(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】シートホールド機能付き除包装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B65B 69/00 20060101AFI20230727BHJP
A61J 3/06 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
B65B69/00 A
A61J3/06 T
(21)【出願番号】P 2019123265
(22)【出願日】2019-07-01
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000176626
【氏名又は名称】三島光産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094581
【氏名又は名称】鯨田 雅信
(72)【発明者】
【氏名】東島 敦弘
(72)【発明者】
【氏名】松井 晃典
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3054841(JP,U)
【文献】特許第6232517(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 69/00
A61J 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置部上に配置された薬剤シートの収容部上にアーム先端部を移動及び押圧させることにより前記収容部から薬剤を除包する除包装置であって、前記アーム先端部が薬剤シートの収容部上を移動及び押圧するとき、薬剤シート中の前記押圧される収容部の周辺の隙間部分を前記載置部の方向に押圧する押圧部と、前記押圧部が前記アーム先端部の移動に対応して前記薬剤シートの隙間部分に対して近接、押圧及び離反するように、前記押圧部を移動させる移動部とを備え、
前記移動部は、前記アームに取り付けられたローラーと、前記ローラーが当接する、前記押圧部中の平面略台形状の上側当接部と、前記押圧部を常に前記薬剤シートから離反する方向に付勢する復帰スプリングとにより構成されており、前記押圧部中の下側当接部は、前記アームに取り付けられたローラーが前記押圧部中の上側当接部に当接しながら移動するとき、前記薬剤シートの隙間部分に対して近接、押圧及び離反するものであることを特徴とするシートホールド機能付き除包装置。
【請求項2】
載置部上に配置された薬剤シートの収容部上にアーム先端部を移動及び押圧させることにより前記収容部から薬剤を除包する除包装置であって、
前記アーム先端部が薬剤シートの収容部上を移動及び押圧するとき、薬剤シート中の前記押圧される収容部の周辺の隙間部分を前記載置部の方向に押圧する押圧部と、
前記アーム先端部が薬剤シートが搬送される搬送方向と直交する方向に移動して薬剤シートの収容部上に近づいたとき、当該移動に対応して、前記押圧部を前記薬剤シートの隙間部分に近接するように下降させ、さらに前記アーム先端部が前記搬送方向と直交する方向に移動して薬剤シートの収容部上まで移動したとき、当該移動に対応して、前記押圧部を前記薬剤シートの隙間部分に当接及び押圧させ、さらに前記アーム先端部が前記搬送方向と直交する方向に移動して薬剤シートの収容部上から離れたとき、当該移動に対応して、前記押圧部を前記薬剤シートの隙間部分から離反するように上昇させるようにした移動機構部と、
を備えたことを特徴とするシートホールド機能付き除包装置。
【請求項3】
載置部上に配置された薬剤シートの収容部上にアーム先端部を移動及び押圧させることにより前記収容部から薬剤を除包する除包方法であって、
前記アーム先端部が薬剤シートの収容部上を移動及び押圧するとき、薬剤シート中の前記押圧される収容部の周辺の隙間部分を前記載置部の方向に押圧する押圧部を備えておき、
前記アーム先端部が薬剤シートが搬送される搬送方向と直交する方向に移動して薬剤シートの収容部上に近づいたとき、当該移動に対応して、前記押圧部を前記薬剤シートの隙間部分に近接するように下降させ、
