のすべてのライン(23,24,25)の前記連結要素(16,17,18,19)を連結する、請求項1のブレーキングバンド。
【請求項3】
前記少なくとも一つの突起(20,21,22)は前記プレート(3,4)の一方のみから前記隙間(7)に突出し、及び/または
前記少なくとも一つの突起(20,21,22)は少なくとも2つの突起(20,21,22)であり、前記少なくとも2つの突起(20,21,22)は前記プレート(3,4)の両方から前記隙間(7)に突出し、及び/または
前記少なくとも一つの突起(20,21,22)は少なくとも2つの突起(20,21,22)であり、前記少なくとも2つの突起(20,21,22)は前記プレート(3,4)の両方から前記隙間(7)に突出して互いに対向し、及び/または
前記少なくとも一つの突起(20,21,22)は少なくとも2つの突起(20,21,22)であり、前記少なくとも2つの突起(20,21,22)は前記プレート(3,4)の両方から前記隙間(7)に突出して少なくとも部分的に互いにオフセットしている、請求項1または2のいずれかのブレーキングバンド。
【請求項4】
前記少なくとも一つの突起(20,21,22)は、少なくとも一つの円形扇部(30)の連結要素(16,17,18,19)を2つずつ連結する少なくとも複数の突起(20,21,22)である、及び/又は
前記少なくとも一つの突起(20,21,22)は、隣接しない円形扇部(30)の連結要素(16,17,18,19)を2つずつ連結する少なくとも複数の突起(20,21,22)である、及び/又は
前記少なくとも一つの突起(20,21,22)は、複数の円形扇部(30)の連結要素(16,17,18,19)を2つずつ連結する少なくとも複数の突起(20,21,22)である、請求項1から3のいずれかのブレーキングバンド。
【請求項5】
前記複数の突起(20,21,22)の前記グループは、環状の不連続な経路、ブレーキングバンド(1)の周囲の円弧に沿って延在する、又は、前記ブレーキングバンド(1)に沿った周囲の複数の円弧に対して周方向(C-C)に延在し、前記円弧は互いに隣接しないように配置されており、及び/又は
前記複数の突起(20,21,22)の前記グループは、前記ブレーキングバンド(1)の周囲の10分の1に亘って周方向(C-C)に延在するか、又は、互いに隣接しないように配置された、前記ブレーキングバンドの周囲の複数の10分の1の広がり部分に延在する、及び/又は
前記複数の突起(20,21,22)の前記グループは、前記ブレーキングバンド(1)の周囲の8分の1に亘って周方向(C-C)に延在するか、又は、互いに隣接しないように配置された、前記ブレーキングバンドの周囲の複数の8分の1の広がり部分に延在する、及び/又は
前記複数の突起(20,21,22)の前記グループは、前記ブレーキングバンド(1)の周囲の6分の1に亘って周方向(C-C)に延在するか、又は、互いに隣接しないように配置された、前記ブレーキングバンドの周囲の複数の6分の1の広がり部分に延在する、及び/又は
前記複数の突起(20,21,22)の前記グループは、前記ブレーキングバンド(1)の周囲の4分の1に亘って周方向(C-C)に延在するか、又は、互いに隣接しないように配置された、前記ブレーキングバンドの周囲の複数の4分の1の広がり部分に延在する、請求項2又は4のブレーキングバンド。
【請求項6】
互いに接近した前記突起(20,21,22)の前記グループは、偶数個の隣接しない広がり部分に対して周方向(C-C)に延在する、及び/又は
互いに接近した前記突起(20,21,22)の前記グループは、奇数個の隣接しない広がり部分に対して周方向(C-C)に延在する、請求項1から5のいずれかのブレーキングバンド。
【請求項7】
前記少なくとも一つの突起(20,21,22)は一つの突起で、前記一つの突起は円形扇部(30)において前記内径(D1)の近くから前記外径(D2)まで延在する、及び/又は
