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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】構造物の接着方法及び接着構造
(51)【国際特許分類】
   C09J 5/00 20060101AFI20230727BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
C09J5/00
C09J201/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019144202
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021024956
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】502116922
【氏名又は名称】ジャパンマリンユナイテッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】大倉 雄一
(72)【発明者】
【氏名】八木 隆之
(72)【発明者】
【氏名】松川 英輔
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-057329(JP,A)
【文献】特開2011-224785(JP,A)
【文献】特開2005-350547(JP,A)
【文献】特開平8-209855(JP,A)
【文献】特開2005-146035(JP,A)
【文献】特開平3-76772(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0238509(US,A1)
【文献】特開昭64-83115(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221289(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
E04B 1/62- 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接着部の表面に所定の構造物を接着する方法であって、
構造用接着剤及び仮止用接着剤の塗布面積を算出する塗布面積算出工程と、
前記構造用接着剤及び前記仮止用接着剤の塗布面積を合算した面積以上の大きさを備えた接着面を有する接着部の形状を特定する形状特定工程と、
前記接着面に前記構造用接着剤及び前記仮止用接着剤を塗布する塗布工程と、
前記接着面を前記被接着部の表面に押し付けて接着する接着工程と、を含み、
前記塗布面積算出工程は、前記構造用接着剤の塗布面積を前記構造物の重量に基づいて算出し、前記仮止用接着剤の塗布面積を前記構造物の本体部を支持する支持部材の重量に基づいて算出する工程であり、
前記接着工程で前記構造用接着剤が前記接着面の外周からはみ出すように、前記塗布工程で前記構造用接着剤を塗布する、
ことを特徴とする構造物の接着方法。
【請求項2】
被接着部の表面に所定の構造物を接着する方法であって、
構造用接着剤及び仮止用接着剤の塗布面積を算出する塗布面積算出工程と、
前記構造用接着剤及び前記仮止用接着剤の塗布面積を合算した面積以上の大きさを備えた接着面を有する接着部の形状を特定する形状特定工程と、
前記接着面に前記構造用接着剤及び前記仮止用接着剤を塗布する塗布工程と、
前記接着面を前記被接着部の表面に押し付けて接着する接着工程と、を含み、
前記形状特定工程は、前記接着部が前記構造用接着剤を塗布する主接着面と前記仮止用接着剤を塗布する補助接着面とを有し、前記接着面の中心部付近に前記補助接着面を配置し、その外周に前記主接着面を配置するように、前記接着部の形状を特定する工程であり、
前記接着工程で前記構造用接着剤が前記接着面の外周からはみ出すように、前記塗布工程で前記構造用接着剤を塗布する、
ことを特徴とする構造物の接着方法。
【請求項3】
被接着部の表面に所定の構造物を接着する方法であって、
構造用接着剤及び仮止用接着剤の塗布面積を算出する塗布面積算出工程と、
前記構造用接着剤及び前記仮止用接着剤の塗布面積を合算した面積以上の大きさを備えた接着面を有する接着部の形状を特定する形状特定工程と、
前記接着面に前記構造用接着剤及び前記仮止用接着剤を塗布する塗布工程と、
