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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20230727BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230727BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230727BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20230727BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20230727BHJP
   H01G 11/82 20130101ALI20230727BHJP
   H01G 11/46 20130101ALI20230727BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/052
H01M4/13
H01M4/02 Z
H01M10/04 W
H01G11/82
H01G11/46
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019161346
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2020087914
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2018213800
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】木村 長幸
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 俊二
(72)【発明者】
【氏名】菅野 佳実
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-218804(JP,A)
【文献】国際公開第2002/013305(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M、H01G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平に捲回された負極体を備え、
前記負極体は、
展開状態で第1方向に一列に並んで配置された複数の負極本体と、
前記複数の負極本体のうち展開状態で隣り合う一対の負極本体を接続する少なくとも1つの負極接続部と、
を有し、
前記少なくとも1つの負極接続部は、前記複数の負極本体が互いに重なるように折り返され、
前記複数の負極本体のうち最外周に配置される負極本体を外端側負極本体として定義するとともに、最内周に配置される負極本体を内端側負極本体として定義し、
前記少なくとも1つの負極接続部は、前記内端側負極本体に接続する内端側負極接続部を備え、
前記複数の負極本体それぞれの前記第1方向の寸法は、前記外端側負極本体から離れるに従い小さくなり、
前記少なくとも1つの負極接続部の前記第1方向の寸法は、前記内端側負極接続部から離れるに従い大きくなり、
前記少なくとも1つの負極接続部における前記第1方向に直交する幅方向の両側の外縁は、前記幅方向に窪む円弧状に延びている、
ことを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
セパレータと、
前記セパレータを介して前記負極体に重ね合わされる正極体と、を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記負極体の厚さ、前記正極体の厚さ、および前記セパレータの2層分の厚さの和を合計寸法として定義し、
前記一対の負極本体のうち、外周側に位置する負極本体の前記第1方向の寸法は、内周側に位置する負極本体の前記第1方向の寸法よりも、前記合計寸法分、大きく形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記少なくとも1つの負極接続部は、展開状態で隣り合う一対の負極接続部を含み、
前記負極体の厚さ、前記正極体の厚さ、および前記セパレータの2層分の厚さの和を合計寸法として定義し、
前記一対の負極接続部のうち、外周側に位置する負極接続部の前記第1方向の寸法は、内周側に位置する負極接続部の前記第1方向の寸法よりも、前記合計寸法分、大きく形成されている、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記内端側負極接続部の前記第1方向の寸法は、前記正極体の厚さ、および前記セパレータ2層分の厚さの和に等しい、
ことを特徴とする請求項4に記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記正極体は、展開状態で第2方向に一列に並んで配置された複数の正極本体を備え、
前記複数の正極本体は、前記複数の負極本体に重なるように配置され、
前記複数の正極本体のうちは、最内周に配置される正極本体を内端側正極本体と定義し、
前記内端側負極本体および前記内端側正極本体は、前記セパレータの1層分の厚さよりも大きい間隔をあけて配置され、
前記内端側負極接続部の前記第1方向の寸法は、前記正極体の厚さ、前記セパレータ1
層分の厚さ、および前記内端側負極本体および前記内端側正極本体の間隔の和以上である、
ことを特徴とする請求項4に記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記複数の負極本体は、展開状態で前記第1方向に直交する方向に延びる長軸を有する形状に形成され、
前記正極体は、
展開状態で第2方向に一列に並んで配置され、展開状態で前記第2方向に直交する方向に延びる長軸を有する形状に形成された複数の正極本体と、
前記複数の正極本体のうち展開状態で隣り合う一対の正極本体を接続する少なくとも1つの正極接続部と、
を有し、
前記少なくとも1つの正極接続部は、前記複数の正極本体が前記複数の負極本体に重なるように折り返され、
Nを自然数とし、
前記複数の正極本体のうち最内周に配置される正極本体から外周側に向けてN番目に位置する正極本体を第N正極本体として定義し、
前記複数の負極本体のうち前記内端側負極本体から外周側に向けてN番目に位置する負極本体を第N負極本体として定義した場合に、
前記少なくとも1つの正極接続部のうち第N正極本体と第(N+1)正極本体とを接続する正極接続部は、前記第N正極本体および前記第(N+1)正極本体の長軸間の距離が、第N負極本体および第(N+1)負極本体の長軸間の距離に一致するように形成されている、
ことを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項8】
