(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】マスク基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/60 20120101AFI20230727BHJP
【FI】
G03F1/60
(21)【出願番号】P 2019105294
(22)【出願日】2019-06-05
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】506214390
【氏名又は名称】株式会社ファインサーフェス技術
(73)【特許権者】
【識別番号】000101710
【氏名又は名称】アルバック成膜株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【氏名又は名称】土屋 亮
(72)【発明者】
【氏名】内田 亮
(72)【発明者】
【氏名】堀口 秀
(72)【発明者】
【氏名】石渡 大和
(72)【発明者】
【氏名】諸沢 成浩
(72)【発明者】
【氏名】金井 修一郎
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-309143(JP,A)
【文献】特開2019-012183(JP,A)
【文献】特開2018-189997(JP,A)
【文献】特開2005-300566(JP,A)
【文献】国際公開第2010/092937(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00 - 1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の矩形状平板からなり、かつ、一方の主面、他方の主面、および4つの側面からなる表面を有するマスク基板であって、
前記側面は、
前記主面の両方に対して略垂直をなすT端面と、
前記T端面および前記一方の主面の間に位置し、該T端面および該一方の主面に対して所望の角度で傾斜してなる第一C端面と、
前記T端面および前記他方の主面の間に位置し、該T端面および該他方の主面に対して所望の角度で傾斜してなる第二C端面とから構成されており、
前記T端面は、局所的に粗面化された表面を有する領域αと、該領域αを取り囲み、かつ、該領域αに比べて粗さの小さな表面を有する領域βとからなり、
前記T端面の少なくとも一つが、複数の前記領域αを備え、かつ、互いに離間して配置されていることを特徴とするマスク基板。
【請求項2】
前記領域αの表面粗さをR1(研削面)と前記領域βの表面粗さをR2(研磨面)と定義した場合、前記T端面が、R1>R2 を満たす関係にあることを特徴とする
請求項1に記載のマスク基板。
【請求項3】
前記第一C端面の表面粗さをRc1、前記第二C端面の表面粗さをRc2と定義した場合、前記R1に対して、R1>Rc1、かつ、R1>Rc2 を満たす関係にあることを特徴とする
請求項2に記載のマスク基板。
【請求項4】
前記領域αが外部からマスク基板に照射されたセンサー光に対する検出部として機能することを特徴とする請求項1乃至
請求項3のいずれか一項に記載のマスク基板。
【請求項5】
透光性の矩形状平板からなり、かつ、一方の主面、他方の主面、および4つの側面からなる表面を有するマスク基板の製造方法であって、
前記主面の両方に対して略垂直をなすT端面の表面を加工する工程を含み、
前記工程は、局所的に粗面化された表面を有する領域αと、該領域αを取り囲み、かつ、該領域αに比べて粗さの小さな表面を有する領域βと作り分けるために、前もって前記領域αを形成した後、前記領域αのうち特定の領域をマスキングした状態で前記領域αを研磨することにより前記マスキングされた特定の領域に前記領域βを形成する、ことを特徴とするマスク基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FPD等に用いられる大面積のマスク基板およびその製造方法に係る。より詳細には、基板位置を精度よく検出することが可能であり、かつ、パーティクルの発生を抑制できる、マスク基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ(以下、Flat Panel Display:FPD)とは、筐体が板状で画面が平面になっておるディスプレイ機器の総称である。FPDとしては、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)や、プラズマディスプレイ(Plasma Display Panel)、有機ELディスプレイ(Organic ElectroLuminescence Display:OELD)などが挙げられる。開発当初のFPDは、画面のサイズが小さいものであったが、開発が進むにつれて、近年は大画面化が求められている。
【0003】
