(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】コーティングされたグレージング
(51)【国際特許分類】
C03C 17/34 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
C03C17/34 Z
(21)【出願番号】P 2019543023
(86)(22)【出願日】2018-02-09
(86)【国際出願番号】 GB2018050371
(87)【国際公開番号】W WO2018146487
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-02-05
(32)【優先日】2017-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100204401
【氏名又は名称】田中 睦美
(72)【発明者】
【氏名】マーク アンソニー ファーンワース
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー ロバート ニコル
(72)【発明者】
【氏名】ポール アンドリュー スキナー
(72)【発明者】
【氏名】ポール デビッド ワレン
(72)【発明者】
【氏名】アレックス ジョセフ アボット
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/002394(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/001661(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/124951(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/056240(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/166527(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/150820(WO,A1)
【文献】国際公開第03/080530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/00-17/44
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされたグレージングであって、少なくとも以下の層:
透明ガラス基板と、
金属の酸化物をベースとする層、および/またはメタロイドの酸化物をベースとする層と、
さらなる層と、を順に備え、
金属の酸化物をベースとする前記層、またはメタロイドの酸化物をベースとする前記層のいずれかが、前記透明ガラス基板に隣接しており、
前記透明ガラス基板に隣接している前記層が、表面のコーティング前に、ISO25178-2:2012に従って試験したときに、少なくとも4.0nmの表面の算術平均高さ値Saを有する前記表面を備え、
前記コーティングされたグレージングが、ASTM D1003-13に従って試験したときに、少なくとも0.47%の平均ヘイズ値を示し、
金属の酸化物をベースとする前記層、およびメタロイドの酸化物をベースとする前記層が、化学蒸着層である、コーティングされたグレージング。
【請求項2】
金属の酸化物をベースとする前記層が、SnO
2、TiO
2、または酸化アルミニウムをベースとする
層であり、メタロイドの酸化物をベースとする前記層が、SiO
2または酸窒化ケイ素をベースとする
層である、請求項1に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項3】
金属の酸化物をベースとする前記層とメタロイドの酸化物をベースとする前記層との両方が存在し、前記透明ガラス基板が、金属の酸化物をベースとする前記層に隣接しており、メタロイドの酸化物をベースとする前記層が、前記さらなる層に隣接している、請求項1または請求項2に記載のコーティングされたグレージング。
【請求項4】
前記透明ガラス基板に隣接している前記層の少なくとも一部分が、少なくとも35n
mの厚さを有する、請求項1~3のいずれかに記載のコーティングされたグレージング。
【請求項5】
前記さらなる層が、透明導電性酸化物(TCO)をベースとする層であり、前記TCOが、フッ素ドープ酸化錫(SnO
2:F)、アルミニウム、ガリウム、またはホウ素でドープされた酸化亜鉛(ZnO:Al、ZnO:Ga、ZnO:B)、錫でドープされた酸化インジウム(ITO)、錫酸カドミウム、ITO:ZnO、ITO:Ti、In
2O
3、In
2O
3-ZnO(IZO)、In
2O
3:Ti、In
2O
3:Mo、In
2O
3:Ga、In
2O
3:W、In
2O
3:Zr、In
2O
3:Nb、In
2-2xM
xSn
xO
3(式中、MがZnまたはCuである)、ZnO:F、Zn
0.9Mg
0.1O:Ga、および(Zn,Mg)O:P、ITO:Fe、SnO
2:Co、In
2O
3:Ni、In
2O
3:(Sn,Ni)、ZnO:Mn、およびZnO:Coのうちの1つ以上で
ある、請求項1~4のいずれかに記載のコーティングされたグレージング。
【請求項6】
前記透明ガラス基板に隣接している前記層が、前記表面のコーティング前に、少なくとも4.5n
mの表面の算術平均高さ値Saを有する表面を備える、請求項1~5のいずれかに記載のコーティングされたグレージング。
【請求項7】
前記コーティングされたグレージングが、最外層を備え、前記最外層が、少なくとも12.5n
mの表面の算術平均高さ値Saを有す
る、表面を備える、請求項1~6のいずれかに記載のコーティングされたグレージング。
【請求項8】
前記コーティングされたグレージングが、ASTM D1003-13に従って試験したときに、少なくとも0.5
%の平均ヘイズ値を示す、請求項1~7のいずれかに記載のコーティングされたグレージング。
【請求項9】
前記コーティングされたグレージングが、少なくとも以下の層:
透明ガラス基板と、
SnO
2をベースとする層である、金属の酸化物をベースとする層と、
SiO
2をベースとする層である、メタロイドの酸化物をベースとする層と、
フッ素ドープ酸化錫(SnO
2:F)をベースとする層であるさらなる層と、を順に備え
、
前記透明ガラス基板に隣接している前記層が、表面のコーティング前に、ISO25178-2:2012に従って試験したときに、少なくとも4.5nmの表面の算術平均高さ値Saを有する前記表面を備え、
前記コーティングされたグレージングが、ASTM D1003-13に従って試験したときに、少なくとも0.50%の平均ヘイズ値を示す、請求項1~8のいずれかに記載のコーティングされたグレージング。
【請求項10】
以下のステップ:
a)透明ガラス基板を設けるステップと、
b)前記透明ガラス基板の表面上に直接的または間接的に少なくとも以下の層:
i)金属の酸化物をベースとする層および/またはメタロイドの酸化物をベースとする層、ならびに
ii)さらなる層、を順に堆積させるステップと、を順に含み、
ステップb)i)が、化学蒸着(CVD)を用いて行わ
れる、請求項1~9のいずれかに記載のコーティングされたグレージングの製造方法。
【請求項11】
ステップb)i)が、前記透明ガラス基板が少なくとも690
℃の温度であるときに行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップb)i)における金属の酸化物をベースとする前記層の前記堆積が、前記透明ガラス基板が少なくとも690
℃の温度であるときに行われるが、最大790
