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  • 特許-鋼材の溶着物除去用回転刃物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】鋼材の溶着物除去用回転刃物
(51)【国際特許分類】
   B24D 7/00 20060101AFI20230727BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20230727BHJP
   B24D 3/06 20060101ALI20230727BHJP
   B24B 27/033 20060101ALI20230727BHJP
   B23K 37/08 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
B24D7/00 P
B24D3/00 320B
B24D3/06 Z
B24B27/033 Z
B23K37/08 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022120376
(22)【出願日】2022-07-28
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】521244787
【氏名又は名称】中越鉄工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236698
【氏名又は名称】不二空機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】522302231
【氏名又は名称】酒井 智俊
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】米田 達則
(72)【発明者】
【氏名】西田 勝行
(72)【発明者】
【氏名】榎本 浩介
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-527384(JP,A)
【文献】特開平11-170176(JP,A)
【文献】実開昭61-012624(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 7/00
B24D 3/00
B24D 3/06
B24B 27/033
B23K 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材を溶接した際に周囲に発生した溶着物を除去するための回転刃物であって、
前記回転刃物は円盤状のベース部と、前記ベース部にリング状に形成した研磨部とを有し、
前記研磨部は半径方向の溝部を複数有し、
前記溝部の幅は1~3mmの範囲であり、深さが3mm以上であることを特徴とする溶着物除去用回転刃物。
【請求項2】
前記研磨部は砥粒がダイヤモンド砥粒であり、ボンド(結合剤)がコバルト系のメタルボンドであり、集中度が4~26の範囲であることを特徴とする請求項1記載の回転刃物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材を溶接する際に発生するスパッタ等と称される突起状の溶着物を除去するのに用いられる回転刃物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種構造物は、鋼材をアーク溶接等の各種溶接にて製作されている。
この溶接の際には、溶融した金属の粒子が飛び散り、いわゆるスパッタと称される突起物が溶接ビードの周囲に発生する。
そのような場合に、スパッタを除去する必要が生じる。
構造物等は、H鋼,I鋼,箱鋼等の鋼材が用いられ、これらを鉄板等を用いて溶接接合することから、溶接ビート凹部状の角部に集中して溶着したスパッタが発生しやすく、スパッタの除去作業が大変であった。
これらのスパッタをグラインダー等にて除去しようとすると、鋼材の母材も削り込んでしまい、母材が欠損してしまう問題があった。
また、回転する砥石では外周角部の磨り減りが大きく、角部のスパッタ除去作業の形状に適合する寿命が極端に短い問題があった。
そこで従来は、スケラーとハンマーで斫り取っていたが、その作業は大変な労力を必要として、スパッタの除去作業に長時間を要していた。
【0003】
特許文献1には、円盤状鋼の周縁部に放射状の切溝を設けることで、複数の舌片を形成し、この舌片を上下方向に段違いに配置したスパッタ除去用工具を開示する。
しかし、段違いの複数舌片状の刃先では,凹部状の角部と平坦部を適宜使い分けて研磨する研磨には不適であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭61-12624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、母材の欠損を抑えることができ、溶接ビート凹部角部の溶着物の除去作業も容易で、寿命の長い溶着物除去用回転刃物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る溶着物除去用回転刃物は、鋼材を溶接した際に周囲に発生した溶着物を除去するための回転刃物であって、前記回転刃物は円盤状のベース部と、前記ベース部にリング状に形成した研磨部とを有し、前記研磨部は半径方向の溝部を複数有し、前記溝部の幅は1~3mmの範囲であり、深さが3mm以上であることを特徴とする。
【0007】
本発明において特徴的なのは、リング状の研磨部に幅1~3mmで、深さ3mm以上の複数の半径方向の溝部を形成した点にある。
これにより、この溝部に突起状の溶着物(スパッタ)が入り込み、斫り取るように研磨することができる。
