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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】シトラール含有組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20230727BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20230727BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230727BHJP
   A23L 29/25 20160101ALI20230727BHJP
【FI】
A23L27/00 D
C11B9/00 J
A23L5/00 H
A23L29/25
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019090977
(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公開番号】P2020174651
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】虫明 優一
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-518091(JP,A)
【文献】特表2008-543831(JP,A)
【文献】特開2012-255153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00
C11B 9/00
A23L 5/00
A23L 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項4】
請求項1記載のシトラール含有組成物を含む飲食品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シトラール残存率を向上させたシトラール含有組成物及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
シトラールは、レモンやオレンジ等の果実、レモングラスやレモンバーム等のハーブ、ショウガ等の香辛料に含まれる香気成分であり、爽快なレモン様の香味を呈し、様々な飲食品の嗜好性を高める目的で使用されている。しかしながら、シトラールは、比較的安定性が低く、熱や光等の影響によって経時的に減少するため、シトラールの安定性を向上させることを目的として種々の検討がなされている。
【0003】
特許文献1には、カキノキ科カキノキ属植物の果実又は未熟果由来のタンニン又は該タンニン精製物を含有することを特徴とする食品の香味劣化抑制剤が記載されており、特許文献2には、茶ポリフェノールを香味劣化抑制剤として含有することを特徴とする柑橘系フレーバー組成物が記載されている。また、特許文献3には、シトラールと、ブドウ種子抽出物、ビルベリー抽出物、アムラ抽出物、ルブス抽出物、赤ワインもろみ抽出物及びクランベリー抽出物から選択される一種又は二種以上の混合物であるシトラール分解抑制剤とを含んでなる柑橘類果実様香味組成物が記載されているが、依然としてシトラールの経時的な減少を、より効果的に抑制する方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4632598号公報
【文献】特開2003-096486号公報
【文献】特許第6198907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、シトラールの経時的な減少を抑制したシトラール含有組成物及びその製造方法、並びに該組成物を使用した調味料又は飲食品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、シトラール含有物に、ポリフェノールを含むアカシアガムを含有させることによって、シトラールの経時的な減少を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]の態様に関する。
[1]シトラール及びポリフェノール含有アカシアガムを含む乳化物であって、シトラール100重量部に対して、アカシアガム由来ポリフェノールを15~100重量部含み、乳化物乾燥品の40℃、28日間保存後のシトラール残存率が保存前の75%以上である、シトラール含有組成物。
[2]アカシアガムのポリフェノール含量が0.1重量%以上である、[1]記載のシトラール含有組成物。
[3]シトラール及びポリフェノール含有アカシアガムを含む乳化物であって、シトラール100重量部に対して、アカシアガム由来ポリフェノールを15~100重量部含み、乳化物乾燥品の40℃、28日間保存後のシトラール残存率が保存前の75%以上である、シトラール含有組成物の製造方法。
[4]アカシアガムのポリフェノール含量が0.1重量%以上である、[3]記載のシトラール含有組成物の製造方法。