前記複数の正極本体それぞれの外形は、前記複数の正極本体のそれぞれが前記セパレータを介して対向する前記複数の負極本体に含まれる負極本体の外形よりも小さい、
ことを特徴とする請求項7に記載の電気化学セル。
【請求項9】
前記正極体は、正極活物質としてリチウム化合物を含む、
ことを特徴とする請求項8に記載の電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォンやウエアラブル機器、補聴器などの小型機器の電源として、リチウムイオン二次電池や電気化学キャパシタ等の電気化学セルが広く活用されている。
このような電気化学セルにおいては、電池容量並びに充電電流および放電電流を大きくする観点から、電気化学セル内で対向している電極同士の面積を大きくすることが必要である。電気化学セルの構造としては、一対の帯状の電極を帯状のセパレータを介して対向させてケースに収め、電解液を電極及びセパレータに含浸させた構造が知られている。例えば、帯状の電極および帯状のセパレータを巻回し、筒状またはコイン状のケースに収容した構造や、扁平状に変形させた後にラミネートフィルムに収容した構造が知られている。
【0003】
また、下記特許文献1には、正極板および負極板がそれぞれ複数の積層面を連結片で連結した帯状に形成され、正極板の積層面と負極板の積層面とがセパレータを介して交互に積層されるように、正極板および負極板を連結片で折り曲げて扁平形状に捲回して極板群を形成した電池が開示されている。さらに特許文献1には、連結片が、巻回するとき内側に位置する連結片から外側に位置する連結片に向かって、連結方向の長さが順次増加するように形成された構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第02/13305号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、帯状の電極を捲回した後に扁平状に変形させる場合、変形後の形状が直方体状等の比較的単純な形状になる。このため、外装体の形状によっては外装体に電極を高密度で配置することが困難である。また、連結片を折り曲げて扁平形状に捲回する場合、積層面の積層方向から見て、連結片が積層面から突出するように配置される。このため、電極の外形が複雑になり、外装体内で電極の周囲に隙間が形成されやすい。よって、外装体の形状によっては外装体に電極を高密度で配置することが困難である。したがって、従来技術の電気化学セルにあっては、形状の自由度の向上、および容量の確保を両立するという点で改善の余地がある。
【0006】
そこで本発明は、形状の自由度の向上、および容量の確保が図られた電気化学セルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る電気化学セルは、扁平に捲回された負極体を備え、前記負極体は、展開状態で第1方向に一列に並んで配置された複数の負極本体と、前記複数の負極本体のうち展開状態で隣り合う一対の負極本体を接続する少なくとも1つの負極接続部と、を有し、前記少なくとも1つの負極接続部は、前記複数の負極本体が互いに重なるように折り返され、前記複数の負極本体のうち最外周に配置される負極本体を外端側負極本体として定義するとともに、最内周に配置される負極本体を内端側負極本体として定義し、前記少なくとも1つの負極接続部は、前記内端側負極本体に接続する内端側負極接続部を備え、前記複数の負極本体それぞれの前記第1方向の寸法は、前記外端側負極本体から離れるに従い小さくなり、前記少なくとも1つの負極接続部の前記第1方向の寸法は、前記内端側負極接続部から離れるに従い大きくなる、ことを特徴とする。
【0008】
ここで、展開状態で隣り合う一対の負極本体に着目する。一対の負極本体の捲回状態における間隔は、一対の負極本体が外周側に位置する負極本体の対であるほど、一対の負極本体の間に配置される負極本体等の層数が増える分、大きくなる。第1の態様に係る電気化学セルによれば、負極接続部の第1方向の寸法が内端側負極接続部から離れるに従い大きくなることで、一対の負極本体の間隔を確保でき、一対の負極本体の捲回状態における互いの位置ずれを抑制できる。よって、複数の負極本体が重なる方向(以下、積層方向という)から見て、複数の負極本体の位置ずれが抑制される。
しかも、第1の態様に係る電気化学セルによれば、一対の負極本体のうち外周側に位置する負極本体は、内周側に位置する負極本体よりも第1方向に大きく形成される。このため、複数の負極本体が互いに重なった状態で、積層方向から見て、外周側に位置する負極本体には内周側に位置する負極本体が重ならない非重畳領域が設けられる。内周側に位置する負極本体に接続して積層方向に延びる負極接続部を、積層方向から見て外周側に位置する負極本体における非重畳領域に配置することで、積層方向から見て負極接続部が外周側に位置する負極本体から突出することを抑制できる。
以上により、積層方向から見て、複数の負極本体の位置ずれ、および外端側負極本体からの負極接続部の突出が抑制される。したがって、負極体を所望の扁平形状に捲回でき、形状の自由度の向上、および容量の確保が図られた電気化学セルを提供できる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る電気化学セルは、上記第1の態様に係る電気化学セルにおいて、セパレータと、前記セパレータを介して前記負極体に重ね合わされる正極体と、を備える。
本発明の第3の態様に係る電気化学セルは、前記負極体の厚さ、前記正極体の厚さ、および前記セパレータの2層分の厚さの和を合計寸法として定義し、前記一対の負極本体のうち、外周側に位置する負極本体の前記第1方向の寸法は、内周側に位置する負極本体の前記第1方向の寸法よりも、前記合計寸法分、大きく形成されている。
【0010】
第3の態様に係る電気化学セルによれば、積層方向から見て、上述した外周側に位置する負極本体における非重畳領域に、内周側に位置する負極本体に接続する負極接続部、負極接続部に対向する正極接続部、および正極接続部に両側から対向する2層のセパレータが配置される。よって、負極接続部および正極接続部は、積層方向から見て、外周側に位置する負極本体からはみ出ない。したがって、積層方向から見て、外端側負極本体から負極接続部および正極接続部が突出することが抑制されるので、負極体および正極体をより確実に所望の扁平形状に捲回できる。
【0011】
本発明の第4の態様に係る電気化学セルは、上記第2または第3の態様に係る電気化学セルにおいて、前記少なくとも1つの負極接続部は、展開状態で隣り合う一対の負極接続部を含み、前記負極体の厚さ、前記正極体の厚さ、および前記セパレータの2層分の厚さの和を合計寸法として定義し、前記一対の負極接続部のうち、外周側に位置する負極接続部の前記第1方向の寸法は、内周側に位置する負極接続部の前記第1方向の寸法よりも、前記合計寸法分、大きく形成されている。
