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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/48 20060101AFI20230727BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20230727BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20230727BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20230727BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20230727BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20230727BHJP
【FI】
H01L23/48 S
H01L23/36 D
H01L23/48 T
H01L21/60 321E
H01L21/52 C
H01L21/52 A
H01L25/04 C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019237600
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021106234
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 靖
(72)【発明者】
【氏名】中村 真人
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-269682(JP,A)
【文献】特開2006-202884(JP,A)
【文献】特開2014-003339(JP,A)
【文献】特開2006-206730(JP,A)
【文献】特開2007-157863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/447-21/449
H01L21/52
H01L21/58-21/607
H01L23/29
H01L23/34-23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/48
H01L25/00-25/07
H01L25/10-25/11
H01L25/16-25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面に形成された第1電極、および前記第1面の反対側に位置する第2面に形成された第2電極を備える半導体素子と、
第1接合部材を介して前記半導体素子の前記第1電極と電気的に接続される第1端子と、
第2接合部材を介して前記半導体素子の前記第2電極と電気的に接続される第2端子と、
を有し、
前記半導体素子は、前記第1端子と前記第2端子との間に挟まれ、
前記第1接合部材の熱伝導率は、30W/m・Kより高く、
前記第2接合部材は、前記第1接合部材とは異なり、かつ、200℃以下で前記第2電極と接合可能な導電性材料から成り、
前記第1接合部材の熱膨張率は、28ppm/Kより低く、
前記第1接合部材の融点は、230℃以上であり、
前記第1接合部材の前記第1電極との接合面、および前記第2接合部材の前記第2電極との接合面のそれぞれは、230℃以下での耐熱性を備える、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1端子は前記半導体素子の前記第1電極と対向する素子搭載部を備え、
前記素子搭載部の、前記第1接合部材との接合面にはNiを主成分として含むメッキ膜が形成され、
前記第1接合部材は、AgおよびCuのいずれか一方から成る金属の多孔質体から成る、半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1端子は前記半導体素子の前記第1電極と対向する素子搭載部を備え、
前記素子搭載部の、前記第1接合部材との接合面にはNiを主成分として含むメッキ膜が形成され、
前記第1接合部材は、前記半導体素子の前記第1電極側から前記第1端子の前記素子搭載部側に向かって順に配置される、第1金属膜、第2金属膜、および第3金属膜を有し、
前記第1金属膜は、Cu-Sn化合物から成り、
前記第2金属膜は、Sn-Sb-Cu化合物から成り、かつ、前記第2金属膜に含まれるSbの割合は10~15質量%、Cuの割合は0~5質量%であり、
前記第3金属膜は、Cu-Sn化合物から成る、半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1端子は前記半導体素子の前記第1電極と対向する素子搭載部を備え、
前記素子搭載部の、前記第1接合部材との接合面にはNiを主成分として含むメッキ膜が形成され、
前記第1接合部材は、Cu相およびCu-Sn化合物相を含む合金、もしくはAg相およびAg-Sn化合物相を含む合金から成る、半導体装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第2接合部材は、互いに焼結されたAgから成る複数の粒子と、前記複数の粒子の間を満たす樹脂と、を含む導電性接着材であり、
前記複数の粒子の一部は、前記半導体素子の前記第2電極に焼結され、かつ、前記複数の粒子の他の一部は、前記第2端子に焼結される、半導体装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第2接合部材は、Cu相、Cu-Sn化合物相、およびBi相を含む合金、もしくはAg相、Ag-Sn化合物相、およびBi相を含む合金から成る、半導体装置。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第2接合部材は、Cu相およびCu-Sn-In化合物相を含む合金、もしくはAg相およびAg-Sn-In化合物相を含む合金から成る、半導体装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記半導体素子は、ダイオード素子を有し、
前記第1電極は、前記ダイオード素子のアノードおよびカソードの一方に接続され、
前記第2電極は、前記ダイオード素子のアノードおよびカソードの他方に接続される、半導体装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の半導体装置において、
導電性の第3接合部材を介して前記第1端子と電気的に接続される第3端子と、
前記第3端子と前記第1端子との間に配置される前記第3接合部材と、
導電性の第4接合部材を介して前記第2端子と電気的に接続される第4端子と、
前記第4端子と前記第2端子との間に配置される前記第4接合部材と、
をさらに備える、半導体装置。
【請求項10】
(a)第1面に形成された第1電極、および前記第1面の反対側に位置する第2面に形成された第2電極を備える半導体素子を準備する工程、
