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特許7320244きのこ栽培袋及びこれを用いたきのこの栽培方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】きのこ栽培袋及びこれを用いたきのこの栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 18/66 20180101AFI20230727BHJP
【FI】
A01G18/66
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019092128
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020184944
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】314001690
【氏名又は名称】株式会社 茸師
(74)【代理人】
【識別番号】100101823
【弁理士】
【氏名又は名称】大前 要
(74)【代理人】
【識別番号】100181412
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 康浩
(72)【発明者】
【氏名】高野 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】高野 康弘
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-131554(JP,A)
【文献】特開2015-154755(JP,A)
【文献】特開平10-084769(JP,A)
【文献】特開平10-033058(JP,A)
【文献】特開2007-228871(JP,A)
【文献】特開平09-098663(JP,A)
【文献】特開2015-006208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 18/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に略直方体状の菌床を収納するきのこ栽培袋において、
前記きのこ栽培袋は、上部に開口を有する袋本体を備え、
前記袋本体の正面および背面はそれぞれ、
1のフィルタと、
前記第1のフィルタよりも前記開口側に設けられた第2のフィルタと、
前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとの間に位置し、両者間の空気経路となる空気流通路と、を備え、
前記第1のフィルタは、雑菌の侵入を阻止するものであり、且つ通気性が前記第2のフィルタの通気性よりも低く、
前記菌床として、高さ16cm、幅20cm、奥行き13cmの菌床が収容される場合において、前記第1のフィルタは前記菌床の上面よりも前記開口側に位置するように設けられている、きのこ栽培袋。
【請求項2】
請求項1に記載のきのこ栽培袋において、
前記空気流通路は、前記袋本体の内面に貼りつけられたたわんだフィルムと前記袋本体との間に形成される、
ことを特徴とするきのこ栽培袋。
【請求項3】
請求項1または2に記載のきのこ栽培袋において、
前記第1のフィルタは、前記菌床の上面に平行な方向が長手の長方形状であり、
前記第2のフィルタは、前記菌床の上面に平行な方向が長手の長方形状であ
前記第1のフィルタの面積は、前記第2のフィルタの面積よりも大きい、
ことを特徴とするきのこ栽培袋。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれかに記載のきのこ栽培袋において、
前記菌床として、高さ16cm、幅20cm、奥行き13cmの菌床が収容される場合において、前記第1のフィルタは、前記菌床の上面からの距離が2.5~7.5cmである、
ことを特徴とするきのこ栽培袋。
【請求項5】
きのこ栽培袋の内部に略直方体状の菌床を収納して行うきのこの栽培方法において、
前記きのこ栽培袋は、上部に開口を有する袋本体を備え、
前記袋本体の正面および背面はそれぞれ、
第1のフィルタと、
前記第1のフィルタよりも前記開口側に設けられた第2のフィルタと、
前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとの間に位置し、両者間の空気経路となる空気流通路と、を備え、
前記第1のフィルタは、雑菌の侵入を阻止するものであり、且つ通気性が前記第2のフィルタの通気性よりも低いものであり、
前記きのこ栽培袋の内部に収納された菌床の上面よりも、前記第1のフィルタが前記開口側に位置する状態できのこの栽培を行う、きのこの栽培方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、きのこの菌床栽培に用いるきのこ栽培袋及びこれを用いたきのこの栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、きのこ類を栽培する方法としては、原木に種菌を接種して栽培する原木栽培法が用いられていたが、近年、より生産効率に優れた菌床栽培法が用いられるようになっている。
