IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精密測器株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-排尿検知システム 図1
  • 特許-排尿検知システム 図2
  • 特許-排尿検知システム 図3
  • 特許-排尿検知システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】排尿検知システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/44 20060101AFI20230727BHJP
   A61F 13/42 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
A61F5/44 S
A61F13/42 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020048592
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021145886
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2021-06-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231590
【氏名又は名称】日本精密測器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】邵 徳林
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0116878(US,A1)
【文献】特表2018-512058(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0000659(US,A1)
【文献】特開2002-022688(JP,A)
【文献】特開2017-215209(JP,A)
【文献】登録実用新案第3040178(JP,U)
【文献】特開2016-071462(JP,A)
【文献】特開2019-130243(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0354546(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0110061(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/44
A61F 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
おむつ装用者が装用するおむつの含水状態を判定し、その判定結果に関する情報を出力する複数の水分検知センサと、
前記水分検知センサとの無線通信を介して、前記水分検知センサが出力する情報を受け取り、受け取った情報のモニタ出力を行う、各水分検知センサに対して共用される少なくとも一つの外部モニタ装置と、
を備え、
前記水分検知センサは、前記おむつの外面上または当該外面の近傍箇所に載置可能に構成されて、人が手に持って持ち運びできる可搬性を有し、電源を備え、当該電源により、前記おむつの外面上または当該外面の近傍箇所まで持ち運び載置させた状態で当該おむつの含水状態を判定するとともに、前記判定結果に関する情報を無線通信を介して送信するように構成され、
前記水分検知センサおよび前記外部モニタ装置は、通信距離が1m以下であって、互いの認証を要さずに通信可能となる近距離無線通信を介して情報の授受を行い、前記外部モニタ装置は、前記複数の水分検知センサのうち、前記外部モニタ装置の近くに配置された水分検知センサのみと無線通信を行い、他の水分検知センサとは無線通信を行わないように構成されている、 排尿検知システム。
【請求項2】
前記水分検知センサおよび前記外部モニタ装置は、前記各水分検知センサの配置間隔の1/2以下の通信距離の近距離無線通信を介して情報の授受を行うように構成されている
請求項に記載の排尿検知システム。
【請求項3】
前記外部モニタ装置は、前記モニタ出力を表示出力によって行うように構成されている
請求項1又は2に記載の排尿検知システム。
【請求項4】
前記外部モニタ装置は、前記モニタ出力を音出力によって行うように構成されている
請求項1からのいずれか1項に記載の排尿検知システム。
【請求項5】
前記おむつ装用者に関する情報を管理するサーバ装置を備え、
前記外部モニタ装置および前記サーバ装置は、無線通信を介して、前記外部モニタ装置によるモニタ出力の結果に関する情報を授受するように構成されている
請求項1からのいずれか1項に記載の排尿検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排尿検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
被介護者や幼児等のおむつ装用者が装用するおむつの濡れ具合は、介護者や保護者等が手で触れて確認することが一般的である。ただし、この手法では、確認するほうと確認されるほうの双方にとって、大きな負担を強いることになる。
【0003】
そのため、近年では、おむつに取り付けられたセンサによって、そのおむつの濡れ具合を検知する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-045613号公報
【文献】特開2018-023777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の濡れ検知技術では、センサが装着されたおむつを装用したり(例えば、特許文献1参照)、センサをおむつに内装しなければならない(例えば、特許文献2参照)。よって、広く一般に流通しているおむつ製品の利用やおむつ自体の交換頻度等を踏まえると、必ずしも利用者にとっての負担軽減が図れるとは限らない。
【0006】
本発明は、外方側からの非接触での濡れ検知を可能にし、これにより利用者にとっての負担軽減が図れる排尿検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために案出されたもので、
おむつ装用者が装用するおむつの含水状態を判定し、その判定結果に関する情報を出力する水分検知センサと、
前記水分検知センサとの無線通信を介して、前記水分検知センサが出力する情報を受け取り、受け取った情報のモニタ出力を行う外部モニタ装置と、
を備え、
前記水分検知センサは、可搬性を有し、かつ、前記おむつの外面上または当該外面の近傍箇所に配置可能に構成されているとともに、前記おむつの外面上または当該外面の近傍箇所に配置された状態で当該おむつの含水状態を判定するように構成されている