前記少なくとも一つの突起(20,21,22)は少なくとも複数の周方向に隣接しない複数の突起であってそれぞれが円形扇部(30)において前記内径(D1)の近くから前記外径(D2)まで延在する単一の突起である、請求項1から6のいずれかのブレーキングバンド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の前記ブレーキングバンドを有するディスクブレーキ(2)のディスク。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の前記ブレーキングバンドを有する乗物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキングバンドに関する。
【0002】
本発明はまた、限定的ではないが、特に自動車の分野に適用されるディスクブレーキ用ベンチレーテッドディスクに関する。
【背景技術】
【0003】
ディスクブレーキのブレーキキャリパは、概ね、ブレーキディスクの外周縁を跨いで配置されており、軸方向(X-X)を定義する回転軸(A-A)を中心に回転するように構成されている。
【0004】
また、ディスクブレーキには、径方向(R-R)が定義されている。この径方向は、実質的に上述の軸方向(X-X)及び接線方向(C-C)又は周方向(C-C)に垂直で、これらは上述の軸方向(X-X)方向及び上述の径方向(R-R)の両方に垂直である。
【0005】
知られているように、ディスクブレーキのディスクは、ディスクを自動車のハブに関連付けるように構成されたベルを有し、そこから、ブレーキパッドと呼ばれ、キャリアのパッドと協働する環状部が伸びている。ベンチレーテッド型のディスクの場合、ブレーキングバンドは、対向する2つのプレートによって作られている。これらのプレートは、例えば柱状又はフィン状の連結要素によって互いに連結されている。二つのプレートの外面は対向するブレーキ面を形成している。一方、内面は、柱又はフィンと共に、ディスクを冷却するための通気用チャンネルを区画している。したがって、ディスクの回転中、チャンネルには遠心力によって空気が流れる。
【0006】
上述のブレーキングパッドは、ディスクブレーキキャリパと協働し、二つの対向面であるブレーキング面に、パッドによって摩擦力が作用することによって、自動車のブレーキ動作が行われるように構成されている。
【0007】
ブレーキ動作中、ブレーキキャリパパッドとブレーキングバンドのブレーキ面との間の摩擦は大量の熱を発生し、その熱は廃棄されなければならない、ことが知られている。
【0008】
確かに、発生した熱は、いくつかの好ましくない現象を生じる。例えば、ブレーキパッドの変形、ブレーキング面のクラックの発生、又はブレーキングバンドを形成している材料の状態の局部的な変形で、それらはブレーキングパッドの劣化を招く。
【0009】
特に、高いブレーキ効率を有する高性能自動車に適用した場合、大量のエネルギが廃棄され、そのためにブレーキング動作中に発生する熱を廃棄しなければならない。
【0010】
上述のベンチレーテッド型ディスクは、特に、軸方向に対向する二つのプレートによって形成される隙間を形成しているいわゆるベンチレーション(通気)チャンネルの数や形状に関して、これまで継続的に改良がなされている。
【0011】
公知のベンチレーテッド型ディスクのうち、いわゆる「ピラーディスク」は、熱放出特性(すなわち、冷却性)の点で特に効率の良いことが示されている。そのようなディスクでは、通気チャンネルは、エレメントを連結する特定の柱(これは、2つのプレートを横方向に連結する「柱」である。)によって内部が制限され、軸方向の伸びに対して径方向と周方向の伸びが制限される。
【0012】
例えば、「柱式」のベンチレーテッド型ディスクは、EP1373751B1で知られている。この文献のディスクでは、構造上、3つの同心円に沿って柱が配置されている。3つの同心円は、ディスクと同軸で、異なる径を有し、3つの「ライン」を形成している。仮に、2つのプレートに平行でそれに対して中間に位置する断面で、柱は異なる横断面(例えば、中間と外側のライン上では「ひし形」断面の柱、内側のライン上では「涙滴形」の柱)を有する。
【0013】
「柱」構造を有するその他のベンチレーテッド型ディスクが、例えばWO2004/102028号、米国特許第5,542,503号で知られている。
【0014】
