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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/152 20210101AFI20230727BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20230727BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20230727BHJP
   H01M 50/143 20210101ALI20230727BHJP
   H01M 50/167 20210101ALI20230727BHJP
   H01M 50/169 20210101ALI20230727BHJP
【FI】
H01M50/152
H01M50/184 D
H01M50/107
H01M50/143
H01M50/167
H01M50/169
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020511721
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2019013451
(87)【国際公開番号】W WO2019194055
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2018074196
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018074199
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下司 真也
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 仰
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特許第6254102(JP,B2)
【文献】特表2012-518890(JP,A)
【文献】特開平08-339785(JP,A)
【文献】特許第2863591(JP,B2)
【文献】特開2003-217531(JP,A)
【文献】特開平10-294093(JP,A)
【文献】実開昭50-005831(JP,U)
【文献】特開2007-18962(JP,A)
【文献】特開2006-351512(JP,A)
【文献】国際公開第2014/119309(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部、前記筒部の一方の端部を閉じる底壁および前記筒部の他方の端部に連続する開口縁を有する電池缶と、前記筒部に収容された電極体と、前記開口縁の開口を封口するように前記開口縁に固定された封口体と、を備え、
前記封口体は、封口板と、前記封口板の周縁部に配されたガスケットと、を有し、
前記ガスケットは、前記周縁部の前記電極体側に配された内側リング部と、前記周縁部の前記電極体と反対側に配された外側リング部と、前記周縁部の端面を覆う側壁部と、を有し、
前記封口板と前記ガスケットとが一体成型されることで相互に密着し
前記封口板は、前記周縁部と中央部との間の領域において、前記周縁部および前記中央部よりも厚みの薄い薄肉部が設けられ、
前記外側リング部が、前記薄肉部の少なくとも一部を覆っている、電池。
【請求項2】
筒部、前記筒部の一方の端部を閉じる底壁および前記筒部の他方の端部に連続する開口縁を有する電池缶と、前記筒部に収容された電極体と、前記開口縁の開口を封口するように前記開口縁に固定された封口体と、を備え、
前記封口体は、封口板と、前記封口板の周縁部に配されたガスケットと、を有し、
前記ガスケットは、前記周縁部の前記電極体側に配された内側リング部と、前記周縁部の前記電極体と反対側に配された外側リング部と、前記周縁部の端面を覆う側壁部と、を有し、
前記封口板と前記ガスケットとが一体成型されることで相互に密着し、
前記外側リング部は、前記電極体と反対側に突出する突起部を有し、
前記突起部が前記開口縁により前記筒部の軸方向に圧縮されている、電池。
【請求項3】
前記封口板は、前記周縁部と中央部との間の領域において、前記周縁部および前記中央部よりも厚みの薄い薄肉部が設けられ、
前記外側リング部が、前記薄肉部の少なくとも一部を覆っている、請求項に記載の電池。
【請求項4】
前記外側リング部の内周輪郭の形状が、回転対称性および/または面対称性を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
前記周縁部の前記外側リング部との対向面および/または前記内側リング部との対向面の少なくとも一方に、前記封口板の厚み方向に向かう凹部を有し、
前記凹部内の空間を、前記外側リング部または前記内側リング部が埋めている、請求項1~4のいずれか1項に記載の電池。
【請求項6】