排尿検知システムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、おむつの外方側からの非接触での濡れ検知が可能となるので、排尿検知システムを利用する利用者にとっての負担軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る排尿検知システムの機能構成例を模式的に示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る水分検知センサの概略構成例を示す分解斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る排尿検知システムの利用態様の一例を模式的に示す説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係る水分検知センサにおける一対の電極の形成パターンの一具体例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
<1.水分検知センサの構成例>
まず、本実施形態に係る水分検知センサの構成例について説明する。
【0012】
水分検知センサは、被検査物の含水状態を判定するためのものである。「被検査物」は、含水状態の判定を必要とするものであれば特に限定されることはないが、例えば、おむつ装用者が装用するおむつが一具体例として挙げられる。以下、本実施形態では、被検査物がおむつである場合を例に挙げる。「含水状態」とは、被検査物の濡れ具合のことをいう。したがって、「含水状態を判定する」とは、被検査物がおむつであれば、そのおむつが乾いた状態であるか、または排尿等により濡れた状態であるかを判定することをいう。
【0013】
このような水分検知センサは、例えば、排尿検知システムにおいて用いられる。
図1は、本実施形態に係る排尿検知システムの機能構成例を模式的に示すブロック図である。図2は、本実施形態に係る水分検知センサの概略構成例を示す分解斜視図である。
【0014】
図1および図2に示すように、水分検知センサ10は、大別すると、センサ部11と、測定制御部12と、無線送信部13と、電源部14と、を備えて構成されている。
【0015】
(センサ部)
センサ部11は、絶縁材によって形成される配線基板11aと、その配線基板11aの同一面に所定の間隔を空けて並ぶように配置された一対の電極11b,11cと、を有して構成されている。一対の電極11b,11cは、導電性を有する金属材料(例えば、銅または銅合金)が配線基板11aの面上にパターニングされて形成されている。なお、各電極11b,11cの形成パターンについては、詳細を後述する。
【0016】
センサ部11を構成する配線基板11aは、詳細を後述する水分検知センサ10の使用状態において、一対の電極11b,11cの形成面が被検査物であるおむつ50と対向するように、そのおむつ50の外面51上または当該外面51の近傍箇所に配される。したがって、配線基板11aの同一面に形成される一対の電極11b,11cは、おむつ50の外面51上または当該外面51の近傍箇所に配された状態で、そのおむつ50に面して並ぶように位置することになる。
【0017】
(測定制御部)
測定制御部12は、例えばマイクロコンピュータによって構成されるもので、水分検知センサ10全体の動作を制御するものである。具体的には、測定制御部12は、予め設定された処理プログラムを実行することにより、マイクロコンピュータ(ハードウエア資源)と処理プログラム(ソフトウエア)とが協働して、測定部12aおよび制御部12bとしての機能を実現するように構成されている。
【0018】
測定部12aは、一対の電極11b,11cの一方に予め設定された一定な周波数を持つ交流信号を印加して、一対の電極11b,11cの間に電界を生じさせるとともに、その電界の発生によって一対の電極11b,11cの他方で得られる受信信号を受け取って、その受信信号の物理量(例えば電流値)を測定する機能である。交流信号の印加は、電極11bまたは電極11cのいずれか一方であれば、どちらに対して行ってもよい。受信信号は、交流信号が印加されない他方の電極11b,11cからの受け取るものとする。図1に示す例では、一方の電極11bに交流信号を印加し他方の電極11cで受信信号を受け取る場合を示している。
【0019】
測定部12aが交流信号を印加すると、一対の電極11b,11cの間には、電界が生じて、一方から他方への電荷の流れが発生する。電荷の流れは、一対の電極11b,11cが被検査物であるおむつ50に面して並ぶように位置している場合、そのおむつ50の内部を通ることになる。つまり、測定部12aは、センサ部11がおむつ50の外面51上または当該外面51の近傍箇所に配されている場合に、一対の電極11b,11cの間におむつ50を通る電界を生じさせるようになっている。
【0020】
制御部12bは、一対の電極11b,11cの他方による受信信号を基に、一対の電極11b,11cの間の空間インピーダンスを認識して、その認識結果から被検査物であるおむつ50の含水状態を判定する機能である。一対の電極11b,11cの他方で得られる受信信号の物理量(例えば電流値)の大きさは、一対の電極11b,11cの間の空間インピーダンスと相関する。そして、所定間隔で配置された一対の電極11b,11cの間の空間インピーダンスは、その間に位置する構成物質の特性と関係があり、構成物質の含水状態(すなわち、水分を含んでいるか否かや、どの程度の水分量を含んでいるか等)によって変化する。これらのことから、制御部12bは、受信信号の物理量(例えば電流値)の大きさに基づいて、電極11b,11c間の空間インピーダンスの変化を認識し、その認識結果から被検査物であるおむつ50の含水状態を判定するようになっている。
【0021】
なお、測定部12aおよび制御部12bによるおむつ50の含水状態判定の具体的な手法や手順等については、詳細を後述する。
【0022】
(無線送信部)
無線送信部13は、詳細を後述する外部モニタ装置20との無線通信を行うためのものであり、制御部12bによる判定結果に関する情報を外部モニタ装置20へ無線通信を介して送信するものである。なお、無線送信部13は、外部モニタ装置20との間で通信距離が短い近距離無線通信を行うようになっているが、その近距離無線通信については詳細を後述する。
【0023】
(電源部)
電源部14は、測定部12a、制御部12bおよび無線送信部13への電源供給を行うものである。電源部14としては、例えば、ボタン型電池等の一次電池を用いるができるが、これに限定されることはなく、充電可能な二次電池を用いるようにしても構わない。
【0024】
(筐体部)
また、水分検知センサ10は、図2に示すように、上述したセンサ部11、測定制御部12、無線送信部13および電源部14に加えて、これらを収容する筐体部15を備えて構成されている。
【0025】
筐体部15は、例えば樹脂材料によって無蓋有底容器状に形成された下側筐体部15aと、同じく樹脂材料によって下側筐体部15aの無蓋部分を覆うように形成された上側筐体部15bとを備えている。そして、下側筐体部15aおよび上側筐体部15bを組み合わせたときに形成される空間内に、センサ部11、測定制御部12、無線送信部13および電源部14を収容するように構成されている。
