IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 電気化学工業株式会社の特許一覧

特許7320450毛状体を有する樹脂シート及びその成形品
<>
  • 特許-毛状体を有する樹脂シート及びその成形品 図1
  • 特許-毛状体を有する樹脂シート及びその成形品 図2
  • 特許-毛状体を有する樹脂シート及びその成形品 図3
  • 特許-毛状体を有する樹脂シート及びその成形品 図4
  • 特許-毛状体を有する樹脂シート及びその成形品 図5
  • 特許-毛状体を有する樹脂シート及びその成形品 図6
  • 特許-毛状体を有する樹脂シート及びその成形品 図7
  • 特許-毛状体を有する樹脂シート及びその成形品 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】毛状体を有する樹脂シート及びその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/00 20060101AFI20230727BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20230727BHJP
   B29C 59/04 20060101ALI20230727BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
C08J7/00 302
C08J7/00 CEZ
B29C51/10
B29C59/04 Z
C08J5/18 CER
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019540981
(86)(22)【出願日】2018-09-05
(86)【国際出願番号】 JP2018032897
(87)【国際公開番号】W WO2019049897
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2017170896
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤原 純平
(72)【発明者】
【氏名】星野 祥吾
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/047548(WO,A1)
【文献】特開平09-057934(JP,A)
【文献】国際公開第2014/087695(WO,A1)
【文献】米国特許第04118530(US,A)
【文献】特表2002-526669(JP,A)
【文献】特開昭50-124965(JP,A)
【文献】特開昭56-020669(JP,A)
【文献】特表2002-506753(JP,A)
【文献】特開平08-142103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C49/00-49/46
49/58-49/68
49/72-51/28
51/42
51/46-53/84
57/00-59/18
71/04
C08J5/00-5/02
5/12-5/22
7/00-7/02
7/12-7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形法によってダイスから溶融押出したシートを、凹凸加工が成された転写ロールとタッチロールとでキャスティングさせて毛状体を形成することを特徴とする、下地層の少なくとも一方の面に規則的に配列された毛状体を有し、下地層と毛状体との間には構造的な境界がなく、連続相を形成しており、下地層と毛状体が少なくとも部分的に架橋構造を有し、毛状体の平均高さが100μm以上1200μm以下、毛状体の平均径が1μm以上30μm以下、毛状体の平均間隔が20μm以上200μm以下である、樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
下地層及び毛状体が熱可塑性樹脂を主成分とし、前記熱可塑性樹脂がスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマー、フッ素系樹脂から選択される少なくとも1種類を含む熱可塑性樹脂である請求項1に記載の樹脂シートの製造方法
【請求項3】
樹脂シートの毛状体を有する面の動摩擦係数に対する静摩擦係数の比が1.0~10.0である請求項1又は2に記載の樹脂シートの製造方法
【請求項4】
樹脂シートの毛状体を有する面の反射光強度が得られる角度幅が-90°~90°である、請求項1から3の何れか一項に記載の樹脂シートの製造方法
【請求項5】
樹脂シートにおいて、前記下地層の厚みが15μm以上である請求項1から4の何れか一項に記載の樹脂シートの製造方法
【請求項6】
樹脂シートにおいて、毛状体が下地層から離間する方向に毛状に伸び、その先端にふくらみが形成されている請求項1から5の何れか一項に記載の樹脂シートの製造方法
【請求項7】
樹脂シートにおいて、下地層及び毛状体は、一のシートから形成された請求項1から6の何れか一項に記載の樹脂シートの製造方法
【請求項8】
樹脂シートが多層樹脂シートである請求項1から7の何れか一項に記載の樹脂シートの製造方法
【請求項9】
樹脂シートが、下地層の他方の面にスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマーから選択される少なくとも1層の基材層を積層したものである、請求項1から8の何れか一項に記載の樹脂シートの製造方法
【請求項10】
樹脂シートが、撥水撥油剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、着色剤、離型剤から選択される1種又は2種以上の添加剤を含む請求項1から9の何れか一項に記載の樹脂シートの製造方法
【請求項11】
下地層及び毛状体が熱可塑性樹脂を主成分とし、前記熱可塑性樹脂がスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマー、フッ素系樹脂から選択される少なくとも1種類を含む熱可塑性樹脂であり、
樹脂シートが加速電圧:200kV、線量:250kGyの照射条件で電子線照射により架橋構造を有しており、
樹脂シートの表面温度80℃~220℃の範囲でシートを40秒間~300秒間で加熱して1.6倍に延伸する加熱延伸成形した場合の毛状体の平均高さの低下率が30%未満である、請求項1から10の何れか一項に記載の樹脂シートの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛状体を有する樹脂シート及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の内装材や付属部品の筐体、電子機器や家電の筐体、壁紙などの建材用、玩具やゲーム機の筐体、生活用品の部材用として、紙材、高分子素材のシートが用いられている。また、シート表面に良い触感性を付与する方法として、例えば、特許文献1には、化粧紙に熱可塑性ポリエステル系樹脂を押出ラミネートした加飾シートが提案されている。
【0003】
特許文献2では、樹脂ビーズを含有した加飾シートが提案されている。特許文献3では、ポリ乳酸樹脂にウレタン系樹脂コーティングし、その表面を熱エンボス加工した加飾樹脂シートが提案されている。
【0004】
更に、特許文献4では、シート表面の凹凸形状を損なわないために、エンボス加工したABS樹脂シートの表面に、耐摩粒子とウレタン系樹脂からなる保護層を形成した加飾シートが提案されている。特許文献5では、一定方向に多数の筋を有し、その筋から起毛してなる毛羽立ち加飾面を備えた容器が提案されている。
しかしながら、より良好な触感を発現する樹脂シートの提供が望まれている。
【0005】
【文献】特開平9-057934号公報
【文献】特開2008-238602号公報
【文献】特開2011-152795号公報
【文献】特開2010-280203号公報
【文献】特開2011-098739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、良触感性を発現するシート及びその成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明者は、様々な触感性発現手段を検討した結果、良触感性を発現するにはシート表面に毛状体の形状を付与すればよいと考え、表面に規則的に配列された毛状体を形成することにより、良い触感性が発現させることを見出した。更に電子線照射により架橋させることで加熱延伸成形後でも毛状体を維持した良触感性を保持した成形品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
上記課題を解決する本発明は、下記より構成される。
(1)下地層の少なくとも一方の面に規則的に配列された毛状体を有し、下地層と毛状体との間には構造的な境界がなく、連続相を形成しており、下地層と毛状体が少なくとも部分的に架橋構造を有している、樹脂シート。
(2)下地層及び毛状体が熱可塑性樹脂を主成分とし、前記熱可塑性樹脂がスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマー、フッ素系樹脂から選択される少なくとも1種類を含む熱可塑性樹脂である(1)に記載の樹脂シート。
(3)毛状体の平均高さが100μm以上1200μm以下、毛状体の平均径が1μm以上50μm以下、毛状体の平均間隔が20μm以上200μm以下である、(1)又は(2)に記載の樹脂シート。
(4)毛状体を有する面の動摩擦係数に対する静摩擦係数の比が1.0~10.0である(1)から(3)の何れか一つに記載の樹脂シート。
(5)毛状体を有する面の反射光強度が得られる角度幅が-90°~90°である、(1)から(4)の何れか一つに記載の樹脂シート。
