(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】音声制御装置、イヤーマフ、及び音声制御方法
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20230727BHJP
A61F 11/14 20060101ALI20230727BHJP
G10K 11/178 20060101ALI20230727BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
H04R3/00 310
A61F11/14 100
G10K11/178 100
H04R1/10 101Z
(21)【出願番号】P 2019138582
(22)【出願日】2019-07-29
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000223182
【氏名又は名称】TOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】川口 宗宏
【審査官】中嶋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3211617(JP,U)
【文献】特開2017-211640(JP,A)
【文献】特開2011-035522(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0167715(US,A1)
【文献】特開2014-030254(JP,A)
【文献】特開2014-042213(JP,A)
【文献】特開2006-135688(JP,A)
【文献】特開2015-173369(JP,A)
【文献】OROSOUND,フランス、オロサウンド『集中力を高め仕事がはかどる スマート ノイズキャンセル イヤホン TILDE(ティルデ)』を、日本経済新聞社が運営する「未来ショッピング」にて8月16日より期間限定販売開始。,PR TIMES, [online],2018年08月16日,[2023年2月27日検索], <URL: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000030583.html>
【文献】ソノヴァ・ジャパン株式会社,集団補聴援助システムロジャーと補聴器フォナック製品のご紹介,ソノヴァ・ジャパン資料, [online],2018年04月08日,第1-48ページ,[2023年2月27日検索], <URL: http://takamatsusolution.com/kagawanancho/wp-content/uploads/2018/04/ソノヴァジャパン資料.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
A61F 11/14
G10K 11/178
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロフォンと接続可能な音声制御装置であって、
前記マイクロフォンからの音声を受信する通信部と、
前記マイクロフォンからの音声を出力する音声出力部と、
前記音声制御装置の電源と、
前記電源がONである間に、前記マイクロフォンからの音声を前記音声出力部から出力する授業モードと、前記マイクロフォンからの音声を前記音声出力部から出力しない非授業モードとを切り替える制御部と、
を備え
、
前記制御部は、
前記通信部を常時ONに維持し、
前記非授業モードにおいて前記マイクロフォンの電源がONになったことを示すON信号を受信したか否かを検出し、
前記ON信号の受信に応じて、前記授業モードに切り替え、
前記授業モードにおいて前記マイクロフォンの電源がOFFになったことを示すOFF信号を受信したか否かを検出し、
前記OFF信号の受信に応じて、前記非授業モードに切り替える、音声制御装置。
【請求項2】
マイクロフォンと接続可能な音声制御装置であって、
前記マイクロフォンからの音声を受信する通信部と、
前記マイクロフォンからの音声を出力する音声出力部と、
前記音声制御装置の電源と、
前記電源がONである間に、前記マイクロフォンからの音声を前記音声出力部から出力する授業モードと、前記マイクロフォンからの音声を前記音声出力部から出力しない非授業モードとを切り替える制御部と、
を備え
、
前記制御部は、
前記通信部を常時ONに維持し、
前記非授業モードにおいて前記マイクロフォンの電源がONになったことを示すON信号を受信したか否かを検出し、
前記ON信号の受信に応じて、前記授業モードに切り替え、
前記授業モードにおいて前記マイクロフォンからの音声が所定時間以上受信されない場合、前記非授業モードに切り替える、音声制御装置。
