(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】ペット用リード
(51)【国際特許分類】
A01K 27/00 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
A01K27/00 C
(21)【出願番号】P 2020074579
(22)【出願日】2020-04-20
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】520139594
【氏名又は名称】河野 やよい
(74)【代理人】
【識別番号】100122552
【氏名又は名称】松下 浩二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【氏名又は名称】柿原 希望
(72)【発明者】
【氏名】河野 やよい
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-080254(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0251639(US,A1)
【文献】特開2009-273370(JP,A)
【文献】登録実用新案第3021836(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0090196(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側に持ち手を有したメインリードと、先端側にペットの首輪又はハーネスに接続する接続手段を有した掛止側リードとを備えたペット用リードにおいて、前記掛止側リードは、1本の紐状部材の両端側に接続手段が対で設けられて、一方が前記首輪に接続され、他方が前記ハーネス又は第2の前記首輪に接続されるものであり、前記メインリードは、1本の紐状部材の先端側に設けたリング状金具が前記掛止側リードの中間部分を長手方向に遊動自在に挿通されて前記掛止側リードに接続されており、前記2つの接続手段又はその基端側部分の径が前記リング状金具のリング内径よりも大きく、前記リング状金具が前記掛止側リードの両端側から脱抜しないものとされている、ことを特徴とするペット用リード。
【請求項2】
基端側に持ち手を有したメインリードと、先端側にペットの首にかける首輪部及びペットの首輪又はハーネスに接続する接続手段を有した掛止側リードとを備えたペット用リードにおいて、前記掛止側リードは、1本の紐状部材の一端側で紐状部材を投げ縄式に締まる輪状にした首輪部が設けられ他端側に前記首輪又は前記ハーネスに接続する接続手段が設けられており、前記メインリードは、1本の紐状部材の先端側に設けたリング状金具が前記掛止側リードの中間部分を長手方向に遊動自在に挿通されて前記掛止側リードに接続されており、前記接続手段又はその基端側部分の径及び前記首輪部の基端側部分の径が前記リング状金具のリング内径よりも大きく、前記リング状金具が前記掛止側リードの両端側から脱抜しないものとされている、ことを特徴とするペット用リード。
【請求項3】
前記メインリードの基端側は紐状部材が2本に分岐した構造とされて、前記分岐した一方が前記紐状部材を輪状に形成した手で把持するための主持ち手とされ、他方が前記紐状部材の端部側を投げ縄式に締まる輪状に形成した手首に掛けるための補助持ち手とされている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載したペット用リード。
【請求項4】
前記補助持ち手は、その基端側が、前記主持ち手の先端側に捻れを解消するスイベル構造を備えた金具を介して接続されている、ことを特徴とする請求項3に記載したペット用リード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット用リードに関し、殊に、犬等のペットと外出する際に、ペットの逃走を防止する機能を有したペット用リードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、犬や猫等のペットを飼う世帯が増えているが、散歩中に首輪が抜けたり首輪からリードが外れたりして、ペットが逃走して事故を起こしてしまう事例が多発している。また、
図8に示すように、首輪の代わりにペットの胸回りと首回りの両方に装着するハーネス3も普及しているが、これを用いた場合も同様に逃走事故が発生している。
【0003】
このような逃走事故の原因として、ペットと外出する際に使用する首輪、ハーネス及びリードは多種多様のものが市販されているところ、一般の飼い主にとってはこれらの特性を理解しながらペットの体格・特性に合ったものを選ぶことが実際には難しく、また、的確なものを選んでもそのサイズ調整が適正でないとペットが後ずさりすることで首輪やハーネスが容易に外れてしまうことが知られている。また