(6)前記下地層の厚みが15μm以上である(1)から(5)の何れか一つに記載の樹脂シート。
(7)毛状体が下地層から離間する方向に毛状に伸び、その先端にふくらみが形成されている(1)から(6)の何れか一つに記載の樹脂シート。
(8)下地層及び毛状体は、一のシートから形成された(1)から(7)の何れか一つに記載の樹脂シート。
(9)多層樹脂シートである(1)から(8)の何れか一つに記載の樹脂シート。
(10)下地層の他方の面にスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマーから選択される少なくとも1層の基材層を積層した(1)から(9)の何れか一つに記載の樹脂シート。
(11)撥水撥油剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、着色剤、離型剤から選択される1種又は2種以上の添加剤を含む(1)から(10)の何れか一つに記載の樹脂シート。
(12)加熱延伸成形による毛状体の平均高さの低下率が30%未満である、(1)から(11)の何れか一つに記載の樹脂シート。
(13)押出成形法によってダイスから溶融押出したシートを、凹凸加工が成された転写ロールとタッチロールとでキャスティングさせて毛状体を形成することを特徴とする(1)から(12)の何れか一つに記載の樹脂シートの製造方法。
(14)(1)から(12)の何れか一つに記載の樹脂シートの成形品。
(15)自動車内装部材、電子機器部材、電子機器外装材、化粧品容器部材、文房具部材又は生活用品部材である(14)に記載の成形品。
(16)(1)から(12)の何れか一つに記載の樹脂シートを用いた物品。
(17)自動車内装部材、電子機器部材、電子機器外装材、化粧品容器部材、文房具部材又は生活用品部材である(16)に記載の物品。
(18)(1)から(12)の何れか一つに記載の樹脂シートを真空圧空成形、インサート成形又はインモールド成形することを含む、(14)から(17)の何れか一つに記載の成形品又は物品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良触感性を発現するシート及びその成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一実施形態に係る樹脂シートを示す概略縦側断面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る樹脂シートの変形例を示す概略縦側断面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る樹脂シートのさらなる変形例を示す概略縦側断面図である。
図4図1の樹脂シートの概略平面図である。
図5】本発明の第二実施形態に係る樹脂シートの積層構造を示す概略縦側断面図である。
図6】本発明の第三実施形態に係る樹脂シートの積層構造を示す概略縦側断面図である。
図7】成形評価に用いたテーブル部材の写真である。
図8】成形評価に用いた雑貨用容器の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、樹脂シートの種々の実施形態を説明し、ついで樹脂シートの製造方法について説明するが、一実施形態について記載した特定の説明が他の実施形態についても当てはまる場合には、他の実施形態においてはその説明を省略している。
【0012】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る樹脂シートは、下地層及びその少なくとも一方の面に規則的に配列された毛状体を有し、下地層と毛状体との間には構造的な境界がなく、連続相を形成し、下地層と毛状体が少なくとも部分的に架橋構造を有している、熱可塑性樹脂から製造される樹脂シートである。
【0013】
<下地層>
下地層(1a)は、図1に示されるように、表面の毛状体1b以外の部分をいう。下地層の厚みは、毛状体の根元から下地層の反対側の表面までの厚みをいう。下地層の平均厚みは15μm~1000μmであることが好ましく、150μm~800μmであることがより好ましい。15μm以上とすることで、毛状体の高さを十分に発現することができる。また、1000μm以下とすることで、毛状体を効率よく形成することができる。下地層と毛状体との間には構造的な境界がなく、連続相を形成している。構造的に境界がないとは、下地層と毛状体とが一体型に形成され、これらの間に構造的に明確な境界部がないことを意味している。また、連続相を形成しているとは、下地層と毛状体との間に継ぎ目がなく、不連続でない(連続相となっている)状態をいう。この点で、下地層に毛状体を植毛している構造とは異なっている。下地層及び毛状体は同組成であり、下地層と毛状体との結合には共有結合が含まれてもよい。共有結合とは、電子対が2つの原子に共有されることによって形成される化学結合をいうが、モノマーが連なった鎖状分子である熱可塑性樹脂において、個々のポリマーは共有結合により結合しており、ポリマー分子間で働くファンデルワールス結合や水素結合よりも強く結合している。
また、下地層及び毛状体は、別個ではない同一固体の熱可塑性樹脂シートに由来してもよい。同一固体の熱可塑性樹脂シートに由来するとは、例えば、毛状体及び下地層が同一の樹脂シートに基づいて直接的又は間接的に得られることを意味する。
また、下地層及び毛状体は、同一固体の熱可塑性樹脂シートから形成されたものであってもよい。同一固体の熱可塑性樹脂シートから形成されるとは、毛状体及び下地層が一の樹脂シートを加工することにより直接的に形成されることを意味する。
下地層と毛状体との間には構造的な境界がなく、連続相を形成していることにより、外的刺激によって毛状体が下地層から分離することが抑制され、触感性が良いシートとなる。また、毛状体を植毛する場合よりも少ない工程で製造することができる。
【0014】
下地層及び毛状体は、熱可塑性樹脂を主成分とする同一の樹脂組成物からなる。熱可塑性樹脂を主成分とするとは、熱可塑性樹脂を50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上含有することを意味する。熱可塑性樹脂として、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマー、フッ素系樹脂の少なくとも1種類以上を含む樹脂を用いることができる。
【0015】
スチレン系樹脂としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジメチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系モノマーの単独又は共重合体、それらスチレン系モノマーと他のモノマーとの共重合体、例えば、スチレン-エチレン共重合体(SE樹脂)、スチレン-アクリルニトリル共重合体(AS樹脂)、又は前記スチレン系モノマーと更に他のポリマー、例えばポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のジエン系ゴム質重合体の存在下にグラフト重合したグラフト重合体、例えばハイインパクトポリスチレン(HIPS樹脂)、スチレン-アクリルニトリルグラフト重合体(ABS樹脂)等のポリスチレンを用いることができる。また、スチレン系の熱可塑性エラストマーも用いることができる。
【0016】
ポリオレフィン系樹脂は、α-オレフィンを単量体として含む重合体からなる樹脂を意味し、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂を含む。ポリエチレン(PE)樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状中密度ポリエチレン等を用いることができ、また単体のみならず、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体などが挙げられる。電子線照射による架橋性を考慮すると、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状中密度ポリエチレンを用いることが望ましい。
【0017】
また、ポリプロピレン(PP)樹脂としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等を用いることができる。ホモポリプロピレンを用いる場合、該ホモポリプロピレンの構造は、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックのいずれであってもよい。ランダムポリプロピレンを用いる場合、プロピレンと共重合させるα-オレフィンとしては、好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数4~12のもの、例えばエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンを用いることができる。ブロックポリプロピレンを用いる場合、ブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等を用いることができる。これらオレフィン樹脂を単独で使用する以外に、他のオレフィン系樹脂を併用することもできる。電子線照射による架橋性を考慮すると、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンを用いることが望ましい。
【0018】