【請求項3】
周囲の音を集音するマイク入力部と、
前記マイク入力部により集音された音に対してノイズキャンセルを実行するノイズキャンセル部と、
を更に備え、
前記制御部は、少なくとも前記非授業モードにおいて前記ノイズキャンセル部をONにする、
請求項1
又は2に記載の音声制御装置。
【請求項4】
前記マイクロフォンからの音声を出力するのに先立ち、前記制御部は、前記音声出力部を介して報知音を出力させる、
請求項1から
3のいずれか
1項に記載の音声制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記授業モードにおいて、前記音声出力部の出力レベルを抑制する処理を実行する、
請求項1から
4のいずれかに記載の音声制御装置。
【請求項6】
インジケータを更に備え、
ユーザが前記授業モードか前記非授業モードかを識別可能なように、前記制御部は、前記インジケータをON又はOFFにする、
請求項1から
5のいずれかに記載の音声制御装置。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれかに記載の音声制御装置と、
ハウジングと前記ハウジングに取り付けられたイヤーパッドとを有し、前記音声出力部が前記イヤーパッドを介して放音するように前記ハウジング内に前記音声制御装置を配置する本体部と、
を備える、イヤーマフ。
【請求項8】
マイクロフォンと接続可能な音声制御装置を用いた音声制御方法であって、
前記音声制御装置は、
前記マイクロフォンからの音声を受信する通信部と、
前記マイクロフォンからの音声を出力する音声出力部と、
前記音声制御装置の電源と、
前記電源がONである間に、前記マイクロフォンからの音声を前記音声出力部から出力する授業モードと、前記マイクロフォンからの音声を前記音声出力部から出力しない非授業モードとを切り替える制御部と、
を備え、
前記音声制御方法は、
前記制御部は、前記通信部を常時ONに維持し、
前記制御部は、前記非授業モードにおいて前記マイクロフォンの電源がONになったことを示すON信号を受信したか否かを検出し、
前記制御部は、前記ON信号の受信に応じて、前記授業モードに切り替え、
前記制御部は、前記授業モードにおいて前記マイクロフォンの電源がOFFになったことを示すOFF信号を受信したか否かを検出し、
前記制御部は、前記OFF信号の受信に応じて、前記非授業モードに切り替える、音声制御方法。
【請求項9】
マイクロフォンと接続可能な音声制御装置を用いた音声制御方法であって、
前記音声制御装置は、
前記マイクロフォンからの音声を受信する通信部と、
前記マイクロフォンからの音声を出力する音声出力部と、
前記音声制御装置の電源と、
前記電源がONである間に、前記マイクロフォンからの音声を前記音声出力部から出力する授業モードと、前記マイクロフォンからの音声を前記音声出力部から出力しない非授業モードとを切り替える制御部と、
を備え、
前記音声制御方法は、
前記制御部は、前記通信部を常時ONに維持し、
前記制御部は、前記非授業モードにおいて前記マイクロフォンの電源がONになったことを示すON信号を受信したか否かを検出し、
前記制御部は、前記ON信号の受信に応じて、前記授業モードに切り替え、
前記制御部は、前記授業モードにおいて前記マイクロフォンからの音声が所定時間以上受信されない場合、前記非授業モードに切り替える、音声制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音声制御装置、同音声制御装置を備えたイヤーマフ、及び音声制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
教室や会議等で利用されるマイクロフォンシステムやヘッドフォンシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発達障害等の理由で聴覚過敏な人たち、特に子どもたちは、普段の生活の中で周囲の音に影響されて集中できないことを防ぐためイヤーマフを着用することがある。例えば、学校のように騒音が多い環境下においては、聴覚過敏な子どもたちには、騒音から耳を守るイヤーマフの着用は効果的である。
【0005】
しかし、例えば、授業中においては、教師の声に集中する必要がある。理想的には、周囲の騒音を抑えつつ教師の声に集中できる状態をつくることが望ましい。
【0006】