【0026】
また、筐体部15は、下側筐体部15aおよび上側筐体部15bを組み合わせ、これらによる空間内に各部11~14を収容した状態で、可搬性を有し、かつ、被検査物であるおむつ50の外面51上または当該外面51の近傍箇所に配置可能な形状に構成されている。ここでいう「可搬性」とは、人が手に持って容易に持ち運びできる性質のことである。おむつ50の「外面上」に配置可能とは、おむつ装用者がおむつ50を装用した状態において、そのおむつ50の外側を構成する面(すなわち外面)51上に接するように配置できることを意味する。また、おむつ50の外面51の「近傍箇所」に配置可能とは、おむつ装用者がおむつ50を装用した状態において、そのおむつ50に接することはないが、そのおむつ50から遠く離れることがない箇所、具体的には、例えば、おむつ装用者が着用する衣服の外面上、または、そのおむつ装用者が利用する寝具の外面上に配置できることを意味する。
【0027】
このような筐体部15は、例えば、外寸サイズが40mm~70mm×20mm~40mm×5mm~15mm程度の方形容器状のものとすることができる。ただし、かかる形状に限定されることはなく、他の形状に形成されたものであっても構わない。なお、本明細書において、「A~B」の表記は、A以上B以下を意味するものとする。
【0028】
<2.排尿検知システムの構成例>
次に、上述した構成の水分検知センサ10を用いて構成された排尿検知システムの構成例について説明する。
【0029】
排尿検知システムは、図1に示すように、水分検知センサ10に加えて、外部モニタ装置20と、サーバ装置30と、を備えて構成されている。
【0030】
図例では、水分検知センサ10および外部モニタ装置20のいずれも、それぞれ一つのみを備えている場合を示しているが、これに限定されるものではない。例えば、水分検知センサ10は、システム内に、一つのみならず、複数存在していても構わない。外部モニタ装置20は、システム内に少なくとも一つが存在していればよい。システム内に複数の水分検知センサ10が存在する場合に、各水分検知センサ10に対して、一つの外部モニタ装置20を共用するように構成することができる。ただし、これに限定されることはなく、システム内に複数の外部モニタ装置20が存在していても構わない。
【0031】
(外部モニタ装置)
外部モニタ装置20は、水分検知センサ10の無線送信部13との無線通信を介して、水分検知センサ10が出力する情報を受け取り、受け取った情報のモニタ出力を行うものである。水分検知センサ10から受け取る情報は、主として、水分検知センサ10の制御部12bによる含水状態の判定結果に関する情報であるが、それ以外の情報が含まれていてもよい。受け取った情報のモニタ出力は、表示出力または音出力の少なくとも一方によって行うものとする。表示出力としては、ディスプレイ画面上への画像表示出力や表示ランプによる点灯出力等の少なくとも一つが挙げられる。また、音出力としては、ブザー音出力や音声ガイダンス出力等の少なくとも一つが挙げられる。
【0032】
水分検知センサ10と外部モニタ装置20との間の無線通信は、通信距離が短い近距離無線通信によって行われる。具体的には、水分検知センサ10と外部モニタ装置20とは、通信距離が1m以下、好ましくは通信距離が10cm~80cm程度、より好ましくは通信距離が10cm~50cm程度である近距離無線通信を介して、情報の授受を行うように構成されている。なお、システム内において、複数の水分検知センサ10に対して少なくとも一つの外部モニタ装置20が供用される場合、各水分検知センサ10と外部モニタ装置20とは、詳細を後述するように、各水分検知センサ10の配置間隔の1/2以下の通信距離の近距離無線通信を介して、情報の授受を行うように構成されているものとする。
【0033】
また、水分検知センサ10と外部モニタ装置20との間の無線通信は、互いの認証を要さない無線通信によって行われる。具体的には、水分検知センサ10と外部モニタ装置20とは、ID認証手続やペアリング手続等といった互いの認証を要さずに、互いの間が通信可能となる無線通信を介して、情報の授受を行うように構成されている。
【0034】
このような無線通信としては、例えば、赤外線を利用して随時接続が可能となる赤外線通信が代表的なものとして挙げられる。ただし、これに限定されることはなく、通信距離が1m以下であり、互いの認証を要さずに通信可能となる無線通信であれば、他の方式による無線通信によって情報の授受を行うようにしても構わない。
【0035】
水分検知センサ10との近距離無線通信を行う外部モニタ装置20は、可搬性を有して構成されていることが好ましい。水分検知センサ10の配置箇所に対して、外部モニタ装置20を容易に近接させることができるようにするためである。なお、ここでいう「可搬性」とは、水分検知センサ10が有する可搬性と同義である。
【0036】
また、外部モニタ装置20は、水分検知センサ10との近距離無線通信を行う機能とは別に、サーバ装置30との間でも無線通信を行う機能を有しているものとする。サーバ装置30との間で行う無線通信については詳細を後述する。
【0037】
以上のような外部モニタ装置20としては、例えば、通信機能や情報出力機能等を有するスマートフォンやタブレット端末等の携帯情報端末装置を用いることができる。ただし、これに限定されることはなく、水分検知センサ10から受け取った情報のモニタ出力を行うことが可能であれば、例えば、ディスプレイ画面を有する腕時計型の情報端末装置を用いることもできる。また、外部モニタ装置20は、必ずしもディスプレイ画面等によるモニタ出力機能を有している必要はなく、例えば、表示ランプの点灯等によってモニタ出力を行う機能のみを有するものであってもよいし、スピーカからの音出力によってモニタ出力を行う機能のみを有するものであってもよい。
【0038】
(サーバ装置)
サーバ装置30は、おむつ装用者に関する情報を管理するためのものである。そのために、サーバ装置30は、外部モニタ装置20との間の無線通信を介して、その外部モニタ装置20によるモニタ出力の結果に関する情報を受け取り、その受け取った情報をデータベース化して記憶蓄積するように構成されている。このようなサーバ装置30をシステム内に備えていれば、おむつ装用者が複数存在する場合であっても、各おむつ装用者に関する情報を一括して、かつ、各おむつ装用者から離れた場所にて、管理することができるようになる。
【0039】
外部モニタ装置20とサーバ装置30との間の無線通信は、水分検知センサ10と外部モニタ装置20との間よりも通信距離が長い無線通信によって行われる。具体的には、外部モニタ装置20とサーバ装置30とは、例えば、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等のように、通信距離が10m~50m程度である無線通信を介して、情報の授受を行うように構成されている。
【0040】