℃の温度であるときに行われる、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、ステップb)ii)に続いて、前記コーティングされたグレージングを曲げることをさらに含む、請求項10~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
小売店頭グレージング、ショールームグレージング、または冷蔵グレージングとしての、請求項1~9のいずれかに記載のコーティングされたグレージングの使用。
【請求項15】
請求項1~9のいずれかに記載のコーティングされたグレージング用の中間品であって:
透明ガラス基板と、
金属の酸化物をベースとする、またはメタロイドの酸化物をベースとする、ベース層と、のみからなり、
前記ベース層が、ISO25178-2:2012に従って試験したときに、少なくとも4.0nmの表面の算術平均高さ値Saを有する表面を備え、
前記ベース層が、化学蒸着層である、中間品。
【請求項16】
コーティングされたグレージングであって、少なくとも以下の層:
透明ガラス基板と、
金属の酸化物をベースとする層および/またはメタロイドの酸化物をベースとする層と、
さらなる層と、を順に備え、
金属の酸化物をベースとする前記層またはメタロイドの酸化物をベースとする前記層のいずれかが、前記透明ガラス基板に隣接しており、
前記コーティングされたグレージングが、最外層を備え、前記最外層が、ISO25178-2:2012に従って試験したときに、少なくとも15.5nmの表面の算術平均高さ値Saを有する表面を備え、
前記コーティングされたグレージングが、ASTM D1003-13に従って試験したときに、少なくとも0.47%の平均ヘイズ値を示し、
金属の酸化物をベースとする前記層、およびメタロイドの酸化物をベースとする前記層が、化学蒸着層である、コーティングされたグレージング。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、コーティングされたグレージング、該グレージングの製造方法、および該グレージングの使用に関する。
【0002】
コーティングされたグレージングは、例えば、建築、自動車、および技術用途などの多くの分野で使用されている。そのようなグレージングは、グレージングにより熱のロスおよび/またはゲインに関する改善された調節を可能し得る低放射率および/または日射制御の有利な特性を示すことができる。商業的な冷凍用途(例えば冷凍庫の蓋、アイスクリームのカウンターフロント、およびデリカウンターフロント)などのいくつかの例では、所望の製品を得るためにグレージングを熱的に曲げかつ/または焼き戻しする必要があり得る。しかしながら、これらの曲げおよび/または焼き戻しプロセスは、ある特定の条件下で、コーティングスタック内でその後の凝集破壊を引き起こす可能性がある。
【0003】
US2015/146286(A1)は、透明な導電性酸化物(TCO)を含有する下に存在する機能層への熱処理時の酸素の拡散を調節するための誘電体バリア層を利用する低放射コーティング(low-e coating)を記載している。機能層の割れとして明白な損傷をもたらす、機能層の過度に高い酸素含有量を回避することによって、コーティングスタックは、改善された曲げ性を示すと言われている。
【0004】
しかしながら、熱曲げ時および/または焼き戻し操作時にコーティングスタック内の凝集破壊の発生率が低い、低放射のコーティングされたグレージングを提供することは望ましいであろう。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、コーティングされたグレージングであって、少なくとも以下の層:
透明なガラス基板と、
金属の酸化物をベースとする層および/またはメタロイドの酸化物をベースとする層と、
さらなる層と、を順に備え、
金属の酸化物をベースとする該層またはメタロイドの酸化物をベースとする該層のいずれかは、該透明ガラス基板に隣接しており、
該透明ガラス基板に隣接している該層は、該表面のコーティング前に、ISO25178-2:2012に従って試験したときに少なくとも4.0nmの表面の算術平均高さ値Saを有する表面を備え、
該コーティングされたグレージングは、ASTM D1003-13に従って試験したときに、少なくとも0.47%の平均ヘイズ値を示す、コーティングされたグレージングが提供される。
【0006】
驚くべきことに、第1の態様によるコーティングされたグレージングは、既知のコーティングされたグレージングと比較すると、熱曲げおよび/または強化操作の際にコーティング内の凝集破壊の発生率が低いことを見出した。凝集破壊の減少は、修正された表面トポグラフィーを有する透明ガラス基板に隣接している層に起因すると仮定される。
【0007】
本発明の文脈において、層が、ある特定の材料(単数または複数)を「ベースとする」と言われる場合、これは、層が、対応する該材料(単数または複数)から主としてなることを意味し、これは典型的には少なくとも約50at%の該材料(単数または複数)を含むことを意味している。
【0008】
本発明の以下の説明では、特に断りのない限り、パラメータの許容範囲の上限または下限についての代替値の開示は、該値の一方が他方よりも非常に好ましいという示唆と相まって、該代替値のより好ましい値と好ましさが劣る値との間にある該パラメータの各中間値は、それ自体、該好ましさが劣る値よりも好ましく、また、該好ましさが劣る値と該中間値との間にある各値よりも好ましい、と解釈されるべきである。
【0009】
本明細書を通して、「備えている、含んでいる(comprising)」または「備える、含む(comprises)」という用語は、指定成分(単数または複数)を含むことを意味するが、他の成分の存在を排除するものではない。「から本質的になっている」または「から本質的になる」という用語は、指定成分を含むが、不純物として存在する材料以外の他の成分、成分を提供するために使用されるプロセスの結果として存在する不可避な材料、および発明の技術的効果を達成する以外の目的で添加された成分は排除される、ことを意味している。典型的には、組成物に言及するとき、一組の成分から本質的になる組成物は、5重量%未満、典型的には3重量%未満、より典型的には1重量%未満の非指定成分を含むことになる。
【0010】
「からなっている」または「からなる」という用語は、指定成分を含むが、他の成分は排除される、ことを意味している。
【0011】
文脈に応じて適切であるときは常に、「備える、含む」または「備えている、含んでいる」という用語はまた、「から本質的になる」または「から本質的になっている」という意味を含むと解釈され得、また、「からなる」または「からなっている」という意味を含むと解釈され得る。
【0012】
「x~yの範囲内にある」などの本明細書における言及は、「x~y」という解釈を含むことを意味し、したがって値xおよびyも含む。
【0013】
本発明の文脈において、透明材料または透明基板は、可視光を透過させることができる材料または基板であり、それにより該材料の向こう側または後ろ側に位置する物体または画像は、該材料または基板を通して明確に見ることができる。
【0014】
本発明の文脈において、層の「厚さ」は、該層の表面における任意の所定の位置に関して、該層の表面の該位置から、該層の反対側の表面における位置までの、該層の最小寸法の方向において層を通る距離によって表される。
【0015】
本発明の文脈では、コーティングされたグレージングが、平面が交わる角度を形成する少なくとも2つの該平面を占めるように角度を付けられている場合、かつ/または、コーティングされたグレージングが、コーティングされたグレージングが少なくとも一方向に曲率半径を有するように曲げられている場合、コーティングされたグレージングは「曲がっている」とみなされる。
