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特許7320479魚釣用リール及びバックラッシュ修正作業状態判定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】魚釣用リール及びバックラッシュ修正作業状態判定装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/0155 20060101AFI20230727BHJP
   A01K 89/015 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
A01K89/0155
A01K89/015 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020143241
(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公開番号】P2022038635
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-262736(JP,A)
【文献】特開平10-155398(JP,A)
【文献】特開2020-080766(JP,A)
【文献】特開2000-139294(JP,A)
【文献】特開2018-113920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00 - 89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸を巻き取り可能なスプールと、
該スプールを回転操作する操作部と、
該スプールの回転を検出する回転検出部と、
該回転検出部の出力からバックラッシュ修正作業状態であるかを判定する判定部と、
を有する魚釣用リール。
【請求項2】
前記判定部は、前記スプールの回転速度が複数回数以上所定の引出し速度以上となった場合、前記バックラッシュ修正作業状態に移行したと判定する、請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記判部は、前記スプールの回転速度が所定の巻取り速度以上となった場合、前記バックラッシュ修正作業状態が終了したと判定する、請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
表示部を備え、該表示部は、前記バックラッシュ修正作業状態であること、該バックラッシュ修正作業状態の時間、又は前記魚釣用リールの使用時間に対する該バックラッシュ修正作業状態の累積時間の割合の少なくとも1つを表示する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
送信部を備え、該送信部は、前記バックラッシュ修正作業状態であること、該バックラッシュ修正作業状態の時間、又は前記魚釣用リールの使用時間に対する該バックラッシュ修正作業状態の累積時間の割合の少なくとも1つを外部へ送信する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項6】
前記表示部は、前記バックラッシュ修正作業状態の時間に応じて、該バックラッシュ修正作業に関連する助言、励まし、又は賞賛メッセージを表示する、請求項4に記載の魚釣用リール。
【請求項7】
スプール制動部を備え、該スプール制動部は、前記バックラッシュ修正作業状態の時間に応じて、スプール制動力を変更する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項8】
前記バックラッシュ修正作業時間は、1回のバックラッシュ修正作業時間又は複数のバックラッシュ修正作業の累積時間の少なくともいずれかである、請求項4から7までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項9】
記憶部を備え、該記憶部は、前記スプールの制動力の設定と、前記バックラッシュ修正作業状態とを関連付けて記憶する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項10】
習熟度評価部を備え、前記バックラッシュ修正作業状態の時間の前記魚釣用リールの使用時間に対する割合に応じて習熟度を評価し、前記表示部は、該習熟度を表示する、請求項4又は6に記載の魚釣用リール。
【請求項11】
釣糸を巻き取り可能なスプールの回転を検出する回転検出部を有するバックラッシュ修正作業状態判定装置であって、
該回転検出部の出力からバックラッシュ修正作業状態であるかを判定する判定部を有することを特徴とするバックラッシュ修正作業状態判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックラッシュ修正作業状態の判定が可能な魚釣用リール及びバックラッシュ修正作業状態判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
釣糸の投擲の際、引出される釣糸よりもスプールの回転が速くなると、釣糸の一部が引出されずにリール内に留まり、釣糸が絡んだ状態となる所謂バックラッシュが起きることが知られている。例えば、両軸リールでは、バックラッシュを軽減する対策として、釣糸を巻いたスプールの回転にブレーキを掛けることが行われているが、ブレーキ力が強いと飛行距離を縮めてしまうためその制御は容易ではない。