ポリ塩化ビニルとしては、塩化ビニル単独重合体または塩化ビニルと他の共単量体との共重合体を用いることができる。ポリ塩化ビニルが共重合体である場合は、ランダム共重合体であってもよく、またグラフト共重合体であってもよい。グラフト共重合体の一例として、たとえばエチレン-酢酸ビニル共重合体や熱可塑性ウレタン重合体を幹ポリマーとし、これに塩化ビニルがグラフト重合されたものを挙げることができる。本実施形態のポリ塩化ビニルは、押出成形可能な軟質ポリ塩化ビニルを示し、高分子可塑剤などの添加物を含有している組成物である。高分子可塑剤としては、公知の高分子可塑剤を用いることができるが、たとえばエチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-一酸化炭素共重合体、酢酸ビニル含有量の多いエチレン-酢酸ビニル共重合体などのエチレン共重合体高分子可塑剤を好ましい例として挙げることができる。
【0019】
熱可塑性エラストマーとしては、軟質高分子物質と硬質高分子物質を組み合わせた構造を有するものが含まれる。具体的には、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーなどが挙げられる。ポリウレタン系エラストマーについては、ポリエーテル系、ポリエステル系のどちらを選択しても良い。これらエラストマーは一般的に市販されているものの中から選択して用いることが出来る。
【0020】
フッ素樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体、及びフッ化ビニリデンを主成分とするフッ化ビニリデン共重合体を用いることができる。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂は、α型、β型、γ型、αp型などの様々な結晶構造を示す結晶性樹脂であるが、フッ化ビニリデン共重合体としては、例えば、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン三元共重合体、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0021】
熱可塑性樹脂の190℃から300℃におけるメルトマスフローレートは1g/10分以上であることが好ましい。1g/10分以上とすることで、毛状体の形状の転写性を向上することができる。なお、メルトマスフローレートは、JIS K 7210に準拠し、試験温度190℃から300℃のうちのいずれかの温度で、各荷重(2.16Kgから10.0Kg)のいずれかの条件下で測定した値である。
【0022】
上記の熱可塑性樹脂の組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲、特に毛状体の形成を阻害しない範囲で、上記の各熱可塑性樹脂と任意の割合でアロイしてあってもよい。例えば、ポリエチレンとスチレン系熱可塑性エラストマーをアロイする場合は、樹脂組成物100質量%に対して、ポリエチレンが50質量%以上含むことが好ましい。さらに、他の添加物を含有してもよい。他の添加物としては、本発明の効果を阻害しない範囲で、撥水剤、撥油剤、顔料、染料などの着色剤、シリコンオイルやアルキルエステル系等の滑材・離型剤、ガラス繊維等の繊維状強化剤、充填剤として、タルク、クレイ、シリカなどの粒状微粒子やマイカなどの鱗片状の微粒子、スルホン酸とアルカリ金属などとの塩化合物等の低分子型帯電防止剤やポリエーテルエステルアミド等の高分子型帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、熱安定剤のような添加剤などを添加することができる。また、樹脂シート製造工程で発生したスクラップ樹脂を混合して用いることもできる。
【0023】
撥水剤・撥油剤としては、シリコン系撥水剤、カルナバワックス、フッ素系撥水撥油剤が挙げられる。シリコンとしては、オルガノポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられ、なかでも、ジメチルポリシロキサンが好適に用いられる。市販品としては、例えばシリコンを樹脂にアロイした「クリンベルCB50―PP」、「クリンベルCB-30PE」、「クリンベルCB-1」、「クリンベルCB-50AB」(富士ケミカル社製)などが挙げられる。カルナバワックスは、市販品としては、「カルナバ1号」(日興リカ社製)などが挙げられ、フッ素系撥水撥油剤はパーフルオロアルキル基を有する界面活性剤が挙げられ、市販品としては、「サーフロンKT-PA」(AGCセイミケミカル社製)などが挙げられる。撥水・撥油剤の添加量は0.5質量%から25質量%が好ましく、1.0質量%から20質量%がより好ましく、1.5質量%から15質量%がさらに好ましい。0.5質量%以上とすることで撥水・撥油性効果が得られ、25質量%以下とすることで、成形性が悪くなるのを抑制することができる。
【0024】
帯電防止剤としては、ポリエーテルエステルアミド系高分子型帯電防止剤、アイオノマー系高分子型帯電防止剤などが挙げられる。ポリエーテルエステルアミド系高分子型帯電防止剤は、市販品としては、「ペレスタット230」、「ペレスタット6500」、「ぺレクトロンAS」、「ぺレクトロンHS」(三洋化成社製)などが挙げられる。アイオノマー系高分子型帯電防止剤は、市販品としては、「エンティラSD100」、「エンティラMK400」(三井・デュポンポリケミカル社製)などが挙げられる。帯電防止剤の添加量は5質量%から30質量%が好ましく、7.5質量%から25質量%がより好ましく、10質量%から20質量%がさらに好ましい。5質量%以上とすることで帯電防止性が得られ、30質量%以下とすることで生産コストが上がるのを抑制することができる。
【0025】
抗菌剤としては、無機系、有機系のうち、どちらを添加してもよい。分散性を考慮すると無機系が好ましい。具体的には金属イオン(Ag、Zn、Cu)の無機系抗菌剤、貝殻焼成カルシウム系抗菌剤などが挙げられる。金属イオンの無機系抗菌剤の市販品としては、
「バクテキラーBM102VT」(富士ケミカル社製)、「ノバロンVZF200」、「ノバロン(AG300)」(東亜合成社製)、「KM-10D-G」、「IM-10D-L」(シナネンゼオミック社製)などが挙げられる。貝殻焼成カルシウム系抗菌剤としては、「スカロー」(FID社製)などが挙げられる。抗菌剤の添加量は0.5質量%~5質量%が好ましく、0.6質量%から4質量%がより好ましく、0.7質量%から3質量%がさらに好ましい。0.5質量%以上とすることで抗菌性が得られ、5質量%以下とすることで生産コストが上がるのを抑制することができる。
【0026】
紫外線吸収剤として、無機系あるいは有機系の紫外線吸収剤を用いることができる。
無機系紫外線吸収剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セシウム、酸化鉄及びその他多くの種類のものが使用できる。その中でも特に酸化亜鉛は、透明性や紫外線不透過性の点で優れ好ましい。市販品としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤「TINUVIN 1600」(BASF社製)などを用いることができる。
無機系紫外線吸収剤を使用する場合、その添加量は樹脂組成物の合計100質量部に対し1~5質量部が好ましく、1.5~4.5質量部がより好ましく、2~4質量部がさらに好ましい。添加量を1質量部以上とすることで紫外線によるシートの劣化を抑制する効果が低くなるのを抑制し、5質量部以下とすることで生産コストが高くなるのを抑制することができる。
【0027】
また、無機系紫外線吸収剤を予め、熱可塑性樹脂にアロイしたマスターバッチなども用いることもできる。例えば、ウレタン系熱可塑性エラストマーをベースとしたマスターバッチの市販品として、「耐候マスター UNS(ポリエステル系)」(エフ・アイ・シー社製)、「耐候マスター UNE(ポリエーテル系)」(エフ・アイ・シー社製)が挙げられ、生産効率を考慮すると、マスターバッチを用いた方が好ましい。マスターバッチの添加量は樹脂組成物100質量部に対して、1~5質量部であることが好ましく、1.5~4.5質量部がより好ましく、2~4質量部がさらに好ましい。
【0028】
また、有機系紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、オキザリックアシッド系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系及びその他多くの種類のものが使用できる。好ましくは、フィルムの製造時や使用時での揮散を最小限にするため、分子量が300以上の高分子量タイプの紫外線吸収剤が好適に使用される。
【0029】
有機系紫外線吸収剤を使用する場合、その添加量は樹脂組成物の合計100質量部に対し4質量部以上が好ましく、4.5質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。含有量が4質量部以上とすることで紫外線によるシートの劣化を抑制する効果が得られる。一方で、8質量部を超えても、紫外線によるシートの劣化を抑制する効果が頭打ちになるだけでなく、コスト面からも好ましくない。
【0030】
滑剤・離型剤として、脂肪族炭化水素系化合物、高級脂肪酸系化合物、高級脂肪族アルコール系化合物、脂肪酸アマライド系化合物などのアルキル系離型剤、シリコン系離型剤、フッ素系離型剤などを使用することが出来る。離型剤を使用する場合、その添加量は樹脂組成物の合計100質量部に対し1~5質量部が好ましく、1.5~4.5質量部がより好ましく、2~4質量部がさらに好ましい。添加量が1質量部以上とすることで離型効果が低くなるのを抑制し、5質量部以下とすることでシート表面にブリードアウトするのを抑制することができる。
【0031】
