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特許7320334新規なジアミン及びその製造方法、並びに該ジアミンより製造されるポリアミック酸及びポリイミド
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  • 特許-新規なジアミン及びその製造方法、並びに該ジアミンより製造されるポリアミック酸及びポリイミド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】新規なジアミン及びその製造方法、並びに該ジアミンより製造されるポリアミック酸及びポリイミド
(51)【国際特許分類】
   C07C 229/60 20060101AFI20230727BHJP
   C07C 205/57 20060101ALI20230727BHJP
   C07C 227/04 20060101ALI20230727BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20230727BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
C07C229/60 CSP
C07C205/57
C07C227/04
C08G73/10
C07B61/00 300
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023046456
(22)【出願日】2023-03-23
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2022070716
(32)【優先日】2022-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂口 勇二
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 亮輝
(72)【発明者】
【氏名】仲辻 秀文
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-255252(JP,A)
【文献】国際公開第2022/239534(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第114989429(CN,A)
【文献】HASEGAWA Masatoshi and HISHIKI Tomoaki,Poly(ester imide)s Possessing Low Coeffcients of Thermal Expansion and Low Water Absorption (V). Eff,Polymers,2020年04月08日,12, 859,doi:10.3390/polym12040859
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C、C07B、C08G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
で表されるジアミン。
【請求項2】
下記式(2):
【化2】
で表されるジニトロ化合物を還元する、請求項1に記載のジアミンの製造方法。
【請求項3】
下記式(2):
【化3】
で表されるジニトロ化合物。
【請求項4】
下記一般式(3):
【化4】
(式中、Aは4価の芳香族基又は4価の脂肪族基を表す。)
で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸。
【請求項5】
下記一般式(4):
【化5】
(式中、Aは4価の芳香族基又は4価の脂肪族基を表す。)
で表される繰り返し単位を有するポリイミド。
【請求項6】
請求項4に記載のポリアミック酸および溶媒を含有するポリアミック酸溶液。
【請求項7】
請求項4に記載のポリアミック酸を含有するフィルム。
【請求項8】
請求項5に記載のポリイミドを含有するフィルム。
【請求項9】
請求項5に記載のポリイミドを含有する層を有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂等の原料として有用な新規なエステル基含有ジアミン及びその製造方法、並びに該ジアミンより製造されるポリアミック酸及びポリイミドに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、現存する樹脂の中で最高レベルの耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、耐放射線性などを併せ持ち、原料の組み合わせによって容易に様々な用途に合わせた特性を発現できるため幅広い分野で使用されている。
【0003】
中でもポリイミドの用途として、近年第5世代通信システムの普及に伴い、フレキシブルプリント配線板(FPC)に注目が集まっている。FPCの基板材料であるポリイミドは、実装工程において様々な熱サイクルに曝されて寸法変化が生じるため、これを抑えるために、ポリイミドの耐熱性が高い(例えば、ガラス転移温度(Tg)が工程温度よりも高い)こと、及び線熱膨張係数(CTE)ができるだけ低い(例えば、銅箔のCTE(約20ppm/K)と同等かそれより低い)ことが望ましい。
【0004】
このような高耐熱性かつ低CTEを有するポリイミドを与えるジアミンとして、下記式(8)で表されるジアミンが知られている(特許文献1)。