上述した課題に鑑み、本開示の目的は、イヤーマフ着用者の聴覚への刺激を抑えつつ音声出力を制御可能な音声制御装置、イヤーマフ及び音声制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示の一の観点によれば、音声制御装置は、マイクロフォンと接続可能な音声制御装置であって、通信部と、音声出力部と、電源と、制御部とを備える。通信部は、マイクロフォンからの音声を受信する。音声出力部は、マイクロフォンからの音声を出力する。制御部は、電源がONである間に、マイクロフォンからの音声を前記音声出力部から出力する授業モードと、マイクロフォンからの音声を音声出力部から出力しない非授業モードとを切り替える。
【0008】
本開示の別の観点によれば、イヤーマフは、上記音声制御装置と、本体部とを備える。本体部は、ハウジングとハウジングに取り付けられたイヤーパッドとを有し、音声出力部がイヤーパッドを介して放音するようにハウジング内に音声制御装置を配置する。
【0009】
本開示の更に別の観点によれば、音声制御方法は、マイクロフォンと接続可能な装置を用いた音声制御方法であって、マイクロフォンからの音声を受信すること、マイクロフォンからの音声を出力すること、及び装置の電源がONである間に、マイクロフォンからの音声を出力する授業モードと、マイクロフォンからの音声を出力しない非授業モードとを切り替えること、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る音声制御装置、イヤーマフ及び音声制御方法によれば、イヤーマフ着用者の聴覚への刺激を抑えつつ音声出力を制御可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態においてマイクロフォンと無線通信可能なイヤーマフの外観を示す。
【
図2】
図2は、第1実施形態の音声制御装置の構成を示す。
【
図3】
図3は、第1実施形態のマイクロフォンの構成を示す。
【
図4】
図4は、第1実施形態の音声制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第2実施形態の音声制御装置の構成を示す。
【
図6】
図6は、第2実施形態のマイクロフォンの構成を示す。
【
図7】
図7は、第2実施形態の音声制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態における音声制御装置の構成及びその機能について説明する。本実施形態においてイヤーマフに内蔵される音声制御装置は、例えば聴覚過敏な人が着用することにより、聴覚への過剰な刺激を抑えつつ学校における授業や講義により集中し得るように、音声の出力を制御する。
【0013】
1.第1実施形態
1-1.構成
図1は、イヤーマフ1の外観を示す。イヤーマフ1は、ヘッドセット101と、左右のハウジング103と、左右のイヤーパッド105とを備える。ヘッドセット101は、イヤーマフ着用者の頭頂部に装着され、ハウジング103を支える部分である。ヘッドセット101は、イヤーパッド105がイヤーマフ着用者の耳にフィットするように、イヤーマフ着用者の頭の形状や大きさに合わせて長手方向にスライドする調整手段(図示省略)を備えていてもよい。ハウジング103(本体部の一例)は、後述する音声制御装置を内蔵する。イヤーパッド105は、イヤーマフ着用者の耳の周囲を覆い且つフィットするように形成される。
【0014】
1-1-1.音声制御装置10の構成
図2に示すように、音声制御装置10は、プロセッサP1と、無線通信部21と、マイク入力部31と、電源32と、モード切替スイッチ33と、音声出力部35と、インジケータ37とを含む。
【0015】
プロセッサP1は、例えばDSP(Digital Signal Processor)により構成される。プロセッサP1はメモリ(図示省略)から読み出す制御プログラムを実行することにより、モード検出部11、復調部13、復号部14、及びノイズキャンセル部15の機能を実行する。
【0016】
モード検出部11は、モード切替スイッチ33からの信号に応じて音声制御装置10を2つのモードのいずれかに切り替える。2つのモードは、授業モードと非授業モードである。モード検出部11はまた、モードに応じて後述するインジケータ37をON又はOFFにする。
【0017】
授業モードに設定された場合、モード検出部11は、ノイズキャンセル部15をOFFにし、復調部13を有効化又はONにする。これにより、マイクロフォン50から受信される音声は、音声出力部35から出力される。
【0018】
非授業モードに設定された場合、モード検出部11は、ノイズキャンセル部15をONにし、復調部13を無効化又はOFFにする。これにより、マイクロフォン50から受信される音声は出力されず、ノイズキャンセルによりイヤーマフ着用者の耳に到達する騒音は抑制される。
【0019】
復調部13は、無線通信部21により受信されたデジタル信号を復調して符号化信号を取得する。復号部14は、符号化信号を復号して、デジタル音声信号を取得する。復調部13及び復号部14は音声処理部を構成する。
