(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】点滴スタンド用連結具
(51)【国際特許分類】
A61G 5/10 20060101AFI20230727BHJP
A61G 1/04 20060101ALI20230727BHJP
A61M 5/14 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
A61G5/10
A61G1/04
A61M5/14 532
(21)【出願番号】P 2019152706
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】511286274
【氏名又は名称】株式会社ニシウラ
(73)【特許権者】
【識別番号】592159999
【氏名又は名称】株式会社ケンコー・トキナー
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】西浦 伸忠
(72)【発明者】
【氏名】山中 徹
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-106999(JP,A)
【文献】特開2018-051183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00-14
A61G 12/00
A61J 1/00-22
A61M 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動用器具に対する点滴スタンドの位置を変更可能な点滴スタンド用連結具であって、
前記点滴スタンドに着脱自由に接続される第1クランプと、
前記移動用器具に着脱自由に接続可能な第2クランプと、
第1連結棒と、
第2連結棒と、
前記第1連結棒の一端と前記第2連結棒の一端を1軸回転可能に軸支する1軸回転部と、
前記第1連結棒の他端に取り付けられて自由回転する第1自由回転部と、
前記第2連結棒の他端に取り付けられて自由回転する第2自由回転部と、
前記1軸回転部と前記第1自由回転部と前記第2自由回転部のロックのON/OFFを同時に行うワンロック機構と、
を備え、
前記第1クランプが前記第1自由回転部に接続され、前記第2クランプが前記第2自由回転部に接続されていることを特徴とする点滴スタンド用連結具。
【請求項2】
前記第2連結棒が前記第1連結棒よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の点滴スタンド用連結具。
【請求項3】
前記第2自由回転部は、前記第2連結棒と同方向の回転軸を前記第2連結棒に対して90度以上にする切欠きを有していることを特徴とする請求項1に記載の点滴スタンド用連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点滴スタンド用連結具に関する。詳しくは、点滴スタンドを主として車椅子、他にリハビリ歩行器やストレッチャなどの移動用器具に連結する点滴スタンド用連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設では点滴中の患者がキャスタ付き点滴スタンドを携えて車椅子、ストレッチャやリハビリ歩行器などの移動用器具で移動することがある。患者にキャスタ付きの点滴スタンドを握らせて車椅子で移動すると事故が発生した時に責任の問題が発生する。また、車椅子を押す人が点滴スタンドを握ると、本来両手で車椅子を押さなければならないのに片手で車椅子を押すことになる。そこで、車椅子で移動するときは点滴スタンドを人が持たなくてもよいように、キャスタ付きの点滴スタンドを移動用器具に連結する点滴スタンド用連結具が考えられ、特許文献1、特許文献2、特許文献3のような点滴スタンド用連結具が知られている。
【0003】
本願の発明者は、特許文献1~3の点滴スタンド用連結具に対して、汎用的な点滴スタンド用連結具を提供する目的で、また、点滴スタンドを移動用器具の前後や横などに容易に位置変更でき、非使用時にコンパクトに収容できる点滴スタンドを提供する目的で、先に特願2019-128440で出願した点滴スタンド用連結具を考えた。そして、この出願に係る点滴スタンド用連結具は、非特許文献1に開示されているようにフォトンライトという商品名で販売されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6186034号公報