【0005】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平08-048773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記式(8)で表されるジアミンは溶媒溶解性が極めて乏しいため、均一系で重合を行うには加熱下に該ジアミンを完溶させ、酸二無水物と混合する必要があり、そのため、製造工程が煩雑になったり、生産効率が低下するといった問題が生じる場合がある。
【0008】
本発明は、上記式(8)で表されるジアミンと類似の構造を有し、且つ溶媒溶解性に優れる、新規なジアミンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、下記式(1)で表されるジアミンが優れた溶媒溶解性を示し、前記課題が解決可能であることを見出した。具体的には、本発明は以下の発明を含む。
【0010】
〔1〕
下記式(1):
【0011】
【化2】
で表されるジアミン。
【0012】
〔2〕
下記式(2):
【0013】
【化3】
で表されるジニトロ化合物を還元する、〔1〕に記載のジアミンの製造方法。
【0014】
〔3〕
下記式(2):
【0015】
【化4】
で表されるジニトロ化合物。
【0016】
〔4〕
下記一般式(3):
【0017】
【化5】
(式中、Aは4価の芳香族基又は4価の脂肪族基を表す。)
で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸。
【0018】
〔5〕
下記一般式(4):
【0019】
【化6】
(式中、Aは4価の芳香族基又は4価の脂肪族基を表す。)
で表される繰り返し単位を有するポリイミド。
【0020】
〔6〕
〔4〕に記載のポリアミック酸および溶媒を含有するポリアミック酸溶液。
【0021】
〔7〕
〔4〕に記載のポリアミック酸を含有するフィルム。
【0022】
〔8〕
〔5〕に記載のポリイミドを含有するフィルム。
【0023】
〔9〕
〔5〕に記載のポリイミドを含有する層を有する積層体。
【発明の効果】
【0024】
上記した本発明のジアミン(上記式(1)で表されるジアミン)は、上記式(8)で表されるジアミンと類似の構造を有するにも拘わらず、優れた溶媒溶解性を有する。そのため、特に加熱を行わず室温(25℃)付近でも均一系で反応を行うことが可能であり、ゆえに、室温(25℃)付近でも十分に重合反応が進行し、また、オリゴマー化やゲル化を抑制して本発明のポリアミック酸(上記一般式(3)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸)の均一な溶液を得ることができる。
【0025】
また、本発明のジアミンより製造される本発明のポリイミド(上記一般式(4)で表される繰り返し単位を有するポリイミド)は、高Tgかつ低CTEであるのみならず、低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)にも優れる。近年の5G用途のFPC基板材料には、伝送損失(伝送ロス)低減の観点から低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)を有することが求められていることから、本発明のポリイミドは、例えばFPC基板材料、特に高周波FPC基板材料(例えば、フレキシブル銅張積層板やカバーレイフィルム等の積層体における樹脂基板等)として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施例1で得られた上記式(2)で表されるジニトロ化合物のH-NMRチャートである。
図2図2は、実施例2で得られた上記式(1)で表されるジアミンのH-NMRチャートである。
図3図3は、実施例2で得られた上記式(1)で表されるジアミンのLC-MSチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0028】
<本発明のジアミン>
本発明のジアミンは、上記式(1)で表される構造を有する。
【0029】
本発明のジアミンは、例えば、tert-ブチルヒドロキノン又はその誘導体と、4-ニトロ安息香酸またはその誘導体とを反応させて上記式(2)で表されるジニトロ化合物を得(エステル化反応)、該ジニトロ化合物のニトロ基を還元する(アミノ化反応)方法により製造することができる。
【0030】
上記エステル化反応の方法としては、例えば、tert-ブチルヒドロキノンと4-ニトロ安息香酸類とを高温で直接脱水反応させる方法;tert-ブチルヒドロキノンと4-ニトロ安息香酸類とをN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水試薬を用いて脱水縮合させる方法;tert-ブチルヒドロキノンのジアセテート化体と4-ニトロ安息香酸類とを高温で反応させて脱酢酸してエステル化する方法(エステル交換法);tert-ブチルヒドロキノンと4-ニトロ安息香酸ハライドとを脱酸剤の存在下で反応させる方法(酸ハライド法);トシルクロリド/N,N-ジメチルホルムアミド/ピリジン混合物を用いて4-ニトロ安息香酸類のカルボキシル基を活性化しtert-ブチルヒドロキノンと反応させる方法等が挙げられる。これらの方法の中でも、経済性、反応性の観点から酸ハライド法が好ましい。以下、酸ハライド法について詳述する。
【0031】