前記接着面を前記被接着部の表面に押し付けて接着する接着工程と、を含み、
前記形状特定工程は、前記接着部が前記構造用接着剤を塗布する主接着面と前記仮止用接着剤を塗布する補助接着面とを有し、前記主接着面の外周に前記補助接着面を形成する複数のタブを配置するように、前記接着部の形状を特定する工程であり、
前記接着工程で前記構造用接着剤が前記接着面の外周からはみ出すように、前記塗布工程で前記構造用接着剤を塗布する、
ことを特徴とする構造物の接着方法。
【請求項4】
前記塗布工程は、複数の列を形成するように前記構造用接着剤を直線状に塗布する工程を含んでいる、請求項1~3の何れか一項に記載の構造物の接着方法。
【請求項5】
被接着部の表面に所定の構造物を接着する構造であって、
構造用接着剤及び仮止用接着剤の塗布面積を合算した面積以上の大きさを備えた接着面を有し、接着時に前記接着面の外周から前記構造用接着剤がはみ出すように構成された接着部を含み、
前記構造用接着剤の塗布面積は前記構造物の重量に基づいて算出され、前記仮止用接着剤の塗布面積は前記構造物を支持する支持部材の重量に基づいて算出される、
ことを特徴とする構造物の接着構造。
【請求項6】
前記接着部は、前記構造用接着剤を塗布する主接着面と前記仮止用接着剤を塗布する補助接着面とを有し、前記主接着面の外周に前記補助接着面を形成する複数のタブを有する、請求項5に記載の構造物の接着構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の接着方法及び接着構造に関し、特に、構造用接着剤を用いた構造物の接着方法及び接着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
構造用接着剤は、車両、電気機器、船舶、建築・土木、宇宙産業分野等の幅広い分野で利用されている。「構造用接着剤」とは、JIS(Japanese Industrial Standards:日本工業規格)K6800によれば、「長期間大きな荷重に耐える信頼できる接着剤」と定義されている。
【0003】
例えば、船舶の艤装品の取り付けには、常温硬化性の構造用接着剤が用いられることが多い。かかる構造用接着剤を用いることにより、艤装品を取り付ける部分が薄い鋼板の場合であっても、溶接歪のような熱変形を生じることがなく、溶接の代替手段の一つとして利用されている。
【0004】
ところで、構造用接着剤は、接着対象の構造物が保持できるようになるまで少なくとも10分以上の時間を要することから、作業員が手で押さえておくか、治具を用いて構造物を固定しておく必要がある。
【0005】
また、特許文献1には、加熱硬化型の構造用接着剤を用いて部材と部材とを接着接合する方法であって、塗布した構造用接着剤に沿うようにしてその外側に常温硬化型の瞬間接着剤を塗布し、その状態で両者の仮接合を行った後、構造用接着剤の加熱による硬化処理を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-350547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、作業員の補助や治具で構造用接着剤が硬化するまで保持することは作業時間に無駄が多く、作業コストも増大することとなる。また、例えば、船舶の艤装品(レセプタクル、照明、電線支持具、機器設置台等)のように、暴露部に取り付けられる構造物では、接着部に一定の強度が求められる。
【0008】
上述した特許文献1に記載された発明では、構造用接着剤の外側に瞬間接着剤が配置されていることから、構造用接着剤の端部は接着する部材間に挟まれた位置に存在することとなる。一般に、構造用接着剤は硬化時に収縮することから、その端部でひび割れが生じやすい。かかるひび割れは、接着部の強度低下を引き起こす原因となる。