【0016】
好ましくは、金属の酸化物をベースとする層は、SnO2、TiO2、または酸化アルミニウムをベースとする層である。最も好ましくは、金属の酸化物をベースとする該層は、SnO2をベースとする層である。
【0017】
好ましくは、メタロイドの酸化物をベースとする該層は、SiO2または酸窒化ケイ素、より好ましくはSiO2をベースとする層である。
【0018】
好ましくは、金属の酸化物をベースとする該層とメタロイドの酸化物をベースとする該層の両方が存在する。この実施形態では、好ましくは、金属の酸化物をベースとする層は、SnO2をベースとする層であり、メタロイドの酸化物をベースとする層は、SiO2をベースとする層である。
【0019】
金属の酸化物をベースとする層とメタロイドの酸化物をベースとする層との両方が存在する場合、好ましくは透明ガラス基板は、金属の酸化物をベースとする層に隣接しており、メタロイドの酸化物をベースとする層は、さらなる層に隣接している。より好ましくは、透明ガラス基板は、SnO2をベースとする層に隣接しており、SiO2をベースとする層は、さらなる層に隣接している。
【0020】
好ましくは、金属の酸化物をベースとする該層は、該ガラス基板と直接接触している。好ましくは、金属の酸化物をベースとする該層は、メタロイドの酸化物をベースとする層と直接接触している。最も好ましくは、金属の酸化物をベースとする該層は、該ガラス基板とメタロイドの酸化物をベースとする該層の両方と直接接触している。好ましくは、メタロイドの酸化物をベースとする該層は、該さらなる層と直接接触している。好ましくは、該さらなる層は、コーティングされたグレージングの最外層である。
【0021】
好ましくは、該透明ガラス基板に隣接している該層の少なくとも一部分は、少なくとも35nm、より好ましくは少なくとも36nm、さらにより好ましくは少なくとも40nm、最も好ましくは少なくとも45nmの厚さを有するが、好ましくは最大で100nm、より好ましくは最大80nm、さらにより好ましくは最大70nm、最も好ましくは最大60nmの厚さを有する。これらの好ましい厚さは、熱曲げおよび/または強化操作の際に、コーティング内での凝集破壊の頻度の低下を助けるのに有利であり得る。
【0022】
該透明ガラス基板に隣接する該層の好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%は、少なくとも35nmの厚さを有する。該透明ガラス基板に隣接する該層の好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%は、少なくとも36nmの厚さを有する。該透明ガラス基板に隣接する該層の好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%は、少なくとも40nmの厚さを有する。該透明ガラス基板に隣接する該層の好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%は、少なくとも45nmの厚さを有する。該透明ガラス基板に隣接する該層の好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%は、少なくとも50nmの厚さを有する。
【0023】
金属の酸化物をベースとする該層とメタロイドの酸化物をベースとする該層との両方が存在するとき、これらの層のうちの1つは、該さらなる層に隣接し、好ましくは、該さらなる層に隣接する該層の少なくとも一部分は、少なくとも10nm、より好ましくは少なくとも15nm、さらにより好ましくは少なくとも17nm、最も好ましくは少なくとも19nmの厚さを有するが、好ましくは最大40nm、より好ましくは最大30nm、さらにより好ましくは最大25nm、最も好ましくは最大23nmの厚さを有する。
【0024】
好ましくは、該さらなる層は、透明導電性酸化物(TCO)をベースとする層である。好ましくは、TCOは、フッ素ドープ酸化錫(SnO2:F)、アルミニウム、ガリウム、またはホウ素でドープされた酸化亜鉛(ZnO:Al、ZnO:Ga、ZnO:B)、錫でドープされた酸化インジウム(ITO)、錫酸カドミウム、ITO:ZnO、ITO:Ti、In2O3、In2O3-ZnO(IZO)、In2O3:Ti、In2O3:Mo、In2O3:Ga、In2O3:W、In2O3:Zr、In2O3:Nb、In2-2xMxSnxO3(式中、MはZnまたはCuである)、ZnO:F、Zn0.9Mg0.1O:Ga、および(Zn,Mg)O:P、ITO:Fe、SnO2:Co、In2O3:Ni、In2O3:(Sn,Ni)、ZnO:Mn、およびZnO:Coのうちの1つ以上である。最も好ましくは、該さらなる層は、フッ素ドープ酸化錫(SnO2:F)をベースとしている。
【0025】
好ましくは、該さらなる層は、少なくとも200nm、より好ましくは少なくとも250nm、さらにより好ましくは少なくとも330nm、最も好ましくは少なくとも450nmの厚さを有するが、好ましくは最大900nm、より好ましくは最大800nm、さらにより好ましくは最大700nm、最も好ましくは最大500nmの厚さを有する。
【0026】
好ましくは、該透明ガラス基板に隣接する該層は、該表面をコーティングする前に、少なくとも4.5nm、より好ましくは少なくとも5.0nm、さらにより好ましくは少なくとも5.5nm、さらにより好ましくは少なくとも6.0nm、最も好ましくは少なくとも6.5nmの表面の算術平均高さ値Saを有するが、好ましくは最大20nm、より好ましくは最大15nm、さらにより好ましくは最大13nm、最も好ましくは最大11nmの表面の算術平均高さ値Saを有する、表面を備える。Saは、表面の粗さを示し、ISO25178-2:2012製品の幾何特性仕様(GPS)--表面性状:三次元-第2部:用語、定義および表面性状のパラメータに従って測定される。より粗い表面を有する基板に隣接する層は、熱曲げおよび/または強化操作の際にコーティング内での凝集破壊の発生率を減少させるのに有益であると思われる。基板に隣接する層の粗さは、続いて堆積される層の表面の粗さを大きく左右する。
【0027】
好ましくは、コーティングされたグレージングは、最外層(すなわち、透明ガラス基板から最も遠い層)を備え、該最外層は、少なくとも12.5nm、より好ましくは少なくとも13.5nm、さらにより好ましくは少なくとも14.5nm、さらにより好ましくは少なくとも15.5nm、最も好ましくは少なくとも16.0nmの表面の算術平均高さ値Saを有するが、好ましくは最大45nm、より好ましくは最大30nm、さらにより好ましくは最大25nm、さらにより好ましくは最大25nm、最も好ましくは最大21nmの表面の算術平均高さ値Saを有する、表面を備える。また、より粗い外面は、熱曲げおよび/または強化操作の際にコーティング内での凝集破壊の発生率を減少させるのにも有益であると思われる。好ましくは、該最外層は該さらなる層である。
【0028】
好ましくは、コーティングされたグレージングは、ASTM D1003-13に従って試験したときに、少なくとも0.5%、より好ましくは少なくとも0.6%、さらにより好ましくは少なくとも0.7%、最も好ましくは少なくとも0.8%の平均ヘイズ値を示すが、好ましくは最大3.0%、より好ましくは最大2.0%、さらにより好ましくは最大1.5%、最も好ましくは最大1.3%の平均ヘイズ値を示す。
【0029】
好ましくは、コーティングされたグレージングは、少なくとも以下の層:
透明ガラス基板と、