【0003】
菌床栽培法は、オガクズ等の基材に米糠等の栄養源を混合した菌床に種菌を接種して、きのこ類を栽培する方法である。
【0004】
菌床栽培法には、菌床の上面及び側面から子実体を発生させる普通栽培法と、菌床の上面からのみ子実体を発生させる上面栽培法とがある。上面栽培法は、普通栽培法に比べ、収穫作業が容易となる、菌床の設置間隔を狭めることができる等の利点がある。
【0005】
上面栽培法では、湿度管理がしやすいことから、菌床を収納する容器として袋状の容器が用いられている。以下に、袋状の容器を用いた上面栽培の工程例を説明する。
【0006】
まず、袋状の容器に、基材と栄養源とを混合してなる菌床を充填する。その後、菌床の殺菌を行い、その後菌床に種菌の接種を行う。この後、雑菌の侵入を阻止すべく袋を閉じた状態で湿度、温度を管理して、菌糸体の培養を行う。この後、袋状の容器の上側を開封し、ゴムを用いて開封縁を固定し、容器内に水を浸して菌床側面からの子実体発生を抑制して、菌床の上面(開封面)のみから子実体を発生させる。
【0007】
ところで、菌糸体の培養の際には、雑菌の混入を防止することが大事であるが、これ以外に新鮮な外気を袋内部に供給し続けることも重要である。
【0008】
図4は、従来のフィルタ付きキャップを用いたきのこ栽培袋の使用状態を示す斜視図である。従来では、図4に示すように、菌床20を収容する袋本体3に穴を開け、この穴に雑菌の混入を防ぎつつも空気の流通を可能とするフィルタ11を取り付けるとともに、袋本体3の上部開口をフィルタ付キャップ12で蓋をすることが行われていた。
【0009】
この技術では、新鮮な空気の流通に大きな問題はないものの、フィルタ付キャップ12で蓋をする作業に時間と手間がかかりすぎるため、経済的でないという問題がある。
【0010】
上記のフィルタ付キャップは手作業での取り付けが不可欠であるが、労働人口の減少により、きのこの栽培工程の自動化・機械化を行うことが求められてきている。このため、袋を封止する工程において、袋の開口を機械で溶着封止する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平8-299862号公報
【0012】
特許文献1は、雑菌の通過を遮断するフィルタと、水蒸気放出孔とを設ける技術である。この技術によると、きのこの栽培工程の自動化を実現できるとされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らがきのこ栽培の自動化について鋭意研究した結果、空気の流通量が不十分となると、菌糸体の成長が不十分となる結果、子実体(きのこ)の収量も低下してしまうという問題があることを知った。そして、上記特許文献1の技術では、新鮮な酸素の導入が不十分であり、きのこの収量の減少があることを知った。
【0014】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであって、きのこの収量を犠牲にすることなく、栽培工程の自動化が可能なきのこ栽培袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するためのきのこ栽培袋にかかる本発明は、内部に略直方体状の菌床を収納するきのこ栽培袋において、前記きのこ栽培袋は、上部に開口を有する袋本体を備え、前記袋本体の正面および背面はそれぞれ、1のフィルタと、前記第1のフィルタよりも前記開口側に設けられた第2のフィルタと、前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとの間に位置し、両者間の空気経路となる空気流通路と、を備え、前記第1のフィルタは、雑菌の侵入を阻止するものであり、且つ通気性が前記第2のフィルタの通気性よりも低く、前記菌床として、高さ16cm、幅20cm、奥行き13cmの菌床が収容される場合において、前記第1のフィルタは前記菌床の上面よりも前記開口側に位置するように設けられている
【0016】
図2に示すように、本発明にかかるきのこ栽培袋100は、上部に開口を、下部に溶着された底を有する袋本体3を備えている。この袋本体3は、正面、背面、及びマチ(図示せず)が設けられた左右側面を有している。このうち、正面および背面はそれぞれ、第1のフィルタ1と、第2のフィルタ2と、空気流通路と、が設けられている。
【0017】
きのこ栽培袋内では、菌糸の呼吸によって酸素が消費されて二酸化炭素と水とが発生し、且つ、発熱も起こる。これによって、二酸化炭素と水蒸気が増加した空気が熱によって上方(閉じられた開口側)へと移動する。本発明の構成では、この上昇気流がぶつかる袋の上部(開口側)に通気性の高い第2のフィルタが設けられているため、この第2のフィルタから二酸化炭素と水蒸気が増加した空気が袋外部に速やかに放出される。この空気の流れは、第1のフィルタと第2のフィルタとの間に位置する空気流通路によって確実に担保されており、確実な排気が可能となる。
