(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】埋設杭の引き抜き装置及び引き抜き跡の空洞埋め戻し方法
(51)【国際特許分類】
E02D 9/02 20060101AFI20230727BHJP
E02D 3/08 20060101ALI20230727BHJP
E02D 3/10 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
E02D9/02
E02D3/08
E02D3/10 104
(21)【出願番号】P 2021043265
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】596164652
【氏名又は名称】太洋基礎工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076255
【氏名又は名称】古澤 俊明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴昭
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-206814(JP,A)
【文献】特開2010-255300(JP,A)
【文献】米国特許第04248550(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00-13/10
E02D 1/00- 3/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋設杭の周りに掘削用ケーシングの掘削刃で引き抜き穴を掘削し、前記埋設杭の先端部に引き抜きワイヤーの巻き付き輪を巻きつけて重機により前記引き抜きワイヤーを引き上げて前記埋設杭を引き抜く装置において、
前記掘削用ケーシングの内壁面に、螺旋状の内側排土突条を形成するとともに、この掘削用ケーシングの内壁面に沿って、前記引き抜きワイヤーを案内するワイヤーガイド溝を設け、前記掘削用ケーシングの先端部の内壁部に、前記引き抜きワイヤーの先端の巻き付き輪を収納する輪保持溝を内方に開口するようにして設け、この輪保持溝に、収納した前記巻き付き輪がこのワイヤー収納部から突出するのを防止する仮保持材を設けたことを特徴とする埋設杭の引き抜き装置。
【請求項2】
前記ワイヤーガイド溝と前記ワイヤー収納部に、前記引き抜きワイヤーと前記巻き付き輪を前記掘削用ケーシング
に仮保持材で仮保持するためのワイヤー仮保持孔を設けたことを特徴とする請求項1記載の埋設杭の引き抜き装置。
【請求項3】
前記掘削用ケーシングに前記埋設杭の長さに応じて連結ケーシングを連結し、この連結ケーシングの内壁面に沿って、前記掘削用ケーシングの前記引き抜きワイヤーに連結した引き抜きワイヤーを案内するワイヤーガイド溝を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の埋設杭の引き抜き装置。
【請求項4】
前記掘削用ケーシングの外壁面に、螺旋状の外側排土突条を形成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の埋設杭の引き抜き装置。
【請求項5】
埋設杭の周りに掘削用ケーシングの回転による掘削刃で引き抜き穴を掘削しつつ、前記掘削用ケーシングの内壁面の螺旋状の内側排土突条にて掘削土を排除して引き抜き穴を掘削する工程と、
前記引き抜き穴が前記埋設杭の略先端まで達したら前記掘削用ケーシングの内壁面に沿って設けられ、先端部に巻き付き輪を有する引き抜きワイヤーを引き上げて前記巻き付き輪を前記埋設杭に巻き付けてこの埋設杭のみを引き抜く工程と、
前記埋設杭の引き抜き跡の空洞に充填材を投入する工程と、
前記掘削用ケーシングの逆回転による前記掘削用ケーシングの途中までの引き上げ時の内側排土突条による締固めと前記掘削用ケーシングの再貫入による締固めにより前記充填材を締め固めする工程と、
前記充填材を締め固めしたら前記掘削用ケーシングを撤去する工程と