ベンチレーテッド型ディスクのうち、いわゆる「フィン型」又は「ウィング型」のディスクが知られている。このディスクでは、通気チャンネルの内部が、主方向に細長く、径方向に平行な方向に向けられた連結要素、又は2つのプレートを横方向に連結する螺旋式連結要素によって、内部が制限されている。
【0015】
ディスクのブレーキング表面に対するパッドによるブレーキング動作によって熱の発生することが知られている。そして、特に負荷が大きい場合、ディスクの温度が上昇してディスクが白熱する。そのため、ブレーキング中にディスクが高温になって、ディスクが変形し、パッドとブレーキ面の接触力が低下する。また、パッドの摩擦材料がガラス化し、ディスク材料によって汚染される。
【0016】
ブレーキング面の中央環状部(すなわち、それぞれのプレートの外面の中央環状部)が高温になることが確認されている。そのために、ディスク寿命中に部分に容易にクラックが発生する。
【0017】
上述の課題を解消するために、ブレーキングによって発生する熱の発散効率を高めて、ブレーキング中又はその後のディスクの温度を抑えることの必要性や、ブレーキングバンドの中央部分の機械的抵抗を高めることの必要性能が、が特に唱えられている。
【0018】
そのための解決策が、WO2004/102028号、WO2002/064992号、米国特許第7,066,306号、米国特許第7,267,210号、米国特許公開公報第2006/0243546号、米国特許公開公報第2004/0124047号、米国特許第6,367,599号、米国特許第5,542,503号、米国特許第4,865,167号で知られている。これらは種々の点で満足のいくものであるが、これらの公知の解決策はブレーキングパッドの中央環状領域における所望の機械抵抗性とブレーキング動作によって発生する局部的な高温を除去し得る空気流れを当該領域で最大化するという2つの相反する課題の折り合いをつけるものではない。
【0019】
しかし、上述の形態のベンチレーテッド型ディスクはそれ自体が上述の問題と同時に発生する別の問題に対する解決策を提供するものではないが、ディスクブレーキ(特に、ベンチレーテッド型ディスクのディスクブレーキ)に影響を与える以下の問題を解決するものである点は注目に値する。
【0020】
ブレーキ動作中、特にディスクとブレーキングバンドは、ディスク自体の振動特性に関連した周波数で機械的に振動することが知られている。このディスクの振動は、例えば、ディスクと機械的に連結された物の振動によって引き起こされる共振によって起こる。それらの物は、それらの振動数がディスクの振動周波数と同じ又は十分に近い場合、ブレーキング中にストレスを受ける。
【0021】
その共振周波数が可聴範囲にある場合、上述の振動は特に耳障りなきしみノイズのような可聴ノイズ(例えば、2KHzから9KHzの甲高いキーンという音)を生じる。
【0022】
したがって、ディスクの振動周波数を異なる値に移動させることによって、このような甲高いノイズを減少する又は無くすための解決策を講じる必要がある。
【0023】
上述の「柱」構造とは異なる構造のディスクに関して、いくつかの解決策が知られている。
【0024】
例えば、イタリア特許第1,273,754号にはブレーキングバンドが開示されている。このブレーキングバンドは、2つのプレートの間の隙間に向かって、プレートの内側部に突出する突起を備えている。特に、発生する振動とノイズを減少するために、位置と質量が具体的に特定されている。
【0025】
邪魔な振動現象を減少するように構成された構造を有するその他のベンチレーテッド型ディスクが、例えば米国特許第4,523,666号から知られている。
【0026】
クノールブレムゼ有限会社の米国特許第3,983,973号にはブレーキディスクが示されている。このブレーキディスクは、互いに離れて通気チャンネルを形成する一対の摩擦板を有する。ブレーキ力は、ブレーキパッドのブレーキングガスケットによって、プレートに加えられる。二つのプレートは、複数のガイドリブ又はフィンによって互いに連結されており、摩擦プレートの間に通気通路を形成している。耐振動材料のストリップが、摩擦プレートの両面に形成された径方向溝に配置されている。これらの挿入物は、金属要素であって、振動を減衰し、摩擦プレートを形成している鉄材料の伸び率よりも大きな伸び率を有する(例えば、鉛、青銅、銅)。