【0012】
ここで、展開状態で隣り合う一対の負極本体のうち、展開状態で内端側負極本体に最も近い一対の負極本体に着目する。一対の負極本体の間には、内端側負極本体と、正極体の2層と、正極本体の2層それぞれに両側から対向するセパレータ4層と、が配置されている。第4の態様に係る電気化学セルによれば、負極接続部は、内周側に隣り合う負極接続部よりも、負極体の厚さ、正極体の厚さ、およびセパレータの2層分の厚さの和の寸法分大きい。このため、一対の負極本体に接続する負極接続部の第1方向における寸法は、内端側負極本体の厚さ、正極体の2層分の厚さ、およびセパレータの4層分の厚さの和となる。これにより、一対の負極本体それぞれにおける負極接続部との境界が、積層方向から見て互いに重なる。よって、積層方向から見て、一対の負極本体の位置ずれが抑制される。同様に、一対の負極本体が外周側に位置する負極本体の対であるほど、一対の負極本体の間に配置される負極体、正極体およびセパレータが増加する。よって、負極接続部の第1方向における寸法を順次増加させることで、いずれの一対の負極本体についても、積層方向から見た位置ずれが抑制される。
【0013】
本発明の第5の態様に係る電気化学セルは、上記第4の態様に係る電気化学セルにおいて、前記内端側負極接続部の前記第1方向の寸法は、前記正極体の厚さ、および前記セパレータ2層分の厚さの和に等しい。
【0014】
ここで、内端側負極本体、および展開状態で内端側負極本体に隣り合う負極本体に着目する。一対の負極本体の間には、正極体の最内周部と、正極体に両側から対向する2層のセパレータと、が配置される。第5の態様に係る電気化学セルによれば、内端側負極接続部の第1方向における寸法は、正極体の厚さ、およびセパレータ2層分の厚さの和になっているので、一対の負極本体それぞれにおける内端側負極接続部との境界が、積層方向から見て互いに重なる。これにより、積層方向から見て、一対の負極本体の位置ずれが抑制される。
以上により、複数の負極本体の位置ずれが抑制され、負極体を所望の扁平形状に捲回できる。
【0015】
本発明の第6の態様に係る電気化学セルは、上記第4の態様に係る電気化学セルにおいて、前記正極体は、展開状態で第2方向に一列に並んで配置された複数の正極本体を備え、前記複数の正極本体は、前記複数の負極本体に重なるように配置され、前記複数の正極本体のうちは、最内周に配置される正極本体を内端側正極本体と定義し、前記内端側負極本体および前記内端側正極本体は、前記セパレータの1層分の厚さよりも大きい間隔をあけて配置され、前記内端側負極接続部の前記第1方向の寸法は、前記正極体の厚さ、前記セパレータ1層分の厚さ、および前記内端側負極本体および前記内端側正極本体の間隔の和以上である。
【0016】
ここで、内端側負極本体、および展開状態で内端側負極本体に隣り合う負極本体に着目する。一対の負極本体の間には、内端側正極本体と、正極体に両側から対向する2層のセパレータと、が配置される。内端側負極本体と内端側正極本体との間には、セパレータが1層配置される。このため、一対の負極本体の間隔は、正極体の厚さ、セパレータ1層分の厚さ、および内端側負極本体と内端側正極本体との間隔の和に等しい。また、第6の態様に係る電気化学セルでは、内端側負極本体と内端側正極本体との間隔がセパレータ1層分の厚さよりも大きいので、内端側負極本体と内端側正極本体との間に空隙が形成される。
第6の態様に係る電気化学セルによれば、内端側負極接続部の第1方向における寸法は、正極体の厚さ、セパレータ1層分の厚さ、および内端側負極本体と内端側正極本体との間隔の和以上になっている。このため、内端側負極本体と内端側正極本体との間の空隙が形成されても、一対の負極本体を互いに平行、かつ一対の負極本体それぞれにおける内端側負極接続部との境界が積層方向から見て互いに重なるように配置できる。これにより、積層方向から見て、一対の負極本体の位置ずれが抑制される。
以上により、複数の負極本体の位置ずれが抑制され、負極体を所望の扁平形状に捲回できる。
【0017】
本発明の第7の態様に係る電気化学セルは、上記第2から第6の態様のいずれかの態様に係る電気化学セルにおいて、前記複数の負極本体は、展開状態で前記第1方向に直交する方向に延びる長軸を有する形状に形成され、前記正極体は、展開状態で第2方向に一列に並んで配置され、展開状態で前記第2方向に直交する方向に延びる長軸を有する形状に形成された複数の正極本体と、前記複数の正極本体のうち展開状態で隣り合う一対の正極本体を接続する少なくとも1つの正極接続部と、を有し、前記少なくとも1つの正極接続部は、前記複数の正極本体が前記複数の負極本体に重なるように折り返され、Nを自然数とし、前記複数の正極本体のうち最内周に配置される正極本体から外周側に向けてN番目に位置する正極本体を第N正極本体として定義し、前記複数の負極本体のうち前記内端側負極本体から外周側に向けてN番目に位置する負極本体を第N負極本体として定義した場合に、前記少なくとも1つの正極接続部のうち第N正極本体と第(N+1)正極本体とを接続する正極接続部は、前記第N正極本体および前記第(N+1)正極本体の長軸間の距離が、第N負極本体および第(N+1)負極本体の長軸間の距離に一致するように形成されている。
【0018】
第7の態様に係る電気化学セルによれば、複数の正極本体を最内周から外周に向けて複数の負極本体と同じピッチで配置しながら捲回できる。このため、積層方向から見て、複数の正極本体の長軸を負極本体の長軸に重ねることが可能となる。上述したように、複数の負極本体は位置ずれが抑制された状態で配置されているので、複数の正極本体も位置ずれが抑制される。しかも、正極体は、負極体の層間で弛むことなく配置されるので、積層方向から見て正極接続部が突出することを抑制できる。したがって、負極体および正極体を所望の扁平形状に捲回できる。
【0019】
本発明の第8の態様に係る電気化学セルは、上記第7の態様に係る電気化学セルにおいて、前記複数の正極本体それぞれの外形は、前記複数の正極本体のそれぞれが前記セパレータを介して対向する前記複数の負極本体に含まれる負極本体の外形よりも小さい。
【0020】
リチウムイオン電池において、仮に正極本体が対向する部分に負極体の端縁が存在すると、電気化学セルの充電時において正極体から移動してきたリチウムイオンがエッジ効果によって負極体の端縁に集中して針状に析出する可能性がある。このように、リチウムイオンがリチウム金属として析出すると、セパレータを突き抜けて、負極体と正極体とを短絡させる可能性がある。第8の態様に係る電気化学セルによれば、正極本体が対向する部分に負極体の端縁が存在することを回避することができる。したがって、負極体と正極体との短絡が抑制され、電気化学セルの信頼性を向上させることができる。
【0021】