【0018】
そして、この排気によって袋内部は陰圧となり、この結果通気性の低い第1のフィルタからゆっくりと新鮮な外気(排気よりも酸素を多く含む外気)が内部に導入される。この第1のフィルタは菌床に近い位置に設けられているので、新鮮な外気は速やかに菌床内の菌糸に供給される。この結果、フィルタ付キャップではなく開口部を機械で自動溶着する方法を採用しても、空気不足による菌糸体の発育不良が起こらず、収量の減少も起こらない。また、第1のフィルタは雑菌の混入を阻止するものであるため、雑菌の繁殖による菌糸の発育不良が起こることもない。
【0019】
また、菌床に近い側(低い位置)の第1のフィルタは、通気性が第2のフィルタよりも低くなっている。このため、第1のフィルタを通過する空気の流速を第2のフィルム側よりも遅くできるので、空気の流れによる菌床の乾燥を防止できる。なお、菌床が乾燥しすぎる場合にも、菌糸体の発育は阻害される。
【0020】
上記構成において、空気流通路は、袋本体の内面に貼りつけられたたわんだフィルムと袋本体との間に形成される構成とすることができる。袋本体の内面に、たわませたフィルムを張り付けることにより、簡便な手法で、たわんだフィルムと袋本体との間に、空気が流通可能な空気流通路を形成することができる。
【0021】
上記構成において、第1のフィルタは、菌床の上面に平行な方向が長手の長方形状であり、第2のフィルタは、菌床の上面に平行な方向が長手の長方形状である、構成とすることができる。このようにすることで、第1のフィルタ1から新鮮な空気をより多く菌床に供給でき、また第2のフィルタ2の排気効率が高まる。
【0022】
上記構成において、第1のフィルタの面積は、第2のフィルタの面積よりも大きい構成とすることができる。この構成を採用することにより、菌床側の第1のフィルタにおける空気の流速を、第2のフィルム側よりも遅く制御することがより容易となり、菌床の乾燥をより防止できる。
【0023】
上記構成において、第1のフィルタは、高さ16cm、幅20cm、奥行き13cmの菌床の上面からの距離が2.5~7.5cmである構成とすることができる。このようにすることで、新鮮な空気を菌床に供給しやすくなるとともに、第1のフィルタと菌床との接触を確実に防止できる。
上記課題を解決するためのきのこの栽培方法にかかる本発明は、きのこ栽培袋の内部に略直方体状の菌床を収納して行うきのこの栽培方法において、前記きのこ栽培袋は、上部に開口を有する袋本体を備え、前記袋本体の正面および背面はそれぞれ、第1のフィルタと、前記第1のフィルタよりも前記開口側に設けられた第2のフィルタと、前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとの間に位置し、両者間の空気経路となる空気流通路と、を備え、前記第1のフィルタは、雑菌の侵入を阻止するものであり、且つ通気性が前記第2のフィルタの通気性よりも低いものであり、前記きのこ栽培袋の内部に収納された菌床の上面よりも、前記第1のフィルタが前記開口側に位置する状態できのこの栽培を行う
【発明の効果】
【0024】
以上に説明したように、本発明によると、きのこ生産量の低下を招くことなく、栽培工程の自動化を行うことができるきのこ栽培袋を実現できる。また、従来のフィルタ付きキャップよりも空気の流通に優れたきのこ栽培袋の実現も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施の形態1にかかるきのこ栽培袋の使用状態を示す斜視図である。
図2図2は、実施の形態1にかかるきのこ栽培袋の正面透視図である。
図3図3は、実施の形態1にかかるきのこ栽培袋の空気流通路を説明する図である。
図4図4は、従来のフィルタ付きキャップを用いたきのこ栽培袋の使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態1)
本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明は下記の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することができる。
【0027】
図1は、実施の形態1にかかるきのこ栽培袋の使用状態を示す斜視図であり、図2は、実施の形態1にかかるきのこ栽培袋の正面透視図である。
【0028】