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、接着時に構造物を容易に仮止めすることができるとともに接着後の接着部の強度を保持することができる、構造物の接着方法及び接着構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、被接着部の表面に所定の構造物を接着する方法であって、構造用接着剤及び仮止用接着剤の塗布面積を算出する塗布面積算出工程と、前記構造用接着剤及び前記仮止用接着剤の塗布面積を合算した面積以上の大きさを備えた接着面を有する接着部の形状を特定する形状特定工程と、前記接着面に前記構造用接着剤及び前記仮止用接着剤を塗布する塗布工程と、前記接着面を前記被接着部の表面に押し付けて接着する接着工程と、を含み、前記塗布面積算出工程は、前記構造用接着剤の塗布面積を前記構造物の重量に基づいて算出し、前記仮止用接着剤の塗布面積を前記構造物の本体部を支持する支持部材の重量に基づいて算出する工程であり、前記接着工程で前記構造用接着剤が前記接着面の外周からはみ出すように、前記塗布工程で前記構造用接着剤を塗布する、ことを特徴とする構造物の接着方法が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、被接着部の表面に所定の構造物を接着する方法であって、構造用接着剤及び仮止用接着剤の塗布面積を算出する塗布面積算出工程と、前記構造用接着剤及び前記仮止用接着剤の塗布面積を合算した面積以上の大きさを備えた接着面を有する接着部の形状を特定する形状特定工程と、前記接着面に前記構造用接着剤及び前記仮止用接着剤を塗布する塗布工程と、前記接着面を前記被接着部の表面に押し付けて接着する接着工程と、を含み、前記形状特定工程は、前記接着部が前記構造用接着剤を塗布する主接着面と前記仮止用接着剤を塗布する補助接着面とを有し、前記接着面の中心部付近に前記補助接着面を配置し、その外周に前記主接着面を配置するように、前記接着部の形状を特定する工程であり、前記接着工程で前記構造用接着剤が前記接着面の外周からはみ出すように、前記塗布工程で前記構造用接着剤を塗布する、ことを特徴とする構造物の接着方法が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、被接着部の表面に所定の構造物を接着する方法であって、構造用接着剤及び仮止用接着剤の塗布面積を算出する塗布面積算出工程と、前記構造用接着剤及び前記仮止用接着剤の塗布面積を合算した面積以上の大きさを備えた接着面を有する接着部の形状を特定する形状特定工程と、前記接着面に前記構造用接着剤及び前記仮止用接着剤を塗布する塗布工程と、前記接着面を前記被接着部の表面に押し付けて接着する接着工程と、を含み、前記形状特定工程は、前記接着部が前記構造用接着剤を塗布する主接着面と前記仮止用接着剤を塗布する補助接着面とを有し、前記主接着面の外周に前記補助接着面を形成する複数のタブを配置するように、前記接着部の形状を特定する工程であり、前記接着工程で前記構造用接着剤が前記接着面の外周からはみ出すように、前記塗布工程で前記構造用接着剤を塗布する、ことを特徴とする構造物の接着方法が提供される。
【0014】
前記塗布工程は、複数の列を形成するように前記構造用接着剤を直線状に塗布する工程を含んでいてもよい。
【0015】
また、本発明によれば、被接着部の表面に所定の構造物を接着する構造であって、構造用接着剤及び仮止用接着剤の塗布面積を合算した面積以上の大きさを備えた接着面を有し、接着時に前記接着面の外周から前記構造用接着剤がはみ出すように構成された接着部を含み、前記構造用接着剤の塗布面積は前記構造物の重量に基づいて算出され、前記仮止用接着剤の塗布面積は前記構造物を支持する支持部材の重量に基づいて算出される、ことを特徴とする構造物の接着構造が提供される。
【0017】
前記接着部は、前記構造用接着剤を塗布する主接着面と前記仮止用接着剤を塗布する補助接着面とを有し、前記主接着面の外周に前記補助接着面を形成する複数のタブを有していてもよい。
【発明の効果】
【0018】
上述した本発明に係る構造物の接着方法及び接着構造によれば、構造物の接着に必要な構造用接着剤及び仮止用接着剤の塗布面積を算出してから、構造用接着剤及び仮止用接着剤を塗布する接着面の面積及び接着部の形状を特定したことにより、構造物の接着に必要な構造用接着剤を接着面に塗布することができ、かつ、構造用接着剤が硬化するまで構造物を保持するために必要な仮止用接着剤を接着面に塗布することができる。したがって、作業員の補助や治具を用いることなく構造物を被接着部の表面に接着することができ、接着時に構造物を容易に仮止めすることができる。
【0019】
