(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】流体特性の横方向検出
(51)【国際特許分類】
G01N 21/05 20060101AFI20230727BHJP
G01N 27/07 20060101ALI20230727BHJP
G01N 27/22 20060101ALI20230727BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
G01N21/05
G01N27/07
G01N27/22 B
G01N21/17 N
(21)【出願番号】P 2019558401
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2018060979
(87)【国際公開番号】W WO2018197712
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-03-25
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515213788
【氏名又は名称】ファルマフルイディクス・ナムローゼ・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】PharmaFluidics NV
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】パウル・ヤコブス
(72)【発明者】
【氏名】ウィム・デ・マルセ
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-113979(JP,A)
【文献】再公表特許第2009/031375(JP,A1)
【文献】特表2016-508440(JP,A)
【文献】特開2002-221485(JP,A)
【文献】特開2009-063601(JP,A)
【文献】特開2007-248253(JP,A)
【文献】特開2009-175108(JP,A)
【文献】特開2006-300726(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0079248(US,A1)
【文献】特開2015-001416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
G01N 35/00 - G01N 37/00
G01N 30/00 - G01N 30/96
B01J 20/281 - B01J 20/292
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の特性を検出するためのミクロ流体装置であって、
該ミクロ流体装置が、少なくとも流体プラグを受け取るための入口
、流体プラグを
排出するように構成された出口を有するミクロ流体流路
、及び流体プラグの長軸が、
その長手軸がより細い入口流路の長手方向に配向している初期の配向とは対照的に、ミクロ流体流路の壁に対して垂直方向に本質的に配向
するように、流体プラグの向きを変えるための柱系フロー分配器とを備え、
該ミクロ流体流路の幅
Wが
ミクロ流体装置の入口または出口の幅よりも大きく、
該ミクロ流体装置が少なくとも1つの検出器を用いて流体の物理的または化学的特性を検出するように適合されており、
該ミクロ流体装置がミクロ流体流路の幅方向にミクロ流体流路にわたって配置された検出領域において前記
物理的または化学的特性を検出するように構成されており、
該ミクロ流体装置が
、ミクロ流体流路の幅
Wより小さい
、柱系フロー分配器の出口または入口
からの距離
D(即ち、D<W)内に配置された検出領域を有するように構成されて
おり、
該ミクロ流体装置が、試料の光学特性を決定するために、試料と放射線との間の相互作用を提供するように適合されており、
該ミクロ流体装置が、限定された検出領域における前記放射線を制限するためのコリメート手段および/またはガイド手段を備え、そして
該ミクロ流体装置が、ミクロ流体流路における平均フロー方向に対して横方向において測定することで物理的または化学的特性を検出するように構成されている、
ミクロ流体装置。
【請求項2】
前記ガイド手段は、放射線が前記限定された検出領域内にとどまるように、放射線を方向転換させる反射体もしくは反射面であるか、または前記限定された検出領域の外側で発生する放射線を低減するための吸収体もしくは吸収面である、請求項
1に記載のミクロ流体装置。
【請求項3】
前記
ミクロ流体装置が、光ファイバーを使用して、放射線源からの放射線を結合するように、および/または検出器に向けて放射線を脱結合するように適合されている、請求項
1又は2に記載のミクロ流体装置。
【請求項4】
前記ミクロ流体装置が、放射線源および/または光学検出器を備える、請求項
1~
3のうちのいずれか一項に記載のミクロ流体装置。
【請求項5】
