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特許7320309リーダで読み取り可能な識別子が印刷されたコード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】リーダで読み取り可能な識別子が印刷されたコード
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/06 20060101AFI20230727BHJP
   B42D 25/30 20140101ALI20230727BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
G06K19/06 178
G06K19/06 037
B42D25/30 100
B41M3/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022098932
(22)【出願日】2022-06-20
【審査請求日】2022-08-30
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309011675
【氏名又は名称】三郷コンピュータホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 学
(72)【発明者】
【氏名】中野 雄大
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-139020(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105447546(CN,A)
【文献】特開2004-025467(JP,A)
【文献】特開2018-136916(JP,A)
【文献】特開2006-123270(JP,A)
【文献】特開平06-203228(JP,A)
【文献】特開平11-268228(JP,A)
【文献】特表2020-528634(JP,A)
【文献】村松 健晴,「携帯電話+自動認識技術」の現状と将来 カメラ付き携帯電話によるバーコード読み取り機能の活用,月刊バーコード ,日本,日本工業出版株式会社,2004年03月02日,第17巻 第3号,pp.11-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/06
B41M 3/14
B42D 25/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダで読み取り可能な識別子が印刷され、前記識別子を構成する複数のセルが二次元的に配置された二次元コードであって、
前記二次元コードのクワイエットゾーンに、又は、前記二次元コードの四隅を除くクワイエットゾーンに、前記リーダで存在を認識できない程度の微小な標識の列と前記リーダで存在を認識できない程度の太さの罫線とが配置され、
前記標識の列及び前記罫線が前記二次元コードのデータ領域を囲うように配置された、
二次元コード。
【請求項2】
前記二次元コードの前記複数のセルのうち少なくとも1つのセル内に前記標識がさらに配置された、
請求項1に記載の二次元コード。
【請求項3】
前記二次元コードの切り出しシンボル内、又は、アライメントパターン内に前記標識がさらに配置された、
請求項1に記載の二次元コード。
【請求項4】
前記標識は、文字と、模様とのうち少なくとも1つである、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の二次元コード。
【請求項5】
前記標識は、前記文字を含み、前記文字のサイズは0.25[mm]以下である、
請求項4に記載の二次元コード。
【請求項6】
リーダで読み取り可能な識別子が印刷され、前記識別子を構成する複数のセルが二次元的に配置された二次元コードであって、
前記二次元コードのクワイエットゾーンに、又は、前記二次元コードの四隅を除くクワイエットゾーンに、前記リーダで存在を認識できない程度の太さの罫線が配置され、
前記罫線が前記二次元コードのデータ領域を囲うように配置された、