【0003】
このような魚釣用リールとして、例えば、特許文献1では、スプールの回転を制動パラメータに基づいて制動する機能を有する両軸受リールから釣糸が放出される釣糸放出期間において検出された、前記釣糸に作用する張力に関連する情報である張力関連情報を取得する張力関連情報取得部と、前記張力関連情報取得部により取得された張力関連情報の時間経過に応じた変化に基づいて、制動パラメータの補正を行う制動パラメータ補正部とを備えるリール制動調整装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-080766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る構成では、張力関連情報の時間経過に応じた変化が反映された補正案内画面を表示するものの、実際の投擲でバックラッシュが発生したか否かを判別することはできないという問題があった。そうすると、バックラッシュが発生したという事実は、ユーザの記憶に頼らざるを得ず、ユーザがバックラッシュの発生の履歴を確認したり、そのような結果を有効に活用することがそもそもできていないという問題があった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、バックラッシュの発生を判別可能な魚釣り用リール及びバックラッシュ修正作業状態判定装置を提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻き取り可能なスプールと、 該スプールを回転操作する操作部と、該スプールの回転を検出する回転検出部と、該回転検出部の出力からバックラッシュ修正作業状態であるかを判定する判定部と、を有するように構成される。
【0008】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、前記判定部は、前記スプールの回転速度が複数回数以上所定の引出し速度以上となった場合、前記バックラッシュ修正作業状態に移行したと判定するように構成される。
【0009】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、前記判別部は、前記スプールの回転速度が所定の巻取り速度以上となった場合、前記バックラッシュ修正作業状態が終了したと判定するように構成される。
【0010】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、表示部を備え、該表示部は、前記バックラッシュ修正作業状態であること、該バックラッシュ修正作業状態の時間、又は前記魚釣用リールの使用時間に対する該バックラッシュ修正作業状態の累積時間の割合の少なくとも1つを表示するように構成される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、送信部を備え、該送信部は、前記バックラッシュ修正作業状態であること、該バックラッシュ修正作業状態の時間、又は前記魚釣用リールの使用時間に対する該バックラッシュ修正作業状態の累積時間の割合の少なくとも1つを外部へ送信するように構成される。
【0012】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、前記表示部は、前記バックラッシュ修正作業状態の時間に応じて、該バックラッシュ修正作業に関連する助言、励まし、又は賞賛メッセージを表示するように構成される。
【0013】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、スプール制動部を備え、該スプール制動部は、前記バックラッシュ修正作業状態の時間に応じて、スプール制動力を変更するように構成される。
【0014】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、前記バックラッシュ修正作業時間は、1回のバックラッシュ修正作業時間又は複数のバックラッシュ修正作業の累積時間の少なくともいずれかであるように構成される。
【0015】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、記憶部を備え、該記憶部は、前記スプールの制動力の設定と、前記バックラッシュ修正作業状態とを関連付けて記憶するように構成される。
【0016】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、習熟度評価部を備え、前記バックラッシュ修正作業状態の時間の前記魚釣用リールの使用時間に対する割合に応じて習熟度を評価し、前記表示部は、該習熟度を表示するように構成される。
【0017】
本発明の一実施形態に係るバックラッシュ修正作業状態判定装置は、釣糸を巻き取り可能なスプールの回転を検出する回転検出部を有し、該回転検出部の出力からバックラッシュ修正作業状態であるかを判定する判定部を有するように構成される。
【発明の効果】
【0018】
上記実施形態によれば、バックラッシュの発生を判別可能な魚釣り用リール及びバックラッシュ修正作業状態判定装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールを説明する図である。
図2】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールを用いてルアー等の漁具を投擲し回収する手順を説明する図である。