前記ミクロ流体装置が、抵抗、インピーダンス、静電容量、または電流密度のうちのいずれか1つを検出するための電気的検出器を備える、請求項
1~4のうちのいずれか一項に記載のミクロ流体装置。
【請求項6】
前記電気的検出器が、少なくとも1つの作用電極、および少なくとも1つの対向電極を備える、請求項
5に記載のミクロ流体装置。
【請求項7】
前記電気的検出器の位置での前記ミクロ流体流路の高さが、前記ミクロ流体流路の残りの部分の平均よりも実質的に小さい、請求項
5又は6に記載のミクロ流体装置。
【請求項8】
前記ミクロ流体装置が、
化学的特性を検出するための検出器を備える、請求項
1~7のうちのいずれか一項に記載のミクロ流体装置。
【請求項9】
請求項1
~8のうちのいずれか一項に記載のミクロ流体装置を備える検出システム。
【請求項10】
更に、導波路内を移動する放射線の試料との相互作用を誘発するための、前記ミクロ流体流路の実質的に幅方向にミクロ流体流路内に配置された導波路を備える請求項1~8のうちのいずれか一項に記載のミクロ流体装置と、ミクロ流体流路内の試料流体とを、備える検出システム。
【請求項11】
前記導波路が、前記ミクロ流体流路内の前記試料流体とのエバネッセント波相互作用を誘発するために配置されている、請求項10に記載の検出システム。
【請求項12】
前記
検出システムが、一体型放射線源、一体型検出器、検出データを処理し、そこから前記試料流体の特性を引き出すためのプロセッサー、および前記試料流体の特性を出力するための出力手段のうちの1つ以上をさらに備える、請求項
10又は11に記載の検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の特性を検出するためのミクロ流体装置に関する。より具体的には、本発明は、分配器および検出器が、良好な感度で流体の特性を検出するように構成されているミクロ流体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体特性の検出は、複数の用途において実行される。かなりの用途では、特性の検出に利用可能な流体の量は少なく、それが、特性の正確かつ高分解能の定量性を得るための困難さを増加させる。ミクロ流体構造物は、多くの場合、少量の流体のキャラクタリゼーションの実行に使用される。それにもかかわらず、従来のミクロ流体構造物であっても、利用可能な流体の量により、正確なキャラクタリゼーションが困難になり得る。
【0003】
いくつかの特定のミクロ流体構造物は、少量しか利用できない流体の特性をキャラクタリゼーションするために特別に構成されている。
【0004】
その一例は、ミクロ流体流路が、Z形状を有し、検出が、ミクロ流体流路の長さ方向に特性を検出することにより実行される、Z形状構成である。
【0005】
それにもかかわらず、検出を実行することが可能な経路長が、利用可能な流体の限定された量に対して著しく長くなることが可能であっても、多くの場合、既存の解決策は、誘導背圧が高いシステムと一致する。
【0006】
その結果、なお改善の余地がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の実施形態の目的は、良好な感度で流体の特性を検出することができる検出システムを提供することである。本発明の実施形態の利点は、試料の利用可能な量が制限される場合でも、高感度で特性を検出することができる検出システムが得られることである。
【0008】
本発明による実施形態による利点は、システムにおいて発生する圧力損失を制限しながら、長い経路長にわたって測定することを可能にする検出システムが提供されることである。
【0009】
上記の目的は、本発明による方法および装置によって達成される。
【0010】
第1の様態では、本発明の実施形態は、流体の特性を検出するためのミクロ流体装置に関し、該ミクロ流体装置は、
流体プラグを受け取るための入口または流体プラグを除くための出口を有するミクロ流体流路と、流体プラグの長軸が、その元の配向とは対照的に、ミクロ流体流路の壁(例えば、直立した側壁)に対して垂直方向(すなわち、横方向)に本質的に配向し、より長い長軸がより狭い入口流路の長手方向に配向しているように、流体プラグの向きを変えるための柱系フロー分配器と、を備え、該ミクロ流体流路の幅Wは、入口または出口流路の幅wよりも実質的に大きく、
該ミクロ流体装置は、少なくとも1つの検出器を用いて、流体の物理的または化学的特性を検出するように適合されており、該ミクロ流体装置は、ミクロ流体流路の幅方向に、ミクロ流体流路全域にわたって配置された検出領域において特性を検出するように構成されており、該ミクロ流体装置は、柱系フロー分配器の出口または入口からの距離D内に配置された検出領域を有するように構成されており、該距離Dは、ミクロ流体流路の幅Wより小さい。
【0011】
複数の柱を備えた、柱系フロー分配器が、前進するおよび/または後退する流体プラグ前部の歪みを低減し得ることが特に有利である。
【0012】