二次元コード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダで読み取り可能な識別子が印刷されたコードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商標や著作権を侵害する不正商品(偽造品、模倣品)の取引が着実に増加してきている。医療用品、自動車部品、玩具、食品、化粧品ブランド、電気製品等の不正商品が流通すると、消費者の健康や安全性全般を危険にさらす虞がある。しかしながら、それら不正商品の取引に対して実効的な対策をとることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-254037号公報
【文献】特開2012-96490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、流通過程において真正商品と不正商品とを識別し、不正商品の取引を抑止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る、リーダで読み取り可能な識別子が印刷されたコードには、当該コード内に、リーダで存在を認識できない程度の微小な標識が配置される。これにより、当該コードをリーダで読み取ることができる一方で、利用者(例えば、消費者、真正商品の製造元及び流通業者)は、当該コードが印刷された印刷物に対応する商品を真正商品であると識別し、微小な標識が配置されていないコードが印刷された印刷物に対応する商品を不正商品であると識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る、微小な標識が配置されるコードの一例である二次元コードを示す図。
図2】実施形態に係る、微小な標識が配置されるコードの一例である二次元コードの部分拡大図。
図3】実施形態に係る、微小な標識が配置されるコードの一例である二次元コードの部分拡大図。
図4】実施形態に係る、微小な標識が配置されるコードの一例である一次元コードを示す図。
図5】実施形態に係る、微小な標識が配置されるコードの一例である一次元コードの部分拡大図。
図6】実施形態に係る、微小な標識が配置されるコードの一例である二次元コードを示す図。
図7】実施形態に係る、微小な標識が配置されるコードの一例である二次元コードを示す図。
図8】実施形態に係る、微小な標識が配置されるコードの一例である二次元コードを示す図。
図9】実施形態に係る、微小な標識が配置されるコードを印刷する印刷装置を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、リーダで読み取り可能な識別子が印刷されたコードの実施形態について詳細に説明する。
【0008】
図1は、リーダ(「スキャナ」とも呼ばれる)で読み取り可能な識別子が印刷されたコードであって、リーダで存在を認識できない程度の微小な標識が配置されるコード(以下、「印刷コード」と称する)1を示す。そして、図1は、印刷コード1の一例である二次元コード10を示す。二次元コード10(後述する二次元コード30,40,50も同様)としては、QRコード(登録商標)、PDF417(マイクロPDF417、コンパクトPDF417等を含む)、DataMatrix(登録商標)、MaxiCode、AztecCode、Code49、EAN/UPCコンポジット(Composite)、GS1DataBar(RSS)コンポジット等が挙げられる。QRコードは、モデル1、モデル2、マイクロQRコード、rMQRコード、SQRC(登録商標)、フレームQR(登録商標)等を含む。以下、二次元コード10(後述する二次元コード30,40,50についても同様)がQRコードのモデル2である場合について説明するが、その場合に限定されるものではない。
【0009】
二次元コード10(後述するコード20,30,40,50も同様)は、紙(段ボール、片面に糊の付いた紙(シール)等を含む)、プラスティック(プラスティックフィルム、片面に糊の付いたプラスチックフィルム(シール)等を含む)、ビニール、又は布(不織布等を含む)等からなる印刷物に印刷されるものである。印刷物は、例えば、商品自体、商品の包装、又は、商品の付帯物(例えば、説明書や商品ラベル(タグを含む))等を構成し、対応する商品とともに流通する。なお、印刷物は、商品の広告(チラシ等を含む)又は価格表等を構成し、対応する商品とは別に流通する場合もある。
【0010】
二次元コード10は、中央のデータ領域(シンボル)Sと、周囲のクワイエットゾーンQとから構成される。二次元コード10は、シンボルSに、識別子を構成する複数のセルを二次元的に配置し、文字が示す情報を表す識別子の一種である。二次元コード10は、文字が示す情報を一定の規則に従い、二次元のコードに変換されたものである。二次元コード10は、リーダ(例えば、二次元コードリーダ)が、読み取りやすいデジタル情報として入出力できるようになっている。なお、二次元コード10には、シンボルに、識別子を構成するものである切り出しシンボルや、アライメントパターン等が配置される場合もある。