電池缶は、前記開口縁と前記筒部の間に、前記開口縁の内径および前記筒部の内径よりも内径の小さな縮径部を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の電池。
【請求項7】
前記封口体は、前記電池缶の内側を向く第1主面、前記第1主面とは反対側の第2主面、および、前記第1主面と前記第2主面とを繋ぐ側面を有し、
前記開口縁の少なくとも一部を覆うとともに前記開口縁と電気的に接続し、かつ、前記封口板と電気的に絶縁された導電性のキャップと、をさらに備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の電池。
【請求項8】
前記キャップは、前記電池缶の前記開口縁を介して、前記封口体の前記側面の少なくとも一部を覆う第1部分を有する、請求項7に記載の電池。
【請求項9】
前記キャップは、前記封口体の前記第2主面の外周縁の少なくとも一部を覆う第2部分を有する、請求項7または8に記載の電池。
【請求項10】
前記キャップは、前記封口体の前記第2主面の外周縁の少なくとも一部を覆う第2部分を有し、
前記キャップの前記第1部分は環状であり、
無負荷状態において、前記キャップの前記第1部分の最小の内径は、前記電池缶の前記開口縁の前記キャップで覆われる部分の最大の外径よりも小さい、請求項に記載の電池。
【請求項11】
前記キャップは、前記電池缶の前記開口縁に溶接されている、請求項7~10のいずれか1項に記載の電池。
【請求項12】
前記開口縁の端面は、前記封口体の前記側面上に配置されている、請求項7~11のいずれか1項に記載の電池。
【請求項13】
前記電池缶の高さ方向において、前記封口体と接触する最低位置における前記開口縁の外径は、前記筒部の外径よりも小さい、請求項12に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極体と、電極体を収容する電池缶と、を備える電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電極体を電池缶に収容後、電池缶の開口を封口する方法としては、特許文献1に示すように、電池ケース(電池缶)に溝を形成後、電池ケースの開口部にガスケットおよび封口板を挿入し、封口板の外周縁部をガスケットで覆った状態で、電池ケースの溝から先の部分を内方に締め付けることによって行うのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-105933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の封口方法では、ガスケットと封口板を組み合わせて封口体を形成するものであるため、封口工程で生じる組み立て公差を考慮する必要がある。例えば、封口板の周縁部をガスケットで覆う際、および、封口板の周縁部をガスケットを覆った後、周縁部とガスケットを押圧し密着させる際に、周縁部と接触するガスケットの位置にばらつきが生じ易い。このため、ばらつきを考慮して、封口板およびガスケットの形状や寸法等を設計する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一局面は、筒部、前記筒部の一方の端部を閉じる底壁および前記筒部の他方の端部に連続する開口縁を有する電池缶と、前記筒部に収容された電極体と、前記開口縁の開口を封口するように前記開口縁に固定された封口体と、を備え、前記封口体は、封口板と、前記封口板の周縁部に配されたガスケットと、を有し、前記ガスケットは、前記周縁部の前記電極体側に配された内側リング部と、前記周縁部の前記電極体と反対側に配された外側リング部と、前記周縁部の端面を覆う側壁部と、を有し、前記封口板と前記ガスケットとが一体成型されることで相互に密着している、電池に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電池の封口工程で生じる組み立て公差が低減されるため、電池設計の自由度が増す。
【0007】
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る電池の要部の縦断面模式図である。
図2】同電池において、電池缶の外観を示す斜視図である。
図3】同電池で用いられる封口体の断面形状を示す断面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る電池の縦断面模式図である。
図5A】本発明の他の実施形態に係るキャップを模式的に示す斜視図である。
図5B図5Aに示すキャップを図5Aとは反対側から見た斜視図である。
図6A】本発明の更に他の実施形態に係る電池の縦断面模式図である。
図6B図6Aに示す電池の要部を拡大した縦断面模式図である。