本発明の第9の態様に係る電気化学セルは、上記第8の態様に係る電気化学セルにおいて、前記正極体は、正極活物質としてリチウム化合物を含む。
【0022】
第9の態様に係る電気化学セルによれば、正極本体が対向する部分に負極体の端縁が存在することを回避することで、リチウムイオンを負極体の負極活物質に吸収させることができる。よって、負極体から針状のリチウムが析出することを抑制できる。したがって、負極体と正極体との短絡が抑制され、電気化学セルの信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、形状の自由度の向上、および容量の確保が図られた電気化学セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態の電池の斜視図である。
図2】第1実施形態の電池の断面図である。
図3】第1実施形態の積層電極体の断面図である。
図4】第1実施形態の積層電極体の一部を拡大して示す断面図である。
図5】第1実施形態の積層電極体を示す斜視図である。
図6】第1実施形態の負極体および正極体を示す平面図である。
図7】第1実施形態の負極体および正極体の捲回方法を示す図である。
図8】第2実施形態の積層電極体の断面図である。
図9】第2実施形態の負極体、正極体およびセパレータの捲回方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。また以下の説明では、電気化学セルとして、非水電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」という。)を例に挙げて説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の電池の斜視図である。図2は、第1実施形態の電池の断面図である。
図1および図2に示すように、第1実施形態の電池1は、平面視長円形状(角丸長方形状)の電池である。電池1は、積層電極体2と、積層電極体2に含浸される電解質溶液(図示せず)と、積層電極体2が収容された外装体3と、を備える。
【0027】
外装体3は、積層電極体2が収容される収容部4と、収容部4の外周4aに沿って折り曲げられた封止部5と、を備える。封止部5は、例えば絞り成形によって、収容部4の外周4aに沿って折り曲げられている。
【0028】
また、外装体3は、積層電極体2を間に挟む第1容器10および第2容器20を備える。第1容器10および第2容器20は、それぞれラミネートフィルムにより形成されている。ラミネートフィルムは、金属層(金属箔)と、重ね合わせ面(内側面)に設けられ金属層を被覆する樹脂製の融着層と、外側面に設けられ金属層を被覆する樹脂製の保護層と、を有する。金属層は、例えばステンレスやアルミニウム等の外気や水蒸気を遮断する金属材料を用いて形成されている。重ね合わせ面の融着層は、例えば、ポリオレフィンのポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いて形成されている。外側面の保護層は、例えば、上述のポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等を用いて形成されている。
【0029】
第1容器10は、長円形状の第1底壁部11と、第1底壁部11の外周から筒状に延びる第1周壁部12と、を備える。第1底壁部11には、第1貫通孔13が形成されている。第1貫通孔13は、第1底壁部11の中心に形成されている。
【0030】
第1底壁部11の内面には、第1シーラントリング14を介して銅プレート15が熱融着されている。第1シーラントリング14は、シーラントフィルムをリング状に形成したものである。シーラントフィルムは、ポリオレフィンのポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を用いて形成されている。
【0031】
銅プレート15の内面は、積層電極体2の後述する負極体30(図3参照)に接続されている。銅プレート15の外面の中央には、ニッケルプレート16が溶接されている。ニッケルプレート16は、第1貫通孔13を貫通して外部に露出され、電池1の負極端子として機能する。また、銅プレート15に代えてニッケルプレートを用いれば、ニッケルプレート16は省略してもよい。
【0032】
第2容器20は、長円形状の第2底壁部21と、第2底壁部21の外周から筒状に延びる第2周壁部22と、第2周壁部22の開口縁から第2周壁部22の外側に向けて折り曲げられて第2底壁部21側に延びる折曲部23と、を備える。
【0033】
第2底壁部21は、積層電極体2を挟んで第1容器10の第1底壁部11とは反対側に配置されている。第2底壁部21は、第1容器10の第1底壁部11よりも僅かに小さく形成されている。第2底壁部21には、第2貫通孔24が形成されている。第2貫通孔24は、第2底壁部21の中心に形成されている。
【0034】
第2底壁部21の内面には、第2シーラントリング25を介してアルミニウムプレート26が熱融着されている。第2シーラントリング25は、第1シーラントリング14と同様に、熱可塑性樹脂により形成されている。
【0035】
アルミニウムプレート26の内面は、積層電極体2の後述する正極体40(図3参照)に接続されている。アルミニウムプレート26の外面の中央には、ニッケルプレート27が溶接されている。ニッケルプレート27は、第2貫通孔24を貫通して外部に露出され、電池1の正極端子として機能する。なお、例えば、アルミニウムプレート26に代えて、ステンレス鋼製のプレート材を用いることもできる。
【0036】
第2周壁部22は、第2底壁部21の外周から第1容器10の第1底壁部11に向けて延びている。第2周壁部22は、収容部4の外周4aを形成する。折曲部23は、第2周壁部22のうち、第1底壁部11側の端部から第2周壁部22に沿って第2底壁部21側へ筒状に折り曲げられている。折曲部23は、第2周壁部22に対して外側に間隔をおいて配置されている。
【0037】
第2周壁部22は、第1周壁部12の内側で、かつ、折曲部23の内側に配置されている。また、折曲部23は、第1周壁部12の内側に配置されている。折曲部23の融着層は、第1周壁部12の融着層に熱融着されている。
【0038】
折曲部23の融着層と第1周壁部12の融着層とが熱融着されることにより、封止部5が形成される。よって、収容部4の外周が封止部5で封止される。これにより、第1容器10および第2容器20が重ね合わされて外装体3が形成される。封止部5は、収容部4の外側に筒状に形成され、かつ、収容部4の外周4aに沿って折り曲げられている。
収容部4には、第1容器10と第2容器20とが重ね合されることにより密封空間が形成される。具体的には、収容部4は、第1底壁部11、第2底壁部21、および第2周壁部22により画成され、平面視で長円形状に形成されている。
【0039】