図3】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおける糸絡みを解く場合の例を説明する図である。
図4】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1又はバックラッシュ修正作業状態判定装置100における糸がらみの検出方法を説明する図である。
図5】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1又はバックラッシュ修正作業状態判定装置100におけるバックラッシュ判別方法のフローを説明する図である。
図6】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1又はバックラッシュ修正作業状態判定装置100における表示画面の例を説明する図である。
図7】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1又はバックラッシュ修正作業状態判定装置100における表示画面の例を説明する図である。
図8】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1又はバックラッシュ修正作業状態判定装置100における表示画面の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0021】
まず、図1を参照して、魚釣用リール1の基本構成について説明する。図示のように、魚釣用リール1は、釣糸を巻取るスプール3と、該スプール3を回転操作する操作部4と、該操作部4と該スプール3との動力伝達可否を切り替えるクラッチ2と、該スプール3に制動力を発生する制動部(スプール制動部)5と、制動力を調整する制動力制御部(スプール制動力制御部)6と、を有する。
【0022】
また、図示のように、魚釣用リール1は、該クラッチの動力伝達可否状態を検出するクラッチ検出部7と、スプール3の回転を検出する回転検出部8とを有する。クラッチ検出部7は、磁気センサ等によって構成され、クラッチ2の可動部に磁石等の被検出部を設けることで、クラッチ2の伝達可能/不能状態を検出する。
また、回転検出部8は、フォトインタラプタ等の検出手段と、スプール3に設けた遮光板等の被検出手段との組み合わせによって構成することができる。これにより、スプール3の回転を電気信号に変換することができる。なお、検出手段と被検出手段の組み合わせは上記の例に限らず、磁石と磁気センサ等、公知の手段が利用できる。また、操作部4の操作情報を検出するハンドル操作検出部や、釣竿10のたわみを検出するたわみ検出部を釣竿10に設けてもよい。
【0023】
また、魚釣り用リール1は、各種信号を処理するマイコン(後述する判定部)9を有する。マイコン9は、図示しない電池等の電源より給電され、下記のような各種演算を行なう。上記回転検出部8の信号を受信し、スプール3の回転数や糸の引き出し量を算出する。また、それらの経時変化の履歴を記録部に保存してもよい。また、スプール3の回転情報から、後述のバックラッシュ判定を行う。
【0024】
一部の演算は、携帯端末やPCなどの外部デバイスに送信後、そちらのマイコンで行ってもよい。その場合、スプール3の回転情報を、無線通信などで外部デバイスへ通信した後、外部デバイス内で必要に応じて演算を行う。これらの演算結果は、表示部(表示手段)14に出力する。表示部14は、リール1や釣竿10に設けたLCDでもよいし、携帯端末やPC等の外部デバイス内の表示部であってもよい。
【0025】
次に、魚釣用リール1を構成する各要素について説明する。スプール3は、魚釣用リール1に対して回転可能に軸支され、正回転により釣り糸を巻き取り、逆回転により巻き取った釣り糸を放出することができる。操作部4は、例えばハンドルとして構成され、ユーザの回転操作をギヤ等の伝達機構によってスプール3に伝え、該スプール3を正回転することができる。なお、操作部4は、レバー等の操作部材と、モータ等の動力源との組み合わせでもよい。
【0026】
クラッチ2は、スプール3に動力伝達可能なオン状態と、動力伝達を行わないオフ状態を切り替えることができる。オン状態では、操作部材3によってスプール3を正回転に操作することができ、オフ状態では、操作部材3の状態にかかわらず、正逆方向に回転可能となる(スプールフリー状態)。また、スプール3に過度な負荷がかかった際に、スプール3を逆転させることで釣糸の破断を防ぐドラグ機構を備えてもよい。
【0027】
次に、本リールを含む一般的なリールを用いて、ルアー等の漁具を投擲し、回収する手順の一例について、図2及び図3を参照しながら説明する。まず、図2(a)に示すように、操作部材3により、ルアー20を竿先から所定の長さに調整し、クラッチ2(図示しない)をオフにし、スプールフリー状態にする。このとき、釣糸がルアー20の自重等により出ていくことのないよう、リール1のスプール3を親指で押さえておくようにする。
【0028】
次に、図2(b)~(d)に示すように、釣竿1を振ることで、ルアー20に初速を与える。そして、図2(f)に示すように、ルアーの速度及び放出方向が適正になったタイミングで、親指をスプール3から離すと、ルアー20を投擲することができる。
【0029】