図6C図6Aに示す電池の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る電池は、筒部、筒部の一方の端部を閉じる底壁および筒部の他方の端部に連続する開口縁を有する電池缶と、筒部に収容された電極体と、開口縁の開口を封口するように前記開口縁に固定された封口体と、を備える。封口体は、封口板と、封口板の周縁部に配されたガスケットと、を有する。そして、封口板とガスケットとは、一体成型されることで相互に密着している。
【0010】
以下において、封口体から電極体に向かう方向を下方向、電極体から封口体に向かう方向を上方向とする。一般に、電池缶を底部が下になるように直立させたときに、開口縁に向かう筒部の軸に平行な方向が上方向である。
【0011】
従来より、電池缶の開口縁を封口する方法として、開口縁と筒部との間に、開口縁および筒部よりも内径の小さな縮径部を設けた後、縮径部上に封口板をガスケットを介して配置し、ガスケットおよび封口板を挟み込むように金属缶の開口縁を上下方向から押圧しかしめ加工することが行われている。しかしながら、この方法では、封口板の周縁部と接触するガスケット内の接触位置を一定にすることが難しく、接触位置が上下方向にずれ易い。このため、開口縁の周方向の位置によって、封口板の周縁部と接触するガスケット内の接触位置にばらつきが生じ易い。ばらつきの結果、封口後の電池を上から見た場合、周縁部より上側で封口板と接触しているガスケット(外側リング部)の内周輪郭の形状が円ではなく、外側リング部の形状が、周方向の位置によって幅の異なるいびつなリング形状になり易い。
【0012】
特に、絶縁性の確保のため、外側リング部の幅を長くとりたい場合に、ガスケット内において、封口板の周縁部との接触位置より上方の領域を大きくとるようにしてかしめ加工を行うと、外側リング部の形状が、波打ち形状のようにいびつなリング形状になり、美観を損ね易い。また、外側リング部に襞が生じ易い。
【0013】
ガスケットは、電池缶の開口縁と封口板とを絶縁する役割を有している。しかしながら、外側リング部の幅が短いと、電池缶の開口縁と封口板との絶縁を確保し難くなる。外側リング部の形状がいびつなリング形状をしている場合、周方向の位置によって外側リング部の幅が異なることから、外側リング部の幅が長い部分では開口縁と封口板との絶縁を確保できるが、外側リング部の幅が短い部分で絶縁を確保できないことも起こり得る。
【0014】
これに対し、本実施形態では、封口板とガスケットが一体成型された封口体を用いる。一体成型の方法としては、インサート成型を用いることができる。これにより、外側リング部の幅のばらつきが抑制され、開口縁の全周に渡って電池缶の開口縁と封口板との絶縁を確保できる。外側リング部の幅を広げて、開口縁と封口板との絶縁距離を伸ばすことも容易に可能となる。
【0015】
封口板とガスケットが一体成型された封口体において、封口板およびガスケットの形状は限定されず、任意の形状に設計できる。ガスケットは、封口板の周縁部の電極体側(内側)に配された内側リング部と、封口板の周縁部の電極体と反対側(外側)に配された外側リング部と、封口板の周縁部の端面を覆う側壁部とを有する。従来の封口方法では、内側リング部が上方向に圧縮され、外側リング部が下方向に圧縮され、ガスケットと封口板の密着が確保される。内側リング部、外側リング部、および側壁部の形状は限定されず、任意の形状に設計できる。
【0016】
例えば、外側リング部の内周輪郭の形状は、円のほか、正多角形や波打った曲線など、任意の回転対称性および/または面対称性を有する形状に設計でき、また、集電リード等の他部品との嵌合機能を備えた形状に設計することができる。また、外側リング部または内側リング部の特定位置に封口板が露出する開口あるいは凹凸を設けたり、外側リング部の所定位置を厚膜化することも容易である。
【0017】
封口板の構成として、防爆機能を設けるため、周縁部と中央部との間の環状領域に厚みの薄い薄肉部を設けたものがある。この場合、電池の内圧が閾値以上に高まると、構造的に強度の弱い薄肉部が選択的に破断されることによって、薄肉部は防爆弁として作用する。一方で、薄肉部は、構造的強度が低下していることから、外部からの衝撃に対して脆く、外部からの腐食の影響を受け易い。しかしながら、薄肉部の少なくとも一部を覆うように外側リング部の形状を設計することにより、外側リング部によって、薄肉部を外部の衝撃や腐食から保護することができる。外側リング部は、薄肉部の面積の20%以上を覆っていてもよく、100%を覆っていてもよい。
【0018】
従来の封口方法では、上述の通り、封口板の周縁部と接触するガスケット内の接触位置にばらつきが生じることから、周方向の位置によっては薄肉部が外側リング部で覆われない場合が生じ得る。一方、開口縁の全周に渡って薄肉部が外側リング部で一定面積以上覆われるように、接触位置のばらつきを考慮して外側リング部の幅を大きめに設定すると、周方向の位置によっては外側リング部が封口板の中央部を塞いでしまうことも起こり得る。このため、薄肉部が外側リング部で覆われるように、外側リング部を筒の内側方向に延伸させることは、封口板とガスケットに別々の部材を用いる従来の封口方法では困難であった。しかしながら、封口板とガスケットが一体成型された封口体を用いることで、上記の問題の発生は抑制される。