(b)第1端子の素子搭載部上に第1接合部材を介して前記半導体素子を接続する工程、
(c)前記(b)工程の後、前記半導体素子の前記第2電極上に第2接合部材を介して第2端子を接続する工程、
を有し、
前記素子搭載部の、前記第1接合部材との接合面にはNiを主成分として含むメッキ膜が形成され、
前記(b)工程では、熱伝導率が30W/m・Kより高い金属材料から成る前記第1接合部材を加熱した後、冷却することにより、前記半導体素子の前記第1電極および前記素子搭載部の前記メッキ膜のそれぞれに前記第1接合部材が接合され、
前記(c)工程では、200℃以下の温度で前記第2接合部材を加熱した後、冷却することにより、前記半導体素子の前記第2電極および前記第2端子のそれぞれに前記第2接合部材が接合され、
前記第1接合部材の熱膨張率は、28ppm/Kより低く、
前記(b)工程において、前記半導体素子の前記第1電極および前記素子搭載部の前記メッキ膜のそれぞれに接合された後の前記第1接合部材は、融点が230℃以上であり、
前記第1接合部材の前記第1電極との接合面、および前記第2接合部材の前記第2電極との接合面のそれぞれは、230℃以下での耐熱性を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程では、AgおよびCuのいずれか一方を含む複数の金属粒子を前記半導体素子の前記第1電極および前記素子搭載部の前記メッキ膜のそれぞれに焼結させることにより、金属の多孔質体から成る前記第1接合部材を得る、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程では、前記半導体素子の前記第1電極側から前記第1端子の前記素子搭載部側に向かって順に配置される、第1金属膜、第2金属膜、および第3金属膜を有する前記第1接合部材を介して前記第1電極と前記素子搭載部とが接続され、
前記第1金属膜は、Cu-Sn化合物から成り、
前記第2金属膜は、Sn-Sb-Cu化合物から成り、かつ、前記第2金属膜に含まれるSbの割合は10~15質量%、Cuの割合は0~5質量%であり、
前記第3金属膜は、Cu-Sn化合物から成る、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項10に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1接合部材は、Cu相およびCu-Sn化合物相を含む合金、もしくはAg相およびAg-Sn化合物相を含む合金から成る、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程は、
(c1)Agから成る複数の粒子と、前記複数の粒子の間を満たす樹脂と、を含むペースト材を前記第2電極上に塗布する工程、
(c2)前記(c1)工程の後、前記ペースト材上に前記第2端子を接着させる工程、
(c3)前記(c2)工程の後、前記ペースト材を200℃以下の温度で加熱して、前記ペースト材に含まれる前記複数の粒子を互いに焼結させる工程、
を含み、
前記(c3)工程では、前記複数の粒子の一部が前記半導体素子の前記第2電極に焼結され、かつ、前記複数の粒子の他の一部が、前記第2端子に焼結される、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項10~13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程は、
(c1)AgまたはCuから成る複数の金属粒子と、Snを含み、固相線温度が200℃以下の化合物と、を含む接合部材原料を前記第2電極上に塗布する工程、
(c2)前記(c1)工程の後、前記接合部材原料上に前記第2電極を接着する工程、
(c3)前記(c2)工程の後、前記接合部材原料を200℃以下の温度で加熱した後、冷却し、前記複数の金属粒子を構成する金属元素の純金属相と、前記複数の金属粒子を構成する金属元素およびSnを含む金属間化合物相と、を含む合金から成る、前記第2接合部材を形成する工程、
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項10~13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程は、
(c1)AgまたはCuから成る複数の金属粒子が互いに焼結した焼結体を前記第2電極上に配置する工程、
(c2)前記(c1)工程の後、Snを含み、固相線温度が200℃以下である化合物から成る半田材を前記複数の金属粒子の焼結体上に塗布する工程、
(c3)前記(c2)工程の後、前記半田材と前記第2端子とを接着させる工程、
(c4)前記(c3)工程の後、前記半田材を200℃以下の温度で加熱した後、冷却し、前記複数の金属粒子を構成する金属元素の純金属相と、前記複数の金属粒子を構成する金属元素およびSnを含む金属間化合物相と、を含む合金から成る、前記第2接合部材を形成する工程、
を含む、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2010-73908号公報(特許文献1)および特開2016-25194号公報(特許文献2)には、半導体素子の上面側および下面側のそれぞれに、接合部を介して被接合部材を接合した半導体装置が記載されている。特許文献1では、半導体素子の上面側および下面側の両側において、Zn-Al系の接合材料が用いられた半導体装置が記載されている。特許文献2には、半導体素子の下面側にZn-Al系の接合材料が用いられ、上面側には下面側の接合材料と異なる接合材料が用いられた半導体装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-73908号公報
【文献】特開2016-25194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体素子と外部端子とを電気的に接続する接合部材に半田材料が用いられる場合がある。この半田材料に対して、鉛(Pb)フリー化の要求がある。高温環境に配置される可能性のある半導体装置の場合、接合材料にも例えば200℃以下での耐熱性が要求される。Zn-Al系の半田は、融点が約380℃と高く、200℃程度の環境下でも接合部材が溶融しない。
【0005】
ところが、Zn-Al系の半田を接合部材として用いた半導体装置の場合、半導体装置の実装時、あるいは使用環境下で印加される熱負荷に起因して、半導体装置の信頼性が低下する懸念があることが判った。例えば、半導体装置の温度変化に起因して生じる応力により、半導体素子が損傷する場合がある。あるいは、半導体装置の温度変化に起因して生じる応力により、半導体素子と接合部材との接合面が剥離する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち、代表的な形態の概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0007】
