(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】抗微生物組成物およびそれを備えた中敷
(51)【国際特許分類】
A43B 17/00 20060101AFI20230727BHJP
A01N 35/02 20060101ALN20230727BHJP
A01P 3/00 20060101ALN20230727BHJP
A61L 2/18 20060101ALN20230727BHJP
A61L 9/01 20060101ALN20230727BHJP
A61L 101/32 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
A43B17/00 B
A01N35/02
A01P3/00
A61L2/18
A61L9/01 J
A61L9/01 M
A61L101:32
(21)【出願番号】P 2019025913
(22)【出願日】2019-02-15
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】399086263
【氏名又は名称】学校法人帝京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591025901
【氏名又は名称】株式会社村井
(73)【特許権者】
【識別番号】592057721
【氏名又は名称】東邦レマック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516148438
【氏名又は名称】株式会社もんじゅ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】安部 茂
(72)【発明者】
【氏名】石島 早苗
(72)【発明者】
【氏名】村井 ▲隆▼
(72)【発明者】
【氏名】大島 浩智
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 修
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0076314(US,A1)
【文献】特開2017-206466(JP,A)
【文献】特表2011-529358(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0286897(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 17/00
A01N 35/02
A01P 3/00
A61L 2/18
A61L 9/01
A61L 101/32
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中敷下層と、
前記中敷下層の上に積層された中敷上層と、
前記中敷下層および前記中敷上層の間に挟まれて配置され
た抗微生物組成物と
を備える中敷であって、
前記抗微生物組成物は、
a)レザーファイバー、コットンファイバー、またはそれらの組合せである繊維質と、主鎖に二重結合を有するゴムとを含む混合物である担体、および
b)前記担体に添加された抗微生物成分
を含み、前記抗微生物成分は非環式テルペンアルデヒドを含み、
前記中敷上層は、前記抗微生物組成物を覆う領域において通気性領域を有する、
中敷。
【請求項2】
前記担体は、前記繊維質を50~98重量%、前記ゴムを2~50重量%含む、請求項1に記載の中敷。
【請求項3】
前記非環式テルペンアルデヒドは、シトラール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、またはそれらの組合せを含む、請求項1または2に記載の中敷。
【請求項4】
前記抗微生物成分は、前記非環式テルペンアルデヒドとは異なるアルデヒドであって非環式脂肪族アルデヒド、テルペンアルデヒド、および芳香族アルデヒドから選択される第二のアルデヒドをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の中敷。
【請求項5】
(i)中敷下層と、前記中敷下層の上に積層された中敷上層とを備える中敷、および
(ii)気密性容器に封入され
た抗微生物組成物
を含む、抗微生物中敷キットであって、
前記抗微生物組成物は、
a)レザーファイバー、コットンファイバー、またはそれらの組合せである繊維質と、主鎖に二重結合を有するゴムとを含む混合物である担体、および
b)前記担体に添加された抗微生物成分
を含み、前記抗微生物成分は非環式テルペンアルデヒドを含み、
前記中敷下層と前記中敷上層の積層中には、前記中敷下層と前記中敷上層とが互いに接着されていない非接着領域が含まれ、前記非接着領域において前記中敷下層および前記中敷上層の間に前記抗微生物組成物を挟み込むことができるように構成されており、
前記中敷上層は、前記非接着領域を構成する部分において通気性領域を有する、
抗微生物中敷キット。
【請求項6】
前記担体は、前記繊維質を50~98重量%、前記ゴムを2~50重量%含む、請求項5に記載の抗微生物中敷キット。
【請求項7】
前記非環式テルペンアルデヒドは、シトラール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、またはそれらの組合せを含む、請求項5または6に記載の抗微生物中敷キット。
【請求項8】
前記抗微生物成分は、前記非環式テルペンアルデヒドとは異なるアルデヒドであって非環式脂肪族アルデヒド、テルペンアルデヒド、および芳香族アルデヒドから選択される第二のアルデヒドをさらに含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の抗微生物中敷キット。
【請求項9】
(i)レザーファイバー、コットンファイバー、またはそれらの組合せである繊維質と、主鎖に二重結合を有するゴムとを含む混合物である担体を備える中敷、および
(ii)前記担体に含浸させるための液状抗微生物成分を含有する気密性容器
を含む、抗微生物中敷キットであって、
前記液状抗微生物成分は非環式テルペンアルデヒドを含む、
抗微生物中敷キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗微生物組成物に関する。本発明はさらに、その抗微生物組成物を備えた、靴などの履物の内底面に敷設される中敷(インソール)に関する。
【背景技術】
【0002】
日本における足白癬および爪白癬の患者数は、高齢者を中心に全人口の一割以上に達すると推定されている。白癬菌が環境中に広がり、長期間生存し、感染源になっていることが、患者増加の一因となっていることが指摘されている。特に靴の内部はしばしば白癬菌で汚染されていることが環境調査研究で明らかにされつつある。白癬菌をはじめとする微生物による汚染は、悪臭のもとになるばかりでなく、足白癬患者の発生、治癒の遅延、再感染などの原因となり得る。
【0003】
本願の共同発明者らは、先に、テルペンアルデヒドを有効成分として含有し靴等への塗布に適した抗微生物活性組成物を発明した(特許文献1)。この抗微生物活性組成物は、揮発成分によって除菌作用を提供することができ、白癬菌、カンジダ、および枯草菌を含む多様な微生物に対して有効であり、白癬菌感染および悪臭を減じる効果を発揮できるものであった。