【文献】特許第6015848号公報
【文献】特開2016-49244号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】村中医療器情報サイト、[online]、点滴台転倒防止連結用具 フォトンライト、[令和元年8月10日検索]、インターネット〈https://www.muranaka.co.jp/online/products/detail.php?product_id=76123〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実際の現場において、このフォトンライトを看護師などに使用してもらい、その感想を聞いたところ、容易に位置変更できるようにしてほしい、というような意見があった。
そこで、本発明は、取り付けが容易で、汎用的であり、容易に位置変更できる点滴スタンド用連結具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の点滴スタンド用連結具は、点滴スタンドに着脱自由に接続される第1クランプと、移動用器具に着脱自由に接続可能な第2クランプと、第1連結棒と、第2連結棒と、前記第1連結棒の一端と前記第2連結棒の一端を1軸回転可能に軸支する1軸回転部と、前記第1連結棒の他端に取り付けられて自由回転する第1自由回転部と、前記第2連結棒の他端に取り付けられて自由回転する第2自由回転部と、前記1軸回転部と前記第1自由回転部と前記第2自由回転部のロックのON/OFFを同時に行うワンロック機構と、を備え、前記第1クランプが前記第1自由回転部に接続され、前記第2クランプが前記第2自由回転部に接続されていることを特徴とする。
【0008】
このようにワンロック機構を使用するので、点滴スタンド用連結具を取り付けるときや点滴スタンドを回転させるときなどにロックのON/OFFを同時に行うことができるので、点滴スタンド用連結具の取り付けや点滴スタンドの位置変更を簡単に行うことができる。
【0009】
また、1軸回転部により第1連結棒の一端と第2連結棒の一端が1軸回転するので、点滴スタンドと移動用器具間の距離を容易に変更することができる。
【0010】
このワンクロック機構としては、例えば、1軸回転部ロック機構と、1軸回転部ロック機構と連動する第1自由回転部ロック機構と、1軸回転部ロック機構と連動する第2自由回転部ロック機構で形成することができる。
【0011】
また、本発明の点滴スタンド用連結具は、前記第2連結棒が前記第1連結棒よりも短いことを特徴とする。これにより、長さが短い第2連結棒と移動用器具とのロック力が強くなり、移動用器具が曲がるときに点滴スタンドが追従し易くなる。
【0012】
また、前記第2自由回転部は、前記第2連結棒と同方向の回転軸を前記第2連結棒に対して90度以上にする切欠きを有していることを特徴とする。
これにより、第2クランプの向きの自由度が増加するので、点滴スタンド用連結具を種々の移動用器具に取り付けることができる。また更に、この切欠きは第2連結棒に対して回動可能であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態の点滴スタンド用連結具の正面の撮像である。
【
図2】本発明の実施形態の要部の構成を示す正面図である。
【
図4】Aは
図2のIVA-IVA断面図であり、Bは
図3AのIVB-IVB断面図である。
【
図5】Aは使用例1における点滴スタンドが車椅子に近づく時の点滴スタンド用連結具の動作を示す正面図であり、Bは点滴スタンドが車椅子に連結される使用例1を示す撮像である。
【
図6】Aは使用例2における点滴スタンドが車椅子を中心に回転移動する時の点滴スタンド用連結具の動作を示す正面図であり、Bはその撮像である。
【
図7】Aは使用例3における車椅子のリクライニングが倒れる時の点滴スタンド用連結具の動作を示す正面図であり、Bはその撮像である。
【
図8】Aは使用例4におけるストレッチャが上方に移動する時の点滴スタンド用連結具の動作を示す正面図であり、Bはその撮像である。