上記酸ハライド法における4-ニトロ安息香酸ハライドとしては、例えば、4-ニトロ安息香酸クロリド、4-ニトロ安息香酸ブロミド、4-ニトロ安息香酸ヨージド等が挙げられる。これら4-ニトロ安息香酸ハライドの中でも、4-ニトロ安息香酸クロリドが好ましい。また、4-ニトロ安息香酸ハライドの使用量は、例えば、tert-ブチルヒドロキノン1モルに対して2モル~4モル、好ましくは2モル~3モルである。使用量が2モル以上であれば十分な反応速度を得られ、また、4モル以下であれば未反応の4-ニトロ安息香酸ハライドが低減でき、得られる本発明のジアミンの純度をより向上させることができる。
【0032】
上記酸ハライド法における脱酸剤として、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン等の有機3級アミン類、プロピレンオキサイド、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ類、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。これら脱酸剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これら脱酸剤の中でも、安価かつ反応後の分離除去が容易であることからピリジンが好ましい。また、脱酸剤の使用量は、例えば、tert-ブチルヒドロキノン1モルに対して2モル~4モル、好ましくは2モル~3モルである。使用量が2モル以上であれば十分な反応速度が得られ、また、4モル以下であれば不純物の生成を抑制することができる。
【0033】
酸ハライド法は、通常溶媒の存在下に実施される。酸ハライド法で使用可能な溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジグライム、トリグライム等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶媒などが挙げられる。これら溶媒の中でも、入手性及び取扱性の点から、エーテル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ニトリル系溶媒が好ましい。これら溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、溶媒を使用する際の使用量は、例えば、tert-ブチルヒドロキノン1重量倍に対し1重量倍~30重量倍、好ましくは1重量倍~5重量倍である。
【0034】
酸ハライド法は、例えば、-10℃~120℃、好ましくは-5℃~100℃、より好ましくは20℃~90℃で実施する。反応温度が120℃以下であれば、副生成物がより低減され、また、-10℃以上であれば十分な反応速度が得られる。
【0035】
酸ハライド法は、例えば、撹拌下、4-ニトロ安息香酸ハライドと上記溶媒とを含む溶液に、別途調製したtert-ブチルヒドロキノン、脱酸剤及び上記溶媒を含む溶液を、上記した温度範囲となるよう間欠的あるいは連続的に添加した後、上記した温度範囲にてさらに反応を継続する方法や、4-ニトロ安息香酸ハライド、tert-ブチルヒドロキノン及び上記溶媒を含む溶液に、脱酸剤もしくは脱酸剤と上記溶媒とを含む溶液を上記温度範囲となるよう間欠的あるいは連続的に添加した後、上記温度範囲でさらに反応を継続する方法等が挙げられる。
【0036】
酸ハライド法実施後、得られた反応混合物は、そのまま後述するアミノ化反応に用いてもよく、慣用の精製方法(抽出、洗浄、吸着、水蒸気蒸留、晶析、カラム精製等)により精製してもよい。また、精製は一回のみ、もしくは複数回行ってもよい。
【0037】
アミノ化反応の方法としては、例えば、上記式(2)で表されるジニトロ化合物を不活性な溶媒に溶解させ、水素雰囲気化、パラジウムや白金等の遷移金属原子を活性炭に担持させた触媒を用い還元する方法(接触還元法)等が挙げられる。
【0038】
接触還元法における触媒としては、例えば、パラジウムや白金等の遷移金属原子を活性炭に担持させた触媒が挙げられ、この中でもパラジウムを活性炭に担持させた触媒(パラジウム/カーボン)又は白金を活性炭に担持させた触媒(白金/カーボン)が反応速度の観点から好ましい。これら触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これら触媒の使用量は、例えば、触媒中の遷移金属原子の重量として、上記式(2)で表されるジニトロ化合物1重量倍に対し0.0001重量倍~0.01重量倍である。
【0039】
接触還元法における溶媒としては、例えば、上記式(2)で表されるジニトロ化合物、あるいは生成物である上記式(1)で表されるジアミンと反応せず、且つ接触還元時に反応を受けないものであればよく、例えば、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジグライム、トリグライム等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホン系溶媒;ピコリン;ピリジン等が挙げられる。これら溶媒の中でも、アミド系溶媒が好ましい。これら溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これら溶媒の使用量としては、例えば、上記式(2)で表されるジニトロ化合物1重量倍に対し2~10重量倍である。
【0040】
接触還元法は、例えば、20℃~160℃、反応速度の向上及び不純物生成抑制の観点から好ましくは20℃~100℃で実施される。
【0041】
接触還元法を実施後、例えば、触媒を濾過により除去した後、得られた反応混合物を上記式(1)で表されるジアミンが溶解し難い溶媒(以下、目的物が溶解し難い溶媒を「貧溶媒」と称することがある)に滴下する方法等により、上記式(1)で表されるジアミンを分離することができる。こうして得られた上記式(1)で表されるジアミンは、このまま次工程で使用してもよいが、慣用の精製方法(抽出、洗浄、吸着、水蒸気蒸留、晶析、カラム精製など)により精製してもよい。また、精製は一回のみ、もしくは複数回行ってもよい。