【0004】
特許文献1では、「本発明の抗微生物活性組成物の剤形は、本発明の目的に使用される形態であれば特に限定されるものではないが、例えば、揮発用製剤又は塗布用製剤とすることができ、具体的には、液体、スプレー、ゲル、ゲル生成用キット、ポリマー又は多孔質素材に含浸させた形態を挙げることができる。」と記載されているが、有効成分を含浸させる材料あるいは構造物についてそれ以上具体的な考察はなされていない。
【0005】
現在、抗菌インソールと銘打って市販されている商品も多数存在するが、これらは実際に靴内部を除菌する能力が充分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、抗微生物活性成分であるテルペンアルデヒドを、履物内部等において安全かつ持続的に利用するための手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特定の繊維質と特定のポリマーとを含む混合物に非環式テルペンアルデヒドを添加して組成物とすると著しく長期間に渡って抗微生物活性の放出が維持されるという発見に基づくものである。また、そのような組成物をインソールに組み込むと、靴内できわめて効果的に除菌を行えるという発見に基づくものである。
【0009】
本発明は少なくとも以下の実施形態を含む。
[1]
a)レザーファイバー、コットンファイバー、またはそれらの組合せである繊維質と、主鎖に二重結合を有するゴムとを含む混合物である担体、および
b)前記担体に添加された抗微生物成分
を含む抗微生物組成物であって、前記抗微生物成分は非環式テルペンアルデヒドを含む、抗微生物組成物。
[2]
前記担体は、前記繊維質を50~98重量%、前記ゴムを2~50重量%含む、[1]に記載の抗微生物組成物。
[3]
前記非環式テルペンアルデヒドは、シトラール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、またはそれらの組合せを含む、[1]または[2]に記載の抗微生物組成物。
[4]
前記抗微生物成分は、前記非環式テルペンアルデヒドとは異なるアルデヒドであって非環式脂肪族アルデヒド、テルペンアルデヒド、および芳香族アルデヒドから選択される第二のアルデヒドをさらに含む、[1]~[3]のいずれかに記載の抗微生物組成物。
[5]
中敷下層と、
前記中敷下層の上に積層された中敷上層と、
前記中敷下層および前記中敷上層の間に挟まれて配置された[1]~[4]のいずれかに記載の抗微生物組成物と
を備える中敷であって、
前記中敷上層は、前記抗微生物組成物を覆う領域において通気性領域を有する、
中敷。
[6]
(i)中敷下層と、前記中敷下層の上に積層された中敷上層とを備える中敷、および
(ii)気密性容器に封入された[1]~[4]のいずれかに記載の抗微生物組成物
を含む、抗微生物中敷キットであって、
前記中敷下層と前記中敷上層の積層中には、前記中敷下層と前記中敷上層とが互いに接着されていない非接着領域が含まれ、前記非接着領域において前記中敷下層および前記中敷上層の間に前記抗微生物組成物を挟み込むことができるように構成されており、
前記中敷上層は、前記非接着領域を構成する部分において通気性領域を有する、
抗微生物中敷キット。
[7]
(i)レザーファイバー、コットンファイバー、またはそれらの組合せである繊維質と、主鎖に二重結合を有するゴムとを含む混合物である担体を備える中敷、および
(ii)前記担体に含浸させるための液状抗微生物成分を含有する気密性容器
を含む、抗微生物中敷キットであって、
前記液状抗微生物成分は非環式テルペンアルデヒドを含む、
抗微生物中敷キット。
【発明の効果】
【0010】
有効成分であるテルペンアルデヒドは通常はすぐに揮発してしまい、抗微生物活性が比較的短時間で失われてしまう。しかし本発明の実施形態により、有効成分の徐放性が達成され、例えば1週間またはそれ以上の長期間に渡って抗微生物活性を維持することができ、長期間に渡って抗微生物効果が持続する中敷を提供することができる。
【0011】
また、テルペンアルデヒドは、合成することも可能であるが、元々はレモングラス等の天然素材に由来し、抗微生物性であるだけでなく良い香り(清涼香)も発する揮発性物質である。従って本発明の実施形態により、履物等の使用者にとって全く安全な態様で抗微生物活性および清涼香の徐放を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る中敷が内底面に敷設された靴を、ユーザーが着用した様子を横から見た(すなわち、左足を右から見た)図である。
【
図2】(A)は、本発明の一実施形態に係る中敷を上から見た図である。(B)は、
図2Aの中敷の中敷上層を中敷下層から部分的に分離させて折り返した様子を示す図である。(B)では、抗微生物組成物40が露出されている。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る中敷キットの概要を示す図である。
【
図4】
図4は、異なる担体材料からの抗微生物成分の徐放性を比較した実施例1の実験結果を示す図である。
【
図5】
図5は、異なる担体材料からの抗微生物成分の徐放性を比較した実施例2の実験結果を示す図である。
【
図6】
図6は、異なる担体材料からの抗微生物成分の徐放性を比較した実施例2のさらなる実験結果を示す図である。
【
図7】
図7は、異なる担体材料からの抗微生物成分の徐放性を比較した実施例2のさらなる実験結果を示す図である。
【
図8】
図8は、実施例3(a)および実施例4~5(b)において白癬菌含有濾紙片を貼り付けたインソール表面上の位置を示す図である。
【
図9】
図9は、実施例4においてインソールの位置1~4に貼り付けられていた白癬菌含有濾紙片からの白癬菌増殖を比較した結果を示す。
【
図10】
図10は、実施例5においてインソールの位置1~4に貼り付けられていた白癬菌含有濾紙片からの白癬菌増殖を比較した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一側面において、本開示は、a)レザーファイバー、コットンファイバー、またはそれらの組合せである繊維質と、主鎖に二重結合を有するゴムとを含む混合物である担体、および、b)上記担体に添加された抗微生物成分を含む、抗微生物組成物を提供する。レザーファイバーとは、当業者に知られるように、哺乳類動物の皮革、特に牛の皮革から得られる繊維質材料であり、典型的には牛の皮革を破砕することにより調製される。コットンファイバーとは、当業者に知られるように、植物であるワタの種子の周りから採取される繊維質材料である。コットンファイバーは未加工のものであってもよいし、紡績等の加工を経たものであってもよい。本実施形態における担体は、レザーファイバーを含むことがより好ましい。
【0014】
当業者に通常理解されるように、ゴムは繰り返し単位を有するポリマーである。本開示において、「主鎖に二重結合を有するゴム」とは、繰り返し単位の主鎖部分に二重結合を含むポリマーであるゴムを意味する。主鎖に二重結合を有するゴムの例としては、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、およびニトリル・ブタジエンゴム(NBR)が挙げられるがこれらに限定されない。本実施形態における担体には、主鎖に二重結合を有するゴムが2種類以上含まれていてもよい。