からなることを特徴とする引き抜き跡の空洞埋め戻し方法。
【請求項6】
前記充填材を締め固めする工程は、前記掘削用ケーシングの逆回転による前記掘削用ケーシングの途中までの引き上げ時の螺旋状の内側排土突条による締固めと前記掘削用ケーシングの無回転による再貫入による締固めとを複数回繰り返して行うことを特徴とする請求項5記載の引き抜き跡の空洞埋め戻し方法。
【請求項7】
前記埋設杭の長さに応じて前記掘削用ケーシングに連結ケーシングを連結して掘削するようにしたことを特徴とする請求項5又は6記載の引き抜き跡の空洞埋め戻し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中に埋設してある埋設杭の引き抜き装置及び埋設杭を引き抜いた跡に生じた空洞を埋め戻す空洞埋め戻し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、埋設杭のある跡地の都市開発時に新規の構造基礎として杭基礎が採用される場合、上部構造物設計には埋設杭を撤去して原状復帰された現地盤が求められている。また、埋設杭撤去後の周辺構造物への影響として、周辺地盤への変位低減が要求されている。このような要望に対応するため、埋設杭の撤去に伴う周辺地盤の変位を低減させ、埋設杭撤去で発生する空洞に充填材を投入して、現地盤と同等の強度や支持力に復旧することを目的に、再開発時の構造物構築を支援することが重要である。
【0003】
従来から、地盤32に埋設された埋設杭20を引き抜いた後の掘削用ケーシング21の引き抜き穴33や埋設杭20の空洞35を埋め戻すには、
図5(a)(b)(c)(d)に示すような工法で行われていた(引用文献1)。
図5(a)
掘削用ケーシング21には、先端部の内側のワイヤー収納部25にワイヤー23の巻き付き輪31を予め収納しておき、その一端を切欠き26から掘削用ケーシング21の外側に引き出し、このワイヤー23の直線部36を掘削用ケーシング21の外側のワイヤーガイド溝24に沿わせて仮保持材27で仮止めし上方まで突出させておく。
この掘削用ケーシング21を回転して掘削刃22で地盤32に埋設された埋設杭20の周りにケーシング肉厚の引き抜き穴33を掘削する。
【0004】
図5(b)
掘削用ケーシング21で埋設杭20の外周の先端まで引き抜き穴33を掘削したら、掘削用ケーシング21をワイヤー23とともに約1m引き上げ、ついで、ワイヤー23だけをクレーン等の重機34にて少し引き上げる。すると、仮保持材33が切断され、絞り込まれた
巻き付き輪31が埋設杭20の先端部に巻きつく。
【0005】
図5(c)
絞り込まれた
巻き付き輪31が埋設杭20の先端部に巻きついた状態で、まず、掘削用ケーシング21だけを引き抜く。すると、埋設杭20の外周に、引き抜き穴33が形成される。
【0006】
図5(d)
掘削用ケーシング21を重機で引き上げた後、ついで杭保持ワイヤー23を引き上げて埋設杭20を引き抜く。すると、引き抜いた埋設杭20の跡に空洞35ができる。この空洞35と引き抜き穴33に砂などの流動化材料を注入して埋め戻す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、掘削用ケーシング21を引き上げてから、埋設杭20を引き抜いて埋め戻すと、以下のような問題が生じていた。
(1)掘削用ケーシングを引き抜いてから、埋設杭の引き抜いた空洞に流動化材料を注入して埋め戻そうとすると、空洞35の外周にケーシング引き抜き穴33ができているので、空洞35の周辺土圧が負荷として空洞35を圧迫し、空洞35の周囲の土壁が崩壊して空洞35を閉塞して充填材が投入できなくなったり、途中が空洞のままになったりする。
(2)埋設杭20の引き抜き時に空洞35とケーシング引き抜き穴33との間の土壁がドベラとなって、埋設杭20の外周に付着した空洞35の底部に落下して充填材の投入を阻害する。
(3)このように、埋設杭20の撤去に伴い、周辺地盤の強度が弱体化すること及び空洞には周辺土圧による閉塞という問題があった。