すなわち、一実施の形態である半導体装置は、第1面に形成された第1電極、および前記第1面の反対側に位置する第2面に形成された第2電極を備える半導体素子と、第1接合部材を介して前記半導体素子の前記第1電極と電気的に接続される第1端子と、第2接合部材を介して前記半導体素子の前記第2電極と電気的に接続される第2端子と、を有する。前記半導体素子は、前記第1端子と前記第2端子との間に挟まれる。前記第1接合部材の熱伝導率は、30W/m・Kより高い。前記第2接合部材は、前記第1接合部材とは異なり、かつ、200℃以下で前記第2電極と接合可能な導電性材料から成る。前記第1接合部材の熱膨張率は、28ppm/Kより低い。前記第1接合部材の前記第1電極との接合面、および前記第2接合部材の前記第2電極との接合面のそれぞれは、230℃以下での耐熱性を備える。
【0008】
他の実施の形態である半導体装置の製造方法は、(a)第1面に形成された第1電極、および前記第1面の反対側に位置する第2面に形成された第2電極を備える半導体素子を準備する工程、(b)第1端子の素子搭載部上に第1接合部材を介して前記半導体素子を接続する工程、(c)前記(b)工程の後、前記半導体素子の前記第2電極上に第2接合部材を介して第2端子を接続する工程、を有する。前記素子搭載部の、前記第1接合部材との接合面にはNiを主成分として含むメッキ膜が形成さる。前記(b)工程では、熱伝導率が30W/m・Kより高い金属材料から成る前記第1接合部材を加熱した後、冷却することにより、前記半導体素子の前記第1電極および前記素子搭載部の前記メッキ膜のそれぞれに前記第1接合部材が接合される。前記(c)工程では、200℃以下の温度で前記第2接合部材を加熱した後、冷却することにより、前記半導体素子の前記第2電極および前記第2端子のそれぞれに前記第2接合部材が接合される。前記第1接合部材の熱膨張率は、28ppm/Kより低い。前記第1接合部材の前記第1電極との接合面、および前記第2接合部材の前記第2電極との接合面のそれぞれは、230℃以下での耐熱性を備える。
【発明の効果】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。すなわち、半導体装置の信頼性低下を抑制することができる。
【0010】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態である半導体装置の上面図である。
図2図1に示す半導体装置の下面図である。
図3図1に示すA-A線に沿った断面図である。
図4図3に示す半導体装置に対する検討例である半導体装置のリフロー工程における組立体の状態を模式的に示す断面図である。
図5図3に示す半導体装置のリフロー工程における組立体の状態を模式的に示す断面図である。
図6図3に示す半導体素子の下面側の電極に接合される接合部材周辺の拡大断面図である。
図7図6に対する変形例である半導体装置の半導体素子の下面側の電極に接合される接合部材周辺の拡大断面図である。
図8図6に対する他の変形例である半導体装置の半導体素子の下面側の電極に接合される接合部材周辺の拡大断面図である。
図9図3に示す半導体素子の上面側の電極に接合される接合部材周辺の拡大断面図である。
図10図9に対する変形例である半導体装置の半導体素子の上面側の電極に接合される接合部材周辺の拡大断面図である。
図11図9に対する他の変形例である半導体装置の半導体素子の上面側の電極に接合される接合部材周辺の拡大断面図である。
図12図3に示す半導体装置を2次実装した半導体装置の構造例を示す断面図である。
図13図3に示す半導体装置の製造工程の概要を示すフロー図である。
図14図8に示す接合部材を得るための製造方法の一例を示す説明図である。
図15図14に対する変形例である製造方法を示す説明図である。
図16図9に示す接合部材を得るための製造方法の一例を示す説明図である。
図17図10または図11に示す接合部材を得るための製造方法の一例を示す説明図である。
図18図17に対する変形例である製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施の形態を説明するための各図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0013】
<半導体装置の構造例>
図1は、本実施の形態の半導体装置の上面図である。図2は、図1に示す半導体装置の下面図である。また、図3は、図1に示すA-A線に沿った断面図である。
【0014】
図1図3に示すように、本実施の形態の半導体装置100は、半導体素子10(図3参照)と、接合部材(第1接合部材)20(図3参照)と、端子(第1端子)30(図2図3参照)と、接合部材(第2接合部材)40(図3参照)と、端子(第2端子)50(図1図3参照)と、封止体60と、を有する。
【0015】
図3に示すように、半導体素子10は、下面(第1面)10bに形成された電極(第1電極)11および下面10bの反対側に位置する上面(第2面)10tに形成された電極(第2電極)12を備える。端子30は、接合部材20を介して半導体素子10の電極11と電気的に接続される。端子50は、接合部材40を介して半導体素子10の電極12と電気的に接続される。半導体素子10は、端子30と端子50との間に挟まれる。
【0016】
半導体素子10の裏面電極である電極11は、半導体基板の下面10b全体に形成されたメタライズ膜であって、例えばNi(ニッケル)から成る。また、半導体素子10の表面電極である電極12は、例えば、Al(アルミニウム)から成る。また、半導体素子10は、例えば、ダイオード素子を有し、電極11は、ダイオード素子のアノードおよびカソードの一方に接続され、電極12は、ダイオード素子のアノードおよびカソードの他方に接続される。また、端子30および端子50は、例えばそれぞれCuを主成分とする金属から成り、接合部材20または40との接合界面には、接合部材20または40との接合界面の信頼性を向上させるための金属膜(メッキ膜31およびメッキ膜51)が形成されている。
【0017】
半導体装置100は、接合部材20の熱伝導率は、30W/m・Kより高い。半導体装置100は、例えばインバータなどの電力変換装置に組み込まれるパワーデバイス(パワー半導体装置)であり、大電流が流れる。パワーデバイスは、半導体素子10が動作することにより生じる熱を外部に放熱する必要がある。半導体装置100は、主な放熱経路として、半導体素子10の下面10b側から端子30を経由して放熱する経路と、半導体素子10の上面10t側から端子50を経由して放熱する経路と、を備える。接合部材20の熱伝導率を30W/m・Kより高くすることで、上記した複数の放熱経路のうち、少なくとも一方の放熱経路の放熱効率を向上させることができる。パワーデバイスにおいて、利用される高鉛半田(高い割合で鉛(Pb)を含む半田であり、例えば、95重量%のPbと5重量%のSnを含む固相線300℃液相線314℃のPb-Sn合金)の熱伝導率は、約30W/m・Kである。したがって、本実施の形態の接合部材20の熱伝導率は、鉛半田よりも高い熱伝導率を備える。