以上のようなサーバ装置30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の組み合わせからなる演算部、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置、外部インタフェース等のデータ入出力部等といったハードウエア資源を備えて構成されたコンピュータ装置を用いて構成することができる。
【0041】
<3.排尿検知システムの利用態様>
次に、上述した構成の排尿検知システムの利用態様の一例について説明する。ここでは、排尿検知システムを、介護施設での介護支援のために利用する場合を例に挙げる。
【0042】
図3は、本実施形態に係る排尿検知システムの利用態様の一例を模式的に示す説明図である。
図例のように、介護施設では、複数のベッド61a,61b,61c…が用意され、各ベッド61a,61b,61c…において被介護者62a,62b,62c…が就寝するようになっている。各被介護者62a,62b,62c…は、いずれも、おむつ装用者であるものとする。
このような状況下で利用される排尿検知システムは、以下のような処理動作を行う。
【0043】
各被介護者62a,62b,62c…が就寝を開始するときに、各被介護者62a,62b,62c…の介護を担当する介護スタッフ63は、各被介護者62a,62b,62c…が装用するおむつ50a,50b,50c…の外面上に、水分検知センサ10a,10b,10c…を個別に配置する。水分検知センサ10a,10b,10c…の配置箇所は、必ずしもおむつ50a,50b,50c…の外面上である必要はなく、例えば、各被介護者62a,62b,62c…が着用する衣服の外面上、または、各被介護者62a,62b,62c…が利用する寝具の外面上といったように、おむつ50a,50b,50c…の外面の近傍箇所であってもよい。
【0044】
つまり、水分検知センサ10a,10b,10c…は、被介護者62a,62b,62c…の人体とは非接触で配置される。また、被介護者62a,62b,62c…が装用するおむつ50a,50b,50c…に予め装着しておく必要はなく、例えば被介護者62a,62b,62c…の就寝開始時に、おむつ、衣服または寝具等の外面上に載置するだけでよい。
【0045】
このように配置された各水分検知センサ10a,10b,10c…は、おむつ50a,50b,50c…の含水状態についての判定を行う。具体的には、水分検知センサ10a,10b,10c…は、一対の電極11b,11cの一方に交流信号を印加して、おむつ50a,50b,50c…の内部を通る電界を生じさせる。その状態で、被介護者62a,62b,62c…の排尿等があると、おむつ50a,50b,50c…を構成する吸水性ポリマーが水分を含むことになる。吸水性ポリマーが水分を含むと、水分を含まない状態に対して、おむつ50a,50b,50c…の内部における空間インピーダンスが大きく(例えば80倍程度に)変化する。したがって、水分検知センサ10a,10b,10c…は、電界の発生に応じて一対の電極11b,11cの他方で得られる受信信号について、その物理量(例えば電流値)の大きさを測定し、その測定結果から電極11b,11c間の空間インピーダンスの変化を認識すれば、おむつ50a,50b,50c…の内部の含水状態(すなわち、水分を含んでいるか否かや、どの程度の水分量を含んでいるか等)を判定することができる。つまり、各水分検知センサ10a,10b,10c…は、受信信号の物理量の大きさの測定結果について、予め設定された閾値を超える変化があると、おむつ50a,50b,50c…が含水した状態になったと判定する。
【0046】
以上のような判定処理を、各水分検知センサ10a,10b,10c…は、電源部14からの電源供給がある間、継続的に繰り返し行う。そして、判定処理を行う度に、その判定結果に関する情報(含水状態となった旨の情報、非含水状態である旨の情報等を含む。)を無線通信で送信する。
【0047】
つまり、水分検知センサ10a,10b,10c…は、被介護者62a,62b,62c…が装用するおむつ50a,50b,50c…の外面上または当該外面の近傍箇所に配置されている間、そのおむつ50a,50b,50c…の含水状態を被介護者62a,62b,62c…の人体とは非接触で判定し、その判定結果に関する情報を無線通信で送信し続けるのである。
【0048】
各被介護者62a,62b,62c…の就寝時において、各被介護者62a,62b,62c…の介護を担当する介護スタッフ63は、定期的に各被介護者62a,62b,62c…の間を巡回し、各被介護者62a,62b,62c…について一人々々順に近づいて様子を窺う。このとき、介護スタッフ63は、外部モニタ装置20を持って、巡回を行うものとする。
【0049】
各被介護者62a,62b,62c…に対して配置された各水分検知センサ10a,10b,10c…と、介護スタッフ63が持つ外部モニタ装置20とは、それぞれの間で無線通信を行うように構成されている。ただし、それぞれの間の無線通信は、通信距離が1m以下の近距離無線通信である。具体的には、通信距離が1m以下、好ましくは10cm~80cm程度、より好ましくは10cm~50cm程度である。つまり、外部モニタ装置20は、限られた通信距離の範囲内に位置するいずれかの水分検知センサ10a,10b,10c…のみと無線通信を行い、通信距離の範囲外に位置する他の水分検知センサ10a,10b,10c…とは無線通信を行わない。
【0050】
また、各水分検知センサ10a,10b,10c…と外部モニタ装置20との間の近距離無線通信は、各水分検知センサ10a,10b,10c…の配置間隔の1/2以下の通信距離のものである。具体的には、例えば各被介護者62a,62b,62c…が利用するベッド61a,61b,61c…の配置間隔が距離P(例えば2m)である場合、各被介護者62a,62b,62c…に対して配置される各水分検知センサ10a,10b,10c…の配置間隔も略距離Pとなるので、近距離無線通信は距離Pの半分(すなわちP×1/2)以下の通信距離であるものとする。
【0051】
このような通信距離の近距離無線通信を行えば、外部モニタ装置20は、介護スタッフ63によって近づけられた位置にある水分検知センサ10a,10b,10c…のみと無線通信を行うことになる。例えば、ある被介護者62bに介護スタッフ63が近づき、その被介護者62bに対して配置された水分検知センサ10bに介護スタッフ63が持つ外部モニタ装置20を近づけた場合、その外部モニタ装置20は、その被介護者62bに対して配置された水分検知センサ10bのみと無線通信を行い、他の水分検知センサ10a,10c…とは無線通信を行わない。そのため、同一フロアに複数のベッド61a,61b,61c…が存在し、当該フロアで複数の水分検知センサ10a,10b,10c…が用いられる場合であっても、外部モニタ装置20を持つ介護スタッフ63は、その外部モニタ装置20がどの水分検知センサ10bと無線通信を行っているのか、すなわち外部モニタ装置20での出力情報がどの被介護者62bについてのものであるかを、容易に把握することができる。
【0052】