【0019】
一方で、一体成型された封口体を、金属缶の開口縁を介して押圧し、かしめ加工する場合には、押圧時において、径方向(筒部の軸に向かう方向)への引っ張り応力がガスケットに加わる。この結果、ガスケットの外側リング部または内側リング部に割れが生じたり、外側リング部または内側リング部と封口板との境界面で密着が剥がれたりする場合がある。特に外側リング部に割れや剥がれが生じると、開口縁と封口板との絶縁が不十分になる場合や、外部の衝撃や腐食からの保護が不十分になる場合がある。
【0020】
かしめ加工において、外側リング部の割れや剥がれを抑制するため、外側リング部は、電極体と反対側に(上方向に)突出する突起部を有していてもよい。突起部は、かしめ加工において下方向に圧縮される。突起部が圧縮されることによって、突起部よりも内周側に引っ張り応力が伝わるのが抑制され、突起部よりも内周側に位置する外側リング部において割れや剥がれの発生が抑制される。
【0021】
ガスケットと封口板の密着性を高めるため、周縁部の外側リング部との対向面および/または内側リング部との対向面の少なくとも一方に、封口板の厚み方向に向かう凹部を有していてもよい。ガスケットと封口板が接触する表面積を高めて、密着性を高めることができる。また、かしめ加工時に加わる引っ張り応力に対して、外側リング部または内側リング部の剥がれを抑制することができる。
【0022】
なお、本実施形態の封口体は、従来の封口方法によって縮径部が設けられた電池に限られず、縮径部を設けない封口方法を採用する場合においても好ましく用いることができる。封口板とガスケットとが一体成型されることで、封口体を一部品として取り扱うことができ、電池の製造が容易になる。
【0023】
縮径部を設けない封口方法としては、例えば、ガスケットの側壁部を、電池缶の開口縁を介して開口の径方向(筒部の軸に向かう方向)に向かって横方向に押圧する方法が挙げられる。具体的には、開口縁に、ガスケットを封口板の周縁部の端面に対して押圧する押圧部を設けることで、押圧により、ガスケットは封口板の周縁部の端面と開口縁との間で開口の径方向に圧縮され、ガスケットの反発力により封口体と開口縁との間の密閉性が確保され得る。
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る電池について、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0025】
[第1実施形態]
【0026】
図1は、本実施形態に係る電池10Aの要部の縦断面模式図であり、図2は同電池の斜視図である。電池10Aは、円筒型を有し、円筒型の有底の電池缶100Aと、缶内に収容された円筒型の電極体200と、電池缶100Aの開口を封口する封口体300Aとを具備する。
【0027】
電池缶100Aは、電極体200を収容する筒部120Aと、筒部120Aの一方の端部を閉じる底壁130Aと、筒部120Aの他方の端部に連続する開口縁110Aとを有する。開口縁110Aの開口は、封口体300Aにより閉じられている。
【0028】
封口体300Aは、封口板310Aと、封口板310Aの周縁部311Aに配されたガスケット320Aとを有する。封口板310Aは、円盤状もしくはディスク状であり、防爆機能を有する。具体的には、封口板310Aは、構造的強度を確保するための厚肉の周縁部311Aおよび中央領域312Aと、防爆機能を発揮する薄肉部313Aとを具備する。薄肉部313Aは、周縁部311Aと中央領域312Aとの間の領域に設けられる。中央領域312Aの内側面には、電極体200を構成する正極または負極から導出されたリード線210の端部が接続されている。よって、封口板310Aは一方の端子機能を有する。
【0029】
電池缶100Aの内圧が上昇すると、封口板310Aが外方に向けて盛り上がり、例えば周縁部311Aと薄肉部313Aとの境界部に張力による応力が集中し、その境界部から破断が生じる。その結果、電池缶100Aの内圧が開放され、電池10Aの安全性が確保される。
【0030】
ガスケット320Aは、外側リング部321Aおよび内側リング部322Aと、外側リング部321Aと内側リング部322Aとを繋ぐ側壁部323Aとを有する。封口板310Aの周縁部311Aの端面311Tは、側壁部323Aで覆われている。
【0031】
外側リング部321A、内側リング部322Aおよび側壁部323Aは一体化された成型体である。ガスケット320Aは、例えばインサート成型により封口板310Aと一体成型され得る。
【0032】
外側リング部321Aは、内側リング部322Aよりも径方向の内側に向かって延びている。外側リング部321Aは、封口板310Aの薄肉部313の少なくとも一部を覆っている。これにより、外側リング部321Aは、薄肉部313Aを外部からの衝撃や腐食から保護しており、開口縁110Aと封口板310Aとの間の絶縁距離を大きくすることができる。