【0018】
また、接合部材20の熱膨張率は、28ppm/Kより低い。Zn-Al系の接合材料の熱膨張率は、30ppm/K程度である。したがって、接合部材20の熱膨張率は、Zn-Al系の接合材料の熱膨張率より低い。
【0019】
また、接合部材40は、接合部材20とは異なる材料から成り、かつ200℃以下で電極12と接合可能な導電性材料から成る。「200℃以下で接合可能」とは、接合部材20が電極12に200℃以下の温度環境下で接合され、かつ、その接合面は、仮にその一部分が剥離していた場合でも、その剥離部分が接合面全体の10%以下であることを意味する。また、接合部材20の電極11との接合面、および接合部材40の電極12との接合面のそれぞれは、230℃以下での耐熱性を備える。「接合面が230℃以下での耐熱性を備える」とは、230℃以下の環境下において、当該接合面が、溶融により剥離しない、あるいは剥離したとしてもその剥離部分の面積は、接合面全体の10%以下であることを意味する。
【0020】
詳細は後述するが、上記のように、接合部材40は、200℃以下で電極12と接合可能な導電性材料から成り、かつ、接合部材40の電極12との接合面が230℃以下での耐熱性を備えることにより、半導体装置100に例えば200℃の熱負荷が印加された場合でも、信頼性低下を抑制することができる。以下、信頼性低下を抑制できる理由と、接合部材20および40の具体例と、について説明する。
【0021】
<信頼性低下を抑制できる理由>
図4は、図3に示す半導体装置に対する検討例である半導体装置のリフロー工程における組立体の状態を模式的に示す断面図である。図4では、上段に最高温度まで加熱した時の状態を示し、下段に加熱後に常温まで冷却した時の状態を示している。図3に示すように、半導体装置100は、半導体素子10の上面10tには端子50が、下面10bには端子30がそれぞれ接続される。例えば、本実施の形態に対する検討例として図4に示す半導体装置100Hの場合、端子30および端子50のそれぞれを、同じ成分の接合部材20を介して接続されている。
【0022】
後述するように、接合部材20には、種々の実施例がある。簡単に説明すると、接合部材20は、AgおよびCuのいずれか一方を含む金属の多孔質体から成る場合、Cu-Sn化合物から成る金属膜およびSn-Sb-Cu化合物から成る金属膜の積層膜である場合、Cu相およびCu-Sn化合物相を含む合金、もしくはAg相およびAg-Sn化合物相を含む合金から成る場合がある。これらの材料は、熱伝導率が、30W/m・K(鉛半田の熱伝導率)より高いので、接合部材20を用いることで、高い放熱特性が得られる。ただし、接合部材20が、上記のいずれの実施例の場合でも、接合部材20の融点は200℃より高い。したがって、端子30および端子50を接合するためのリフロー工程では、半導体素子10、端子30、および端子50の組立体を、少なくとも200℃より高い温度(例えば240℃)まで加熱する必要がある。
【0023】
この場合、図4に示すように、半導体素子10の下面10b側の周縁部には、応力ST1が作用する。また、半導体素子10の上面10t側の周縁部には、応力ST2が作用する。この結果、半導体素子10の上面10tの周縁部および下面10bの周縁部のそれぞれにおいて、温度変化に起因して生じる応力ST1、ST2が、半導体素子10に集中する。半導体素子10は、この応力ST1およびST2により損傷する場合があることが判った。また、半導体素子10が損傷まで至らない場合でも、上記した応力が半導体素子10と接合部材20との接合面に集中した場合、半導体素子10と接合部材20との接合面が剥離する原因になる。すなわち、半導体装置100Hの場合、リフロー工程において印加される熱負荷に起因して半導体装置100Hの信頼性が低下することが判った。なお、図4では、端子30および50を一括して接続する実施態様を示しているが、端子30および50を順番にリフロー工程に供する場合でも、半導体素子10の損傷、あるいは半導体素子10と接合部材20との接合面の剥離が発生することが判った。
【0024】
また、本実施の形態の場合、半導体素子10がダイオード素子を有し、電極の数は、上面10tおよび下面10bにそれぞれ1個ずつ形成される。また、半導体素子の電気的特性を向上させるため、電極12と接合部材40との接合面積、および電極11と接合部材20との接合面積のそれぞれは、大きい方が好ましい。このため、電極12と接合部材40とは、上面10tの周縁部近傍で接合される。また、電極11および接合部材20とは、下面10bの周縁部で接合される。このため、接合部材20および40と半導体素子10との接合界面の周縁部には、応力が集中し易い。なお、半導体素子10の変形例としてトランジスタ素子を有している場合もある。この場合、上面10tには、ソース電極(またはエミッタ電極)に加え、ゲート電極が配置される。
【0025】
本実施の形態の半導体装置100の場合、図3に示すように、端子30を接続する接合部材20と、端子50を接続する接合部材40とが互いに異なる材料から成る。図5は、図3に示す半導体装置のリフロー工程における組立体の状態を模式的に示す断面図である。図5では、上段に端子30をリフロー処理により接続した後の状態、中段に端子50を搭載して加熱した状態、下段に端子50を加熱した後、常温まで冷却した状態を示している。
【0026】
図3に示すように、半導体装置100は、互いに異なる接合部材20および40を有し、接合部材40は、200℃以下で電極12と接合可能な導電性材料から成る。また、本実施の形態の場合、図5に示すように、端子30の素子搭載部上に接合部材20を介して半導体素子10を接続した後、半導体素子10の電極12(図3参照)上に接合部材40を介して端子50を接続する。詳しくは、まず、図5の上段に示すように半導体素子10を、接合部材20を介して端子30に接続する。接合部材20を介して端子30を接続するためのリフロー工程では、200℃より高い温度(例えば240℃)まで加熱した後、常温まで冷却する。半導体素子10の下面10bの周縁部には、応力ST1が印加される。ただし、この時点では、半導体素子10の上面10t上には、接合部材40および端子50が搭載されていないので、応力ST1は緩和され、半導体素子10の損傷には至らない。
【0027】
次に、図5の中段に示すように、半導体素子10の上面10t上に接合部材40を介して端子50を搭載する。接合部材40は、上記したように、200℃以下で電極12と接合可能な材料である。したがって、この時に半導体装置100に印加される温度の最高値は、200℃以下である。また、接合部材20の電極11(図3参照)との接合面、は、230℃以下での耐熱性を備えている。接合部材20に用いられる材料が、上記のいずれの実施例の場合でも、既に半導体素子10および端子30に接続された後の接合部材20の融点は230℃以上である。したがって、200℃以下の温度が印加されたとしても接合部材20は、溶融しない。
【0028】
