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特許7320232押し出しによる微生物細胞破砕装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】押し出しによる微生物細胞破砕装置および方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/33 20060101AFI20230727BHJP
   C12N 1/06 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
C12M1/33
C12N1/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020572583
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 BR2019050074
(87)【国際公開番号】W WO2019173888
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】BR1020180049739
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(73)【特許権者】
【識別番号】591005349
【氏名又は名称】ペトロレオ ブラジレイロ ソシエダ アノニマ - ペトロブラス
(73)【特許権者】
【識別番号】520352702
【氏名又は名称】ウニヴェルシダッド フェデラル デ ヴィソーザ
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120684
【弁理士】
【氏名又は名称】宮城 三次
(72)【発明者】
【氏名】アレデス マルティンス,マルシオ
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァイス ロチャ,ディルソン
(72)【発明者】
【氏名】デ オリヴェイラ レイチ,マウリシオ
(72)【発明者】
【氏名】ベゼラ ヴィエイラ,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ジョアン,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ブランテス バセラー メンデス,レオナルド
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-029052(JP,A)
【文献】特開2013-172677(JP,A)
【文献】特開2017-148001(JP,A)
【文献】特開2006-168250(JP,A)
【文献】特表2017-525345(JP,A)
【文献】特開平11-266854(JP,A)
【文献】特表2017-518497(JP,A)
【文献】特開2007-319846(JP,A)
【文献】特開2008-211967(JP,A)
【文献】特開2016-082879(JP,A)
【文献】松本幹治,微生物細胞の破壊および破砕,粉体工学会誌, 1988, vol. 25, p. 303-309
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押し出しによって微生物の細胞を破砕する装置であって、
微生物懸濁液の注入管(1)と、
前記注入管(1)の下流にあり当該注入管に連通する環状流路(13)であって、微生物細胞を破砕するように構成され、雌型の円錐台形を有する外側部分(7)と、当該外側部分(7)により形成された空洞の内側に位置し、前記外側部分に適合する雄型の円錐台形を有する内側部分(8)とによって形成された環状流路(13)と、
破砕された細胞を排出するための、前記環状流路(13)の下流にあり当該環状流路に連通する流出管(9)と、
を備える、装置。
【請求項2】
前記環状流路(13)を通じて微生物懸濁液を送り出すように構成されたポンプ(2)をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ポンプ(2)が、前記注入管(1)に配置された容積ポンプである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記環状流路(13)の径を調節するための調整機構(12)によって、前記内側部分(8)の位置が、前記外側部分(7)により形成された前記空洞に対して調整可能である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記調整機構(12)が、空圧式の装置、油圧式の装置、機械式の装置、電気式の装置および手動の装置の少なくとも1つである、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
当該装置の注入圧力を調べるように構成された1つの圧力計(3)をさらに含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記調整機構(12)を制御するように構成された自動制御システムをさらに含む、請求項4から6までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記内側部分(8)が、前記流出管(9)の近傍に配置された空洞(10)を含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記環状流路(13)の端部を密閉するように構成された密閉要素(11)を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記密閉要素(11)が、前記注入管(1)とは反対側の前記環状流路(13)の端部に配置されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