【0042】
<本発明のポリアミック酸及びその製造方法>
本発明のポリアミック酸は、上記一般式(3)で表される繰り返し単位を有する。なお、上記一般式(3)において、構造単位Aに結合した2つのカルボキシル基は便宜上シス位置として記載されているが、実際はシス位置とトランス位置とが混在したものである。
【0043】
上記一般式(3)の構造単位Aは、4価の芳香族基または4価の脂肪族基を表す。なお、4価の芳香族基は芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来し、4価の脂肪族基は脂肪族テトラカルボン酸に由来する。
【0044】
上記一般式(3)における構造単位Aとしては、下記式(5)~(7)で表される構造のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。なお、*は結合点を表す。
【0045】
【化7】
【0046】
【化8】
【0047】
【化9】
【0048】
本発明のポリアミック酸の分子量は、例えば、重量平均分子量で1万~50万、好ましくは1万~30万、より好ましくは2万~20万である。ポリアミック酸の分子量が1万以上であれば、良好な力学特性を維持しやすい。またポリアミック酸の分子量が50万以下であれば、合成する場合に分子量をコントロールしやすく、また適度な粘度の溶液が得られやすく取扱いが容易である場合が多い。なお、ポリアミック酸の分子量は、例えば、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法等の常法により測定することができる。
【0049】
本発明のポリアミック酸は、例えば、上記式(1)で表されるジアミン(以下、「本発明のジアミン」と称することがある)と、必要に応じて本発明のジアミン以外の他のジアミン(以下、「他のジアミン」と称することがある。)とを溶媒(重合溶媒)に溶解後、酸二無水物粉末を添加し重合させる方法等により、重合溶媒の溶液(以下、「ポリアミック酸溶液」と称することもある)として得ることができる。本発明のジアミンは溶媒溶解性に優れることから、特に加熱を行わず室温(25℃)付近でも均一系で反応を行うことが可能であり、ゆえに、室温(25℃)付近でも十分に重合反応が進行し、また、オリゴマー化やゲル化を抑制して本発明のポリアミック酸の均一な溶液を得ることができる。そのため、重合させる際の温度として、好ましくは10℃~30℃である。
【0050】
他のジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン等が挙げられる。より具体的には、例えば、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノトルエン、4,4-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,7-ジアミノ-ジメチルジベンゾチオフェン-5,5-ジオキシド、4,4-ジアミノベンゾフェノン,3,3’-ジアミノベンゾフェノン,4,4’-ビス(4-アミノフェノル)スルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン、1,2-ビス[2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、1-(4-アミノフェニル)-2,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-1H-インデン-5-アミン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,6-ジヒドロキシ-1,3-フェニレンジアミン、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン、3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル、1,6-ジアミノヘキサン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(4-シクロヘキシルアミン)、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビス(メチルアミン)、トリシクロ[3.3.1.13.7]デカン-1,3-ジアミン、4-アミノ安息香酸-4-アミノフェニルエステル、2-(4-アミノフェニル)-5-アミノベンゾオキサゾール、9,9-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2’-ビス(3-スルホプロポキシ)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル-3,3’-ジスルホン酸等が挙げられる。これら他のジアミンは、1種又は2種以上併用してもよい。他のジアミンを併用する場合、全ジアミン中の他のジアミンの使用量は、例えば、90重量%以下、好ましくは70重量%以下である。
【0051】