【0027】
同様の解決策が米国特許出願公開公報第2009/035598号から知られている。
【0028】
ブレーキング装置にスクウォク型受動ダンパを連結して振動を減少することが、米国特許出願公開公報第2012/111692号から知られている。
【0029】
米国特許第6,131,707号、WO2016/020820号、WO2017/153902号、WO2017/153872号、EP0318687号、WO2011/0586594号、WO2006/105131号、米国特許公開公報第2006/219500号、米国特許第6,145,636号、米国特許公開公報第2010/122880号、米国特許第6,325,185号、第4,523,666号、第5,004,078号から、ブレーキング動作によって引き起こされる振動を減少するために、周方向に不均一に分配されたブレーキングバンドプレートの間に連結部を設けることが知られている。
【0030】
しかし、ブレーキ動作のある条件では、プレートの連結要素の配置によって構造的な不均一性を招き、ブレーキングパッドに集中する、まったく好ましくないストレスが発生する。
【0031】
したがって、一体性と耐久性に悪影響を及ぼす、ブレーキングバンド内の集中応力を回避しながら、特別な冷却効率とブレーキングの際に振動やノイズを最小化する特性の両方を同時に提供するベンチレーテッド型ディスクの新規構造を提供する必要がある。
【0032】
上述の公知のベンチレーテッド型ディスクとそれに関連するブレーキングパッドは、上述した要求を十分に満足し得るものでない。
【0033】
そこで、本発明は上述の課題を解消して、新たなブレーキングパッド及びディスクブレーキ用ディスクを提供するもので、上述の要求を満足するとともに従来技術に関する上述の問題を解消する構造上及び機能上の特徴を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0034】
課題を解決するための手段
【0035】
本発明は、きしみ音が少ないブレーキングデバイスを提供することを目的とする。
【0036】
上述の目的と利点は請求項1に係るブレーキングバンド、請求項9に係るディスクブレーキのディスク、及びクレーム10に係る乗物によって達成される。
【0037】
特定の好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0038】
この解決手段を検討すれば、従来の解決策によりも、提案の解決手段がブレーキングの快適性を大幅に改善し、振動、特にきしみ音を生じる振動が減少する。
【0039】
また、提案の解決手段によれば、実施形態によっては、ディスクの冷却効率を極めて高く維持する又は大きく改善される。例えば、ブレーキングバンドの隙間を流れる空気の流れが、プレート中にあって連結要素の間に配置されて周方向に延びる突起の特定の形状によって大きく乱されることから、冷却効率が大きく改善される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図面の説明
【0041】
本装置、ディスクブレーキ、及びビークルの特徴と利点は、添付図面を参照して、非限定的な好ましい実施形態の以下の説明から明らかになる。
【0042】
図1図1は、本発明に係るディスクブレーキのディスクのクリーンアップの斜視図で、特に、中心軸と通る径方向の平面に沿った部分断面を示す。
【0043】
図2図2は、図1のディスクの平面図で、隙間を流れる流体の平均的な流れ面に沿った断面を示す。
【0044】
図3図3は、図1のディスクの外縁の、径方向からディスクの内側に向かった、詳細の斜視図を示す。
【0045】
図4図4は、図2の詳細な断面の斜視図を示す。
【0046】
図5図5は、径方向に沿った、図3の縁の側面図を示す。
【0047】
図6図6は、別の形態に係るディスクの平面図で、隙間を流れる流体の平均的な流れ面に沿った断面を示す。
【0048】