【0020】
ノイズキャンセル部15は、マイク入力部31から取得される後述する騒音信号を解析して、逆位相の音声信号(以下、キャンセル信号と呼ぶ)を生成する。
【0021】
無線通信部21は、アンテナを含み、マイクロフォン50からの音声であるデジタル変調信号を受信する。無線通信部21は、所定の周波数帯(例えば、800MHz帯B型)に適用するよう設計され、同じ周波数帯を使用する後述するマイクロフォン50の無線通信部65に接続可能である。
【0022】
マイク入力部31は、イヤーマフの周囲の音(以下、騒音と称する)を集音し電気信号(騒音信号)に変換する。騒音信号は、A/D変換部23によりデジタル信号に変換され、ノイズキャンセル部15に入力される。
【0023】
電源32は、音声制御装置10に電力を供給する。電源32は、イヤーマフ着用者や他のユーザの操作によりON又はOFFされる。音声制御装置10への電力供給は、一次電池や二次電池のいずれであってもよい。電源32は、例えば、イヤーマフ1のハウジング103の外側に設けられたボタンをユーザが操作することによりON、OFFされてもよい。なお、他のユーザとは、イヤーマフ着用者以外の者であって、イヤーマフ着用者をサポートする人、例えば親や教師等が含まれる。以下において、イヤーマフ着用者及び他のユーザを意味する場合は、単にユーザと称する。
【0024】
モード切替スイッチ33は、ユーザの操作に応じて、音声制御装置10を授業モードか非授業モードかに切り替える。モード切替スイッチ33は、例えば、イヤーマフ1のハウジング103の外側に設けられたボタンをユーザが操作することにより切り替えられてもよい。
【0025】
音声出力部35は、アンプ及びスピーカを含み、
図1に示すハウジング103内に設けられ、イヤーパッド105を介して放音するよう配置されている。復号された音声信号又はキャンセル信号は、D/A変換部24でアナログ信号に変換され、音声出力部35により音波に変換されてスピーカから出力される。復号された音声信号が出力されることにより、イヤーマフ着用者は、マイクロフォン50からの音声を聴くことができる。キャンセル信号が出力されることにより、イヤーマフ1の周囲の騒音が相殺され、イヤーマフ着用者の耳に到達する騒音は抑制される。
【0026】
インジケータ37は、例えばLED等の点灯部を含む。インジケータ37は、モード検出部11により制御され、例えば、授業モードが設定された場合に点灯し、非授業モードが設定された場合に消灯する。これにより、ユーザは、インジケータ37を見て音声制御装置10が現在いずれのモードに設定されているかを識別できる。なお、インジケータ37は、非授業モードが設定された場合に点灯し、授業モードが設定された場合に消灯するようにしてもよい。
【0027】
なお、音声制御装置10は、マイクロフォン50がアナログ式の場合、上述のプロセッサP1に代えてアナログ音声信号を復調する回路を備えていてもよい。また、音声制御装置10の無線通信部21は、赤外線、他の通信規格(Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等)を利用するものであってもよい。
【0028】
1-1-2.マイクロフォン50の構成
図3に示すマイクロフォン50は、例えばデジタル式のワイヤレスマイクであり、マイク入力部61と、プロセッサP5と、電源63と、無線通信部65とを含む。
【0029】
マイク入力部61は、音声を電気信号に変換し、増幅された後、A/D変換部62に入力される。増幅された電気信号はA/D変換部62によりデジタル信号に変換される。
【0030】
プロセッサP5は、例えばDSP(Digital Signal Processor)により構成される。プロセッサP5はメモリ(図示省略)から読み出す制御プログラムを実行することにより、デジタル音声信号生成部51、符号化部52、及び変調部53の機能を実行する。
【0031】
デジタル音声信号生成部51は、A/D変換部62からのデジタル信号に対し、所定の信号処理を施して、デジタル音声信号を生成する。符号化部52は、生成されたデジタル音声信号に対し圧縮処理や符号化処理等を施す。変調部53は、符号化されたデジタル信号を変調して、デジタル変調信号を生成する。
【0032】
電源63は、マイクロフォン50に電力を供給する。電源63は、ユーザの操作によりON又はOFFされる。マイクロフォン50への電力供給は、一次電池や二次電池のいずれであってもよい。
無線通信部65は、アンテナを含む。デジタル変調信号は、無線通信部65を介して音声制御装置10に送信する。無線通信部65は、所定の周波数帯(例えば、800MHz帯B型)に適用するよう設計され、同じ周波数帯を使用する音声制御装置10の無線通信部65に接続可能である。