また、滑剤・離型剤を予め、熱可塑性樹脂にアロイしたマスターバッチなども用いることもできる。例えば、ウレタン系熱可塑性エラストマーをベースとしたマスターバッチの市販品として、「エラストランマスターV」(エフ・アイ・シー社製)が挙げられ、生産効率を考慮すると、マスターバッチを用いた方が好ましい。マスターバッチの添加量は樹脂組成物100質量部に対して、1~5質量部であることが好ましく、1.5~4.5質量部がより好ましく、2~4質量部がさらに好ましい。
【0032】
<毛状体>
毛状体(1b)とは、図1に示すように下地層(1a)の表面から毛状に伸びている部分をいう。毛状体は、下地層の表面に規則的に配列されている。ここで、規則的に配列されているとは、毛状体がランダムではない配列状態、即ち、一方向又は二方向に整然と配列されている状態を意味するものである。毛状体の根元の配列状態をもって毛状体の配列が規則的であるか否かを判断する。ある実施形態では、毛状体は所定の間隔で下地層上に位置し、毛状体の底面の位置が下地層の長手方向及び短手方向に整然と配列している。また、毛状体の配置形態は特に限定はされず、縦横に配置した碁盤目配置や千鳥配置などを選択することができる。毛状体が下地層の表面に規則的に配列されていることにより、均一でムラがなく、良触感性が発現しやすくなる。毛状体は、例えば指でなぞるなど荷重がかかることによって毛倒れが起こり、周囲の部分とは光沢、色調が異なって見えるフィンガーマークを形成し得る。また、毛状体により、スエード調の起毛シートのような触感となり得る。
【0033】
毛状体の平均高さ(h)は、100μm~1200μmであることが好ましく、200μm~900μmであることがより好ましい。平均高さを100μm以上とすることで良触感性が十分に確保でき、平均高さを1200μm以下とすることでしっとり感、やわらか感、ふんわり感などの良触感性が得られる。
毛状体が下地層に対してほぼ直立している場合は、毛状体の長さが毛状体の高さを表すことになる。一方、図2に示すように毛状体が下地層に対して傾斜している場合や、図3に示すように毛状体が巻回する部分を有する場合は、毛状体が下地層の表面から最も離間している箇所における、下地層の表面からの距離を毛状体の高さhとする。
毛状体の平均高さは、電子顕微鏡及び画像処理ソフトを用いて、樹脂シートの任意の数箇所において毛状体の高さを測定し、その測定値の算術平均値を用いることができる。
【0034】
毛状体の平均径(d)は1μm~50μmであることが好ましく、5μm~30μmであることが好ましい。毛状体の平均径を1μm以上とすることで良触感性を確保することができ、毛状体の平均径を50μm以下とすることでしっとり感、やわらか感、ふんわり感などの良触感性が得られる。毛状体の平均径は、電子顕微鏡及び画像処理ソフトを用いて、樹脂シートの数箇所から、毛状体の中間高さ(h/2)の径を測定し、その測定値の算術平均値を用いた値とする。
また、毛状体が下地層に対してほぼ直立している場合の毛状体のアスペクト比は、(毛状体の平均高さ/毛状体の平均径)として表すことができる。毛状体が下地層に対して傾斜している場合や、毛状体が巻回する部分を有する場合の毛状体のアスペクト比は、(毛状体の平均長さ/毛状体の平均径)として表すことができる。毛状体の平均長さは、電子顕微鏡及び画像処理ソフトを用いて、樹脂シートの数箇所において毛状体の長さを測定し、その測定値の算術平均値を用いることができる。いずれの場合も、毛状体のアスペクト比は、2~1200であることが好ましく、10~600であることがより好ましく、40~200であることがさらに好ましい。アスペクト比を2以上とすることで、良触感性が確保でき、アスペクト比を1200以下とすることで、しっとり感、やわらか感、ふんわり感などの良触感性が得られる。
一方、アスペクト比は、毛状体の平均底面径を基準とすることもできる。毛状体の平均底面径は10μm~150μmであることが好ましい。毛状体の平均底面径は、樹脂シートの数箇所において、隣接する毛状体の間隔を測定し、その測定値の算術平均値を用いた値とする。毛状体の底面径を基準とした場合のアスペクト比は、1.0~120であることが好ましく、3~100であることがより好ましく、15~80であることがさらに好ましい。アスペクト比を1.0以上とすることで、良触感性が確保でき、アスペクト比を120以下にすることで、しっとり感、やわらか感、ふんわり感などの良触感性が得られる。
【0035】
毛状体の平均間隔(t)は、20μm~200μmであることが好ましく、40μm~150μmであることがより好ましい。毛状体の間隔とは、毛状体の根元の中心と隣接する毛状体の根元の中心との距離を意味する。平均間隔を20μm以上とすることで、良触感性が確保され、200μm以下とすることで、しっとり感、やわらか感、ふんわり感などの良触感性が得られる。毛状体の平均間隔は、樹脂シートの数箇所において、隣接する毛状体の間隔を測定し、その測定値の算術平均値を用いた値とする。
【0036】
毛状体の形状は特に限定されないが、下地層から離間する方向に毛状に伸び、先端に近づくにつれ、漸次細くなる形状や、その先端にふくらみが形成された構成となっていてもよい。つまり、下地層から離れるにつれ、断面積が漸次小さくなった後に一旦大きくなってから終端する形状であってもよい。また、毛状体の先端部の形状が、つぼみ状又はきのこ形状であってもよい。また、毛状体は、下地層から離れる方向に延び出る基端に位置する部分と、この基端に位置する部分から延び出て一定の曲率をもって、又は漸次曲率を変化させて曲がった部分、さらには螺旋状又は渦巻状に巻かれた部分とを有していてもよい。この場合、毛状体の先端部が内側に折りたたまれている形状であってもよい。このような形状であることにより良好な触感が発現する。また、つぼみ状又はきのこ形状の部分が中空であることにより、より良好な触感が発現する。つぼみ状又は、きのこ形状を毛状先端に形成する場合、毛状体の平均径に対するつぼみ状又は、きのこ形状の幅の平均径の比が1.1倍以上であることが好ましい。つぼみ状又は、きのこ形状の高さは7μm以上であることが好ましい。毛状体の平均径、つぼみ状又は、きのこ形状の幅の平均径、高さは電子走査型顕微鏡写真より測定し、算術平均値を用いた値とする。毛状体は、熱可塑性樹脂からなる。熱可塑性樹脂としては、上記下地層で用いることができる樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
【0037】
下地層および毛状体が少なくとも部分的に架橋構造を有するとは、下地層および毛状体に含有される熱可塑性樹脂が少なくとも部分的に三次元的な架橋構造(例えば三次元網状構造)を形成していることを意味する。ある実施形態において、毛状体の少なくとも一部が架橋体となっており、別の実施形態においては毛状体の表面全体が架橋体となっており、さらに別の実施形態においては毛状体の全体(下地層との境界から先端部)が架橋体となっている。架橋体を形成する方法としては、例えば、樹脂シートを成形した後、毛状体を有する面に電子線を照射する方法や、有機過酸化物を添加し、樹脂シートの成形時または成形後に、加熱及び加湿により形成する方法が挙げられる。有機過酸化物が添加された樹脂として、市販品では、三菱ケミカル社製「リンクロン」などが挙げられる。本実施形態においては、電子線の照射により架橋体(電子線架橋体)を形成することが好ましい。
【0038】
[樹脂シート]
本実施形態において、樹脂シートの厚みとは、毛状体の平均高さと下地層の平均厚みを合わせたシート厚みをいう。シート厚みは、好ましくは115μm~1500μm、より好ましくは300~1000μmである。厚みを115μm以上とすることで良触感性が十分に確保でき、1500μm以下とすることで製造コストを抑えることができる。
【0039】
本実施形態において、「触感性」とは、樹脂シートの表面の風合い、肌触りを意味する。樹脂シート表面を触った際に心地よさを感じるかを判断し、感じる場合、しっとり、やわらか、ふんわりなどの具体的な肌触り感が良いものを良触感とする。また、良触感性は、肌触り感などの官能試験以外にも、前述したアスペクト比や、樹脂シートの動摩擦係数に対する静摩擦係数の比、接触冷温感の値、樹脂の硬度により規定することができる。
【0040】
樹脂シートの動摩擦係数に対する静摩擦係数の比は、1.0~10.0であることが好ましく、1.8~5.0であることがより好ましい。樹脂シートの動摩擦係数に対する静摩擦係数の比を1.0以上とすることで良触感性が確保できる。また、樹脂シートの動摩擦係数に対する静摩擦係数の比を10.0以下とすることでしっとり感、やわらか感、ふんわり感などの触感性を発現することができる。
また、静摩擦係数は0.2~2.0、動摩擦係数は0.2~2.0であることが好ましい。
【0041】
樹脂シートの接触冷温感は、接触時における熱移動速度q-max(J/cm・sec)を測定することができ、q-maxの値が大きい程冷たく、小さい程暖かいことを示す。このため、q-maxは0.005~0.500であることが好ましく、0.100~0.350であることがより好ましい。樹脂シートの、接触時における熱移動速度を0.005以上とすることでしっとり感、やわらか感、ふんわり感などの良触感性が確保できる。また、樹脂シートの接触時における熱移動速度を0.500以下とすることでしっとり感、やわらか感、ふんわり感などの触感性を発現することができる。
【0042】
樹脂の硬度は、デュロメータ硬さで測定することが出来る。一般的に、樹脂硬さは、エラストマーなどの軟質樹脂はショア硬度Aタイプ、PPなどの硬質樹脂はショア硬度Dタイプで区分けをする。樹脂硬さ(硬度)として、ショア硬度Aでは、硬度45~95、であることが好ましい。上記の硬度範囲の樹脂を用いることで、しっとり感、やわらか感、ふんわり感などの良触感性を発現することが出来る。
【0043】