【
図9】使用例5における点滴スタンドがリハビリ歩行器に接続された撮像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0015】
[実施形態]
図1~
図4を用いて、実施形態の点滴スタンド用連結具100の要部の構成を説明する。
図1は本実施形態の点滴スタンド用連結具100の正面の撮像である。
図2は点滴スタンド用連結具100の要部の構成を示す正面図である。
図3Aは
図2の平面図であり、
図3Bは
図2の底面図である。
図4Aは
図2のIVA-IVA断面図であり、
図4Bは
図3AのIVB-IVB断面図である。なお、本実施形態の点滴スタンド用連結具100は、キャスタ付き点滴スタンドDを移動用器具である車椅子W、ストレッチャS、リハビリ歩行器Rなどに連結するものである。
【0016】
図1~
図3に示すように、点滴スタンド用連結具100は、長い第1連結棒1と、短い第2連結棒2と、第1連結棒1の一端と第2連結棒2の一端を1軸で回動可能に連結する1軸回転部3と、第1連結棒1の他端に取り付けられる第1自由回転部4と、第2連結棒2の他端に取り付けられる第2自由回転部5と、第1自由回転部4に取り付けられる第1クランプ6と、第2自由回転部5に取り付けられる第2クランプ7と、ワンロック機構と、からなる。これらの構成部品の材料は主として表面加工されたアルミニウムやアクリルからなる。また、短い第2連結棒2側の第2クランプ7が移動用器具に接続され、長い第1連結棒1側の第1クランプ6が点滴スタンドDに接続される。
【0017】
[第1連結棒1、第2連結棒2]
図4Bに示すように、第1連結棒1は、内部が空洞の筒状であり、1軸回転部3側である一端側に第1雄ねじ11が切られており、第1自由回転部4側である他端側の近傍に第1抜け止めリング12が第1取付具13の螺入によって嵌められている構成となっている。また、同様に第2連結棒2は、内部が空洞の筒状であり、1軸回転部3側である一端側に第2雄ねじ21が切られており、第2自由回転部5側である他端側の近傍に第2抜け止めリング22が第2取付具23の螺入によって嵌められている構成となっている。
【0018】
[1軸回転部3]
図4Bに示すように、1軸回転部3は、第1連結棒1側の第1軸受け31と、第1軸受け31に嵌入する第1コマ32と、第2連結棒2側の第2軸受け33と、第2軸受け33に嵌入する第2コマ34と、つまみ35と、六角ボルト36と、からなる。
【0019】
六角ボルト36は、第1コマ32と第2コマ34を貫通して、つまみ35の雌ねじ351に螺入している。これにより、第1軸受け31は第1コマ32を軸として回動可能であり、第2軸受け33は第2コマ34を軸として回動可能である。なお、つまみ35と第2コマ34の間にスラストベアリングを設けて、つまみ35の回転摩擦が第2コマ34に掛からないようにすることもできる。
【0020】
第1軸受け31には第1雌ねじ311が切られており、第1連結棒1が第1軸受け31に挿入されると、この第1雌ねじ311に第1連結棒1の第1雄ねじ11が螺入する。この時、第1軸受け31の回転軸の方向と第1連結棒1の延在方向は直交する。
【0021】
また、第2軸受け33には第2雌ねじ331が切られており、第2連結棒2が第2軸受け33に挿入されると、この第2雌ねじ331に第2連結棒2の第2雄ねじ21が螺入する。この時、第2軸受け33の回転軸の方向と第2連結棒2の延在方向は直交する。
そして、このような構成により、第1連結棒1と第2連結棒2は、1軸回転部3によって1軸方向に回動可能となる。
【0022】
[第1自由回転部4、第2自由回転部5]
第1自由回転部4は、
図4A、
図4Bに示すように、球体41によって自由回転を行うことができる。具体的には、第1自由回転部4は、球体41と、筒状のパネル42と、蓋43と、台座44と、ボルト45と、第1押圧シャフト46からなる。また、パネル42から連結シャフト411が突出しており、この連結シャフト411は球体41から延在している。そして、連結シャフト411は、ねじ(図示せず。)などにより台座44に固着されている。この台座44には第5雌ねじ441が切られており、第1クランプ6がボルト45で台座44に螺着される。
