(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】エントランス構造
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
E21D9/06 301E
(21)【出願番号】P 2020036433
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長光 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹中 計行
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰司
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-020076(JP,A)
【文献】特開平10-238291(JP,A)
【文献】実開昭63-086197(JP,U)
【文献】実開昭60-053898(JP,U)
【文献】実開平02-079728(JP,U)
【文献】特表2002-530625(JP,A)
【文献】特表2005-519819(JP,A)
【文献】実公平05-040155(JP,Y2)
【文献】特開2000-328887(JP,A)
【文献】実開昭63-014699(JP,U)
【文献】特開平04-203097(JP,A)
【文献】特開2003-120190(JP,A)
【文献】特開2006-328754(JP,A)
【文献】特開2015-113691(JP,A)
【文献】特開2019-173441(JP,A)
【文献】特開2002-115166(JP,A)
【文献】実開昭57-115100(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第108952775(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00-9/14
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の開口部の周囲に複数の止水用ブラシが周設されてなる
トンネルのエントランス構造であって、
前記止水用ブラシは、
板状に束ねられたワイヤの束と、
面状のメッシュ部材と、を備えて
いるとともに、前記開口部の内面に固定された基部と、前記基部から延設されたブラシ部とにより断面視く字状を呈しており、
前記ワイヤの束は、トンネル周方向と直交する方向に複数層積層されており、
前記メッシュ部材は、積層された前記ワイヤの束同士の間に介設されており、
前記止水用ブラシの前記メッシュ部材の一部が隣接する他の前記止水用ブラシの前記メッシュ部材に重なっており、
前記開口部の隅角部には、当該隅角部の形状に応じて折り曲げられた一つの前記止水用ブラシが配設されてい
て、
前記開口部と、前記ブラシ部の根本部分との間に、パテが充填されていることを特徴とする、エントランス構造。
【請求項2】
前記隅角部に設けられた前記止水用ブラシの前記メッシュ部材に、プリーツ状に折り目が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のエントランス構造。
【請求項3】
前記メッシュ部材は、一対のワイヤーメッシュと、前記
一対のワイヤーメッシ
ュの間に介設された不燃布と、により形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のエントランス構造。
【請求項4】
前記止水用ブラシは、三層の前記ワイヤの束と、前記ワイヤの束
の層同士の間に介設されたメッシュ部材と、を基端部においてかしめることにより形成されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエントランス構造。
【請求項5】
前記止水用ブラシは、外面に外側保護板が配設されているとともに内面に内側保護板が配設されており、
前記外側保護板の外面に補強板がさらに積層されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のエントランス構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルのエントランス構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法や推進工法等によるトンネル施工では、発進立坑の壁面に形成された発進口(エントランス)から掘削機を発進させ、到達立坑の壁面に形成された到達口(エントランス)にトンネルを到達させる。