【0011】
また、二次元コード10には、二次元コード10の複数のセルのうち少なくとも1つのセル(図1の符号Aはセルの1つを示す)内に標識が配置されている(図2(A)に図示)。標識は、例えば、文字(言語文字、数字、記号等を含む)又は模様のうち少なくとも1つからなる。言語文字は、多種多様な言語を示す文字を含み、例えば、日本語(ひらがな、カタカナ、漢字を含む)、英語(アルファベットを含む)、中国語、韓国語(朝鮮語)、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、アラビア語等の言語を示す文字を意味する。また、例えば、標識は、文字と、模様とのいずれか1つによって構成されていてもよいし、それらの組み合わせによって構成されていてもよい。ここで、微小な標識としての微小文字は、マイクロ文字とも呼ばれる。
【0012】
また、シンボルに配置された切り出しシンボル(図1の符号Bは切り出しシンボルの1つを示す)が存在する場合、標識は、識別子を構成するものである切り出しシンボル内の一部又は全部に配置される場合もある(図2(B),(C)に図示)。また、アライメントパターン(図1の符号Cはアライメントパターンを示す)が存在する場合、標識は、識別子を構成するものであるアライメントパターン内の一部又は全部に配置される場合もある(図3(A),(B)に図示)。つまり、標識は、二次元コード10の切り出しシンボル内のみに配置されていてもよいし、アライメントパターン内のみに標識が配置されていてもよい。また、二次元コード10の切り出しシンボル内とアライメントパターン内とのみに標識が配置されていてもよいし、切り出しシンボル(又は、アライメントパターン)内と、セル内とに標識が配置されていてもよい。
【0013】
図2(A)~(C)は、二次元コード10の部分拡大図を示す。図2(A)は、図1に示す二次元コード10の部分Aの一例を拡大した図である。一方で、図2(B)は、図1に示す二次元コード10の部分Bの第1例を拡大した図である。図2(C)は、図1に示す二次元コード10の部分Bの第2例を拡大した図である。そして、図2(A)~(C)は、二次元コード10に、標識としての文字を配置した例である。なお、図2(A)~(C)において、部分A,Bのサイズに対する文字の大きさは便宜上変更されて示されている。
【0014】
図2(A)の部分Aに示すように、二次元コード10には、一部のセル内に、文字の一例としてのアルファベット「R」が標識として、セルの色(色相、彩度及び明度)と異なる色(例えば、黒色セルなら文字は白色又はそれに近い色、白色セルなら文字は黒色、グレー色、又は有彩色)で配置される。白色に近い色は、有彩色を含む。QRコードリーダの分解能は高ければよいというものでもなく、汎用機器(例えば、スマートフォン)で認識できる分解能はせいぜい0.25[mm]程度である。そのため、文字サイズを0.25[mm]以下とすることが好適である。0.25[mm]以下の文字サイズは、0.7[pt]、0.6[pt]、…等を含む。
【0015】
そして、拡大鏡を使って利用者がセル内の文字(例えば、黒色セル内の白色文字)を読むことを想定すると、文字サイズが0.25[mm]である場合には、サイズが0.25[mm]以上のセルに文字が配置されることが好適であるし、文字サイズが0.18[mm]である場合には、サイズが0.18[mm]以上のセルに文字が配置されることが好適である。また、文字サイズが1つのセルサイズより大きい場合には、隣接する複数のセルに跨って文字が配置されてもよい。例えば、文字サイズが0.25[mm]であり、1つのセルサイズが0.17[mm]である場合には、隣接する2×2の4つの黒色セルに跨って白色文字が配置される。
【0016】
なお、文字は、印刷物に対応する商品の商品名(又はその頭文字)や、当該商品の製造社名(又はその頭文字)を文字として印刷してもよい。
【0017】
図2(B)の部分Bに示すように、二次元コード10には、一部の切り出しシンボル内に、文字の一例としての記号「!(^^)!」が標識として、切り出しシンボルの色と異なる色(例えば、シンボル内の黒色部分に配置されるなら文字は白色又はそれに近い色、シンボル内の白色部分に配置されるなら文字は黒色、グレー色、又は有彩色)で配置される。白色に近い色は、有彩色を含む。上述したように、文字サイズは0.25[mm]以下であることが好適である。