【0023】
筒状のパネル42は、球体41を収容しており、パネル42の先端側(第1クランプ6側)では、球体41から延在する連結シャフト411を露出させるとともに、パネル42の内面には球面42aが形成され球体41と当接する。また、パネル42の後端側(1軸回転部3側)では、蓋43が螺着される。蓋43がパネル42の後端に取り付けられた状態で、パネル42と蓋43の間には隙間からなる溝47が形成される。そして、蓋43を貫通して挿入されている第1連結棒1の第1抜け止めリング12が、溝47に嵌入する。これにより、第1自由回転部4は、第1連結棒1に回動可能に軸支される。また、球体41から延在する連結シャフト411が、第1連結棒1と同じ軸方向に対して360度の回転が可能となっている。
【0024】
また、
図4Aに示すように、パネル42の先端は、連結シャフト411の径よりも大きく開口している。このため、連結シャフト411の回転軸をθ1(約25度)まで振らすことができる。
【0025】
また、この開口には更に連結シャフト411の当接を逃げる切欠き48が1つ形成されている。この切欠き48は、
図4Aに示すように、連結シャフト411の回転軸をθ2(約100度)まで振らすことができるようにするためのものである。つまり、第1自由回転部4の切欠き48は、第1連結棒1の延在方向と同じ方向の回転軸を、第1連結棒1に対して90度以上にできるようにするものである。
【0026】
そして、第1自由回転部4は、第1連結棒1に回動可能に軸支されているため、切欠き48の向きを調整することもできる。具体的には、第1自由回転部4は、パネル42を回して切欠き48の向きを調整することができる。そして、切欠き48の向きを調整することで、連結シャフト411の回転軸を任意の方向にθ2(約100度)まで振らすことができる。
なお、パネル42の切欠き48は、1つ形成されている構成を説明したが、切欠きを複数設ける構成にしても構わない。
【0027】
第1押圧シャフト46は、金属製であり、先端に球面46aが形成されている。そして、第1押圧シャフト46は、筒状の第1連結棒1の内部を貫通して、この先端の球面46aで球体41の表面と接し、球体41を押圧できる構成となっている。
【0028】
また、本実施形態において第2自由回転部5は、第1自由回転部4と第1押圧シャフト46の長さの違いのみであり、他の構成部品は同一形状の共通部品である。したがって、第2自由回転部5の構成は、第1回転部2と同様であることから、その詳細な説明を省略する。この第2自由回転部5も、第2連結棒2の延在方向と同方向の回転軸を第2連結棒2に対して90度以上にする切欠き58(
図2、
図3に図示)を有している。
【0029】
[第1クランプ6、第2クランプ7]
本実施形態において第1クランプ6と第2クランプ7は、同一形状の共通部品となっている。このため、第1クランプ6のみを説明し、第2クランプ7の説明は省略するが、
図2においては、第2クランプ7側を拡大して図示しており、そちらに符号を付している。
【0030】
図2~
図4に示すように、第1クランプ6は、フレーム61と、第1握手62と、第2握手63と、掴みネジ64とからなる。このフレーム61は、第1自由回転部4の台座44に螺着され、「コ」の字形状(U字に近い形状)となっている。また、第1握手62と第2握手63は、フレーム61の対面を貫通する2本の第1軸65によって回動自在に一端をそれぞれ軸支されている。また、掴みネジ64は、第1握手62の他端に第2軸66で回動自在に軸支されている。
【0031】
ここで、第1握手62と第2握手63とは、回動して点滴スタンドDの垂直な支柱D1を挟んで掴むものであり、それぞれの挟む部分にはV字状の当接部67を備えている。なお、当接部67は、樹脂製のもので形成することで、点滴スタンドDの支柱D1を傷付け難くなっている。
【0032】
そして、第1握手62と第2握手63とで点滴スタンドDの支柱D1を挟んだ状態で、第1握手62に軸支された掴みネジ64が、第2握手63の切欠き溝68に嵌入される。そして、第2握手63に設けられたストッパ69に当接する位置で、掴みネジ64が螺入される。これにより、挟んだ状態の第1握手62と第2握手63の距離を掴みネジ64が縮めて第1クランプ6を点滴スタンドDに強固に固着させる。