エントランスでは、発進口または到達口としての開口部の周縁にシール部材を周設することで、掘削機、セグメントまたは推進函体等と開口部の縁との隙間を止水する。
例えば、特許文献1には、立坑に形成された矩形エントランスの止水構造として、開口部の頂辺部と側辺部に沿って止水弾性シート設け、底辺部にリップ式シール部材を設けた止水構造が開示されている。また、特許文献2には、エントランスのシール部材に使用するワイヤーブラシが開示されている。
エントランスに設けるシール部材は、開口部の周縁の全周にわたって設置する必要がある。特許文献1の止水構造は、止水弾性シートとリップ式シール部材を配設することで止水性を確保するものであるが、大深度で地下水圧が大きいトンネル施工時には、止水弾性シートやリップ式シール部材の部材厚を大きくして地下水圧に対する耐力を確保する必要がある。また、トンネルの断面形状が大きい場合には、一体に成形されたシール部材の搬送、設置が困難になるため、シール部材を分割する必要がある。しかし、樹脂製のシール部材を分割すると、隙間(目地)が形成されるため、止水性が低下してしまう。
また、特許文献2のワイヤーブラシをエントランスのシール部材として使用する場合は、複数の短冊状のワイヤーブラシを開口部の周縁に沿って並設する必要がある。この場合、隣接するワイヤーブラシ同士の隙間には、パテやエポキシ樹脂等を充填する。また、隣接するワイヤーブラシ同士は、一部を重ねることで連続性を確保することが好ましい。ところが、矩形状の開口部に対して短冊状のワイヤーブラシを設置すると、隅角部の形状に追従し難く、隙間が形成され易くなってしまう。また、隅角部では、ワイヤーブラシ同士の重ね代がその他の部分に比べて小さくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-180215号公報
【文献】特開2014-020076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、大深度の高水圧トンネル施工時の発進口または到達口として設けられる矩形状のエントランスにおいても、止水性を確保できるエントランス構造を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明は、矩形状の開口部の周囲に複数の止水用ブラシが周設されてなるトンネルのエントランス構造である。前記止水用ブラシは、板状に束ねられたワイヤの束と、面状のメッシュ部材とを備えているとともに、前記開口部の内面に固定された基部と、前記基部から延設されたブラシ部とにより断面視く字状を呈している。前記ワイヤの束は、トンネル周方向と直交する方向に複数層積層されており、前記メッシュ部材は、積層された前記ワイヤの束同士の間に介設されており、前記止水用ブラシの前記メッシュ部材の一部が隣接する他の前記止水用ブラシの前記メッシュ部材に重なっており、前記開口部の隅角部には、当該隅角部の形状に応じて折り曲げられた一つの前記止水用ブラシが配設されていて、前記開口部と、前記ブラシ部の根本部分との間に、パテが充填されている。
かかるエントランス構造では、隅角部の形状に応じて成形された止水用ブラシを配設することで、矩形状のエントランスの止水性を確保している。また、隣り合う止水用ブラシ同士は、止水用ブラシの内部に介設されたメッシュ部材同士を重ねることで、連続性を確保している。メッシュ部材は、ブラシ部分が広がることを抑制し、その結果、止水用ブラシに充填したグリスの逸脱を抑制する。このように、本発明によれば、止水用ブラシの止水性が低下し難くなる。
【0006】
なお、前記隅角部に設けられた止水用ブラシのメッシュ部材に、プリーツ状に折り目が形成されていれば、隅角部の形状に応じて止水用ブラシの基端部に曲げ加工が施された場合であっても、メッシュ部材が隅角部の形状に追従することが可能となる。そのため、隅角部においてもメッシュ部材によるブラシ部分の拘束効果が低下し難く、ひいては、止水用ブラシによる止水性が低下し難い。
また、前記メッシュ部材が、一対のワイヤーメッシュと、前記一対のワイヤーメッシュの間に介設された不燃布とにより形成されていれば、止水用ブラシ内に充填されたグリスの逸脱抑制効果がより向上する。