【0018】
図2(C)の部分Bに示すように、二次元コード10には、一部の切り出しシンボル内に、文字の一例としての記号「丸マーク」と「傘マーク」が標識として、切り出しシンボルの色と異なる色(例えば、シンボル内の黒色部分に配置されるなら文字は白色又はそれに近い色、シンボル内の白色部分に配置されるなら文字は黒色、グレー色、又は有彩色)で配置される。白色に近い色は、有彩色を含む。上述したように、文字サイズは0.25[mm]以下であることが好適である。
【0019】
図3(A),(B)は、二次元コード10の部分拡大図を示す。図3(A)は、図1に示す二次元コード10の部分Cの第1例を拡大した図である。図3(B)は、図1に示す二次元コード10の部分Cの第2例を拡大した図である。そして、図3(A)は、二次元コード10に、標識としての文字を配置した例であり、図3(B)は、二次元コード10に、標識としての模様を配置した例である。なお、図3(A),(B)において、部分Cのサイズに対する標識の大きさは便宜上変更されて示されている。
【0020】
図3(A)の部分Cに示すように、二次元コード10には、アライメントパターン内に、文字の一例としての漢字「薔薇」が標識として、アライメントパターンの色と異なる色(例えば、アライメントパターン内の黒色部分に配置されるなら文字は白色又はそれに近い色、アライメントパターン内の白色部分に配置されるなら文字は黒色、グレー色、又は有彩色)で配置される。白色に近い色は、有彩色を含む。上述したように、文字サイズは0.25[mm]以下であることが好適である。
【0021】
図3(B)の部分Cに示すように、二次元コード10には、アライメントパターン内に、模様(パターン)が標識として、アライメントパターンの色と異なる色(例えば、アライメントパターン内の黒色部分に配置されるなら点線模様は白色又はそれに近い色、アライメントパターン内の白色部分に配置されるなら点線模様は黒色、グレー色、又は有彩色)で配置される。白色に近い色は、有彩色を含む。上述したように、模様のサイズは0.25[mm]以下であることが好適である。つまり、模様は、アライメントパターン内に形成される一辺が0.25[mm]以下の各領域内に配置される。なお、模様は、点線模様の他、ストライプ模様、格子模様、網目模様、波模様、レンガ模様、及び市松模様等を含む。
【0022】
そして、図2及び図3に示す微小な標識(例えば、文字)が配置された二次元コード10は、印刷物に印刷される。一方で、二次元コード10の微小な標識は、希少な印刷装置(例えば、後述する印刷装置60)でしか印刷することはできず、また、標識周辺部により潰されてしまうので二次元コード10を完全にはコピーすることができない。そのため、微小な標識のない二次元コードが印刷された印刷物に対応する商品をすべて不正商品であるとみなすことができる。利用者(例えば、消費者、真正商品の製造元及び流通業者)は、二次元コード10に配置される標識を肉眼ではほぼ読み取ることができないが、ルーペ等の拡大鏡を使って読み取ることができる。
【0023】
一方で、二次元コード10を読み取るQRコードリーダの分解能は、上述したようにせいぜい0.25[mm]程度である。二次元コード10に配置される標識は微小サイズ(0.25[mm]以下)であり、標識周辺部により潰されて欠けのないシンボルSとしてリーダに認識されるため、二次元コード10をあたかも標識が存在しないものとしてリーダで読み取ることができる。
【0024】
図1図3を用いて説明した二次元コード10によれば、二次元コード10をリーダで読み取ることができる一方で、利用者は、二次元コード10が印刷された印刷物に対応する商品を真正商品であると識別し、微小な標識が配置されていないコードが印刷された印刷物に対応する商品を不正商品であると識別することができる。そのため、流通過程において真正商品と不正商品とを識別し、不正商品の取引を抑止することができる。
【0025】
なお、印刷コード1としての二次元コード10について説明したが、同様の思想を一次元コードに適用することができる。一次元コードについて図4及び図5を用いて説明する。
【0026】
図4は、印刷コード1の一例である一次元コード20を示す。一次元コード20は、バーコードとも称される。
【0027】