【0015】
本開示においてイソプレンゴムとは、ポリイソプレン(好ましくはシス型ポリイソプレン)を主成分とするゴムを意味し、その例としては天然ゴム(NR)および合成イソプレンゴム(IR)が挙げられる。本実施形態における、主鎖に二重結合を有するゴムは、天然ゴム、合成イソプレンゴム、またはそれらの組合せであることが好ましく、天然ゴムを含むかまたは天然ゴムからなることがより好ましい。
【0016】
本実施形態における担体は、主鎖に二重結合を有するゴムおよび上記繊維質を含む混合物であり、ゴムは繊維質同士を結着させるバインダーの役割も果たし得る。すなわち、担体は、繊維質の層とゴムの層とが別個に存在する層構造ではなく、繊維質とゴムとが入り混じった混合物である。繊維質の存在によって、抗微生物成分が浸透、蓄積、通過等するための多孔性が提供され得るが、それに加えてゴム自体が発泡処理されていてもよい
【0017】
担体は、その全重量の半分以上が上記繊維質で占められ得る。担体は、上記繊維質を50~98重量%、上記ゴムを2~50重量%含むことが好ましい。担体の繊維質含有量は60~80重量%であることがより好ましい。また、担体のゴム含有量は5~30重量%であることがより好ましい。
【0018】
担体は、主鎖に二重結合を有するゴムおよび上記繊維質以外の1つまたは複数の追加成分を含んでもよい。そのような追加成分の合計含有量は通常は担体の全重量の50%未満である。そのような追加成分の例としては、主鎖に二重結合を有さないゴム、ゴム以外のポリマーまたはバインダー、レザーファイバーおよびコットンファイバー以外の繊維性材料、天然油脂、着色剤、および着香剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
担体の大きさおよび形状は、用途に応じて適宜変化させることができる。例えば、後述するように履物の中敷内に設置する用途のためには、担体は、中敷の面からはみ出ない寸法を有し中敷の表面積(すなわち着用者の足の裏に面する側の表面積)以下の面積を有する薄片の形態であり得、例えば幅8cm以下・長さ25cm以下、あるいは幅8cm以下・長さ10cm以下であり得る。その場合の担体の厚さは、1mm以下であり得、0.7mm以下であることが好ましい。薄片を上から見たときの形状は、当業者が適宜決定することができ、例えば円形、楕円形、正方形、長方形等であり得るがこれらに限定されない。
【0020】
本実施形態の抗微生物組成物において、担体には、抗微生物成分が添加される。抗微生物成分とは、抗微生物活性すなわち微生物の生存および/または増殖を部分的にまたは完全に阻害する活性を提供できる成分であり、この抗微生物成分は、非環式テルペンアルデヒドを少なくとも含む。テルペンアルデヒドとは、当業者に理解されるように、イソプレン構造を構成単位とするアルデヒド化合物である。本実施形態における非環式テルペンアルデヒドは、環状構造を含まないテルペンアルデヒドであり、その例としては直鎖または分岐状の非環式C8-12テルペンアルデヒドが挙げられる。より具体的な例としては、シトラール(ゲラニアール、ネラール)、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール等、およびそれらの混合物を挙げることができるがこれらに限定されない。本実施形態における非環式テルペンアルデヒドは植物由来のものであることが好ましい。シトラールは本実施形態において特に好ましい非環式テルペンアルデヒドである。非環式テルペンアルデヒドは通常は室温(25℃)において揮発性の液体である。
【0021】
本開示において、「担体に抗微生物成分を添加する」ということは、抗微生物成分を担体に含浸、吸収、および/または吸着させることを意味する。しかしながら、その含浸、吸収、および/または吸着は恒久的なものではなく、揮発する抗微生物成分が担体から放出され得ることが理解される。その放出の時間的な持続性が高くなること、すなわち徐放となることが、本実施形態の特徴の1つである。特定の理論に拘束されないが、テルペンアルデヒドの構成単位に含まれる二重結合構造および/または分枝構造と上記ゴムの主鎖中の二重結合構造および/または分枝構造との親和性が徐放性に寄与すると考えられる。
【0022】
担体への抗微生物成分の添加は、例えば、液状形態の抗微生物成分を担体に滴下、噴射、もしくは注入すること、または液状形態の抗微生物成分に担体を浸漬することを含む含浸処理によって達成され得る。これらの含浸処理の際に、抗微生物成分は、他の液体成分(例えばエタノール等のアルコール)に混合または希釈されていてもよい。
【0023】
担体に添加される抗微生物成分の量は、コスト制約や求められる抗菌活性レベルなどの諸条件に応じてユーザーが適宜決定すべきものであって特に限定されず、いずれにせよ揮発によって経時的に減少していくことが理解される。一例として、含浸処理の際に担体に適用される抗微生物成分の量は、担体の表面積1cm2あたり0.3μL以上であり得、好ましくは0.5μL以上、より好ましくは1μL以上、さらに好ましくは10μL以上であり得る。担体の全表面に抗微生物成分が適用されるとは限らず、一部の表面においてのみ抗微生物成分が適用されることもあり得る。
【0024】
抗微生物成分には、上述した非環式テルペンアルデヒド(第一のアルデヒド)に加えて、上記非環式テルペンアルデヒドとは異なる第二のアルデヒドがさらに含まれていてもよい。そのような第二のアルデヒドは、非環式脂肪族アルデヒド、テルペンアルデヒド(特に、環式テルペンアルデヒド)、または芳香族アルデヒドであり得る。異なる複数種類の「第二のアルデヒド」が抗微生物成分に含まれていてもよい。第二のアルデヒドは通常は室温(25℃)において液状である。第一のアルデヒドおよび第二のアルデヒドのいずれかまたは両方が植物精油由来成分であることが好ましい。特許文献1に記載されているように、非環式テルペンアルデヒド単独でも抗微生物活性が提供されるが、非環式テルペンアルデヒドと第二のアルデヒドを併用することにより、相乗的な抗微生物作用が得られる。抗微生物成分には、第二のアルデヒドよりも非環式テルペンアルデヒドの方が多量に、すなわちより大きな体積において、含まれることが好ましい。
【0025】