また、本発明によれば、接着時に接着面の外周から構造用接着剤がはみ出すようにしたことにより、構造用接着剤の硬化時に収縮が生じた場合であっても、構造物の接着面と被接着部の表面との間に生じるひび割れを低減することができる。したがって、接着部の強度低下を抑制することができ、接着後の接着部の強度を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第一実施形態に係る構造物の接着方法を示すフロー図である。
図2図1に示した接着方法の説明図であり、(A)は形状特定工程、(B)は塗布工程、(C)は接着工程、を示している。
図3図1に示した接着方法の説明図であり、(A)は構造用接着剤の硬化前の状態を示す断面図、(B)は構造用接着剤の硬化後の状態を示す断面図、(C)は構造物を支持部材に配置した状態、を示している。
図4】塗布工程の変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、である。
図5】本発明の第二実施形態に係る構造物の接着方法を示す説明図であり、(A)は形状特定工程及び塗布工程、(B)は接着工程、を示している。
図6】形状特定工程及び塗布工程の変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、(C)は第三変形例、(D)は第四変形例、(E)は第五変形例、(F)第六変形例、である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図1図6(F)を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係る構造物の接着方法を示すフロー図である。図2は、図1に示した接着方法の説明図であり、(A)は形状特定工程、(B)は塗布工程、(C)は接着工程、を示している。図3は、図1に示した接着方法の説明図であり、(A)は構造用接着剤の硬化前の状態を示す断面図、(B)は構造用接着剤の硬化後の状態を示す断面図、(C)は構造物を支持部材に配置した状態、を示している。
【0022】
本発明の第一実施形態に係る構造物1の接着方法は、被接着部2の表面に構造物1を接着する方法であって、構造用接着剤3及び仮止用接着剤4の塗布面積を算出する塗布面積算出工程Step1と、構造用接着剤3及び仮止用接着剤4の塗布面積を合算した面積以上の大きさを備えた接着面11aを有する接着部11の形状を特定する形状特定工程Step2と、接着面11aに構造用接着剤3及び仮止用接着剤4を塗布する塗布工程Step3と、接着面11aを被接着部2の表面に押し付けて接着する接着工程Step4と、を含み、接着工程Step4で構造用接着剤3が接着面11aの外周からはみ出すように、塗布工程Step3で構造用接着剤3を塗布している。
【0023】
構造物1は、例えば、レセプタクル、照明、電線支持具、機器設置台等の艤装品であるが、これらに限定されるものではない。また、被接着部2は、例えば、船舶の床面、壁面、天井面等のように平面を形成する暴露部である。また、構造物1は、例えば、図3(C)に示したように、本体部1aと、本体部1aを支持する支持部材1bと、備えている。したがって、構造物1は、支持部材1bを被接着部2に固定してから、支持部材1bに本体部1aが取り付けられる。
【0024】
塗布面積算出工程Step1は、構造用接着剤3の塗布面積を算出する第一算出工程Step11と、仮止用接着剤4の塗布面積を算出する第二算出工程Step12と、を含んでいる。なお、第一算出工程Step11と第二算出工程Step12の順序はどちらを先に処理してもよいし、同時に処理してもよい。
【0025】
構造用接着剤3は、例えば、金属の接着に適した第二世代アクリル系の構造用接着剤であるが、構造用接着剤3は構造物1及び被接着部2の素材によって適宜選択することができる。また、構造物1が船舶の艤装品である場合には、構造用接着剤3は常温硬化型であることが好ましい。
【0026】
構造用接着剤3は、硬化後に構造物1(本体部1a及び支持部材1b)を保持する部材であることから、少なくとも構造物1の重量を保持可能な強度が必要である。したがって、構造用接着剤3の塗布面積は、構造物1(本体部1a及び支持部材1b)の重量に基づいて算出される。なお、支持部材1bが本体部1aと比較して十分に軽量である場合には、構造用接着剤3の塗布面積は、本体部1aの重量に基づいて算出してもよい。
【0027】
仮止用接着剤4は、例えば、シアノアクリレートを主成分とする瞬間接着剤であるが、これに限定されるものではない。また、支持部材1bの重量や素材によっては、仮止用接着剤4は両面テープであってもよい。