一次元コード20は、印刷物に印刷されるものである。一次元コード20は、中央のデータ領域(バーコードシンボル)Sと、左右のクワイエットゾーンQとから構成される。一次元コード20は、バーコードシンボルSに、識別子を構成する複数の線(バー)を一次元的に配置し、各線の太さによって文字を示す情報を表す識別子の一種である。一次元コード20は、文字が示す情報を一定の規則に従い、一次元のコードに変換されたものである。一次元コード20は、リーダ(例えば、一次元コードリーダ)が、読み取りやすいデジタル情報として入出力できるようになっている。
【0028】
また、一次元コード20には、一次元コード20の複数の線のうち少なくとも1つの線内に標識が配置されている。標識は、上述したように、例えば、文字と、模様とのうち少なくとも1つからなる。
【0029】
図5(A),(B)は、一次元コード20の部分拡大図を示す。図5(A)は、図4に示す一次元コード20の部分Dの第1例を拡大した図である。一方で、図5(B)は、図4に示す一次元コード20の部分Dの第2例を拡大した図である。そして、図5(A),(B)は、一次元コード20に、標識としての文字を配置した例である。なお、図5(A),(B)において、部分Dに対する文字の大きさは便宜上変更されて示されている。
【0030】
図5(A)の部分Dに示すように、一次元コード20には、一部の線内に、文字の一例としての数字「1234…」が標識として、線の色と異なる色(例えば、線が黒色なら文字は白色又はそれに近い色)で配置される。白色に近い色は、有彩色を含む。上述したように、文字サイズは0.25[mm]以下であることが好適である。拡大鏡を使って利用者が線内の文字(例えば、黒色線内の白色文字)を読むことを想定すると、文字サイズが0.25[mm]である場合には、太さが0.25[mm]以上の線に文字が配置されることが好適であるし、文字サイズが0.18[mm]である場合には、太さが0.18[mm]以上の線に文字が配置されることが好適である。
【0031】
図5(B)の部分Dに示すように、一次元コード20には、一部の線内に、文字の一例であるアルファベット「JPO」と文字の一例である漢字「日本」とが標識として、線の色と異なる色(例えば、線が黒色なら文字は白色又はそれに近い色)で配置される。白色に近い色は、有彩色を含む。上述したように、文字サイズは0.25[mm]以下であることが好適である。
【0032】
そして、図5に示す微小な標識(例えば、文字)が配置された一次元コード20は、印刷物に印刷される。一方で、一次元コード20の微小な標識は、希少な印刷装置(例えば、後述する印刷装置60)でしか印刷することはできず、また、標識周辺部により潰されてしまうので一次元コード20を完全にはコピーすることができない。そのため、微小な標識のない一次元コードが印刷された印刷物に対応する商品をすべて不正商品であるとみなすことができる。利用者は、一次元コード20に配置される標識を肉眼ではほぼ読み取ることができないが、拡大鏡を使って読み取ることができる。
【0033】
一方で、一次元コード20を読み取るバーコードリーダの、バーコードの高さ方向の分解能は微小サイズ(0.25[mm]以下)に対して十分に大きい。一次元コード20の線に配置される標識は微小サイズであり、標識周辺部により潰されて欠けのない直線としてリーダに認識されるため、一次元コード20をあたかも標識が存在しないものとしてリーダで読み取ることができる。
【0034】
なお、一次元コード20では、一部の線内に標識である文字を配置する例について説明したがその場合に限定されるものではない。例えば、線と線に挟まれ一定の幅をもつブランク領域に文字が配置されてもよい。例えば、一次元コード20には、一部のブランク領域内に、文字が標識として、ブランク領域の色と異なる色(例えば、ブランク領域が白色なら文字は黒色、グレー色、又は有彩色)で配置される。
【0035】
図4及び図5を用いて説明した一次元コード20によれば、一次元コード20をリーダで読み取ることができる一方で、利用者は、一次元コード20が印刷された印刷物に対応する商品を真正商品であると識別し、微小な標識が配置されていないコードが印刷された印刷物に対応する商品を不正商品であると識別することができる。そのため、流通過程において真正商品と不正商品とを識別し、不正商品の取引を抑止することができる。
【0036】
他方、標識は、図1に示す二次元コード10のシンボルS及びクワイエットゾーンQに亘って配置されてもよいし、図4に示す一次元コード20のバーコードシンボルS及びクワイエットゾーンQに亘って配置されてもよい。前者の場合について図6を用いて説明する。なお、後者についても同様である。