本発明の実施形態の利点は、システムが、少量試料の研究を可能にする、非常に少量で、高感度で、流体プラグの特性を検出し得ることである。後者は、ミクロ流体流路の幅方向に配向される検出領域によって得られる。
【0013】
ミクロ流体流路の最大幅に対する、入力と出力の間のミクロ流体流路の長さのアスペクト比は、1以上であり得る。幅Wを有する、ミクロ流体流路の部分の全長は、ミクロ流体流路の幅Wよりも長くてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、フロー分配器は、ミクロ流体流路の入口に配置され得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、フロー分配器は、ミクロ流体流路の出口に配置され得る。本発明による実施形態では、複数の柱、例えば、規則的な柱の配列は、ミクロ流体流路に有利に導入され得る。出口の分配器付近の検出の場合には、このような複数の柱が、流体プラグの表面形状の歪みを低減し得ることが特に有利である。
【0016】
さらにいくつかの実施形態では、フロー分配器は、ミクロ流体流路の入口および出口の両方に配置され得る。検出器は、入口および出口のフロー分配器の両方に対して共通であり得るか、またはより長い流路が使用される場合、検出器は、入口のフロー分配器付近か、出口のフロー分配器付近か、または両方の位置に配置され得る。
【0017】
本発明の実施形態の利点は、検出が、同じ状態である流体試料の異なる部分で行われるので、流体特性のより正確な検出が得られ得る、一方、ミクロ流体流路の長さに沿って測定が行われる場合、得られた結果は、異なる状態である流体試料の異なる部分にわたって平均化される。
【0018】
本発明の実施形態の利点は、検出器の場所での流体プラグの線速度が、入口および出口流路内の線速度より実質的に低く、そのことは、局所機能とのより効率的な相互作用を可能にし、検出を促進、強化、または増幅し得ることである。
【0019】
本発明の実施形態の利点は、高分解能での検出システム、すなわち、これにより、試料を通る経路の長さが十分に長くなり、既存の検出システムよりも簡単に製作され得る、
そこで、例えば、従来システムなどの長い経路長が得られる、そこで、U形状流路または従来システムにおいて測定が行われ、Z形状流路において測定が行われることである。
【0020】
検出領域内のミクロ流体流路の幅(W)は、少なくとも0.2mm、好ましくは1mm、好ましくは、少なくとも10mm、最大数10cmであり得る。
【0021】
本発明の実施形態の利点は、高分解能での検出システム、すなわち、これにより、試料を通る経路の長さが十分に長くなり、少量で、すなわち、入口および/または出口流路の幅、または入口または出口の毛細管の幅が、小さく保たれねばならず、既存の検出システムよりも著しく低い背圧を導入し、そこで、例えば、従来システムなどの長い経路長が得られ、U形状流路または従来システムにおいて測定が行われ、Z形状流路において測定が行われることである。本発明の実施形態において誘導される背圧が、U形状流路またはZ形状流路を使用するシステムなどの、既存の従来システムよりも、少なくとも10倍、有利なことに少なくとも100倍低くし得ることは利点である。
【0022】
ミクロ流体装置は、試料の光学特性を決定するために、試料と放射光線との間の相互作用を提供するように適合され得る。光学検出は、例えば、吸光度または吸光度スペクトル、透過率または透過スペクトル、反射率または反射スペクトル、散乱だけでなくラマンスペクトルなどを検出することなどの、流体プラグをキャラクタリゼーションするために使用され得る、流体プラグの様々な特性の検出を支援し得る。これらの光学特性は、流体プラグ内に存在する成分を定性および定量するために使用され得る。
【0023】
システムは、限定された検出領域における放射線を制限するためのコリメート手段および/またはガイド手段を備え得る。
【0024】
ガイド手段は、放射線が限定された検出領域内にとどまるように、放射線を方向転換させる反射体もしくは反射面である得るか、または限定された検出領域の外側で発生する放射線を低減するための吸収体もしくは吸収面であり得る。このような反射面は、検出領域内のミクロ流体流路の底面および上面、ならびに検出領域の脇に配置された柱構造上で発生し得る。
【0025】
システムは、光ファイバーを使用して、放射線源からの放射線を結合するために、および/または検出器に向けて放射線を脱結合するように適合され得る。このような光ファイバーは、複数の様式、例えば、光ファイバーの劈開面の使用、ファイバーの結合の使用などにおいて、ミクロ流体装置に結合され得る。
【0026】
ミクロ流体装置は、放射線源および/または光学検出器を備え得る。
【0027】
ミクロ流体装置は、外部検出器をミクロ流体装置に結合するカプラーを備えることができ、その結果、検出領域内で捕捉される信号が、外部検出器で読み取られ得る。本発明の実施形態の利点は、ミクロ流体装置が、検出器を備える検出システムを用いて使用され得る、カートリッジとして使用され得ることである。このようなカートリッジが、消耗品として使用され得、洗浄のために検出システムから分離され得ることなどが利点である。