また、前記止水用ブラシは、三層の前記ワイヤの束と、前記ワイヤの束の層同士の間に介設されたメッシュ部材と、を基端部においてかしめることにより形成されているのが望ましい。複層構造の止水用ブラシであれば、メッシュ部材によるブラシ部分の変形の抑制効果が向上するため、止水性をより効果的に保持することができる。
さらに、前記止水用ブラシの外面に外側保護板が配設されているとともに内面に内側保護板が配設されている場合には、前記外側保護板の外面に補強板をさらに積層することが望ましい。こうすることで、外側保護板による押付け力が弱く、ブラシの追従性が悪くなるおそれがある直線部において、ブラシの追従性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のエントランス構造によれば、大深度の高水圧トンネル施工時の発進口または到達口として設けられる矩形状のエントランスにおいて、所望の止水性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るエントランス構造の概要を示す正面図である。
【
図4】(a)は内側から望む隅角部用ブラシの斜視図、(b)は外側から望む隅角部用ブラシの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、矩形断面のトンネルをシールド工法により施工する場合に用いられるエントランス構造1を例示する。エントランス構造1は、トンネルの発進口または到達口における止水性を確保するために設けられたものである。
図1は、本実施形態のエントランス構造1の概要を示す正面図である。
エントランス構造1は、
図1に示すように、立坑やトンネルの壁面に形成された矩形状の開口部11の周囲に連設された複数の止水用ブラシ2を備えている。止水用ブラシ2は、開口部11を通過するシールドマシンの外周面と、開口部11との隙間を遮蔽し、当該隙間からの湧水を抑制する。止水用ブラシ2には、止水性の向上を図るためのグリスが注入されている。本実施形態のエントランス構造1は、大深度トンネルであるために地下水圧が高い場合であっても、止水性を確保することを可能としている。
【0010】
本実施形態の止水用ブラシ2は、
図2に示すように、複数層のワイヤ3の束と、ワイヤ3の束同士の間に介設されたメッシュ部材4と、外面に配設された外側保護板5と、内面に配設された内側保護板6と、外側保護板5の外面に積層された補強板7と、U字状の結束部材8とからなる。本実施形態の止水用ブラシ2は、三層のワイヤ3の束と、二層のメッシュ部材4と、外側保護板5と、内側保護板6と、補強板7とを基端部において結束部材8により挟持する(かしめる)ことにより形成されている。
止水用ブラシ2は、断面視く字状を呈していて、一方の片(基部21)が開口部11の内面(開口部11の縁)に密着させた状態で固定されている。止水用ブラシ2の他方の片(ブラシ部22)は、シールドマシンの進行方向に沿って延設されているとともに、基部21から離れるに従って開口部11の周縁から離れるように張り出している。
【0011】
止水用ブラシ2は、板状に束ねられた多数のワイヤ3を備えている。ワイヤ3は、ステンレス線や亜鉛メッキ線などの金属製の細線材からなる。ワイヤ3は、外側保護板5および内側保護板6よりも長く、先端部が外側保護板5および内側保護板6の先端から突出している。本実施形態の止水用ブラシ2は、三層のワイヤ3の束を有しているが、ワイヤ3の束の層数は限定されるものではなく、例えば、二層や四層以上であってもよい。また、各ワイヤ3の束の厚さは限定されるものではなく、適宜決定すればよい。本実施形態の止水用ブラシ2は、ワイヤ3の先端において、各層毎に段差を有している。
【0012】
メッシュ部材4は、一対のワイヤーメッシュと、ワイヤーメッシュ同士の間に介設された不燃布とにより形成されている。なお、メッシュ部材4の構成は限定されるものではなく、適宜形成すればよい。例えば、メッシュ部材4は、ワイヤーメッシュと不燃布とが積層されたものである必要はなく、ワイヤーメッシュのみで構成されていてもよい。また、一対のワイヤーメッシュに介設される部材は不燃布に限定されるものではなく、例えば金属製の部材であってもよい。また、本実施形態では、二層のメッシュ部材4が配設されるものとしたが、メッシュ部材4の層数は限定されるものではなく、ワイヤ3の束の層数に応じて適宜決定すればよい。