また、各水分検知センサ10a,10b,10c…と外部モニタ装置20との間の無線通信は、互いの認証を要さない無線通信によって行われる。具体的には、各水分検知センサ10a,10b,10c…と外部モニタ装置20とは、水分検知センサ10a,10b,10c…との通信距離の範囲内に外部モニタ装置20を近づければ、ID認証手続やペアリング手続等といった認証手続を要さずに、互いの間の無線通信が確立される。そのため、介護スタッフ63にとっては、複数の被介護者62a,62b,62c…の様子を窺う場合であっても、煩雑な認証手続等を要することなく、外部モニタ装置20を持って水分検知センサ10a,10b,10c…に近づけるだけでよいので、非常に利便性に優れたものとなる。
【0053】
各水分検知センサ10a,10b,10c…と外部モニタ装置20との間の無線通信が確立されると、外部モニタ装置20には、通信相手となった水分検知センサ10a,10b,10c…から、おむつ50a,50b,50c…の含水状態の判定結果に関する情報が送信される。
【0054】
その場合に、各水分検知センサ10a,10b,10c…と外部モニタ装置20との間で上述したような無線通信を行えば、複数の水分検知センサ10a,10b,10c…のそれぞれが個別に情報送信を行う場合であっても、それぞれの情報を少なくとも一つの外部モニタ装置20で順次受け取ることができる。つまり、複数の水分検知センサ10a,10b,10c…に対して、少なくとも一つの外部モニタ装置20を共用することが可能となる。そのため、例えば、複数の被介護者62a,62b,62c…の介護を少なくとも一人の介護スタッフ63が担当する介護施設において用いる上で非常に好適である。
【0055】
水分検知センサ10a,10b,10c…が出力する情報を受け取ると、外部モニタ装置20は、受け取った情報のモニタ出力を行う。受け取った情報のモニタ出力は、表示出力または音出力の少なくとも一方によって行う。つまり、モニタ出力は、表示出力と音出力との両方によって行ってもよいし、いずれか一方のみによって行ってもよい。また、外部モニタ装置20を操作する介護スタッフ63が、表示出力と音出力とのどちらで行うかを選択し得るようにしてもよい。
【0056】
外部モニタ装置20がモニタ出力を行うと、そのモニタ出力を参照する介護スタッフ63は、被介護者62a,62b,62c…が装用するおむつ50a,50b,50c…の含水状態について、的確に把握することができる。その際に、介護スタッフ63は、外部モニタ装置20を水分検知センサ10a,10b,10c…に近づけるだけでよく、おむつ50a,50b,50c…に手で触れて確認する必要がないので、大きな負担を強いられることがない。また、水分検知センサ10a,10b,10c…にとっても、水分検知センサ10a,10b,10c…が人体と非接触で配置されるので、大きな負担を強いられることがない。
【0057】
そして、介護スタッフ63は、おむつ50a,50b,50c…の含水状態を的確に把握した上で、必要に応じて、おむつ交換等の適切な処置を行う。
【0058】
介護スタッフ63は、以上のような処理を、各被介護者62a,62b,62c…のそれぞれについて順次行う。そうすると、介護スタッフ63が持つ外部モニタ装置20は、各被介護者62a,62b,62c…についてのモニタ出力を順次行うことになる。
【0059】
その場合において、外部モニタ装置20は、モニタ出力を行う度に、モニタ出力の結果に関する情報を、無線通信でサーバ装置30へ送信する。このとき、外部モニタ装置20とサーバ装置30との間は、予めWi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等の無線通信が確立されているものとする。
【0060】
サーバ装置30は、外部モニタ装置20からモニタ出力の結果に関する情報が送信されてくると、その情報を受け取り、その受け取った情報をデータベース化して記憶蓄積する。具体的には、外部モニタ装置20から受け取ったモニタ出力の結果に関する情報を、その情報の受信日時情報や、その情報に係る被介護者62a,62b,62c…を識別するための識別情報等と対応付けて、サーバ装置30内の所定記憶領域に記憶蓄積する。
【0061】
これにより、排尿検知システムでは、複数の被介護者62a,62b,62c…が存在する場合であっても、各被介護者62a,62b,62c…に関する情報を一括して、かつ、各被介護者62a,62b,62c…から離れた場所にて、管理することができる。
【0062】
<4.含水状態判定の詳細>
次に、上述した一連の処理動作を行う排尿検知システムにおける水分検知センサ10(10a,10b,10c…)による含水状態判定の詳細について、さらに具体的に説明する。
【0063】
水分検知センサ10は、一対の電極11b,11cの間におむつ50を通る電界を生じさせる。このとき、例えば、一対の電極11b,11cの間の空間を構成する物質が空気であれば比誘電率が1.0程度であるが、その空間を構成する物質が水であると比誘電率が80程度となる。つまり、水分の有無によって、比誘電率が80倍程度異なる。したがって、一対の電極11b,11cの間の空間では、水分の有無によって、電極11b,11c間のキャパシタンスに違いが生じ、電極11b,11c間のインピーダンス(電荷の流れやすさ)に変化が生じることになる。
【0064】
この性質を利用して、水分検知センサ10は、一対の電極11b,11cの間に電界を生じさせて得られる受信信号の物理量(例えば電流値)の大きさを測定し、その測定結果から一対の電極11b,11cの間の空間のインピーダンスを認識する。そして、インピーダンスの認識結果から、被検査物であるおむつ50の含水状態を判定するようになっている。
【0065】
おむつ50の含水状態の判定は、以下のように行えばよい。
例えば、受信信号の電流値の大きさについて予め閾値を設定しておき、電流値の測定結果が閾値を超えていれば、被検査物であるおむつ50が乾いた状態であると判定するが、電流値の測定結果が閾値以下であれば、当該おむつ50が排尿等により濡れた状態であると判定する。
また、例えば、受信信号の電流値の大きさとおむつ50の濡れ具合についての指標(例えば、含水率値)との対応関係を予め閾値を設定しておき、電流値の測定結果を濡れ具合についての指標に換算した上で、その指標のモニタ出力結果をおむつ50の含水状態の判定結果とする。
このような含水状態の判定結果は、外部モニタ装置20に送信されてモニタ出力される。
【0066】
ところで、被検査物がおむつ50である場合、水分検知センサ10は、被介護者62が装用した状態のおむつ50について、空間インピーダンスの認識および含水状態の判定を行う必要がある。その場合に、水分検知センサ10は、空間インピーダンスの認識にあたり、一対の電極11b,11cの間に生じさせる電界について、図1に示すように、おむつ50の内部を通ることになるが、そのおむつ50を装用する被介護者62の人体については通らないようにするべきである。被介護者62の人体は水分を多く含んで構成されるため、電界が人体内を通ってしまうと、おむつ50の含水状態について、正しく判定できないおそれが生じてしまうからである。つまり、一対の電極11b,11cの間では、被介護者62が装用した状態のおむつ50の含水状態の判定に適した範囲に電界を生じさせるべきである。