酸二無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、オキシジフタル酸二無水物、ビフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、m-タ-フェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、p-タ-フェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、1-カルボキシメチル-2,3,5-シクロペンタントリカルボン酸-2,6:3,5-二酸無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、4-フェニルエチニルフタル酸無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレン等が挙げられる。これら酸二無水物の中でも、上記一般式(3)における構造単位Aの好ましい態様に対応する、無水ピロメリット酸、ビフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレンが好ましい。これら酸二無水物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。酸二無水物の使用量は、例えば、本発明のジアミン、及び他のジアミンを併用する場合は他のジアミンも含めた全ジアミン1モルに対し0.9モル~1.1モル、重合度をより高める観点から好ましくは0.95モル~1.05モルである。
【0052】
重合溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;トリエチレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、2-メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコール等のグリコール系溶媒;フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノール等のフェノール系溶媒;1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジグライム、トリグライム等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホン系溶媒等が挙げられる。これら重合溶媒の中でも、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-ピロリドン等のアミド系溶媒が好ましい。これら重合溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
重合溶媒の使用量としては、反応系中のモノマー成分(ジアミン+酸二無水物)の合計濃度が通常5重量%~40重量%、好ましくは10重量%~30重量%となる量である。5重量%~40重量%のモノマー濃度範囲で重合を行うことにより、均一で高重合度のポリアミック酸溶液を得ることができる。なお、上記モノマー濃度範囲よりも低濃度で重合を行うと、ポリアミック酸の重合度が十分高くならず、最終的に得られるポリイミド膜が脆弱になる場合があり、上記モノマー濃度範囲よりも高濃度で重合を行うとモノマーが十分溶解しない場合や反応溶液が不均一になりゲル化する場合がある。上記の方法で得られた上記一般式(3)で表されるポリアミック酸溶液は通常、そのまま後述する方法で実施されるポリイミド化工程に使用する。
【0054】
<本発明のポリイミド及びその製造方法>
本発明のポリイミドは上記一般式(4)で表される繰り返し単位を有する。なお、上記一般式(4)における構造単位Aは、上記一般式(3)における構造単位Aと同じであり、好ましい態様についても同じである。
【0055】
本発明のポリイミドは、上記の方法で得られた本発明のポリアミック酸を脱水閉環反応(イミド化反応)することで製造することができる。イミド化反応の方法としては、例えば、熱イミド化法や化学イミド化法が挙げられる。まず、熱イミド化法について詳述する。
【0056】
熱イミド化法としては、例えば、上記の方法で得られた本発明のポリアミック酸溶液をガラス板上に流延し、真空中、あるいは窒素等の不活性ガス中、又は空気中で加熱を行う方法等が挙げられる。より具体的には、例えば、本発明のポリアミック酸溶液をガラス板上に流延し、これをオーブン中で50℃~190℃、好ましくは100℃~180℃で加熱して乾燥させることでポリアミック酸フィルム(薄膜)とし、更に、200℃~400℃、好ましくは230℃~350℃で加熱することでイミド化反応が進行し、ポリイミドフィルム(薄膜)が得られる。なお、イミド化反応は、真空中あるいは不活性ガス中で行うことが好ましい。
【0057】
続いて、化学イミド化法について詳述する。化学イミド化法としては、例えば、上記の方法で得られた本発明のポリアミック酸を、溶液中で、有機酸の無水物および塩基存在下に脱水閉環反応させる方法が挙げられる。より具体的には、例えば、ポリアミック酸溶液に必要に応じて、更に溶媒を加えて撹拌し易い適度な溶液粘度に調整し、撹拌しながら、そこに有機酸の無水物と塩基とからなる脱水閉環剤(化学イミド化剤)を添加し、0℃~100℃、好ましくは10℃~50℃で1時間~72時間撹拌することで、イミド化反応が進行し、ポリイミドが得られる。使用可能な溶媒としては、例えば、ポリアミック酸の重合溶媒と同じものが挙げられ、好ましい態様についても同じである。使用可能な有機酸の無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸等が挙げられ、中でも、取り扱いや分離のし易さから無水酢酸が好ましい。また、塩基としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、キノリン等の3級アミン等が挙げられ、中でも、取り扱いや分離のし易さからピリジンが好ましい。有機酸の無水物の使用量は、ポリアミック酸の理論脱水量1モルに対し、通常1モル~10モル、好ましくは2モル~5モルである。また塩基の使用量は、有機酸の無水物1モルに対し、通常0.1モル~2モル、好ましくは0.2モル~1モルである。