これにより、母材を削り取ることなく、刃物の平面と側面でスパッタを除去でき、回転刃物の跳ね返りも小さい。
このように回転刃物の跳ね返りが小さいことは、特に凹部状の角部に溶着したスパッタを除去する際に安定した回転による除去作業ができる。
【0008】
本発明において、研磨部は砥粒がダイヤモンド砥粒であり、ボンド(結合剤)がコバルト系のメタルボンドであり、集中度が4~26の範囲であるのが好ましい。
ダイヤモンド砥粒の結合剤にコバルト系のメタルボンドを用いたのは、ブロンズ系のメタルボンドでは柔らかすぎて、研磨部の減耗が早いためである。
また、集中度(コンセントレーション)は、ボンド中の砥粒率を表すが、体積比でボンド中の砥粒が25%の場合を集中度100となる。
集中度が4未満では、減耗が速く、26を超えるとダイヤモンド砥粒が密集しすぎて研磨性が低下することから、集中度は4~26の範囲が好ましい。
また、ダイヤモンド砥粒の大きさはメッシュで#20~#100程度が好ましい。
【0009】
本発明において、研磨部はリング幅(チップ幅)が5~10mmで外周側コーナー部Rが1mm以上になると平坦面の再研磨可能であるのが好ましい。
鋼材の凹部状の角部の溶接ビード周辺に発生したスパッタ除去を多用するにはチップ角部の消耗が早く、リング状のチップ幅が小さい方が工具の製作費が安価で、平坦部研磨の作業性もよい。
その際に、チップの外周側先端のコーナー部が平面より先行してR形状に減耗することから、減耗量がRで1mm以上になると凹部状の角部の研磨機能を失うため,表面を平坦面に再研磨することで再び凹部状の角部の研磨に適した刃物形状に戻り工具寿命が長くなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る回転刃物は、リング状のチップに幅1~3mmの半径方向溝部を形成したことにより、母材を欠損させることなくスパッタの除去ができ、リング状のチップ幅を5~10mm程度にすることで、凹部状の角部と平坦部に溶着したスパッタの除去が容易になる。また、再研磨することで刃物消耗によるコストが大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は工具全体を示し、(b)は回転刃物の平面図を示す。(c)は回転刃物のA-A線断面端面図を示す。
図2】溶接した構造物の例を示す。(a)は全体図、(b)は角部の拡大図を示す。
図3】スパッタを除去する際の工具の状態を(a)に示す。(b)はスパッタの除去に要求される機能の説明図を示す。
図4】スパッタの除去を模式的に示し、(a)は除去前、(b)は除去後を示す。
図5】(a)~(c)はチップの減耗と再生の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る回転刃物の例を以下図に基づいて説明する。
図1(a)に、工具の全体構造例を示す。
工具本体部1は、ハンディ型であり、エアー駆動やモーター駆動等の回転軸部2を有し、この回転軸部2に本発明に係る回転刃物10を取り付けて使用する。
工具の回転数は、5000rpmレベルが好ましい。
【0013】
回転刃物10は、図1(b)に平面図,図1(c)にA-A線断面端面図を示すように、外径が75mmの円盤状のベース部11にリング状の研磨部(チップ)12を形成してある。
チップは幅d:7mm,高さh:10mmに設定した。
本実施例では、溝部の幅2mmで、8つの溝部を形成した例になっている。
工具本体部1には、取付孔14を介して取り付ける。
【0014】
図2に構造物の例を示し、鋼材を用いて構造物Wの凹部状の角部に溶接ビードBで示すように溶接された例になっていて、図2(b)に拡大図を示すように角部Cの溶接ビードB周辺に溶着物として散乱状にスパッタSが付着している。
【0015】
このようなスパッタSを除去するには、図3に示すように工具を手で持ち、回転刃物の先端部が角部Cに入り込むようにし、スパッタSを除去することになる。
本発明に係る回転刃物の特徴を図3(b)にて説明する(図3(b)では溝部を分かりやすくするために、大きく表現してある。)。
市販されているダイヤモンド刃物は、主に平坦部を研磨するのが目的となっているのに対して、本発明に係る回転刃物は、溝部の幅を1~3mm,溝部の深さを3mm以上にするとともに、チップ幅を5~10mmに選定したことにより、図3(b)に示すように平坦部の研磨のみならず、溶接ビート凹部の角部付近に溶着したスパッタに対しても安定した回転が得られ、研磨作業が容易になる。
特に、図4に模式図を示すようにスパッタSの先端部が回転刃物10の研磨部12の溝部13に入り込み、深さ3mm以上の溝部13から研磨除去されるので、構造部Wの母材を欠損することなく、図4(b)に模式図を示すように研磨されたスパッタ残部Sのようになる。
【0016】
図5には、研磨部12の減耗変化を示す。
チップの外周部先端部のコーナー部が減耗されやすく、図5(b)に示すようにRが1mm以上になると、図5(c)に示すように先端部12bを研削し、平坦面のチップ12aに再生しながら使用できるので、角部研磨に適した形状に戻り回転刃物の寿命が長くなる。
【符号の説明】
【0017】
1 工具本体部
2 回転軸部
10 回転刃物
11 ベース部
12 研磨部
13 溝部
【要約】
【課題】母材の欠損を抑えることができ、鋼材凹部角部の溶着物の除去作業も容易で、寿命の長い溶着物除去用回転刃物の提供を目的とする。
【解決手段】鋼材を溶接した際に周囲に発生した溶着物を除去するための回転刃物であって、前記回転刃物は円盤状のベース部と、前記ベース部にリング状に形成した研磨部とを有し、前記研磨部は半径方向の溝部を複数有し、前記溝部の幅は1~3mmの範囲であり、深さが3mm以上であることを特徴とする。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5