第二のアルデヒドとしての非環式脂肪族アルデヒドは、環状構造を持たない直鎖または分岐状のアルキル基がホルミル基(CHO)で置換された化合物である。非環式脂肪族アルデヒドは、例えば、直鎖または分岐状のC1-20アルカナール、C6-12アルカナール、またはC8-10アルカナールであり得るがこれらに限定されない。より具体的な例としては、メタナール 、エタナール、プロパナール、イソプロパナール、ブタナール、イソブタナール、tert-ブタナール、ペンタナール、2-メチルブタナール、3-メチルブタナール、2,2-ジメチルプロパナール、ヘキサナール、2-メチルペンタナール、3-メチルペンタナール、4-メチルペンタナール、2,2-ジメチルブタナール、2,3-ジメチルブタナール、3,3-ジメチルブタナール、2-エチルブタナール、3-エチルブタナール、ヘプタナール、2-メチルヘキサナール、3-メチルヘキサナール、4-メチルヘキサナール、5-メチルヘキサナール、2,2-ジメチルペンタナール、2,3-ジメチルペンタナール、2,4-ジメチルペンタナール、3,3-ジメチルペンタナール、3,4-ジメチルペンタナール、4,4-ジメチルペンタナール、2-エチルペンタナール、3-エチルペンタナール、2-プロピルペンタナール、2,2,3-トリメチルブタナール、2,3,3-トリメチルブタナール、2-メチル2-エチルブタナール、2-エチル3-メチルブタナール、オクタナール、2-メチルヘプタナール、3-メチルヘプタナール、4-メチルヘプタナール、5-メチルヘプタナール、6-メチルヘプタナール、2,2-ジメチルヘキサナール、2,3-ジメチルヘキサナール、2,4-ジメチルヘキサナール、2,5-ジメチルヘキサナール、3,3-ジメチルヘキサナール、3,4-ジメチルヘキサナール、3,5-ジメチルヘキサナール、4,4-ジメチルヘキサナール、4,5-ジメチルヘキサナール、5,5-ジメチルヘキサナール、2-エチルヘキサナール、3-エチルヘキサナール、4-エチルヘキサナール、2,2,3-トリメチルペンタナール、2,2,4-トリメチルペンタナール、2,3,3-トリメチルペンタナール、2,3,4-トリメチルペンタナール、2,4,4-トリメチルペンタナール、3,3,4-トリメチルペンタナール、3,4,4-トリメチルペンタナール、2-メチル2-エチルペンタナール、2-メチル3-エチルペンタナール、2-エチル3-メチルペンタナール、3-エチル3-メチルペンタナール、2-エチル4-メチルペンタナール、3-エチル4-メチルペンタナール、2-プロピルペンタナール、2,2,3,3-テトラメチルブタナール、2,2,3,4-テトラメチルブタナール、2,2,4,4-テトラメチルブタナール、2,3,3,4-テトラメチルブタナール、2,3,4,4-テトラメチルブタナール、3,3,4,4-テトラメチルブタナール、2,2-ジエチルブタナール、ノナナール、2-メチルオクタナール、3-メチルオクタナール、4-メチルオクタナール、5-メチルオクタナール、6-メチルオクタナール、7-メチルオクタナール、2,2-ジメチルヘプタナール、2,3-ジメチルヘプタナール、2,4-ジメチルヘプタナール、2,5-ジメチルヘプタナール、2,6-ジメチルヘプタナール、3,3-ジメチルヘプタナール、3,4-ジメチルヘプタナール、3,5-ジメチルヘプタナール、3,6-ジメチルヘプタナール、4,4-ジメチルヘプタナール、4,5-ジメチルヘプタナール、4,6-ジメチルヘプタナール、5,5-ジメチルヘプタナール、5,6-ジメチルヘプタナール、6,6-ジメチルヘプタナール、2-エチルヘプタナール、3-エチルヘプタナール、4-エチルヘプタナール、5-エチルヘプタナール、2,2,3-トリメチルヘキサナール、2,2,4-トリメチルヘキサナール、2,2,5-トリメチルヘキサナール、2,3,3-トリメチルヘキサナール、2,3,4-トリメチルヘキサナール、2,3,5-トリメチルヘキサナール、2,4,4-トリメチルヘキサナール、2,4,5-トリメチルヘキサナール、2,5,5-トリメチルヘキサナール、3,3,4-トリメチルヘキサナール、3,3,5-トリメチルヘキサナール、3,4,4-トリメチルヘキサナール、3,4,5トリメチルヘキサナール、3,5,5-トリメチルヘキサナール、2-メチル2-エチルヘキサナール、2-メチル3-エチルヘキサナール、2-メチル4-エチルヘキサナール、2-エチル3-メチルヘキサナール、3-メチル3-エチルヘキサナール、3-メチル4-エチルヘキサナール、2-エチル4-メチルヘキサナール、3-エチル4-メチルヘキサナール、4-エチル4-メチルヘキサナール、2-プロピルヘキサナール、3-プロピルヘキサナール、2,2,3,3-テトラメチルペンタナール、2,2,3,4-テトラメチルペンタナール、2,2,3,5-テトラメチルペンタナール、2,2,4,4-テトラメチルペンタナール、2,2,4,5-テトラメチルペンタナール、2,3,3,4-テトラメチルペンタナール、2,3,3,5-テトラメチルペンタナール、2,3,4,4-テトラメチルペンタナール、2,3,4,5テトラメチルペンタナール、2,3,5,5-テトラメチルペンタナール、3,3,4,4-テトラメチルペンタナール、3,3,4,5-テトラメチルペンタナール、3,3,5,5-テトラメチルペンタナール、3,4,4,5-テトラメチルペンタナール、3,4,5,5-テトラメチルペンタナール、4,4,5,5-テトラメチルペンタナール、2,2-ジエチルペンタナール、2,3-ジエチルペンタナール、3,3-ジエチルペンタナール、2-メチル2-プロピルペンタナール、3-メチル2-プロピルペンタナール、4-メチル2-プロピルペンタナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナール、トリデカナール、テトラデカナール、ペンタデカナール、ヘキサデカナール、ヘプタデカナール、オクタデカナール、ノナデカナール、およびイコサナールが挙げられる。オクタナール、ノナナール、デカナール、およびトリメチルヘキサナールは特に好適な非環式脂肪族アルデヒドの例である。
【0026】
第二のアルデヒドは、環式テルペンアルデヒドであり得る。環式テルペンアルデヒドは、環状構造を含むテルペンアルデヒドであり、特に好適な例としては炭素数C8-12の環式テルペンアルデヒドが挙げられ、より具体的にはペリルアルデヒドが挙げられるが、これに限定されない。
【0027】
第二のアルデヒドとしての芳香族アルデヒドは、ホルミル基(CHO)を有する芳香族化合物である。芳香族化合物の芳香族炭化水素環の例としては、ベンゼン、ナフタレン、アズレン、アントラセン、クリセン、ピレン、コロネン、およびケクレンが挙げられ、ベンゼンが特に好ましい。芳香族アルデヒドにおいては、芳香族炭化水素環が、置換基として、ホルミル基、C1-6アルカナール基、C2-6アルケナール基、またはC2-6アルキナール基を有し得、好ましくは、ホルミル基、C1-4アルカナール基、C2-4アルケナール基、またはC2-4アルキナール基を有し得、より好ましくは、ホルミル基またはプロペナール基を有し得る。芳香族炭化水素環は、アルデヒド基以外の1~2個の置換基で置換されていてもよく、そのような置換基の例としては、水酸基、直鎖または分岐状のC1-6アルキル基、直鎖または分岐状のC1-6アルコキシ基を挙げることができ、好ましくは、水酸基、イソプロピル基、またはメトキシ基である。第二のアルデヒドとしての芳香族アルデヒドは、天然に存在する化合物であることが好ましい。芳香族アルデヒドのさらなる具体例としては、1~2個の置換基で置換されていてもよいベンズアルデヒド、および1~2個の置換基で置換されていてもよいシンナムアルデヒドが挙げられる。ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、クミンアルデヒド、およびバニリンは特に好ましい例である。
【0028】
一般的に、第一のアルデヒドおよび第二のアルデヒドのいずれかまたは両方が置換基、例えば1~2個の置換基で置換されていてもよい。置換基の例としては水酸基、C1-4アルキル基、およびC1-4アルコキシ基が挙げられるがこれらに限定されない。
【0029】