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態に係る樹脂シートの例としては、図5に示すように、下地層(1)と基材層(3)との間に、シーラント樹脂層(2)が形成された樹脂シートである。すなわち、第二実施形態に係る樹脂シートの層構成は、上から下に向かって、毛状体及び下地層(1)、シーラント樹脂層(2)、基材層(3)である。ここで、毛状体は、第一実施形態において説明したものと同じであるので、説明を省略する。但し、毛状体の平均高さ及び下地層の平均厚みの合計で表される毛状体及び下地層の厚みは、115~900μmが好ましい。115μm以上とすることで良触感性を確保でき、900μm以下とすることで生産コストを抑えることができる。
【0044】
<基材層>
基材層は、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性樹脂が好ましい。また、積層する場合、共押出成形による積層や無延伸フィルム、二軸延伸フィルムを用いた押出ラミネート成形、ドライラミネート成形による積層がある。
【0045】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリメチレンテレフタレート、および共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを共重合したポリエステル樹脂などを用いることができる。
【0046】
ナイロン系樹脂としては、カプロラクタム、ラウロラクタム等のラクタム重合体、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-又は2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p-アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m-又はp-キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン単位と、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸単位との重縮合体、及びこれらの共重合体等を用いることができる。例えば、ナイロン6、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等があり、なかでもナイロン6、ナイロンMXD6が好適である。
【0047】
メタクリル酸エステル単量体に基づくビニル重合体であれば、アクリル系樹脂として用いることができ、その構造などは特に限定されない。メタクリル酸エステル単量体としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル及びメタクリル酸ヘキシルなどが挙げられる。また、メタクリル酸エステル単量体におけるプロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基などのアルキル基は、直鎖であってもよく、分岐していてもよい。メタクリル酸エステル樹脂は、メタクリル酸エステル単量体の単独重合体や、複数のメタクリル酸エステル単量体の共重合体であってもよく、メタクリル酸エステル以外の公知のビニル化合物であるエチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル及びアクリル酸などに由来する単量体単位を有してもよい。
【0048】
基材層には、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記の各熱可塑性樹脂と任意の割合でアロイしてあってもよい。さらに、他の添加物を含有してあってもよい。他の添加物としては、本発明の効果を阻害しない範囲で、撥水・撥油剤、顔料、染料などの着色剤、シリコンオイルやアルキルエステル系等の滑材・離型剤、ガラス繊維等の繊維状強化剤、充填剤として、タルク、クレイ、シリカなどの粒状微粒子やマイカなどの鱗片状の微粒子、スルホン酸とアルカリ金属などとの塩化合物等の低分子型帯電防止剤やポリエーテルエステルアミド等の高分子型帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、熱安定剤のような添加剤などを添加することができる。また、樹脂シート製造工程で発生したスクラップ樹脂を混合して用いることもできる。
また、本実施形態において、本発明の効果を阻害しない範囲で、基材層が部分的に架橋構造を有していてもよい。
【0049】
<シーラント樹脂層>
シーラント樹脂層は、下地層と基材層との接着性を発現させるためのものであり、樹脂成分としては、変性オレフィン系樹脂、水添スチレン系熱可塑性エラストマー等を用いることができる。
【0050】
変性オレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン-1等の炭素数2~8程度のオレフィン、それらのオレフィンとエチレン、プロピレン、ブテン-1、3-メチルブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、デセン-1等の炭素数2~20程度の他のオレフィンの共重合体や酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等のオレフィン系樹脂や、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体等のオレフィン系ゴムを、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等の不飽和カルボン酸、または、その酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等の誘導体、具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸グリシジル等でグラフト反応条件下に変性したものを用いることができる。
【0051】
なかでも、不飽和ジカルボン酸またはその無水物、特にマレイン酸またはその無水物で変性した「エチレン-プロピレン-ジエン共重合体」又はエチレン-プロピレン又はブテン-1共重合体ゴムが好適である。
【0052】
水添スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系モノマーとブタジエンやイソプレンの共重合体の水素添加物、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体)等を用いることができ、特にスチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体が好ましい。
【0053】
シーラント樹脂層の厚みは、好ましくは20~90μm、より好ましくは40~80μmである。20μm以上とすることで、下地層と基材層間で層間剥離が発生するのを抑制でき、90μm以下とすることで、生産コストを抑えることができる。
【0054】
シーラント樹脂層には、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記の各熱可塑性樹脂を任意の割合でアロイしてあってもよい。さらに、他の添加物を含有してあってもよい。他の添加物としては、本発明の効果を阻害しない範囲で、撥水剤、撥油剤、顔料、染料などの着色剤、シリコンオイルやアルキルエステル系等の滑材・離型剤、ガラス繊維等の繊維状強化剤、充填剤として、タルク、クレイ、シリカなどの粒状微粒子やマイカなどの鱗片状の微粒子、スルホン酸とアルカリ金属などとの塩化合物等の低分子型帯電防止剤やポリエーテルエステルアミド等の高分子型帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、熱安定剤のような添加剤などを添加することができる。また、本実施形態において、本発明の効果を阻害しない範囲で、シーラント樹脂層が部分的に架橋構造を有していてもよい。
【0055】
[第三実施形態]
本発明の第三実施形態に係る樹脂シートは、図6に示すように、第二実施形態で示したシーラント樹脂層(2)を用いずに、毛状体及び下地層(1)と基材層(3)を直接積層したものである。すなわち、第三実施形態に係る樹脂シートの層構成は、上から下に向かって、毛状体及び下地層(1)/基材層(3)であり、第二実施形態に係る熱可塑性樹脂シートからシーラント樹脂層を除いた層構成を有している。ここで、毛状体及び下地層は、第一実施形態及び第二実施形態における層と同じであるので、説明を省略する。一方、本実施形態における基材層(3)は、下地層と十分な接着性を備えたものとするのが好ましい。
【0056】
また、第三実施形態に係る樹脂シートにおいて、基材層としては、下地層との接着性に優れる熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。例えば、下地層がウレタン系熱可塑性エラストマーの場合、ABS樹脂を用いることが出来、下地層がフッ素系樹脂の場合、アクリル系樹脂を用いることが出来、下地層がオレフィン系樹脂の場合、水添スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることもできる。スチレン系樹脂と水添スチレン系熱可塑性エラストマーを併用するときは、スチレン系樹脂が90~95質量部に対して、5~10質量部の水添スチレン系熱可塑性エラストマーを添加することが好ましい。この場合、水添スチレン系熱可塑性エラストマーの添加量が5質量部以上とすることで下地層との接着性が十分となり、層間剥離の発生を抑制でき、10質量部以下とすることで生産コストを抑えることができる。
【0057】