FPDの製造現場においては、そのデバイスの回路パターンをレジストが塗布されたガラスプレートなどの感光基板上に露光転写するリソグラフィ工程が行われる。このようなリソグラフィ工程では、マスク基板に形成された回路パターン像を縮小投影光学系などを介して感光基板上に投影露光する操作が行われる。このような操作を行う場合、FPDに使用される透光性基板は、その保持具と接触する状況が発生する(特許文献1)。
【0004】
このような透光性基板は、
図7に示すような外形構造を備えている。
図7(a)は透光性基板の全体を示す斜視図であり、
図7(b)は
図7(a)に二点鎖線で示す領域の部分拡大図である。透光性基板50の外面は、一方の主面51a、他方の主面51b、4つの側面T52から構成される。側面52は、両主面と略垂直をなす端面T、この端面Tと一方の主面51aとに接続される第一C端面C51、および、この端面Tと他方の主面51bとに接続される第二C端面C52、から構成される。側面52が、上述した保持具と接触する部位に相当する。このため、側面が鏡面化されていない透光性基板では、側面に付着していたパーティクルが、洗浄時に両主面へ回り込み、両主面におけるパーティクルの発生源となっていることを、本発明者らは見いだした。
【0005】
しかしながら、側面に鏡面加工を施した場合には、マスク基板を加工した後、転写を行う際に、基板の側面(特に、端面T)に対してレーザ光を照射し、基板を検出する装置では、センサーが基板(の位置)を正確に検出できず、基板の搬送不良などトラブルが発生する原因となっていた。
【0006】
透光性基板を容易かつ確実に所定位置に配置することを可能とする透光性基板の位置決め方法、位置決め装置が開示されている(特許文献2)。この位置決め装置では、共通のレーザ光源から出射されたレーザ光を光路分離素子により2つのレーザ光束に分離して基板の2つの角部分が位置すべき場所に向けて出射する。2つの角部分の端面は磨ガラス状にあるため、光散乱性を備えている。このため、2つの角部分が所定位置に到来すると、2つの角部分が光るので、2つの角部分が所定位置に到来したことを監視できる、という位置決め方法が記載されている。
【0007】
この位置決め方法は、画面サイズが小さい基板には好適ではあっても、大画面化に対応する画面サイズの大きな基板には柔軟に対応することが困難であった。共通のレーザ光源から出射されたレーザ光を光路分離素子により2つのレーザ光束に分離して基板の2つの角部分が位置すべき場所に向けて出射するには、大がかりな光路の構成を要するため、製造現場には大きなフットプリントが必要となるため、改善策の開発が求められていた。
【0008】
したがって、洗浄工程において、基板の側面に付着していたパーティクルが基板の主面(表面や裏面)に回り込み、フォトマスクブランクやフォトマスクの製造工程における、欠陥発生のリスクを抑制することが可能なマスク基板およびその製造方法の開発が期待されていた。その際に、基板位置を精度よく検出することが可能なマスク基板であることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平9-171246号公報
【文献】特開2007-156345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、基板位置を精度よく検出することが可能であり、かつ、パーティクルの発生を抑制できる、マスク基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に記載のマスク基板は、透光性の矩形状平板からなり、かつ、一方の主面、他方の主面、および4つの側面からなる表面を有するマスク基板であって、前記側面は、前記主面の両方に対して略垂直をなすT端面と、前記T端面および前記一方の主面の間に位置し、該T端面および該一方の主面に対して所望の角度で傾斜してなる第一C端面と、前記T端面および前記他方の主面の間に位置し、該T端面および該他方の主面に対して所望の角度で傾斜してなる第二C端面とから構成されており、前記T端面は、局所的に粗面化された表面面を有する領域αと、該領域αを取り囲み、かつ、該領域αに比べて粗さの小さな表面を有する領域βとからなり、前記T端面の少なくとも一つが、複数の前記領域αを備え、かつ、互いに離間して配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2に記載のマスク基板は、請求項1において、前記領域αの表面粗さをR1(研削面)と前記領域βの表面粗さをR2(研磨面)と定義した場合、前記T端面が、R1>R2 を満たす関係にあることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3に記載のマスク基板は、請求項2において、前記第一C端面の表面粗さをRc1、前記第二C端面の表面粗さをRc2と定義した場合、前記R1に対して、R1>Rc1、かつ、R1>Rc2 