【0033】
電池缶100Aの筒部120Aと開口縁110Aの間には、開口縁110Aの筒部分の内径および筒部120Aの内径よりも内径の小さな縮径部140が設けられている。すなわち、開口縁110Aは、縮径部140を介して筒部120と連続している。縮径部140は、筒部120Aから内径が連続的に減少している第1縮径部141aと、開口縁110Aから内径が連続的に減少し、内径が極小となる位置において第1縮径部141aと連続する第2縮径部141bからなる。ガスケットの内側リング部322Aは、第2縮径部141bと接触している。
【0034】
開口縁110Aの一方の端部は、第2縮径部141bと連続している。開口縁110Aの他方の端部110Eは、開放端を構成し、内側に折り曲げられて外側リング部321Aと接触している。
【0035】
第2縮径部141bを介して内側リング部322Aが上方向に圧縮され、開口縁110Aの他方の端部110Eを介して外側リング部321Aが下方向に圧縮されることで、ガスケットの反発力により封口体と開口縁との間が密閉されている。
【0036】
図3は、電池缶100Aを封口体300Aで封口し電池10Aを構成する前の、一部材としての封口体300Aの構成の一例を示す模式的断面図である。封口体300Aは、前述の通り、封口板310Aとガスケット320Aとを有する。ガスケット320Aの外側リング部321Aには、上方向に突出する突起部324が設けられている。
【0037】
突起部324は、電池缶の封口の際、かしめ加工において下方向に圧縮されるため、図1ではその存在は示されていない。しかしながら、かしめ加工において、突起部324が圧縮されることによって、突起部324よりも内周側の外側リング部321に引っ張り応力が伝わるのが抑制される。結果、外側リング部の割れや剥がれの発生を抑制できる。
【0038】
また、封口板310Aには、凹部314が、周縁部311Aの外側リング部321Aとの対向面および内側リング部322Aとの対向面に設けられている。
【0039】
凹部314は、例えば封口板310A上にガスケット320Aを一体成型して封口体を形成する場合に、ガスケット320Aと封口板310Aとの接触面積を高めて、ガスケット320Aと封口板310Aとの密着性を高める作用を有する。また、かしめ加工時に加わる引っ張り応力に対して、外側リング部または内側リング部の剥がれを抑制することができる。
【0040】
凹部314の凹みの方向は封口板の厚み方向から傾いていてもよい(図3参照)。これにより、凹部314は鉤を構成し、ガスケット320Aと封口板310Aとの密着性を高め、輸送や組立時の衝撃等によってガスケット320Aが封口板310Aから剥がれるのを抑制している。
【0041】
内側リング部の幅W1および外側リング部の幅W2は、ともに封口体の全周に渡って一定であり、W2>W1であり得る。
【0042】
[第2実施形態]
【0043】
開口縁の少なくとも一部を覆うとともに開口縁と電気的に接続し、かつ、封口板と電気的に絶縁された導電性のキャップと、をさらに備えていてもよい。これにより、電池の配線に必要な空間を小さくすることができる。
【0044】
従来構成の電池において、通常、電池缶は一方の外部端子として機能し、封口体は他方の外部端子として機能する。そして、電池缶と同電位の電極は、電池缶の底部から集電される。一方、封口体と同電位の電極は、電池缶の底部に対向するように配置されている封口体から集電される。つまり、各電極に外部リード線をそれぞれ接続する場合、一方の外部リード線は電池の下面から導出され、他方の外部リード線は電池の上面から導出される。そのため、電池の上下方向に配線のための空間が必要である。
【0045】
本実施形態の電池においては、封口体は、電池の一方の電極(例えば、正極)の外部端子として機能する。封口体は、電池缶の内側を向く第1主面、第1主面とは反対側の第2主面、および、第1主面と前記第2主面とを繋ぐ側面を有している。一方、電池缶と接続しているキャップは、開口縁側に配置されており、電池の他方の電極(例えば、負極)の外部端子として機能する。そのため、両方の電極をともに、封口体の近傍(例えば、第2主面側)から集電することができる。よって、各外部端子に接続するリードを配線するための空間(配線空間)は、封口体側に存在すればよく、配線空間は省スペース化される。さらに、キャップは、電池缶とは別体の電池の付属部品である。そのため、キャップは、電池の用途、形状に応じた形状に成形できる。よって、本実施形態は、電池(電池缶)の形状にかかわらず適用できる。
【0046】
キャップは、電池缶の開口縁を介して、封口体の側面の少なくとも一部を覆う第1部分を有してもよい。これにより、電池缶との接触面積が大きくなって集電性が向上する。また、キャップは、封口体の第2主面の外周縁の少なくとも一部を覆う第2部分を有してもよい。これにより、両方の電極をともに、封口体の第2主面側から集電し易くなる。第2部分と封口体の第2主面との間には、電池缶の開口縁が介在していてもよい。