その後さらに、前記アーム先端部が前記搬送方向と直交する方向に移動して薬剤シートの収容部上まで移動したとき、当該移動に対応して、前記押圧部を前記薬剤シートの隙間部分に当接及び押圧させ、
その後さらに、前記アーム先端部が前記搬送方向と直交する方向に移動して薬剤シートの収容部上から離れたとき、当該移動に対応して、前記押圧部を前記薬剤シートの隙間部分から離反するように上昇させるようにした、シートホールド工程を含む除包方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤シートなどの可とう性シートに形成又は配置された複数の収容部から被収容物である薬剤を取り出すための除包装置及び除包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば可とう性のプラスチックシートに複数の収容部、例えば透明プラスチック製のドーム状部分とアルミ箔製の下側封止面とから構成される複数の収容部が配置されて成る薬剤シート(PTPシートなど)の各収容部から、被収容物である薬剤(錠剤、カプセル剤など)を取り出すための除包装置及び除包方法が提案され(例えば特許文献1参照)、また実用化されている。このような従来の薬剤取り出し用の除包装置の多くは、例えば調剤薬局などにおいて、複数個及び/又は複数種類の薬剤シートを順次搬送しながら各薬剤シート中の各収容部から薬剤を取り出し、前記取り出した薬剤を収集し、それら複数の薬剤を患者の各一回服用分毎に分包・一包化するためのシステムの一部として構成、使用されている。
【0003】
例えば、
図7は特許文献1に開示された従来の薬剤シート用除包装置を示すものである。
図7において、1は、略ドーム状突部1c及び下側封止面1d(
図7(b)参照)から成る収容部1aが長手方向及び幅方向に複数個並ぶように(
図7(a)の例では長手方向に6個ずつ及び幅方向に3個ずつ並ぶように)配置された可とう性の薬剤シート(PTPシート)である。
【0004】
従来の薬剤シート用除包装置では、
図7に示すように、前記薬剤シート1を載置部10上で一定方向(
図7(a)の矢印A方向)に移動させ搬送しながら、前記薬剤シート1の一部領域1b(
図7(a)参照)中で幅方向に並んでいる3個の収容部1aを、振り子状に往復移動するアーム6により上方から押圧して除包している。なお、特許文献1に示す例では、
図7(b)に示すように、前記アーム6が軸6aを回動支点として前記シート1の幅方向に略円弧状に一方向(矢印B参照)に回動する過程で、前記シート1の一部領域1b中の幅方向に並ぶ3個の収容部1aが順次押圧されて、前記薬剤シート1の一部領域1bがその下方の開口部(前記載置部10の一部に形成された溝状または凹状の開口部)内に入り込むように湾曲すると共に、前記一部領域1b中の3個の収容部1aの各略ドーム状突部1cが順次押圧により変形させられ、内部の薬剤1eも図示下方に押圧されて下側封止面1dを突き破って排出され、前記開口部内に落下し、その下方の収集容器(図示省略)内に収集される(但し、本発明は、この
図7に示すような振子状に回動すなわち往復移動するアーム6の存在を前提とするものではない)。
【0005】
このような前記アーム6による前記薬剤シート1の幅方向に並ぶ3個の各収容部1aへの押圧、及び前記押圧により前記各収容部1aから排出、落下された各薬剤1eの収集容器(図示省略)への収集は、
図8に示すように、前記薬剤シート1の移動・搬送方向A(
図8の例では薬剤シート1の長手方向と一致している)に沿って、前記一部領域1b,1b’(前記一部領域中の前記幅方向の3個の収容部1a)が前記アーム6と対向する位置(下方の位置)まで所定距離だけ移動し搬送されていったん停止する毎に、順次、繰り返される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記の特許文献1に開示されているような従来の薬剤シート用除包装置においては、薬剤シート1の略ドーム状突部1c(