を満たす関係にあることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項4に記載のマスク基板は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、前記領域αが外部からマスク基板に照射されたセンサー光に対する検出部として機能することを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項5に記載のマスク基板の製造方法は、透光性の矩形状平板からなり、かつ、一方の主面、他方の主面、および4つの側面からなる表面を有するマスク基板の製造方法であって、前記主面の両方に対して略垂直をなすT端面の表面を加工する工程を含み、前記工程は、局所的に粗面化された表面を有する領域αと、該領域αを取り囲み、かつ、該領域αに比べて粗さの小さな表面を有する領域βと作り分けるために、前もって前記領域αを形成した後、前記領域αのうち特定の領域をマスキングした状態で前記領域αを研磨することにより前記マスキングされた特定の領域に前記領域βを形成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るマスク基板は、透光性の矩形状平板からなり、かつ、一方の主面、他方の主面、および4つの側面からなる表面を有する。
前記側面は、前記主面の両方に対して略垂直をなすT端面を備え、前記T端面は、局所的に粗面化された表面を有する領域αと、該領域αを取り囲み、かつ、該領域αに比べて粗さの小さな表面を有する領域βとからなる。
すなわち、T端面の大部分の領域は、粗さの小さな表面を有する領域βからなり、かつ、この領域β内に局所的に粗面化された表面を有する領域αが存在する。
これにより、本発明のマスク基板は、T端面の大部分の領域を発生源とするパーティクルの発生を抑制できる。また、領域β内に局所的に粗面化された表面を有する領域αは、この領域αにレーザ光を照射した際に十分な反射光が得られるので、基板位置を精度よく検出することが可能となる。
よって、本発明は、基板位置を精度よく検出することが可能であり、かつ、パーティクルの発生を抑制できるマスク基板をもたらす。
【0018】
本発明に係る製造方法は、透光性の矩形状平板からなり、かつ、一方の主面、他方の主面、および4つの側面からなる表面を有するマスク基板の製造方法である。
前記主面の両方に対して略垂直をなすT端面の表面を加工する工程を含み、前記工程は、局所的に粗面化された表面を有する領域αと、該領域αを取り囲み、かつ、該領域αに比べて粗さの小さな表面を有する領域βと作り分けるために、前もって前記領域αを形成した後、前記領域αのうち特定の領域をマスキングした状態で前記領域αを研磨することにより前記マスキングされた特定の領域に前記領域βを形成する。
これにより、上述した本発明に係るマスク基板を、基板サイズに依存せず作製することができる。すなわち、本発明(マスク基板の製造方法)は、基板位置を精度よく検出することが可能であり、かつ、パーティクルの発生を抑制できるマスク基板を、大面積化に対応可能な基板サイズにおいても、安定して作製することに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】
図1のマスク基板に対するレーザ光を照射した状態を示す模式図。
【
図3】
図1のマスク基板の製造方法を示すフローチャート。
【
図4】
図1のマスク基板の端面を加工している状態を示す模式図。
【
図5】第一実施形態の変形例に係るマスク基板の模式図。
【
図6】
図5のマスク基板の製造方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第一実施形態)
以下、本発明に係るマスク基板およびその製造方法の一実施形態を、
図1~
図4の図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るマスク基板の模式図である。
図2は、
図1のマスク基板に対するレーザ光を照射した状態を示す模式図である。
図3は、
図1のマスク基板の製造方法を示すフローチャートである。
図4は、
図1のマスク基板の端面を加工している状態を示す模式図である。
【0021】
図1は、
図1(a)~
図1(c)に示す3つの図面から構成されている。
図1(a)はマスク基板の斜視図であり、
図1(b)は
図1(a)の二点鎖線からなるサークル部分を拡大して示す斜視図である。
図1(c)は
図1(a)のマスク基板を上方から見た平面図である。
本実施形態のマスク基板10は透光性の矩形状平板からなる。このマスク基板10は、一方の主面11a、他方の主面11b、および4つの側面12[
図1(a)では、Tとも表示]からなる表面を有する。
【0022】
上記4つの側面12は各々、前記主面の両方11a、11bに対して略垂直をなすT端面[
