(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】魚釣用スピニングリール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/01 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
A01K89/01 C
A01K89/01 A
(21)【出願番号】P 2020062827
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 諒
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特許第5323790(JP,B1)
【文献】特開2001-028980(JP,A)
【文献】特開2019-054768(JP,A)
【文献】特開2007-097581(JP,A)
【文献】特開2005-176779(JP,A)
【文献】特開2011-087570(JP,A)
【文献】特開2018-143209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルの巻取操作に連動回転するロータと、前記ロータのアーム部に支持され、釣糸巻取位置と釣糸放出位置とに回動可能なベール支持部材と、
前記アーム部の後端部に配設され、前記ベール支持部材の釣糸放出位置への回動に連動してリール本体側に移動する移動部材と、前記リール本体に取着され、
前記リール本体側に移動した前記移動部材の端部が圧接することで前記ロータに制動力を付与する環状の弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は、前記リール本体の収容溝に保持されており、
前記収容溝には、径方向内側に向けて凹む逃がし部が形成されており、
前記逃がし部は、前記移動部材により圧接されて径方向内側へ弾性変形した前記弾性部材の一部を挿入可能であることを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記逃がし部は、前記リール本体の周方向に間隔を空けて複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な魚釣用スピニングリールは、リール本体に回転可能に支持されたロータにラインローラ(釣糸案内部)を有するベール支持部材が設けられている。ベール支持部材は、バネ部材の付勢力により釣糸巻取位置と釣糸放出位置に振り分け保持されている。
【0003】
仕掛けを投擲する際には、ベール支持部材を釣糸放出位置に反転させ、釣竿を勢いよく振り下ろして釣糸を放出させる操作が行われる。しかしながら、このように釣竿を勢いよく振り下ろすと、その勢いでロータが回転してしまうことがあった。また、ハンドルの不要な回転等の影響によりロータが回転してしまうことがあった。
【0004】
このようなロータの回転を生じると、ベール支持部材が釣糸放出位置から釣糸巻取位置に誤復帰して釣糸が仕掛けとともに切断されるおそれがある。
【0005】
従来、このような誤復帰を防止する技術として特許文献1に開示された技術が知られている。
特許文献1では、ベール支持部材を釣糸放出位置に反転させる操作に連動して移動する係止部材を備えている。一方、リール本体前部には、環状の取付溝が形成され、この取付溝に環状の弾性部材が取着されている。係止部材は、反転操作時に、この弾性部材に向けて移動し、弾性部材の外周面に圧接することでロータに制動力を付与する作用をなす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、ベール支持部材の反転操作で係止部材の先端部が弾性部材の外周面に圧接してロータに制動力を付与するが、取付溝や弾性部材の寸法のバラツキの影響で弾性部材が取付溝に対して滑ったり、弾性部材が係止部材で押されて周方向に波打つ現象が生じるおそれがあった。このような現象を生じると、ロータの制動ムラを来すおそれがある。
【0008】
また、弾性部材の外周面に係止部材の先端部を摺接させて回転に抗する摩擦力を得る構成であるため、強い制動力が得られ難く、実釣時に仕掛けを投擲する際等に、ロータが不意に回転してしまうおそれがあった。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するために創作されたものであり、製品の寸法のバラツキによる不具合を解消して安定したロータの制動を得ることができ、加えて不用意にロータが回転することを確実に防止できる魚釣用スピニングリールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明に係る魚釣用スピニングリールは、ハンドルの巻取操作に連動回転するロータと、前記ロータのアーム部に支持され、釣糸巻取位置と釣糸放出位置とに回動可能なベール支持部材と、前記アーム部の後端部に配設され、前記ベール支持部材の釣糸放出位置への回動に連動してリール本体側に移動する移動部材と、前記リール本体に取着され、前記リール本体側に移動した前記移動部材の端部が圧接することで前記ロータに制動力を付与する環状の弾性部材と、を備えている。前記弾性部材は、前記リール本体の収容溝に保持されており、前記収容溝には、径方向内側に向けて凹む逃がし部が形成されている。前記逃がし部は、前記移動部材により圧接されて径方向内側へ弾性変形した前記弾性部材の一部を挿入可能である。