図8に示したように、リード1Cの先端には掛止するためのスナップ部と捻れを解消するためのスイベル部を有したナスカン26が設けられており、これをハーネス3の掛止リング30や首輪に接続して使用している状況で、ナスカン26のスナップ部開口部分を閉止するスライド棒が開いて外れたりスイベル部が破損したりして、リード1Cがハーネス3や首輪から外れてしまう場合もある。
【0004】
これに対し、ペットホテル業や動物保護活動団体等においては、
図9に示すようにハーネス3と首輪4にリード1Cを各々接続したり、
図10に示すように2本の首輪4,4の両方にリード1Cを各々接続したり、或いは投げ縄式に締まるチョークとハーネス3又は首輪4の組合せにリード1Cを各々接続したりして、Wリードの状態で犬等の散歩を実施することも多い。これにより、首輪4とハーネス3、一組の首輪4,4、チョークとハーネス3又は首輪4の組合せにおけるいずれか一方に過剰な負荷がかかることを防止して、ペットへの負荷を軽減しながら接続金具の破損を回避するとともに、一方のナスカン26が外れても他方のナスカン26が掛止状態を維持するバックアップとして機能するためペットの逃走を確実に防止することができる。
【0005】
しかしながら、このようにWリードの状態にして散歩を実施することは、一般の飼い主にとってはリードの扱いが難しくなるため、かえって逃走事故に繋がってしまう場合もある。例えば、散歩中にペットが排便をした場合には、一方の手で糞の処理をしながら他方の手で2本のリードを持つことになるが、糞の処理に気をとられると2本のリードを充分な力で持つことができず、少し引かれただけでリードを手放してしまう結果となりやすい。また、Wリードの状態でペットが興奮して回転動作を行うと、2本のリードが捻れながら絡み合ってしまい、その捻れを解く際にペットに逃走されるリスクを生じてしまう。
【0006】
このような問題に対し、実用新案登録第3187998号公報には、
図11に示すように、ハーネス3の掛止リング30に掛けたリード1Cのナスカン26を、首輪4から延設した紐部材45の先端に設けた掛止リング41にも掛止させる2点掛止式のものが提案されており、リード1Cが1本であることで扱いが容易になることに加え、首輪4とハーネス3の両方に負荷を分散させながら、ペットが回転動作をしてもナスカン26で捻れを解消することができる。
【0007】
ところが、このように1本のリード1Cで首輪4とハーネス3の両方に掛止して接続する方式においても、ペットを引く角度によっては首輪4かハーネス3のいずれか一方に負荷が大きくかかる場合があり、また、スナップ部のあるナスカン26を使用しているため、そのスナップ部で掛止リング30,41が不意に外れてしまう心配もある。さらに、一般的な飼い主においては、糞の処理の際にリードを手放してしまうリスクが充分には解消されていないと言わざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、ペット用リードについて、その扱いを難しくすることなくペットの逃走を防止できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、基端側に持ち手を有したメインリードと、先端側にペットの首輪又はハーネスに接続する接続手段を有した掛止側リードとを備えたペット用リードにおいて、その掛止側リードは、1本の紐状部材の両端側に接続手段が対で設けられて、一方が首輪に接続され他方がハーネス又は第2の首輪に接続されるものであり、そのメインリードは、1本の紐状部材の先端側に設けたリング状金具が掛止側リードの中間部分を長手方向に遊動自在に挿通されて掛止側リードに接続されており、前記2つの接続手段又はその基端側部分の径がリング状金具のリング内径よりも大きく、リング状金具が掛止側リードの両端側から脱抜しないものとされている、ことを特徴とするものとした。
【0011】
このように、首輪とハーネス、又は2本の首輪に掛止して接続する2点掛止式のペット用リードにおいて、両端側の接続手段でハーネスと首輪又は2本の首輪の各々に接続する掛止側リードと、持ち手を有したメインリードとの組合せからなるものとして、メインリード先端側に設けたリング状金具を掛止側リードの中間部分に挿通させて遊動自在の状態で両者を接続したことにより、首輪とハーネスの両者に対し負荷が均等にかかりやすくしながらWリードよりも扱いやすいものとなり、且つ、リング状金具が掛止側リードの両端側から抜けないようにしたことで、一方の接続手段が外れた場合でも、他方の接続手段を接続したまま全体として1本の長いリードとして機能するため、ペットの逃走を確実に回避可能なものとなる。
【0012】