クーラントシステムをさらに含み、当該クーラントシステムが、
前記外側部分(7)の周囲に配置された冷却ジャケット(4)と、
前記冷却ジャケット(4)内に冷却剤を注入するように構成された冷却剤入口(5)と、
前記冷却ジャケット(4)から冷却剤を取り除くように構成された冷却剤出口(6)と、
を備える、請求項1から10までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
押し出しによって微生物の細胞を破砕する方法であって、
注入管(1)の下流にあり当該注入管に連通する環状流路(13)であって、微生物細胞を破砕するように構成され、雌型の円錐台形を有する外側部分(7)と、当該外側部分(7)により形成された空洞の内側に位置し、前記外側部分に適合する雄型の円錐台形を有する内側部分(8)とによって形成された環状流路(13)を通じて、微生物懸濁液に強制的な流れを起こさせるステップと、
破砕された細胞を、前記環状流路(13)の下流にあり前記環状流路に連通する流出管(9)に通すステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
微生物の種および径の関数として前記環状流路(13)の径を調節するための調整機構(12)によって、前記外側部分(7)の前記空洞に対する前記内側部分(8)の位置を調整するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
冷却システムによって前記環状流路(13)内の微生物懸濁液を冷却するステップをさらに含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記微生物懸濁液を冷却するステップは、冷却ジャケット(4)を通じて冷却剤を循環させることを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の細胞壁を破砕する装置およびシステムに関する。具体的には、本発明は、微細藻類の細胞壁を破砕する装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
微細藻類は、タンパク質、脂質、多価不飽和脂肪酸、カロテノイド、色素およびビタミンの優れた供給源として認められており、食品、飼料、化粧品、製薬およびバイオ燃料産業に用いることができる。他の従来のエネルギー作物と比較する場合、微細藻類は、エネルギー源として、バイオ燃料生産の有望な代替物である。微細藻類は、急速な増殖と脂質の生産と関連する光合成効率により、エタノール、水素およびバイオディーゼルなどのバイオ燃料の生産に用いることが可能である。
【0003】
シアノバクテリアのような微細藻類は、急速な細胞増殖を示すことや、基礎的な栄養要求性(日光、水ならびにCO)、および高い突然変異率を有し、最終的に遺伝子改変に大きな可能性を示すことから、産業用途での使用に対して競争力のある生物である。生来の多様性と、多様な生息場所での増殖能とによって、とりわけ農業上の価値の低い地域においては、バイオ燃料および食品の生産にこれらの微生物を利用する必要性が高まっている。
【0004】
関心対象の細胞内代謝産物を抽出するには、微細藻類の細胞壁を破砕する必要がある。関心対象となるこれらの化合物を抽出するための細胞破砕のいくつかの方法は、科学論文に開示されており、例えば、超音波、マイクロ波、機械的処理(高圧ホモジナイザーやミルの使用)、化学的処理(溶媒や酸)、高温(オートクレーブ)、凍結サイクルおよび解凍サイクルの使用、および超臨界流体とイオン液体による抽出が開示されている。
【0005】
圧力が305.9~1529.5 kgf/cm(300~1500 bar)のホモジナイザーを用いる機械的破砕は、他の方法と比較する場合、大きな抽出収量により、大規模用途において成果を挙げている。しかしながら、付加価値の低い産物の抽出にこの方法を利用する場合には、エネルギー消費が高いことが弱点となる。
【0006】
非特許文献1には、次のものを利用する細胞破砕法の比較が示されている。
(i)高圧プレス 細胞破砕には有効だが、かなりのエネルギーを必要とし、運転コストが高いことから、大規模に使用できない。
(ii)ボールミル 大規模な機械的細胞破砕のための実用的な方法から成り立っているが、細胞破砕の程度は粉砕要素の特性によって異なり、大規模用途には多量のエネルギーを要する。
(iii)超音波法 短時間での抽出に好都合であり、溶媒の使用を減少させるが、エネルギー消費が高いこと、および大規模な使用が困難であることがマイナス要素である。
(iv)超臨界流体による抽出 有毒廃棄物を生じず、再生可能な資源由来の溶媒を利用するが、エネルギー消費が高いこと、実施コストが高いこと、およびスケールアップが困難なことにより、バイオ燃料のシナリオにおいては当該方法を実行できない。そして、
(v)酵素による抽出 他の細胞破砕法と併用して、抽出効率を高め、より抵抗力が大きい微生物に用いられるが、酵素のコストにより運用コストが高い。
【0007】
さらに、低温処理であって、容易に使用できて溶媒を必要としないものの、大規模に使用すると運用コストが高くなることから実行できない低温処理も挙げられている。
【0008】