SnO2をベースとする層である、金属の酸化物をベースとする層と、
SiO2をベースとする層である、メタロイドの酸化物をベースとする層と、
フッ素ドープ酸化錫(SnO2:F)をベースとする層である、さらなる層と、を順に備え、より好ましくは、それらからなり、
該透明ガラス基板に隣接している該層は、該表面のコーティング前に、ISO25178-2:2012に従って試験したときに、少なくとも4.5nmの表面の算術平均高さ値Saする表面を備え、
該コーティングされたグレージングは、ASTM D1003-13に従って試験したときに、少なくとも0.50%の平均ヘイズ値を示す。
【0030】
透明ガラス基板は、透明な金属酸化物をベースとするガラス板であり得る。好ましくは、ガラス板は、透明フロートガラス板、好ましくは低鉄フロートガラス板である。透明フロートガラスとは、BS EN572-1およびBS EN572-2(2004)において定義される組成を有するガラスシートを意味している。透明フロートガラスの場合、Fe2O3の重量レベルは典型的には0.11%である。約0.05重量%未満のFe2O3含有量を有するフロートガラスは、典型的には低鉄フロートガラスと呼ばれる。そのようなガラスは、通常は、他の成分酸化物と同じ基本組成を有し、すなわち、低鉄フロートガラスは透明フロートガラスと同様にソーダ石灰ケイ酸塩ガラスである。典型的には、低鉄フロートガラスは0.02重量%未満のFe2O3を有する。代替的に、ガラス板は、ホウケイ酸塩系ガラス板、アルカリアルミノケイ酸塩系ガラス板、または酸化アルミニウム系結晶ガラス板である。
【0031】
コーティングされたグレージングは、熱強化プロセスおよび/または化学強化プロセスなどの任意の好適な手段によって、ある程度強化することができる。コーティングされたグレージングは、プレス曲げ操作、サグ曲げ操作、またはローラー成形操作などの適切な手段によって曲げることができる。コーティングされたグレージングは、1つ以上の方向に曲げることができる。好ましくは、1つ以上の方向のうちの少なくとも1つの方向の曲率半径は、100mm~20000mm、より好ましくは200mm~10000mm、さらにより好ましくは300mm~8000mmである。
【0032】
好ましくは、コーティングされたグレージングは、小売店頭グレージング、ショールームグレージング、または冷凍グレージングである。
【0033】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様によるコーティングされたグレージングの製造方法であって、以下のステップ:
a)透明ガラス基板を用意するステップと、
b)透明ガラス基板の表面上に直接または間接的に少なくとも以下の層:
i)金属の酸化物をベースとする層および/またはメタロイドの酸化物をベースとする層、ならびに
ii)さらなる層を順に堆積させるステップと、を順に含む、提供される。
【0034】
好ましくは、透明ガラス基板の該表面は、透明ガラス基板の主表面である。
【0035】
金属の酸化物をベースとする該層、メタロイドの酸化物をベースとする該層、および該さらなる層は各々、本発明の第1の態様による対応する名称の層の任意の特徴を有することができる。
【0036】
好ましくは、金属の酸化物をベースとする層は、SnO2、TiO2、または酸化アルミニウムをベースとする層である。最も好ましくは、金属の酸化物をベースとする該層は、SnO2をベースとする層である。好ましくは、メタロイドの酸化物をベースとする該層は、SiO2または酸窒化ケイ素、より好ましくはSiO2をベースとする層である。好ましくは、該さらなる層は、透明導電性酸化物(TCO)をベースとする層である。最も好ましくは、該さらなる層は、フッ素ドープ酸化錫(SnO2:F)をベースとしている。
【0037】
好ましくは、金属の酸化物をベースとする該層またはメタロイドの酸化物をベースとする該層は、透明ガラス基板の表面上に直接堆積される。より好ましくは、金属の酸化物をベースとする該層は、透明ガラス基板の表面上に直接堆積される。
【0038】
好ましくは、ステップb)i)は、透明ガラス基板の表面上に金属の酸化物をベースとする層、続いてメタロイドの酸化物をベースとする層の順に堆積させることを含む。好ましくは、メタロイドの酸化物をベースとする該層は、金属の酸化物をベースとする該層の表面上に直接堆積される。
【0039】
好ましくは、該さらなる層は、金属の酸化物をベースとする該層の表面上またはメタロイドの酸化物をベースとする該層の表面上に直接堆積される。より好ましくは、該さらなる層は、メタロイドの酸化物をベースとする該層の表面上に直接堆積される。
【0040】
好ましくは、ステップb)i)は、化学蒸着(CVD)を用いて行われる。好ましくは、工程b)i)およびb)ii)の両方は、CVDを用いて行われる。いくつかの代替実施形態では、ステップb)ii)は、物理蒸着(PVD)を用いて行うことが有利な場合がある。
【0041】
CVDは、透明ガラス基板の製造と同時に行うことができる。一実施形態では、透明ガラス基板は、既知のフロートガラス製造プロセスを利用して形成することができる。この実施形態では、透明ガラス基板は、ガラスリボンとも称され得る。好都合には、CVDは、フロート浴中、ガラス焼きなまし炉中、またはガラス焼きなまし炉ギャップ中のいずれかにおいて行うことができる。CVDの好ましい方法は、大気圧CVD(例えば、フロートガラスプロセス中に行われるようなオンラインCVD)である。しかしながら、フロートガラス製造プロセスとは別に、またはガラスリボンの形成および切断の後でも、CVDプロセスを利用できることが理解されるべきである。
【0042】
透明なガラス基板が450℃~800℃の範囲の温度であるとき、より好ましくは、透明なガラス基板が550℃~750℃の範囲の温度であるとき、CVDは、好ましく行うことができる。透明ガラス基板がこれらの好ましい温度にあるときにCVDコーティングを堆積させると、より大きな結晶化度のコーティングを付与することができ、靭性(toughenability)(熱処理に対する耐性)を改善することができる。
【0043】
好ましくは、ステップb)i)は、透明なガラス基板が少なくとも690℃、より好ましくは少なくとも715℃、さらにより好ましくは少なくとも725℃、最も好ましくは少なくとも730℃の温度にあるときに行われるが、好ましくは最大790℃、より好ましくは最大760℃、さらにより好ましくは最大750℃、最も好ましくは最大745℃の温度にあるときに行われる。好ましくは、ステップb)i)における金属の酸化物をベースとする層の該堆積は、透明なガラス基板が少なくとも690℃、より好ましくは少なくとも715℃、さらにより好ましくは少なくとも725℃、最も好ましくは少なくとも730℃の温度にあるときに行われるが、好ましくは最大790℃、より好ましくは最大760℃、さらにより好ましくは最大750℃、最も好ましくは最大745℃の温度にあるときに行われる。
【0044】
いくつかの好ましい実施形態では、ステップb)i)におけるメタロイドの酸化物をベースとする層の堆積は、透明なガラス基板が少なくとも650℃、より好ましくは少なくとも680℃、さらにより好ましくは少なくとも690℃、最も好ましくは少なくとも695℃の温度にあるときに行われるが、好ましくは最大750℃、より好ましくは最大730℃、さらにより好ましくは最大720℃、最も好ましくは最大710℃の温度にあるときに行われる。
【0045】
好ましくは、ステップb)ii)におけるさらなる層の堆積は、透明なガラス基板が少なくとも600℃、より好ましくは少なくとも620℃、さらにより好ましくは少なくとも630℃、最も好ましくは少なくとも640℃の温度にあるときに行われるが、好ましくは最大720℃、より好ましくは最大700℃、さらにより好ましくは最大680℃、最も好ましくは最大650℃の温度にあるときに行われる。