【0047】
キャップは、第1部分および第2部分の両方を有していてもよい。つまり、キャップの電池缶の軸方向(以下、Z方向とも称する。)に沿った断面は、略L字形状であってもよい。これにより、キャップは電池缶に強固に固定されるとともに、電池缶との接触面積が大きくなって集電性が向上する。さらに、キャップにより、電池の第2主面側のエッジが保護される。
【0048】
キャップが環状の第1部分を備える場合、無負荷状態において、第1部分の最小の内径を、開口縁のキャップで覆われる部分の最大の外径よりも小さくしてもよい。このようなキャップに電池を圧入して嵌め込むことにより、キャップは電池により強固に固定される。
【0049】
キャップは、電池缶の開口縁に溶接されてもよい。これにより、キャップは電池により強固に固定されるとともに、抵抗が低くなって集電性が向上する。溶接の方法は特に限定されず、キャップおよび開口縁の材質に応じて適宜選択すればよい。溶接方法としては、例えば、レーザ溶接、抵抗溶接等が挙げられる。溶接以外の方法としては、例えば、キャップの内側にネジ加工を施すとともに、電池缶の接続部に、キャップのネジと対応するようにネジ加工を施してもよい。双方のネジを嵌合させることにより、キャップを電池缶に固定することができる。ネジ加工は、キャップおよび電池缶のいずれか一方にのみ施されてもよい。この場合も、キャップは電池缶に固定される。
【0050】
開口縁の端面が、封口体の側面上に配置されている場合、つまり、電池缶の開口縁が、封口体の第2主面を覆っていない場合、キャップは特に有用である。通常、この場合、両方の電極を封口体の第2主面側から集電することはできない。しかし、電池缶に電気的に接続するキャップを用いることで、電池缶の開口縁の形態にかかわらず、両方の電極を封口体の第2主面側から集電することができる。
【0051】
開口縁の端面が封口体の側面上に配置されている場合、電池缶の高さ方向において、封口体と接触する最低位置における開口縁の外径は、筒部の外径よりも小さいことが好ましい。これにより、キャップの厚さを、キャップの外径と筒部の外径とが概ね同一になるように設計することができる。つまり、キャップが電池缶に嵌められた状態であっても、電池の径の軸方向における変化を小さくすることができる。
【0052】
以下、本発明の実施形態に係る電池であって、キャップを備える場合について、図面を参照しながら具体的に説明する。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。
【0053】
図4は、本実施形態に係る電池10Bの縦断面模式図である。図5Aは、本実施形態に係るキャップを模式的に示す斜視図である。図5Bは、同キャップを、図5Aとは反対側から見た斜視図である。
【0054】
電池10Bは、円筒型であって、円筒型の有底の電池缶100Bと、電池缶100Bに収容された円筒型の電極体200と、電池缶100Bの開口を封口する封口体300Bと、電池缶100Bと電気的に接続するとともに、封口体300Bと電気的に絶縁された導電性かつ環状のキャップ400と、を具備する。
【0055】
電池缶100Bは、電極体200を収容する筒部120Bと、筒部120Bの一方の端部を閉じる底壁130Bと、筒部120Bの他方の端部に連続する開口縁110Bとを有する。開口縁110Bの開口は、封口体300Bにより塞がれている。
【0056】
封口体300Bは、電池缶100Bの内側を向く第1主面300Xと、第1主面300Xとは反対側の第2主面300Yと、第1主面300Xと第2主面300Yとを繋ぐ側面300Zと、を備える。開口縁110Bの端面110Tは、封口体300の第2主面300Y上にあり、開口縁110Bの一部は、第2主面300Yの外周縁を覆っている。
【0057】
封口体300Bは、また、封口板310Bと、封口板310Bの周縁部311Bに配されたガスケット320Bとを有する。封口板310Bは、円盤状もしくはディスク状であり、防爆機能を有する。具体的には、封口板310Bは、構造的強度を確保するための厚肉の周縁部311Bおよび中央領域312Bと、防爆機能を発揮する薄肉部313Bとを具備する。薄肉部313Bは、周縁部311Bと中央領域312Bとの間の環状領域に設けられる。中央領域312Bの内側面には、電極体200を構成する正極または負極から導出された内部リード線210の端部が接続されている。よって、封口板310は一方の端子機能を有する。ただし、封口体300の形状はこれに限定されない。
【0058】
電池缶100Bの内圧が上昇すると、封口板310Bが外方に向けて盛り上がり、例えば周縁部311Bと薄肉部313Bとの境界部に張力による応力が集中し、その境界部から破断が生じる。その結果、電池缶100Bの内圧が開放され、電池10Bの安全性が確保される。
【0059】
キャップ400は、電池缶100Bの開口縁110Bを介して、封口体300Bの側面300Zを覆う第1部分401と、封口体300Bの第2主面300Yの外周縁を覆う第2部分402と、を有する。