基材層には、第二実施形態と同じように、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記の各熱可塑性樹脂を任意の割合でアロイしてあってもよい。さらに、他の添加物を含有してあってもよい。他の添加物としては、本発明の効果を阻害しない範囲で、撥水剤、撥油剤、顔料、染料などの着色剤、シリコンオイルやアルキルエステル系等の滑材・離型剤、ガラス繊維等の繊維状強化剤、充填剤として、タルク、クレイ、シリカなどの粒状微粒子やマイカなどの鱗片状の微粒子、スルホン酸とアルカリ金属などとの塩化合物等の低分子型帯電防止剤やポリエーテルエステルアミド等の高分子型帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、熱安定剤のような添加剤などを添加することができる。また、本実施形態において、本発明の効果を阻害しない範囲で、基材層が部分的に架橋構造を有していてもよい。
【0058】
[樹脂シートの製造]
本発明に係る樹脂シートの製造方法は、限定されず、如何なる方法によってもよいが、典型的には、原料樹脂を溶融押出し、得られた押出し樹脂シートの少なくとも一方の面に規則的に配列された毛状体を付与する工程を含んでなる。
【0059】
単層シート又は多層樹脂シートの作製に際しては、任意の樹脂シート成形方法を使用できる。例えば、単層の場合は1台の単軸押出機を、複層の場合は複数台の単軸押出機を用いて、各々の原料樹脂を溶融押出し、Tダイによって樹脂シートを得る方法が挙げられる。多層の場合は、フィードブロックやマルチマニホールドダイを使用することが出来る。尚、本発明の樹脂シートの各実施形態の層構成は、基本的に前述した通りであるが、他に、例えば、本発明の樹脂シートや成形容器の製造工程で発生したスクラップ原料を、物性等の劣化が見られない限り、基材層へ添加してもよいし、更なる層として積層してもよい。
【0060】
毛状体を付与する方法は、特に制限はなく、当業者に知られている任意の方法を使用することができる。例えば、押出成形方式を用いて製造する方法、ロール・ツー・ロール方式を用いて製造する方法、フォトリソグラフィー方式を用いて製造する方法、熱プレス方式を用いて製造する方法、パターンロールとUV硬化樹脂とを用いて製造する方法、3Dプリンターを用いて製造する方法、毛状体を樹脂層に埋め込んだ後に重合反応により共有結合させる方法等である。
【0061】
例えば、押出成形方式を用いる場合、Tダイ法により、樹脂シートを押し出し、この樹脂シートの表面に毛状体形状を付与するように、凹凸加工が成された転写ロールと、タッチロールでキャスティングすることにより、本発明に係る樹脂シートを製造することができる。
凹凸加工が成された転写ロールとして、レーザー彫刻法や電鋳法、エッチング法、ミル彫刻法などによりロールの表面に微細な凹凸が規則的に施されたものを用いることができる。ここで、規則的とは、凹凸がランダムではない配列状態、即ち、一方向又は二方向に整然と配列した状態を意味するものである。ある実施形態における凹凸の配置として、縦横に配置した碁盤目配置や千鳥配置などを選択することができる。凹凸部の形状としては、例えば、凹部の形状であれば、錐形(円錐、四角錐、三角錐、六角錐など)、半円形、矩形(四角柱)などが挙げられる。そのサイズとしては、凹部の開口径、凹部深さ、凹部形状の間隔が数μmから数百μmである。転写ロールの凹部の間隔を調節することで毛状体の間隔を、転写ロールの凹部深さを調節することで毛状体高さを調節することができ、それにより触感を調節することもできる。
また、転写ロール表面に高アスペクト比の凹凸加工することが好ましい。例えば、転写ロール表面に凹部形状を加工する場合のアスペクト比(凹部深さ/凹部開口径)は1.0~9.0であることが好ましい。転写ロール表面に高アスペクト比の凹凸加工をするには、レーザー彫刻法または、電鋳法が、エッチング法やブラスト法、ミル彫刻法等に比べて、深さ方向に精密な加工をする場合に適するため、特に好適に用いられる。
転写ロールの材質としては、例えば金属、セラミック等を用いることができる。一方、タッチロールとしては、様々な材質のものを用いることができるが、例えばシリコン系ゴム、NBR系ゴム、EPT系ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム製のロールを用いることができる。ある実施形態において、ゴム硬度(JIS K 6253)40~100のタッチロールを用いることができる。また、タッチロールの表面に、テフロン層が形成されていてもよい。
上記の転写ロール及びタッチロールのロールセットを用いることで、本実施形態の樹脂シートを製造することができる。
ある実施形態において、転写ロールの温度を熱可塑性樹脂の結晶融解温度、ガラス転移点または融点の付近の温度(例えば、直鎖状中密度ポリエチレンを用いる場合は90~150℃)に調節し、転写ロールとタッチロールとのピンチ圧を30~150Kgf/cmとしてキャスティングすることで、本実施形態の樹脂シートを製造することができる。キャスティングした樹脂シートは、ピンチロール等を用いて0.5~30m/分のライン速度で引き取られる。
また、上記実施形態を具体的に示しているが、これらに限定されるものではない。
【0062】
次に、加熱延伸成形後においても毛状体を保持し、所望の触感性を維持するために、毛状体及び下地層の少なくとも一部が架橋体となるように架橋処理を施す。この架橋処理は、樹脂シートの毛状体及び下地層が存在しているシート表面に対して電子線を照射することが好ましい。
ポリオレフィンは、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ビニルアルコール、ポリアミド、ポリウレタンなどと同様に、電子線照射により分子鎖架橋が優先的に進行する架橋型高分子であり、なかでも直鎖状低密度ポリエチレンや直鎖状中密度ポリエチレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンが架橋しやすく、特に直鎖状低密度ポリエチレンが最も架橋しやすい。したがって、ポリオレフィン系樹脂は、架橋体を形成するのに適しており、中でもポリエチレンやポリプロピレンが好ましい。
【0063】
樹脂組成物に対する電子線照射の条件は、加速電圧が110~250kV、線量が120~350kGyであることが好ましい。この条件範囲で電子線を樹脂シートの表面に照射することで、毛状体及び下地層が少なくとも部分的に架橋構造を有することとなり、加熱延伸成形後でも毛状体を維持する樹脂シートを製造することができる。また、上記の条件範囲であれば、単層の樹脂シートへ毛状体が形成されている面側から電子線を照射しても、毛状体が形成されている面とは反対の面への電子線照射量は少量になるため、物性等に影響する虞はない。また、上記の条件範囲であれば、複層の樹脂シートへ毛状体が形成されている面側から電子線を照射しても、シーラント樹脂層及び/又は基材層への電子線照射量は少量になるため、層間接着性等に影響する虞はない。これに対して、この条件よりも弱い照射条件では、毛状体を、その形状が加熱延伸成形後もほぼ維持される程度まで架橋させることができない一方、この条件よりも強い照射条件では、樹脂シートの良触感性が低下する虞があり、加熱延伸時にはシートが破断する虞がある。ここで、毛状体及び下地層の架橋度合いは、特に限定されるものではないが、加熱延伸成形後に肌触り感が十分に維持される程度に架橋されていることが好ましい。
【0064】
ここで、架橋処理は、特に限定されるものではないが、例えば樹脂シートをシート表面温度を60℃~220℃で20秒間~480秒間加熱し、1.05~2.50倍の延伸倍率で延伸した場合に、延伸前後の毛状体の平均高さ、または毛状体の平均長さが十分に維持される程度に行われる。毛状体の平均高さ、または毛状体の平均長さの低下率が30%未満であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。上記延伸倍率は、成形品において最も延伸される部分の延伸倍率とする。
また、毛状体の平均高さ、または毛状体の平均長さの低下率は下記の式Iで算出できる。

毛状体の平均高さ、または毛状体の平均長さの低下率=(加熱延伸成形前の毛状体の平均高さ、または毛状体の平均長さ-成形品最延伸部の毛状体の平均高さ、または毛状体の平均長さ)/(加熱延伸成形前の毛状体の平均高さ、または毛状体の平均長さ)×100・・・(I)
【0065】
[成形品]
本発明の成形品は、本発明の樹脂シートを用いた成形品である。本発明の樹脂シートは、一般的な成形への対応が可能であり、成形方法としては、インサート成形、インモールド成形の他にも、一般的な真空成形、圧空成形やこれらの応用として、樹脂シートを真空状態化で加熱軟化させ、大気圧下に開放することで既存の成形品表面へオーバーレイ(成形)する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、成形前にシートを加熱軟化させる方法として非接触加熱である赤外線ヒーター等による輻射加熱等、公知のシート加熱方法を適応することができる。ある実施形態の真空圧空成形において、例えば樹脂シートは表面温度が60℃~220℃で、20秒~480秒間加熱してから既存の成形品表面へと成形され、表面の形状により1.05~2.50倍に延伸され得る。
【0066】
[物品]
本発明にかかる毛状体を表面に付与した樹脂シートは、前記に示した良触感性が必要とされる用途に適用できる。例えば、本発明の樹脂シートは、自動車内装部材、電子機器、電子機器外装材、化粧品容器又は容器部材、文房具部材、生活用品部材として適用できる。
【0067】