【0033】
なお、第1握手62と第2握手63が挟む寸法は、掴みネジ64によって変更可能であるので、掴むパイプの直径が異なってもよい。また、2つのV字状の当接部67で挟んで掴むので、掴むパイプの断面が必ずしも円形でなくてもよい。また、第1クランプ6の形状は、当然ながら本実施形態に限定されるものではなく、点滴スタンドDの支柱D1に着脱自在に接続できる形状であれば、他の形状でも構わない。具体的には、U字状の握手と、このU字状握手の開口を開閉する部材からなるクランプ形状でも構わない。また、本発明のクランプは、着脱自在に点滴スタンドDへ接続できるものであればよいので、面ファスナーのようなものを構成の一部に用いる構造も当然ながら含んでいる。
【0034】
[ワンロック機構]
次に、ワンロック機構について説明する。ここで本実施形態のワンロック機構とは、1つのつまみ35の操作で1軸回転部3と第1自由回転部4と第2自由回転部5のそれぞれの回転のロックON/ロックOFFを行う機構である。
【0035】
このワンロック機構は、例えば、1軸回転部3のロック機構と、1軸回転部のロック機構と連動する第1自由回転部4のロック機構と、1軸回転部3のロック機構と連動する第2自由回転部5のロック機構で形成することができる。そして、ワンロック機構は、1軸回転部3から第1連結棒1を介して第1自由回転部4へとつながるロックの機構を備えており、また1軸回転部3から第2連結棒2を介して第2自由回転部5へとつながるロックの機構を備えて構成されている。
【0036】
具体的には、
図4Bに示すように、第1自由回転部4の第1押圧シャフト46が、1軸回転部3の第1コマ32まで延在している。そして、第1押圧シャフト46に設けられた45度の傾斜面46bと、第1コマ32に設けられた45度の傾斜面32aが互いに当接している。そして、この互いの傾斜面46b、32aにより、第1コマ32が第2コマ34の方向へ移動すると、分力で第1押圧シャフト46が球体41側へ移動し、球体41を押圧することになる。
【0037】
同様に、第2自由回転部5の第2押圧シャフト56は、1軸回転部3の第2コマ34まで延在している。そして、第2押圧シャフト56に設けられた45度の傾斜面56bと、第2コマ34に設けられた45度の傾斜面34aが互いに当接している。そして、この互いの傾斜面56b、34aにより、第2コマ34が第1コマ32の方向へ移動すると分力で第2押圧シャフト56が球体51側へ移動し、球体51を押圧することになる。
【0038】
ここで、つまみ35が右回転されると、六角ボルト36がつまみ35に螺入することで、つまみ35と六角ボルト36が近づくことになる。そして、第1コマ32と第2コマ34の間隔が狭くなり、1軸回転部3の第1軸受け31のギザギザになっている菊座31aと第2軸受け33の菊座33aが咬合して、1軸回転部3の回転がロックONされる。
【0039】
これと同時に、第1コマ32と第2コマ34の間隔が狭くなると、第1押圧シャフト46が球体41を押圧して第1自由回転部4の回転がロックONされ、第2押圧シャフト56が球体51を押圧して第2自由回転部5の回転がロックONされる。また、第1自由回転部4のパネル42の回転も、球体41により球面42aが押圧されため、ロックONされる。同様に第2自由回転部5のパネル52の回転もロックONされる。
【0040】
このようにして、ワンロック機構は、1つのつまみ35の右回転操作で1軸回転部3と第1自由回転部4と第2自由回転部5のそれぞれの回転を同時にロックONする。そして、ワンロック機構は、つまみ35が左回転されると、1軸回転部3と第1自由回転部4と第2自由回転部5のそれぞれの回転を同時にロックOFFする。
【0041】
なお、本実施形態のように押圧シャフトの移動により球体を押圧し、自由回転部の回転をロックする構造においては、筒状の連結棒とその中に配置された押圧シャフトとの間に、押圧シャフトが移動するための隙間が必要となる。このため、押圧シャフトの長さが長くなればなるほど、押圧シャフトの撓みの影響などで球体を押圧する力が弱くなってしまう。このため、ロックする力を確保するためには、押圧シャフトの長さをできるだけ短くした方がよい。
【0042】