図7(b)参照)を上方から押圧し、内部の薬剤1eを下方に押圧して下側封止面1d(アルミ箔面)を破断させるようにしているため、前記押圧及び破断時に当該押圧の衝撃等により薬剤シート1の位置が前記載置部10上でズレてしまったり薬剤シート1の一部が開口部(空洞部)内に落ち込んでしまうなどし、前記各収容部1aの下側封止面1dが破断されて前記各収容部1aから排出された薬剤1eが前記開口部(空洞部)内に適正に落下又は収容できなくなってしまうことが、少なくなかった。
【0008】
本発明はこのような従来技術の問題点に着目して為されたものであって、薬剤シート中の各収容部が押圧されて前記収容部の下面の一部(アルミ箔など)が破断される際に、当該押圧の衝撃等により薬剤シートの位置が載置部上でズレてしまったり薬剤シートの一部が開口部内に落ち込んでしまうことを防止し、これにより、当該収容部の破断部分から排出された薬剤が前記載置部中の開口部内に適正に落下又は収容されるようにして、前記押圧による被収容物(薬剤)の除包を正確に行えるようにした、シートホールド機能付き除包装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上のような課題を解決するための本発明によるシートホールド機能付き除包装置は、載置部上に配置された薬剤シートの収容部を押圧することにより前記収容部から薬剤を除包する除包装置であって、載置部上に配置された薬剤シートの収容部を押圧する第1押圧部と、前記第1押圧部が前記収容部を押圧して薬剤を除包する前に、前記薬剤シート中の収容部の周辺部分を押圧する第2押圧部と、前記第2押圧部が前記第1押圧部の動作に対応して前記薬剤シート中の収容部の周辺部分に対して近接し押圧し又は離反するように、前記第2押圧部を移動させる移動部とを備えたものである。
【0010】
また、本発明によるシートホールド機能付き除包装置は、載置部上に配置された薬剤シートの収容部上にアーム先端部を移動及び押圧させることにより前記収容部から薬剤を除包する除包装置であって、前記アーム先端部が薬剤シートの収容部上を移動及び押圧するとき、薬剤シート中の前記押圧される収容部の周辺の隙間部分、例えば前記押圧される収容部の薬剤シートの搬送方向における後側又は前側の隙間部分を前記載置部の方向に押圧する押圧部と、前記押圧部が前記アーム先端部の移動に対応して前記薬剤シートの隙間部分に対して近接し押圧し又は離反するように、前記押圧部を移動させる移動部とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明によるシートホールド機能付き除包装置において、前記移動部は、前記アームに取り付けられたローラーと、前記ローラーが当接する、前記押圧部中の平面略台形状の上側当接部と、前記押圧部を常に前記薬剤シートから離反する方向に付勢する復帰スプリングとにより構成されており、前記押圧部中の下側当接部は、前記アーム側のローラーが前記押圧部中の上側当接部に当接しながら移動するとき、前記薬剤シートの隙間部分に対して近接し押圧し又は離反するものであってもよい。
【0012】
また、本発明によるシートホールド工程を含む除包方法は、載置部上に配置された薬剤シートの収容部を第1押圧部が押圧することにより前記収容部から薬剤を除包する除包方法であって、前記第1押圧部により薬剤シート中の或る収容部が除包される前に、第2押圧部を、前記第1押圧部の動作に対応して前記薬剤シート中の収容部の周辺部分に近接し当該周辺部分を押圧するように、移動させるステップと、前記第1押圧部により薬剤シート中の或る収容部が除包された後、前記第2押圧部を前記薬剤シート中の前記周辺部分から離反するように移動させるステップとを含むものである。
【0013】