図3は、第1実施形態の積層電極体の断面図である。図4は、第1実施形態の積層電極体の一部を拡大して示す断面図である。
図3および図4に示すように、積層電極体2は、シート状の負極体30、正極体40およびセパレータ50を備える。積層電極体2は、負極体30および正極体40を互い違いに積層するように折り畳まれた積層タイプの電極体である。具体的に、積層電極体2は、セパレータ50を介して負極体30と正極体40とを重ね合わせて扁平に捲回されることにより形成されている。負極体30の最外周部は、上述した銅プレート15に直接、またはリードタブ等を介して接続している。正極体40の最外周部は、上述したアルミニウムプレート26に直接、またはリードタブ等を介して接続している。
【0040】
セパレータ50は、負極体30および正極体40の層間に配置され、負極体30と正極体40とを絶縁している。例えば、セパレータ50は、正極体40を正極体40の厚み方向の両側から挟むように配置された状態で、負極体30および正極体40とともに捲回される。なお、図3においてはセパレータ50の図示を省略しているが、セパレータ50は少なくとも負極体30と正極体40とが対向する領域の全体で負極体30と正極体40との間に介在するように配置されているものとする。以下、負極体30および正極体40が互い違いに積層された方向を積層方向と称する。なお、捲回とは、特定の位置の周囲を一方向に周回するように巻かれることである。
【0041】
負極体30は、金属材料により形成された負極集電箔と、負極集電箔に塗工された負極活物質と、を備えた1枚のシート状の部材である。負極集電箔は、例えば銅やステンレス等の金属箔により形成されている。負極活物質は、例えば、シリコン酸化物やグラファイト、ハードカーボン、チタン酸リチウム、LiAl等である。
【0042】
正極体40は、金属材料により形成された正極集電箔と、正極集電箔に塗工された正極活物質と、を備えた1枚のシート状の部材である。正極集電箔は、例えばアルミニウムやステンレス等の金属箔により形成されている。正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウムやチタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のように、リチウムと遷移金属とを含む複合酸化物である。
【0043】
セパレータ50は、リチウムイオンを通す特性を有する部材である。セパレータ50は、例えばポリオレフィン製の樹脂ポーラスフィルムやガラス製不織布、樹脂製不織布、セルロース繊維の積層体等により形成されている。
【0044】
図5は、第1実施形態の積層電極体を示す斜視図である。なお、図5では、セパレータ50の図示を省略している。また、正極体40は、後述するように負極体30よりも小さく形成されているので、負極体30の層間に配置されることで図5の視点では積層電極体2の表面に露出していない。
図5に示すように、積層電極体2は、外装体3の収容部4内に高密度で配置されるように、収容部4内の密封空間の形状に対応する形状に形成されている(図2参照)。すなわち、積層電極体2は、積層方向から見て、長円形状(角丸長方形状)に形成されている。なお、積層電極体2を積層方向から見た形状を基本形状と定義する。
【0045】
ここで、積層電極体2の展開状態における負極体30の形状について説明する。
図6は、第1実施形態の負極体および正極体を示す平面図である。
図6に示すように、負極体30は、一列に並んで配置された複数(図示の例では7個)の負極本体31と、隣り合う一対の負極本体31を接続する少なくとも1つ(図示の例では6個)の負極接続部32と、を有する。負極本体31は、積層電極体2において積層方向の垂直面に沿って平坦に延びる部分である(図3および図5参照)。負極接続部32は、複数の負極本体31が互いに重なるように、積層電極体2の側部において折り返される部分である(図3および図5参照)。
【0046】
以下、複数の負極本体31が並ぶ方向を負極連結方向(第1方向)と称し、負極連結方向に直交する方向を負極幅方向と称する。また、負極連結方向において、複数の負極本体31のうち積層電極体2の最も捲回中心側に配置される負極本体31に対し、積層電極体2の外周側に配置される負極本体31側を「外周側」と定義し、その反対方向を「内周側」と定義する。また、以下では、複数の負極本体31について、最内周の負極本体31から外周側に順に序数を付して説明する。換言すると、Nを自然数とし、最内周の負極本体31から外周側に向けてN番目に位置する負極本体を第N負極本体と定義する。例えば、最内周の負極本体31は、第1負極本体である。複数の負極接続部32についても同様である。第1負極本体は、「内端側負極本体」の一例である。第7負極本体は、「外端側負極本体」の一例である。第1負極接続部は、「内端側負極接続部」の一例である。
【0047】
複数の負極本体31は、負極連結方向から見て負極幅方向の中心が互いに重なるように配置されている。複数の負極本体31は、上記基本形状の一部が欠けた形状に形成されている。すなわち、複数の負極本体31は、長軸A1を有する長円形状の一部が欠けた形状に形成されている。複数の負極本体31は、長軸A1が負極幅方向に延びるように配置されている。各負極本体31の外形は、負極幅方向に直線状に延びる一対の直線部33と、一対の直線部33の端部同士を接続する円弧状の一対の曲線部34と、により形成されている。曲線部34は、負極幅方向に交差する方向に延び、負極体30の外縁のうち負極幅方向を向く部分の一部を構成している。負極本体31は、上記基本形状に対して負極連結方向の寸法を小さくするように、負極連結方向の直線部33全体が上記基本形状に対して長軸A1寄りに設けられている。最外周に配置される第7負極本体31Gは、内周側に位置する直線部33全体が上記基本形状に対して長軸A1側に寄るように形成されている。第7負極本体31Gよりも内周側に位置する負極本体31は、内周側に位置する直線部33および外周側に位置する直線部33の両方の全体が上記基本形状に対して長軸A1側に寄るように形成されている。
【0048】
複数の負極本体31それぞれの負極連結方向における寸法D1は、第7負極本体31Gから離れるに従い小さくなっている。具体的に、隣り合う一対の負極本体31のうち外周側に位置する負極本体31は、内周側に位置する負極本体31よりも、負極体30の厚さ、正極体40の厚さ、およびセパレータ50の2層分の厚さの和の寸法(合計寸法)分、負極連結方向に大きく形成されている。
【0049】