【0067】
このことから、水分検知センサ10は、被介護者62が装用した状態のおむつ50の含水状態の判定に適した範囲に電界を生じさせるように、一対の電極11b,11cの間隔および測定部12aが印加する交流信号の周波数が設定されている。さらに詳しくは、一対の電極11b,11cの間に生じさせる電界がおむつ50の内部を通り、かつ、そのおむつ50を装用する被介護者62の人体には届かないように、一対の電極11b,11cの間隔および測定部12aが印加する交流信号の周波数が設定されている。
【0068】
具体的には、水分検知センサ10は、一対の電極11b,11cの間隔が、例えば、1mm~5mm、好ましくは2mm~4mm、より好ましくは2.5mm~3.5mmに設定されている。また、水分検知センサ10は、測定部12aが印加する交流信号の周波数が、例えば、1MHz~3MHz、好ましくは1.5MHz~2.5MHz、より好ましくは2MHz程度に設定されている。このように設定された水分検知センサ10は、センサ部11における配線基板11aの電極形成面から垂直な方向に向けて1mm~8mm程度の範囲(すなわち、限られた範囲内のみ)に電界を生じさせる。
【0069】
これにより、水分検知センサ10は、被介護者62が装用するおむつ50の外面51上または当該外面51の近傍箇所に配置された状態で、そのおむつ50の含水状態の判定に適した範囲(すなわち、おむつ50の内部を通り、かつ、そのおむつ50を装用する被介護者62の人体には届かない範囲)に電界を生じさせることになる。つまり、上述した設定の水分検知センサ10は、排尿検知システムを構成する上で非常に好適なものとなる。
【0070】
また、被検査物がおむつ50である場合、水分検知センサ10は、被介護者62が装用するおむつ50の外面51上または当該外面51の近傍箇所に配置されて用いられるので、被介護者62等への負担を軽減すべく、極力小型に形成されていることが好ましい。ただし、小型に形成されている場合であっても、おむつ50の含水状態判定のための空間インピーダンス認識については、感度よく行われるべきである。
【0071】
インピーダンスの検出感度は、所定の間隔を空けて並ぶ一対の電極11b,11cの並列長さ(各電極11b,11cが並ぶ部分の延伸長さ)と相関する。例えば、各電極11b,11cの並列長さが長いほど、インピーダンスの検出感度が良好となる。ただし、単に各電極11b,11cの並列長さを長くしたのでは、水分検知センサ10の小型化に反する事態を招いてしまう。
【0072】
このことを踏まえ、水分検知センサ10における一対の電極11b,11cは、以下のような形成パターンで配線基板11aの面上に配置されている。
【0073】
図4は、本実施形態に係る水分検知センサにおける一対の電極の形成パターンの一具体例を示す説明図である。
【0074】
図4に示すように、水分検知センサ10における一対の電極11b,11cは、いずれも、対となる相手電極と並行に延びる直線部11d,11eと、当該直線部11d,11eが延びる方向を変換する角部11f,11gと、の組み合わせによって構成されている。具体的には、一方の電極11bは、三辺の直線部11dと二つの角部11fとの組み合わせによって、一方側が開放されたチャンネル断面のようなコの字状の形成パターンで構成されている。また、他方の電極11cは、五辺の直線部11eと五つの角部11gとの組み合わせによって、四方形を描くように配置された四辺の直線部11eの領域内に一辺の直線部11eが配置されてなる形成パターンで構成されている。そして、各電極11b,11cは、一方の電極11bの開放部分に他方の電極11cにおける一辺の直線部11eが嵌合するような態様の形成パターンで、それぞれが配置されている。
【0075】
このような形成パターンで配線基板11aの面上に配置された一対の電極11b,11cは、互いの間隔Sを担保しつつ、各電極11b,11cの並列長さ(各電極11b,11cが並ぶ部分の延伸長さ)を十分に確保することが可能となる。しかも、各電極11b,11cの並列長さを十分に確保しても、角部11f,11gを有する形成パターンで各電極11b,11cが構成されていれば、各電極11b,11cを限られた面積の配線基板11aの面上に収めて配置することが可能となる。
【0076】
したがって、上述した形成パターンで構成された一対の電極11b,11cであれば、良好なインピーダンスの検出感度を実現しつつ、水分検知センサ10を小型化する上で非常に好適なものとなる。つまり、良好な検出感度実現とセンサ小型化という相反する事項を両立させることが可能となる。
【0077】
<5.本実施形態の効果>
本実施形態によれば、以下に述べる一つまたは複数の効果を奏する。
【0078】
(a)本実施形態において、排尿検知システムは、可搬性を有する水分検知センサ10と、その水分検知センサ10と無線通信を行う外部モニタ装置20とを備えており、水分検知センサ10がおむつ50の外面51上または当該外面51の近傍箇所に配置された状態で当該おむつ50の含水状態を判定するように構成されている。つまり、水分検知センサ10は、おむつ50の外方側から非接触での濡れ検知を行い、外部モニタ装置20は、無線通信を介して水分検知センサ10からの情報を受け取ってモニタ出力する。したがって、本実施形態によれば、おむつ50を装用する被介護者62について非接触での濡れ検知が可能となり、またモニタ出力結果を参照することで被介護者62が装用するおむつ50の濡れ具合を介護スタッフ63が確認できるので、被介護者62や介護スタッフ63等の負担を軽減することができる。つまり、排尿検知システムを利用する利用者にとっての負担軽減を図ることができる。
【0079】
(b)本実施形態において、排尿検知システムでは、水分検知センサ10と外部モニタ装置20とが、通信距離が1m以下である近距離無線通信を介して情報の授受を行うように構成されている。これにより、外部モニタ装置20は、近づけられた位置にある水分検知センサ10のみと無線通信を行い、他の水分検知センサ10とは無線通信を行わないことになる。そのため、例えば、同一フロアで複数の水分検知センサ10が用いられる場合であっても、外部モニタ装置20からのモニタ出力が、どの水分検知センサ10からのものか、すなわちどの被介護者62についてのものであるかを、容易に把握することができる。つまり、水分検知センサ10と外部モニタ装置20とが近距離無線通信を行うように構成されていれば、特に同一フロアで複数の水分検知センサ10が用いられる場合に非常に好適であり、そのような場合における利用者にとっての負担軽減を確実に図ることができる。
【0080】