次に、図5の下段に示すように、半導体装置100は、常温まで冷却される。この時、接合部材20は200℃以下で加熱されているので、この冷却時に生じる応力ST3は、端子30を接続する際に生じる応力ST1より小さい。また、接合部材20の熱膨張率は、28ppm/Kより低い。接合部材20の熱膨張率が28ppm/Kより高い場合(例えば、熱膨張率が約30ppm/K程度のZn-Al系の接合材料の場合)、最初に端子50を接合する際に生じる応力が大きいため、端子30を接続する際の温度を200℃以下にした場合でも、半導体素子10が損傷する場合がある。しかし、本願発明者の検討によれば、接合部材20として、熱膨張率が、28ppm/Kより低い材料を用いることにより、半導体素子10に印加される応力ST3を低減することができる。また、半導体素子10の上面10tに接合される接合部材40は、200℃以下で加熱されているので、半導体素子10の上面10tの周縁部に生じる応力ST4は、図4に示す応力ST2より小さい。この結果、半導体素子10の周辺に印加される応力を低減することができる。
【0029】
上記の通り、図5に示す半導体装置100の半導体素子10に印加される応力は、図4に示す半導体装置100Hの半導体素子10に印加される応力より小さい。このため、半導体装置100の場合、熱負荷に起因する半導体素子10の損傷、あるいは、半導体素子10と接合部材20または40との接合面の剥離を抑制できる。つまり、半導体装置100は、熱負荷が印加されることによる信頼性低下を抑制できる。
【0030】
また、接合部材20および40のそれぞれと、被接合部材との接合面は、接合後において、230℃以下での耐熱性を備える。詳細は後述するが、半導体装置100は、実装基板などに実装(以下、2次実装と呼ぶ場合がある)されて使用される。半導体装置100を2次実装する際に、230℃以下で接合可能な接合材料を介して半導体装置100を実装すれば、2次実装時の温度変化に起因する半導体素子10の損傷、あるいは、半導体素子10と接合部材20または40との接合面の剥離を抑制できる。
【0031】
<下面側接合部材の実施例>
次に、図3に示す接合部材20の具体的な実施例について説明する。以下で例示的に説明する複数種類の接合部材20のそれぞれは、熱伝導率が、30W/m・Kより高いという特性、および、熱膨張率は、28ppm/Kより低いという特性を備える。また、以下で例示的に説明する複数種類の接合部材20のそれぞれは、電極11および端子30に接合された後は、融点が230℃より高いという特性を有する。また、以下で説明する実施例のそれぞれにおいて、図3に示すように、端子30は半導体素子10の電極11と対向する素子搭載部を備え、素子搭載部の、接合部材20との接合面(上面30t)にはNiを主成分として含むメッキ膜31が形成されている。接合部材20は、メッキ膜31に接合される。
【0032】
図6は、図3に示す半導体素子の下面側の電極に接合される接合部材周辺の拡大断面図である。図6に示す半導体装置101が有する接合部材20は、AgおよびCuのいずれか一方から成る金属の多孔質体から成る。Agから成る多孔質体、およびCuから成る多孔質体は、熱伝導率が、100W/m・K以上である。このため、端子30を経由する放熱経路における放熱特性を特に向上させることができる。また、Agから成る多孔質体、およびCuから成る多孔質体は、熱膨張率が28ppm/Kより低い。このため、端子30を接合する際に、例えば230℃を超える温度で加熱した場合でも、温度変化に伴う変形により生じる応力ST3(図5参照)を小さくすることができる。また、Agから成る多孔質体、およびCuから成る多孔質体は、電極11および端子30に接合された後は、融点が230℃より高いという特性を有する。このため、半導体装置101を2次実装する際に、230℃以下で接合可能な接合材料を介して半導体装置101を実装することで、実装時の温度変化に起因する半導体素子10の損傷、あるいは、半導体素子10と接合部材20または40との接合面の剥離を抑制できる。
【0033】
また、図6に示すように多孔質体である接合部材20の場合、バルク構造(孔のない構造)のAgまたはCuと比較して、多孔質体は弾性率が低い。言い換えれば、図6に示す接合部材20は、ポーラス構造の孔の部分により、応力が緩和される。このため、温度変化により応力ST3(図5参照)が生じた場合でも、半導体素子10には応力ST3が伝達され難い。
【0034】
図7は、図6に対する変形例である半導体装置の半導体素子の下面側の電極に接合される接合部材周辺の拡大断面図である。図7に示す半導体装置102が有する接合部材20は、半導体素子10の電極11側から端子30の素子搭載部側に向かって順に配置される、金属膜21、金属膜22、および金属膜23を有する。金属膜21は、Cu-Sn化合物から成る。金属膜22は、Sn-Sb-Cu化合物から成り、かつ、金属膜22に含まれるSbの割合は10~15質量%、Cuの割合は0~5質量%である。金属膜23は、Cu-Sn化合物から成る。なお、Cuの割合が0%の場合には、金属膜22は、Sn-Sb化合物として考えることができる。
【0035】
図7に示す接合部材20は、Cu-Sn化合物から成る金属膜21および金属膜23の間に、Sn-10~15Sb-0~5Cu-Sn化合物から成る金属膜22が挟まれた構造になっている。この場合、Niから成るメッキ膜31との接合界面、およびNiから成る電極11との接合界面では、Cu-Sn化合物とNiとが接合される。このため、これらの接合界面における接合強度(言い換えれば接合信頼性)を向上させることができる。
【0036】
また、図7に示す接合部材20は、金属膜21と金属膜23との間に金属膜22が挟まれているので、単に、Cu-Sn化合物から成る単層の金属膜と比較して、放熱性を向上させることができる。図7に示す接合部材20の熱伝導率は、30W/m・K以上である。半導体装置102に対する通電のオン-オフにより、半導体装置102は、発熱と冷却とを繰り返すが、接合部材20は、金属膜22を備えることにより、この繰り返しの温度サイクル負荷が印加された場合でも、高い信頼性を維持することができる。本願発明者の検討によれば、金属膜22に含まれるSbの含有率が15質量%以内である場合、あるいは、金属膜22に含まれるCuの含有率が5質量%以内である場合には、金属膜22と金属膜21(または23)との接合部分が硬くなることが抑制され、上記した温度サイクル負荷に対する信頼性の低下を抑制できる。また、金属膜22に含まれるSbの含有率が10質量%以上であれば、接合部材20の融点を230℃より高くすることができるので、2次実装時の温度変化に起因する半導体素子10の損傷、あるいは、半導体素子10と接合部材20との接合面の剥離を抑制できる。
【0037】
図7に示す接合部材20は、熱膨張率が、28ppm/Kより低い。このため、端子30を接合する際に、例えば230℃を超える温度で加熱した場合でも、温度変化に伴う変形により生じる応力ST3(図5参照)を小さくすることができる。
【0038】