【0037】
図6(A)は、印刷コード1の一例である二次元コード30を示す。二次元コード30は、図1に示す二次元コード10と同様に印刷物に印刷されるものであり、中央のデータ領域(シンボル)Sと、周囲のクワイエットゾーンQとから構成される。図6(B)は、図6(A)に示す二次元コード30の部分Eの一例を拡大した図である。そして、図6(B)は、二次元コード30に、微小な標識としての文字を配置した例である。なお、図6(B)において、部分Eのサイズに対する文字の大きさは便宜上変更されて示されている。
【0038】
図6(B)の部分Eに示すように、二次元コード30には、シンボルS(及びクワイエットゾーンQ)に亘って斜めに、文字の一例としてのアルファベット「SAMPLE」が標識として、背景の色と異なる色(例えば、黒色、グレー色、又は有彩色)で配置される。上述したように、文字サイズは0.25[mm]以下であることが好適である。なお、図6(B)では斜めの直線上に文字が配置されるが、その場合に限定されるものではない。例えば、文字は、水平方向の直線上に配置されてもよいし、鉛直方向の直線上に配置されてもよい。また、文字は、直線上に配置されていなくてもよく、波上に配置されていてもよいし、1列の直線上(又は、波上)のみならず複数列の直線上に配置されていてもよい。
【0039】
そして、微小な標識(例えば、文字)が配置された二次元コード30は、印刷物に印刷される。一方で、二次元コード30の微小な標識は、希少な印刷装置(例えば、後述する印刷装置60)でしか印刷することはできず、また、標識周辺部により潰されてしまうので二次元コード30を完全にはコピーすることができない。そのため、微小な標識のない二次元コードが印刷された印刷物に対応する商品をすべて不正商品であるとみなすことができる。利用者は、二次元コード30に配置される標識を肉眼ではほぼ読み取ることできないが、拡大鏡を使って読み取ることができる。
【0040】
一方で、二次元コード30を読み取るQRコードリーダの分解能は、上述したようにせいぜい0.25[mm]程度である。二次元コード30に配置される標識は微小サイズ(0.25[mm]以下)であり、標識周辺部により潰されて欠けのないシンボルS(及び無地のクワイエットゾーンQ)としてリーダに認識されるため、二次元コード30をあたかも標識が存在しないものとしてリーダで読み取ることができる。
【0041】
図6を用いて説明した二次元コード30(又は、一次元コード)によれば、二次元コード30をリーダで読み取ることができる一方で、利用者は、二次元コード30が印刷された印刷物に対応する商品を真正商品であると識別し、微小な標識が配置されていないコードが印刷された印刷物に対応する商品を不正商品であると識別することができる。そのため、流通過程において真正商品と不正商品とを識別し、不正商品の取引を抑止することができる。
【0042】
また、標識は、図1に示す二次元コード10のクワイエットゾーンQに配置されてもよいし、図4に示す一次元コード20のクワイエットゾーンQに配置されてもよい。前者の場合について図7及び図8を用いて説明する。なお、後者についても同様である。
【0043】
図7(A)は、印刷コード1の一例である二次元コード40を示す。二次元コード40は、図1に示す二次元コード10と同様に印刷物に印刷されるものであり、中央のデータ領域(シンボル)Sと、周囲のクワイエットゾーンQとから構成される。図7(B)は、図7(A)に示す二次元コード40の部分Fの一例を拡大した図である。そして、図7(B)は、二次元コード40に、微小な標識としての文字を1列又は複数列、例えば2列配置した例である。なお、図7(B)において、部分Fのサイズに対する文字の大きさは便宜上変更されて示されている。
【0044】
図7(B)の部分Fに示すように、二次元コード40には、クワイエットゾーンQに亘って、文字の一例としての漢字「日本国」、「薔薇」が標識として、背景の色と異なる色(例えば、黒色、グレー色、又は有彩色)で2列配置される。上述したように、文字サイズは0.25[mm]以下であることが好適である。
【0045】
また、クワイエットゾーンQに亘って、実線、破線等の罫線(表罫、中細罫、又は、星罫等)が配置されてもよい。例えば、2列の文字の間に罫線が、背景の色と異なる色(例えば、黒色、グレー色、又は有彩色)で1列配置される。罫線の太さは、文字サイズに合わせ、0.25[mm]以下であることが好適である。