さらに、本発明によるシートホールド工程を含む除包方法は、載置部上に配置された薬剤シートの収容部上にアーム先端部を移動及び押圧させることにより前記収容部から薬剤を除包する除包方法であって、前記アーム先端部が薬剤シートの収容部上を移動及び押圧するとき薬剤シート中の前記押圧される収容部の周辺の隙間部分、例えば前記押圧される収容部の前記搬送方向における後側又は前側の隙間部分を前記載置部の方向に押圧する押圧部を備えておき、前記アーム先端部が前記搬送方向と直交する方向に移動して薬剤シートの収容部上に近づいたとき、当該移動に対応して、前記押圧部を前記薬剤シートの隙間部分に近接するように下降させ、その後さらに、前記アーム先端部が前記搬送方向と直交する方向に移動して薬剤シートの収容部上まで移動したとき、当該移動に対応して、前記押圧部を前記薬剤シートの隙間部分に当接及び押圧させ、その後さらに、前記アーム先端部が前記搬送方向と直交する方向に移動して薬剤シートの収容部上から離れたとき、当該移動に対応して、前記押圧部を前記薬剤シートの隙間部分から離反するように上昇させるものである。
【発明の効果】
【0014】
以上に述べたように、本発明においては、前記第1押圧部により薬剤シート中の或る収容部が除包される前に、前記移動部が、前記第2押圧部を、前記第1押圧部の動作に対応して前記薬剤シート中の収容部の周辺部分に近接し当該周辺部分を押圧するように移動させ、その後、前記第1押圧部により薬剤シート中の或る収容部が除包された後、前記第2押圧部を、前記薬剤シート中の前記周辺部分から離反するように移動させるようにした。よって、本発明によれば、薬剤シートの収容部を押圧して薬剤を除包する際に、押圧の衝撃等により薬剤シートの位置が載置部上でズレてしまったり薬剤シートの一部が開口部内に落ち込んでしまうことが確実に防止されるので、従来のように除包された薬剤が前記載置部中の開口部内に適正に落下又は収容できなくなってしまうなどの不都合が無くなり、除包を正確にかつ確実に行えるようになる。
【0015】
また、本発明においては、前記アーム先端部が薬剤シートの収容部上を移動及び押圧するとき、前記移動部により、前記押圧部を薬剤シートに近接、当接させ、これにより、前記押圧部が、前記アーム先端部により押圧されて破断される収容部の周辺の隙間部分(例えば前記アーム先端部により押圧されて破断される収容部の前記搬送方向における後側又は前側の隙間部分)を載置部との間で押圧し固定するようにしたので、従来のように押圧時の衝撃等により薬剤シートの位置が載置部上でズレてしまったり薬剤シートの一部が開口部内に落ち込んでしまうことがほぼ確実に無くなる。よって、本発明によれば、薬剤シート中の各収容部が押圧されて破断される際に、押圧時の衝撃等により薬剤シートの位置が載置部上でズレてしまったり薬剤シートの一部が開口部内に落ち込んでしまい、その結果、当該収容部の破断部分から排出された内部の薬剤が前記載置部中の開口部内に適正に落下又は収容できなくなってしまうことが確実に防止されるようになる。
【0016】
さらに、本発明においては、前記押圧部の下側当接部を移動させる移動部を、前記薬剤シートの搬送方向と直交する方向に往復移動するアームに備えられたローラー、前記押圧部中の前記ローラーに当接される上側当接部、及び前記押圧部を前記薬剤シートから離反する方向に付勢する復帰スプリングなどにより構成し、前記アーム側のローラーが前記押圧部の上側当接部に当接しながら移動するとき、これに対応して、前記押圧部の下側当接部が前記薬剤シートの隙間部分に対して近接し押圧し又は離反するように構成している。よって、本発明によれば、前記薬剤シートの搬送方向と直交する方向に往復移動するアームが動く力だけで、前記押圧部の動作(上下動)及びこれによる前記薬剤シートの位置ズレのない正確な除包が可能になるので、極めて簡素な構成だけで且つ低コストに、前記薬剤シートの適正かつ正確な除包を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本実施形態の構成及び動作を説明するための斜視図である。
【
図3】本実施形態の構成及び動作を説明するための斜視図である。
【
図4】本実施形態の構成及び動作を説明するための斜視図である。
【
図5】本実施形態の構成及び動作を説明するための斜視図である。
【
図6】本実施形態の構成及び動作を説明するための斜視図である。
【
図7】従来の薬剤シート用除包装置の一例を示す斜視図である。