(c)本実施形態において、排尿検知システムでは、水分検知センサ10と外部モニタ装置20とが、互いの認証を要さずに通信可能となる無線通信を介して情報の授受を行うように構成されている。これにより、外部モニタ装置20は、ID認証手続やペアリング手続等といった認証手続を要さずに、水分検知センサ10との無線通信を行うことができる。したがって、煩雑な認証手続等を要することなく、外部モニタ装置20でのモニタ出力が可能となるので、非常に利便性に優れたものとなり、この点でも利用者にとっての負担軽減が図れる。
【0081】
(d)本実施形態において、排尿検知システムでは、複数の水分検知センサ10に対して、少なくとも一つの外部モニタ装置20が共用されるようになっている。そのため、例えば、複数の被介護者62の介護を少なくとも一人の介護スタッフ63が担当する介護施設において用いる上で非常に好適となり、この点でも利用者にとっての負担軽減が図れる。
【0082】
(e)本実施形態において、排尿検知システムでは、水分検知センサ10と外部モニタ装置20とが、各水分検知センサ10の配置間隔の1/2以下の通信距離の近距離無線通信を介して情報の授受を行うように構成されている。そのため、例えば、同一フロアで複数の水分検知センサ10が用いられる場合であっても、各水分検知センサ10との無線通信が混信してしまうおそれを排除することができる。つまり、外部モニタ装置20からのモニタ出力が、どの水分検知センサ10からのものかを、確実に把握できるようになる。このことは、特に同一フロアで複数の水分検知センサ10が用いられる場合に非常に好適であり、そのような場合における利用者にとっての負担軽減を確実に図ることができる。
【0083】
(f)本実施形態において、排尿検知システムでは、外部モニタ装置20がモニタ出力を行うと、そのモニタ出力を参照することで、おむつ50の含水状態を的確に把握することができる。その場合に、外部モニタ装置20がモニタ出力を表示出力によって行えば、おむつ50が水分を含んでいるか否かの情報の出力のみならず、おむつ50がどの程度の水分量を含んでいるか等の情報の出力についても、容易に対応することが可能となる。つまり、比較的多くの情報量を出力可能な点で有用である。また、外部モニタ装置20がモニタ出力を音出力によって行えば、例えば夜間のような暗い環境下であっても、モニタ出力を参照する介護スタッフ63に対して確実に情報を報知することが可能となる。
【0084】
(g)本実施形態において、排尿検知システムは、サーバ装置30を備えており、外部モニタ装置20がモニタ出力の結果に関する情報をサーバ装置30に送信するように構成されている。そのため、外部モニタ装置20からの情報をサーバ装置30がデータベース化して記憶蓄積すれば、排尿検知システムでは、複数の被介護者62が存在する場合であっても、各被介護者62に関する情報を一括して、かつ、各被介護者62から離れた場所にて、管理することができる。
【0085】
(h)本実施形態において、水分検知センサ10は、一対の電極11b,11cの間に被検査物であるおむつ50を通る電界を生じさせ、各電極11b,11cの間の空間インピーダンスを認識しておむつ50の含水状態を判定するように構成されている。かかる構成の水分検知センサ10を用いれば、おむつ50の外方側からの非接触での濡れ検知が可能となる。したがって、本実施形態によれば、水分検知センサ10を利用する利用者にとっての負担軽減を図ることができる。具体的には、例えば、センサが装着されたおむつを装用したり、センサをおむつに内装したりすることなく、おむつ50の濡れ検知を非接触で行えるので、広く一般に流通しているおむつ製品の利用等が可能となり、これにより利用者にとっての負担軽減が図れる。また、非接触での濡れ検知が可能となるので、被介護者62や介護スタッフ63等の負担を軽減することができ、この点でも利用者にとっての負担軽減が図れる。
【0086】
(i)本実施形態において、水分検知センサ10は、含水状態の判定結果に関する情報を、外部モニタ装置20へ無線通信を介して送信するように構成されている。つまり、含水状態の判定を行う水分検知センサ10と、その判定結果に関する情報のモニタ出力を行う外部モニタ装置20とが、それぞれ別体で構成されている。したがって、水分検知センサ10の大型化等を抑制しつつ、外部モニタ装置20が可搬性を有するように構成することが可能となるので、これらを利用する利用者にとっての利便性が非常に優れたものとなり、この点でも利用者にとっての負担軽減が図れる。
【0087】
(j)本実施形態において、水分検知センサ10は、筐体部15が可搬性を有しており、被検査物であるおむつ50の外面51上または当該外面51の近傍箇所に配置可能な形状に構成されている。したがって、必要に応じて(例えば、被介護者の就寝時のみに)水分検知センサ10をおむつ50の外面51上まで持ち運んで配置するといった態様での利用が可能となるので、利用者にとっての利便性が非常に優れたものとなり、この点でも利用者にとっての負担軽減が図れる。
【0088】
(k)本実施形態において、水分検知センサ10は、被検査物であるおむつ50の含水状態の判定に適した範囲に電界を生じさせるように、一対の電極11b,11cの間隔および測定部12aが印加する交流信号の周波数が設定されている。したがって、例えば、被介護者62が装用した状態のおむつ50について含水状態の判定を行う場合であっても、その判定を正しく行うことが可能となる。つまり、水分検知センサ10の利用態様を踏まえた上で、含水状態の判定を精度よく行うことが実現可能となる。
【0089】
(l)本実施形態において、水分検知センサ10における一対の電極11b,11cは、対となる相手電極と並行に延びる直線部11d,11eと、当該直線部11d,11eが延びる方向を変換する角部11f,11gと、の組み合わせによって構成されている。このような形成パターンで構成された一対の電極11b,11cであれば、良好なインピーダンスの検出感度を実現しつつ、水分検知センサ10を小型化する上で非常に好適なものとなる。つまり、良好な検出感度実現とセンサ小型化という相反する事項を両立させることが可能となる。
【0090】
(m)本実施形態において、水分検知センサ10が含水状態を判定する対象となる被検査物は、おむつ装用者が装用するおむつ50である。おむつ50の濡れ具合は、おむつ装用者にとっての快適性に大きな影響を及ぼす。この点、本実施形態の水分検知センサ10を用いれば、おむつ装用者に負担を感じさせることなく、おむつ50の含水状態を判定できるので、おむつ装用者にとっての利便性が非常に優れたものとなる。
【0091】
<6.変形例等>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0092】
上述の実施形態では、排尿検知システムにおいて、複数の水分検知センサ10(10a,10b,10c…)に対して一つの外部モニタ装置20を共用する場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。例えば、排尿検知システムは、複数の外部モニタ装置20を備えて構成されたものであってもよい。また、排尿検知システムは、一つの水分検知センサ10と、一つの外部モニタ装置20と、を備えて構成されたものであってもよく、そのように構成された場合であっても、排尿検知システムを利用する利用者にとっての負担軽減を図ることができる。