図7図7は、ディスクの径方向から内側に向かって見た、図6のディスクの外縁の詳細の斜視図を示す。
【0049】
図8図8は、図6の断面の詳細の斜視図を示す。
【0050】
図9図9は、図6のディスクの詳細の斜視図で、軸方向で且つ放射方向の平面に沿った部分断面図を示す。
【0051】
図10図10は、別の形態に係るディスクの平面図で、隙間の流れる流体の平均的な流れ面に沿った断面を示す。
【0052】
図11図11は、図10のディスクの外縁の詳細の斜視図で、ディスクの内側に向かった
【0053】
図12図12は、図10の断面の詳細の斜視図を示す。
【0054】
図13図13は、図10の断面の詳細の斜視図を示し、軸方向で且つ放射方向の平面に沿った部分断面図を示す。
【好ましい実施形態の説明】
【0055】
好ましい実施形態の説明
【0056】
一般的な実施形態によれば、ベンチレーテッド型ディスクブレーキ2のためのディスクのブレーキングバンド1が提供される。
【0057】
ブレーキングバンド1は、ブレーキングバンド1の回転軸X-Xに近い内径D1と、回転軸X-Xから離れた外径D2の間に延在している。回転軸は、軸方向X-Xを定義している。
【0058】
ブレーキングバンド1は、軸方向X-Xにほぼ垂直な径方向R-Rと、軸方向X-Xと径方向R-Rの両方に垂直な周方向C-Cを定義している。
【0059】
ブレーキングバンド1は、対向する2つのプレート3、4を有する。
【0060】
プレート3,4は、互いに直接的又は間接的に対向して隙間7を形成する内面5,6を有する。隙間7は、ブレーキングバンド1のための通気ダクトを形成する。
【0061】
プレート3,4は外面8,9を有する。
【0062】
外面8,9は、ブレーキング面10,11を形成する、対向する平坦な外周部を有する。言い換えると、外面8,9のある部分は、ブレーキキャリパに収容されたブレーキパッドと協働して、ブレーキングバンド1に対して挟まれたとき、ブレーキング動作を発揮する。パッドによって擦られる又はこれに係る外面8,9の一部は、ブレーキング面10,11を形成する。
【0063】
プレート3,4は、プレート本体12,13を有する。プレート本体12,13は、軸方向X-X又はプレート14,15の厚み方向に延びる部分を有する。言い換えると、軸方向から見たとき、各プレート3,4は、プレート3,4のプレート本体12の軸方向の厚みによって与えられるプレート14,15の厚みを有する。
【0064】
プレート3,4は、熱発散要素、すなわちプレート3,4の連結要素16,17,18,19によって互いに結合される。
【0065】
連結要素16,17,18,19は、コラム及び/又はリブの形をしており、プレート3,4を連結する橋の形をして、一方のプレートから他方のプレートに向かって突出している。
【0066】
プレート3,4の少なくとも一方は、少なくとも一つの突起20,21,22を有する。突起20,21,22は、プレート3,4から隙間7に突出しているが、反対側のプレート4,3には達していない。
【0067】
突起20,21,22は、隙間7を少なくとも局部的に狭くしている。言い換えると、突起20,21,22の部分で、軸方向X-Xに関して隙間7の断面が小さくなる。
【0068】
少なくとも突起21,22,23の部分でプレート本体12,13の厚みが大きくなり、これにより、プレート14,15の厚みが局部的に大きくなっている。言い換えると、軸方向X-Xにおけるプレート本体の厚みに関して、厚み14,15が突起20,21,22の箇所で大きくなっている。
【0069】
少なくとも一つの突起20,21,22は、第1の連結要素16,17,18,19から隣接する連結要素16,17,18,19に伸びており、連結要素16,17,18,19を互いに連結している。
【0070】
少なくとも一つの突起20,21,22は、少なくとも周方向C-Cに沿って延在し、周方向C-Cに隣接して配置された少なくとも2つの隣接連結要素16,17,18,19を連結している。
【0071】
各突起20,21,22のグループは、不連続な環状経路に沿って周方向に延在し、周方向に突起が均一に配置されるのを防いでいる。
【0072】