[5][1]又は[2]記載のシトラール含有組成物を含む調味料又は飲食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、シトラールの経時的な減少を強く抑制することができ、シトラールの香味を長期間保持することができるため、長期間保存においても、力価の高い爽快なレモン様の香味を有するシトラール含有組成物、並びに該組成物を使用した調味料又は飲食品を提供することができる。また、該シトラール含有組成物を製造できる製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のシトラール含有組成物は、シトラール及びポリフェノール含有アカシアガムを含む乳化物で、シトラール100重量部に対して、アカシアガム由来ポリフェノールを15~100重量部、好ましくは17~100重量部、より好ましくは20~100重量部含む。これによって、シトラールの経時的な減少を強く抑制することができ、シトラールの香味を長期間保持することができる。
【0010】
本発明のシトラール及びポリフェノール含有アカシアガムを含む乳化物は、シトラール、ポリフェノール含有アカシアガム及び水を乳化処理する工程を含む製造方法で得られ、液状品でもよく、乾燥品でもよいが、乾燥品の方がより強くシトラールの減少を抑制できる。乾燥は、本発明の組成物が得られれば特に限定されないが、噴霧乾燥、真空乾燥及び/又は凍結乾燥等が例示でき、噴霧乾燥が好ましい。
【0011】
本発明で行う乳化処理は、原料全体を100重量%とした場合に、水を20~90重量%含むのが好ましく、25~80重量%含むのがより好ましく、30~70重量%含むのがさらに好ましい。また、原料全体を100重量%とした場合に、ポリフェノール含有アカシアガムを2~70重量%含むのが好ましく、5~60重量%含むのがより好ましく、10~50重量%含むのがさらに好ましい。また、原料全体を100重量%とした場合に、シトラールを0.01~2重量%含むのが好ましく、0.02~1重量%含むのがより好ましく、0.05~0.5重量%含むのがさらに好ましい。乳化処理は、前記成分を混合し、均質化すればよく、一般的な乳化方法で行うことができる。詳細には、乳化装置を用いて行うことができ、高圧ホモジナイザー、コロイドミル、超音波乳化機、ホモミキサー、ホモディスパー等を例示でき、二種類以上の装置を組み合わせてもよい。
【0012】
シトラールは、爽快なレモン様の香味を呈し、ゲラニアールとネラールとして存在しているが、本発明のシトラールは、特に限定されず、レモン、ライム、オレンジ等の果実、レモングラス、レモンバーム等のハーブ、ショウガ等の香辛料に含まれる香気成分が例示でき、該植物由来のシトラールを含む香料を用いることができる。
【0013】
本発明に用いるポリフェノール含有アカシアガムは、ポリフェノールを含有するアカシアガムであれば特に限定されないが、好ましくは0.10重量%以上、より好ましくは0.12~2重量%、さらに好ましくは0.15~1重量%のポリフェノールを含有するアカシアガムで、アカシアガム製品であるFIBREGUM(登録商標) B及びFIBREGUM TANが例示できる。該製品は、一般的に安定剤として利用されるINSTANTGUM AAとは異なり、通常、食物繊維として利用されている。該ポリフェノールを含有するアカシアガムは、元々アカシアガムに含まれているポリフェノールを含有するものであって、アカシアガム由来ポリフェノール以外のポリフェノールをアカシアガム製品に含有させたものでは、本発明の効果は得られない。また、本発明のアカシアガムは、アラビノガラクタンタンパク質等のタンパク質を含んでおり、タンパク質含量は特に限定されないが、元々含まれる含量であって、一般的な約2重量%の含量が例示でき、1~5重量%程度含むのが好ましい。
【0014】
本発明のシトラール含有組成物は、シトラールにポリフェノール含有アカシアガムを含ませることで、シトラールの経時的な減少を強く抑制することができ、シトラールの香味を長期間保持できるが、乳化物を乾燥させた乳化物乾燥品について、40℃、28日間保存後のシトラール残存率が保存前の75%以上であるのが好ましく、77%以上であるのがより好ましく、80%以上であるのがさらに好ましい。また、50℃、14日間保存後のシトラール残存率が保存前の81%以上であるのが好ましく、82%以上であるのがより好ましく、83%以上であるのがさらに好ましい。
【0015】
本発明のシトラール含有組成物は、上記のとおり、ポリフェノール含有アカシアガムを適量用いて乳化物とすることで、力価の高い爽快なレモン様の香味を長期間保持しているシトラール含有組成物が得られ、該組成物を調味料や各飲食品に使用することにより該香味を長期間保持する調味料又は各飲食品を提供できる。調味料及び飲食品は特に限定されないが、ドレッシング、シーズニングパウダー、非アルコール飲料、アルコール飲料等の飲料、アイスクリーム等の冷菓、クッキー、ケーキ等の洋菓子、ヨーグルト等の乳製品、飴類、ジャム、フィリング、チップス、揚げ菓子等が例示できる。