本抗微生物組成物が活用され得る用途としては、後述するように履物の中敷内に設置する用途の他に、靴下、靴箱、戸棚などその他の小空間に設置する用途、あるいはドアマット、バスマット等としての用途が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
上述した担体の組成および抗微生物成分の組成についての説明は、以下に記載する中敷の実施形態および中敷キットの実施形態にも適用される。
【0031】
別の側面において、本開示は、上述した抗微生物組成物を備えた中敷を提供する。中敷(インソール)とは、当業者に通常理解されるように、履物の内底面に敷設される部材である。通常、中敷は、例えばクッション性、脱臭、およびサイズ調節などの機能を履物に付与するために使用される。履物は最も典型的には靴であるが、長靴、スリッパ、サンダルなど多様な履物に中敷が装着され得る。中敷は、初めから履物内に敷設されて履物の一部として提供(販売)される場合もあるし、独立した部品として提供(販売)されて、個々のユーザーが各自の履物に敷設する場合もある。
【0032】
本開示において、中敷に関する文脈で用いられる「~の上に」、「上側」、「上方向」等の表現は、中敷を有する履物を立って着用している人の、頭に近い方の位置、側、または方向を表す。逆に、「~の下に」、「下側」、「下方向」等の表現は、中敷を有する履物を立って着用している人の頭から遠い方の位置、側、または方向を表す。中敷に関する文脈で用いられる「前」という表現は、着用者の足の爪先-踵軸に沿って爪先寄りとなる位置、側、または方向を表し、「後」という表現は、着用者の足の爪先-踵軸に沿って踵寄りとなる位置、側、または方向を表す。中敷に関する文脈で用いられる「外側」という表現は、右足用の履物の中敷においては右側を表し、左足用の履物の中敷においては左側を表す。中敷に関する文脈で用いられる「内側」という表現は、右足用の履物の中敷においては左側を表し、左足用の履物の中敷においては右側を表す。
【0033】
図1に、中敷の一実施形態の側面図を示す。本実施形態の中敷10は、少なくとも、中敷下層20と、中敷下層20の上に積層された中敷上層30とを含む積層構造を有する。
図1においては、左足用の靴の内底面に中敷10が敷設されたところが、着用者の左足とともに描かれている。
図1において、tは上方向(top)、bは下方向(bottom)、fは前方向(front)、rは後方向(rear)を示している。
【0034】
本実施形態の中敷は、抗微生物機能を備えていることで特徴付けられるが、それ以外の点では従来の中敷と同様の機能を有し得る。従って、中敷下層20および中敷上層30を含む中敷10の形状、寸法、厚さ等は、当業者が通常の知識に基づいて適宜選択することができる。
図1に示す実施形態では、中敷下層20は足裏の形に合わせて部分的に厚みを帯びかつ外側、内側、後側において反り上がった形状を有しており、その中敷下層20の上に、均一な厚さを有する柔軟な中敷上層30が積層されている。
【0035】
中敷下層20および中敷上層30のそれぞれの材料も、当業者に知られたものを適宜使用することができ、例えばポリウレタン、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、シリコーン、およびゴム(上述した、主鎖に二重結合を有するゴムと同じ種類であってもよい)のようなポリマー(発泡体であってもよい)、または革、コルク、綿、ウール、および紙のような天然素材由来の材料、またはこれらいずれかの組合せであり得る。中敷下層20と中敷上層30とが同じ材料で作られていてもよいし、異なった材料で作られていてもよい。中敷下層20および中敷上層30のどちらか一方または両方が、それぞれ複数の層からなっていてもよい。複数の層は互いに同じ材料で作られていてもよいし、異なった材料で作られていてもよい。
【0036】
本実施形態の中敷10は、上述した抗微生物組成物、すなわちテルペンアルデヒド抗微生物成分が添加された特定組成の担体が、中敷下層20および中敷上層30の間に挟まれて配置されていることを特徴とする。抗微生物組成物40は、中敷下層20および/または中敷上層30に固定されていてもよいし、固定されずに取り外し可能になっていてもよい。
【0037】
図2は、左足用の中敷の一実施形態の平面図を示す。
図2Aに示されているように、中敷は、足の踵部に対応する踵対応領域10aと、足の土踏まず部に対応する土踏まず対応領域10bと、足の爪先部に対応する爪先対応領域10cとに分けられる。踵対応領域10a、土踏まず対応領域10b、および爪先対応領域10cは、中敷の前後方向の長さに沿って、それぞれ後側の3分の1、中央の3分の1、および前側の3分の1であり得る。
図2において、fは前方向(front)、rは後方向(rear)、oは外方向(out)、iは内方向(in)を示している。
【0038】
図2に示す特定の実施形態では、爪先対応領域10cのほぼ全域に渡って、中敷下層20と中敷上層30とが互いに接着されていない非接着領域となっており、従って、着用時には
図2Aのように中敷下層20と中敷上層30とが全面に渡って重ね合わされているが、非着用時には、
図2Bのように中敷上層30の一部を中敷下層20から分離して上方向に持ち上げる、あるいは後方向に折り返すことができる。そうすると、中敷下層20および中敷上層30の間に挟まれて配置されていた抗微生物組成物40が、中敷下層20の上面に露出される。このような実施形態は、抗微生物組成物40の交換または抗微生物成分の補充が行いやすいため、好ましい。
【0039】
すなわち、抗微生物組成物40の交換または抗微生物成分の補充が予定される実施形態である場合には、中敷下層20と中敷上層30の積層中に、中敷下層20と中敷上層30とが互いに接着されていない非接着領域を設けることによって、その非接着領域において中敷下層20および中敷上層30の間に抗微生物組成物40を挟み込むことができるように構成されていることが好ましい。このような構成により、抗微生物組成物40または抗微生物成分の挿入だけでなく、抗微生物組成物40の取り出しも可能になることが理解される。
【0040】
非接着領域には連結部材50が設置されていてもよい。連結部材は、層同士が互いに対して可逆的に連結すること、すなわち着脱することを可能にする部材であり、例えばマジックテープ(登録商標)およびベルクロ(登録商標)のような面ファスナー、または磁石であり得る。
図2Bに示す特定の実施形態においては、非接着領域内の中敷下層20の上表面および中敷上層30の下表面にそれぞれ、対応する連結部材50aおよび50bが設置されている。連結部材は、
図2Aのように中敷下層20と中敷上層30の積層構造を復元した際には両層を互いに連結させるが、その連結は手の力で引き離すことによって容易に解除できるため、
図2Bのように中敷上層30を中敷下層20から分離することも許容する。
【0041】
図2は、抗微生物組成物40あるいは担体の交換が可能である実施形態を例示しているが、抗微生物組成物40あるいは担体が恒久的に(すなわち着脱不可能に)中敷10に結合された実施形態も企図される。つまり、中敷上層30を中敷下層20から分離させ得る非接着領域を有さない実施形態も企図される。例えば、中敷10自体が一回使用の使い捨てであってもよい。あるいは、担体が恒久的に中敷10に結合されており、中敷下層20と中敷上層30の積層構造の外部から(例えば中敷上層30の上表面を通して)抗微生物成分のみを補充する実施形態もあり得る。