【0013】
止水用ブラシ2において、外側保護板5および内側保護板6によりワイヤ3が把持されているため、ワイヤ3の変形や開きが抑制されており、したがって、グリスの流出が抑制されている。
外側保護板5は、鋼板からなり、最外層のワイヤ3の束の外面を覆っている。外側保護板5の板厚は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
内側保護板6は、最内層のワイヤ3の束の内面を覆っている。本実施形態の内側保護板6は、外側保護板5と同じ板厚で、外側保護板5よりも小さい幅の鋼板からなる。なお、内側保護板6の板厚は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。また、内側保護板6の幅寸法は限定されるものでなく、外側保護板5と同じ幅であってもよい。
補強板7は、外側保護板5によるワイヤ3(ブラシ)への押付力を増強するための板材であって、外側保護板5の外面に添接されている。本実施形態の補強板7は、外側保護板5と同じ板厚で、外側保護板5よりも小さい幅の鋼板からなる。なお、補強板7の板厚は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
【0014】
結束部材8は、U字状の鋼板からなる。結束部材8には、内外方向に貫通する複数のボルト孔(図示せず)が形成されている。ワイヤ3、メッシュ部材4、外側保護板5、内側保護板6および補強板7の基端部を内側に挟んだ状態で、ボルト孔に挿通されたボルトを締結すると、ワイヤ3、メッシュ部材4、外側保護板5、内側保護板6および補強板7が結束部材8によって固定される。なお、結束部材8の構成は限定されるものではなく、例えば、コ字状の鋼板であってもよいし、二枚の鋼板であってもよい。また、結束部材8は、必要に応じて設置すればよく、例えば、外側保護板5および内側保護板6によりワイヤ3およびメッシュ部材4を固定する場合には省略してもよい。
【0015】
本実施形態のエントランス構造1では、
図1に示すように、四辺の直線部12にはそれぞれ複数の直線部用ブラシ23が並設されていて、四つの隅角部13にはそれぞれ隅角部用ブラシ24が一つずつ設置されている。隣り合う止水用ブラシ2のうち、メッシュ部材4の一部(端部)同士、外側保護板5の一部同士およびワイヤ3の束の一部(端部)同士は重なっている(ラップしている)。なお、隣り合う止水用ブラシ2同士の接合部(当接部)には、両止水用ブラシ2にまたがってメッシュ材を追加して配設してもよい。こうすることで、止水用ブラシ2の連続性が向上し、止水性がより高くなる。なお、メッシュ材にはメッシュ部材4と同じ材料を使用すればよい。
止水用ブラシ2の基端部(結束部材8)は開口部11の周縁に固定されている。本実施形態では、開口部11に設けられた金属製の枠材に、結束部材8を溶接する。なお、止水用ブラシ2の固定方法は限定されるものではなく、例えば、治具により固定してもよい。隣り合う止水用ブラシ2の基端部(取付部)同士の間に隙間が形成される場合には、当該隙間にパテ材を充填する。なお、パテ材は、止水性を有し、水圧に対して流出することがない固定度を有した材料であれば、限定されるものではない。
【0016】
止水用ブラシ2と開口部11との間(ブラシ部22の根本部分)には、
図2に示すように、止水用ブラシ2の基部21からのグリスや水の流出を防止する不乾性パテP1が充填されている。なお、止水用ブラシ2の基部21からのグリスや水の流出を防止する材料には、不乾性パテP1の他、粘土等も使用可能である。
また、ブラシ部22の根元部分(例えば、基部21から3~5cm程度の範囲)には、樹脂や接着剤等が充填されていて、ブラシ部22の根元部分に水みちが形成されることが防止されている。
また、ブラシ部22を通った水が基部21に浸透して結束部材8同士の隙間から漏水することがないように、止水用ブラシ2の基部21には、不透水性を付加させる加工が施すのが望ましい。ここで、不透水性を付加させる加工は、例えば、止水用ブラシ2の製造段階において、基部21にエポキシ樹脂等の止水性を備えた材料を押し込むことにより行えばよい。
止水用ブラシ2のワイヤ3の束には、止水用封入グリスが注入されている。本実施形態の止水用封入グリスには、繊維が混合されていて、ワイヤ3と繊維が絡み合うことで、流出に対する抵抗性が向上している。なお、ワイヤ3の束には、発泡ウレタン系の材料を充填してもよい。ワイヤ3の束に発泡ウレタン系の材料を充填した場合には、ワイヤ3に発泡ウレタン系の充填剤が密着することで、流出に対する抵抗性が向上する。