【0028】
ミクロ流体装置は、外部光学放射線源からの放射光線を結合するためのカプラーを備え得る。
【0029】
放射線源は、一体型放射線源であり得る。検出器は、一体型検出器であり得る。本発明の実施形態の利点は、システムが、例えば、外部放射線源の結合、またはミクロ流体装置の検出器の必要性がないなど、使用し易い可能性がある。
【0030】
ミクロ流体装置は、ミクロ流体流路の実質的に幅方向に、ミクロ流体流路内に配置された導波路であって、導波路内を移動する放射線の相互作用を誘発するための導波路と、ミクロ流体流路内の試料流体と、を備え得る。
【0031】
導波路は、ミクロ流体流路内の試料流体とのエバネッセント波相互作用を誘発するために配置され得る。
【0032】
ミクロ流体装置は、抵抗、インピーダンス、静電容量、または電流密度のうちのいずれかを検出するための電気的検出器を備え得る。電気的検出器は、少なくとも1つの作用電極、および少なくとも1つの対向電極を備え得る。電気的検出器の位置でのミクロ流体流路の高さは、ミクロ流体流路の残りの部分の平均よりも実質的に小さい場合がある。
【0033】
ミクロ流体装置は、化学検出器を備え得る。
【0034】
本発明はまた、上記に記載されているようなミクロ流体装置を備える検出システムにも関する。検出システムは、一体型放射線源、一体型検出器、検出データを処理し、データから試料流体の特性を引き出すためのプロセッサー、および試料流体の特性を出力するための出力手段のうちの1つ以上をさらに備え得る。検出システムは、一体型検出システムであり得る。或いは、検出システムは、カートリッジおよびカートリッジホルダーとして構成され得る。
【0035】
本発明の特定のかつ好ましい態様は、添付の独立請求項および従属請求項に記載される。従属請求項からの機能は、必要に応じて独立請求項の機能、および他の従属請求項の機能と組み合わせることができ、単に請求項に明示的に記載されるだけではない。
【0036】
本発明のこれらのかつ他の態様は、以下で記載される実施形態(複数可)から明らかになり、実施形態(複数可)を参照して解明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1a】本発明の一実施形態によるミクロ流体装置を示す概略図である。
【
図1b】本発明の一実施形態によるミクロ流体装置を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、外部光源および外部光学検出器を使用する、光学パラメータを測定するためのミクロ流体装置を示す上面図(A)および側面図(B)である。
【
図3】本発明の一実施形態による、放射線の結合および脱結合のための光ファイバーを使用する、光学パラメータを測定するためのミクロ流体装置を示す上面図(A)および側面図(B)である。
【
図4】本発明の一実施形態による、電気的または電気化学的パラメータを測定するためのミクロ流体装置のための電気的検出器を示す上面図(A)、側面図(B)、および拡大図である。
【
図5】本発明の一実施形態による、埋め込み導波路を使用する、光学パラメータを測定するためのミクロ流体装置を示す上面図(A)および側面図(B)である。
【0038】
異なる図面において、同じ参照符号は、同じまたは類似の要素を指す。
【0039】
請求項における任意の参照符号は、範囲を限定するものとして解釈されてはならない。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、特定の実施形態に関して、かつ特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれに限定されず、請求項のみによって限定される。記載される図面は、概略であり、非限定的である。図面において、いくつかの要素のサイズは、誇張されてもよく、説明目的のためであり縮尺通りには描かれていない。寸法および相対寸法は、本発明の実施に対する実際の低減に対応しない。
【0041】
本明細書および請求項における第1、第2などの用語は、同様の要素を区別するために使用され、必ずしも時間的、空間的、ランキング、または任意のその他の様式で順序を説明するためではない。そのように使用される用語は適切な状況下で互換性があり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書で記載または例示される以外の順序で操作することが可能であると理解されるべきである。
【0042】
さらに、本明細書および請求項における上部、底部などの用語は、説明目的で使用され、必ずしも相対的な位置を記載するためではない。そのように使用される用語は適切な状況下で互換性があり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書で記載または例示される以外の方向で操作することが可能であると理解されるべきである。
【0043】