【実施例
【0016】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。尚、本発明において、残存率以外の%は別記がない限り全て重量%である。
【実施例1】
【0017】
(1.アカシアガム中のポリフェノール含有量の測定)
本実施例に用いるアカシアガム製品3品(INSTANTGUM AA、FIBREGUM B、FIBREGUM TAN、何れも炭水化物含有量:80%以上、ネキシラ株式会社製)について、フォーリン・チオカルト法にて、ポリフェノール含有量(没食子酸換算)を測定した。結果を表1に示した。
【0018】
【表1】
【0019】
(2.シトラール含有パウダーの調製:各種抗酸化成分のシトラールへの影響)
アカシアガムとしてINSTANTGUM AA 188gとFIBREGUM B 92gを水道水490gに溶解させた後、濃縮レモン果汁(固形分:42%、雄山株式会社製)190g、柑橘香料A(シトラール含有量:3.0%、池田糖化工業株式会社製)40gを加えて、高圧ホモジナイザーを用いて乳化処理(40MPa)することにより、シトラール含有レモン乳化液950gを得た。次に、得られたシトラール含有レモン乳化液の一部を、スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥することにより、シトラール含有レモンパウダー(実施品1)50gを得た。パウダー中の配合比率、シトラール含有量、各アカシアガム由来ポリフェノール含有量、アカシアガム由来ポリフェノールの合計及びシトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールの比率を表2に示した。
【0020】
FIBREGUM B 92gの代わりに、粉末還元麦芽糖(レシス(登録商標)、三菱商事フードテック株式会社製)92g(比較例1-1)、粉末還元麦芽糖86g及び抗酸化剤としてビタミンE(理研Eオイル(登録商標)600N、理研ビタミン株式会社製)6g(比較例1-2)、粉末還元麦芽糖87g及び抗酸化剤として酵素処理ルチン(αGルチン、東洋精糖株式会社製)5g(比較例1-3)、粉末還元麦芽糖90g及び抗酸化剤として酵素処理ヘスペリジン(αGヘスペリジン、東洋精糖株式会社製)2g(比較例1-4)、粉末還元麦芽糖89g及び抗酸化剤としてL-アスコルビン酸ナトリウム(渡辺ケミカル株式会社製)3g(比較例1-5)、又は粉末還元麦芽糖89g及び抗酸化剤として茶カテキン(サンフェノン(登録商標)EGCG-OP、太陽化学株式会社製)3g(比較例1-6)を使用し、それ以外は[0019]と同様の工程で製造し、各シトラール含有レモンパウダー(比較品1-1~1-6)50gを得た。パウダー中の配合比率、シトラール含有量、各アカシアガム由来ポリフェノール含有量、アカシアガム由来ポリフェノールの合計及びシトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールの比率を表2に示した。
【0021】
[評価試験1]
実施品1、比較品1-1~1-6について40℃、28日間の保存加速試験を実施し、シトラール含有量を指標として各シトラール含有レモンパウダーの経時変化を確認した。なお、シトラール含有量は、HPLCを用いて、以下の方法で測定した。結果を表2に示した。
<HPLC測定条件>
・検出器:UV検出器(240nm)
・カラム:InertSustain C18(内径4.6mm、長さ250mm)
・移動相:40%メタノール水溶液から80%メタノール水溶液へグラジエント
・流速:0.8ml/分
・カラム温度:40℃
・標品:シトラール(純度>96%、東京化成工業株式会社製)をメタノールに溶解して検量線を作成した。
・検体:各試料をジメチルスルホキシドに溶解した後、適宜希釈したもの。
【0022】
【表2】
【0023】
シトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールの比率が24.0%である実施品1では、40℃、28日間の保存後もシトラール含有量が高く、保存前の91.1%という高い残存率だった。一方で、シトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールの比率が12.7%である比較品1-1、及び比較品1-1にさらに各種抗酸化剤を添加した比較品1-2~1-6では、実施品1に比べ、保存後にシトラール含有量の低下がみられ、残存率も保存前の67.6~73.1%と、実施品1より低かった。
【0024】
よって、シトラールとアカシアガムとを含むシトラール含有レモンパウダーにおいて、アカシアガム由来ポリフェノールをシトラールに対して24.0%含ませた方が、乾燥物中のシトラールをより安定に保つことができ、シトラールの減少を抑制できることが分かった。さらに、アカシアガムを使用してシトラール含有レモンパウダーを調製しても、シトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールの比率が低い場合や、アカシアガム以外のポリフェノールやその他抗酸化物質を含有させた場合は、効果は限定的であり、アカシアガム由来ポリフェノールを一定量含有させることが、シトラールの減少抑制に重要であることが分かった。