【0058】
上記化学イミド化法で得られた反応混合物には、未反応の塩基や有機酸の無水物、副生成物等(以下、これらをまとめて不純物ということがある。)が混入しているため、これらを除去してポリイミドを単離・精製してもよい。精製方法としては公知の方法が利用でき、例えば、イミド化反応後に得られた反応混合物を撹拌しながら大量の貧溶媒中に添加してポリイミドを析出させた後、ポリイミド粉末を回収して不純物が除去されるまで繰返し洗浄し、減圧乾燥して、ポリイミド粉末を得る方法等が適用できる。この時、使用できる貧溶媒としては、ポリイミドを析出させ、不純物を効率よく除去でき、乾燥し易い溶媒であれば良く、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類等が挙げられ、また、これらは混合して用いてもよい。貧溶媒中に添加して析出させる際のポリイミド溶液の濃度は、高すぎると析出するポリイミドが粒塊となり、その粗大な粒子中に不純物が残留する場合や、得られたポリイミド粉末を溶媒に再溶解する際に長時間要する場合がある。一方、ポリイミド溶液の濃度を薄くし過ぎると、多量の貧溶媒が必要となり、廃溶剤処理による環境負荷増大や製造コスト高になる場合がある。したがって、貧溶媒中に添加する際のポリイミド溶液の濃度は、20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。この時使用する貧溶媒の量はポリイミド溶液と同量(重量基準)以上が好ましく、1.5重量倍~10重量倍が好適である。得られたポリイミド粉末を回収し、残留溶媒を真空乾燥や熱風乾燥などで除去する。乾燥温度と時間は、ポリイミドが変質しない温度、時間であれば制限はなく、例えば、温度30℃~150℃で3時間~24時間乾燥させる。
【0059】
このようにして得られた上記一般式(4)で表されるポリイミド粉末をポリイミドフィルムとする場合、一旦上記一般式(4)で表されるポリイミド粉末を溶媒に溶解させポリイミド溶液とする必要がある。使用可能な溶媒としては、例えば、上記重合溶媒と同じ溶媒の他、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒等が挙げられる。これら溶媒は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。ポリイミド粉末の溶解方法は、空気中、または不活性ガス中で室温~溶媒の沸点以下の温度範囲で1時間~48時間かけて溶解させ、ポリイミド溶液にすることができる。
【0060】
こうして得られたポリイミド溶液をガラス板上に流延し、真空中、あるいは窒素等の不活性ガス中、または空気中で加熱することによりポリイミドフィルム(薄膜)を得ることができる。例えば、オーブン中、通常200℃~400℃、好ましくは250℃~350℃で乾燥させることにより、ポリイミドフィルムを得ることができる。ポリイミドフィルム作製は、真空中あるいは不活性ガス中で行うことが好ましい。
【0061】
化学イミド化反応は、基板上に形成されたポリアミック酸フィルムをピリジンやトリエチルアミン等の3級アミン存在下、無水酢酸等の脱水環化試薬を含有する溶液に浸漬することによって行うことも可能である。これにより、部分的またはほぼ完全にイミド化したポリイミドフィルムを作製することもでき、これを更に上記のように熱処理することでポリイミドフィルムが得られる。
【0062】
上述した方法によって得られた上記一般式(4)で表されるポリイミドの分子量は、重量平均分子量で1万~50万であることが好ましく、1万~30万であることがより好ましく、2万~20万であることがさらに好ましい。ポリイミドの分子量が1万以上であれば、成型可能であり、また良好な力学特性を維持しやすい。またポリイミドの分子量が50万以下であれば、合成する場合に分子量をコントロールしやすく、また適度な粘度の溶液が得られやすく取扱いが容易である場合が多い。なお、ポリイミドの分子量は、例えば、GPC法等の常法により測定することができる。
【実施例
【0063】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、各実施例・比較例で示した値は下記分析方法により分析した値である。
【0064】
[HPLC純度]
次の測定条件でHPLC測定を行ったときの面積百分率値を、実施例に記載している各化合物の純度とした。
<液体クロマトグラフィー測定条件>
装置:島津製作所(株)製LC-20AD
カラム:L-column2 ODS(3μm、4.6mmφ×150mm)
移動相:A液=50%アセトニトリル水(0.1体積%ギ酸添加)
B液=アセトニトリル(0.1体積%ギ酸添加)
移動相グラジエント:B液濃度:50%(0分)→100%(15分後)→100%(25分後)
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃、検出波長:UV254nm
【0065】
[NMR測定]
H-NMRは、内部標準としてテトラメチルシランを用い、溶媒として重ジメチルスルホオキシド(DMSO)を用いて、JEOL-ESC400分光計によって記録した。
【0066】
[LC-MS測定]
LC-MSは次の測定条件で分離、質量分析し、目的物を同定した。
<LC-MS測定条件>