本実施の形態に係るきのこ栽培袋100は、内部に菌床を収納するものであり、図2に示すように上部に開口を有する袋本体3を備えている。そして、袋本体3の正面と背面にはそれぞれ、収容される菌床20の上面よりも上部(開口あるいは閉じられた開口側)に、雑菌の侵入を阻止する第1のフィルタ1が取り付けられている。また、第1のフィルタ1よりさらに上部に、第2のフィルタ2が取り付けられている。また、第1のフィルタ1と第2のフィルタ2との間の袋本体3には、空気流通路形成用のフィルム5が張り付けられている。また、第1のフィルタ1は、雑菌の侵入を阻止するもので通気性が第2のフィルタ2の通気性よりも低くなっている。使用時においては、図1に示すように、第2のフィルタ2の上部において、袋本体3の開口部が重ねあわされて、当該部分が溶着封止されている。
【0029】
袋内には、菌床内の菌糸の呼吸によって二酸化炭素と水とが発生し、且つ、発熱も起こる。これによって、二酸化炭素と水蒸気が増加した空気が熱によって上方へと移動する。上記の構成では、この上昇気流がぶつかる袋の上部に通気性の高い第2のフィルタが設けられているため、このフィルタから二酸化炭素と水蒸気が増加した空気が袋外部に放出される。
【0030】
そして、この空気の流れによって袋内部は陰圧となり、気圧差を解消するように第1のフィルタからゆっくりと新鮮な外気(排気よりも酸素を多く含む外気)が内部に導入される。この第1のフィルタは菌床に近い位置に設けられているので、新鮮な外気は速やかに菌床内の菌糸に供給される。この結果、開口部を機械で自動溶着する方法を採用しても、空気不足による菌糸の発育不良を防止できる。
【0031】
袋本体3は、従来使用している袋と同様でよい。材料としては、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等を使用でき、厚みはたとえば40~60μmとすることができる。
【0032】
第1のフィルタ1としては、雑菌の侵入を阻止するものであり、微細な孔が設けられた樹脂フィルムや樹脂繊維からなる不織布などを使用できる。たとえば、デュポン製のタイベック(登録商標)等を使用できる。
【0033】
第2のフィルタ2としては、微細な孔が設けられた樹脂フィルムや樹脂繊維からなる不織布などを使用できる。第2のフィルタ2は、排気がメインとなるために雑菌の侵入を阻止する機能はなくてもよい。また、孔の径の大きさや密度等を調整することにより、通気性を第1のフィルタ1よりも高める。たとえば、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムに微細な孔が設けられた、ポリエチレンフィルタやポリプロピレンフィルタ等を使用できる。第1のフィルタ、第2のフィルタの通気性は、必要とされる空気流通量やフィルタの面積などから適宜決定すればよい。
【0034】
これらのフィルタは、たとえば袋本体3に穴を設け、この穴をふさぐようにフィルタ材料を接着あるいは溶着することにより、袋本体3に取り付けることができる。図1、2では、フィルタ部分の大きいサイズの長方形はフィルタ材料を、小さいサイズの長方形は穴を、それぞれ示している。
【0035】
ここで、穴の長手方向の長さが長すぎると、接着や溶着の際にフィルタ材料や袋本体がたわんでしまい、接着や溶着のズレが起きてしまう可能性がある。穴の数を2以上としてフィルタが2か所以上に取り付けられる構成とすると、フィルタの長手方向の合計長さを確保しつつも、上記のようなズレを効果的に防止できる。穴の数は、取り付け工程での手間や、必要な長手方向のサイズなどを勘案して、適宜設定すればよく、2、3、4等とすることができる。また、フィルタ材料は複数の穴を同時に覆う構成でも個別に覆う構成でもよい。また、第1のフィルタ、第2のフィルタは、同数であることが好ましい。
【0036】
第1のフィルタ1、第2のフィルタ2ともに、正面側と背面側とが対称に設けられていることが好ましい。このようにすることで給気や排気が安定化する。
【0037】
第1のフィルタ1及び第2のフィルタ2の配置、形状や大きさなどは限定されることはなく、必要とする通気性から決定すればよい。第1のフィルタ1及び第2のフィルタ2の形状は、菌床の上面に平行な方向に長い長方形状であることが好ましい。このようにすることで、第1のフィルタ1から新鮮な空気をより多く速やかに菌床に供給できるとともに、第2のフィルタ2の排気効率も高まる。
【0038】
第1のフィルタ1は、好ましくは長さが5~10cm、高さが0.5~1.5cmの長方形状、より好ましくは長さが6~9.6cm、高さが0.6~1.3cmの長方形状、さらに好ましくは長さが7~9.2cm、高さが0.7~1.1cmの長方形状とする。
【0039】
第2のフィルタ2は、好ましくは長さが5~10cm、高さが0.2~1.2cmの長方形状、より好ましくは長さが6~9.6cm、高さ0.3~1.0cmの長方形状、さらに好ましくは長さが7~9.2cm、高さが0.4~0.8cmの長方形状とする。
【0040】
また、たとえば一般的な高さ16cm×幅20cm×奥行き13cmの菌床が収容される場合、第1のフィルタと菌床上面(袋本体と接する菌床上面部分)との距離は、2.5~7.5cmであることが好ましく、3.5~6.5cmであることがより好ましく、4.5~5.5cmであることがさらに好ましい。