【0017】
図3は、直線部用ブラシ23の斜視図である。直線部用ブラシ23は、基部21の幅が100mm程度である。直線部用ブラシ23の内側保護板6は、幅100mmの長方形状を呈している。直線部用ブラシ23の外側保護板5は、基端部の幅が100mm程度で、その他の部分は拡幅されている。すなわち、外側保護板5の幅方向(周方向)端部は、ワイヤ3の束から突出していて、隣接する他の外側保護板5の端部と重ねられる。
直線部用ブラシ23のメッシュ部材4は、隣接する他の止水用ブラシ2のメッシュ部材4と重ねられるように、ワイヤ3の束よりも側方に張り出している。
【0018】
図4は、隅角部用ブラシ24の斜視図である。
図4に示すように、隅角部用ブラシ24は、隅角部13の形状に応じて折り曲げられている。隅角部用ブラシ24は、隅角部13の形状に応じて曲線状に形成された曲線部分25と、曲線部分25の両端に設けられた直線部分26とを有している。本実施形態では、曲線部分25が300mm~500mm程度の幅を有していて、両端の直線部分26がそれぞれ100mm程度の幅を有している。すなわち、隅角部用ブラシ24は、直線部用ブラシ23の5倍から7倍程度の幅を有している。なお、隅角部用ブラシ24の幅の大きさは限定されるものではなく、エントランス部の形状に応じて適宜決定すればよい。
【0019】
隅角部用ブラシ24のメッシュ部材4の基端部には、プリーツ状の折り目が形成されている。すなわち、隅角部用ブラシ24のメッシュ部材4は、隅角部用ブラシ24の全幅よりも大きな幅を有していて、基端部がプリーツ状の折り目により折り畳まれた状態(ひだが形成された状態)で、ワイヤ3とともに固定されている。なお、メッシュ部材4には、必ずしもプリーツ状の折り目が形成されている必要はなく、例えば、基端部において不規則に折り畳まれていてもよいし、波型であってもよい。メッシュ部材4の幅方向両端は、隣接する直線部用ブラシ23のメッシュ部材4の端部と重ねられるように、ワイヤ3の束よりも側方に張り出している。
隅角部用ブラシ24の外面および内面には、それぞれ複数の外側保護板5および複数の内側保護板6が幅方向に並設されている。
【0020】
隅角部用ブラシ24の外側保護板5の基端部は、幅100mmを呈していて、外側保護板5のその他の部分は拡幅されている。隣り合う外側保護板5同士は、基端部の端面同士を突き合せた状態で並設されている。外側保護板5の基端部以外の部分は、側縁部同士が重ねられている。
隅角部用ブラシ24の内側保護板6は、曲線部分25において隣り合う他の内側保護板6と干渉しないように、幅を100mmよりも小さくするのが望ましい。なお、隅角部用ブラシ24の隣り合う内側保護板6同士は、端面同士を突き合せた状態、あるいは、端部を重ねた状態で並設されている。
【0021】
隅角部用ブラシ24は、補強板7、外側保護板5、ワイヤ3、メッシュ部材4および内側保護板6の基端部を直線状の結束部材8に挿入し、結束部材8をかしめて幅広の止水用ブラシ2を形成した後、プレス加工によって隅角部13の形状に応じて結束部材8を曲げることにより形成する。なお、隅角部用ブラシ24は、予め曲げ加工が施された結束部材8に外側保護板5、ワイヤ3、メッシュ部材4および内側保護板6の基端部を挿入することにより形成してもよい。
【0022】
以上のとおり本実施形態のエントランス構造1では、隅角部13の形状に応じて成形された隅角部用ブラシ24を配設することで、矩形状のエントランスの止水性を確保している。
また、隣り合う止水用ブラシ2同士は、止水用ブラシ2の内部に介設されたメッシュ部材4同士を重ねることで、連続性を確保している。メッシュ部材4は、ブラシ部分が広がることを抑制し、その結果、止水用ブラシ2に充填したグリスの逸脱を抑制する。このように、エントランス構造1によれば、止水用ブラシ2の止水性が低下し難くなる。ワイヤーブラシ(止水用ブラシ2)を使用したエントランス構造1では、止水性を確保するうえでメッシュ部材4の連続性が重要となる。本実施形態のエントランス構造1では、メッシュ部材4の連続性を確保しているため、止水性に優れている。また、止水用ブラシ2の基部に近い部分ではワイヤ3が密集しているため、メッシュ部材4同士をラップさせることが困難であるが、隅角部用ブラシ24では、隅角部13の幅(周方向の長さ)以上の幅を有したメッシュ部材4を配設して一体成型することで、連続性を確保している。