請求項において使用される「備える」という用語は、その後に列挙される手段に制限されていると解釈されるべきではなく、他の要素または工程を排除しないと気付くべきである。したがって、記載された、参照される機能、整数、工程、構成要素の存在を明記するものとして解釈されるべきであり、1つ以上の他の機能、整数、工程、構成要素、またはそれらの群の存在または追加を妨げるものではない。したがって、「手段AおよびBを備えるデバイス」という表現の範囲は、構成要素AおよびBのみからなるデバイスに限定されるべきではない。本発明に関して、デバイスの唯一の関連構成要素は、AおよびBであることを意味する。
【0044】
本明細書全体を通して「一実施形態(one embodiment)」または「一実施形態(an embodiment)」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の機能、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な場所において、「一実施形態では(in one embodiment)」または「一実施形態では(in an embodiment)」という句の発現は、必ずしも全て同じ実施形態を参照しているわけではないが、そうであるかもしれない。その上、特定の機能、構造、または特性は、この開示から当業者には明らかなように、1つ以上の実施形態において、任意の好適な様式で組み合わせてもよい。
【0045】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明において、本発明の様々な機能は、開示を合理化する、かつ様々な発明の態様のうちの1つ以上の理解を支援する目的で、単一の実施例、図、またはそれらの説明で一緒にグループ化されることもあると理解されるべきである。しかし、この開示方法は、請求項に係る発明には、各請求項で明示的に列挙されているものよりも多くの機能が必要であるという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が反映するように、本発明の態様は、単一の上記の開示された実施形態の全ての機能よりも少ない。したがって、「発明を実施するための形態」に続く請求項は、この「発明を実施するための形態」に明示的に組み込まれ、各請求項は、本発明の別個の実施形態として独立している。
【0046】
その上、本明細書に記載されるいくつかの実施形態には、他の実施形態に含まれる他の機能ではなく、いくつかの機能が含まれるが、異なる実施形態の機能の組み合わせは、当業者によって理解されるように、本発明の範囲内にあること、および異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、以下の請求項において、請求する実施形態のうちのいずれかは、任意の組み合わせで使用され得る。
【0047】
本明細書で提供される説明において、多数の具体的な詳細が記載される。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細なしで実施され得ると考えられる。他の例では、周知の方法、構造、技術は、この説明の理解を不明瞭にしないために、詳細に示されない。
【0048】
本発明による実施形態で、「ミクロ流体」への言及がなされている所は、流体構造または装置への言及であり、そこで、1000μm~1μm以下の間隔内、有利なことに50μm~1μm以下の間隔内である少なくとも1つの寸法を有する少なくとも1つの流路が存在する。
【0049】
本説明および請求項で、規則的なセットへの言及がなされている所は、ランダムに配置されていない一連の要素への言及であるが、要素間の距離には特定の関係が存在する。
【0050】
本説明および請求項で、分配または分散への言及がなされている所は、面積または体積にわたる空間分散への言及である。
【0051】
本発明による実施形態で、柱構造への言及がなされている所は、流路内の流体フローに影響を与えるために流路内に配置される構造への言及である。柱は、底壁から直立し得る。それは、任意の適切な形状を有し得る。それは、例えば、ひし形、楕円形、長円形、多角形、蝶形などであり得る、例えば、柱構造の断面を有し得る。
【0052】
本発明の第1の態様は、流体の特性を検出するためのミクロ流体装置に関する。このような特性は、例えば、光学密度、吸光度、透過率、反射率、散乱作用などの光学特性、例えば、抵抗、インピーダンス、静電容量、または電流密度などの電気的特性、例えば、誘電特性または電荷分布および誘電特性と組み合わせた抵抗性または導電性の場合、特定の電極または電解コンダクタンスで特定の電位で還元または酸化され得る電気的活性成分の存在などの電気化学的特性、流体内での特定の物質の存在などの化学的特性などであり得る。それはまた、例えば、表面弾性波を使用して検出され得るような、例えば、粘度などの、例えば、別の物理特性でもあり得る。ミクロ流体装置は、限定された試料の量のみが利用可能であるか、または測定される特性が急速に変化する試料には特に有用である、なぜなら、(ミクロ流体流路における平均フロー方向に関して)横方向、すなわち、フロー流路の幅方向において測定することによって長い経路長が得られるため、少量の試料に対して高い分解能でキャラクタリゼーションを得ることができるためである。システムは、特にミクロ流体流路の流体出力が、質量分析システムの入力として使用され得るため、質量分析などの他のキャラクタリゼーション技法と簡単に組み合わされ得ることがさらに有利である。