【0009】
本発明は、地盤中に埋設してある埋設杭を引き抜くための新たな引抜き装置を提供し、かつ、埋設杭を引き抜いた跡に生じた空洞をケーシングにより保持し、埋め戻す空洞埋め戻し方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による埋設杭の引き抜き装置は、
埋設杭46の周りに掘削用ケーシング40の掘削刃43で引き抜き穴66を掘削し、前記埋設杭46の先端部に引き抜きワイヤー47の巻き付き輪48を絞り込んで巻きつけて重機60により前記引き抜きワイヤー47を引き上げて前記埋設杭46を引き抜く装置において、
前記掘削用ケーシング40の内壁面に、螺旋状の内側排土突条45を形成するとともに、この掘削用ケーシング40の内壁面に沿って、前記引き抜きワイヤー47を案内するワイヤーガイド溝52を設け、前記掘削用ケーシング40の先端部の内壁部に、前記引き抜きワイヤー47の先端の巻き付き輪48を収納する輪保持溝53を内方に開口するようにして設け、この輪保持溝53に、収納した前記巻き付き輪48がこの輪保持溝53から突出するのを防止する仮保持材55を設けたことを特徴とする。
【0011】
前記ワイヤーガイド溝52と前記輪保持溝53に、前記引き抜きワイヤー47と前記巻き付き輪48を仮保持材55で仮保持するために、前記掘削用ケーシング40にワイヤー仮保持孔54を設けたことを特徴とする。
【0012】
前記掘削用ケーシング40に前記埋設杭46の長さに応じて連結ケーシング41を連結し、この連結ケーシング41の内壁面に沿って、前記掘削用ケーシング40の前記引き抜きワイヤー47に連結した引き抜きワイヤー47を案内するワイヤーガイド溝52を設けたことを特徴とする。
【0013】
前記掘削用ケーシング40の外壁面に、螺旋状の外側排土突条44を形成したことを特徴とする。
【0014】
本発明の引き抜き跡の空洞埋め戻し方法は、
埋設杭46の周りに掘削用ケーシング40の回転による掘削刃43で引き抜き穴66を掘削しつつ、前記掘削用ケーシング40の内壁面の内側排土突条45にて掘削土を排除して引き抜き穴66を掘削する工程と、
前記引き抜き穴66が前記埋設杭46の略先端まで達したら前記掘削用ケーシング40の内壁面に沿って設けられ、先端部に巻き付き輪48を有する引き抜きワイヤー47を引き上げて前記巻き付き輪48を前記埋設杭46に巻き付けてこの埋設杭46のみを引き抜く工程と、
前記埋設杭46の引き抜き跡の空洞63に充填材61を投入する工程と、
前記掘削用ケーシング40の逆回転による前記掘削用ケーシング40の途中までの引き上げ時の内側排土突条45による締固めと前記掘削用ケーシング40の再貫入による締固めにより前記充填材61を締め固めする工程と、
前記充填材61を締め固めしたら前記掘削用ケーシング40を撤去する工程と
からなることを特徴とする。
【0015】
前記充填材61を締め固めする工程は、前記掘削用ケーシング40の逆回転による前記掘削用ケーシング40の途中までの引き上げ時の内側排土突条45による締固めと前記掘削用ケーシング40の無回転による再貫入による締固めとを複数回繰り返して行うことを特徴とする。
【0016】
前記埋設杭46の長さに応じて前記掘削用ケーシング40に連結ケーシング41を連結して掘削するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、
埋設杭の周りに掘削用ケーシングの掘削刃で引き抜き穴を掘削し、前記埋設杭の先端部に引き抜きワイヤーの巻き付き輪を巻きつけて重機により前記引き抜きワイヤーを引き上げて前記埋設杭を引き抜く装置において、
前記掘削用ケーシングの内壁面に、螺旋状の内側排土突条を形成するとともに、この掘削用ケーシングの内壁面に沿って、前記引き抜きワイヤーを案内するワイヤーガイド溝を設け、前記掘削用ケーシングの先端部の内壁部に、前記引き抜きワイヤーの先端の巻き付き輪を収納する輪保持溝を内方に開口するようにして設け、この輪保持溝に、収納した前記巻き付き輪がこのワイヤー収納部から突出するのを防止する仮保持材を設けたので、次の効果を有する。