装置:(株)Waters製「Xevo G2 Q-Tof」
カラム:CELI製
L-column2 ODS(2μm、2.1mmφ×100mm)
カラム温度:40℃
検出波長:UV 220-550nm
移動相:A液=10mM酢酸アンモニウム水、B液=アセトニトリル、
C液=イソプロピルアルコール
移動相流量:0.4ml/min
移動相グラジエント:A/B/C=40/50/10→0/90/10(5.21分)
検出法:Q-Tof
イオン化法:ESI(+)(-)法
Ion Source:電圧(+)2.0kV、温度120℃
Sampling Cone :電圧 30V、ガスフロー50L/h
Desolvation Cas:温度400℃、ガスフロー1200L/h
【0067】
[融点の測定]
TG-DTA((株)リガク製 TG-DTA 8121/S)を用いて、窒素気流下、室温から500℃まで10℃/分で昇温し、融点(融解吸熱最大ピークにおけるピークトップ温度)を測定した。
【0068】
[溶媒溶解性]
ジアミン化合物1重量部と、下記する溶媒5重量部とを混合し、下記評価基準に基づき溶媒溶解性を評価した。
<溶媒>
・NMP(N-メチルピロリドン)
・DMAc(N,N-ジメチルアセトアミド)
・DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)
<評価基準>
○:室温で溶解する
△:加温すると溶解し、冷却しても結晶が析出しない
×:加温すると溶解するが、冷却すると結晶が析出する、あるいは、加温しても溶解しない
【0069】
[5%重量減少温度の測定]
TG-DTA((株)リガク製 TG-DTA 8121/S)を用いて、窒素気流下、室温から500℃まで10℃/分で昇温し、5%重量減少温度(T in N、℃)を測定した。
【0070】
[ガラス転移温度の測定]
DMA(SII DMS-6100(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、引張モード(昇温速度5℃/分、周波数1Hz、温度40℃-350℃)で測定し、損失弾性率の極大値からガラス転移温度(Tg、℃)を求めた。
【0071】
[線熱膨張係数の測定]
5mm×10mmのサイズのポリイミドフィルムを熱機械分析装置((株)日立ハイテクサイエンス製 TMA-7100)を用いて、荷重(静荷重)を膜厚(μm)×0.5g重として、150℃まで加熱後40℃まで冷却した。これを450℃まで5℃/minでセカンドランして得られたTMA曲線の、100℃から200℃までの傾きの平均を線熱膨張係数(CTE、ppm/K)とした。
【0072】
[比誘電率および誘電正接の測定]
ベクトルネットワークアナライザ(Anritsu社製、商品名;MS46122B)及びTEモードの空洞共振器(AET社製)を用いて、周波数10GHzにおけるポリイミドフィルムの比誘電率および誘電正接を測定した。なお、測定に使用した材料は、温度:24℃~26℃、相対湿度:25%未満の条件下で、24時間放置したものである。
【0073】
[実施例1](上記式(2)で表されるジニトロ化合物の製造例)
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた四つ口フラスコに4-ニトロ安息香酸クロリド245.62g(1.32mol)、アセトニトリル400gを仕込み、攪拌しながら0℃まで冷却した。その後、攪拌しながらtert-ブチルヒドロキノン100.01g(0.60mol)、アセトニトリル400.00g、ピリジン104.71g(1.32mol)を混合溶解したものを0℃~15℃で20分かけて滴下した。その後20℃まで昇温し、反応温度を20℃~25℃に保ちながら15時間攪拌した。反応終了後、析出していた結晶を濾過、乾燥することにより、上記式(2)で表されるジニトロ化合物の白色粉末275.28g(HPLC純度98.28%、有姿収率98.51%)を得た。H-NMRのスペクトル値を下記すると共に、図1に測定チャートを示す。
【0074】
H-NMR(ジメチルスルホキシド-d6)]
δ(ppm)=8.47-8.37ppm(8H、m)、7.42-7.39(2H、m)、7.33(1H、dd)、1.32(9H、s)。
【0075】
[実施例2](上記式(1)で表されるジアミンの製造例)
水素導入管を有する四つ口フラスコに実施例1で得られた式(2)で表されるジニトロ化合物40.01g(0.09mol)、水を50重量%含むパラジウム/カーボン粉末(パラジウム含量:乾燥重量換算で5重量%)0.80g及びN,N-ジメチルホルムアミド400.01gを仕込み、反応容器を水素で置換した。これを撹拌しながら80℃まで昇温し、式(2)で表されるジニトロ化合物を溶解させた後、80℃で2時間攪拌し反応させた。反応終了後、パラジウム/カーボン粉末を濾過により除去し、濾液を室温まで冷却した後、大量の水中に滴下することで結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、メタノールで洗浄した後、90℃で6時間真空乾燥することで上記式(1)で表されるジアミンの灰色粉末32.99g(HPLC純度99.81%、有姿収率94.68%)を得た。融点(TG-DTA)は295.2℃であった。また、H-NMR及びLC-MSのスペクトル値を下記すると共に、図2及び3にそれぞれの測定チャートを示す。また、上記評価基準に従って溶媒溶解性を評価した結果を表1に示す。
【0076】
H-NMR(ジメチルスルホキシド-d6)]