さらに、投擲後、図2(g)以降、ルアー20は釣糸からの張力や、空気抵抗を受けることで減速を始める。他方、スプール3は、釣糸からの張力によって逆回転を始める。釣糸の放出速度とルアー20の飛行速度が一致するとスプール3は最高回転数となり、釣糸は張力を失う。ルアー20はその後も空気抵抗等により失速を続ける。この際、スプール3が慣性により高速回転を続けると、釣糸の放出速度がルアー20の飛行速度を上回る。これにより、釣糸は余分に放出され、リール1内で糸絡み(バックラッシュと呼ばれる)が生じる。これを避けるために、スプール3には制動装置5により所定の制動力を掛けるようにすることができる。
【0030】
その後、ルアー20の高度が十分下がると着水することとなる。このとき、制動装置5による制動力が大きすぎると、ルアー20を投擲できる距離が短くなってしまう。他方で、制動装置5による制動力が小さすぎると、糸絡みが発生し、巻き取りや放出が正常に行うことができなくなってしまう。
【0031】
親指をスプール3から離すタイミングが遅すぎた場合、ルアー20は下方に向かって飛行し、高速で水面に衝突したのちに急減速する。このような急減速が生じると、スプール3は高速回転を続けて釣糸は余分に放出され、リール1内で激しい糸絡みが生じる。このような糸絡みは、投擲操作に習熟していないユーザには頻発する傾向にある。
【0032】
ルアーの飛行速度がゼロになると、投擲動作は終了となる。この際に糸絡みの発生がなければ、ユーザは竿や操作部材3を操作することでルアーを泳がせたり、そのまま放置する等して、魚種や釣法に応じた手段により、魚が食いつくのを待つこととなる。
【0033】
糸絡みが発生していた場合、その絡まり具合が甚だしいと、絡まった糸がスプールの正常な回転を妨げてしまい、巻き取り操作を行うことができなくなってしまう。糸絡みの程度が軽い場合でも、以降のトラブル未然防止のためには、糸の弛みを解消するのが望ましい。そのため、ユーザは、巻き取り操作に入る前に、絡まった糸を解く必要がある。糸絡みを解く場合、ユーザは下記のような操作が必要となる。
【0034】
1:クラッチを切る、又はドラグ装置の設定ドラグ力を緩めるなどの操作により、糸を引き出し可能な状態にする。
2:緩んでいる箇所の糸を引き出す。
3:絡まっている場所では引き出せなくなっている場合は絡みをほぐす。
4:絡みがほぐれたら緩みがなくなるまで糸を引き出す。
5:緩みがなくなったら糸をスプールに巻き取る。
6:引き出した糸をすべて巻き取り、余分な糸が無くなったら釣りを再開できる。
【0035】
上記作業を行う場合、図3に示すように、ユーザは緩んだ糸をつまんだのちに、腕を伸ばすことで糸を引き出す作業を繰り返す。スプールに巻かれた糸は、数十cm~1m程度ずつ複数回、間歇的に糸が引き出される。この作業は、糸がらみが激しい場合は何度も必要で、軽い場合はすぐに終わる。
【0036】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1について説明する。本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、釣糸を巻き取り可能なスプール3と、 該スプール3を回転操作する操作部4と、該スプール3の回転を検出する回転検出部8と、該回転検出部8の出力からバックラッシュ修正作業状態であるかを判定する判定部9と、を有するように構成される。
【0037】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1によれば、バックラッシュの発生を判別可能な魚釣り用リールを提供することが可能となる。
【0038】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1において、当該判定部9は、スプール3の回転速度が複数回数以上所定の引出し速度以上となった場合、バックラッシュ修正作業状態に移行したと判定するように構成される。
【0039】
また、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1において、当該判別部9は、スプール3の回転速度が所定の巻取り速度以上となった場合、バックラッシュ修正作業状態が終了したと判定するように構成される。
【0040】
次に、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、表示部14を備え、該表示部14は、バックラッシュ修正作業状態であること、バックラッシュ修正作業状態の時間、又は魚釣用リール1の使用時間に対するバックラッシュ修正作業状態の累積時間の割合の少なくとも1つを表示するように構成される。これにより、ユーザは、バックラッシュ修正作業状態の状況をより的確かつ詳細に把握することが可能となる。
【0041】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、送信部13を備え、該送信部13は、バックラッシュ修正作業状態であること、バックラッシュ修正作業状態の時間、又は魚釣用リールの使用時間に対するバックラッシュ修正作業状態の累積時間の割合の少なくとも1つを外部へ送信するように構成される。このようにして、外部装置(例えば、情報通信端末、ウェアラブル端末等)に送信することで、ユーザは、バックラッシュ修正作業状態の状況をより的確かつ詳細に把握することが可能となる。
【0042】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1において、表示部14は、バックラッシュ修正作業状態の時間に応じて、該バックラッシュ修正作業に関連する助言、励まし、又は賞賛メッセージを表示するように構成される。詳細は後述する。