【実施例2】
【0025】
(3.シトラール含有乳化液の調製:シトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノール比率の影響)
アカシアガムとしてFIBREGUM B 230gを水道水577gに溶解させた後、濃縮レモン果汁(固形分:42%)160g、柑橘香料B(シトラール含有量:4.5%、池田糖化工業株式会社製)33gを加えて、高圧ホモジナイザーを用いて乳化処理(40MPa)することにより、シトラール含有レモン乳化液(実施品2-1)950gを得た。乳化液中の固形物の配合比率、シトラール含有量、各アカシアガム由来ポリフェノール含有量、アカシアガム由来ポリフェノールの合計及びシトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールの比率を表3に示した。
【0026】
FIBREGUM B 230gの代わりに、FIBREGUM TAN 230g(実施例2-2)、FIBREGUM B 164g及びINSTANTGUM AA 66g(実施例2-3)、FIBREGUM B 115g及びINSTANTGUM AA 115g(実施例2-4)、又はINSTANTGUM AA 230g(比較例2)を使用し、それ以外は[0025]と同様の工程で製造し、各シトラール含有レモン乳化液(実施品2-2~2-4及び比較品2)950gを得た。乳化液中の固形物の配合比率、シトラール含有量、各アカシアガム由来ポリフェノール含有量、アカシアガム由来ポリフェノールの合計及びシトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールの比率を表3に示した。
【0027】
[評価試験2]
実施品2-1~2-4及び比較品2について80℃、2時間の保存加速試験を実施し、シトラール含有量を指標として各シトラール含有レモン乳化液の経時変化を確認した。なお、シトラール含有量は、評価試験1と同様の方法で測定した。結果を表3に示した。
【0028】
【表3】
【0029】
シトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールの比率が17.9~84.0%である実施品2-1~2-4の方が、該比率が12.4%である比較品2に比べ、80℃、2時間保存後の乳化液中のシトラール残存率が高かった。
【0030】
よって、シトラールとアカシアガムとを含むシトラール含有レモン乳化液において、アカシアガム由来ポリフェノールをシトラールに対して15%以上含ませることで、乳化液中でもシトラールを安定に保つことができ、シトラールの減少を抑制できることが分かった。
【実施例3】
【0031】
(4.シトラール含有パウダーの調製:シトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノール比率の影響)
実施品2-1、2-3及び比較品2のシトラール含有レモン乳化液の一部を、スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥することにより、シトラール含有レモンパウダー(実施品3-1、3-2及び比較品3)50gを得た。アカシアガム由来ポリフェノールの合計及びシトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールの比率を表4に示した。
【0032】
[評価試験3]
実施品3-1、3-2及び比較品3について50℃、14日間の保存加速試験を実施し、シトラール含有量を指標として各シトラール含有レモンパウダーの経時変化を確認した。なお、シトラール含有量は、評価試験1と同様の方法で測定した。結果を表4に示した。
【0033】
【表4】
【0034】
シトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールの比率が23.3又は20.2%である実施品3-1又は3-2では、50℃、14日間の保存後もシトラール含有量が高く、保存前の90.5%又は83.8という高い残存率だった。一方で、シトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールの比率が12.4%である比較品3では、実施品3-1又は3-2に比べ、保存後にシトラール含有量の低下がみられ、残存率も保存前の73.0%と、実施品3-1又は3-2より低かった。
【0035】
よって、シトラールとアカシアガムとを含むシトラール含有レモンパウダーにおいて、アカシアガム由来ポリフェノールをシトラールに対して20%以上含ませることで、乾燥物中のシトラールをより安定に保つことができ、シトラールの減少を抑制できることが分かった。