【0042】
抗微生物組成物40の配置場所は、踵対応領域10a、土踏まず対応領域10b、および爪先対応領域10cのいずれであってもよく、それらの複数に渡っていてもよい。
図2に示すように、爪先対応領域10c内に抗微生物組成物40が配置されることが特に好ましい。上述した非接着領域および連結部材を提供する場合、それらの提供位置は、抗微生物組成物40の意図される位置に応じて当業者が適宜変更することができる。
【0043】
中敷上層30は、抗微生物組成物40を覆う領域において通気性領域を有する。抗微生物組成物40から揮発する抗微生物成分は、この通気性領域を通して上方向に送達され、履物内の空間に拡散される。当業者に知られる通気性材料を適宜選択してこの通気性領域を形成することができる。あるいは、通気性領域の通気性は、1つ以上の通気孔の存在によって提供されてもよい。揮発する抗微生物成分を透過させるために十分大きい孔サイズの通気孔が中敷上層30に1つだけ設けられていてもよいが、複数の通気孔が設けられることがより好ましく、その場合は各通気孔のサイズを相対的に小さくし得ることが理解される。メッシュ構造を有する材料によって通気性領域が形成され、そのメッシュ本来の間隙が通気性を提供していることが好ましい。抗微生物組成物40を覆う領域だけでなく中敷上層30全体が通気性であってもよい。
図2に示すように、中敷上層30の全体がメッシュ構造を有する実施形態が特に好ましい。
【0044】
別の側面において、本開示は、中敷と、上述した抗微生物組成物、すなわちテルペンアルデヒド抗微生物成分が添加された特定組成の担体とを含む、抗微生物中敷キットを提供する。本実施形態のキットにおける中敷は、上述した実施形態における中敷と本質的に同じであり得、例えば
図2に示すものと同様の中敷であり得るが、ただし、本キットにおいては、抗微生物組成物が交換可能になっている。そして、最初に使用されるべき抗微生物組成物が中敷に初めから装着されて提供される態様と、初めは抗微生物組成物が中敷に装着されずに提供される態様の両方が企図される。後者の場合は、最初の使用時にユーザーが抗微生物組成物を中敷に装着するという手順が必要となる。
【0045】
本実施形態のキットに含まれる中敷は、中敷下層と、その中敷下層の上に積層された中敷上層とを少なくとも備える。中敷下層と中敷上層の積層中には、中敷下層と中敷上層とが互いに接着されていない非接着領域が含まれ、その非接着領域において中敷下層および中敷上層の間に抗微生物組成物を挟み込むことができるように構成されている。中敷上層は、非接着領域を構成する部分において通気性領域を有する。通気性領域は上記で説明した通りであり、好ましくはメッシュ構造である。また、上述したように、非接着領域において中敷下層と中敷上層とを可逆的に連結する連結部材が設置されてもよい。
【0046】
本実施形態のキットは、気密性容器に封入された抗微生物組成物をさらに含む。抗微生物組成物の様々な実施形態は上記で説明した通りである。本開示において気密性容器とは、抗微生物組成物から揮発する抗微生物成分が外部に漏れだすことを少なくとも部分的に防ぐことができる容器を意味する。気密性容器は典型的には袋状であるが、箱、ボトル、缶など他の形態の容器であってもよい。1つの容器に1つの抗微生物組成物が含まれることが好ましいが、1つの容器に複数の抗微生物組成物が含まれる態様も企図され得る。キットの中敷も気密性容器に封入されていてもよい。
【0047】
気密性容器は、合成ポリマーで構成されていることが好ましく、その例としてはポリエステル、特にポリエチレンテレフタラート、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、環状ポリオレフィン等が挙げられるがこれらに限定されない。気密性容器の壁は1種類以上の合成ポリマー層を含む積層構造からなることが好ましく、積層構造中にアルミニウム等の金属層をさらに含むことが気密性向上の観点からさらに好ましい。
【0048】
図3に、本実施形態に係るキットの一例を示す。この例において、キットは、中敷10と、複数の気密性容器45にそれぞれ個包装された複数の抗微生物組成物40とを含んでいる。中敷10は少なくとも中敷下層と中敷上層とを備えており、この特定の例においては、中敷上層全体がメッシュ状であることにより、非接着領域を構成する部分において通気性領域が提供されている。この特定の例では非接着領域は爪先対応領域に位置し、最初に使用されるべき抗微生物組成物(点線でその位置と形状が示されている)が挟み込まれている。気密性容器45は、対面する2つのシートが周縁において互いに接合されることにより形成された密閉袋であり、各シートは合成ポリマー積層構造からなるが、その積層構造中には気密性を向上させるためのアルミニウム層が含まれるため、気密性容器45中に封入された抗微生物組成物40は、気密性容器45を開封しない限り見られない。この例では、ユーザーが手で簡単に気密性容器45を開封できるように、周縁の接合部の一カ所に切れ目46が入れられている。
【0049】
例えば、キットのユーザーは、中敷に最初に装着された抗微生物組成物40の抗微生物効力が弱まったときに、中敷の非接着領域からその抗微生物組成物40を取り外し、気密性容器45を開封して取り出した新鮮な抗微生物組成物40を中敷の非接着領域に代わりに挟み込むことによって、さらに長期間にわたり抗微生物中敷の使用を継続することができる。
【0050】
さらに別の側面において、本開示は、上述した特定組成の担体を備える中敷と、その担体に含浸させるための液状抗微生物成分を含有する気密性容器とを含む、抗微生物中敷キットを提供する。担体の組成と液状抗微生物成分については上述した通りである。すなわち、担体はレザーファイバー、コットンファイバー、またはそれらの組合せである繊維質と、主鎖に二重結合を有するゴムとを含む混合物であり、液状抗微生物成分は少なくとも非環式テルペンアルデヒドを含むものである。この実施形態における気密性容器は典型的にはプラスチックまたはガラスのボトルであるが、袋、箱、缶など他の形態の容器であってもよい。気密性容器がスポイト(ピペット)構造またはスプレー構造を含むことにより、液状抗微生物成分を担体に滴下または噴射できるように構成されることが好ましい。その場合の気密性容器は、不使用時にスポイト(ピペット)構造部分またはスプレー構造部分を覆って気密性を確保するキャップをさらに含むことが好ましい。
【0051】
本実施形態のキットのユーザーは、気密性容器から供給される液状抗微生物成分を中敷の担体に適宜含浸させることによって、中敷の抗微生物活性を補充し持続させることができる。
【0052】
本実施形態のキットにおける担体は、様々な形態で中敷の一部または全部を構成し得る。例えば、上述した実施形態と同様に、中敷が中敷下層と中敷上層とを備え、中敷下層と中敷上層との間に(中敷上層の通気性領域の下に)担体が挟み込まれていてもよい。この場合、担体は取り外し可能である必要はない。上述した実施形態と同様に、中敷下層と中敷上層とが手で分離できるように構成されていると、液状抗微生物成分を担体に補充しやすいため好ましい。あるいは、中敷上層の上から、中敷上層を浸透させて、もしくは中敷上層に存在する孔を通して、液状抗微生物成分を担体に補充するように構成してもよい。この場合、中敷下層と中敷上層とが手で分離できる必要はない。あるいは、中敷上層そのものまたは中敷そのものの一部または全部が担体からなっていてもよい。