【0053】
本発明の実施形態の1つの特定の利点は、分配器および検出領域を備えるミクロ流体流路に誘導される誘導された背圧が、制限されること(すなわち、低く)、かつそれが、検出が実行され得る経路長に実質的に依存しないことである。検出が実行され得る経路長を長くしても、システムの誘導された背圧が著しく増加することはない。誘導された背圧は、例えば、本発明の実施形態によるシステムに加えられ得る初期圧力の20%、有利なことに10%、より有利なことに5%に制限され得る。加えられ得る初期圧力は、例えば、用途によって、またはシステムの機械的強度によって制限され得る。
【0054】
本発明の実施形態によるシステムは、流体プラグを受け取るための入口または流体プラグを除くための出口を有するミクロ流体流路を備える。該システムは、流体プラグの長軸が、その元の配向とは対照的に、ミクロ流体流路の壁(例えば、直立した側壁)に対して垂直方向(すなわち、横方向)に本質的に配向し、より長い長軸がより狭い入口流路の長手方向に配向しているように、流体プラグの向きを変えるための柱系フロー分配器(それがミクロ流体流路の出口に配置される場合、コンバイナとも称され得る)をさらに備える。それによって、ミクロ流体流路の幅Wは、入口または出口流路の幅wより実質的に大きい。本発明の実施形態によるミクロ流体装置は、流体の物理的(例えば、光学的、または電気的、または機械的)または化学的(例えば、組成に関連する)特性を、少なくとも1つの検出器を用いて検出するように適合されている。それは、ミクロ流体流路の幅方向に、ミクロ流体流路全域にわたって配置された検出領域内で特性を検出するように構成されている。ミクロ流体装置は、さらにミクロ流体流路の幅Wより小さい柱系フロー分配器の出口の距離D内に配置された検出領域を有するように構成されている。
【0055】
例示により、本発明の実施形態は限定されず、本発明の例示的な実施形態によるミクロ流体装置の標準機能および任意の機能は、
図1aおよび
図1bを参照してさらに議論される。
【0056】
図1aでは、ミクロ流体装置100が示される。ミクロ流体装置100は、流体プラグを受け取るための入口120を有するミクロ流体流路110を備える。使用されるミクロ流体流路は、ミクロ流体装置内で使用される流路の典型的な特徴を備え得る。使用されるミクロ流体流路の典型的な幅は、0.2mm~最大数10センチメートルの範囲であり得るが、実施形態は、これらに限定されない。ミクロ流体流路の有用な幅は、実行されるキャラクタリゼーションの種類に依存する。例えば、光学ビームと1mmの試料との相互作用の経路長をもたらす1mmの幅(光学キャラクタリゼーションの場合)になる。典型的なUV電源は、これらの条件下で、例えば、光学密度を検出するための有用な測定をもたらす。入口120は、典型的には、ミクロ流体流路110の幅よりも実質的に小さい幅を有し、乱流と分散を導入することなく、流体プラグの幅を大きくするために、フロー分配器130が使用される。フロー分配器130は、例えば、柱系フロー分配器などのフロー分配器の任意の好適な種類であり得るが、実施形態は、これらに限定されない。柱系分配器では、使用される柱は、様々な種類のうちの1つであり得、それらは、規則的なまたはランダムな様式で配置され得、それらは全て同じ材料で作製され得るか、または異なる材料などで作製されて得る。上記に示されているように、フロー分配器はまた、ミクロ流体流路の端部に配置され得る。その例が、
図1bに示される。
【0057】
本発明の実施形態によれば、ミクロ流体装置100は、ミクロ流体装置の内部または外部にあり得る少なくとも1つの検出器を用いて流体の物理的または化学的特性を検出するように適合されている。特性を検出し得るようにするため、特性の検出と関連する検出システムの一部として見なされ得る特定の構成要素が、ミクロ流体装置に導入される。光学検出が実行される場合、コリメートスリットなどのコリメート手段が導入され得、反射率または吸光度構造などのガイド手段が導入され得、電極が導入され得、化学処理されたまたは機能化された表面が導入され得る。さらに、特定の構成要素が、システム内の迷光を軽減または防止するために提供され得る。本発明の実施形態によれば、ミクロ流体流路110の幅方向に、ミクロ流体流路110全域にわたって配置された検出領域140が使用される。
【0058】
ミクロ流体装置100は、ミクロ流体流路の幅Wより小さい柱系フロー分配器130の出口の距離D内に配置された検出領域140を有するように構成されている。
【0059】