【
図8】従来の薬剤シート用除包装置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。まず、
図1は本実施形態に係るシートホールド機能付き除包装置の全体構成を示す斜視図、
図2~4は本実施形態の構成を示すと共にその動作を順次示す斜視図である。
【0019】
図1~4において、1は薬剤シート(PTPシート)、1aは薬剤シート1中に配置され薬剤を収容する収容部であってドーム状突部と下側封止面から構成される収容部、6はモーター20により回転される軸6aを回動支点として薬剤シート1の搬送方向(薬剤シート1の長手方向と一致する)と直交する方向に円弧状に往復移動するアーム、6bはこのアーム6の下方に形成されて薬剤シート1の各収容部1aを押圧する先端部、10は搬送される薬剤シート1が載置される載置部、10aは薬剤シート1の各収容部1aから排出された薬剤を落下させて収容容器(図示省略)内に収容、収集するための開口部(溝部)である。
【0020】
また、
図1~4において、11は薬剤シート1に対して近接又は離反するように移動(昇降)する移動体、11aは前記移動体11の上側に平面略台形状に形成された上側当接部、11bは前記移動体11の下側に形成され図示下方に突出する2つの爪部、12は前記アーム6の略中央部に回転可能に取り付けられたローラー、13は前記移動体11を薬剤シート1から離れる方向(図示上方向)に常に付勢する復帰スプリングである。
【0021】
本実施形態では、前記ローラー12、前記復帰スプリング13、及び前記移動体11中の平面略台形状の上側当接部11aなどにより、前記移動体11の下方の爪部11bを移動・昇降させるための移動部(薬剤シート中の各収容部の除包時に、前記移動体11の下方の爪部11bを、薬剤シートの隙間部分に当接、押圧して載置部に固定などする移動機構部)が構成されている。
【0022】
次に本実施形態の動作を
図2~4を参照して説明する。
図2~4は、前記アーム6が図示奥側から図示手前側に移動するときの状態を示す斜視図である。すなわち、
図2~4において、前記アーム6は、モーターの回転により、図示奥側から図示手前側へと、徐々に略円弧状に移動している。
【0023】
図2は、前記アーム6に取り付けられたローラー12が、前記移動体11の上側当接部11a中の傾斜部分(
図5(a)の符号11aa参照)の上端面に当接しながら移動している状態を示すものである。
図2に示す状態から、さらに前記アーム6が図示奥側から図示手前側に移動していくと、前記移動体11は、前記ローラー12に押されて、薬剤シート1に近づくように徐々に移動、下降する。
【0024】
次に、
図3は、前記アーム6が、前述した
図2に示す状態から、図示奥側から図示手前側に少し移動したときの状態を示す斜視図である。この状態では、
図3に示すように、前記アーム6側のローラー12が、前記移動体11の上側当接部11a中の平坦部分(
図6(a)の符号11ab参照)の上端面に当接しながら移動している。
【0025】
この
図3に示す状態では、前記移動体11は前記ローラー12に押されて大きく下降している。これにより、前記移動体11の下方の爪部11bは、薬剤シート1中の前記アーム先端部6bにより押圧される収容部1aの周辺の隙間部分(本実施形態では、当該押圧される収容部1aの前記搬送方向における後側の隙間部分)を押圧し、この隙間部分を前記載置部10に押し付けることにより固定している。この状態は、前記アーム6側のローラー12が、前記移動体11の上側当接部11a中の平坦部分(
図6(a)の符号11ab参照)から同上側当接部11a中の傾斜部分(
図6(b)の符号11aa参照)へと移動するまで、維持される。
【0026】
次に、
図4は、前述した
図3の状態から前記アーム6がさらに移動して、前記ローラー12が前記移動体11の上側当接部11a中の平坦部分(
図6(a)の符号11ab参照)から同上側当接部11a中の傾斜部分(
図6(b)の符号11aa参照)へと移動した後の状態を示す図である。この