特許文献1に記述されている微細藻類油抽出システムは、ポンプを用いてデフレクター(deflectors)に衝突させた後、微細藻類の細胞壁を破砕することを提案している。このステップの後、液相がタンク内に流入し、当該タンク内では、3相、すなわち、油、廃水およびバイオマスが形成されると考えられる。ただし、細胞構造の損傷は、微細藻類の径および種によって異なる。しかしながら、この文献には、使用する圧力レベルに関する情報はない。
【0009】
乳業において用いられる高圧ホモジナイザーは、微細藻類の細胞破砕に適合させることができ、その利点は、藻類バイオマスを高固体含有量により連続的に処理可能なことである。ホモジナイザーによる細胞破砕のしくみは十分に理解されていないが、圧力変動、せん断応力、慣性力、衝撃、乱流およびキャビテーションの形成が原因とされている。
【0010】
ホモジナイザーでは、305.9~1529.5 kgf/cm(300~1500bar)という高い圧力とともに、30分から3時間の水圧保持時間(hydraulic dwell time)が必要である。ホモジナイザーによる細胞破砕の大規模な使用はエネルギー消費が高いことから、バイオ燃料生産の経済的実行可能性には疑問の余地がある。さらに、ホモジナイザーにおいて生じる温度上昇は、タンパク質や不飽和油などといった、関心対象の化合物の物理化学特性を損なうことがある。加えて、処理する微細藻類種の細胞の大きさではなく、必要な圧力レベルに応じて調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第8043496号明細書
【非特許文献】
【0012】
【文献】Show, K. Y., Lee, D. J., Tay, J. H., Lee, T. M., Chang, J. S.,「Microalgal drying and cell disruption」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以下に詳述するように、本発明は、上述した先行技術の問題を、実用的かつ効率的に解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の目的は、76.5~153.0 kgf/cm(75~150 bar)という低い圧力を用いているが故にエネルギー消費が低減された押し出しによって、微生物の細胞を機械的に破砕する装置および方法を提供することである。
【0015】
本発明の第2の目的は、微生物の種や大きさに応じてシステムを調節することが可能な、細胞を破砕する装置および方法を提示することである。
【0016】
本発明の第3の目的は、細胞破砕によって抽出された物質の物理化学特性の損失をなくす冷却システムを含む、微生物細胞を破砕する装置および方法を提供することである。
【0017】
前述した目的を達成するために、本発明は、押し出しによって微生物の細胞を破砕する装置であって、(i)微生物懸濁液の注入管と、(ii)注入管の下流にあり当該注入管に連通する環状流路であって、微生物細胞を破砕するように構成され、外側部分と、当該外側部分により形成された空洞の内側に位置する内側部分とによって形成された環状流路と、(iii)破砕された細胞を排出するために、環状流路の下流にあり当該環状流路に連通する流出管と、を備える装置を提供する。
【0018】
また、本発明は、押し出しによって微生物の細胞を破砕する方法であって、(i)注入管の下流にあり当該注入管に連通する環状流路であって、微生物細胞を破砕するように構成され、外側部分と、当該外側部分により形成された空洞の内側に位置する内側部分とによって形成された環状流路を通じて、微生物懸濁液を強制的な流れを起こさせるステップと、(ii)破砕された細胞を、環状流路の下流にあり当該環状流路に連通する流出管に押し流す(driving)ステップと、を含む方法も提供する。
【0019】
以下に示す詳細な説明は、添付図と、そのそれぞれの参照符号とを参照する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の好ましい実施形態に係る装置を示す断面図である。
図2】本発明の装置および方法適用の結果、さらに具体的には、微細藻類セネデスムス・オブリカス(Scenedesmus obliquus)BR003株における破砕なし(0回通過)のときと、1回、5回、10回、20回および40回通過させたときとの、フローサイトメトリー分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明は、本発明の好ましい実施形態から始まることをあらかじめ強調する。ただし、本発明は、この特定の実施形態に限定されない。
【0022】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る装置を示す断面図である。本発明の細胞破砕装置は、微生物懸濁液の注入管1を備えている。注入管1の下流に、当該注入管に連通する環状流路13が設けられており、その大きさは、以下において理解されるとおり、押し出しによって細胞を破砕するために、微生物の種および径に応じて調整することができる。
【0023】
微生物の流れは、細胞壁が押し出しによって破砕されるように、環状流路13内に押し込まれる。この環状流路13内への強制的な流れは、注入管1に配置されることが好ましい容積ポンプ2によって、促進されることが好ましい。
【0024】
装置の注入圧力を測定するための圧力計3が、場所2と環状流路13との間の任意の場所に設けられることが好ましい。
【0025】
または、微生物懸濁液を装置内に吸入するために、本装置には、環状流路13の下流において非容積ポンプ(不図示)が用いられる。
【0026】