検出領域は、ミクロ流体流路の入口でフロー分配器の付近に示されるが、本発明の実施形態はまた、ミクロ流体流路の出口付近でフロー分配器を使用し得るか、または入口および出口の両方でフロー分配器を有する。
【0060】
例示として、本発明の異なる特定の実施形態を説明するいくつかの異なる例が、以下に示される。
【0061】
第1の特定の例では、例えば、光学密度、吸光度、または透過率などの光学パラメータが検出され得る例が示される。示される第1の特定の例によるミクロ流体装置は、流体プラグを入口からミクロ流体流路の幅Wに向かって展延するための柱系フロー分配器を備える。装置はまた、放射線と試料との相互作用が発生するミクロ流体流路の領域を備える。この領域は、例えば、分離領域として適合され得るが、実施形態は、これらに限定されない。特定の例はまた、流体プラグをミクロ流体流路の幅Wから出口流路のより小さい幅wに戻すための第2の分配器も示す。第2の分配器が存在しない同様の実施形態が作製され得ることに注意されたい。
【0062】
光学パラメータを検出するための放射線を発生させるための放射線源は、ミクロ流体装置の一部ではない場合がある。放射線源は、対象の波長領域において放射線を発する任意の好適な光源であり得る。例えば、放射線源および放射線検出器は、UV、可視、近赤外、または赤外放射線源のうちのいずれか、またはこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、使用される波長は、190nm~4500nmの範囲内であり得、例えば、190nm~1900nmの範囲内であり得る。放射線源は、例えば、広帯域放射線源、LED、レーザー、VCSELであり得る。
【0063】
光学パラメータを検出するための放射線を捕捉するための検出器は、放射後、試料と相互作用した。検出器は、ミクロ流体装置の一部であっても、一部でなくてもよい。検出器は、1次元強度検出器であり得るか、または2次元検出器であり得る。検出器は、例えば、フォトダイオードもしくは固体検出器、アバランシェダイオード、光電子増倍管、またはCMOSイメージセンサーなどのイメージセンサーであり得る。後者は、例えば、高分解能をもたらし得、例えば、迷光の補正を可能にし得る。
【0064】
ミクロ流体装置は、典型的には、ミクロ流体流路を通して光学パラメータを検出するための放射線をガイドするように適合され得る。ミクロ流体装置は、例えば、放射線がミクロ流体流路に入る前に、または放射線がミクロ流体流路を離れるときに放射線をコリメートするための1つ以上のコリメートスリットを備え得る。ミクロ流体装置はまた、ミクロ流体流路を通して適切な方向に放射線をガイドするための、かつ任意に、適切な条件下、すなわち、例えば、適切な角度下でミクロ流体流路に入るかまたは入らない放射線を遮断するための放射線ガイド手段もさらに備え得る。いくつかの例では、コリメートスリットおよび/またはさらなる放射線ガイド手段は、放射線が、ミクロ流体流路の平均フロー方向に対して垂直方向に、ミクロ流体流路を有利なことに横切るように、適合または配置され得る。
【0065】
放射線と試料との相互作用が発生するミクロ流体流路の領域は、特定の領域に、柱構造を備え得、放射線がミクロ流体流路を実際に横切る特定の領域に、柱構造が配置されていない領域を備え得る。
【0066】
例えば、本例示的な実施形態などのいくつかの実施形態では、柱構造が配置されていない領域は、ミクロ流体流路の上面および/または底面の反射コーティングによって、かつ/または柱構造のない領域付近の柱の反射コーティングによって囲まれ得る。
【0067】
例示として、これに限定されない特定の実施形態として、ミクロ流体装置の例が、
図2に示される。2つの分配器および放射線と試料との相互作用が発生するミクロ流体流路の領域を備える、ミクロ流体装置が示される上面図(A)と側面図(B)の両方が示される。
【0068】
別の特定の実施形態では、流体の光学パラメータをキャラクタリゼーションするためのミクロ流体装置が説明され、そこでは、流体をキャラクタリゼーションするための放射線が、入力光ファイバーを使用して装置内に導入され、かつ流体との相互作用後、放射線が、出力光ファイバーを使用して捕集される。したがって、入力光ファイバーは、ミクロ流体装置を、放射線源に接続し、出力光ファイバーは、ミクロ流体装置を、検出器に接続する。使用され得る光ファイバーの種類は、光ファイバーの任意の好適な種類であり得る。光ファイバーは、例えば、米国特許第8,477,298 B2号に記載されているような、角度-劈開光ファイバーであり得る。光ファイバーを使用する場合、コリメートスリットおよび放射線をガイドするための手段は、任意に回避され得る。例示として、例示的なミクロ流体装置が、上面図(A)と側面図(B)の両方を例示する
図3に示される。
【0069】