図4のように前記ローラー12が前記上側当接部11a中の傾斜部分に当接しながら徐々に移動する段階では、前記ローラー12による前記移動体11の押し下げの距離又は程度は徐々に小さくなり、前記移動体11は、前記復帰スプリング13の力により、徐々に上昇していく。
【0027】
その後、この
図4の状態から前記アーム6がさらに移動して前記ローラー12が前記移動体11の上側当接部11a中の傾斜部分(
図6(b)の符号11aa参照)から離れた後は、前記ローラー12による前記移動体11への押し付けは無くなり、前記移動体11は、前記復帰スプリング13(
図5など参照)の力により、薬剤シート1から離れた上方の位置に維持される。
【0028】
次に、
図5及び
図6は、以上に述べた前記アーム6側のローラー12と前記移動体11の各動作の関連をさらに説明するための概略図である。まず、
図5(a)の状態においては、前記アーム6側のローラー12(同図中の矢印Aのように円弧状に移動するローラー12)は、前記移動体11の上側当接部11aに当接しない符号12aに示す場所に位置している。そのため、前記移動体11は、前記復帰スプリング13の力により、薬剤シート1から離れた上方の位置に維持されている。
【0029】
次に、前記アーム6が移動して、前述した
図5(a)から
図5(b)に示す状態に移行すると、前記アーム6側のローラー12は、前記移動体11の上側当接部11a中の図示右側の傾斜部分11aaに当接する符号12bに示す場所まで移動している。そのため、前記移動体11は、前記ローラー12が図示右方向に移動するに従って徐々に押し下げられ、薬剤シート1に近づくように徐々に下降していく(同図中の矢印B参照)。
【0030】
次に、前記アーム6がさらに移動して、前述した
図5(b)から
図6(a)に示す状態に移行すると、前記アーム6側のローラー12は、前記移動体11の上側当接部11a中の平坦部分11abに当接する符号12c及び12dに示す場所まで移動している。この状態のとき、前記移動体11は、前記ローラー12により、前述した
図5(b)の状態からさらに押し下げられている(
図6(a)の矢印B参照)。そのため、前記移動体11の下方の爪部11bは、薬剤シート1中の各収容部1a間の隙間部分であって前記アーム先端部6aにより押圧、破断される収容部の搬送方向における後側の隙間部分(後述する
図9の符号1f参照)に当接し、この隙間部分を前記載置部10に押し付ける。これにより、薬剤シート1は、前記載置部10に対し固定される。
【0031】
次に、前記アーム6がさらに移動して、前述した
図6(a)から
図6(b)に示す状態に移行すると、前記アーム6側のローラー12は、前記移動体11の上側当接部11a中の平坦部分11abから同上側当接部11a中の図示右側の傾斜部分11aaに当接する符号12eに示す場所に移動し、その後もさらに図示右下斜め方向に徐々に移動していく。そのため、前記アーム6側のローラー12が前記移動体11を押し下げる距離又は程度は、前記アーム6が図示右下斜め方向に移動するに従って徐々に小さくなる。その結果、前記移動体11は、薬剤シート1から離れるように徐々に上昇していく(
図6(b)の矢印C参照)。
【0032】
以上のように、本実施形態では、前記アーム6の先端部6bが薬剤シート1の収容部1a上を移動及び押圧するとき、前記アーム6側のローラー12が前記移動体11の上側当接部11aに当接しながら移動するように構成されている。よって、本実施形態においては、前記アーム6の先端部6bが薬剤シート1の収容部1a上を移動及び押圧するとき、前記移動体11の下方の爪部11bが下降されて薬剤シート1に近接、当接する。その結果、前記収容部1aの前記搬送方向における後側(又は前側)の隙間部分1fは、前記移動体11の下方の爪部11bと前記載置部10との間で押圧され固定される。したがって、本実施形態においては、前記押圧時の衝撃等により薬剤シート1の位置が載置部10上でズレてしまったり薬剤シート1の一部が開口部10a内に落ち込んでしまうことがほぼ確実に無くなる。よって、本実施形態によれば、薬剤シート1中の各収容部1aが前記アーム6の先端部6bにより押圧されて前記収容部1aの下面の一部が破断される際、前記押圧時の衝撃等により薬剤シート1の位置が前記載置部10上でズレてしまったり薬剤シート1の一部が前記開口部10a内に落ち込んでしまい、当該収容部1aの破断部分から排出された薬剤が前記載置部10中の開口部10a内に適正に落下又は収容されなくなってしまうことを、有効に防止できるようになる。