(1)掘削用ケーシングを引き抜かずに、埋設杭を引き抜いた時にできる空洞に充填材を注入して埋め戻しができるので、空洞の外周にできているケーシング引き抜き穴の土壁が崩壊して空洞を閉塞するおそれがなく、充填材を隙間なく充填できる。
(2)埋設杭の引き抜き時に埋設杭に付着しているドベラが剥離することがなく、充填材の投入を阻害することがない。
(3)埋設杭の撤去に伴い、周辺地盤の強度が弱体化することがない。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、
前記ワイヤーガイド溝と前記ワイヤー収納部に、前記引き抜きワイヤーと前記巻き付き輪を前記掘削用ケーシングに仮保持材で仮保持するためのワイヤー仮保持孔を設けので、掘削用ケーシングによる引抜き穴の掘削時に引き抜きワイヤーと巻き付き輪が飛び出して掘削の支障をきたすようなことがない。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、
前記掘削用ケーシングに前記埋設杭の長さに応じて連結ケーシングを連結し、この連結ケーシングの内壁面に沿って、前記掘削用ケーシングの前記引き抜きワイヤーに連結した引き抜きワイヤーを案内するワイヤーガイド溝を設けたので、埋設杭の長さが長くても引抜きができる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、
前記掘削用ケーシングの外壁面に、螺旋状の外側排土突条を形成したので、引抜き穴の掘削と、充填材の締固めを確実に行える。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、
埋設杭の周りに掘削用ケーシングの回転による掘削刃で引き抜き穴を掘削しつつ、前記掘削用ケーシングの内壁面の螺旋状の内側排土突条にて掘削土を排除して引き抜き穴を掘削する工程と、
前記引き抜き穴が前記埋設杭の略先端まで達したら前記掘削用ケーシングの内壁面に沿って設けられ、先端部に巻き付き輪を有する引き抜きワイヤーを引き上げて前記巻き付き輪を前記埋設杭に巻き付けてこの埋設杭のみを引き抜く工程と、
前記埋設杭の引き抜き跡の空洞に充填材を投入する工程と、
前記掘削用ケーシングの逆回転による前記掘削用ケーシングの途中までの引き上げ時の内側排土突条による締固めと前記掘削用ケーシングの再貫入による締固めにより前記充填材を締め固めする工程と、
前記充填材を締め固めしたら前記掘削用ケーシングを撤去する工程と
からなるので、次の効果を有する。
(1)掘削用ケーシングを引き抜かずに、埋設杭を引き抜くので、埋設杭の引き抜き跡の空洞の周辺土圧が負荷として空洞を圧迫することがなく、空洞への充填材を隙間なく投入できる。
(2)埋設杭の引き抜き時に空洞とケーシング引き抜き穴との間の土壁がドベラとなって、空洞の底部に落下するようなことがなく、充填材の投入を円滑に行える。
(3)掘削用ケーシングの逆回転による掘削用ケーシングの途中までの引き上げ時の内側排土突条による締固めと掘削用ケーシングの再貫入による締固めにより充填材を締め固めするので、無騒音で締固めできる。
(4)埋設杭の撤去に伴う周辺地盤の強度が弱体化するようなことがない。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、
前記充填材を締め固めする工程は、前記掘削用ケーシングの逆回転による前記掘削用ケーシングの途中までの引き上げ時の螺旋状の内側排土突条による締固めと前記掘削用ケーシングの無回転による再貫入による締固めとを複数回繰り返して行うので、無騒音で充填材を確実に締固めできる。
【0023】
請求項7記載の発明によれば、
前記埋設杭の長さに応じて前記掘削用ケーシングに連結ケーシングを連結して掘削するようにしたので、どのような長さの埋設杭にも対処できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による埋設杭の引き抜き装置及び引き抜き跡の空洞埋め戻し方法の実施例1を示す掘削用ケーシング40の断面図である。