さらに他の実施形態では、流体の電気化学的パラメータをキャラクタリゼーションするためのミクロ流体装置が説明される。このような実施形態では、システムは、アンペロメトリーできるように適合されている。例示的なミクロ流体装置は、2つの分配器、入力流路の第1の幅から、電気的測定が実行される領域の幅に対応する第2の幅へ、試料プラグを広げるための第1の分配器、電気的測定が実行される領域の幅から、出力流路の幅に対応する第3の幅へ、試料プラグの幅を低減する第2の分配器を備える。第1および第2の例と同様に、第2の分配器が存在しない同様の実施形態が作製され得ることに注意されたい。ミクロ流体装置の中央領域は、第1の例示的実施形態で提供されたレイアウトと類似のレイアウトを有し得るが、電気的特性が測定される位置で、ミクロ流体流路の高さが低減され得る。電気化学的測定が実行される位置でのミクロ流体流路の高さδが小さい場合、測定された電気的パラメータの品質が有利なことに向上する。ミクロ流体流路の高さは、高さが低減される領域内で、例えば、10μm~0.1μmの間であり得る。電極は、ミクロ流体流路の上面カバー内で、有利なことに提供され得る。電極構成は、例えば、1つの作用電極が提供され、これによって作用電極の各側面に対向電極が提供されるようなものであり得る。いくつかの実施形態では、さらなる参照電極もまた提供され得る。一実施形態では、電極は、流体の平均電気的パラメータが測定されるように、ミクロ流体流路の幅全体にわたり延伸し得る。別の実施形態では、作用電極ならびに対向電極は、ミクロ流体流路の幅に沿って異なる位置で、電気的パラメータの異なる測定が実行され得るように、電極の配列として提供され得る。
【0070】
例示により、例示的ミクロ流体装置が、上面図(A)、側面図(B)、および電極がどのように実装され得るかの追加の指示を伴う電極部分(C)の拡大側面図を例示する
図4に示される。
【0071】
システムは、質量分析計との組み合わせで特に有利であり得る。
【0072】
第4の例示的な実施形態では、ミクロ流体装置は、重ねて流体を光学キャラクタリゼーションするように適合され得るが、これは、フォトニクスを使用して実行され得る。放射線は、ミクロ流体装置内に埋め込まれた導波路を介して、ミクロ流体装置内に提供され得る。次いで、導波路は、典型的には、壁、例えば、ミクロ流路の直立した側壁に対して実質的に垂直方向に配向される。本発明の実施形態の利点は、ミクロ流体装置が、フォトニクスと化学反応を起こさない材料から作製され得る、例えば、ミクロ流体装置は、ケイ素系材料から作製され得ることである。
【0073】
いくつかの実施形態では、導波路は、導波路内を移動する放射線が、中断の位置で、試料と相互作用するように、中断され得る。他の実施形態では、波路内を移動する放射線は、流体をキャラクタリゼーションするために、試料とのエバネッセント波相互作用を介して相互作用する。さらに他の実施形態では、導波路は、例えば、導波路内を移動する放射線の試料とのプラズモン相互作用を増加させる得るナノ構造で装飾され得る。本発明の実施形態による検出構成から利益を得ることができるシステムの一例は、Peyskensら、「Enhancement of Raman Scattering Efficiency by a Metallic Nano-antenna on Top of a High Index Contrast Waveguide」, CLEO 2013 Technical Digest, CM2F.5によって記載されている。
【0074】
1つの特定の実施形態では、システムは、導波路の表面上でラマン分光法を実行するように適合され得る。表面増強ラマン散乱は、相互作用が、表面で発生するようには厳密に制限されていないように、より長い範囲(最大30nm)でも現れることが示されている。本発明の実施形態による検出構成から利益を得ることができる技法のさらに別の例は、表面プラズモン共鳴である。或いは、システムはまた、吸光度測定、反射測定、透過測定、半透過測定、散乱測定、拡散反射率測定などを実行するように適合され得る。光学測定技法は、スペクトル分解測定技法であり得る。フォトニクス系システムの例が、表5に示される。
【0075】
一態様では、本発明はまた、第1の態様に記載されているようなミクロ流体装置を備える検出システムにも関する。このようなシステムは、ラボオンチップシステムであり得るか、またはその一部であり得る。検出システムでは、放射線源および検出器は、有利なことに、システム内で不均質に、混成に、または均質に一体化される。したがって、検出システムは、一体型検出システムであり得る。一体化システムの利点は、システムが非常にコンパクトであり得るように、システム内に一体化される全ての必要な構成要素を備え得ることである。或いは、検出システムは、カートリッジおよびカートリッジホルダーとして構成され得、これによって、カートリッジホルダーは、放射線源および検出器を備え、カートリッジは、ミクロ流体装置を備える。
【0076】
検出システムはまた、典型的には、測定された情報を処理し、そこから試料の定量的または定性的特性を引き出すためのプロセッサーを備え得る。システムは、その上、処理された情報を出力または表示する、または試料の特性を出力または表示するための出力手段を備え得る。