図1(b)では、Tと表示]と、前記T端面および一方の主面11aの間に位置し、T端面および一方の主面11aに対して所望の角度で傾斜してなる第一C端面C11と、前記T端面および他方の主面11bの間に位置し、T端面および他方の主面11bに対して所望の角度で傾斜してなる第二C端面C12とから構成されている。
【0023】
側面12を構成するT端面は、局所的に粗面化された表面を有する領域α[
図1(c)では、R1~R8(R)と表示]と、領域αを取り囲み、かつ、領域αに比べて粗さの小さな表面を有する領域β[
図1(c)では、Rを除くT(12)と表示]とからなる。
【0024】
前記領域αの表面粗さをR1(研削面)と前記領域βの表面粗さをR2(研磨面)と定義した場合、前記T端面が、R1>R2 を満たす関係とすることが好ましい。たとえば、領域αの表面粗さR1=0.25~0.4μm、領域βの表面粗さR2=0.03~0.1μm、の範囲が挙げられる。その結果、後述するように、領域αの透過率と反射率に対して、領域βの透過率と反射率を明確に区別することが可能となる。
これにより、領域β内に局所的に粗面化された表面を有する領域αが存在し、この領域αにレーザ光を照射することにより十分な反射光が得られるので、基板位置を精度よく検出することが可能となる。
また、前記T端面における大部分の面積を占める領域βが、表面粗さR2の小さな研磨面から構成されることにより、前記T端面から生じる(T端面に起因する)パーティクルの発生を抑制する効果も得られる。
【0025】
また、前記第一C端面の表面粗さをRc1、前記第二C端面の表面粗さをRc2と定義した場合、前記R1に対して、R1>Rc1、かつ、R1>Rc2 を満たす関係にあることが好ましい。たとえば、領域αの表面粗さR1=0.25~0.4μm、第一C端面の表面粗さRc1=0.03~0.1μm、第二C端面の表面粗さRc2=0.03~0.1μm、の範囲が挙げられる。その結果、後述するように、第一C端面や第二C端面から生じる(第一C端面や第二C端面に起因する)パーティクルの発生を抑制する効果が得られる。
【0026】
図1(c)や
図2に示すように、前記T端面の少なくとも一つが、複数の前記領域αを備え、かつ、互いに離間して配置されている構成が好ましい。
図2において下方に位置するT端面(12)は、領域β内に局所的に粗面化された表面を有する領域αが3つ存在する構成例である。ここで、3つの領域αとは、R1、R2、R3(R)である。このようなR1、R2、R3(R)に対して、個別に配置したセンサーS1、S2、S3から各々、レーザ光P1、P2、P3を出射する。これにより、3つの領域α[R1、R2、R3(R)]から各々、反射光を得ることができる。本発明のマスク基板におけるT端面と、各センサーS1、S2、S3との離間距離に制限はない。すなわち、極めて近接する位置に、両者(マスク基板とセンサー)を配置することができるので、フットプリントの小さな構成を構築することができる。
【0027】
図1(c)や
図2は、下方に位置するT端面(12)には、領域β内に局所的に粗面化された表面を有する領域αが3つ存在し、左右に位置するT端面(12)には、領域β内に局所的に粗面化された表面を有する領域αが各々2つ(R4とR5、R7とR8)存在しており、さらに上方に位置するT端面(12)には、領域β内に局所的に粗面化された表面を有する領域αが1つ存在している構成例である。
図1(c)や
図2は一例であり、それぞれのT端面(12)に配置する領域αの個数には制限はない。マスク基板のサイズに応じて、領域αの適正な個数や、1つのT端面(12)における領域αの配置は、自由に選択することが可能である。
【0028】
本発明のマスク基板においては、前記領域αは、基板の外部からマスク基板に照射されたセンサー光に対する検出部として機能する。上述した通り、T端面は、領域α(表面粗さR1の研削面)と領域β(表面粗さR2の研磨面))から構成されており、R1>R2の関係を満たしている。ゆえに、領域β内に局所的に配置された領域αに対してセンサー光を照射した場合、領域αは、基板の外部からマスク基板に照射されたセンサー光に対する検出部として機能することができる。すなわち、何か特別の部材を設けることなく、両者(領域α、領域β)の表面粗さを異ならせることによって、センサー光に対する検出部として機能が発揮される。よって、この検出部は、洗浄工程の前後においても、長期安定性に優れている。したがって、本発明は、信頼性に優れたマスク基板をもたらす。
【0029】
図3は、上述した
図1のマスク基板の製造方法を示すフローチャートである。以下に示す工程S11~S17を順に実施した。
(S11)加工する前の基板として、ガラス基板(サイズ:短辺1220×長辺1400×板厚13t[mm])を準備した。
(S12)工程S11で用意したガラス基板(
図1における符号10)に対して、ダイヤ砥石を用いて外形加工を行った。