【0046】
特定の実施形態では、CVDプロセスは、透明ガラス基板がエッチングまたはコーティング時に移動している動的プロセスである。好ましくは、透明ガラス基板は、ステップb)i)および/またはステップb)ii)中に、例えば3m/分を超える所定の速度で移動する。より好ましくは、透明ガラス基板は、ステップb)i)および/またはステップb)ii)中に3m/分~20m/分の速度で移動している。
【0047】
上で説明したように、好ましくはCVDは、フロートガラス製造プロセス中に実質的に大気圧において行うことができる。代替的に、CVDは、低圧CVDまたは超高真空CVDを用いて行うことができる。CVDは、エアロゾルアシストCVDまたは直接液体注入CVDを用いて行ってもよい。さらに、CVDは、マイクロ波プラズマアシストCVD、プラズマ強化CVD、リモートプラズマ強化CVD、原子層CVD、燃焼CVD(火炎熱分解)、ホットワイヤーCVD、有機金属CVD、急速熱処理CVD、気相エピタキシ、または光開始CVDを用いて行うことができる。ガラス基板は、通常は、保管のために、またはフロートガラス製造施設から真空蒸着施設への便利な輸送のために、ステップb)i)および/またはステップb)ii)における任意のCVDコーティング(複数可)の堆積後(および任意のPVDコーティングの堆積前)に、シートに切断される。
【0048】
CVDはまた、1つ以上の気体混合物を形成することも含むことができる。当業者には理解されるであろうように、気体混合物中での使用に好適な前駆体化合物はCVDプロセスにおける使用に好適であるべきである。そのような化合物は、ある点で液体または固体であり得るが、それらが気体混合物での使用のために気化され得るように揮発性である。気体状態になったら、前駆体化合物を気体流に含めることができ、CVDプロセスで利用してステップb)i)および/またはステップb)ii)を実施することができる。気体前駆体化合物の任意の特定の組み合わせについては、特定の堆積速度およびコーティング厚を達成するための最適濃度および流量は変えることができる。
【0049】
気体混合物は、1つ以上の前駆体化合物と、キャリアガスまたは希釈剤、例えば、窒素、空気、および/またはヘリウム、好ましくは窒素とを含むことができる。前駆体化合物は、発火および早発反応を起こさずに混合することができる。したがって、ある特定の実施形態では、CVDプロセスは、前駆体化合物を混合して気体混合物を形成することを含む。
【0050】
CVDによるSnO2の堆積では、気体混合物は、好ましくは、二塩化ジメチル錫(DMT)、酸素および蒸気を含む。同じ気体混合物を使用して、HFまたはトリフルオロ酢酸などのフッ素源が添加されていれば、SnO2:Fを堆積させることができる。SiO2の堆積のために、気体混合物は、シラン(SiH4)、エチレン(C2H4)、および酸素を含むことができる。チタニアの堆積のために、気体混合物は、四塩化チタン(TiCl4)および酢酸エチル(EtOAc)を含むことができる。好ましくは、気体混合物は、窒素を含む。いくつかの実施形態では、気体混合物は、ヘリウムも含むことができる。
【0051】
ある特定の実施形態では、ステップb)i)およびb)ii)における層の堆積の前に、1つ以上の気体混合物が、コーティング装置を通して供給され、1つ以上のガス分配ビームを利用してコーティング装置から放出される。好ましくは、1つ以上の気体混合物が、コーティング装置を通して供給される前に形成される。例えば、前駆体化合物は、コーティング装置の入口に接続された供給ライン中で混合することができる。他の実施形態では、1つ以上の気体混合物をコーティング装置内で形成することができる。
【0052】
1つ以上の気体混合物を、透明ガラス基板に向けてかつそれに沿って導くことができる。コーティング装置を利用すると、気体混合物を、透明ガラス基板に向けて、かつそれに沿って導きやすくなる。好ましくは、気体混合物を、層流で、透明ガラス基板に向けて、かつそれに沿って導く。
【0053】
好ましくは、コーティング装置は、透明ガラス基板を横切って横方向に延び、その上に所定の距離を置いて設けられる。コーティング装置は、好ましくは、少なくとも1つの所定の位置に配置される。CVDプロセスがフロートガラス製造プロセスと一緒に利用されるとき、コーティング装置は、好ましくはそのフロート浴セクション内に設けられる。しかしながら、コーティング装置は、アニーリング炉内、および/またはフロート浴とアニーリング炉との間のギャップ内に設けることができる。
【0054】
混合物が透明ガラス基板の表面に到達する前の予備反応を防ぐために、1つ以上の気体混合物を、前駆体化合物の熱分解温度より低い温度に保つことが望ましい。コーティング装置内では、気体混合物は、それが反応する温度より低い温度に維持され、ガラス基板の表面近くの位置に送達され、ガラス基板は反応温度を超える温度にある。気体混合物は、ガラス基板の表面または表面近くで反応して、その上に所望の層を形成する。CVDプロセスにより、ガラス基板上に高品質のコーティングが堆積される。
【0055】
好ましくは、コーティングされる透明ガラス基板の表面は、気体側表面である。コーティングガラス製造業者は、通常は、気体側表面への堆積がコーティングの特性を改善することができるため、(フロートガラスの錫側表面とは反対側の)気体側表面へのコーティングの堆積を好む。
【0056】
好ましくは、ステップb)ii)において利用される任意のPVDは、スパッタ堆積によって行われる。PVDは、DCモード、パルスモード、中周波モードもしくは高周波モード、または任意の他の好適なモードのいずれかにおける、マグネトロンカソードスパッタリングであり、それによって金属または半導体のターゲットが、好適なスパッタリング雰囲気中で、反応的または非反応的にスパッタリングされることが特に好ましい。スパッタされる材料に応じて、平面または回転管状ターゲットを使用することができる。コーティングプロセスは、好ましくは、好適なコーティング条件を設定することによって実施され、その結果、特に熱処理中に、コーティングの任意の層の任意の酸化物(または窒化物)層の酸素(または窒素)不足を低く保って、コーティングされたグレージングの可視光透過率および色に関して高い安定性が達成される。
【0057】
好ましくは、本方法は、ステップb)ii)に続いて、コーティングされたグレージングを曲げることをさらに含む。コーティングされたグレージングは、プレス曲げ操作、サグ曲げ操作、またはローラー成形操作などの適切な手段によって曲げることができる。好ましくは、コーティングされたグレージングは、透明ガラス基板の表面上に堆積された該層が、曲げられたコーティングされたグレージングの凹面側に位置するように曲げられる。代替的または追加的に、本方法は、熱的および/または化学的強化プロセスなどの任意の好適な手段によってある程度までグレージングを強化することをさらに含む。
【0058】
本発明の第3の態様によれば、小売店頭グレージング、ショールームグレージング、または冷凍グレージングとしての、第1の態様によるコーティングされたグレージングの使用が提供される。
【0059】
本発明の第4の態様によれば、グレージングであって、以下の層:
透明ガラス基板と、
金属の酸化物をベースとする、またはメタロイドの酸化物をベースとする、ベース層と、からなり、
該ベース層は、ISO25178-2:2012に従って試験すると、少なくとも4.0nmの表面の算術平均高さ値Saを有する表面を備える、コーティングされたグレージングが提供される。