【0033】
なお、マイクロフォン50は、アナログ式のワイヤレスマイクであってもよい。また、マイクロフォン50は、赤外線、他の通信規格(Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等)を利用するものであってもよい。
【0034】
1-2.動作
図2から
図4を参照して、本実施形態に係る音声制御装置10の動作を説明する。
【0035】
ユーザの操作により電源32がONにされる(S101)。モード検出部11により電源32がONされたことが検出されると、初期状態として、音声制御装置10は、非授業モードに設定される(S102)。非授業モードでは、ノイズキャンセル部15がONにされ、復調部13がOFFにされる。このとき、マイクロフォン50からの信号は受信する必要がないため、無線通信部21はOFFにされてもよい。非授業モードでは、マイクロフォン50から取得した音声は音声出力部35から出力されず、ノイズキャンセル部15からのキャンセル信号が出力されることにより、イヤーマフ着用者の耳に到達する騒音が抑制される。
【0036】
モード検出部11により、モード切替スイッチ33からの信号に応じてモード切替操作が行われたと判定された場合(S103のYes)、音声制御装置10は、授業モードに設定される(S104)。授業モードでは、ノイズキャンセル部15がOFFにされ、復調部13がONにされる。非授業モードにおいて無線通信部21がOFFにされている場合は、授業モードの設定と共に無線通信部21をONにする。授業モードでは、マイクロフォン50からの音声が受信され、音声出力部35から音声が出力されるが、ノイズキャンセル部15からのキャンセル信号は出力されない。これにより、イヤーマフ着用者はマイクロフォン50からの音声を聴くことができる。なお、キャンセル信号が出力されないと、騒音は抑制されないが、授業モードにおいては、イヤーマフ着用者が授業を受けていることを想定しているため通常より騒音が少ないことや、イヤーパッド105(
図1)による防音効果もあるため、騒音による影響は少ないと考えられる。
【0037】
授業モードに設定されると、モード検出部11により、インジケータ37を点灯させる。
【0038】
その後、モード検出部11により、モード切替スイッチ33からの信号に応じてモード切替操作が行われたと判定された場合(S105のYes)、ステップS102に戻り、非授業モードが設定される。電源32がOFFにされない限り(S106)、ステップS102からS105を繰り返す。
【0039】
一方、ステップS103において、モード切替操作が行われない場合(S103のNo)、電源32がOFFにされない限り(S107)、音声制御装置10は非授業モードが維持される。
【0040】
なお、上記例では、電源ON後、初期状態は非授業モードとしたが、授業モードに設定してもよい。
【0041】
1-3.特徴等
第1実施形態に係る音声制御装置10は、電源32がONである間に、マイクロフォン50からの音声を音声出力部35から出力する授業モードと、マイクロフォン50からの音声を音声出力部35から出力しない非授業モードとを切り替える。
【0042】
イヤーマフ着用者は、授業モードにおいては、例えば、マイクロフォン50で取得される授業中の教師からの発話音声を、イヤーマフ1の音声出力部35から直接聴くことができる。一方、非授業モードにおいては、マイクロフォン50からの音声の出力を行わず、イヤーマフの防音によりイヤーマフ着用者の聴覚への刺激を抑えることができる。この結果、例えば、聴覚過敏のため学校等で集中力が得られない子どもに対し集中しやすい環境を与えることができる。
【0043】
また、非授業モードにおいては、ノイズキャンセル部15をONにすることにより、授業外で騒音が比較的大きい環境であっても、イヤーマフ着用者の耳に対する騒音を抑制することができる。
【0044】
2.第2実施形態
図5から
図7を参照して、第2実施形態に係る音声制御装置210について説明する。音声制御装置210は、
図5に示すようにモード切替スイッチ33を設けず、モード検出部11は、マイクロフォン50からON信号を受信したことを検出し、その検出に応じて、授業モード又は非授業モードが設定される。
図6に示すように、マイクロフォン50のプロセッサP5のON/OFF信号生成部55は、電源63のON/OFFに応じてON信号及びOFF信号を生成する。生成されたON信号及びOFF信号は、例えば、音声信号の送信に用いられる所定のフレームのフィールドやヘッダを利用して送信されてもよい。以下、本実施形態の音声制御装置210の動作について説明する。