【0033】
また、本実施形態においては、前記移動体11(その中の下方の爪部11b)を移動させる移動機構部として、前記薬剤シート1の搬送方向と直交する方向に往復移動するアーム6に備えられたローラー12、前記移動体11中の、上端面が前記ローラー12に当接される上側当接部11a、並びに前記移動体11を前記薬剤シート1から離反する方向に付勢する復帰スプリング13などにより構成し、前記ローラー12が前記移動体11中の上側当接部11aに当接しながら移動するとき、これに対応して、前記移動体11中の下方の爪部11bが、前記薬剤シート1の隙間部分1fに対して近接し押圧し又は離反するように、構成している。よって、本実施形態によれば、前記薬剤シートの搬送方向と直交する方向に往復移動するアーム6が動く力だけで、前記移動体11の動作(上下動)及びこれによる前記薬剤シート1の前記位置ズレのない正確な除包が可能になるので、極めて簡素な構成だけで且つ低コストに、前記薬剤シート1の適正かつ正確な除包を行うことができるようになる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態として述べたものに限定されるものではなく、様々な修正及び変更が可能である。例えば、前記実施形態においては、前記アーム6を、薬剤シート1の搬送方向と直交する方向に円弧状に往復移動するものとして構成したが、本発明ではこれに限られるものではなく、例えば、前記アーム6を、前記直交する方向に直線状に往復移動するものとして構成するようにしてもよい。また、前記実施形態では、前記移動体11(特にその中の、薬剤シート1の前記隙間部分1fを押圧・固定する爪部11b)を昇降(上下動)させる移動部を、前記ローラー12、前記ローラー12に当接する上側当接部11a、及び前記復帰スプリング13などにより構成するようにしたが、本発明においてはこれに限られるものではなく、例えば、前記アーム6の移動を検知するセンサ(イメージセンサ、位置センサなど)と、前記移動体11(その中の薬剤シートを押圧・固定する爪部11b)を昇降(上下動)させるモーターと、前記センサからの信号に基づいて前記モーターを制御する制御装置とにより前記移動部を構成するようにしてもよい。
【0035】
さらに、また、前記実施形態では、前述のような薬剤シート1の搬送方向と直交する方向に往復移動するアームにより、薬剤シート1中の収容部1aからの薬剤の除包を行うタイプの除包装置を前提として説明したが、本発明ではこれに限られるものではなく、例えば、ピン又はローラーなどから成る押圧部で薬剤シート1中の収容部1aを押圧して除包するタイプの除包装置を前提とするもの、例えば、前記ピン又はローラーなどから成る第1押圧部の動作又は位置を検知する検知部(イメージセンサ、位置センサなど)と、第2押圧部(除包前に薬剤シートを押圧し固定する、前記移動体11の爪部11bなどの部材)を駆動するモーターなどの駆動部と、前記検知部からの情報に基づいて前記駆動部を制御する制御装置(マイクロコンピュータ等)などにより、前記第2押圧部(除包前に薬剤シートを押圧し固定する部材)を移動させるようにし、これにより、除包前に薬剤シートの一部(収容部の周辺部分)を押圧して固定するようにしてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
1 薬剤シート
1a 薬剤シートの収容部
1f 薬剤シートの各収容部間の隙間部分
6 アーム
6a アームの回動支点(回動軸)
6b アームの先端部(下端部)
11 移動体
11a 移動体の上側当接部
11b 移動体の爪部
12 ローラー
13 復帰スプリング
20 モーター