【0060】
防爆機能を妨げない点で、キャップ400の第2部分402は、薄肉部313Bを覆わないことが好ましく、周縁部311Bと薄肉部313Bとの境界部を覆わないことがより好ましい。第2部分402は、例えば、周縁部311Bの一部のみを覆う。
【0061】
キャップ400は導電性であり、電池缶100Bと同じ極性を有する。よって、キャップ400には、封口体300B(封口板310B)とは極性が異なる他方の端子機能を持たせることができる。そのため、電池10Bの両方の電極を、ともに封口体300Bの第2主面300Y側から集電することができる。つまり、電池缶100Bの開口縁110Bの形態にかかわらず、各外部リード線を第2主面300Y側から導出することができる。キャップ400と封口板310Bとは、例えば、ガスケット320Bにより絶縁されている。なお、図5では、キャップ400の第2部分402には第1外部リード線501が接続され、封口板310Bの中央領域312Bの外側面には第2外部リード線502が接続された状態を例示している。
【0062】
無負荷状態において、キャップ400の第1部分401の最小の内径D401図2B参照)は、開口縁110Bの第1部分401で覆われる部分の最大の外径D110よりも小さい。電池10Bはキャップ400に圧入されて、キャップ400は電池10Bに固定される。固定性の観点から、内径D401/外径D110は、0.99以下であってもよく、0.98以下であってもよい。一方、圧入し易い点で、内径D401/外径D110は、0.9以上であることが好ましい。
【0063】
キャップ400の第1部分401には、1以上の切り込み403を設けてもよい。
【0064】
キャップ400は、開口縁110Bに溶接される。好ましくは、第1部分401が、開口縁110Bに溶接される。
【0065】
[第3実施形態]
【0066】
図6Aは、キャップ400を備えた本実施形態に係る電池10Cの縦断面模式図である。図6Bは、図6Aに示す電池の要部を拡大した縦断面模式図である。図6Cは、図6Aに示す電池の斜視図である。
【0067】
電池缶100Cの開口縁110Cの端面110Tは、封口体300Cの側面300Z上にあり、開口縁110Cは、封口体300Cの第2主面300Yの外周縁を覆っていない。
【0068】
キャップ400を用いることで、開口縁110Cが第2主面300Yを覆っていない場合であっても、両方の電極を封口体300Cの近傍、さらには第2主面300Y側から集電することができる。キャップ400の第1部分401と開口縁110Cの外表面との間には、導電性の接合材410を介在させてもよい。
【0069】
電池缶100Cの高さ方向において、封口体300Cと接触する最低位置における電池缶100Cの開口縁110Cの外径は、筒部120Cの外径よりも小さくてもよい。例えば、開口縁110Cは、筒部120Cとの境界に、筒部120Cの外径を小さくするテーパ領域110S(図6B参照)を備えてもよい。テーパ領域110Sは、例えば、Z方向と45°未満の角度を成す。
【0070】
この場合、キャップ400の厚さを、キャップ400の外径と筒部120Cの外径とが実質的に同一になるように設計することができる。これにより、電池10Cの径のZ方向における変化を小さくすることができる。キャップ400の外径もしくは最大外径と筒部120Cの外径もしくは最大外径との差は、例えば筒部120Cの外径の20%以下であればよく、10%以下でもよく、5%以下、2%以下もしくは1%以下でもよい。
【0071】
キャップ400の第1部分401がテーパ領域110Sの少なくとも一部を覆う場合、テーパ領域110Sにおいて、キャップ400と開口縁110Cとを溶接すればよい。位置決めが容易になるとともに、ガスケット320の熱による劣化を抑制することができる。
【0072】
本実施形態において、開口縁110Cの少なくとも一部は、ガスケット320Cの側壁部323Cを封口板310Cの周縁部311Cの端面311Tに対して押圧し、側壁部323Cを開口の径方向に圧縮していることが好ましい。これにより、電池缶100Cの開口縁110Cと封口体300Cとの間の密閉性を確保し易くなる。例えば、開口縁110Cは、ガスケット320CをZ方向ではなく、Z方向と垂直な方向(以下、XY方向とも称する。)に押圧する。この場合、開口縁110Cがガスケット320Cを押圧する力をZ方向とXY方向とに分解すると、XY方向のベクトルは、Z方向のベクトルよりも大きなスカラー量を有する。
【0073】
以下、開口縁110Cがガスケット320CをXY方向に押圧する場合に適した封口板310C、ガスケット320Cおよび開口縁110Cについて説明する。その他の構成は、第2実施形態と同じであってよい。
【0074】
ガスケット320Cは、外側リング部321Cおよび内側リング部322Cと、外側リング部321Cと内側リング部322Cとを繋ぐ側壁部323Cとを有する。封口板310Cの周縁部311Cの端面311Tは、側壁部323Cで覆われている。外側リング部321Cと内側リング部322Cとが、封口板310Cの周縁部311Cを挟み込むことで、ガスケット320Cが封口板310Cに固定されている。