環状流路13は、外側部分7と、当該外側部分7により形成された空洞の内側に位置する内側部分8とによって形成されている。内側部分8は、環状流路13が本質的に平行な壁を有するように、外側部分7によって形成された空洞と正確に同じ形状を有することが好ましい。外側部分7は、雌型の円錐台形(female truncated cone shape)を有することがさらに好ましい。本実施形態では、内側部分8は同じ円錐台形を有しているが、凸型適合(male fitting)となっている。
【0027】
環状流路13の径を調節するための調整機構12によって、内側部分8は、外側部分7により形成された内部空洞に対して自由に調整可能である。さらに、調整機構12は、空圧式、油圧式、機械式、電気式または手動の調整機構であり得る。また、調整機構12は、少なくとも2種類の駆動方法を組み合わせて作動させることもできる。
【0028】
調整機構12を制御するために、自動制御システムが設けられていてもよい。
【0029】
本発明の装置は、さらに、流出管9であって、破砕された細胞を排出するための、環状流路13の下流にあり当該環状流路に連通する流出管を備えている。
【0030】
内側部分8は、流出管9の近傍に配置された空洞10を備えることが好ましい。この空洞10は、この場所において低圧域を発生させ、破砕された物質の流れを流出管9へ導く機能を有する。図1に示すように、空洞10の位置は、流出管の位置と揃えられていることがさらに好ましい。
【0031】
さらに、本発明の装置には、密閉要素11であって、調整機構12の近傍において、注入管1とは反対側の環状流路13の端部に配置された密閉要素も含まれていることが好ましい。密閉要素11は、可撓性材料からなるガスケットであることが好ましい。
【0032】
微生物懸濁液の過度の温度上昇を回避するために、本発明の装置には、冷却システムが設けられていることが好ましい。このシステムは、外側部分7の周囲に配置された冷却ジャケット4を備えている。
【0033】
さらに、冷却システムには、冷却ジャケット4内に冷却剤を注入するための冷却剤入口5と、冷却ジャケット4から冷却剤を排出するための冷却剤出口6も含まれている。冷却剤入口5は、冷却ジャケット4および外側部分7のほぼ全体にわたって冷却剤を流すことを促進するために、冷却剤出口6から長手方向および横方向に離れて配置されることが好ましい。
【0034】
外側部分7は、冷却剤と微生物懸濁液との間の効率的な熱交換を可能にする、金属などの熱伝導性材料からなることが好ましい。
【0035】
また、本発明は、微生物の細胞を破砕する方法であって、
(i)注入管1の下流にあり当該注入管に連通する環状流路13であって、径が細胞を破砕するように構成され、外側部分7と、外側部分7により形成された空洞の内側に位置する内側部分8とによって形成された環状流路13を通じて、微生物懸濁液に強制的な流れを起こさせるステップと、
(ii)破砕された微生物を、環状流路13の下流にあり当該環状流路に連通する流出管9に通すステップと
を含む方法も提供する。
【0036】
さらに、本発明の方法には、環状流路13の径を調節するための調整機構12によって、外側部分7により形成された空洞に対する内側部分8の位置を調整するステップも含まれることが好ましい。
【0037】
本発明の方法は、冷却システムによって環状流路13内の微生物懸濁液を冷却するステップをさらに含むことが好ましい。この微生物懸濁液を冷却するステップには、冷却ジャケット4を通じて冷却剤を循環させることが含まれることがさらに好ましい。
【0038】
したがって、本発明は、76.5~153.0 kgf/cm(75~150 bar)という低い圧力を用いているが故にエネルギー消費が低減された押し出しによって、微生物懸濁液の細胞を破砕する装置および方法を提供する。本発明の装置は、環状流路の径を、微生物細胞の径および幅の関数として調節することも可能であり、これによって、関心対象の種の破砕に、十分かつ効率的に適合するようになる。
【0039】
また、冷却システムは、抽出された物質の物理化学特性の損失を防ぐ。
【0040】
提案された装置および方法の効率を実証するために、セネデスムス・オブリカス(Scenedesmus obliquus)BR003株の細胞破砕を、本発明によって行った。細胞破砕を調べるために、フローサイトメーター(BD FACSVerse,BD Biosciences社製)を用いてフローサイトメトリー分析を行った。分析の結果、127.5 kgf/cm(125 bar)の圧力での5回の通過サイクルが、細胞構造に損傷を引き起こすのに十分であり、コントロール(破砕なし)と比較して、細胞の相対的な大きさを約50%減少させることが明らかになった(FSC‐前方散乱光、図2)。
【0041】
さらに、細胞の相対的な大きさに加えて、パラメーターSSCによって観察された、顆粒度(granulosity)の減少もあった(SSC‐側方散乱光、図2)。このパラメーターは、粒子内部の複雑性、例えば、核の形状、細胞質顆粒の数や種類、および膜の粗さによって異なる。このため、このパラメーターの減少は、細胞断片(破片)を生じるインタクトな細胞の数が減少したことを示す。表1に示す統計分析は、10~40回の装置通過回数の変動によって、相対的な細胞の大きさに有意差が生じないことを示した。
【表1】
【0042】
表1に示すFSC指数は、細胞の大きさに関係することに留意されたい。SSCは細胞内部の複雑さに関係し、SDとVCとはそれぞれ標準偏差と変動係数(%)とに相当する。
【0043】
本出願の保護範囲においては、種々の変形が可能である。このことは、本発明が、上述した特定の構成または実施形態に限定されない、という事実を補強する。
図1
図2