複数の負極接続部32は、負極連結方向で隣り合う一対の負極本体31の間に設けられている。各負極接続部32は、負極連結方向の中間部が最も幅狭になるように形成されている。なお、中間部とは、対象の両端間の中央のみならず、対象の両端間の内側の範囲を含む意とする。負極接続部32の負極幅方向の両側の外縁は、負極幅方向に窪む円弧状に延びている。負極接続部32の負極幅方向両側の外縁は、負極本体31の曲線部34に連続的に接続している。具体的に、負極接続部32の負極幅方向両側の外縁は、負極本体31の曲線部34に対して変曲点を介して接続している。換言すると、負極体30の負極幅方向の外縁における変曲点を通り負極幅方向を延びる直線が、負極本体31と負極接続部32との境界になる。
【0050】
複数の負極接続部32の負極連結方向における寸法D2は、最内周に配置される第1負極接続部32Aから離れるに従い大きくなっている。具体的に、各負極接続部32の負極連結方向における寸法D2は、以下のようになっている。各負極接続部32は、内周側に隣り合う負極接続部32よりも、負極体30の厚さ、正極体40の厚さ、およびセパレータ50の2層分の厚さの和の寸法分、大きく形成されている。第1負極接続部32Aの負極連結方向における寸法は、正極体40の厚さ、およびセパレータ50の2層分の厚さの和に等しい。
【0051】
次に、積層電極体2の展開状態における正極体40の形状について説明する。
正極体40は、一列に並んで配置された複数(図示の例では7個)の正極本体41と、隣り合う一対の正極本体41を接続する少なくとも1つ(図示の例では6個)の正極接続部42と、を有する。正極本体41は、積層電極体2において積層方向の垂直面に沿って平坦に延びる部分である(図3参照)。正極接続部42は、複数の正極本体41が負極本体31に重なるように、積層電極体2の側部において折り返される部分である(図3参照)。
【0052】
以下、複数の正極本体41が並ぶ方向を正極連結方向(第2方向)と称し、正極連結方向に直交する方向を正極幅方向と称する。また、正極連結方向において、複数の正極本体41のうち積層電極体2の最も捲回中心側に配置される正極本体41に対し、積層電極体2の外周側に配置される正極本体41側を「外周側」と定義し、その反対方向を「内周側」と定義する。また、以下では、複数の正極本体41および複数の正極接続部42について、負極本体31および負極接続部32と同様に序数を付して説明する。第1正極本体は、「内端側正極本体」の一例である。
【0053】
複数の正極本体41は、負極本体31と同数設けられている。複数の正極本体41は、正極連結方向から見て正極幅方向の中心が互いに重なるように配置されている。各正極本体41の外形は、正極幅方向に延びる一対の直線部43と、一対の直線部43の端部同士を接続する円弧状の一対の曲線部44と、により形成されている。曲線部44は、正極幅方向に交差する方向に延び、正極体40の外縁のうち正極幅方向を向く部分の一部を構成している。複数の正極本体41は、正極幅方向に延びる長軸A2を有する長円形状に対し、直線部43が長軸A2寄りに設けられた形状に形成されている。複数の正極本体41は、積層電極体2においてセパレータ50を介して対向する負極本体31の外形よりも小さく形成されている。具体的に、第1正極本体41Aの正極連結方向における寸法は、第1負極本体31Aの負極連結方向における寸法よりも所定の寸法小さく形成されている。また、第1正極本体41Aの正極幅方向における寸法は、第1負極本体31Aの負極幅方向における寸法よりも所定の寸法小さく形成されている。他の正極本体41についても同様である。
【0054】
複数の正極接続部42は、正極連結方向で隣り合う一対の正極本体41の間に設けられている。各正極接続部42は、正極連結方向の中間部が最も幅狭になるように形成されている。正極接続部42の正極幅方向の両側の外縁は、正極幅方向に窪む円弧状に延びている。正極接続部42の正極幅方向両側の外縁は、正極本体41の曲線部44に連続的に接続している。具体的に、正極接続部42の正極幅方向両側の外縁は、正極本体41の曲線部44に対して変曲点を介して接続している。換言すると、正極体40の正極幅方向の外縁における変曲点を通り正極幅方向を延びる直線が、正極本体41と正極接続部42との境界になる。
【0055】
正極接続部42の正極連結方向における寸法は、以下の条件に基づいて設定されている。第N正極接続部42は、第N正極接続部42に隣接する第N正極本体41および第(N+1)正極本体41の長軸A2間の距離D3が、第N負極本体31および第(N+1)負極本体31の長軸A1間の距離D4に一致するように形成されている。例えば、第1正極本体41Aの長軸A2と第2正極本体41Bの長軸A2との距離は、第1負極本体31Aの長軸A1と第2負極本体31Bの長軸A1との距離と一致している。
【0056】
次に、負極体30および正極体40の捲回構造について説明する。
図7は、第1実施形態の負極体および正極体の捲回方法を示す図である。
図7に示すように、最初に、負極体30の第1負極本体31Aと正極体40の第1正極本体41Aとを互いに重ねる。この際、第1負極本体31A、および第1正極本体41Aは、それぞれの長軸A1,A2(図6参照)が互いに重なるとともに、長軸A1の中心点と長軸A2の中心点とが重なるように配置される。また、負極体30および正極体40は、第1負極本体31Aおよび第1正極本体41Aから互いに反対方向に延びるように配置される。以下、第1負極本体31Aと第1正極本体41Aとが重ねられた部分を基準重ね合わせ部と称する。
【0057】
続いて、基準重ね合わせ部を捲回中心とするように、負極体30および正極体40を基準重ね合わせ部回りに捲回する。具体的に、負極体30および正極体40を以下の手順で捲回する。負極体30の第1負極接続部32Aを折り返し、第1負極本体31Aとは反対側で第1正極本体41Aに第2負極本体31Bを重ねる。この際、第1負極本体31Aおよび第2負極本体31Bは、積層方向から見て長軸A1が互いに重なるように配置される。また、正極体40の第1正極接続部42Aを折り返し、第1正極本体41Aとは反対側で第1負極本体31Aに第2正極本体41Bを重ねる。この際、第1正極本体41Aおよび第2正極本体41Bは、積層方向から見て長軸A2が互いに重なるように配置される。その後も、各負極本体31が互いに重なるように各負極接続部32を折り返すとともに、各正極本体41が互いに重なるように各正極接続部42を折り返す。これにより、積層電極体2が形成される。
【0058】
次に、図3を参照して本実施形態の作用について説明する。
ここで、展開状態で隣り合う第1負極本体31Aおよび第2負極本体31Bに着目する。第1負極本体31Aと第2負極本体31Bとの間には、第1正極本体41Aと、第1正極本体41Aを挟むように設けられた2層のセパレータ50(図4参照)と、が配置されている。上述したように、第1負極接続部32Aの負極連結方向における寸法は、正極体40の厚さ、およびセパレータ50の2層分の厚さの和になっているので、第1負極本体31Aおよび第2負極本体31Bそれぞれにおける第1負極接続部32Aとの境界が積層方向から見て互いに重なる。これにより、積層方向から見て第1負極本体31Aと第2負極本体31Bとの位置ずれが抑制されている。