【0043】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、スプール制動部を備え、該スプール制動部5は、バックラッシュ修正作業状態の時間に応じて、スプール制動力を変更するように構成される。詳細は後述する。
【0044】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1において、バックラッシュ修正作業時間は、1回のバックラッシュ修正作業時間又は複数のバックラッシュ修正作業の累積時間の少なくともいずれかであるように構成される。
【0045】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、記憶部93を備え、該記憶部93は、スプールの制動力の設定と、バックラッシュ修正作業状態とを関連付けて記憶するように構成される。
【0046】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、習熟度評価部(図示しない)を備え、バックラッシュ修正作業状態の時間の魚釣用リールの使用時間に対する割合に応じて習熟度を評価し、表示部14は、該習熟度を表示するように構成される。
【0047】
本発明の一実施形態に係るバックラッシュ修正作業状態判定装置100は、釣糸を巻き取り可能なスプールの回転を検出する回転検出部8を有し、該回転検出部8の出力からバックラッシュ修正作業状態であるかを判定する判定部9を有するように構成される。ここで、バックラッシュ修正作業状態判定装置100は魚釣用リール1や釣竿10に設けられるようにすることができる。また、バックラッシュ修正作業状態判定装置100は、その一部が魚釣用リール1や釣竿10に設けら、その他の部分が外部装置に設けられるようにしてもよい。
【0048】
本発明の一実施形態に係るバックラッシュ修正作業状態判定装置100によれば、バックラッシュの発生を判別可能なバックラッシュ修正作業状態判定装置を提供することが可能となる。
【0049】
次に、図4を参照して、糸がらみの検出方法についてより具体的に説明する。リールの使用方法の中で、上述の糸の放出形態は、バックラッシュの修正作業中に特有の形態である。したがって、この動作を検出し、継続時間を計測することで、バックラッシュの発生や、その絡み状態の程度を推定することができる。
【0050】
図4は、巻き取り操作時のスプール回転速度の時間変化を表示したグラフである。縦軸は、スプールの回転速度を示し、引き出し方向が正、巻き取り方向が負である。
図4(a)は、投擲後、バックラッシュの発生がなく正常に巻き取りを行なった状態、図4(b)は、投擲後、バックラッシュが発生したためにその修正作業を行った場合、図4(c)は投擲直後に魚が掛かり、ドラグ装置によってスプールの糸が引き出された状態である。また、図中の上段のプロットは、後述の判別方法によるバックラッシュ発生の判別結果である。
【0051】
図4(a)では、投擲後に成功したため糸絡みの発生が無く、ユーザは投擲直後から巻き取りを開始することができる。この場合、スプール3は巻き取り方向にのみ回転し、引き出し方向に回転することはない。次に、同図(b)では、糸絡みが発生したため、ユーザは投擲後に上述のような糸をほどく作業を行なっている。その結果、間歇的な糸の引き出しが行われている。スプール3は、ユーザによって引き出し方向に回転される。
【0052】
また、同図(c)では、着水とほぼ同時に魚がルアーに食いつき、ドラグ設定力以上の張力で釣糸を引っ張ったため、スプール3が逆回転した場合である。この場合も、同図(b)と同様、スプール3が引き出し方向に回転し得る。
【0053】
しかしながら、次のような違いがある。同図(b)では、引き出しは間歇的に複数回行なわれる。その間隔や1回ごとの引き出し量、速度は概ね決まっている(腕で引っ張りやすい間隔、距離、速度)。他方で、(C)の引き出し回数、引き出し量、速度は魚の反応次第であり、ランダム的である。
【0054】
図4(b)では、一旦所定速度(腕で引き出しやすい速度=1m/s相当程度)まで加速された後、速度ゼロとなる。巻き取り方向には回さないことが多いが、回す場合でも慎重に回す必要があるため、ゆっくり回す。他方、同図(c)では、ユーザがハンドル操作により魚を引き寄せようとするため、巻き取り方向に回ることもある。このときの回転速度は、同図(b)の場合よりも早い。このような相違に基づき、(B)と(C)を見分けることができる。
【0055】
この具体的計算方法について、図5のフローチャートを用いて説明する。投擲の終了を検知すると、プログラムを開始する。投擲の終了検知は、クラッチをオフからオンにする、高速で回転していたスプールが停止または所定値以下になる、等で実現できる。
【0056】
プログラム開始後、(S1)においてスプールの回転数を常時監視する。次に、(S2)において、直前のバックラッシュ判定結果によってその後の処理を変える。バックラッシュはしていないと判断することを初期値とするため、1回目である場合は、(S2)から(S3)へと進むこととなる。
【0057】
(S3)では、過去T1秒内にスプール回転数ωが立ち上がり閾値となる回転数ω1(所定の回転数)を越えた回数を数える。すなわち、ω1が20だった場合、ωが0から30になった際に当該回数として含め、20以上であり続けた場合は当該回数に含めない。
【0058】