【0011】
この魚釣用スピニングリールでは、リール本体側に移動部材を移動させると、移動部材が弾性部材の外周面に圧接する。これによりロータに対して制動力が付与される。また、リール本体側に移動部材を移動させた後に、仮に圧接状態の移動部材が弾性部材の外周面上を摺動したとしても、弾性部材が移動部材に押されて逃がし部に入り込む弾性変形を生じて移動部材の摺動が規制される。これにより、ロータの不用意な回転が確実に防止される。
また、移動部材は、ベール支持部材の釣糸放出位置への回動に連動してリール本体側に移動して弾性部材に圧接するので、別途、移動部材をリール本体側に移動させる操作が必要なくなり、魚釣り操作性に優れる。
【0012】
また、弾性部材の弾性変形を利用してロータが制動されるものであるため、リール本体と弾性部材との寸法のバラツキ等による制動の不具合、例えば、リール本体に対する弾性部材の抱き付き力よりもロータの回転力や移動部材の圧接力が勝った場合に生じる弾性部材の波打ち現象や弾性部材の脱落等の機能トラブルを回避できる。
【0013】
また、移動部材をリール本体側に移動させた後に使用者が誤ってロータを回し続けた場合にも、逃がし部に弾性部材が入り込む弾性変形により、使用者に摺動抵抗の増加が認知されるため、ロータの不用意な回動が確実に防止される。
【0014】
また、前記逃がし部は、前記リール本体の周方向に間隔を空けて複数形成されていることが好ましい。このように構成することによって、リール本体側に移動部材を移動させた後に、仮に圧接状態の移動部材が弾性部材の外周面上を摺動したとしても、弾性部材が移動部材に押されて逃がし部に入り込み易くなる。これにより、移動部材の摺動が規制され易くなり、ロータの不用意な回転がより確実に防止される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、製品の寸法のバラツキによる不具合を解消して安定したロータの制動を得ることができ、加えて不意にロータが回転することを確実に防止できる魚釣用スピニングリールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る魚釣用スピニングリールの全体構成を示す側面図である。
【
図2】(a)は釣糸巻取位置における付勢機構の様子を示した説明図、(b)は釣糸放出位置における付勢機構の様子を示した説明図である。
【
図3】実施形態に係る魚釣用スピニングリールの要部を拡大して示す断面図である。
【
図4】実施形態に係る魚釣用スピニングリールの要部をさらに拡大して示す断面図である。
【
図5】実施形態に係る魚釣用スピニングリールの
図1におけるV-V線に沿う拡大断面図である。
【
図6】実施形態に係る魚釣用スピニングリールの作用説明図である。
【
図7】実施形態に係る魚釣用スピニングリールの作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を適用した魚釣用スピニングリールR1について、適宜図面を参照して説明する。実施形態の説明において、「上下」、「前後」を言うときは、
図1に示した方向を基準とする。
【0019】
図1に示すように、主として、魚釣用スピニングリールR1は、図示しない釣竿に装着するための脚部1Aが形成されたリール本体1と、リール本体1の前方に回転可能に設けられたロータ2と、このロータ2の回転運動と同期して前後方向移動可能に設けられたスプール3とを有する。
【0020】
リール本体1には、図示しない軸受を介してハンドル軸4が回転可能に支持されており、その図示しない突出端部には、巻き取り操作されるハンドル5が取り付けられている。
ハンドル軸4には、図示しない軸筒が、回り止めされて固定されている。この軸筒には、ロータ2を巻き取り駆動するための内歯が形成されたドライブギヤ6が一体的に形成されている。このドライブギヤ6は、ハンドル軸4と直交する方向に延出するとともに内部に軸方向に延出する空洞部を有する駆動軸筒8のピニオンギヤ8aに噛合している。
【0021】
駆動軸筒8は、軸受を介してリール本体1に回転可能に支持されており、その空洞部には、ハンドル軸4と直交する方向に延出し、先端側にスプール3が取り付けられるスプール軸9が、軸方向に移動可能に挿通され、支持されている。
【0022】