【0046】
一方で、図8(A)は、印刷コード1の一例である二次元コード50を示す。二次元コード50は、図1に示す二次元コード10と同様に印刷物に印刷されるものであり、中央のデータ領域(シンボル)Sと、周囲のクワイエットゾーンQとから構成される。図8(B)は、図8(A)に示す二次元コード50の部分Gの一例を拡大した図である。そして、図8(B)は、二次元コード40に、微小な標識としての文字を1列又は複数列、例えば3列配置した例である。なお、図8(B)において、部分Gのサイズに対する文字の大きさは便宜上変更されて示されている。
【0047】
図8(B)の部分Gに示すように、二次元コード50には、四隅を除くクワイエットゾーンQに亘って、文字の一例としての漢字「日本国」と「薔薇」とが標識として、背景の色と異なる色(例えば、黒色、グレー色、又は有彩色)で3列配置される。上述したように、文字サイズは0.25[mm]以下であることが好適である。
【0048】
そして、微小な標識(例えば、文字)が配置された二次元コード40,50は、印刷物に印刷される。一方で、二次元コード40,50の微小な標識は、希少な印刷装置(例えば、後述する印刷装置60)でしか印刷することはできず、また、標識周辺部により潰されてしまうので二次元コード40,50を完全にはコピーすることができない。そのため、微小な標識のない二次元コードが印刷された印刷物に対応する商品をすべて不正商品であるとみなすことができる。利用者は、二次元コード40,50に配置される標識を肉眼ではほぼ読み取ることができないが、拡大鏡を使って読み取ることができる。また、利用者は、二次元コード40,50に配置される標識を肉眼で読めないまでも、標識の存在自体を肉眼で認識することができる。
【0049】
一方で、二次元コード40,50を読み取るQRコードリーダの分解能は、上述したようにせいぜい0.25[mm]程度である。二次元コード40,50に配置される標識は微小サイズ(0.25[mm]以下)であり、標識周辺部により潰されて無地のクワイエットゾーンQとしてリーダに認識されるため、二次元コード40,50をあたかも標識が存在しないものとしてリーダで読み取ることができる。
【0050】
図7及び図8を用いて説明した二次元コード40,50(又は、一次元コード)によれば、二次元コード40,50をリーダで読み取ることができる一方で、利用者は、二次元コード40,50が印刷された印刷物に対応する商品を真正商品であると識別し、微小な標識が配置されていないコードが印刷された印刷物に対応する商品を不正商品であると識別することができる。その際、利用者は、拡大鏡を使って二次元コード40,50が正規のものと認識することができるが、拡大鏡を使わなくても微小な標識(及び罫線)の存在の認識により二次元コード40,50が正規のものと認識することもできる。そのため、流通過程において真正商品と不正商品とを識別し、不正商品の取引を抑止することができる。なお、図8に示す二次元コード50は、図7に示す二次元コード40と異なり、クワイエットゾーンQの四隅に微小な標識が存在しないブランク(欠け)をもつので、利用者は、外観上、微小な標識の存在を容易に認識することができる。
【0051】
続いて、印刷コード1を印刷する印刷装置60と、それを用いた印刷方法について説明する。
【0052】
図9は、印刷コード1を印刷する印刷装置60を示す。印刷装置60は、シート状の紙、プラスティック、ビニール、又は布等からなる印刷物に印刷コード1を印刷する装置である。以下、印刷装置60が紙に印刷コード1を印刷する場合について説明する。
【0053】
印刷装置60は、給紙ロール61と、連続フォーム62と、無端帯状印刷プレート63と、巻取りロール64と、切断装置65と、版胴66と、圧胴67と、プレートシリンダ68と、ガイドシリンダ(「ガイドローラ」とも呼ばれる)69と、インクロール70,71とを備える。
【0054】
印刷装置60は、給紙ロール61から繰り出される帯状の連続紙(ロール)である連続フォーム62に無端帯状印刷プレート63を用いて印刷コード1の印刷を施すロータリプレス式印刷機械である。なお、印刷装置60は、印刷コード1の全面を連続紙に印刷する。又は、印刷装置60は、フレキソ印刷方式を採用する印刷装置(図示省略)が従来の印刷コード(標識を含まない)を連続紙に印刷する前に、連続紙に標識(例えば、図7及び図8に示す標識(及び罫線))を印刷する。又は、フレキソ印刷方式を採用する印刷装置(図示省略)が従来の印刷コードを連続紙に印刷した後で、印刷装置60は、印刷された従来の印刷コードの上に標識(例えば、図2図3図5図6(B)、図7、及び図8に示す標識(及び罫線)の少なくとも1種類)を印刷する。