自動車内装材としては、自動車社内で手の触れる部分として、ハンドル、ダッシュボード、レバー、スイッチなどが挙げられる。例えば、公知のインストルメントパネル、ピラーに、上記した樹脂シートを貼り合わせた内装材を挙げることができる。樹脂シートを貼り合わせることで、良触感性を付与した内装材とすることができる。貼り合せる樹脂シートの材質としては、耐候性、耐薬品性を考慮し、オレフィン系樹脂、塩ビ系樹脂、ウレタン系エラストマーが好ましい。樹脂シートと内装材とを貼り合せる方法は、特に限定されない。
【0068】
電子機器外装材としては、スマートフォン筐体、スマートフォンケース、ミュージックプレーヤーケース、ゲーム機筐体、デジタルカメラ筐体、電子手帳筐体、電卓筐体、タブレット筐体、モバイルパソコン筐体、キーボード、マウスなどが挙げられる。例えば、公知のゲーム機器基材に、本発明樹脂シートを貼り合せたゲーム機器部品を挙げることができる。樹脂シートを貼り合せることで、良触感性を付与したゲーム機器部品ゲーム機器部品とすることができる。貼り合せる樹脂シートの材質としては、オレフィン系樹脂、ウレタン系エラストマーが好ましい。樹脂シートとゲーム機器部品を貼り合せる方法は、特に限定されない。
【0069】
化粧品容器部材としては、フェイスクリーム、パッククリーム、ファンデーション、アイシャドウの容器が挙げられ、例えば、公知のファンデーション用容器の蓋部材に、本発明樹脂シートを貼り合せた化粧品容器を挙げることができる。樹脂シートを貼り合せることで、良触感性を付与した化粧品容器とすることができる。貼り合せる樹脂シートの材質としては、オレフィン系樹脂、ウレタン系エラストマーが好ましい。樹脂シートと貼り合せる方法は、特に限定されない。
【0070】
文房具部材としては、ブックカバー、手帳カバー、ペンケースカバーなどが挙げられ、例えば、公知のブックカバーを本発明樹脂シートを用いて作製し、良触感性、防水性を付与したブックカバーとすることができる。シートの材質としては、オレフィン系樹脂、ウレタン系エラストマーが好ましい。樹脂シートを用いて作製する方法は、特に限定されない。
【0071】
照明機器部材としては、室内用、車内用の照明機器が挙げられ、例えば、公知のLED照明装置のカバー部材に、本発明樹脂シートを貼り合せた照明装置を挙げることができる。樹脂シートを貼り合せることで、良触感性、光の拡散性を付与したLED照明装置とすることができる。貼り合せる樹脂シートの材質としては、オレフィン系樹脂、フッ素系樹脂が好ましい。樹脂シートと貼り合せる方法は、特に限定されない。
【0072】
生活用品部材としては、トイレ用品、室内用マット、テーブル用シートなどが挙げられ、例えば、トイレ装置の便座部材に、本発明樹脂シートを貼り合せたトイレ装置を挙げることができる。樹脂シートを貼り合せることで、良触感性を付与した便座のトイレ装置とすることができる。貼り合せる樹脂シートの材質としては、オレフィン系樹脂、塩ビ樹脂、フッ素系樹脂が好ましい。樹脂シートと貼り合せる方法は、特に限定されない。
【0073】
さらには、毛状体の表面に、一般的な印刷方法(オフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、箔押しなど)で、文字、絵柄を印刷した毛状体シートを作製し、上記の用途に適用することが出来る。印刷する樹脂シートの材質としては、特に限定されないが、印刷に使用するインキ剤との印刷性を考慮することが好ましい。
【0074】
また、本発明樹脂シートは、文字、絵柄などが印刷された印刷物(紙、金属薄膜など)、不織布などとラミネート成形(ドライラミネート成形、押出ラミネート成形)した積層体を作製し、例えば、名刺の印刷面にラミネート成形し、触感性のある名刺を作製することができる。ラミネートする樹脂シートの材質は特に限定はされない。
【実施例
【0075】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は実施例等の内容に何ら限定されるものではない。
【0076】
実施例等で用いた各種原料は以下の通りである。
(1)毛状体及び下地層
・(A-1)ランダムPP 「PM822V」(サンアロマー社製)
・(A-2)ブロックPP 「PM854X」(サンアロマー社製)
・(B-1)直鎖状中密度PE(C4) 「ネオゼックス 45200」(プライムポリマー社製)
・(B-2)直鎖状低密度PE(C6) 「ウルトゼックス 20200J」(プライムポリマー社製)
・(C)スチレン系熱可塑性エラストマー 「SEポリマーAC15」(デンカ社製)
・(D)PVC 「BFV7070N」(リケンテクノス社製)
・(E)PVDF 「KYNAR FLEX 2800」(アルケマ社製)
・(F-1)TPU(ウレタン系エラストマー)「ET880:ポリエーテル系」(BASF社製)
・(F-2)TPU(ウレタン系エラストマー)「ET680:ポリエステル系」(BASF社製)
・(G)着色剤 「PE-M-SAC GW1060 ホワイト」(大日精化社製)
・(H)着色剤 「PE-M-MD1697 レッド」(大日精化社製)
・(I)着色剤 「PE-M-MC6164 エロー」(大日精化社製)
・(J)着色剤 「PEX 1AG057 PEARL」(東京インキ社製)
・(K)着色剤 「PEX 496 SILVER AL」(東京インキ社製)
・(L-1)着色剤 「エラストランマスターカラーブラック590M50」(エフ・シー・アイ社製)
・(L-2)着色剤 「エラストランマスターカラーホワイト880M50」(エフ・シー・アイ社製)
・(L-3)耐候性マスター「耐候マスター UNS(ポリエステル系)」(エフ・シー・アイ社製)
・(L-4)耐候性マスター「耐候マスター UNE(ポリエーテル系)」(エフ・シー・アイ社製)
・(M)撥水剤 「クリンベルCB50―PP」(富士ケミカル社製)
・(N)帯電防止剤 「ペレスタット230」(三洋化成社製)
・(O)抗菌剤 「バクテキラーBM102VT」(富士ケミカル社製)
・(P)離型剤 「エラストランマスターV」(エフ・シー・アイ社製)
・ (Q) 紫外線吸収剤 トリアジン系紫外線吸収剤「TINUVIN 1600」(BASF社製)
(2)シーラント樹脂層
・(R-1)水添スチレン系熱可塑性エラストマー 「タフテックM1943」(旭化成ケミカルズ社製)
・(S-1)変性オレフィン系重合体樹脂 「モディックF502」(三菱化学社製)
・(S-2)変性オレフィン系重合体樹脂 「アドマー SE810」(三井化学社製)
・(R-2)水添スチレン系熱可塑性エラストマー「タフテックP2000」(旭化成ケミカルズ社製)
(3)基材層
・(T)SBC 「クリアレン 730L」(デンカ社製)
・(U)GPPS 「G100C」(東洋スチレン社製)
・(V)PETフィルム 「ルミラー」(東レ社製)
・(W)ナイロン6フィルム 「ハーデン」(東洋紡社製)
・(X)PMMA 「HBS000」(三菱化学社製)
・(Y)ABS 「GR-T-61A」(デンカ社製)
【0077】
実施例および比較例で作製した樹脂シートとその樹脂シートを真空成形した成形品についての各種特性の評価方法は以下の通りである。
【0078】
(1)毛状体の平均高さ、毛状体の平均径、毛状体の平均間隔、下地層の平均厚み、加熱延伸成形後の毛状体の平均高さの低下率
樹脂シートの毛状体の高さ(h)、毛状体の径(d)、毛状体の間隔(t)、下地層の厚み、加熱延伸成形後の毛状体の高さを、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM JSM-7001F 日本電子社製)を用いて測定した。なお、測定した試料は、ミクロトームを用いて樹脂シートの任意の3箇所より断面切片を切り出し用いた。毛状体の平均高さは、それぞれの試料について毛状体10個の高さを測定し、その30測定値の算術平均値を用いた。毛状体の平均径については、それぞれの試料について10個の毛状体の中間高さ(h/2)における径を測定し、その30測定値の算術平均値を用いた。毛状体の平均間隔については、それぞれの試料について毛状体の根元の中心と隣接する毛状体の根元の中心との距離を10箇所測定し、その30測定値の算術平均値を用いた。下地層の平均厚みについては、それぞれの試料について毛状体の根元から他方の層界面までの厚みを10箇所測定し、その30測定値の算術平均値を用いた。
加熱延伸成形後の毛状体の平均高さの低下率は、真空成形した成形品の最延伸部の任意の3箇所より断面切片を切り出し、その毛状体の平均高さは、それぞれの試料について毛状体10個の高さを測定し、その30測定値の算術平均値を用いた。低下率は上記式Iを用いて算出した。
【0079】
(2)良触感性官能評価
良触感性は、男性15人、女性15人の計30人に樹脂シートを触ってもらう官能評価を実施した。樹脂シート表面を触った際に心地よさを感じるかを「○」、「×」判断し、「○」と判断した場合、しっとり、やわらか、ふんわりなどの具体的な肌触り感で評価した。このうち、8割以上の同じ肌触り感を評価した場合、その肌触り感とした。また、樹脂シートを用いて真空成形した成形品の表面においても、同じ肌触り感が維持されているかを評価した。
【0080】
(3)動摩擦係数に対する静摩擦係数の比
静・摩擦測定機「TL201Ts (トリニティーラボ社製)」を用い、そのテーブル上に樹脂シートを、毛状体形状等を付与した面を上にして貼り付けた。接触子はウレタン製(デュロメータ硬度:32±2)を用いて、100gの荷重をかけながら、10mm/秒の速度でテーブルを動かし、静摩擦係数及び動摩擦係数を測定した。
【0081】
(4)接触冷温感(熱移動速度:q-max)測定
フィンガーロボットサーモラボ(カトーテック社製)を用いて、20℃設定の試料台に樹脂シートサンプルを5分置き、樹脂シートの温度調整後、30℃の接触温度センサー(1mm×1.5mm)を接触させ、0.2秒間での熱移動速度(q-max)を測定した。
【0082】
(5)樹脂の硬度
樹脂の硬度は、JISK7215に準拠し、厚み6mm、幅25mm、長さ50mmの試料を熱プレス法により作製し、タイプAデュロメータを使用して硬度を測定した。