【
図3】(a)は、本発明による埋設杭の引き抜き装置及び引き抜き跡の空洞埋め戻し方法に用いられる引き抜きワイヤー47の斜視図、(b)は、引き抜きワイヤー47の異なる例の斜視図である。
【
図4】(a)は、本発明による埋設杭の引き抜き装置の実施例を示す斜視図、(b)は、埋設杭46の外周に引抜き穴66を掘削した状態の断面図、(c)は、埋設杭46に巻き付き輪48をかけて引き抜きワイヤー47で引き抜いている状態の断面図、(d)は、掘削用ケーシング40と連結ケーシング41の中に埋設杭46を引き抜いた跡に空洞63ができた状態の断面図、(e)は、空洞63に充填材61を充填し、掘削用ケーシング40の逆回転で充填した充填材61を締固めしている状態の断面図、(f)は、掘削用ケーシング40と連結ケーシング41を引き抜いた跡の空洞63と引抜き穴66に置換砂62を充填して転圧している状態の断面図である。
【
図5】特許文献1に記載の従来の埋設杭の引き抜き動作を示すもので、(a)は、掘削用ケーシング21の周りに引抜き穴33を掘削している状態の斜視図、(b)は、掘削用ケーシング21をやや引き抜いて埋設杭20にワイヤー23の巻き付き輪31を巻き付けた状態の斜視図、(c)は、掘削用ケーシング21を引き抜いている状態の斜視図、(d)は、掘削用ケーシング21を引き抜いた後でワイヤー23により埋設杭20を引き抜いている状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明による埋設杭の引き抜き装置は、
埋設杭46の周りに掘削用ケーシング40の掘削刃43で引き抜き穴66を掘削し、前記埋設杭46の先端部に引き抜きワイヤー47の巻き付き輪48を巻きつけて重機60により前記引き抜きワイヤー47を引き上げて前記埋設杭46を引き抜く装置において、
前記掘削用ケーシング40の内壁面に、螺旋状の内側排土突条45を形成するとともに、この掘削用ケーシング40の内壁面に沿って、前記引き抜きワイヤー47を案内するワイヤーガイド溝52を設け、前記掘削用ケーシング40の先端部の内壁部に、前記引き抜きワイヤー47の先端の巻き付き輪48を収納する輪保持溝53を内方に開口するようにして設け、この輪保持溝53に、収納した前記巻き付き輪48がこの輪保持溝53から突出するのを防止する仮保持材55を設ける。
【0026】
前記ワイヤーガイド溝52と前記輪保持溝53に、前記引き抜きワイヤー47と前記巻き付き輪48を前記掘削用ケーシング40に仮保持材55で仮保持するためのワイヤー仮保持孔54を設ける。
【0027】
前記掘削用ケーシング40に前記埋設杭46の長さに応じて連結ケーシング41を連結し、この連結ケーシング41の内壁面に沿って、前記掘削用ケーシング40の前記引き抜きワイヤー47に連結した引き抜きワイヤー47を案内するワイヤーガイド溝52を設ける。
【0028】
前記掘削用ケーシング40の外壁面に、螺旋状の外側排土突条44を形成する。
【0029】
本発明の引き抜き跡の空洞埋め戻し方法は、
埋設杭46の周りに掘削用ケーシング40の回転による掘削刃43で引き抜き穴66を掘削しつつ、前記掘削用ケーシング40の内壁面の内側排土突条45にて掘削土を排除して引き抜き穴66を掘削する工程と、
前記引き抜き穴66が前記埋設杭46の略先端まで達したら前記掘削用ケーシング40の内壁面に沿って設けられ、先端部に巻き付き輪48を有する引き抜きワイヤー47を引き上げて前記巻き付き輪48を前記埋設杭46に巻き付けてこの埋設杭46のみを引き抜く工程と、
前記埋設杭46の引き抜き跡の空洞63に充填材61を投入する工程と、
前記掘削用ケーシング40の逆回転による前記掘削用ケーシング40の途中までの引き上げ時の内側排土突条45による締固めと前記掘削用ケーシング40の再貫入による締固めにより前記充填材61を締め固めする工程と、
前記充填材61を締め固めしたら前記掘削用ケーシング40を撤去する工程と
からなる。
【0030】