一つの実施形態によれば、各突起20,21,22のグルーブは、不連続な円形扇部に沿って周方向に延在し、環状経路がふさがれるのを防止している。
【0073】
一実施形態によれば、連結要素16,17,18,19は、周方向に配置された少なくとも2つの列又はライン23,24,25にグループ化される。
【0074】
前記ラインのうちの第1のライン23は、内径D1に近接して、径方向に向けて又は軸X-Xに向かって内側に配置されている。
【0075】
前記ラインのうちの第2のライン24は、外径D2に近接して、軸X-Xから離れて径方向の最外側に配置されている。
【0076】
前記ラインのうちの少なくとも第3のライン24は、第1の内側ライン23と第2の外側ライン24の間で、径方向に配置されている。
【0077】
一実施例によれば、連結要素16,17,18,19の少なくとも2つは、隙間7又はベンチレーションチャンネルに沿った空気の流れに実質的に平行な平面上で、円形断面を有する柱26である。
【0078】
一実施例によれば、連結要素16,17,18,19の少なくとも2つは、フィン27又はリブである。フィン又はリブは、隙間7又はベンチレーションチャンネルに沿った空気の流れに実質的に平行な平面上で、例えば径方向R-Rに細長い形の断面を有する。
【0079】
一実施例によれば、連結要素16,17,18,19の少なくとも2つは、隙間7又はベンチレーションチャンネルに沿った空気の流れに実質的に平行な平面上で、4つの側部29によって連結された4辺のひし形又はダイヤモンド形状の断面を有する。その断面を区画する側部は実質的に直線形状である。
【0080】
一実施例によれば、少なくとも一つの突起20,21,22は、プレート3,4の少なくとも一方から隙間7に突出している。
【0081】
一実施例によれば、少なくとも一つの突起20,21,22は少なくとも2つの突起20,21,22で、少なくとも2つの突起20,21,22は両プレート3,4から隙間7に突出する。
【0082】
一実施例によれば、少なくとも一つの突起20,21,22は少なくとも2つの突起20,21,22で、少なくとも2つの突起20,21,22が両プレート3,4から隙間7に突出して互いに対向する。
【0083】
一実施例によれば、少なくとも一つの突起20,21,22は少なくとも2つの突起20,21,22で、少なくとも2つの突起21,21,22は両プレート3,4から隙間7に突出して少なくとも部分的に互いにオフセットしている。言い換えると、第1のプレート3又は4の第1の突起20,21,22は、軸方向X-Xに関して対向するプレート4又は3に配置された第2の突起と、まったく対向していないか、又は一部だけが対向している。
【0084】
一実施例によれば、少なくとも一つの突起20,21,22は複数の突起20,21,22で、これら複数の突起は、少なくとも一つの円形扇部30の連結要素16,17,18,19を二つずつ連結する。
【0085】
一実施例によれば、少なくとも一つの突起20,21,22は複数の突起20,21,22で、これら複数の突起は隣接しない円形扇部30の連結要素16,17,18,19を二つずつ連結する。
【0086】
一実施例によれば、少なくとも一つの突起20,21,22は複数の突起20,21,22で、これら複数の突起は複数の隣接しない円形扇部30の連結要素を二つずつ連結する。
【0087】
一実施例によれば、複数の突起20,21,22のグループは、例えばブレーキングバンド1の周囲の円弧に沿った不連続な環状経路に沿って、周方向C-Cに延在する。
【0088】
一実施例によれば、複数の突起20,21,22のグループは、ブレーキングバンド1の周囲の複数の隣接しない円弧に対して周方向C-Cに延在する。
【0089】
一実施例によれば、突起20,21,22のグループは、ブレーキングバンド1の周囲の10分の1の部分で周方向に延在する。
【0090】
一実施例によれば、突起20,21,22のグループは、ブレーキングパッド1の周囲の10分の1のそれぞれの隣接しない広がり部分で周方向C-Cに延在する。
【0091】
一実施例によれば、突起20,21,22のグループは、ブレーキングバンド1の周の8分の1にわたって周方向に延在するか、ブレーキングバンド1の周の8分の1の隣接しない複数の広がり部分に延在する。