【0083】
(6)反射光の拡散性の測定
自動変角計(GP-200:村上色彩研究所性)を用いて、反射測定モード、光線入射角:45°、受光角度:-90°~90°、SENSITIVITY:150、HIGH VOLTON:500、フィルター:ND10使用、光束絞り:10.5mm(VS-13.0)、受光絞り:9.1mm(VS-34.0)及び変角間隔0.1度の条件で測定し得られる反射ピークの立ち上がりの開始角度より立下りの終了角度までの角度幅(度)及びピーク高さを求める。この結果から、反射強度が1%以上である角度幅を算出し、その角度幅を拡散性のある角度幅とした。
【0084】
(7)接触角
接触角は、樹脂シートについて、自動接触角計DM-501(協和界面科学社製)を用いて測定した。また、試験液は精製水を用い、滴下量は6μLとした。接触角が120°以上であると撥液性が高く、液体の付着を防止できると判定した。
【0085】
(8)表面抵抗率
JISK6911に準拠し、雰囲気温度23℃、雰囲気湿度50%R.H.、印加電圧1000Vで樹脂シート表面の表面抵抗値を測定した。
【0086】
(9)抗菌性評価
JISK2801に準拠し、フィルム密着法により実施した。5cm×5cmの厚み1mm以内のフィルム表面に各菌液を滴下し、ポリエチレンフィルムで被覆し35℃で保存後、生菌数を測定した。
【0087】
(10)耐候性
耐候性試験を、「キセノンアークランプ」(東洋精機社製)を用いて行った。樹脂シートについて、日本電色工業社製の測色色差計「ZE-2000」を使用して色差測定を行なった後、試験機に投入し、下記条件で耐久試験を実施した。
UV照射強度:50W/m
湿度:51%
ブラックパネル温度:62℃
時間:100時間
照射面:毛状体形成面
試験後、フィルムの色差測定を再び行ない、試験前後の耐黄変性の指標であるΔE値を算出した。ΔE値が1.5以下であれば良好と判断した。
【0088】
(11-1)両面真空成形
毛状体を付与した他方の面にアクリル系粘着フィルム(MF50、G25:日栄加工社製)をラミネートした樹脂シートを作製した。両面真空成形機(NGF-0709-S型:布施真空社製)で樹脂シートを真空雰囲気下で加熱し、その後、大気圧雰囲気下で準備したテーブル部材の表面へ真空圧空成形することにより成形品を作製した。シートの表面温度80℃~220℃の範囲でシートを40秒間~300秒間で加熱し、テーブル部材の側面部では、1.6倍に延伸された。
(11-2)真空成形
真空成形機(浅野研究所社製)で樹脂シートを真空雰囲気下で加熱し、その後、雑貨入れ容器型に作製した金型より真空成形することにより成形品を作製した。シートの表面温度80℃~220℃の範囲でシートを40秒間~300秒間で加熱し、容器型の成形品側面部では、1.75倍に延伸された。
【0089】
[実施例1、2、7、10~12]
1台の65mm単軸押出機を使用し、Tダイ法により、樹脂シートを押し出し、この樹脂シートの表面に毛状体形状を付与するように、60℃~180℃に調節され、電鋳法で凹凸加工が成された転写ロールと、10℃~90℃に調節されたシリコン系ゴム製のタッチロールでキャスティングすることにより、一方の面が表3に示す表面形状を有し、表1に示す組成及び厚みの単層の樹脂シートを得た。
【0090】
得られた樹脂シートを、電子線照射装置(岩崎電気社製)を用いて、加速電圧:200kV、線量:250kGyの照射条件で電子線照射し、毛状体及び下地層の架橋処理を実施した。電子線は必要に応じ、繰り返し照射された。
電子線照射前後での樹脂シートの破断点伸び率を測定したところ、電子線照射前の破断点伸び率は500%であったが、電子線照射後の破断点伸び率は260%であった。なお、破断点伸び率は樹脂シートの押出方向に打ち抜いたJIS2号ダンベルを5本作製し、23±1℃、相対湿度50±2%の条件下、引張速度10mm/分で引張した際に破断するまでの伸び率を算術平均した値である。
【0091】
[実施例3]
3台の40mm単軸押出機及びフィードブロックを使用し、Tダイ法により、3層の樹脂シートを押し出し、この樹脂シートの表面に毛状体形状を付与するように、電鋳法で凹凸加工が成された転写ロールと、シリコン系ゴム製のタッチロールでキャスティングすることにより、一方の面が表3に示す表面形状を有し、各層が表1に示す組成及び厚みの3層の樹脂シートを得た。
【0092】
[実施例4、13~17]
凹凸形状のサイズが異なる転写ロールを用いた以外は、実施例3と同様にして、一方の面が表3に示す表面形状を有し、各層が表1に示す組成及び厚みの3層の樹脂シートを得た。
【0093】
[実施例5]
樹脂シートの表面に毛状体形状を付与するように、電鋳法で凹凸加工が成された300mm角の金型を作成し、電熱プレス機を用いて、予め作成しておいた樹脂シートを熱プレスすることにより、一方の面が表3に示す表面形状を有し、表1に示す組成及び厚みの樹脂シートを得た。
【0094】
[実施例6]
2台の40mm単軸押出機及びフィードブロックを使用し、Tダイ法により、2層の樹脂シートを押し出し、この樹脂シートの表面に毛状体形状を付与するように、電鋳法で凹凸加工が成された転写ロールと、シリコン系ゴム製のタッチロールでキャスティングすることにより、一方の面が表3に示す表面形状を有し、各層が表1に示す組成及び厚みの2層の樹脂シートを得た。
【0095】
[実施例8]
押出ラミネート成形法により、3層の樹脂シートを得、この樹脂シートの表面に毛状体形状を付与するように、電鋳法で凹凸加工が成された転写ロールと、シリコン系ゴム製のタッチロールでキャスティングすることにより、一方の面が表3に示す表面形状を有し、各層が表1に示す組成及び厚みの3層の樹脂シートを得た。
【0096】
[実施例9]
凹凸形状のサイズが異なる転写ロールを用いた以外は、実施例8と同様にして、一方の面が表3に示す表面形状を有し、各層が表1に示す組成及び厚みの3層の樹脂シートを得た。
【0097】
[比較例1]
樹脂シートの表面にシボ形状を付与するように、ブラスト法で凹凸加工が成された転写ロールを用いた以外は、実施例6と同様にして、一方の面が、Rz(十点平均粗さ)が55μmのシボ状を有し、表2に示す組成及び厚みの2層の樹脂シートを得た。
【0098】
[比較例2]
樹脂シートの表面に釣鐘状の凸形状を付与するように、エッチング法で凹凸加工が成された転写ロールを用いた以外は、実施例3と同様にして、一方の面が表3に示す表面形状を有し、各層が表2に示す組成及び厚みの3層の樹脂シートを得た。
【0099】
[比較例3]
樹脂シートの表面に四角錐状の凹形状を付与するように、電鋳法で凹凸加工が成された転写ロールを用いた以外は、実施例1と同様にして、一方の面が表3に示す表面形状を有し、表2に示す組成及び厚みの単層の樹脂シートを得た。
【0100】
[比較例4]
転写ロールに代えて凹凸加工が成されていないロールを用いた以外は、実施例1と同様にして、平滑状の両表面を有し、表2に示す組成、厚みの単層の樹脂シートを得た。
【0101】
[比較例5]
樹脂シートの表面に六角錐状の凸形状を付与するように、電鋳法で凹凸加工が成された転写ロールを用いた以外は、実施例3と同様にして、一方の面が表3に示す表面形状を有し、各層が表2に示す組成及び厚みの3層の樹脂シートを得た。
【0102】
[比較例6]
実施例2と同様の転写ロールを用い、実施例3と同様の3層シートとし、一方の面が表3に示す表面形状を有し、表2に示す組成及び厚みの樹脂シートを得た。また、電子線照射の処理を実施していない。
【0103】
各実施例、比較例で得られた樹脂シート、及びそれを真空成形した成形品を用いて、各種特性について評価試験を実施し、結果を表3に示した。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
表3に示した結果から以下のことが明らかになった。
実施例1~17の全ての樹脂シート、真空成形した成形品において、良触感性に関する評価基準を満足する結果が得られた。その他、拡散性、動摩擦係数に対する静摩擦係数、熱移動速度、接触角においても満足する結果が得られた。また、実施例11では帯電防止性を示し、実施例12では、抗菌性を示し、実施例15、17では耐候性を示す結果が得られた。これに対して、比較例1~6の樹脂シート、真空成形した成形品では、良触感性に関する評価基準を満足する結果が得られなかった。
【0108】
また、実施例(1~17)で得られた樹脂シートの形状について、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM、日本電子株式会社JSM-7001F型)を用いて以下の条件で観察した。
走査電子顕微鏡像から、毛状体同士が絡合することなく一定方向に伸びていることが観察された。また、毛状体は下地層から離間する方向に毛状に伸び、その先端にふくらみが形成された構成となっていた。つまり、毛状体の形状は、下地層から離れるにつれ、断面積が漸次小さくなった後に一旦大きくなってから終端する形状であった。また、毛状体の先端部の形状は、つぼみ状又はきのこ形状であり、つぼみ状又はきのこ形状の部分が一部中空となっていることが観察された。更には毛状体が下地層に対して傾斜している形状や、図3に示すように毛状体が巻回する部分を有する形状も観察された。このような形状を有することにより、より良好な触感が発現していることが推察された。
【0109】
以上、様々な実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0110】
1 毛状体及び下地層
1a 下地層
1b 毛状体
d 毛状体径
h 毛状体の高さ
t 毛状体の間隔
2 シーラント樹脂層
3 基材層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8