【0059】
続いて、展開状態で隣り合う第2負極本体31Bおよび第3負極本体31Cに着目する。第2負極本体31Bと第3負極本体31Cとの間には、第1負極本体31Aと、第1正極本体41Aおよび第2正極本体41Bの2層と、第1正極本体41Aおよび第2正極本体41Bそれぞれに両側から対向するセパレータ50の4層と、が配置されている。上述したように、第2負極接続部32Bは、第1負極接続部32Aよりも、負極体30の厚さ、正極体40の厚さ、およびセパレータ50の2層分の厚さの和の寸法だけ大きい。このため、第2負極接続部32Bの負極連結方向における寸法は、負極体30の厚さ、正極体40の2層分の厚さ、およびセパレータ50の4層分の厚さの和となる。これにより、第2負極本体31Bおよび第3負極本体31Cそれぞれにおける第2負極接続部32Bとの境界が積層方向から見て互いに重なる。よって、積層方向から見て、第2負極本体31Bおよび第3負極本体31Cの位置ずれが抑制される。
【0060】
同様に、展開状態で隣り合う一対の負極本体31が外周側に位置する負極本体31の対であるほど、一対の負極本体31の間に配置される負極体30、正極体40およびセパレータ50が増加する。よって、負極接続部32の負極連結方向における寸法を順次増加させることで、展開状態で隣り合ういずれの一対の負極本体31についても、積層方向から見た位置ずれが抑制される。
以上により、複数の負極本体31の位置ずれが抑制される。
【0061】
また、負極体30のうち最外周に配置される第7負極本体31Gは、第7負極本体31Gの1つ内周側に配置される第6負極本体31Fよりも、負極体30の厚さ、正極体40の厚さ、およびセパレータ50の2層分の厚さの和の寸法だけ負極連結方向に大きく形成されている。これにより、積層方向から見て第7負極本体31Gには第6負極本体31Fが重ならない非重畳領域Rが設けられる。積層方向から見た状態で、第6負極本体31Fに接続して積層方向に延びる第5負極接続部32Eと、第5負極接続部32Eに対向する第6正極接続部42Fと、を非重畳領域Rに配置することで、積層方向から見て第5負極接続部32Eおよび第6正極接続部42Fが第7負極本体31Gからはみ出ない。他の負極本体31および他の負極接続部32の関係についても同様である。
以上により、積層方向から見て第7負極本体31Gから負極接続部32および正極接続部42が突出することを抑制できるので、積層方向から見て積層電極体2が上記基本形状から崩れることを抑制できる。したがって、負極体30および正極体40を所望の扁平形状に捲回できる。
【0062】
また、第N正極接続部42は、第N正極接続部42に隣接する第N正極本体41および第(N+1)正極本体41の長軸A2間の正極連結方向における距離が、第N負極本体31および第(N+1)負極本体31の長軸A1間の負極連結方向における距離に一致するように形成されている(図6を併せて参照)。これにより、複数の正極本体41を最内周から外周に向けて複数の負極本体31と同じピッチで配置しながら捲回できる。このため、積層方向から見て、複数の正極本体41の長軸A2を負極本体31の長軸A1に重ねることが可能となる。上述したように、複数の負極本体31は位置ずれが抑制された状態で配置されているので、複数の正極本体41も位置ずれが抑制される。しかも、正極体40は、負極体30の層間で弛むことなく配置されるので、積層方向から見て正極接続部42が突出することを抑制できる。したがって、負極体30および正極体40を所望の扁平形状に捲回できる。
【0063】
また、各正極本体41の外形は、セパレータ50を介して対向する負極本体31の外形よりも小さい。これにより、正極本体41が対向する部分に負極体30の端縁が存在することを回避することができる。仮に、正極本体が対向する部分に負極体の端縁が存在すると、電池の充電時において正極体から移動してきたリチウムイオンがエッジ効果によって負極体の端縁に集中して針状に析出する可能性がある。このように、リチウムイオンがリチウム金属として析出すると、セパレータを突き抜けて、負極体と正極体とを短絡させる可能性がある。本実施形態のように、正極本体41が対向する部分に負極体30の端縁が存在することを回避することで、リチウムイオンを負極体30の負極活物質に吸収させることができる。よって、負極体30から針状のリチウムが析出することを抑制できる。したがって、電池1の信頼性を向上させることができる。
【0064】
以上に説明したように、本実施形態では、複数の負極接続部32の負極連結方向における寸法は、最内周に配置される第1負極接続部32Aから離れるに従い大きくなっている。ここで、展開状態で隣り合う一対の負極本体31の捲回状態における間隔は、一対の負極本体31が外周側に位置する負極本体31の対であるほど大きくなる。このため、負極接続部32の負極連結方向における寸法が第1負極接続部32Aから離れるに従い大きくなることで、一対の負極本体31の間隔を確保でき、一対の負極本体31の捲回状態における互いの位置ずれを抑制できる。よって、積層方向から見て、複数の負極本体31の位置ずれが抑制される。
しかも、負極本体31それぞれの負極連結方向における寸法は、最外周に配置される第7負極本体31Gから離れるに従い小さくなっている。これにより、展開状態で隣り合う一対の負極本体31のうち外周側に位置する負極本体31は、内周側に位置する負極本体31よりも負極連結方向に大きく形成される。このため、複数の負極本体31が互いに重なった状態で、積層方向から見て、外周側に位置する負極本体31には内周側に位置する負極本体31が重ならない非重畳領域が設けられる。内周側に位置する負極本体31に接続して積層方向に延びる負極接続部32を、積層方向から見て外周側に位置する負極本体31における非重畳領域に配置することで、積層方向から見て負極接続部32が外周側に位置する負極本体31から突出することを抑制できる。
以上により、積層方向から見て、複数の負極本体31の位置ずれ、および最外周の第7負極本体31Gから負極接続部32が突出することが抑制される。したがって、負極体30を所望の扁平形状に捲回でき、形状の自由度の向上、および容量の確保が図られた電池1を提供できる。
【0065】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態の積層電極体の断面図である。
図3に示す第1実施形態では、積層電極体2が捲回中心で密に捲回されている。これに対して図8に示す第2実施形態では、積層電極体102が捲回中心に空隙Cを有している点で、第1実施形態と異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0066】