一方で、後述する使用例のように、例えば車椅子Wと点滴スタンドDとを連結する際、車椅子Wと点滴スタンドDがあまり接近してしまうと、車椅子Wのタイヤと点滴スタンドDのキャスタとが干渉することにもなるので、一定の距離が必要となる。従って、車椅子Wと点滴スタンドDとの距離を確保するためには、押圧シャフトの長さを長くした方がよい。
【0043】
本発明者は、車椅子Wのような移動用器具側のロックする力と、点滴スタンドD側のロックする力について様々な検証を行ったところ、移動用器具側では患者の体重も加わることから、ロックする力が強くなければ移動用器具の動きに伴い自由回転部が回転してしまうことが判明した。反対に、点滴スタンドD側では、移動用器具と同程度までロックする力が強くなくても、自由回転部の回転を十分にロックすることができた。
【0044】
そのため、本実施形態のように、長い第1連結棒1と短い第2連結棒2を用いることで、短い第2連結棒2側を移動用器具に接続することによる十分なロック力の確保と、長い第1連結棒1側を点滴スタンドDに接続することによる移動用器具と点滴スタンドDとの距離の確保を両立させている。また、本実施形態のように、第1連結棒1と第2連結棒2の長さの非対称構造は、実際に移動用器具と点滴スタンドDを連結する際の取り付け手順を決める際に、長い方を点滴スタンドD側に接続する、というように誰にでもわかり易くルール化することができる。
【0045】
従って、第2押圧シャフト56は第1押圧シャフト46よりも短いので、第2押圧シャフト56の方が球体51を強く押圧することができ、移動用器具側の回動を点滴スタンドD側の回動よりも強くロックでき、たとえば、車椅子Wが廊下を曲がるときに点滴スタンドDが追従し易くなる。
なお、本実施形態のような長い第1連結棒1と短い第2連結棒2を用いることなく、点滴スタンド用連結具は、当然ながら同じ長さの連結棒を用いる構成を採用することもできる。
【0046】
このように、本実施形態の点滴スタンド用連結具100は、1軸回転部3によって第1連結棒1と第2連結棒2が1軸方向に回動可能となりリンク運動するので、第1クランプ6と第2クランプ7間の距離を変更することができる。また、第1自由回転部4と第2自由回転部5により、第1クランプ6と第2クランプ7は自由回転ができ、さらに、360度回転の回転軸をθ2(約100度)まで振らすことができる。したがって、本実施形態の点滴スタンド用連結具100は様々な取り付けができるので、点滴スタンドDを種々の移動用器具に連結することができる。また、ワンロック機構を備えているので点滴スタンド用連結具100の取り付けが容易であり、点滴スタンドDの移動や移動用器具の取り付け位置の変化(リクライニングや上下移動など)が容易である。更には、点滴スタンド用連結具100を使用しない場合にも、1軸回転部3によって非常にコンパクに収納しておくことができる。
【0047】
なお、本実施形態においてワンロック機構は、1軸回転部3と第1自由回転部4と第2自由回転部5のそれぞれの回転のロックON/ロックOFFの操作を1つのつまみ35で行う機構であったが、つまみ35の構成に限定されるものではない。つまみ35でなくとも、ボタン式のような構成であってもよく、1軸回転部3と第1自由回転部4と第2自由回転部5の回転を同時にロックON/ロックOFFできる構成であればよい。同時にロックON/OFFできることで、1軸回転部3、第1自由回転部4、第2自由回転部5をそれぞれロックON/ロックOFFする必要もないため、使用者は操作を熟知していなくとも容易に取り扱うことができる。
【0048】
[使用例1(車椅子)]
次に
図5を用いて、本実施形態の点滴スタンド用連結具100の使用例として、車椅子Wの連結について説明する。
図5Aはこの接続を示す正面図であり、
図5Bは撮像である。まず、つまみ35の左回転ですべての回転がロックOFFされる。次に、
図5Aに示すように、第1クランプ6側の切欠き48が下方になるようにパネル42が回転されて、第1クランプ6が点滴スタンドDの支柱D1に取り付けられる。そして、第2クランプ7側の切欠き58が上方になるようにパネル52が回転される。そして、第2クランプ7が約100度起こされ、車椅子WのハンドルW1に取り付けられる。最後に、つまみ35の右回転ですべての回転がロックONされる。
【0049】
なお、