【0028】
仮止用接着剤4は、構造用接着剤3が硬化するまで支持部材1bを保持可能な強度を有していればよく、本体部1aを保持可能なほど大きな強度は必要がない。したがって、仮止用接着剤4の塗布面積は、支持部材1bの重量に基づいて算出される。
【0029】
形状特定工程Step2は、構造物1の接着部11、すなわち、本実施形態では支持部材1bの接着部11の形状を特定する工程である。接着部11は、平面を形成する被接着部2に対して密着可能な平板形状を有している。接着部11の外形は、例えば、図2(A)に示したように、角部にR形状を有する四角形状であるが、これに限定されるものではない。接着部11は、円形状、楕円形状、多角形状等の外形を有してしてもよい。
【0030】
かかる形状特定工程Step2は、例えば、図2(A)に示したように、接着部11が構造用接着剤3を塗布する主接着面113と仮止用接着剤4を塗布する補助接着面114とを有し、接着面11aの中心部付近に補助接着面114を配置し、その外周に主接着面113を配置するように、接着部11の形状を特定する工程である。
【0031】
主接着面113の面積は、塗布面積算出工程Step1の第一算出工程Step11により算出された構造用接着剤3の塗布面積以上の大きさに特定される。また、補助接着面114は、塗布面積算出工程Step1の第二算出工程Step12により算出された仮止用接着剤4の塗布面積以上の大きさに特定される。
【0032】
このように、形状特定工程Step2では、接着部11の外形の形状を特定した後、塗布面積算出工程Step1で算出された構造用接着剤3及び仮止用接着剤4の塗布面積に基づいて接着部11の最終形状が特定される。
【0033】
塗布工程Step3は、主接着面113に構造用接着剤3を塗布する第一塗布工程Step31と、補助接着面114に仮止用接着剤4を塗布する第二塗布工程Step32と、を含んでいる。なお、説明の便宜上、図2(B)において、構造用接着剤3を濃い灰色で図示し、仮止用接着剤4を薄い灰色で図示してある。
【0034】
かかる塗布工程Step3では、例えば、図2(B)に示したように、構造用接着剤3及び仮止用接着剤4が塗布される。なお、第一塗布工程Step31及び第二塗布工程Step32の順序は図1に示した順序に限定されるものではなく、第二塗布工程Step32を先に処理してもよい。
【0035】
また、図2(B)に示したように、構造用接着剤3及び仮止用接着剤4は、複数の列を形成するように直線状に盛られた状態で塗布される。このように構造用接着剤3を所定の間隔を空けて直線状に並べて塗布することにより、接着時に構造用接着剤3を主接着面113に満遍なく行き渡らせることができるだけでなく、展延時の空気の混入を抑制することができる。構造用接着剤3に空気が混入すると接着強度が低下してしまうため、空気の混入を抑制することが好ましい。
【0036】
また、仮止用接着剤4を直線状に塗布した部分の両側に塗布される構造用接着剤3は、仮止用接着剤4と略同一直線上に配置されていることが好ましい。かかる配置により、構造用接着剤3の展延時に仮止用接着剤4を外部に漏らさずに封じ込むことができる。
【0037】
また、接着面11aの周縁部に塗布される構造用接着剤3は、被接着部2に接着部11を押し付けた際に接着面11aの外周からはみ出すことができる分量が塗布される。例えば、図2(B)に示した構造用接着剤3において、左から順に一列目~五列目と定義するものとする。
【0038】
一列目の構造用接着剤3は、接着時に展延することによって接着面11aの図の左側及び上下両側にはみ出すように分量が調整されている。二列目~四列目の構造用接着剤3は、接着時に展延することによって接着面11aの図の上下両側にはみ出すように分量が調整されている。五列目の構造用接着剤3は、接着時に展延することによって接着面11aの図の右側及び上下両側にはみ出すように分量が調整されている。
【0039】
接着工程Step4は、図2(B)に示したように、接着部11を被接着部2の表面に押し付けて、塗布された構造用接着剤3及び仮止用接着剤4を展延させて、主接着面113に構造用接着剤3を満遍なく行き渡らせるとともに、接着面11aの外周からはみ出させた状態に保持する工程である。このとき、補助接着面114には仮止用接着剤4が満遍なく行き渡っていることから、作業員の補助や治具を用いることなく、構造物1(支持部材1b)を図2(B)に示した状態のまま保持することができる。