δ(ppm)=7.82-7.78ppm(4H、m)、7.14-7.09(3H、m)、6.66-6.62(4H、m)、6.19-6.15(4H、m)、1.29(9H、s)。
【0077】
[LC-MS]
マススペクトル値([M+H]):405.1822
(上記式(1)で表されるジアミンの計算上の分子量(ESI;[C2424+H]):405.1809)。
【0078】
[比較例1](上記式(8)で表される化合物)
上記式(8)で表される化合物(HPLC純度:99.68%)について、上記評価基準に従って溶媒溶解性を評価した。結果を表1に示す。
【0079】
[参考例1](下記式(9)で表される化合物)
下記式(9)で表される化合物(HPLC純度:99.51%)について、上記評価基準に従って溶媒溶解性を評価した。結果を表1に示す。
【0080】
【化10】
【0081】
【表1】
【0082】
[実施例3](上記一般式(3)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸及び上記一般式(4)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの製造例)
実施例2で得られた上記式(1)で表されるジアミン6.08g(15.00mmol)を脱水N-メチルピロリドン(以下、「NMP」と称することがある)24.46g中に溶解した。次いで、ビフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物(以下「BPDA」と称することがある)4.41g(15.00mmol)をゆっくり加えた後(全溶質濃度:30重量%)、室温で24時間撹拌したところ、増粘して撹拌困難になったため、適宜脱水NMPを加えながら更に48時間撹拌して上記一般式(3)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸の溶液を得た(最終溶質濃度:18.53重量%)。次いで、得られたポリアミック酸溶液をガラス板上に塗布した後、80℃で3時間加熱してポリアミック酸フィルムを得、更にこれを250℃で1時間、300℃で1時間加熱して熱イミド化を行った。その後、残留応力を取り除くためガラス基板から剥離して310℃で1時間加熱し、上記一般式(4)で表される繰り返し単位を有するポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムについて、ガラス転移温度、5%重量減少温度、線熱膨張係数、比誘電率及び誘電正接を測定した。測定結果を表2に示す。
【0083】
[参考例2](上記式(8)で表されるジアミンとBPDAから得られるポリイミド)
上記式(8)で表されるジアミン1.05g(3.00mmol)を脱水NMP7.71g中に加え、室温にてしばらく撹拌を行ったが完溶しなかった。そこで、95℃に加熱してジアミンを溶解し、次いで、95℃加熱下にBPDA0.88g(3.00mmol)をゆっくり加えた後(全溶質濃度:30重量%)、室温まで放冷して2時間反応させたところ、増粘して撹拌が困難になったため、脱水NMPを使用して15.15重量%まで希釈し、さらに撹拌を継続してポリアミック酸溶液を得た(BPDA添加後~ポリアミック酸を得るまで、合計72時間撹拌を行った)。得られたポリアミック酸溶液をガラス板上に塗布した後、80℃で3時間加熱してポリアミック酸フィルムとし、更にこれを250℃で1時間、300℃で1時間加熱して熱イミド化を行った。その後、残留応力を取り除くためガラス基板から剥離して310℃で1時間加熱してポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムについて、ガラス転移温度、5%重量減少温度、線熱膨張係数、比誘電率及び誘電正接を測定した。測定結果を表2に示す。
【0084】
[参考例3](上記式(9)で表されるジアミンとBPDAから得られるポリイミド)
上記式(8)で表されるジアミンに変えて上記式(9)で表されるジアミン3.62g(10.00mmоl)を使用した以外は参考例2と同様にしてポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムについて、ガラス転移温度、5%重量減少温度、線熱膨張係数、比誘電率及び誘電正接を測定した。測定結果を表2に示す。
【0085】
[参考例4](下記式(10)で表されるジアミンとBPDAから得られるポリイミド)
上記式(8)で表されるジアミンに変えて上記式(10)で表されるジアミン0.69g(1.50mmоl)を使用した以外は参考例2と同様にしてポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムについて、ガラス転移温度、5%重量減少温度、線熱膨張係数、比誘電率及び誘電正接を測定した。測定結果を表2に示す。
【0086】
【化11】
【0087】
【表2】
【要約】
【課題】
下記式(8)で表されるジアミンと類似の構造を有し、且つ溶媒溶解性に優れる、新規なジアミンの提供。
【解決手段】
鋭意研究を重ねた結果、下記式(1)で表されるジアミンが、上記式(8)で表されるジアミンと類似の構造を有するにも拘わらず優れた溶媒溶解性を示し、前記課題が解決可能であることを見出した。また、本発明のジアミンより製造される本発明のポリイミドは、高Tg、低CTE、低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)に優れ、特に高周波FPC基板材料(例えば、フレキシブル銅張積層板やカバーレイフィルム等の積層体における樹脂基板等)として好適に使用することができる。
【選択図】なし
図1
図2
図3