【0093】
また、上述の実施形態では、排尿検知システムを介護施設での介護支援のために利用する場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。例えば、排尿検知システムは、託児施設の幼児や医療施設の入院患者等のために利用するものであってもよい。
【0094】
また、上述の実施形態では、水分検知センサ10による含水状態判定の対象となる被検査物がおむつ50である場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。つまり、水分検知センサ10は、おむつ50以外の他の被検査物について、含水状態の判定を行うものであってもよい。他の被検査物の一具体例としては、例えば、電車等における座席の座面が挙げられる。電車等における座席の座面について、水分検知センサ10を用いて含水状態の判定を行えば、電車等の車内清掃者にとっての負担軽減が図れるようになる。
【0095】
また、上述の実施形態では、水分検知センサ10がおむつ50の含水状態の判定に適した範囲に電界を生じさせるように、一対の電極11b,11cの間隔および測定部12aが印加する交流信号の周波数が設定されている場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。つまり、一対の電極11b,11cの間隔および測定部12aが印加する交流信号の周波数は、含水状態判定の対象となる被検査物に応じて適宜設定されたものであればよい。水分検知センサ10における一対の電極11b,11cの形成パターンについても同様であり、本発明が上述の実施形態で説明した形成パターンに限定されることはなく、含水状態判定の対象となる被検査物や筐体部15の外寸サイズ等に応じて適宜設定されたものであればよい。
【0096】
<5.本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0097】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
おむつ装用者が装用するおむつの含水状態を判定し、その判定結果に関する情報を出力する水分検知センサと、
前記水分検知センサとの無線通信を介して、前記水分検知センサが出力する情報を受け取り、受け取った情報のモニタ出力を行う外部モニタ装置と、
を備え、
前記水分検知センサは、可搬性を有し、かつ、前記おむつの外面上または当該外面の近傍箇所に配置可能に構成されているとともに、前記おむつの外面上または当該外面の近傍箇所に配置された状態で当該おむつの含水状態を判定するように構成されている
排尿検知システムが提供される。
【0098】
(付記2)
好ましくは、
前記水分検知センサおよび前記外部モニタ装置は、通信距離が1m以下である近距離無線通信を介して情報の授受を行うように構成されている
付記1に記載の排尿検知システムが提供される。
【0099】
(付記3)
好ましくは、
前記水分検知センサおよび前記外部モニタ装置は、互いの認証を要さずに通信可能となる無線通信を介して情報の授受を行うように構成されている
付記1または2に記載の排尿検知システムが提供される。
【0100】
(付記4)
好ましくは、
複数の前記水分検知センサと、
各水分検知センサに対して共用される少なくとも一つの前記外部モニタ装置と、
を備える付記1から3のいずれか1態様に記載の排尿検知システムが提供される。
【0101】
(付記5)
好ましくは、
前記水分検知センサおよび前記外部モニタ装置は、前記各水分検知センサの配置間隔の1/2以下の通信距離の近距離無線通信を介して情報の授受を行うように構成されている
付記4に記載の排尿検知システムが提供される。
【0102】
(付記6)
好ましくは、
前記外部モニタ装置は、前記モニタ出力を表示出力によって行うように構成されている
付記1から5のいずれか1態様に記載の排尿検知システムが提供される。
【0103】
(付記7)
好ましくは、
前記外部モニタ装置は、前記モニタ出力を音出力によって行うように構成されている
付記1から6のいずれか1態様に記載の排尿検知システムが提供される。
【0104】
(付記8)
前記おむつ装用者に関する情報を管理するサーバ装置を備え、
前記外部モニタ装置および前記サーバ装置は、無線通信を介して、前記外部モニタ装置によるモニタ出力の結果に関する情報を授受するように構成されている
付記1から5のいずれか1態様に記載の排尿検知システムが提供される。
【0105】
(付記9)
本発明の他の一態様によれば、
被検査物の外面上または当該外面の近傍箇所に配された状態で前記被検査物に面して並ぶように位置する一対の電極と、
前記一対の電極の一方に交流信号を印加して前記一対の電極の間に前記被検査物を通る電界を生じさせる測定部と、
前記一対の電極の他方による受信信号を基に前記一対の電極の間の空間インピーダンスを認識して前記被検査物の含水状態を判定する制御部と、
を備える水分検知センサが提供される。
【0106】
(付記10)
好ましくは、
前記制御部による判定結果に関する情報を外部モニタ装置へ無線通信を介して送信する無線送信部
を備える付記9に記載の水分検知センサが提供される。
【0107】
(付記11)
好ましくは、
前記測定部、前記制御部および前記無線送信部への電源供給を行う電源部と、
前記一対の電極、前記測定部、前記制御部、前記無線送信部および前記電源部を収容する筐体部と、
を備え、
前記筐体部は、可搬性を有し、かつ、前記被検査物の外面上または当該外面の近傍箇所に配置可能な形状に構成されている
付記10に記載の水分検知センサが提供される。
【0108】
(付記12)
好ましくは、
前記被検査物の含水状態の判定に適した範囲に前記電界を生じさせるように、前記一対の電極の間隔および前記交流信号の周波数が設定されている
付記9から11のいずれか1態様に記載の水分検知センサが提供される。
【0109】
(付記13)
好ましくは、
前記一対の電極は、対となる相手電極と並行に延びる直線部と、当該直線部が延びる方向を変換する角部と、の組み合わせによって構成されている
付記9から12のいずれか1態様に記載の水分検知センサが提供される。
【0110】
(付記14)
好ましくは、
前記被検査物は、おむつ装用者が装用するおむつである
付記9から13のいずれか1態様に記載の水分検知センサが提供される。
【符号の説明】
【0111】
10,10a,10b,10c…水分検知センサ、11…センサ部、11a…配線基板、11b,11c…一対の電極、11d,11e…直線部、11f,11g…角部、12…測定制御部、12a…測定部、12b…制御部、13…無線送信部、14…電源部、15…筐体部、20…外部モニタ装置、30…サーバ装置、50,50a,50b,50c…おむつ(被検査物)51…外面、62,62a,62b,62c…被介護者(おむつ装用者)、63…介護スタッフ
図1
図2
図3
図4