図8に示すように、積層電極体102の捲回中心において、第1負極本体31Aおよび第1正極本体41Aは、積層方向においてセパレータ50(図4参照)の1層分の厚さよりも大きい間隔をあけて配置されている。これにより、積層電極体102の捲回中心には空隙Cが形成されている。空隙Cは、後述する巻き芯60を積層電極体102から引き抜くことにより形成される。第1負極本体31Aと第1正極本体41Aとの間には、図示しないセパレータ50が1層配置されているので、第1負極本体31Aと第1正極本体41Aとの間隔は、セパレータ50の1層分の厚さ、および空隙Cの積層方向における大きさの和に等しい。
【0067】
第1負極接続部32Aの負極連結方向における寸法は、正極体40の厚さ、セパレータ50の2層分の厚さ、および空隙Cの積層方向における大きさの和以上である。つまり、第1負極接続部32Aの負極連結方向における寸法は、正極体40の厚さ、セパレータ50の1層分の厚さ、および第1負極本体31Aと第1正極本体41Aとの間隔の和以上である。なお、複数の負極接続部32のうち第1負極接続部32A以外の負極接続部32の寸法については、第1実施形態と同様である。
【0068】
空隙Cの積層方向における寸法は、積層電極体102が押し潰される場合も含めて、巻き芯60の厚さ以下である。つまり、第1負極本体31Aと第1正極本体41Aとの間隔の最大値は、セパレータ50の1層分の厚さ、および巻き芯60の厚さの和以下である。このため、第1負極接続部32Aの負極連結方向における寸法の最大値は、正極体40の厚さ、セパレータ50の2層分の厚さ、および巻き芯60の厚さの和に等しい。
【0069】
図9は、第2実施形態の負極体、正極体およびセパレータの捲回方法を示す模式図である。
図9に示すように、積層電極体102は、巻き芯60にセパレータ50、負極体30および正極体40を巻き付けることにより形成される。巻き芯60は、所定の回転軸線Pに沿って一定の幅で延びる平板状の部材である。巻き芯60の厚さは、巻き芯60の幅よりも小さい。巻き芯60には、回転軸線Pに沿ってスリット61が形成されている。積層電極体102は、帯状のセパレータ50を巻き芯60のスリット61に通して巻き芯60に絡ませた状態で、巻き芯60を挟むように第1負極本体31Aおよび第1正極本体41Aを配置して、巻き芯60を回転させる。これにより、負極体30および正極体40がセパレータ50を介して重なった状態で扁平に捲回される。捲回体から巻き芯60を引き抜くことで、捲回中心に空隙Cを有する積層電極体102が形成される。そして、空隙Cの積層方向における寸法の最大値は、巻き芯60の厚さに一致する。また、空隙Cの積層方向に直交する方向における寸法は、巻き芯60の幅に一致する。
【0070】
次に、図8を参照して本実施形態の作用について説明する。
展開状態で隣り合う第1負極本体31Aおよび第2負極本体31Bに着目する。第1負極本体31Aと第2負極本体31Bとの間には、第1正極本体41Aと、第1正極本体41Aを挟むように設けられた2層のセパレータ50と、が配置されている。第1負極本体31Aと第1正極本体41Aとの間には、セパレータ50が1層配置される。このため、第1負極本体31Aおよび第2負極本体31Bの間隔は、正極体40の厚さ、セパレータ50の1層分の厚さ、および第1負極本体31Aと第1正極本体41Aとの間隔の和に等しい。また、本実施形態では、第1負極本体31Aと第1正極本体41Aとの間隔がセパレータ50の1層分の厚さよりも大きく、第1負極本体31Aと第1正極本体41Aとの間に空隙Cが形成される。
本実施形態によれば、第1負極本体31Aの負極連結方向における寸法は、正極体40の厚さ、セパレータ50の1層分の厚さ、および第1負極本体31Aと第1正極本体41Aとの間隔の和以上になっている。このため、第1負極本体31Aと第1正極本体41Aとの間の空隙Cが形成されていても、第1負極本体31Aおよび第2負極本体31Bを互いに平行、かつ第1負極本体31Aおよび第2負極本体31Bそれぞれにおける第1負極接続部32Aとの境界が積層方向から見て互いに重なるように配置できる。これにより、積層方向から見て、第1負極本体31Aおよび第2負極本体31Bの位置ずれが抑制される。
以上により、複数の負極本体31の位置ずれが抑制される。
【0071】
したがって、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、積層方向から見て、複数の負極本体31の位置ずれ、および最外周の第7負極本体31Gから負極接続部32が突出することが抑制される。したがって、負極体30を所望の扁平形状に捲回でき、形状の自由度の向上、および容量の確保が図られた電池を提供できる。
【0072】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、電気化学セルの一例として、二次電池を例に挙げて説明したが、これに限らず、電気二重層キャパシタおよび一次電池等に上述した構成を適用してもよい。また、電池としてリチウムイオン二次電池を例に挙げて説明したが、これに限らず、金属リチウム二次電池等のリチウムイオン二次電池以外の二次電池であってもよい。
なお、電気二重層キャパシタに上述した構成を適用する場合、電気二重層キャパシタは機能上正負の区別がない一対の電極を備えるが、一方の電極を上記負極体と同様に構成し、他方の電極を上記正極体と同様に構成すればよい。
【0073】
また、上記実施形態では、積層電極体2が積層方向から見て長円形状に形成されているが、これに限定されず、外装体の形状に応じて様々な形状に形成できる。例えば、積層電極体は、積層方向から見て円形状または楕円形状に形成されていてもよいし、菱形や矩形等の四角形状に形成されていてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、電池1は外装体3の貫通孔を通じて露出した正極端子および負極端子を備えているが、これに限定されない。電池は、外装体の封止部において第1容器と第2容器との間を通って外装体の内部から外部に延出するタブ状の端子を備えていてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、第1容器10に負極端子を設け、第2容器20に正極端子を設けているが、これに限定されない。すなわち、第1容器に正極端子を設け、第2容器に負極端子を設けてもよい。
【0076】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0077】
1…電池(電気化学セル) 30…負極体 31…負極本体 31A…第1負極本体(内端側負極本体) 31G…第7負極本体(外端側負極本体) 32…負極接続部 32A…第1負極接続部(内端側負極接続部) 40…正極体 41…正極本体 41A…第1正極本体(内端側正極本体) 42…正極接続部 50…セパレータ A1…長軸 A2…長軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9