【0040】
構造用接着剤3の硬化前は、図3(A)に示したように、構造用接着剤3は接着部11の周縁部から盛り上がった状態(外に凸な状態)になっている。その後、時間の経過とともに構造用接着剤3が硬化すると、構造用接着剤3は収縮し、図3(B)に示したように、接着部11の周縁部からはみ出した部分が窪んだ状態(内に凸な状態)に変形することとなる。
【0041】
このように、接着部11の周縁部からはみ出した部分で構造用接着剤3を収縮させることにより、接着面11aと被接着部2の表面との間に生じるひび割れを抑制することができる。したがって、接着部11の強度低下を抑制することができ、接着後の接着部11の強度を保持することができる。
【0042】
構造用接着剤3が硬化した後、図3(C)に示したように、支持部材1bに本体部1aを取り付ける。なお、図示した本体部1a及び支持部材1bの構成は、単なる例示であり、図示した構成に限定されるものではない。
【0043】
上述した第一実施形態に係る構造物1の接着方法によれば、構造用接着剤3及び仮止用接着剤4の塗布面積を合算した面積以上の大きさを備えた接着面11aを有し、接着時に接着面11aの外周から構造用接着剤3がはみ出すように構成された接着部11を備えた構造物1の接着構造が構成される。
【0044】
次に、塗布工程Step3の変形例について、図4(A)及び図4(B)を参照しつつ説明する。ここで、図4は、塗布工程の変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、である。
【0045】
図4(A)に示した第一変形例は、仮止用接着剤4を塗布する位置を左から四列目の位置に変更したものである。このように、仮止用接着剤4を塗布する位置は、必ずしも接着面11aの中心部である必要はなく、中心部に近い領域(例えば、二列目や四列目の位置)であってもよい。かかる位置に仮止用接着剤4を塗布した場合であっても、接着工程Step4において、構造用接着剤3で仮止用接着剤4を内部に封じ込むことができる。
【0046】
換言すれば、仮止用接着剤4を塗布する位置は、一列目や五列目に配置することは好ましくない。この場合、接着工程Step4において、仮止用接着剤4が構造用接着剤3の展延によって接着面11aの外に押し出されてしまい、構造物1の仮止めに必要な強度を保持することができないことが予測される。
【0047】
図4(B)に示した第二変形例は、構造用接着剤3及び仮止用接着剤4を斜めに塗布したものである。接着工程Step4において、仮止用接着剤4を封じ込みつつ構造用接着剤3を接着面11aの外周にはみ出させることができれば、構造用接着剤3及び仮止用接着剤4を塗布する方向は任意に設定することができる。
【0048】
次に、本発明の第二実施形態に係る構造物の接着方法について、図5(A)~図6(F)を参照しつつ説明する。ここで、図5は、本発明の第二実施形態に係る構造物の接着方法を示す説明図であり、(A)は形状特定工程及び塗布工程、(B)は接着工程、を示している。
【0049】
第二実施形態に係る構造物1の接着方法の基本的な流れは図1に示した第一実施形態と同一である。この第二実施形態では、形状特定工程Step2における構造物1の接着部11の形状並びに塗布工程Step3にける構造用接着剤3及び仮止用接着剤4の塗布方法が異なっている。
【0050】
第二実施形態における形状特定工程Step2は、接着部11が構造用接着剤3を塗布する主接着面113と仮止用接着剤4を塗布する補助接着面114とを有し、主接着面113の外周に補助接着面114を形成する複数のタブ11bを配置するように、接着部11の形状を特定する工程である。
【0051】
具体的には、図5(A)に示したように、形状特定工程Step2において、主接着面113は略矩形形状に形成され、その四つの角部に略矩形のタブ11bが形成される。そして、塗布工程Step3において、主接着面113には、複数の列を形成するように構造用接着剤3が直線状に塗布される。また、補助接着面114を構成するタブ11bには、その中心部に仮止用接着剤4が塗布される。
【0052】