【0060】
第4の態様のコーティングされたグレージングは、第1の態様のコーティングされたグレージングの形成における中間品である。
【0061】
好ましくは、該ベース層は、少なくとも4.5nm、より好ましくは少なくとも5.0nm、さらにより好ましくは少なくとも5.5nm、さらにより好ましくは少なくとも6.0nm、最も好ましくは少なくとも6.5nmの表面の算術平均高さ値Saを有するが、好ましくは最大20nm、より好ましくは最大15nm、さらにより好ましくは最大13nm、最も好ましくは最大11nmの表面の算術平均高さ値Saを有する、表面を備える。Saは、表面の粗さを示し、ISO25178-2:2012製品の幾何特性仕様(GPS)--表面性状:三次元-第2部:用語、定義および表面性状のパラメータに従って測定される。
【0062】
好ましくは、コーティングされたグレージングは、ASTM D1003-13に従って試験したときに、少なくとも0.47%、より好ましくは少なくとも0.5%、より好ましくは少なくとも0.6%、さらにより好ましくは少なくとも0.7%、最も好ましくは少なくとも0.8%の平均ヘイズ値を示すが、好ましくは最大3.0%、より好ましくは最大2.0%、さらにより好ましくは最大1.5%、最も好ましくは最大1.3%の平均ヘイズ値を示す。
【0063】
本発明の第5の態様によれば、コーティングされたグレージングであって、少なくとも以下の層:
透明ガラス基板と、
金属の酸化物をベースとする層および/またはメタロイドの酸化物をベースとする層と、
さらなる層と、を順に備え、
金属の酸化物をベースとする該層またはメタロイドの酸化物をベースとする該層のいずれかは、該透明ガラス基板に隣接しており、
コーティングされたグレージングは、最外層(すなわち、透明ガラス基板から最も遠い層)を備え、該最外層は、ISO25178-2:2012に従って試験したときに、少なくとも12.5nmの表面の算術平均高さ値Saを有する表面を備え、
コーティングされたグレージングは、ASTM D1003-13に従って試験したときに少なくとも0.47%の平均ヘイズ値を示す、コーティングされたグレージングが提供される。
【0064】
驚くべきことに、第5の態様によるコーティングされたグレージングは、既知のコーティングされたグレージングと比較すると、熱曲げおよび/または強化操作の際にコーティング内の凝集破壊の発生率が低いことを見出した。
【0065】
好ましくは、該ベース層は、少なくとも13.5nm、より好ましくは少なくとも14.5nm、さらにより好ましくは少なくとも15.5nm、最も好ましくは少なくとも16.0nmの表面の算術平均高さ値Saを有するが、好ましくは最大45nm、より好ましくは最大30nm、さらにより好ましくは最大25nm、最も好ましくは最大21nmの表面の算術平均高さ値Saを有する、表面を備える。より粗い表面は、熱曲げおよび/または強化操作の際にコーティング内での凝集破壊の発生率を減少させるのにも有益であると思われる。好ましくは、該最外層は、該さらなる層である。
【0066】
本発明の第6の態様によれば、コーティングされたグレージングであって、少なくとも以下の層:
透明ガラス基板と、
金属の酸化物をベースとする層および/またはメタロイドの酸化物をベースとする層と、
さらなる層と、を順に備え、
金属の酸化物をベースとする該層またはメタロイドの酸化物をベースとする該層のいずれかは、該透明ガラス基板に隣接しており、
該透明ガラス基板に隣接している該層の少なくとも一部分は、少なくとも35nmの厚さを有し、
該コーティングされたグレージングは、ASTM D1003-13に従って試験したときに少なくとも0.47%の平均ヘイズ値を示す、コーティングされたグレージングが提供される。
【0067】
本明細書に記載のあらゆる発明は、必要な変更を加えて、本明細書に記載の任意の他の発明の任意の特徴と組み合わせることができる。
【0068】
本発明の一態様に適用可能な任意選択的な特徴は、任意の組み合わせで、かつ任意の数で使用することができることが理解されよう。さらに、それらはまた、本発明の他の態様のいずれかと共に、任意の組み合わせおよび任意の数で使用することもできる。それには、本願の特許請求の範囲における任意の他の請求項に関する従属請求項として使用されている任意の請求項由来の従属請求項が含まれるが、それに限定されない。
【0069】
読者の注意は、本出願に関連して本明細書と同時またはそれ以前に提出され、本明細書と共に公衆の閲覧が認められている全ての論文および文書に向けられ、そのような論文および文書の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
本明細書に開示されている全ての特徴(特許請求の範囲、要約、および図面を含む)、および/または開示されている任意の方法もしくはプロセスのステップの全ては、任意の組み合わせで組み合わせることができるが、そのような特徴および/またはステップのうちの少なくともいくつかが相互に排除される組み合わせは除く。
【0071】
本明細書に開示された各特徴(任意の添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)は、特に明記しない限り、同じ、同等、または類似の目的にかなう代替の特徴によって置き換えてもよい。したがって、他に明示的に述べられていない限り、開示された各特徴は、包括的な一連の同等または類似の特徴の一例にすぎない。
【0072】
添付の図面を参照しながら、限定ではなく例示として示される以下の特定の実施形態によって、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】本発明のある特定の実施形態に従うコーティングされたグレージングの概略横面図である。
【
図2】本発明のある特定の実施形態に従う曲げられたコーティングされたグレージングの概略横断面図である。
【
図3】
図2に示した曲げられたコーティングされたグレージングの概略平面図である。
【
図4】本発明のある特定の実施形態に従う、コーティングされたグレージングを製造するためのいくつかのCVD装置を組み込んでいるフロートガラスプロセスを実施するための設備の概略縦断面図である。
【
図5】曲げられた、かつ耐湿性について試験された比較例1のコーティングされたグレージングの写真である。
【
図6】曲げられた、かつ耐湿性について試験された本発明の実施例6のコーティングされたグレージングの写真である。
【
図7】曲げられた、かつ耐湿性について試験された比較例2のコーティングされたグレージングの写真である。
【
図8】曲げられた、かつ耐湿性について試験された本発明の実施例10~14のコーティングされたグレージングの各写真である。
【
図9】曲げられた、かつ耐湿性について試験された本発明の実施例10~14のコーティングされたグレージングの各写真である。
【
図10】曲げられた、かつ耐湿性について試験された本発明の実施例10~14のコーティングされたグレージングの各写真である。
【
図11】曲げられた、かつ耐湿性について試験された本発明の実施例10~14のコーティングされたグレージングの各写真である。
【
図12】曲げられた、かつ耐湿性について試験された本発明の実施例10~14のコーティングされたグレージングの各写真である。
【0074】
図1は、本発明のある特定の実施形態によるコーティングされたグレージング1の横断面図を示している。コーティングされたグレージング1は、CVDを用いて、SnO
23をベースとする層、SiO
24をベースとする層、およびフッ素ドープ酸化錫(SnO
2:F)5をベースとする層で順次コーティングされた透明フロートガラス基板2を備える。