【0092】
一実施例によれば、突起20,21,22のグループは、ブレーキングバンド1の周の6分の1にわたって周方向に延在するか、ブレーキングバンド1の周の8分の1の隣接しない複数の広がり部分に延在する。
【0093】
一実施例によれば、突起20,21,22のグループは、ブレーキングバンド1の周の4分の1にわたって周方向に延在するか、ブレーキングバンド1の周の4分の1の隣接しない複数の広がり部分に延在する。
【0094】
一実施例によれば、突起20,21,22のグループは、偶数個の隣接しない広がり部分の周方向に延在する。
【0095】
一実施例によれば、突起20,21,22のグループは、奇数個の隣接しない広がり部分の周方向に延在する。
【0096】
一実施例によれば、突起20,21,22のうちの少なくとも一つの突起は、途切れることの無い単一の部分、または、円形扇部30に延在しかつバンド内径D1の近くからバンド外径D2の近くまで延在する単一の部分である。
【0097】
一実施例によれば、突起20,21,22のうちの少なくとも一つの突起は少なくとも複数の周方向に隣接しない突起であり、各突起は円形扇部30に延在しかつバンド内径D1の近くからバンド外径D2の近くまで延在する単一の部分である。
【0098】
一実施例によれば、少なくとも一つの突起20,21,22は、同じライン23,24,25の連結要素16,17,18,19を連結する、少なくとも複数の突起である。
【0099】
一実施例によれば、少なくとも一つの突起20,21,22は、概ね円形扇部に限って延在する同じライン23,24,25の連結要素16,17,18,19を連結する、少なくとも複数の突起である。
【0100】
一実施例によれば、少なくとも一つの突起20,21,22は、概ね周方向に隣接しない複数の扇部に限って延在する同じライン23,24,25の連結要素16,17,18,19を連結する、少なくとも複数の突起である。
【0101】
一実施例によれば、少なくとも一つの突起20,21,22は、円形扇部に限って延在するすべてのライン23,24,25のすべての連結要素16,17,18,19を連結する。
【0102】
一実施例によれば、少なくとも一つの突起20,21,22は、周方向に隣接しない複数の円形扇部に限って延在するすべてのライン23,24,25のすべての連結要素16,17,18,19を連結する。
【0103】
本発明はまた、上述した複数の実施例のいずれか一つに係る、ブレーキングバンド1を有するディスクブレーキ2のディスクに関する。
【0104】
本発明はまた、上述した複数の実施例のいずれか一つに係る、ブレーキングバンド1を有する乗物に関する。
【0105】
当業者は、上述した実施例に適用され又置換される多くの変更が可能である。また、当業者は、特許請求の範囲から逸脱することなく、必要に応じて機能的に等価な他の要素に置換することもできる。
【0106】
近接して配置されたグループの突起20,21,22は、周方向に配置された一群の突起20,21,22を形成し、突起グループの不均一は配置を形成し得る周方向に不均一性を有する周方向の分布や、共鳴した場合に邪魔なノイズやきしみ音を生じるブレーキングバンドの振動モードの存在を回避する分布を作る。
【符号の説明】
【0107】
1:ブレーキングバンド
2:ディスクブレーキのディスク
3:プレート
4:プレート
5:内面
6:内面
8:隙間
8:外面
9:外面
10:ブレーキング面
11:ブレーキング面
12:プレート本体
13:プレート本体
14:プレート厚
15:プレート厚
16:連結要素
17:連結要素
18:連結要素
19:連結要素
20:突起
21:突起
22:突起
23:ライン
24:ライン
25:ライン
26:柱
27:フィン又はリブ
28:4つの頂点を有するひし形又はダイヤモンド形状
29:ひし形側部
30:円形扇部
X-X:回転軸及び軸方向
R-R:径方向
C-C:接線方向
D1:内側バンド径
D2:外側バンド径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13