【実施例4】
【0036】
(5.アカシアタンニン中のポリフェノール含有量の測定)
アカシア由来のポリフェノールとしてアカシアタンニン(川村通商株式会社製)について、フォーリン・チオカルト法にて、ポリフェノール含有量(没食子酸換算)を測定した。結果を表5に示した。
【0037】
【表5】
【0038】
(6.シトラール含有パウダーの調製:各ポリフェノール成分のシトラールへの影響)
アカシアガムとしてFIBREGUM B 230gを水道水577gに溶解させた後、濃縮レモン果汁(固形分:42%)160g、柑橘香料B(シトラール含有量:4.5%)33gを加えて、高圧ホモジナイザーを用いて乳化処理(40MPa)することにより、シトラール含有レモン乳化液950gを得た。次に、得られたシトラール含有レモン乳化液の一部を、スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥することにより、シトラール含有レモンパウダー(実施品4)50gを得た。パウダー中の配合比率、シトラール含有量、各アカシアガム由来ポリフェノール含有量、アカシアガム由来ポリフェノールの合計、シトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールの比率、アカシアガム由来ポリフェノールとその他ポリフェノールとの合計及びシトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールとその他ポリフェノールとの合計の比率を表6に示した。
【0039】
FIBREGUM B 230gの代わりに、INSTANTGUM AA 230g及びアカシアタンニン0.23g(比較例4-1)、INSTANTGUM AA 230g及びアカシアタンニン1g(比較例4-2)、又はINSTANTGUM AA 222g及びポリフェノールの一種であるプロトアントシアニジンを高含有するブドウ種子抽出物(プロトアントシアニジン83%以上、グラヴィノール(登録商標)、キッコーマンバイオケミファ株式会社製)8g(比較例4-3)を使用し、それ以外は[0038]と同様の工程で製造し、各シトラール含有レモン乳化液(比較品4-1~4-3)50gを得た。パウダー中の配合比率、シトラール含有量、各アカシアガム由来ポリフェノール含有量、アカシアガム由来ポリフェノールの合計、シトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールの比率、アカシアガム由来ポリフェノールとその他ポリフェノールとの合計及びシトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールとその他ポリフェノールとの合計の比率を表6に示した。
【0040】
[評価試験4]
実施品4及び比較品4-1~4-3について50℃、14日間の保存加速試験を実施し、シトラール含有量を指標として各シトラール含有レモンパウダーの経時変化を確認した。なお、シトラール含有量は、評価試験1と同様の方法で測定した。結果を表6に示した。
【0041】
【表6】
【0042】
シトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールの比率が23.3%である実施品4では、50℃、14日間の保存後もシトラール含有量が高く、保存前の90.5%という高い残存率だった。一方で、シトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールの比率12.4%に、さらにアカシアタンニンを添加して、シトラールに対するポリフェノールの合計が24.4%である比較品4-1、63.8%である比較品4-2では、実施品4に比べ、保存後にシトラール含有量の低下がみられ、残存率も保存前の72.2~77.6%と、実施品4より低かった。また、シトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールの比率12.0%に、さらにプロトアントシアニジンを高含有するブドウ種子抽出物を添加して、シトラールに対するポリフェノールの合計が455%以上である比較品4-3でも、実施品4に比べ、保存後にシトラール含有量の低下がみられ、残存率も保存前の80.2%と、実施品4より低かった。また、比較品4-3は、ブドウ種子抽出物の色の影響で、シトラール含有レモンパウダーが淡褐色になり、色の点からも製品化は困難と思われた。
【0043】
以上より、シトラールに対するアカシアガム由来ポリフェノールの比率が低いものに、最終的なポリフェノール比率が同等になるようアカシア由来のポリフェノールを別途添加しても、効果は限定的であり、また、シトラール分解抑制効果が知られているブドウ種子抽出物を、別途添加しても、アカシアガム由来ポリフェノールほどのシトラール減少抑制効果は見られず、アカシアガム由来ポリフェノールを一定量含有させることで、高いシトラール減少抑制効果が得られることが分かった。