(S13)工程S12を経たガラス基板の主表面(
図1における符号11a、11b)に対して、酸化アルミニウム(Al
2O
3)の砥粒を用いてラップ加工を行った。
(S14)工程S13を経たガラス基板のT端部において、後にセンサー検出部として機能する領域αにマスキングを貼付した。マスキングとしては、公知のスパッタリング法により成膜した金属クロム膜を用いた。T端部は、領域βのみ露呈された状態とした。
(S15)工程S14を経たガラス基板のT端部に対して、酸化セリウム(CeO2)の砥粒と、研磨ブラシまたは研磨パッドを用いて端面研磨を行った。これにより、T端部は、領域βのみ研磨され、領域αは研磨前の状態(ラップ加工された状態)を維持した。
(S16)工程S15を経たガラス基板のT端部からマスキングを除去した。これにより、領域αの表面粗さR1(研削面)と領域βの表面粗さR2(研磨面)は、T端面において、R1>R2 を満たす関係とした。
(S17)工程S16を経たガラス基板の主表面(
図1における符号11a、11b)に対して、酸化セリウム(CeO2)の砥粒と研磨パッドを用いて研磨を行った。
【0030】
図4は、
図1のマスク基板の端面を加工している状態を示す模式図であり、上述した工程S15の端面研磨の状態を表している。
図4において、符号J1、J2は研磨パッドを備えた回転軸を表している。符号K1、K2は各回転軸の回転方向であり、符号L1、L2は各回転軸の移動方向である。
マスク基板10において対向する位置にある2つの側面12[
図4では、Tとも表示]に、研磨パッドを接触させて、回転および移動を行うことにより、端面研磨が行われる。その際、端面研磨が行われる、端面と研磨パッドの接触部付近に、酸化セリウム(CeO2)の砥粒(不図示)が供給される。これにより、上述した工程S15が実施される。
【0031】
工程S15を経たガラス基板は、洗浄処理が施される。洗浄処理は、スピン洗浄法を用いた。具体的には、硝酸第二セリウムアンモニウム[Ce(NO3)4・2NH4NO3]と過塩素酸[HClO4]の混合物を用いて金属クロム膜をエッチング除去した後、公知の酸・アルカリによる洗浄と、純水リンスと、スピンドライ[遠心脱水]を実施した。
この洗浄処理を経たガラス基板に対して、主面上に観測された欠陥のサイズや欠陥数を評価した。その評価結果が、表1および表2である。なお、表2に示した欠陥数は規格化されている。
表1および表2には、後述する「第一実施形態の変形例のマスク基板」と「従来のマスク基板」の評価結果も併記した。表1および表2において、No3は第一実施形態、No2は変形例、No1は従来例を表している。
また、表3には表面粗さに関する情報を、表4~表6には透過率および反射率に関する情報を、各々纏めて示した。表3に示した表面粗さは、線粗さであり、算術平均粗さRaである。
【0032】
(第一実施形態の変形例)
図5は、第一実施形態の変形例に係るマスク基板の模式図である。
図6は、
図5のマスク基板の製造方法を示すフローチャートである。
図5および
図6に示すように、変形例では、T端面が研磨面のみ(領域βのみ)からなり、領域αは設けなかった点のみ、前述した第一実施形態と相違する。他の点については、前述した第一実施形態と同じである。よって、
図5および
図6に記載した内容の詳細な説明は省略する。
【0033】
(従来例)
図6は、従来例に係るマスク基板の模式図である。
従来例では、C端面およびT端面がいずれも研削面からなる点が、前述した第一実施形態や変形例と相違する。他の点については、前述した第一実施形態や変形例と同じである。よって、
図7に記載した内容の詳細な説明は省略する。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
表1~表6に示した評価結果より、以下の(1)、(2)が明らかとなった。
(1)本発明のマスク基板(No3)は、基板位置を精度よく検出することが可能であり、かつ、パーティクルの発生を抑制できる。
(2)本発明に係る製造方法によれば、基板位置を精度よく検出することが可能であり、かつ、パーティクルの発生を抑制できるマスク基板を安定して作製できる。
よって、本発明は、基板位置を精度よく検出することが可能であり、かつ、パーティクルの発生を抑制できるマスク基板の提供に貢献する。
【0041】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、FPD用途で使用される大面積のマスク基板および製造方法に広く適用可能である。なお、ここに開示した技術内容は、大面積のマスク基板に限定されるものではなく、中面積や小面積のマスク基板にも適用できる。
【符号の説明】
【0043】
C11 第一C端面、C12 第二C端面、R(R1~R8) 領域α、T T端面、10 マスク基板、11a 一方の主面、11b 他方の主面、12 側面。