【0075】
図2は、本発明のある特定の実施形態に従う曲げられたコーティングされたグレージング6の断面図を示している。曲げられたコーティングされたグレージング6は、
図1に示したコーティングされたグレージング1と同じ構造を有するが、曲げられたコーティングされたグレージング6は、続いて、プレス曲げプロセスで曲げて、湾曲した直角を得た。
図3は、平面図で観察したときに、曲げられたコーティングされたグレージング6は、長方形の輪郭を有することを示している。
【0076】
上記したように、CVDプロセスは、フロートガラスプロセスにおけるガラス基板の製造と共に行ってもよい。フロートガラスプロセスは、典型的には、
図4に示した設備10などのフロートガラス設備を利用して行われる。しかしながら、本明細書に記載のフロートガラス設備10はそのような設備の単なる例示であることを理解すべきである。
【0077】
図4に示されるように、フロートガラス設備10は、溶融ガラス19が、溶融炉から、ガラス基板が形成されるフロート浴セクション11に送達されるカナルセクション20を備えることができる。この実施形態では、ガラス基板はガラスリボン8とも呼ばれる。しかしながら、ガラス基板はガラスリボンであることに限定されないことを理解すべきである。ガラスリボン8は、浴セクション11から、隣接するアニーリング炉12および冷却セクション13へと進む。フロート浴セクション11は、溶融錫15の浴が収容される底部セクション14と、ルーフ16と、反対側の側壁(図示せず)と、端壁17と、を備える。ルーフ16、側壁、および端壁17は一緒になって、溶融錫15の酸化を防止するために非酸化性雰囲気が維持されるエンクロージャ18を画定する。
【0078】
運転中、溶融ガラス19は、調節ツィール21の下のカナル20に沿って流れ、そして制御された量で錫浴15の表面上に下方に流れる。溶融錫表面上では、溶融ガラス19は、重力および表面張力の影響下、ならびにある特定の機械的影響下で、横方向に広がり、錫浴15を横切って前進してガラスリボン8を形成する。ガラスリボン8はリフトアウトロール22にわたって浴セクション11から取り出され、その後、整列させたロールによって、アニーリング炉12および冷却セクション13を通して搬送される。コーティングの堆積は、好ましくはフロート浴セクション11で行われるが、ガラス製造ラインに沿って、例えば、フロート浴11とアニーリング炉12との間のギャップ28において、またはアニーリング炉12において、さらに堆積を行うことも可能な場合がある。
【0079】
図4に示すように、4つのCVD装置9、9A、9B、9Cがフロート浴セクション11内に示されている。したがって、必要とされるコーティング層の頻度および厚さに応じて、CVD装置9、9A、9B、9Cのうちのいくつかまたは全てを使用することが望ましい場合がある。1つ以上の追加のコーティング装置(図示せず)を設けてもよい。1つ以上のCVD装置は、代替的または追加的に炉ギャップ28に配置してもよい。副生成物は、コーター抽出スロットによって除去され、次いで汚染防止プラントによって除去される。例えば、一実施形態では、CVD装置9Aを使用して酸化錫コーティングを形成し、CVD装置9を使用してシリカコーティングを形成し、隣接している装置9Bおよび9Cを使用してフッ素ドープ酸化錫コーティングを形成する。
【0080】
フロート浴を構成する溶融錫15の酸化を防止するために、フロート浴セクション11内に好適な非酸化性雰囲気、一般には窒素、または窒素が優勢である窒素と水素との混合物が保持される。その雰囲気ガスは、分配マニホールド24に動作可能に連結された導管23を通って導入される。非酸化性ガスは、通常の損失を補償し、周囲の大気圧よりも約0.001~約0.01atmのオーダーのわずかな陽圧を維持するのに十分な速度で導入され、それにより外部の大気の侵入を防ぐ。本発明を説明する目的で、上記の圧力範囲は通常の大気圧を構成すると考えられる。
【0081】
コーティング層のCVDは、一般に、本質的に大気圧で行われる。したがって、フロート浴セクション11、アニーリング炉12、および/またはフロート浴11とアニーリング炉12との間のギャップ28における圧力は、本質的に大気圧であり得る。フロート浴セクション11およびエンクロージャ18における所望の温度領域を維持するための熱は、エンクロージャ18内の放射ヒーター25によって提供される。冷却セクション13は密閉されておらず、したがってガラスリボン8は周囲雰囲気に対して開放されていることから、加熱器12内の雰囲気は典型的には大気である。続いてガラスリボン8を周囲温度に冷却する。ガラスリボン8を冷却するために、冷却セクション13中のファン26によって周囲空気をガラスリボン8へ指向することができる。ガラスリボン8がアニーリング炉12を通って搬送されるときにガラスリボン8の温度を所定の領域に従って徐々に低下させるために、ヒーター(図示せず)をアニーリング炉12内に設けてもよい。
【実施例】
【0082】
コーティングされたグレージングの厚さとヘイズ測定値
全ての層堆積はCVDを用いて行った。以下の表1に示した全ての実施例は、4mmソーダ石灰シリカガラス基板を用いてフロートライン上で製造した。比較例1~3は、13.3m/分の平均線速度でコーティングし、実施例4~6は8.3m/分の平均線速度でコーティングした。SnO2のベース層の堆積は、比較例1~3に関しては700℃および実施例4~6に関しては720℃のガラス温度で行った。
【0083】
以下の成分:
・N2キャリアガス、O2、二塩化ジメチル錫、およびH2Oを有する単一コーターを用いてガラス表面上にSnO2層を堆積させた。
以下の成分:
・N2キャリアガス、Heキャリアガス、O2、C2H4、およびSiH4を有する単一コーターを用いてガラス表面上にSiO2層を堆積させた。
以下の成分:
・N2キャリアガス、O2、二塩化ジメチル錫、HF、およびH2Oを有する比較例1~3および実施例4~6の各々について2つのコーターを用いてガラス表面上にSnO2:F層を堆積させた。
【0084】
実施例の層の厚さは、SEMにより測定した。実施例のヘイズ値は、BYK-Gardner Hazemeterを用いて、ASTM D1003-13規格に従って測定した。
【0085】
【0086】
コーティングされたグレージングのプレス曲げおよび湿度試験
次いで、上記実施例の全てをプレス曲げして、低い曲率半径(<600mm)を有する曲げコーティングされたグレージングを製造した。各実施例を、寸法通り(約550×550mm)に切断し、切断されたエッジをエッジ加工することによって、曲げる準備をした((安全上の理由で)それらの鋭利さを低減させて、エッジから生じる破損の危険性を一般に減少させるために、かつ/または審美的な理由で)。エッジ加工は、エッジ磨砕および/または研磨を含む砥粒加工プロセスであった。次いで、その実施例を洗浄し、加熱炉を用いて各実施例を室温から>600℃まで加熱した。予想される形状の凹面側のコーティングと一緒に、各実施例を次にプレス曲げして同じ曲率を達成した。その実施例を次に空気急冷ステップにより強化した。
【0087】
次に、曲げられた実施例の耐湿性を試験した。曲げられた実施例は、湿度キャビネットを用いて湿った周囲条件(相対湿度(rh)95%、40℃で>7日)に曝露し、コーティング内の凝集破壊の発生率を観察した。全ての場合において、比較例1~3は、本発明の実施例4~6よりも凝集破壊の発生率が高かった。湿度試験後の比較例1の写真を
図5に示す。凝集破壊の領域は、黒いペンで印を付け、より薄い領域としてはっきり視認できる。観察された凝集破壊は、一般に、SiO
2層とSnO