或いは、基端側に持ち手を有したメインリードと、先端側にペットの首にかける首輪部及びペットの首輪又はハーネスに接続する接続手段を有した掛止側リードとを備えたペット用リードにおいて、その掛止側リードは、1本の紐状部材の一端側で紐状部材を投げ縄式に締まる輪状にした首輪部が設けられ他端側に首輪又はハーネスに接続する接続手段が設けられており、そのメインリードは、1本の紐状部材の先端側に設けたリング状金具が掛止側リードの中間部分を長手方向に遊動自在に挿通されて掛止側リードに接続されており、前記接続手段又はその基端側部分の径及び首輪部の基端側部分の径がリング状金具のリング内径よりも大きく、リング状金具が掛止側リードの両端側から脱抜しないものとされている、ことを特徴とするものとしても、上述したペット用リードと同様の機能を発揮可能なものとなる。
【0013】
また、上述したペット用リードにおいて、そのメインリードの基端側は紐状部材が2本に分岐した構造とされて、分岐した一方が紐状部材を輪状に形成した手で把持するための主持ち手とされ、他方が紐状部材の端部側を投げ縄式に締まる輪状に形成した手首に掛けるための補助持ち手とされている、ことを特徴としたものとすれば、糞の処理等の際にペットに不意に引かれて主持ち手を放してしまっても、手首に掛けた補助持ち手の輪状構造が締まって脱落しないことから、メインリードを手放してしまう事態を回避することができる。
【0014】
この場合、その補助持ち手は、その基端側が、主持ち手の先端側に捻れを解消するスイベル構造を備えた金具を介して接続されている、ことを特徴としたものとすれば、リード先端側のスイベルで捻れを解消していた従来技術ではスイベルの破損で逃走事故が発生しやすかったのに対し、2つの持ち手でペットに逃走されるリスクを回避しながら補助持ちのスイベル構造でリードの捻れを解消することができる。
【発明の効果】
【0015】
メインリード先端側に設けたリング状金具を掛止側リードの中間部分に挿通して遊動自在に接続した本発明によると、リードの扱いを難しくすることなく、ペットの逃走を確実に防止可能なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明における第1の実施の形態のペット用リードの特徴部分を示す平面部分図である。
【
図2】
図1のペット用リードを使用している状態を示す側面部分図である。
【
図3】
図1のペット用リードを使用している他の状態を示す側面部分図である。
【
図4】本発明における第2の実施の形態のペット用リードの特徴部分を示す平面部分図である。
【
図5】
図4のペット用リードを使用している状態を示す側面部分図である。
【
図6】
図4のペット用リードを使用している他の状態を示す側面部分図である。
【
図7】
図1及び
図4のペット用リードに共通する持ち手側の構成の一例を示す平面部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態であるペット用リード1Aの特徴部分を示している。このペット用リード1Aは、犬や猫等のペットを連れて外出する際に使用するものであり、基端側に図示しない持ち手を有したメインリード10と、先端側にペットの首輪又はハーネスに接続する接続手段であるナスカン22,23を有した掛止側リード20Aとを備えている2点掛止式のリードである。
【0019】
その掛止側リード20Aは、1本の紐状部材21の両端側に、接続手段として鈎状金具の基端側にスイベル構造を有したナスカン22,23が対で設けられたものであるが、
図2に示すように、一方がペットに装着したハーネス3の接続リング30に接続され他方がペットに装着した首輪4の接続リング40に接続されるか、
図3に示すように、ペットに装着した2本の首輪4,4の各々に接続されるようになっている。
【0020】
一方、メインリード10は、1本の紐状部材の先端側に設けたリング状金具(丸カン)12が、掛止側リード20Aの中間部分を長手方向遊動自在に挿通されて掛止側リード20Aに接続されており、その2つのナスカン22,23及びその基端側の連結補強部220,230の径が、リング状金具12のリング内径よりも大きいことにより、リング状金具12が掛止側リード20Aの両端側から脱抜しないものとされており、この点が本発明における最大の特徴部分となっている。
【0021】
即ち、首輪4とハーネス3又は2本の首輪4,4に各々掛止して接続する2点掛止式のペット用リードを、両端側のナスカン22,23でハーネス3と首輪4又は2本の首輪4,4に各々接続する掛止側リード20Aと、持ち手を有したメインリード10の組合せからなるものとして、メインリード10先端側に設けたリング状金具12を、掛止側リード20Aの中間部分に挿通させて遊動自在の状態で両者を接続したことにより、首輪4とハーネス3又は2本の首輪4,4の各々に負荷が均等にかかりやすくして、ペットに対し過剰な負荷がかからないようにしているとともに、接続手段であるナスカン22,23の破損を生じにくいものとしている。
【0022】