【0023】
隅角部用ブラシ24のメッシュ部材4に、プリーツ状に折り目が形成されているため、隅角部13の形状に応じて止水用ブラシ2の基端部に曲げ加工を施した際に、メッシュ部材4が隅角部13の形状に追従することが可能となる。そのため、隅角部13においてもメッシュ部材4によるブラシ部分(ワイヤ3)の拘束効果が低下し難く、ひいては、止水用ブラシ2による止水性が低下し難い。隅角部13では、ブラシ部分(ワイヤ3)の開閉に伴い、ブラシ部分に横方向の広がりが生じるため、メッシュ部材4の幅(周方向の長さ)はブラシ部分の広がりに応じた大きさを必要とする。本実施形態の隅角部用ブラシ24では、メッシュ部材4にプリーツ状の折り目を設けることで、ブラシ部分の横方向の広がりに応じた幅を確保している。
また、メッシュ部材4が、一対のワイヤーメッシュと、ワイヤーメッシュ同士の間に介設された不燃布とにより形成されているため、止水用ブラシ2内に充填されたグリスの逸脱抑制効果がより向上する。また、一対のワイヤーメッシュの間に不燃布が介設されているため、グリスとの付着性が向上し、ワイヤーメッシュとグリスとの間に水みちが形成されることを防止できる。また、不燃布を使用しているため、耐熱性と防水性が確保されている。
また、止水用ブラシ2の外面に配設された外側保護板5の外面に補強板7が積層されているため、ブラシの追従性が悪くなるおそれがある直線部12において、ブラシの追従性を向上させることができる。
【0024】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、矩形断面のシールドトンネルの施工について説明したが、トンネルの形状は限定されるものではなく、矩形以外の多角形断面であってもよいし、楕円形や小判方等であってもよい。
また、前記実施形態体では、直線部12に対して、複数の直線部用ブラシ23を配設するものとしたが、直線部12に配設する直線部用ブラシ23の幅は限定されるものではない。例えば、複数の直線部用ブラシ23の幅(周方向の長さ)と同等の幅となるように一体に成形された一つの直線部用ブラシ23を設置してもよい。このようにすれば、基部においてラップさせることができないメッシュ部材4を、一枚の連続した部材とすることができる。
また、直線部12では、止水用ブラシ2の基端部近傍におけるメッシュ部材4同士の連続性を確保するために、止水用ブラシ2の側面からのメッシュ部材4の張り出し長を大きくしたうえで(例えば10cm程度張り出させる)、隣り合う止水用ブラシ2のメッシュ部材4同士を一体化(例えば縫合)し、止水用ブラシ2を設置する際にメッシュ部材4同士の接合部をワイヤ3の束に押し込むようにしてもよい。このようにすれば、止水用ブラシ2の基端部付近においてメッシュ部材4同士の連続性を確保でき、高圧水に対応することが可能となる。
【0025】
前記実施形態では、外側保護板5の外面に補強板7を積層するものとしたが、補強板7は、必要に応じて配設すればよく、外側保護板5が十分な押付力を発現する場合には省略してもよい。
止水用ブラシ2の基部21には、異なる種類のパッキンを組み合わせて貼着させることで、止水性の向上を図ってもよい。
【0026】
隅角部用ブラシ24は、直線部用ブラシ23に比べてワイヤ3の密度を増加させてもよい。このようにすれば、ブラシ部分が横方向(周方向)に広がることでワイヤ3の密度が低下することを抑制できる。
前記実施形態では、止水用ブラシ2の基部21からのグリスや水の流出を防止することを目的として、止水用ブラシ2と開口部11との間(ブラシ部22の根本部分)に不乾性パテP1が充填したが、ブラシ部22の根本部分に設ける止水材は限定されるものではなく、例えば、開口部11の周囲に沿ってシール材(ゴム系、水膨張性等)を周設してもよい。
また、止水用ブラシ2の基部21においてもメッシュ部材4を側方に張り出させて、隣接する他の止水用ブラシ2の基部21から張り出したメッシュ部材4とラップさせてもよい。こうすることで、基部21における止水性が向上する。
【符号の説明】
【0027】
1 エントランス構造
11 開口部
12 直線部
13 隅角部
2 止水用ブラシ
23 直線部用ブラシ
24 隅角部用ブラシ
3 ワイヤ
4 メッシュ部材
5 外側保護板
6 内側保護板
7 補強板