【0041】
上記サイズの菌床が収容される場合、第2のフィルタ2と第1のフィルタ1との距離は、10~18cmであることが好ましく、11~17cmであることがより好ましく、13~15cmであることがさらに好ましい。
【0042】
上記サイズの菌床が収容される場合、一つの面(正面、背面の一方)に取り付けられる第1のフィルタ1の大きさは、9~23cm2であることが好ましく、11~21cm2であることがより好ましく、14~18cm2であることがさらに好ましい。
【0043】
また、上記サイズの菌床が収容される場合、袋本体の一つの面に取り付けられる第2のフィルタ2の大きさは、5~13cm2であることが好ましく、6~12cm2であることがより好ましく、8~10cm2であることがさらに好ましい。なお、第1、第2のフィルタの大きさは、フィルタの実効面積を意味し、袋本体に設けられた穴にフィルタ材料が取り付けられる構造の場合には、フィルタ材料の面積ではなく当該穴の面積(2以上の穴の場合にはその合計面積)を意味する。
【0044】
空気流通路は、第1のフィルタ1と第2のフィルタ2との間に位置するもので、菌床20内部での呼吸による、二酸化炭素を多く含み温度が高まった空気を、きのこ栽培袋の上部に導くことが可能なものである。
【0045】
空気流通路は、空気の流通が可能なものであればどのようなものでもよく、たとえば紙やプラスチックでできたストローのように、内部に空洞が設けられているものや、糸を撚ったり編んだりしてなる紐、細く切ったフェルトなどのように、両端部間を空気が移動可能な内部空間を有するもの等、内部を空気が移動可能な材料を利用できる。これらは、接着剤、熱融着などにより取り付けることができる。また、図3(a)に示すように、好ましくは袋本体3の内面に取りつけられたフィルム5からなるものとすることもできる。たとえばたわませたフィルム5の両端部を袋本体に溶着して溶着部5a・5aを形成すると、たわみによってフィルム5(溶着部5a・5aの間部分)と袋本体3との間に、空気が通過可能なストロー状の経路(空気流通路)4ができる。
【0046】
空気流通路4の幅(溶着部5a・5a間の距離)は、0.5~1.5cmとすることが好ましく、0.6~1.4cmとすることがより好ましく、0.8~1.2cmとすることがさらに好ましい。空気流通路4の高さは、0.1~0.5cmとすることが好ましく、0.15~0.45cmとすることがより好ましく、0.2~0.4cmとすることがさらに好ましい。
【0047】
空気流通路4は、袋本体の正面側と背面側とで重なる位置に設けてもよく、ずらした位置に設けてもよい。中でも、図3(b)に示すように、フィルム5は、正面側と裏面側とで、近接させつつも位置をずらして設けることが好ましい。このズレの大きさ(たわみ端部間の距離)は、たわみ空間の幅(図3(a)のフィルム5の溶着部5a・5a間の距離)の80~120%であることが好ましい。このようにすることで、菌床20上部の袋空間が狭まった場合でも、正面側のたわみ空間、背面側のたわみ空間とともに、たわみ空間の間の空隙も空気が流通できる経路(空気流通路)4として機能する(図3(b)参照)。
【0048】
また、このようなたわませたフィルム5は、滅菌作業の際に袋が畳まれるなどによって、袋本体の正面部分と背面部分とが近接した時に、これらが密着することを防止する機能も有する。
【0049】
また、第1のフィルタ、第2のフィルタがそれぞれ複数の場合、たわませたフィルム5も同様に複数、袋本体の正面側および背面側に取り付けることが好ましい。また、第1のフィルタ、第2のフィルタの数よりも多くのフィルムをとり付けたり、一つのフィルムを複数個所でたわませて取り付けたりしてもよい。
【0050】
また、このような空気流通路4は、上記サイズの菌床が収容される場合、袋の両端部から4~6cmの位置に少なくとも設けられることが好ましい。上記サイズの菌床20の場合、菌糸に空気を十分に供給するために、円柱状の穴が設けられることがある。この穴はたとえば、奥行き方向の中心であって幅方向の両端部から5.5cmの点を中心に、直径3cmのものが設けられる。上記のような配置であると、空気流通路と菌床の穴の位置が重なるため、効率的な排気に有利である。なお、これ以外の場所にも追加的に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上に説明したように、本発明によれば、きのこ栽培袋を用いた栽培工程の封止工程の自動化を行っても、空気の十分な流通が確保され、収量を犠牲にすることがない。したがって、産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0052】
1 第1のフィルタ
2 第2のフィルタ
3 袋本体
4 空気流通路
5 フィルム
11 フィルタ
12 フィルタ付キャップ
20 菌床
100 きのこ栽培袋
図1
図2
図3
図4