スプール軸9の後端部には、スプール軸9を前後動させるための公知のオシレーティング機構が備わる。オシレーティング機構は、少なくとも、ドライブギヤ6の歯車6aに噛合する連動歯車6bに設けられた偏芯突部7aと、スプール軸9の後端部に取り付けられた摺動子7と、この摺動子7に設けられ、偏芯突部7aと係合する案内溝7bと、摺動子7と係合して摺動子7の往復動を案内する図示しないガイドと、を含んで構成されている。
【0023】
駆動軸筒8はスプール3側に向けて延出しており、その前端部において、ナット9bを介してロータ2が取り付けられている。また、駆動軸筒8には、その中間部分に転がり式の一方向クラッチ10が取り付けられている。一方向クラッチ10は、ハンドル5(ロータ2)の逆転方向の回転(釣糸放出方向の回転)を規制する。
【0024】
ロータ2は、スプール3のスカート部3a内に位置する円筒部2aと、一対のアーム部2b,2cと、を具備している。
各アーム部2b,2cの前端部には、ベール支持部材2d,2eが釣糸巻取位置と釣糸放出位置との間で回動自在に支持されており、これらのベール支持部材2d,2e間には、放出状態にある釣糸をピックアップするベール2f(
図2(a)および(b)参照、以下同じ)が配設されている。ベール2fは、一方の基端部がベール支持部材2dに一体的に設けられたラインローラ2gに取り付けられており、他方の基端部がベール支持部材2eに取り付けられている。
【0025】
スプール3は、
図1に示すように、スカート部3aと前側フランジ3bとの間に図示しない釣糸が巻回される釣糸巻回胴部3cを備えており、スプール軸9に図示しないドラグ機構を介して摩擦結合され、ノブ9aを回動操作することでスプール3のドラグ力が調節される。
【0026】
このような構成によって、ハンドル5を巻き取り操作することで、ロータ2がドライブギヤ6およびピニオンギヤ8aを介して回転駆動され、かつスプール3がピニオンギヤ8aおよびオシレーティング機構を介して前後動され、図示しない釣糸は、ラインローラ2gを介してスプール3の釣糸巻回胴部3cに均等に巻回される。
【0027】
そして、ベール支持部材2d,2eは、アーム部2bに設けられた付勢機構30によって、釣糸巻取位置(
図2(a)参照)または釣糸放出位置(
図2(b)参照)に振り分け付勢保持されようになっている。
付勢機構30は、
図2(a)に示すように、支軸31を介してアーム部2bに揺動可能に取り付けられた筒状の揺動部材32を備えている。また、付勢機構30は、ベール支持部材2dと揺動部材32とを接続し、かつ揺動部材32と協働してベール支持部材2dを2つの位置に振り分ける振り分け部材33と、振り分け部材33と揺動部材32との間に介挿された振分け付勢バネ34とを備えている。
【0028】
ベール支持部材2dの後端部には、揺動部材32の後端部に押圧されて移動する移動部材40が設けられている。また、
図3に示すように、移動部材40に対向するリール本体1には、移動部材40の端部43が圧接する弾性部材50が設けられている。後記するように、ベール支持部材2dが釣糸放出位置に反転操作された際に、移動部材40が弾性部材50に圧接されて係合することでロータ2に制動力が付与されるように構成されている。移動部材40及び弾性部材50の詳細は後記する。
【0029】
ベール支持部材2dは、
図2(a)に示すように、その基端がピン35によって軸支され、アーム部2bに設けられた図示しない規制部位によって、二つの位置(釣糸巻取位置、釣糸放出位置)の間を回動可能に設けられている。
振り分け部材33は、その先端部33aがピン35の中心から偏心した位置でベール支持部材2dの基部に回動可能に接続され、他端部33b側が揺動部材32の筒状部内に挿入されている。
振り分け部材33の外周には振分け付勢バネ34が巻装されている。振分け付勢バネ34は、一端側が、振り分け部材33に形成されたバネ受け部33cで保持され、他端側が、揺動部材32の筒状部内に挿入され、内側の段差部33dで保持されている。
【0030】
図2(a)は、ベール支持部材2dが振分け付勢バネ34の付勢力によって釣糸巻取位置に振り分け保持された状態を示している。この状態で振分け付勢バネ34は、ピン35を中心としてベール支持部材2dを反時計回りに方向に付勢している。一方、
図2(b)に示すように、付勢機構30のデッドポイントを越えて釣糸放出位置へベール支持部材2dを回動させると、振分け付勢バネ34がベール支持部材2dを時計回りに方向に付勢して、釣糸放出位置に保持する。
【0031】
揺動部材32の後端部には、
図3に示すように、移動部材40の基端部41が当接している。揺動部材32は、ベール支持部材2dの回動に伴って揺動し、移動部材40の基端部41を径方向内方に押圧する作用をなす。揺動部材32の後端部には、移動部材40の基端部41を逃がす凹部32aが設けられている。
【0032】
揺動部材32は、ベール支持部材2dが釣糸巻取位置にあるときに、凹部32a内に基端部41を収容する(