図8は、図6に対する他の変形例である半導体装置の半導体素子の下面側の電極に接合される接合部材周辺の拡大断面図である。図8に示す半導体装置103が有する接合部材20は、Cu相およびCu-Sn化合物相を含む合金、もしくはAg相およびAg-Sn化合物相を含む合金から成る。
【0039】
詳細は後述するが、図8に示す接合部材20は、例えば、AgまたはCuから成る高融点の金属と、Sn系の半田材料とを用いて得られる。図8に示す接合部材20は、高融点のAgまたはCuを用いることにより、接合後の融点を高くすることができる。この場合、2次実装時の接合材料として、融点が高い材料を選択することができるので、材料選択の自由度が向上する。
【0040】
また、図8に示す接合部材20の熱伝導率は、30W/m・K以上である。このため、端子30を経由する放熱経路における放熱特性を向上させることができる。また、図8に示す接合部材20は、熱膨張率が、28ppm/Kより低い。このため、端子30を接合する際に、例えば230℃を超える温度で加熱した場合でも、温度変化に伴う変形により生じる応力ST3(図5参照)を小さくすることができる。
【0041】
<上面側接合部材の実施例>
次に、図3に示す接合部材40の具体的な実施例について説明する。以下で例示的に説明する複数種類の接合部材40のそれぞれは、接合部材20とは異なり、かつ、200℃以下で電極12と接合可能な導電性材料から成るという特性を備えている。また、接合部材40は、半導体素子10の上面10tにおいて露出する電極12に接合される。図3に示すように、端子50は半導体素子10の接合部材40との接合面(下面50b)にはNiを主成分として含むメッキ膜51が形成されている。接合部材40は、メッキ膜51に接合される。以下で説明する接合部材40の実施例のそれぞれは、図6図8を用いて説明した接合部材20の実施例のそれぞれと組み合わせて使用することができる。
【0042】
図9は、図3に示す半導体素子の上面側の電極に接合される接合部材周辺の拡大断面図である。図9に示す半導体装置104の接合部材40は、互いに焼結されたAgから成る複数の粒子41と、複数の粒子41の間を満たす樹脂42と、を含む導電性接着材である。複数の粒子41の一部は、半導体素子10の電極12に焼結され、かつ、複数の粒子41の他の一部は、端子50(図9に示す例ではメッキ膜51)に焼結される。また、図9に示すように、複数の粒子41は互いに焼結されている。
【0043】
図9に示す接合部材40の場合、樹脂42には熱硬化性樹脂の成分が含まれている。接合部材40を200℃以下の温度で加熱すると、Agから成る粒子41が焼結するとともに、樹脂42に含まれる熱硬化性樹脂成分が硬化することにより、樹脂42が接合部材40と電極12との接合界面、および接合部材40と端子50の下面50bとの接合界面(図9に示す例ではメッキ膜51)のそれぞれに接着する。このため、200℃以下の温度で粒子41を焼結させた程度であっても、上記した電極12および端子50との接合界面では、それぞれ樹脂42により接合強度が補強される。この結果、硬化後において、接合部材40が230℃以上に加熱された場合でも、接合部材40と電極12との接合界面、および接合部材40と端子50の下面50bとの接合界面のそれぞれにおける剥離を抑制することができる。
【0044】
なお、図9に対する検討例として、図9に示す樹脂42を含まず、Agから成る複数の粒子41のみを200℃以下で焼結させた半導体装置を作成し、評価を行った。この結果、この検討例では、焼結した粒子41のみの接合強度のみでは、強度が不足し、接合面の剥離が発生する場合があることを確認した。また、別の検討例として、加熱温度を下げ、Agから成る複数の粒子41が互いに焼結しない程度の温度で加熱した半導体装置を作成した。この場合、接合部材40の熱伝導率の低下、電気抵抗の増大等により、接合部材40の特性が低下することが判った。上記より、図9に示すように、樹脂42を含み、かつ、複数の粒子41を電極12および端子50のそれぞれに焼結させることが好ましいことが判った。
【0045】
図10は、図9に対する変形例である半導体装置の半導体素子の上面側の電極に接合される接合部材周辺の拡大断面図である。図10に示す半導体装置105が有する接合部材40は、Cu相(純金属相44p)、Cu-Sn化合物相(化合物相45c)、およびBi相45pを含む合金、もしくはAg相(純金属相44p)、Ag-Sn化合物相(化合物相45c)、およびBi相45pを含む合金から成る。
【0046】
図10に示す接合部材40は、Cu粉末および融点が200℃以下のSn-Bi系半田を用いる、あるいは、Ag粉末およびSn-Bi系半田を用いることにより得られる。Cu粉末およびSn-Bi系半田を200℃以下の温度で加熱した場合、Cu相、Cu-Sn化合物相、およびBi相45pを含む合金が得られる。Ag粉末およびSn-Bi系半田を200℃以下の温度で加熱した場合、Ag相、Ag-Sn化合物相、およびBi相45pを含む合金が得られる。これらの合金は、200℃以下の温度で合金化され、電極12および端子50のそれぞれに接合することができるが、合金化された後の融点は、230℃以上になる。したがって、2次実装時の温度変化に起因する半導体素子10の損傷、あるいは、半導体素子10と接合部材40との接合面の剥離を抑制できる。
【0047】
図11は、図9に対する他の変形例である半導体装置の半導体素子の上面側の電極に接合される接合部材周辺の拡大断面図である。図11に示す半導体装置106が有する接合部材40は、Cu相(純金属相44p)およびCu-Sn-In化合物相(化合物相45c)を含む合金、もしくはAg相(純金属相44p)およびAg-Sn-In化合物相(化合物相45c)を含む合金から成る。
【0048】
図11に示す接合部材40は、Cu粉末および融点が200℃以下のSn-In系半田を用いる、あるいは、Ag粉末およびSn-In系半田を用いることにより得られる。Cu粉末およびSn-In系半田を200℃以下の温度で加熱した場合、Cu相およびCu-Sn-In化合物相を含む合金が得られる。Ag粉末およびSn-In系半田を200℃以下の温度で加熱した場合、Ag相およびAg-Sn-In化合物相を含む合金が得られる。これらの合金は、200℃以下の温度で合金化され、電極12および端子50のそれぞれに接合することができるが、合金化された後の融点は、230℃以上になる。したがって、2次実装時の温度変化に起因する半導体素子10の損傷、あるいは、半導体素子10と接合部材40との接合面の剥離を抑制できる。
【0049】
また、半導体装置100の放熱特性を向上させる観点からは、端子30を経由する放熱経路に加え、端子50を経由する放熱経路の放熱効率も向上させることが好ましい。この観点からは、図9に示す接合部材40と比較すると、図10および図11に示す接合部材40は、熱伝導率を向上させることができる点で特に好ましい。
【0050】
<2次実装製品の例>