【0045】
第1実施形態と同様に、ユーザの操作により電源32がONにされる(S201)。
図5に示すモード検出部11により電源32がONされたことが検出されると、初期状態として、音声制御装置210は、非授業モードに設定される(S202)。非授業モードでは、ノイズキャンセル部15がONにされ、復調部13がOFFにされる。
なお、第1実施形態においては、非授業モードでは無線通信部21をOFFとしてもよいとしていたが、第2実施形態においては、無線通信部21は授業モードか非授業モードかに関わらず、常時ONに維持しておき、マイクロフォン50からの信号受信を待機する。第2実施形態においては、後述するように、モードの切替えは、マイクロフォン50からのON/OFF信号に応じて行なわれるためである。
復調部13については、非授業モードにおいては、第1実施形態と同様にOFFとする。
【0046】
モード検出部11により、マイクロフォン50から受信した信号のうちON信号が検出されると(ステップS203のYes)、音声制御装置210は、授業モードに設定される(S204)。授業モードに設定されると、モード検出部11により、インジケータ37を点灯させる。
【0047】
その後、モード検出部11により、マイクロフォン50からのOFF信号が検出されると(S205のYes)、ステップS202に戻り、非授業モードが設定される。
【0048】
電源32がOFFにされない限り(S206)、ステップS202からS205を繰り返す。一方、ステップS203において、マイクロフォン50のON信号が検出されない場合(S203のNo)、電源32がOFFにされない限り(S207)、非授業モードが維持される。
【0049】
なお、ステップS203及びS205においては、マイクロフォン50からのON/OFF信号の検出以外の方法でマイクロフォン50のON/OFFを判定してもよい。例えば、モード検出部11は、マイクロフォン50からの音声信号の受信開始に応じてマイクロフォン50のON状態を検出してもよい。マイクロフォン50のOFF状態については、例えば、モード検出部11は、タイマー(図示省略)により、マイクロフォン50からの音声を受信していない時間を計測し、その時間が所定時間以上になった場合は、マイクロフォン50はOFF状態であると判定してもよい。
【0050】
第1実施形態と同様に、電源ON後の初期状態は、授業モードに設定してもよい。
【0051】
第2実施形態に係る音声制御装置210によれば、第1実施形態に係る音声制御装置10の特徴に加え、マイクロフォン50のON状態を検出して自動的に授業モードに移行できる。このため、モード切替スイッチ33の操作し忘れによりマイクロフォン50の音声が聞こえない等のリスクを回避することができる。
【0052】
3.その他実施形態
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、各実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略等を行った実施形態にも適用可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【0053】
(1)上記第1実施形態及び第2実施形態において、音声制御装置10,210は、音声出力部35から音声を出力するのに先立ち、所定の報知音を音声出力部35から出力するようにしてもよい。例えば、第1実施形態においては、
図4のステップS104で復調部13がONになったことに応じて、報知音を出力し、続いてマイクロフォン50からの音声を出力するようにしてもよい。第2実施形態においては、
図7のステップS203のマイクロフォン50からのON信号の検出に応じて、報知音を出力してもよい。
マイクロフォン50からの音声が出力される前に報知音を出力することにより、イヤーマフ着用者にこれから音声が聞こえることを注意喚起できる。また音声出力部35から突然音声が出力されてイヤーマフ着用者に不快感を与えることを防ぐことができる。
【0054】
(2)上記第1実施形態及び第2実施形態において、マイクロフォン50からの音声が突然大きく聞こえてイヤーマフ着用者に不快感を与えないように、プロセッサP1は、音声出力部35の出力レベルを抑制する処理を行ってもよい。例えば、ダイナミックレンジを縮小処理するコンプレッション処理やリミッタ処理を行ってもよい。その他、音声出力部35の出力レベルをを徐々に上げていく制御を行ってもよい。
【0055】