図5Aの2点鎖線で示すように、点滴スタンドDを車椅子Wに近づけるときは、つまみ35の左回転でロックOFFさせれば、第1連結棒1と第2連結棒2がV字形に回転して、点滴スタンドDが車椅子Wに近づくことができる。そして、再度つまみ35の右回転でロックONされて連結が固定される。
【0050】
[使用例2(車椅子での回転)]
次に、
図6を用いて、点滴スタンドDの回転移動について説明する。
図6Aはこの回転移動を示す正面図であり、
図6Bは撮像である。まず、車椅子Wに対する点滴スタンドDの位置を変えたいときがある。例えば、狭い廊下や間口の狭い通路では、点滴スタンドDを車椅子Wの後方に移動させたい。また、奥行きの短いエレベータでは、点滴スタンドDを車椅子Wの側面に移動させたい。また、病室や診察室では、その部屋に応じた位置に点滴スタンドDを移動させたい。このような場合を想定すると、点滴スタンドDは、車椅子Wに対してなるべく広い範囲で回転移動できることが好ましい。
【0051】
本実施形態の点滴スタンド用連結具100は、つまみ35の操作でロックOFFさせれば、第1クランプ6と第2クランプ7をわざわざ外すことなく、第2自由回転部5の回転によって、第1クランプ6側である点滴スタンドDを360度回転させることができる。従って、点滴スタンド用連結具100は、車椅子Wに対する点滴スタンドDの位置を、車椅子Wの後方或は車椅子Wの側面等、自由に変えることができる。
【0052】
また、点滴スタンド用連結具100は、車椅子W側の第2自由回転部5だけでなく、点滴スタンドD側の第1自由回転部4も自由方向に回動可能である。従って、点滴スタンドDの回転が安定する。さらに、点滴スタンド用連結具100は、1軸回転部3も回転可能であるので、点滴スタンドDの回転中に点滴スタンドDと車椅子Wとの距離が変化したとしても、点滴スタンドDを安定させて移動させることができる。
【0053】
[使用例3(車椅子のリクライニング)]
次に、
図7を用いて、車椅子Wのリクライニングについて説明する。
図7Aはこのリクライニングを示す正面図であり、
図7Bは撮像である。本実施形態の点滴スタンド用連結具100は、つまみ35のみの操作でロックOFFされれば、第1クランプ6と第2クランプ7を外すことなく、1軸回転部3、第1自由回転部4、第2自由回転部5の回転によって、車椅子Wのリクライニング操作にも対応できる。
【0054】
また、病院内の廊下には途中で傾斜している場所があることもある。このような傾斜があったとしても、点滴スタンド用連結具100は、第1自由回転部4や第2自由回転部5の回転により、点滴スタンドDの状態を傾斜に追随させることができ、点滴スタンドDを安定させることができる。
【0055】
また、点滴スタンドDを携えて車椅子Wが移動中のとき、1軸回転部3、第1自由回転部4、第2自由回転部5の回転は、いずれもロック状態であることが好ましい。これは、もしロックONされていないと、移動中に点滴スタンドDと車椅子Wの相対的な位置が意図せず変化してしまうことがあり、点滴漏れが発生する恐れがあるためである。特に、車椅子Wがカーブするときは相対的な位置が変化し易い。本実施形態の点滴スタンド用連結具100は、1つのつまみ35の操作のみでロックON/ロックOFFができるので、点滴スタンドDを携えた車椅子Wの移動に最適である。
【0056】
なお、本実施形態においては、点滴スタンド用連結具100の第2クランプ7が、車椅子WのハンドルW1に取り付けられているが、第2クランプ7は、車椅子の他の部分に取り付けることも可能である。しかしながら、本発明者による検証によると第2クランプ7の車椅子Wへの取付位置は、車椅子WのハンドルW1が好ましい。
【0057】
これは、どのような車椅子WであってもハンドルW1は備わっているので、使用者にとって取付位置がわかりやすく、複数の使用者間で取り付けを行う位置を統一できるからである。また、点滴スタンドDが車椅子Wを押す人の傍に位置するため、点滴スタンドDが突然傾いた場合等、不測の事態にも対応できる。また、ハンドルW1に取り付けてあれば、点滴用のバックから伸びるチューブが邪魔になったり、チューブの長さが足りなかったりというようなことも生じ難い。また、つまみ35の操作の際に、患者を視野範囲に入れたままで操作を行うことができるので、注意しながら点滴スタンドDの回転操作を行うことができる。