【実施例】
【0053】
[実施例1]
マグチューブL(日鉄鉱社製)は、多孔質塩基性炭酸マグネシウムに基づく市販の徐放性担体材料であり、液状物を取り込んで徐放する性質を有することが知られるものである。本発明者らは、非環式テルペンアルデヒドを主体とする抗微生物成分に関して、コットンファイバーとスチレン・ブタジエンゴムとの混合物が、マグチューブLよりはるかに優れた徐放性を示すことを見出した。そのことを例示する実験を以下に記述する。
【0054】
(方法)
非環式テルペンアルデヒドであるシトラール40μLにペリルアルデヒド20μLを添加したものをエタノール540μLで希釈して10%濃度の抗微生物成分を調製した。以下、抗微生物成分の量の記載は、このエタノール希釈液の体積を表している。本実施例における試験材料は、コットンファイバー(70重量%)とスチレン・ブタジエンゴム(30重量%)の混合物であり(以下、試験材料Dという)、2cm四方の平面状である。マグチューブLは粉末であり、これを薬包紙上に載せて2cm四方の平面状にして試験に使用した。実験の詳細を下記表に示す。
【0055】
【0056】
試験材料DまたはマグチューブL(どちらも2cm四方)の中央に上記抗微生物成分を20μLまたは40μL滴下して含浸させた。2枚重ねの試料については、重ねられた2枚の間に抗微生物成分を滴下した。No.17~20は、上記非環式テルペンアルデヒド混合物の代わりにテルビナフィンのエタノール溶液を抗微生物成分とした実験である。その後、これらの試料を、無風のドラフトチャンバー内に7日間放置した。その後、各試料を3.5cm径シャーレの蓋の下面に両面テープで貼り付ける一方、シャーレ中のサブロー寒天培地にカンジダ菌(Candida albicans)を植菌したものを用意し(100細胞/シャーレ)、それらシャーレに上記蓋を被せてパラフィルムで密閉し、25℃で24時間静置した。7日間放置されていた上記試料中に抗微生物成分がまだ残存していれば、この静置時間中に、蓋から降下して寒天培地上のカンジダ菌(真菌)に作用すると考えられる。上記静置後、蓋を外して、シャーレを37℃で5時間培養した。
【0057】
(結果)
上記培養後の真菌コロニー形成結果を
図4に示す。シャーレ内で白い斑点状に観察されるのは、真菌コロニーの生育状態を反映した真菌コロニーである。寒天培地を覆う白いコロニーが多くおよび/または大きく観察される場合は、事前に7日間放置した試験材料DまたはマグチューブLに残存していた抗菌活性が少なかったことを示す。その反対に、寒天培地が透明な状態に近い場合は、抗菌活性が強く残存していたことを示す。
図4の矢印で示すように、主たる含浸担体として試験材料Dを使用した場合に特に強い抗菌活性が検出された。テルペンアルデヒドの代わりにテルビナフィンを活性成分とした場合には、強い抗菌活性の残存は観察されなかった(実験No.17~20)。
図4右に示すコントロールは、抗微生物成分の添加を省略した実験を表す。
【0058】
この結果は、試験材料Dが揮発性のテルペンアルデヒド抗微生物成分を長期間保持し、抗微生物成分の持つ抗真菌活性を少なくとも1週間に渡り持続して放出することができたことを示している。この徐放性の効果は、市販の徐放性材料であるマグチューブLよりもはるかに強力であった。またこの徐放性は、テルペンアルデヒドに基づく抗微生物成分に特異的な効果であった。
【0059】
[実施例2]
上記実施例1の実験において、テルペンアルデヒドに基づく抗微生物成分の徐放性が、担体の組成によって著しく異なり得ることが見出された。そこで、実施例1と実質的に同じ実験手順を用いて、異なる様々な担体材料を試験した。試験された担体材料およびその組成(重量%表示)を下記表2に例示する。
【0060】
【0061】
実施例1と同様、シトラールとペリルアルデヒドをエタノールに希釈したものを抗微生物成分として使用し、これを各試験材料片に滴下して含浸させた。ドラフトチャンバー内での放置時間(7日間)、25℃での静置時間(24時間)、および37℃での培養時間(5時間)も実施例1と同じである。表2中の試験材料Dは実施例1における試験材料Dと同一である。
【0062】
図5に、37℃で5時間の培養後のシャーレの写真を示す。
図5中、20μLおよび40μLという表示はそれぞれ試験材料に滴下された抗微生物成分の量を表し、アルファベットの記号は上記表2に示す試験材料の種類を表す。白い真菌コロニーの目視によって判定された抗菌活性は、試験材料G,Hで最も高く、次いでI,Dでほぼ同じ程度に強かった。試験材料Eにおける抗菌活性はそれより弱く、Fではさらに弱く、A,B,Cにおける抗菌活性が最も弱かった。すなわち、7日間の放置後に残存した抗菌活性の強さについてG,H≧I≒D>E>F≧A,B,Cという結果が得られた。
【0063】
上記結果の再現性を確認するために、シャーレ2枚ずつのレプリケート実験を含ませながら、再度同じ実験手順を行った。その結果を
図6~7に示す。上記実験とほぼ同じ結果が得られた。すなわち、観察された抗菌活性の強さの順は、G,H,I≧D>E>F>A,B,Cとなった。
【0064】
上記のように試験材料G,H,IおよびDは強い抗菌活性の持続を示したが、添加された抗微生物成分とは無関係に、試験材料(担体材料)自体が抗菌活性を提供していたという可能性も考えられた。その可能性を排除するために、抗微生物成分を添加しない他は上記と同じ実験手順に従う、比較実験を行った。その結果、抗微生物成分を添加しない試験材料そのものからは抗菌活性が観察されなかった(結果は図示していない)。従って、持続的かつ強い抗菌活性は、添加されたテルペンアルデヒド抗微生物成分の徐放によることが確認された。
【0065】
以上に例示した結果より、レザーファイバーおよび/またはコットンファイバーの繊維質と、主鎖に二重結合を有するゴムとを含む混合物である担体が、テルペンアルデヒド抗微生物成分の徐放性に関して顕著に優れていることが見出された。レザーファイバーとイソプレンゴムを含む混合物が特に好ましいと見られた。
【0066】
[実施例3]
テルペンアルデヒド抗微生物成分を添加した担体を、中敷(インソール)に組み込み、この抗微生物インソールを革靴(ビジネスシューズ)に装着した。この実験系を用いて、靴内に散布された白癬菌に対する除菌効果を検討した。
【0067】
(方法)
実施例2における試験材料Gを、
図2の符号40で示す形状および0.6mmの厚さに加工して担体を作製した。この担体に、シトラールとペリルアルデヒドを体積比5:1で含むエタノール溶液(抗微生物成分濃度1%、3%、または5%)を100μL滴下して添加することにより、抗微生物組成物を得た。この抗微生物組成物は、
図2に示すように、下層およびメッシュ状の上層を有するインソールに組み込まれた。
【0068】
一方、厚手の濾紙片に500CFUの白癬菌(T. mentagrophytes TIMM2789)を滴下し、
図8aに示すように、上記インソールの上層表面の4箇所の位置に両面テープで貼り付けた。
図8aに示す濾紙片の位置(1)~(4)のうち(2)の位置の直下に抗微生物組成物が挟み込まれている(