図12は、図3に示す半導体装置を2次実装した半導体装置の構造例を示す断面図である。図12に示す半導体装置200は、導電性の接合部材210を介して端子30と電気的に接続される端子220と、端子220と30端子との間に配置される接合部材210を有する。また、半導体装置200は、導電性の接合部材230を介して端子50と電気的に接続される端子240と、端子240と端子50との間に配置される接合部材230と、を備える。また、半導体装置100は、端子220上に搭載され、全体が封止体250により封止されている。封止体250からは、端子220の一部および端子240の一部が露出している。
【0051】
上記したように、半導体装置100が有する接合部材20および40のそれぞれは、230℃以下において、耐熱性を備えている。このため、図12に示す接合部材210および230として、230℃以下で接合可能な接合材料を用いることにより、半導体装置100を2次実装する際に、2次実装時の温度変化に起因する半導体素子10の損傷、あるいは、半導体素子10と接合部材20または40との接合面の剥離を抑制できる。230℃以下で接合可能な材料として、例えば、Sn-3Ag-0.5Cuから成る半田を例示することができる。また、接合部材20および40の耐熱温度(接合面の剥離を10%以内に抑制できる限界温度)を230℃よりもさらに大きくできれば、接合部材210および230の選択の自由度が大きくなるので特に好ましい。
【0052】
<製造方法>
次に、図3に示す半導体装置100の製造方法について説明する。図13は、図3に示す半導体装置の製造工程の概要を示すフロー図である。
【0053】
まず、図13に示す素子準備工程では、下面10bに形成された電極11(図3参照)、および下面10bの反対側に位置する上面10tに形成された電極12(図3参照)を備える半導体素子を準備する。
【0054】
次に、素子搭載工程では、端子30の素子搭載部上に接合部材20を介して半導体素子10を接続する素子搭載工程を有する。本工程では、半導体素子10の下面10bが端子30の上面30tと対向した状態で半導体素子10と端子30とを接続させる。端子30の素子搭載部には、Niを主成分として含むメッキ膜31(図3参照)が予め形成されている。
【0055】
本工程では、図6図8を用いて説明した接合部材20のいずれかを介して端子30上に半導体素子10を搭載する。図6を用いて説明した半導体装置101の場合、本工程では、AgおよびCuのいずれか一方を含む複数の金属粒子を端子30上に塗布した後、半導体素子10を端子30上の金属粒子を塗布した場所に配置する。その後、端子30、金属粒子、および半導体素子10のそれぞれを一括して加熱することにより、図6に示すように、複数の金属粒子を半導体素子10の電極11および素子搭載部のメッキ膜31のそれぞれに焼結させることにより、金属の多孔質体から成る接合部材20を得る。
【0056】
また、図7を用いて説明した半導体装置102の場合、上方から金属膜21、金属膜22、および金属膜23の順に積層された積層膜を予め準備する。積層膜は、例えば、金属膜21、金属膜22、および金属膜23の原料膜を積層した後、圧延することにより得られる。素子搭載工程では、端子30上に上記した積層膜を配置した後、半導体素子10を端子30上の積層膜を配置した場所に配置する。その後、端子30、積層膜、および半導体素子10のそれぞれを一括して加熱することにより、図7に示すように、金属膜21が、半導体素子10の電極11に、金属膜23が端子30の素子搭載部のメッキ膜31にそれぞれ接合される。
【0057】
また、図8を用いて説明した半導体装置103の場合、上記したように、AgまたはCuから成る高融点の金属と、Sn系の半田材料とを用いて得られるが、以下の2種類の製造方法がある。図14は、図8に示す接合部材を得るための製造方法の一例を示す説明図である。図15は、図14に対する変形例である製造方法を示す説明図である。
【0058】
図14に示す製造方法の場合、まず、端子30上にAgまたはCuから成る複数の金属粒子24と、Sn系の半田材料から成る複数の金属粒子25とが混合された接合部材材料を塗布する。次に、半導体素子10を金属粒子24および25が混合された接合部材原料上に配置する。この時、半導体素子10の下面10bが金属粒子24および25が混合された接合部材原料に接する。次に、端子30、接合部材原料、および半導体素子10のそれぞれを一括して加熱すると、接合部材原料の一部が溶融し、端子30および半導体素子10のそれぞれに接合される接合部材20が得られる。接合部材20には、高融点のAgまたはCuから成る金属粒子24の一部が、Ag相またはCu相の純金属相24pとして存在し、金属粒子24の他部が金属粒子25と反応してAg-Sn化合物またはCu-Sn化合物である化合物相26として存在する。
【0059】
図15に示す製造方法の場合、まず、端子30上にAgまたはCuから成る金属膜27と、Sn系の半田材料から成る金属膜28とが積層された接合部材材料を塗布する。次に、半導体素子10を金属膜27および28が積層された接合部材原料上に配置する。この時、半導体素子10の下面10bが接合部材原料(図15では、金属膜27)に接する。次に、端子30、接合部材原料、および半導体素子10のそれぞれを一括して加熱すると、接合部材原料の一部が溶融し、端子30および半導体素子10のそれぞれに接合される接合部材20が得られる。接合部材20には、高融点のAgまたはCuから成る金属膜27の一部が、Ag相またはCu相の純金属相27pとして存在し、金属膜27の他部が金属膜28と反応してAg-Sn化合物またはCu-Sn化合物である化合物相29として存在する。
【0060】
図14および15に示す製造方法は、いずれの場合でも、半導体素子10および端子30に接合された後の接合部材20は、接合前よりも融点が上昇する。このため、例えば図12に示す半導体装置200のように、半導体装置100を2次実装する場合でも、この時の温度変化に起因する半導体素子10の損傷、あるいは、半導体素子10と接合部材20との接合面の剥離を抑制できる。
【0061】
次に、図13に示す上部端子接続工程では、素子搭載工程の後、半導体素子10の電極12上に接合部材40を介して端子50を接続する。本工程では、半導体素子10の上面10tが端子50の下面50bと対向した状態で半導体素子10と端子50とを接続させる。端子50には、Niを主成分として含むメッキ膜51(図3参照)が予め形成されている。
【0062】
本工程では、図9図11を用いて説明した接合部材40のいずれかを介して半導体素子10上に端子50を搭載する。図16は、図9に示す接合部材を得るための製造方法の一例を示す説明図である。図9を用いて説明した半導体装置104の場合、上部端子接続工程では、まず、図16に示すように、Agから成る複数の粒子41と、複数の粒子41の間を満たす樹脂42と、を含むペースト材43を半導体素子10の電極12上に塗布する。次に、ペースト材43上に端子50を接着させる。次に、ペースト材43を200℃以下の温度で加熱して、ペースト材43に含まれる複数の粒子41を互いに焼結させることにより、図9に示す接合部材40が得られる。この時、複数の粒子41の一部が半導体素子10の電極12に焼結され、かつ、複数の粒子41の他の一部が、端子50に焼結される。