【0058】
[使用例4(ストレッチャ)]
次に、
図8を用いて、点滴スタンド用連結具100の使用例として、ストレッチャSへの連結について説明する。ところで、ストレッチャSにはそもそも点滴スタンド(ガートル架)が直接取り付けられるように所謂ガートル受けと呼ばれるような点滴スタンド取付部が設けられている。従って、ストレッチャSに設けられている点滴スタンド取付部を使えば、わざわざ点滴スタンド用連結具100を用いて点滴スタンドDを連結する必要がないようにも思われる。
【0059】
しかしながら、ストレッチャSの点滴スタンド取付部を使って、ストレッチャSに直接点滴スタンドを取り付けてしまうと、ストレッチャSで移動後、ベッドに患者を移すような場合、ストレッチャSから点滴スタンドを取り外して、新たに点滴スタンドDを設置する必要がある。
【0060】
また、近年の医療の高度化に伴い、点滴スタンドには単に点滴用パックが吊り下げられるだけでなく、輸液ポンプやシリンジポンプと呼ばれるような医療機器や、様々な情報を表示するモニタのような医療機器が取り付けられる。このような医療機器が取り付けられている点滴スタンドを、患者の頭の近くに取り付けてしまうと、患者が恐怖を感じたり、思わぬ事故が発生したりするおそれがある。
【0061】
このような理由から、点滴スタンドのストレッチャSへの直接の取り付けは、あまり行われていないのが現実であり、点滴スタンド用連結具100を使用して点滴スタンドDをストレッチャSへ連結するメリットは非常に大きい。
【0062】
まず、ストレッチャSに適切な取付位置が無いので、ストレッチャSに連結補助具S1を取り付ける。なお、連結補助具S1の詳細については、本出願人による先願である特願2019-128440に記載している。第2クランプが取り付けられる連結補助具S1のシャフトS11の軸方向はストレッチャSの横方向に水平である。
【0063】
次に、つまみ35の左回転ですべての回転がロックOFFされる。そして、
図8Aに示すように、第1クランプ6側の切欠き48が下方になるようにパネル42が回転されて、第1クランプ6が点滴スタンドDの支柱D1に取り付けられる。そして、第2クランプ7側の切欠き58も下方になるようにパネル52が回転されて、第2クランプ7がストレッチャS側のシャフトS11に取り付けられる。最後に、つまみ35の右回転ですべての回転がロックONされる。これで、ストレッチャSが点滴スタンドDを連結したまま患者を搬送することができる。
【0064】
また、ストレッチャSは、点滴中の患者を乗せたまま上下移動させることがある。
図8Aはこの上下移動を示す平面図であり、
図8Bは撮像である。点滴スタンド用連結具100は、つまみ35の左回転で緩められれば、第1クランプ6と第2クランプ7を外さなくても、1軸回転部3、第1自由回転部4、第2自由回転部5の回転によって、点滴スタンドDを接続したままストレッチャSを上下移動させることができる。このとき、第1自由回転部4の回転の中心と第2自由回転部5の回転の中心間の距離Lが長くなれば、第1連結棒1の軸と第2連結棒2の軸がなす角θ3が大きくなり、Lが短くなればθ3が小さくなる。
【0065】
[使用例5(リハビリ歩行器)]
次に
図9を用いて、点滴スタンド用連結具100の使用例として、リハビリ歩行器Rへの連結について説明する。
図9に示すように、第2クランプ7がリハビリ歩行器Rの水平なシャフトR1に接続される。リハビリ歩行器Rへの点滴スタンド用連結具100の取り付け方法は、ハンドルW1が略平行な車椅子Wと同様である。なお、第2クランプ7を
図9の状態から90度回転させれば、点滴スタンド用連結具100は、リハビリ歩行器Rの垂直な支柱にも第2クランプ7を取り付けることもできる。
【符号の説明】
【0066】
100:点滴スタンド用連結具
1:第1連結棒
2:第2連結棒
3:1軸回転部
4:第1自由回転部
5:第2自由回転部
6:第1クランプ
7:第2クランプ
32:第1コマ
34:第2コマ
32a、34a、46b、56b:傾斜面
35:つまみ
41、51:球体
46:第1押圧シャフト
56:第2押圧シャフト
D:点滴スタンド
R:リハビリ歩行器
S:ストレッチャ
W:車椅子