前記充填材61を締め固めする工程は、前記掘削用ケーシング40の逆回転による前記掘削用ケーシング40の途中までの引き上げ時の内側排土突条45による締固めと前記掘削用ケーシング40の無回転による再貫入による締固めとを複数回繰り返して行うことが望ましい。
【0031】
前記埋設杭46の長さに応じて前記掘削用ケーシング40に連結ケーシング41を連結して掘削するようにする。
【実施例1】
【0032】
以下、本発明による埋設杭の引き抜き装置の実施例1を
図1乃至
図3に基づき説明する。
40は、掘削用ケーシング(ファーストケーシング)で、例えば、直径800mm、長さ3000mmの金属製円筒体からなり、直径600mm程度の埋設杭46を引き抜くものとする。この掘削用ケーシング40の直径や長さは、埋設杭46の直径や長さに応じて適宜選択される。
前記掘削用ケーシング40の上端部には、
図4(a)に示すような連結ケーシング41を連結するための連結部42が形成され、また、下端部には、所定間隔で掘削刃43が取り付けられている。
この掘削刃43の取り付け位置のやや上方に位置して内壁側が開口した断面コ字形の輪保持溝53が外方に膨出し、かつ、全周囲に連続している。この輪保持溝53の外周壁面には、所定間隔でワイヤー保持孔54が開口している。
【0033】
前記掘削用ケーシン
グ40の内側面には、縦方向に2本の棒状物が隙間をもって溶接されて、引き抜きワイヤー47の直線部50を案内するワイヤーガイド溝52が形成されている。また、前記掘削用ケーシン
グ40から輪保持溝53に貫通してワイヤー保持孔54が設けられ、このワイヤー保持孔54から針金などの仮保持材55が差し込まれ、巻き付き輪48が仮保持される。
前記引き抜きワイヤー47には、
図3(a)に示すように、先端部に締付リング49が設けられ、この締付リング49に引き抜きワイヤー47を通し、巻き付き輪48が形成される。この巻き付き輪48は、
図3(b)に示すように、二重の輪を形成してもよい。
このように形成された引き抜きワイヤー47の巻き付き輪48は、前記輪保持溝53の内側から収納され、所定間隔の前記ワイヤー保持孔54から針金などの仮保持材55が差し込まれ、巻き付き輪48が仮保持される。仮止めされている状態では、前記巻き付き輪48は、掘削用ケーシング40の内側に飛び出さないようになっている。
【0034】
前記掘削用ケーシング40の外側面と内側面には、それぞれ螺旋状等の外側排土突条44と内側排土突条45が形成されている。これらの外側排土突条44と内側排土突条45により、掘削用ケーシング40が回転して地盤64に侵入すると、地盤内の土が地上に排除される。
前記掘削用ケーシング40の外側には、長さ方向に1~数本の高圧水配管57が取り付けられ、この高圧水配管57の下端部が下向きに開口して高圧水が噴射される。この高圧水配管57は、両側から保護カバー58で保護されている。
前記掘削用ケーシング40の連結部42の近くには、連結窓68が開口され、上下部の引き抜きワイヤー47が連結部69で連結される。
前記掘削用ケーシング40には、複数個所にかんざし孔56が所定間隔で形成され、この掘削用ケーシング40の連結部42に連結ケーシング41を連結するときの回り止めのためかんざし65が差し込まれる。
【0035】
以上のような構成による作用を
図4に基づき説明する。
図4(a)
掘削用ケーシング40の連結部42には、引き抜かれる埋設杭46の長さに応じて1~複数本の連結ケーシング41が順次連結される。連結するに際し、掘削用ケーシング40の引き抜きワイヤー47と連結ケーシング41の引き抜きワイヤー47を連結部69で順次連結するとともに、掘削用ケーシング40の高圧水配管57と連結ケーシング41の高圧水配管57を順次連結する。前記掘削用ケーシング40と連結ケーシング41には、複数個所にかんざし孔56が形成され、この掘削用ケーシング40と連結ケーシング41のかんざし孔56にかんざし65を差し込み、互いに回転するのを防止して固く連結する。
連結ケーシング41の上端部には、掘削用ケーシング40と連結ケーシング41を回転して掘削するためのオーガーモーター59が設けられる