【0063】
図10を用いて説明した半導体装置105および図11を用いて説明した半導体装置106のそれぞれが備える接合部材40は、以下の2種類の方法により得られる。図17は、図10または図11に示す接合部材を得るための製造方法の一例を示す説明図である。図18は、図17に対する変形例である製造方法を示す説明図である。
【0064】
図17に示す製造方法では、まず、AgまたはCuから成る複数の金属粒子44と、Snを含み、固相線温度が200℃以下の化合物半田45と、を含む接合部材原料46を電極12上に塗布する。化合物半田45は、図10に示す半導体装置105を製造する場合には、Sn-Bi系半田であり、図11に示す半導体装置106を製造する場合には、Sn-In系半田である。図17では、化合物半田45を粒子として記載しているが、化合物半田45は、バインダ材を含むペースト状の物質である場合もある。また、金属粒子44もペースト材中に分散されていてもよい。次に、接合部材原料46上に端子50を接着させる。次に、接合部材原料46を200℃以下の温度で加熱した後、冷却する。これにより、図10または図11に示すように、複数の金属粒子44を構成する金属元素の純金属相44pと、複数の金属粒子44を構成する金属元素およびSnを含む金属間化合物相(化合物相45c)と、を含む合金から成る、接合部材40を形成することができる。
【0065】
図18に示す製造方法では、まず、AgまたはCuから成る複数の金属粒子44を予め焼結させて焼結体47を形成し、この焼結体47を、電極12上に配置する。この時、焼結体47と電極12とは焼結されていなくてよい。また、焼結体47は、複数の凝集体になっており、この複数の凝集体が、バインダ材を含むペースト状の物質になっている場合がある。次に、Snを含み、固相線温度が200℃以下である化合物半田45を前記の金属粒子44の焼結体47上に塗布する。図18では、化合物半田45を粒子として記載しているが、化合物半田45は、バインダ材を含むペースト状の物質である場合もある。次に、化合物半田45と端子50とを接着させる。次に、化合物半田45を200℃以下の温度で加熱した後、冷却する。これにより、図10または図11に示すように、複数の金属粒子44を構成する金属元素の純金属相44pと、複数の金属粒子44を構成する金属元素およびSnを含む金属間化合物相(化合物相45c)と、を含む合金から成る、接合部材40を形成することができる。化合物半田45を加熱する際には、減圧雰囲気下で加熱することが特に好ましい。この場合、低融点の化合物半田45が、高融点の金属粒子44の間に侵入し易くなるので、空隙に埋め込まれ易い。また、化合物半田45と金属粒子44とが反応し、金属間化合物が形成され易くなるので、接合部材40を高融点化することができる。
【0066】
<実施例の評価>
本願発明者は、上記した各種の実施例および比較例において、図3に示す構造の半導体装置を作成し、内部に含まれる半導体素子10に割れなどの損傷が生じるか度否かについて評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0067】
表1において、各実施例および各比較例における接合部材20(図3参照)の構造およびその参照図面を「素子下面側接合部材」の列に記載する。また、各実施例および各比較例における接合部材40(図4参照)の構造およびその参照図面を「素子上面側接合部材」の列に記載する。比較例の場合、図4に示すように、半導体素子10の上面および下面に同じ接合部材を使用した例であり、該当する参照図面がないため、参照図面の欄には「-」と記載している。また、評価欄は、同じ構造の半導体装置をそれぞれ5個作成し、半導体素子10(図3参照)の割れなどの損傷が確認できないものを「○」、5個の半導体装置のうち、一つ以上で半導体素子10の我が確認されたものを「×」と記載している。
【0068】
表1に示す以外の製造条件は、以下の通りである。端子30(図3参照)上に、接合部材20(図3参照)の原料を配置した後、厚さ0.5mmの半導体素子10(図3参照)を配置する。その後、リフロー炉により100%H、あるいは、N+Hの還元雰囲気中で、接合可能な温度(共晶温度)まで加熱し、接合部材20を半導体素子10および端子30に接合した。接合部材20を冷却した後、半導体素子10の電極12(図13参照)上に、接合部材40(図3参照)の原料を介して、端子50(図3参照)を配置する。その後、N+Hの還元雰囲気中で、190℃で加熱し、接合部材40を半導体素子10および端子50に接合した。接合部材20および40を介して端子30、半導体素子10および端子50が互いに接続された後、封止体60(図3参照)と密着する部分に密着性を向上させるための樹脂を塗布し、硬化させた。その後、金型を用いたトランスファモールド方式により、端子30および端子50の一部が封止体60から露出するように、封止体を形成した。
【0069】
また、実施例1~5では、図3に示すメッキ膜31として、Niメッキ膜上にさらにAgメッキを施したものを使用した。また、実施例1、6、11、16、21、26、および31のそれぞれの場合、端子50のメッキ膜51として、Niメッキ膜上にさらにAgメッキを施したものを使用した。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示すように、実施例1~35のそれぞれにおいて、半導体素子10の損傷は確認されなかった。
【0072】
以上、本実施の形態の代表的な変形例について説明したが、本発明は、上記した実施例や代表的な変形例に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形例が適用できる。
【0073】
また、上記では、種々の変形例を説明したが、各変形例を適宜組み合わせて適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、半導体装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 半導体素子
10b 下面(第1面)
10t 上面(第2面)
11 電極(第1電極)
12 電極(第2電極)
20 接合部材(第1接合部材)
21,22,23,27,28 金属膜
24,25,44 金属粒子
24p,27p,44p 純金属相
26,29,45c 化合物相
30 端子(第1端子)
30t 上面
31 メッキ膜
40 接合部材(第2接合部材)
41 粒子
42 樹脂
43 ペースト材
45 化合物半田
45p Bi相
46 接合部材原料
47 焼結体
50 端子(第2端子)
50b 下面
51 メッキ膜
60 封止体
100,100H,101,102,103,104,105,106,200 半導体装置
210 接合部材
220 端子
230 接合部材
240 端子
250 封止体
ST1,ST2,ST3,ST4 応力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18