また、構造用接着剤3は、接着工程Step4において、図5(B)に示したように、接着面11a(主接着面113)の外周から構造用接着剤3がはみ出すように塗布される。本実施形態において、タブ11b(補助接着面114)は支持部材1bの仮止めに用いられる部分であり、構造用接着剤3の硬化後に構造物1を保持可能な強度は要求されない部分である。
【0053】
構造物1の保持に必要な強度は、主接着面113によって担保されることから、構造用接着剤3は主接着面113からはみ出していれば十分である。本実施形態では、構造用接着剤3の一部はタブ11bの下に位置していることから、構造用接着剤3の硬化時に収縮してひび割れが生じる可能性がある。しかしながら、上述したように、タブ11bは構造物1を保持するための強度を担保する部分ではないことから、強度保持に与える影響は少ない。
【0054】
次に、第二実施形態における形状特定工程Step2及び塗布工程Step3の変形例について、図6(A)~図6(F)を参照しつつ説明する。ここで、図6は、形状特定工程及び塗布工程の変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、(C)は第三変形例、(D)は第四変形例、(E)は第五変形例、(F)第六変形例、である。
【0055】
図6(A)に示した第一変形例は、主接着面113の角部に略円形状のタブ11bを形成したものである。図示しないが、タブ11bは、楕円形状、多角形状等の他の形状であってもよい。
【0056】
図6(B)に示した第二変形例は、主接着面113の角部に図の左右方向に延設するようにタブ11bを形成したものである。図示しないが、主接着面113の角部に図の上下方向に延設するようにタブ11bを形成してもよい。また、図示しないが、一部のタブ11bを図の左右方向に延設し、残りのタブ11bを図の上下方向に延設するようにタブ11bを形成してもよい。
【0057】
図6(C)に示した第三変形例は、主接着面113の各辺の中央部にタブ11bを形成したものである。図示しないが、タブ11bの形状は、円形状や多角形状等であってもよい。なお、タブ11bは、上下左右にバランスよく配置されていれば、必ずしも各辺の中央部に形成されていなくてもよい。
【0058】
図6(D)に示した第四変形例は、主接着面113の図の左右両側の辺に二つずつタブ11bを形成したものである。本変形例は、図6(B)に示したタブ11bを左右両側の辺に沿って中央部寄りに位置を変更したものということもできる。図示しないが、主接着面113の図の上下両側の辺に二つずつタブ11bを形成してもよい。また、各辺に形成されるタブ11bの個数は三つ以上であってもよい。
【0059】
図6(E)に示した第五変形例は、主接着面113の角部に図の左右方向及び上下方向に延設するように計八つのタブ11bを形成したものである。また、図6(F)に示した第六変形例は、図6(E)に示したタブ11bを各辺に沿って中央部寄りに位置を変更したものである。
【0060】
上述したように、タブ11bの個数及び配置は、仮止用接着剤4の塗布面積、支持部材1bの重量や重心の位置、構造物1を接着する場所の環境等の条件によって任意に設定することができる。
【0061】
上述した第二実施形態に係る構造物1の接着方法によれば、構造用接着剤3及び仮止用接着剤4の塗布面積を合算した面積以上の大きさを備えた接着面11aを有し、接着時に接着面11aの外周から構造用接着剤3がはみ出すように構成された接着部11を備えるとともに、接着部11が、構造用接着剤3を塗布する主接着面113と仮止用接着剤4を塗布する補助接着面114とを有し、主接着面113の外周に補助接着面114を構成する複数のタブ11bを形成した構造物1の接着構造が構成される。
【0062】
本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば、船舶の艤装品以外の構造物にも適用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
1 構造物
1a 本体部
1b 支持部材
2 被接着部
3 構造用接着剤
4 仮止用接着剤
11 接着部
11a 接着面
11b タブ
113 主接着面
114 補助接着面
Step1 塗布面積算出工程
Step11 第一算出工程
Step12 第二算出工程
Step2 形状特定工程
Step3 塗布工程
Step31 第一塗布工程
Step32 第二塗布工程
Step4 接着工程



図1
図2
図3
図4
図5
図6