また、このように、リング状金具12が遊動する掛止側リード20Aの両端側から抜けない構成を採用したことにより、一方の接続手段が外れた場合でも、他方の接続手段を接続したままの状態で全体として1本の長いリードとして機能することから、ペット用リード1Aの持ち手を持っていれば、ペットの逃走を確実に回避することができる。
【0023】
図4は、本発明における第2の実施の形態であるペット用リード1Bの特徴部分を示している。本実施の形態のペット用リード1Bは、基端側に図示しない持ち手を有したメインリード10と、先端側にペットの首にかける首輪部25及びペットの首輪4又はハーネス3に接続する接続手段としてのナスカン27を有した掛止側リード20Bとを備えた2点掛止式のリードである。
【0024】
図5を参照して、その掛止側リード20Bは、その一端側に紐状部材24の末端に形成したリング状金具250に挿通しながら投げ縄式に締まる輪状にした首輪部(チョーク)25を備えて、これをペットの首に掛けるようになっており、他端側には接続手段として鈎状金具の基端側にスイベル構造を有したナスカン27を設けてあり、これをハーネス3に接続した状態を示している。
【0025】
一方、メインリード10は、1本の紐状部材11の先端側に設けたリング状金具12が、掛止側リード20Bの中間部分を長手方向に遊動自在に挿通されて掛止側リード20Bに接続されており、ナスカン27とその基端側の連結補強部270の径及び首輪部25基端側(リング状金具250)の径が、リング状金具12の内径よりも大きく、掛止側リード20Bの両端側からリング状金具12が脱抜しないものとされており、上述したペット用リード1Aと同様の逃走防止機能を発揮可能なものとなっている。
【0026】
殊に、本実施の形態においては、掛止側リード20Bの一端側に投げ縄式に締まる機能を有した首輪部25を備えているところ、メインリード10先端側のリング状金具12が掛止側リード20Bの中間部分を遊動可能とされていることで、
図5に示した状態でペット用リード1Bを強く引いた場合でも、首輪部25とハーネス3にほぼ均等に圧力がかかることから、ナスカン27と首輪部25が破損しにくいことに加え、首輪部25が過剰に締まる心配のないものとなっている。また、本実施の形態のペット用リード1Bは、
図6に示すようにハーネス3の代わりに首輪4を装着しているペットに適用した場合も、前述と同様の機能を発揮することができる。
【0027】
図7は、上述したペット用リード1A,1Bに共通した持ち手側の構成の一例を示している。そのメインリード10の基端側は、紐状部材11が2本に分岐した構造となっており、一方が紐状部材11を輪状に形成して手で把持するための主持ち手115とされ、他方が分岐した紐状部材51を先端に設けたリング状金具550に挿通しながら投げ縄式に締まる輪状に形成して手首に掛けるための腕輪部55を備えた補助持ち手50とされている点を特徴としている。
【0028】
このように、メインリード10の基端側を二股にして主持ち手115と補助持ち手50の2つの持ち手を設けたことで、糞の処理等の際にペットに不意に引かれることで主持ち手115を放してしまっても、予め手首に掛けておいた補助持ち手50の腕輪部55の輪状構造が締まって手首から脱落しないことから、メインリード10を完全に手放してしまう心配のないものとなっている。
【0029】
また、このメインリード10の紐状部材11から紐状部材51が分岐してなる補助持ち手50は、その基端側が、紐状部材11における主持ち手115先端側の部分に対し、捻れを解消可能な金具であるスイベル520を介して接続されており、この点も重要な特徴部分となっている。
【0030】
このように、2つの持ち手の一方にスイベル520を設けた構成により、万が一スイベル520が破損してもペットの逃走を防止可能なものとなるが、補助持ち手50を手首に掛けておくことで主持ち手115を放してもペットに逃走されない状態を確保しながら、その基端側のスイベル520でリードに生じた捻れを解消できるため、リードとしての扱いやすさに極めて優れたものとなっている。
【0031】
尚、上述した説明において、ペット用リード1A,1Bで使用される紐状部材には、革紐、編紐、組紐等の一般的な紐のほか、ロープやチェーン、ワイヤー等の様々な素材・構成のものを使用することができる。
【0032】
以上、述べたように、ペット用リードについて、本発明により、その扱いを難しくすることなく、Wリードの場合と同等以上の逃走防止機能を実現できるようになった。
【符号の説明】
【0033】
1A,1B ペット用リード、3 ハーネス、4 首輪、10 メインリード、11,21,24,51 紐状部材、12,250,550 リング状金具、20A,20B 掛止側リード、22,23,27、25 首輪部、30,40,115 掛止リング、50 補助持ち手、55 腕輪部、115 主持ち手、220,230,270 連結補強部、520 スイベル