2:F層との間の界面で発生した。対照的に、本発明の実施例は、曲げ時の凝集破壊が非常に小さいパッチを示している
図6の実施例6の写真に示されているように、湿度試験後のコーティング内での凝集破壊は極めて少なかった。
【0088】
コーティングされたグレージングの表面トポグラフィーの解析
層の表面トポグラフィーを調べるために、さらに3組のコーティングされたグレージングの実施例(7a~7c、8a~8c、および9a~9c)を調製した。実施例7a、8a、および9aは、SnO
2のみのベース層でコーティングした。実施例7b、8b、および9bは、SnO
2ベース層およびSiO
2の最上層でコーティングした。実施例7c、8c、および9cは、SnO
2のベース層、SiO
2の中間層、およびSnO
2:Fの最上層でコーティングした。実施例7a~7c、8a~8c、および9a~9cは、比較例1~3および実施例4~6と同じ仕方で調製した(但し、実施例7a~b、8a~b、および9a~bは、分析前に、より少ない層でコーティングされた)。さらに、SnO
2のベース層の堆積は、実施例7a~cのためのガラス温度720℃および実施例8a~cおよび
図9a~cのためのガラス温度735℃で行った。また、実施例8cにおいてSnO
2:Fの最上層を堆積させる直前に、コーティングされたグレージングを冷却して粗さおよびヘイズに対する効果を試験した。
【0089】
次いで、実施例7a~7c、8a~8c、および9a~9cを、原子間力顕微鏡(AFM)によって分析し、実施例7c、8c、および9cのヘイズ値を、ASTM D1003-13規格に従って、BYK-Gardner Hazemeterを用いて測定した。
【0090】
AFMのために、コーティングガラスの小さな断片(約4cm2)を各実施例から取り出した。コーティングされた表面からのあらゆる表在性汚染を除去するために、実施例を、約60秒間、メタノール中で超音波処理することによって洗浄し、圧縮ガスダスターで乾燥させた。洗浄後、実施例をAFM機器のステージ上に直接置き、分析の準備を整えて、機器の内部真空システムを用いてステージに固定した。
【0091】
原子間力顕微鏡は、小さい鋭い先端(半径約2~20nm)を組み込んだカンチレバーを使用して、nmの高さ範囲およびnm~μmの横方向範囲で表面トポグラフィーを物理的に測定する技術である。AFM機器は一般にいくつかの動作モードを備えており、以下はその例である。
【0092】
TappingMode(商標)
これは、カンチレバーを、その共振周波数またはその近くで振動させ、検査中に表面を軽く叩くモードである。カンチレバーの振動振幅は試料表面に近づくにつれて変化し、トポグラフィー像はこれらの変化をモニターするシステムによって得られる。この技術に使用されるTESPA AFMプローブは8nmの公称先端半径を有する。
【0093】
ScanAsyst(商標)を有するPeakForce Tapping(商標)(PFTSA)
AFMカンチレバーを表面と接触させたり離したりして、その共振周波数より十分に低い周波数で振動させるイメージング技術。このモードは、画像中の全てのピクセルにおいて非常に速いフォースカーブ測定を行う。次に、これらの曲線の各々のピークフォースがイメージングフィードバック信号として使用され、直接フォース制御を行う。これにより、TappingMode(商標)よりさらに低い力で操作することが可能になり、繊細なサンプルやチップを保護するのに役立つ。
【0094】
ScanAsyst(商標)は、全てのイメージングパラメータを自動的に最適化するためにインテリジェントアルゴリズムを利用するPFTの変法である。この手法に使用されるSCANASYST-AIRプローブは公称先端半径2nmである。
【0095】
実施例は、500×500nm、1×1μm(2回)、および5×5μmの領域にわたって分析した。1×1μmおよび5×5μmのスキャンは、ScanAsystを組み込んでいるPeak Force Tappingモード(PFTSA)運転のDimension Icon AFMを用いて行った。このモードのイメージングは、従来のTapping Modeで使用されるチップ(チップ半径約8nm)よりも小さいシリコンチップ(半径約2nm)を有する窒化シリコンカンチレバーからなるプローブを使用する。500×500nmのスキャンはソフトTapping Modeを用いて行った。PFTSA画像は「高さセンサー」と「ピークフォース誤差」として同時に収集されたが、Tapping Mode画像は「高さセンサー」と「振幅誤差」として取得された。
【0096】
データ分析
NanoScope Analysisバージョン1.40ソフトウェアを使用して生データを平坦化し(試料の傾きを除去し)、以下の3D領域粗さパラメータについてデータを分析した。
・Sa-算術平均高さ-表面の算術平均と比較した各点の高さの差を表す。このパラメータは一般に表面粗さを評価するために使用される。
【0097】
Saは、ISO25178-2:2012製品の幾何特性仕様(GPS)--表面性状:三次元-第2部:用語、定義、および表面性状のパラメータに従って測定した。各実施例について4つのSa値の平均をとった。
【0098】
【0099】
表2は、実施例8aが、実施例7aよりも粗いベース層表面を有することを示しており、それは実施例8aで用いられたより高いガラス基板温度に起因すると仮定される。上で詳述したように、ベース層の粗さは、その後に堆積される層の粗さを大きく左右するが、実施例8cにおける最上層の堆積前に行った冷却により、実施例9cにおいて冷却なしで得られた粗さよりも粗さが低減されることは注目に値する。表2はまた、スタックの粗さとそれが示すヘイズとの間に強い相関関係があることも示している。
【0100】
コーティングされたグレージングのさらなるプレス曲げおよび湿度試験
上記した実施例4~6と同じ仕方で、5つのさらなる実施例(10~14)を調製した。実施例10~14を、上記した比較例1~3および実施例4~6と同じ仕方でプレス曲げし、湿度試験した。実施例10~14の全ては、少なくとも35nmの厚さのSnO2ベース層を有していた。
【0101】
比較例1および2ならびに実施例10~14の平均ヘイズおよびSa値は、上記したのと同じ仕方で測定し、以下の表3に示す。Sa値については、実施例7a~7c、8a~8c、および9a~9cに関して上記した3つの異なる走査サイズについて測定された4つの値の平均をとった。各実施例について、Sa値は、SnO2:Fの最上層の表面の算術平均高さを表している。
【0102】
0~10の凝集破壊等級を、湿度試験後の各実施例に付与した。0は凝集破壊がないことを表し、完全な凝集破壊を表す10まで徐々に増加させた。
【0103】
【0104】
上記したように、
図5は、湿度試験後の比較例1の写真を示している。湿度試験後の比較例2および実施例10~14の写真をそれぞれ
図7~12に示す。表3および関連の図から分かるように、一般に、凝集破壊等級は、SnO
2:Fの最上層の表面の平均ヘイズおよび平均Saに反比例し、それはもちろん主としてSnO
2のベース層の粗さに起因する。許容される凝集破壊等級は、より低い平均Saで達成することができるが、最良の凝集破壊性能を達成するためには少なくとも16nmのSaが必要とされる。
【0105】
本発明は、上記実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書に開示された特徴の任意の新規のもの、もしくは任意の新規の組み合わせにまで及ぶ(任意の添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)か、または任意の方法もしくはプロセスのステップの任意の新規のものまたは任意の新規の組み合わせにまで及ぶ。