図2(a)参照)。これにより、釣糸巻取位置では、基端部41に対して揺動部材32の押圧力が作用しないようになっている。
一方、この状態からベール支持部材2dが釣糸放出位置に反転操作されると、
図2(b)に示すように、揺動部材32の揺動に伴って基端部41が凹部32aから立ち上がる傾斜面32bによって凹部32a外に押し出されるようにして移動し、基端部41に径方向内方への押圧力が付与される。
【0033】
移動部材40は、
図4に示すように、側面視で略く字状を呈する棒状の部材である。移動部材40は、ロータ2のアーム部2bの後端部に配設されている。移動部材40は、アーム部2bの後端に設けられたガイド部45に先端部42側が挿通されて支持されており、支持された状態で基端部41が揺動部材32の後端部に当接するように構成されている。
【0034】
なお、ガイド部45に挿通された状態で、移動部材40の先端部42側の軸線O1は、スプール軸9の軸線(不図示)に対して直交している。また、移動部材40の基端部41側の軸線O2は、先端部42側の軸線O1に対してリール本体1の前方へ傾斜している。
【0035】
移動部材40は、先端部42側に挿通された圧縮コイルバネ44(戻しバネ)で基端部41側(揺動部材32の後端部側、弾性部材50から離れる側)に向けて付勢されている。
【0036】
このような移動部材40は、ベール支持部材2dが釣糸放出位置に反転操作された際に、基端部41が揺動部材32の後端部で径方向内方に押圧されてリール本体1側に移動(突出)する。そして、先端部42の端部43が弾性部材50に圧接されて係止されることで、ロータ2に制動力が付与される。
また、移動部材40は、ベール支持部材2dが釣糸巻取位置に返されると、圧縮コイルバネ44の付勢力によって基端部41が揺動部材32の凹部32aに収容される。これにより、先端部42の端部43が弾性部材50から離れ、移動部材40と弾性部材50との係合が解除される。
【0037】
次に、弾性部材50及びこれを収容する収容溝16について説明する。
図4に示すように、リール本体1の前部11には、径方向に突出し周方向に環状とされたフランジ部12が形成されており、このフランジ部12に収容溝16が形成されている。
フランジ部12の後側には、リール本体1の前壁1fとの間に肉抜き部15が形成されている。また、フランジ部12の前側には、段差部12cが形成されている。段差部12cには、円筒状のキャップ1eの後端部が当接している。キャップ1eは、リール本体1の前部に形成された円筒状のフランジ部1a(
図1参照)に螺合により固着されている。
【0038】
収容溝16は、径方向外側に向けて開口する環状の凹状溝である。収容溝16は、断面形状が逆台形状を呈している。収容溝16の開口縁となる前外周縁12aと後外周縁12bとは、径寸法(径方向外方への突出高さ)を相互に異ならせている。本実施形態では、前外周縁12aの径寸法を後外周縁12bの径寸法よりも小さく設定して径方向外側への突出量を小さく設定している。これにより、前外周縁12aと対向配置される、ロータ2の円筒部2aの内面との間にスペースを確保している。
【0039】
収容溝16には、
図5に示すように、収容溝16の底部16bから径方向内側に向けて凹む逃がし部13が形成されている。逃がし部13は、収容溝16の周方向に所定の間隔を空けて設けられており、リール本体1の前部11の上下方向に延在する断面形状を備えている。各逃がし部13の延在方向の深さは、後記するように、移動部材40の圧接により弾性部材50の一部が径方向内側に弾性変形した際に、その変形した部分が挿入可能となる深さに設定されている。なお、逃がし部13は、リール本体1の成形時における金型の離型工程を考慮して、上下方向に延在させている。なお、逃がし部13は、前記のように、変形した弾性部材50の一部が収容される深さを備えているものであればよく、例えば断面形状がスプール軸9を中心として放射状に延在する形状のものであってもよい。
【0040】
逃がし部13の形成個数及び周方向の開口寸法は適宜設定することができる。開口寸法を比較的大きく設定した場合には、弾性変形した弾性部材50の一部の挿入範囲が広がることとなる。これにより、移動部材40を介してロータ2に伝達される摺動抵抗(回動抵抗)は比較的小さなものとなる。一方、開口寸法を比較的小さく設定した場合には、弾性変形した弾性部材50の一部の挿入範囲が狭まることとなるため、移動部材40を介してロータ2に伝達される摺動抵抗(回動抵抗)は比較的大きなものとなる。
【0041】
弾性部材50は、合成ゴム等の弾性部材からなる環状の部材であり、収容溝16に嵌め込まれることで、フランジ部12に外嵌されている。弾性部材50は、収容溝16に対応する断面逆台形状を呈している。なお、弾性部材50は、移動部材40が圧接してロータ2に制動力を付与できるものであればよく、種々の形態、形状のものを採用することができる。
【0042】