【0036】
図4(b)
地盤64に埋設された埋設杭46の位置を確認し、この埋設杭46の周りを掘削用ケーシング40と連結ケーシング41の回転により掘削刃45で引き抜き穴66を掘削開始する。
掘削時には、掘削用ケーシング40と連結ケーシング41の外側に沿わせた高圧水配管57で先端から降圧水を噴射しながら、掘削用ケーシング40と連結ケーシング41により埋設杭46の先端部まで掘削する。
【0037】
図4(c)
掘削用ケーシング40が埋設杭46の最先端部に達したら、掘削用ケーシング40と連結ケーシング41をそのまま引き抜かず、引き抜きワイヤー47だけを重機60で引き上げる。この引き抜きワイヤー47は、例えば、20tonでも耐えることのできるものを使用し、引き抜きワイヤー47を仮保持している仮保持材55は、500kg程度で切断できる番線などで仮保持しておくことにより、引き抜きワイヤー47を重機60で引き上げると、直線部50の仮保持材55が切断し、さらに、巻き付き輪48の円形が縮小することにより巻き付き輪48を仮保持している仮保持材55を切断して埋設杭埋設杭46を強く締め付けて巻き付く。
埋設杭46に引き抜きワイヤー47の巻き付き輪48を強く巻き付けて重機60で埋設杭46を引き抜く。埋設杭46が長い時には、地盤32から地上に引き上げられた部分を5~10m程度ずつ切断して順次引き上げることにより引き抜き作業が円滑に行われる。
【0038】
図4(d)
引き抜きワイヤー47を重機60で引き上げると埋設杭46の引き抜き跡に、空洞63ができるが、空洞63ができた状態で、掘削用ケーシング40と連結ケーシング41を引き抜くと、空洞63と引抜き穴66の間の土壁67が崩れて空洞63の周辺土圧が負荷として空洞63を圧迫し、空洞63の周囲の土壁67が崩壊して空洞63の底部に落下したり、空洞63を閉塞して充填材が投入できなくなったり、途中が空洞のままになったりする。
そこで本発明では、掘削用ケーシング40と連結ケーシング41を引き抜かずに、空洞63に圧縮砂などの充填材61を注入する。
【0039】
図4(e)
空洞63に圧縮砂61を投入したら、掘削用ケーシング40と連結ケーシング41を左回転(逆回転)して約4m引き上げ、その後、掘削用ケーシング40と連結ケーシング41を無回転で約1m圧入する。投入した圧縮砂61の圧縮造成が予め設定した強度が得られるように、掘削用ケーシング40と連結ケーシング41の左回転の引き上げと無回転の再貫入1~複数回繰り返して無騒音で締固めをする。
この動作を繰り返して掘削用ケーシング40と連結ケーシング41を引き抜く。
【0040】
図4(f)
掘削用ケーシング40と連結ケーシング41を引き抜いたら、地上に近い空洞63と引抜き穴66に置換砂62を投入して上から重機等で転圧して置換砂62と地盤64を馴染ませて施工が完了する。
【0041】
前記実施例では、前記外側排土突条44と内側排土突条45を螺旋状としたが、この螺旋は、連続している必要はなく、途中で切れていてもよい。
また、前記ワイヤーガイド溝52は、直線的に連続している必要がなく、引き抜きワイヤー47の直線部50を間欠的に保持していてもよい。
【符号の説明】
【0042】
20…埋設杭、21…掘削用ケーシング、22…掘削刃、23…ワイヤー、24…ワイヤーガイド溝、25…ワイヤー収納部、26…切欠き、27…仮保持材、31…巻き付き輪、32…地盤、33…引抜き穴、34…重機、35…空洞、36…直線部、40…掘削用ケーシング、41…連結ケーシング、42…連結部、43…掘削刃、44…外側排土突条、45…内側排土突条、46…埋設杭、47…引き抜きワイヤー、48…巻き付き輪、49…締付リング、50…直線部、52…輪保持溝、53…輪保持溝、54…ワイヤー保持孔、55…仮保持材、56…かんざし孔、57…高圧水配管、58…保護カバー、59…オーガーモーター、60…重機、61…圧縮砂、62…置換砂、63…空洞、64…地盤、65…かんざし、66…引抜き穴、67…土壁、68…連結窓、69…連結部。