図2参照)。このインソールを男性用革靴の内底面に敷設した。人による着用時の靴内の密閉性を再現するために、この革靴にアルミホイルで蓋をし、30℃で3日間静置した。
【0069】
その後、上記濾紙片を靴から取り出してシャーレ内の寒天培地上に付着させ、このシャーレを30℃で4日間培養した。全ての実験を、片足3個の革靴に装着した3個のインソールについて行った。
【0070】
(結果)
靴内環境から寒天培地上に移した濾紙片は、4日間の培養後、濾紙片輪郭の外側に白癬菌の白い菌糸を伸長させていたことが観察された。シャーレの写真を撮影し、濾紙片周囲の白癬菌の増殖面積を画像解析ソフトで解析した。画像解析により測定された白癬菌増殖面積の比較を表3に要約する。コントロール(control)は、担体への抗微生物成分の滴下を省略した対照実験である。表3の第1行目の1~4の数字は、
図8aに示すように、インソール表面に貼り付けられたときの濾紙片の位置を示す。
【0071】
【0072】
表3に示す結果から、抗微生物成分の存在により白癬菌増殖が抑制される傾向が明らかであり、特に、インソール中で抗微生物組成物に一番近い(2)の位置では、1~5%のいずれの抗微生物成分濃度でも有意に白癬菌増殖面積の減少が認められた。また5%の抗微生物成分濃度では、抗微生物組成物から遠く離れた踵部分(4)でも、白癬菌増殖抑制効果について対照との有意差が得られた。以上のことから、徐放性の担体にテルペンアルデヒド抗微生物成分を添加して靴内に設置することにより、靴内の白癬菌を除菌できることが示された。
【0073】
[実施例4]
実施例3では、濾紙片に付着させた白癬菌の菌数が多かったため、菌糸発育の抑制が識別しにくくなっていた、すなわち実験の感度が低くなっていたと考えられた。そこで、白癬菌の菌数を減らして、試験材料Gの徐放性除菌効果を再度検証した。具体的には、各濾紙片に付着させる白癬菌を8CFU/5μLとし、担体に添加する抗微生物成分の量を200μLとした。また、インソールに濾紙片を貼り付ける位置は
図8bのようにし、1~4のそれぞれの位置に濾紙片を左右に3つ並べた。革靴にアルミホイルで蓋をして30℃で静置する期間は4日間とし、濾紙片を移植したシャーレの培養期間は5日間とした。それ以外は実施例3と同じようにして実験を行った。なお、
図8bに示す濾紙片の位置1~4のうち「2」の位置の直下に抗微生物組成物が挟み込まれている(
図2参照)。
【0074】
(結果)
図9aに示すように、抗微生物成分の添加を省略したコントロール実験では、靴内の1~4のすべての位置の濾紙片から白癬菌が増殖したのに対して(
図9a左)、濃度5%の抗微生物成分を添加した抗微生物組成物を含むインソールが装着された靴の場合は、1~4のいずれの位置の濾紙片からも白癬菌の増殖が完全に阻止された(
図9a右)。全てのレプリケート実験で同様に白癬菌の増殖阻止が見られた。
【0075】
また、靴内で抗微生物組成物に最も近い「2」の位置(
図8bおよび
図2参照)については、
図9bに示すように、抗微生物成分の濃度に応じた白癬菌の増殖抑制が観察された(各濃度についてのトリプリケート実験の結果を並べて示している)。
【0076】
以上の結果から、抗微生物組成物を備えたインソールを靴の中に設置すると、靴内の白癬菌に対する除菌効果が得られることが証明された。この効果の程度は、抗微生物成分の濃度に依存し、5%濃度の抗微生物成分を担体に添加する場合には、靴内全域で顕著な除菌効果が得られることがわかった。
【0077】
[実施例5]
実施例4を基にして、さらに検出感度を向上させるために実験条件を調整し、例数を増やして検証実験を行った。具体的には、厚手濾紙片に白癬菌(T. mentagrophytes TIMM2789)を5CFU/5μL滴下した。
図8bに示すようにインソール表面の4箇所(1~4)の位置に、上記濾紙片を2枚ずつ左右に並べて貼り付けた。それ以外の実験手順および実験条件は実施例4と同一とした。各濾紙片を、インソールの「2」の位置に抗微生物組成物を有する革靴内の環境からシャーレに移植して培養した後の、シャーレの写真を
図10に示す。
図10において、いちばん左の列は、抗微生物成分の添加を省略したコントロール靴からの培養結果を示し、右の3列はそれぞれ濃度1%、3%、5%の抗微生物成分を担体に添加した靴からの培養結果を示している。シャーレ内の1~4の数字は、
図8bに示すインソール表面上の位置に対応している。
【0078】
図10に示すシャーレに見られる白癬菌コロニーのサイズを、以下のようにスコア化した。0点:白癬菌増殖なし、1点:少し白癬菌増殖が見られる、2点:白癬菌の中程度の増殖が見られる、3点:白癬菌の強い増殖が見られる。スコアは下記表4のように集計された。
【0079】
【0080】
上記の結果は、レザーファイバーと主鎖に二重結合を有するゴム(イソプレンゴム)とを含む混合物である徐放性担体に抗微生物成分を添加したものである抗微生物組成物を、靴のインソールに組み込んで使用すると、1%という低い抗微生物成分濃度における使用でも、靴内の白癬菌を効果的に除菌する能力が提供されることを実証している。さらに、抗微生物成分濃度(エタノール溶液中における体積%)を0.3%および0.1%まで低くして本実施例と同様の実験を行ったところ、少なくとも「2」の位置(
図8b)においては、濾紙片からの白癬菌増殖の平均面積が、抗微生物成分0%のコントロールと比べて有意に減少した(濃度0.3%、0.1%のいずれの場合も、コントロールで得られた面積の約60~70%まで減少;データは図示していない)。すなわち、抗微生物成分を0.1%というさらなる低濃度にしてもなお除菌効果が維持されることが明らかになった。
【0081】
実施例を示して本発明の代表的実施形態をさらに詳細に説明したが、本発明はこれらの具体的な実施形態に限定されない。特に、非環式テルペンアルデヒドを主体とする抗微生物成分は、白癬菌だけでなく他の真菌および細菌を含む多様な微生物に対して有効であることが知られているため(特許文献1)、本開示に係る抗微生物組成物は上記実施例に例示したもの以外の様々な用途に応用され得ることが理解される。
【0082】
本開示において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値をそれぞれ下限値および上限値として含むことを意味する。「A~B」「C~D」というように可能な複数の数値範囲が別々に記載されている場合、一方の下限または上限を他方の上限または下限と組み合わせた数値範囲(例えば「A~D」「C~B」)も本明細書に開示されているものとして解されるべきである。また、第1の要素と第2の要素の組合せが記載されており、第1の要素と第2の要素のそれぞれについて複数の可能な選択肢が記載されている場合、第1の要素の各選択肢と、第2の要素の各選択肢との、すべての可能な組合せが本明細書に開示されているものとして解されるべきである。本開示において、「~を含む」という表現(例えば「EおよびFを含む」)は、そこに明記された要素が少なくとも含まれることを意味し、そこに明記された以外の要素(例えば、E要素およびF要素以外のG要素)もさらに含まれる態様、および、そこに明記された要素(E要素およびF要素)のみからなる態様の両方を包含すると解されるべきである。