次に、以上のような構成を備えた魚釣用スピニングリールR1の作用について説明する。
仕掛けを投擲する際に、ベール2fおよびベール支持部材2d(2e)を
図2(a)に示す釣糸巻取位置から
図2(b)に示す釣糸放出位置に反転させると、揺動部材32の後端部が揺動し、移動部材40の基端部41を径方向内方へ押圧する。
【0043】
この押圧で、基端部41が凹部32aの側方の外部へ押し出されるように移動し、移動部材40が圧縮コイルバネ44の付勢力に抗してリール本体1側に移動する。この移動により、先端部42の端部43が弾性部材50の外周面50aに喰い込むように圧接し、端部43が弾性部材50に係止される。
【0044】
この場合、
図6に示すように、弾性部材50に対する移動部材40の圧接位置が収容溝16の底部16bに対向する位置である場合には、その底部16bに対向する位置にて移動部材40が圧接保持される。また、
図7に示すように、弾性部材50に対する移動部材40の圧接位置が逃がし部13に対向する位置である場合には、弾性部材50が移動部材40に押されて逃がし部13に入り込む弾性変形を生じ、逃がし部13に対向する位置にて移動部材40が圧接保持される。
【0045】
一方、
図6に示した圧接位置から、仮に外力等を受けて圧接状態の移動部材40が弾性部材50の外周面50a上を周方向に摺動した場合には、
図7に示すように、隣接する逃がし部13に摺動したところで弾性部材50の一部50fが移動部材40に押されて弾性変形し、逃がし部13に入り込む状態となる。このように、弾性部材50の一部50fが逃がし部13に対して一旦入り込む状態になると、逃がし部13の開口縁13eに対応する弾性部材50の肩部50bが摺動抵抗となって、移動部材40のさらなる摺動を阻止する。これにより、逃がし部13に対向する位置にて移動部材40が圧接保持されることとなる。
【0046】
以上説明した本実施形態の魚釣用スピニングリールR1では、ベール支持部材2dの反転操作に連動して移動部材40がリール本体1側に移動すると、移動部材40の端部43が外周面50aに圧接してロータ2に制動力が付与される。また、リール本体1側に移動部材40を移動させた後に、仮に圧接状態の移動部材40が弾性部材50の外周面50a上を摺動したとしても、弾性部材50が移動部材40に押されて逃がし部13に入り込む弾性変形を生じて移動部材40の摺動が規制される。これにより、ロータ2の不用意な回転が確実に防止される。
【0047】
また、弾性部材50の弾性変形を利用してロータ2が制動されるものであるため、リール本体1と弾性部材50との寸法のバラツキ等による制動の不具合、例えば、リール本体1に対する弾性部材50の抱き付き力よりもロータ2の回転力や移動部材40の圧接力が勝った場合に生じる弾性部材50の波打ち現象や弾性部材50の脱落等の機能トラブルを、好適に回避できる。
【0048】
また、移動部材40をリール本体1側に移動させた後に使用者が誤ってロータ2を回し続けた場合にも、逃がし部13に弾性部材50の一部が入り込む弾性変形により、使用者に摺動抵抗の増加が認知されるため、ロータ2の不用意な回動が確実に防止される。
【0049】
また、逃がし部13は、リール本体1の周方向に間隔を空けて複数形成されているので、リール本体1側に移動部材40を移動させた後に、仮に圧接状態の移動部材40が弾性部材50の外周面50a上を摺動したとしても、弾性部材50が移動部材に押されて逃がし部13に入り込み易くなる。これにより、移動部材40の摺動が規制され易くなり、ロータ2の不用意な回転がより確実に防止される。
【0050】
また、移動部材40は、ベール支持部材2dの釣糸放出位置への回動に連動してリール本体1側に移動して弾性部材50に圧接するので、別途、移動部材40をリール本体1側に移動させる操作が必要なくなり、魚釣り操作性に優れる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、移動部材40は、ベール支持部材2dの釣糸放出位置への回動に連動してリール本体1側の径方向内方に移動して弾性部材50に圧接する構成としたが、これに限られることはなく、収容溝16の前外周縁12aを弾性部材50の外周面50aより低く形成して(後外周縁12bよりも小径に形成して)、公知のようにスプール軸9に沿う軸方向後方に移動させることで弾性部材50の外周面50aに移動部材40が圧接するように構成してもよい。
【0052】
また、収容溝16の形状は限定されるものではなく、弾性部材50を外嵌保持できるものであれば、種々の形態、形状とすることができるし、また、収容溝16を有する別体部材をリール本体1の前部11に固定してもよい。。
【符号の説明】
【0053】
1 リール本体
2 ロータ
5 ハンドル
2b アーム部
2d ベール支持部材
13 逃がし部
16 収容溝
40 移動部材
43 端部
50 弾性部材
50a 外周部
R1 魚釣用スピニングリール