(3)音声制御装置10,210へ入力される音源は、マイクロフォン50からの音声に限定されず、その他の音源、例えば授業用に使用される音源であってもよい。この場合、例えば、タブレット端末、ラップトップPC、スマートフォン等教師が使用するコンピュータ装置(図示省略)は、音声制御装置10,210の無線通信部21と同じ所定の周波数帯で送受信を行う無線通信部を備える。コンピュータ装置に、マイクロフォン50の音声を入力し、同コンピュータ装置内でマイクロフォン50の音声信号と授業用音源からの他の音声信号とをミキシングして、無線通信部を介して音声制御装置10,210に送信するようにしてもよい。
【0056】
或いは、授業用音源をマイクロフォン50に入力し、ミキシングした後、音声制御装置10,210に送信するようにしてもよい。この場合、マイクロフォン50(
図3及び
図6)は、音声入力端子(AUX IN)及び、マイク入力部61から入力され変調部53で変調された音声と音声入力端子から入力された音声とをミキシングするミキシング手段(図示省略)を備える。ミキシング手段によりミキシングされた音声は、無線通信部65から送信される。
或いは、教師用のコンピュータ装置とマイクロフォン50の音声信号をそれぞれ音声制御装置10,210に送信し、音声制御装置10,210においてミキシング手段(図示省略)によりミキシングするようにしてもよい。
【0057】
(4)上記第1実施形態及び第2実施形態においては、音声制御装置10,210は、授業モードに設定されているときはノイズキャンセル部15をOFFにしていたが、ONにしてもよい。或いは、ノイズキャンセル部15をON又はOFFにするスイッチを別途設けてもよい。
【0058】
例えば、授業中であっても授業形態によっては騒がしい場合もある。その場合、授業モードであってもノイズキャンセル部15をONすることにより、騒音を抑制しより集中力を得られるようにすることができる。
【0059】
(5)上記第1実施形態及び第2実施形態においては、音声制御装置10,210はマイクロフォン50と無線で接続されるが、受信機等の機器を介して有線で接続されるものであってもよい。
【0060】
(6)音声制御装置10,210又はマイクロフォン50におけるプロセッサP1,P5は、所定の機能を実現するように設計された専用の電子回路で構成されるプロセッサを含んでもよい。プロセッサは、1つまたは複数のプロセッサで構成してもよい。また、ノイズキャンセル部15は、モード検出部11、復調部13、復号部14とは別の回路で構成されていてもよい。
【0061】
(7)
図4、
図7等に示すフローチャートの処理の実行順序は、必ずしも、上記実施形態の記載に制限されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、実行順序を入れ替えたり、並行して実行されたりすることができる。さらに、1つのステップに複数の処理が含まれる場合には、その1つのステップに含まれる複数の処理は、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
【0062】
(8)音声制御装置10,210により実行される音声制御方法、又は同方法を実行するコンピュータプログラム、同コンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本開示の範囲に含まれる。コンピュータプログラムは電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク等を経由して取得されてもよい。
【0063】
(9)音声制御装置10,210を備えたイヤーマフ1の用途は上述したものに限定されない。例えば聴覚が敏感でない人であっても、イヤーマフ1を着用することによって、集中力を高めることや静かに過ごすことができる等の効果が得られる。
【0064】
また、音声制御装置10,210を備えたイヤーマフ1は、ヘッドフォンと呼ばれる製品も含む。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本開示は、音声の出力が可能なイヤーマフとして利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 :イヤーマフ
10 :音声制御装置
11 :モード検出部
13 :復調部
14 :復号部
15 :ノイズキャンセル部
21 :無線通信部
23 :A/D変換部
24 :D/A変換部
31 :マイク入力部
32 :電源
33 :モード切替スイッチ
35 :音声出力部
37 :インジケータ
50 :マイクロフォン
51 :デジタル音声信号生成部
52 :符号化部
53 :変調部
55 :ON/OFF信号生成部
61 :マイク入力部
62 :A/D変換部
63 :電源
65 :無線通信部
101 :ヘッドセット
103 :ハウジング
105 :イヤーパッド
210 :音声制御装置
P1 :プロセッサ
P5 :プロセッサ