このカウント値がN回以上だった場合に、バックラッシュの修正作業中であると判断する。NとT1の値を適切な値に設定することで、前述の(B)の場合と(C)の場合とを区別することができる。Nを大きくする程、魚の引きをバックラッシュと誤判定することは避けられるものの、バックラッシュと判定するために必要な時間T1が大きくなる。本実施形態では、例えば、N=2、T1=3秒と設定している。また、ω1の値は、ユーザが糸をほどく際に糸を引っ張る速度に相当する回転数以下に設定すればよく、本実施形態では、例えば、秒速10cm相当にしている。この値はスプールに巻かれる糸の径によって変化する。
【0059】
判定が終わったら、再度(S1)に戻る。バックラッシュと判定した後、(S2)に来た場合は、(S4)へ進む。スプール速度が所定値ω2(本実施形態では-50)よりも速く巻き取り方向に巻き取られると、ユーザがバックラッシュを解消させたと判断している。一旦バックラッシュと判定されたら、このω2よりも絶対値が大きな巻き取りが発生するまでは、バックラッシュ状態は継続すると考え、判定はNOのままである。
【0060】
次に、(S4)において、バックラッシュが解消されたと判断された場合、次回以降は再び(S3)の処理へ進み、次のバックラッシュ解消作業の検出を行なう。
【0061】
なお、上記構成に加え、釣竿10に取付けたたわみセンサによって前述の(B)と(C)との違いを検出すると、さらに正確な判別が可能となる。(B)のように糸絡みをほどく際は、釣竿のしなりはほぼ発生しない。他方、(C)のように魚がかかった際は、竿を鉛直方向に立てて、しならせることで魚の引きに対抗するのが一般的である。したがって、たわみセンサの値が所定値以上だった場合は、(C)の魚の引きによる糸の引き出しだと判断する。また、ハンドル操作のスピードや回転量は、(C)の場合は(B)の場合よりも高速で回す傾向がある。したがって、ハンドル操作を検出し、所定値以上であれば(C)であると判断するようにしてもよい。
【0062】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1又はバックラッシュ修正作業状態判定装置100におけるバックラッシュの判別方法は、上記に限らず、ユーザによる糸がらみ作業をスプールの回転数から判別できれば、別の計算手法でも構わない。例えば、あらかじめ上記(A)、(B)、(C)の各サンプルデータを多数準備し、機械学習やニューラルネットワークの計算手法によりその特徴差を認識させることでも、糸絡みの修正作業を判別できる。
【0063】
別の方法として、次のような方法も考えられる。投擲直後の数秒間の合計引き出し量が所定値以上であれば、(B)又は(C)と判断し、さらに釣竿のたわみ量が所定値以下であれば(B)だと判別できる。釣竿のたわみ量の代替手段として、リールや釣竿に設けたモーションセンサにより、魚が掛かった際にユーザが選択する竿の操作(竿を立てることで魚の引きに対抗する)の有無を検出することで、(B)と(C)の判別を行なってもよい。
【0064】
次に、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1又はバックラッシュ修正作業状態判定装置100における判別結果の利用方法について説明する。判別した結果は、表示部に表示することによりユーザに伝達することができ、また当該結果を別の装置等で活用することができる。その一例として、バックラッシュ率の算出が考えられる。ここで、バックラッシュ率とは、バックラッシュ状態の時間の合計を、リールの総使用時間や、巻き取り操作を行った時間の合計で割ることで算出できる。若しくは、バックラッシュの発生した投擲回数を、全投擲回数で割るようにしてもよい。
【0065】
また、このバックラッシュ率を、ユーザの習熟度の指標として使うこともできる。例えば、図6に示すようなバックラッシュ率の経時変化を表示することで、ユーザにスキルアップを実感させることができる。また、図7に示すように、ルアーやブレーキ設定毎にバックラッシュ率を表示することで、ユーザが最適なブレーキ設定を選ぶ際の材料にすることができる。
【0066】
また、バックラッシュを発生させたユーザに対して、バックラッシュを低減するための投擲方法や、糸絡みを修正するためのアドバイスを表示するようにすることができる。また、バックラッシュを発生させてしまった場合の励ましメッセージや、バックラッシュを起こさないユーザに対する賞賛メッセージを表示するようにしてもよい。例えば、図8に示すように、バックラッシュ修正時間が所定以上になった際に、励ましメッセージやアドバイス等を教える動画へのリンクを表示するなどの態様が考えられる。
【0067】
また、バックラッシュが発生した場合は、次の投擲時に制動装置の制動力が大きくなるように設定することができる。バックラッシュが発生すると、ユーザは釣りを継続することができなくなるが、制動装置の制動力が大きいほどバックラッシュは発生しにくくなるため、バックラッシュの発生を検知した際、制動力を自動的に上げることで、ユーザが釣りを中断するリスクを自動的に下げることができる。
【0068】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0069】
1 魚釣用リール
2 クラッチ
3 スプール
4 操作部
5 スプール制動部
6 スプール制動力制御部
8 回転検出部
9 マイコン(判定部)
10 釣竿
11 制動力設定部
13 送受信部(送信部)
14 表示部
20 ルアー
91 目標設定部
92 演算部
93 記憶部
100 バックラッシュ修正作業状態判定装
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8