【0055】
印刷が施された連続フォーム62は、巻取りロール64に巻き取られるか、又は、折畳み機(図示省略)でジグザグ状に折り畳まれて堆積されたり、さらに、切断装置65で枚葉紙に切断されて収納ボックス(図示省略)に収納されたりする。
【0056】
印刷装置60は、無端帯状印刷プレート63を備えた版胴66と受胴としての圧胴67とを有する。無端帯状印刷プレート63は、版胴66のプレートシリンダ68と従動ローラである回転フリーのガイドシリンダ69との間に掛け渡される。ガイドシリンダ69は、版胴66側に進退自在に調整され、無端帯状印刷プレート63の張力が調整される。無端帯状印刷プレート63は、版胴66に対向して対をなすインクロール70,71が外接しており、無端帯状印刷プレート63の印刷面(版面)にインクを転着するようになっている。
【0057】
版胴66のプレートシリンダ68と圧胴シリンダ67aとは、削り出し等で形成された無垢の中実シリンダが用いられ、プレートシリンダ68と圧胴シリンダ67aは中空シリンダではなく、例えば無垢の鋼鉄シリンダが使用される。中実(鋼鉄)シリンダは、回転バランスが良く、真円の成形加工が容易であり、自重が大きく重量(例えば300[kg])があるため、印刷時に印圧の反発での版胴66のガタ付が少ない。版胴66のプレートシリンダ68や圧胴シリンダ67aを中実シリンダとすることにより、印圧による撓みを少なくすることができ、ベタと網点が混入した印刷でも網点が潰れたり、汚れたりすることがなく、ベタを綺麗に印刷することができる。
【0058】
また、無端帯状印刷プレート63は、一廻りの長手方向長さが数10[cm]から数10[m]の間で適宜選択される。無端帯状印刷プレート63は、細長い可撓性の長尺樹脂凸版印刷プレートの両端部を接続することにより無端帯状に構成される。また、複数枚の例えば400インチの長尺印刷プレートを順次接続していき、最後に両端部を互いに接続することにより数m~数十mの無端帯状に構成してもよい。
【0059】
図9に示す印刷装置60によれば、商品を示す印刷物に微小な標識を含む印刷コード1を印刷することができる。なお、図9を用いて印刷コード1全体(微小な標識を含む)、又は、印刷コード1の微小な標識のみを印刷装置60により印刷するものとして説明したがその場合に限定されるものではなく、印刷装置及び印刷方法は問われない。フレキソ印刷方式、又は、デジタル印刷(例えば、レーザプリンタ、インクジェットプリンタを用いた印刷)方式等を採用して、拡大鏡で認識することができる精度で微小な標識を印刷することは極めて困難ではある。しかし、印刷コード1全体、又は、微小な標識のみをフレキソ印刷方式、又は、デジタル印刷方式等により印刷物に印刷することを排除するものではない。なお、フレキソ印刷方式、又は、デジタル印刷等を採用して印刷コード1全体、又は、微小な標識のみを印刷する印刷装置が存在したとしてもごく稀なものであり汎用性(広く市場に出回ること)があるものではないと考えられるため、それが希少な印刷装置であることには変わりはない。
【0060】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、流通過程において真正商品と不正商品とを識別し、不正商品の取引を抑止することができる。
【0061】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
1…微小な標識が配置されるコード(印刷コード)
10,30,40,50…二次元コード
20…一次元コード
60…印刷装置
S…データ領域
Q…クワイエットゾーン
【要約】
【課題】流通過程において真正商品と不正商品とを識別し、不正商品の取引を抑止すること。
【解決手段】リーダで読み取り可能な識別子が印刷された印刷コードには、当該印刷コード内に、リーダで存在を認識できない程度の微小な標識が配置される。これにより、当該印刷コードをリーダで読み取ることができる一方で、利用者(例えば、消費者、真正商品の製造元及び流通業者)は、当該印刷コードが印刷された印刷物に対応する商品を真正商品であると識別し、微小な標識が配置されていない印刷コードが印刷された印刷物に対応する商品を不正商品であると識別することができる。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9