【0075】
電池10Cの電池缶100Cの高さ方向において、ガスケット320Cの内側リング部322Cと接触する最低位置における電池缶100Cの開口縁110Cの外径は、筒部120Cの外径よりも小さくなっている。また、外側リング部321Cは、開口縁110Cの端面110Tよりも電池缶100Cの軸方向(Z方向)に突出している。この場合も、キャップ400は有用である。通常、この場合、ガスケット320Cが障害となって、両方の電極を封口体300Cの第2主面300Y側から集電することは困難である。しかし、キャップ400を用いることにより、両方の電極を第2主面300Y側から容易に集電することができる。
【0076】
外側リング部321C、内側リング部322Cおよび側壁部323Cは一体化された成型体である。ガスケット320Cは、例えばインサート成型により封口板310Cと一体成型され得る。一体成型によれば、封口板310Cとガスケット320Cとが相互に密着した状態が容易に達成される。封口板310Cとガスケット320Cとが一体成型されることで、封口体300Cを一部品として取り扱うことができ、電池10Cの製造が容易になる。
【0077】
図6Aでは、開口縁110Cの内側に、縮径された突起部111が開口の周方向に沿って形成されている。この突起部111が、側壁部323Cを端面311Tに対して押圧している。ガスケット320Cの側壁部323Cには、突起部111に対応する位置に、予め凹部3231を設けておいてもよい。ガスケット320Cに凹部3231を設けることで、側壁部323Cが圧縮されたときのガスケット320Cの過度な変形を抑制し得る。
【0078】
突起部111は、開口の周方向に沿って間欠的に複数形成してもよく、開口の周方向に沿って連続的に形成してもよい。連続的に形成された突起部111は、開口の周方向に沿った環状の溝部を形成し得る。突起部111は、ガスケット320Cもしくはその側壁部323Cを、封口板310Cの周縁部311Cの端面311Tに向けてより強く押圧し得る。よって、封口体300Cと開口縁110Cとの間の密閉性がより確実に確保される。突起部111を間欠的に複数形成する場合、開口の中心に対して角度的に等価な位置に複数(少なくとも2箇所、好ましくは4箇所以上)の突起部111を設けることが好ましい。
【0079】
電池缶100Cの高さ方向において、突起部111の位置と端面311Tの中心位置とは実質的に同一である。これにより、封口板310Cとガスケット320Cの変形が抑制される。また、ガスケット320Cもしくはその側壁部に印加される圧力も偏りにくくなる。よって、ガスケット320Cの変形が抑制されやすく、かつガスケット320Cの圧縮率を高めることができ、封口体300Cと開口縁110Cとの間の密閉性がより顕著に確保され得る。
【0080】
ここで、突起部111の位置と封口板310Cの端面311Tの中心位置とが実質的に同一であるとは、電池缶100Cの高さ方向において、突起部111の位置と封口板310Cの端面311Tの中心位置とのずれ量が、電池缶100Cの高さHの4%以下であることを意味する。
【0081】
周縁部311Cの端面311Tの中心位置には、開口縁110が有する突起部111に対応するように凹溝3111が形成されている。電池缶100Cの高さ方向において、凹溝3111の中心位置と突起部111の位置とのずれ量は、電池缶100Cの高さHの4%以下であればよい。
【0082】
上記構成によれば、電池缶内を密閉するためにガスケットをZ方向に押圧する必要がない。そのため、電池缶100Cは、図1および図4に示すような、ガスケットと電極体との間に介入する縮径部を有さなくてもよい。この場合、封口体300Cと電極体200との最短距離は、例えば2mm以下、好ましくは1.5mm以下、さらには、1mm以下にすることが可能である。
【0083】
電池缶100A、100Bおよび100Cの材質は特に限定されず、鉄、および/または鉄合金(ステンレス鋼を含む)、銅、アルミニウム、アルミニウム合金(マンガン、銅などの他の金属を微量含有する合金など)、などが例示できる。キャップ400の材質も特に限定されず、電池缶100A、100Bと同じ材質を例示することができる。
【0084】
ガスケット320A、320Bおよび320Cの材質は限定されないが、例えば、一体成型が容易な材料として、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレン(PE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド(PA)などを用いることができる。
【0085】
次に、リチウムイオン二次電池を例に、電極体200の構成について例示的に説明する。
【0086】
円筒型の電極体200は、捲回型であり、正極と負極とをセパレータを介して渦巻状に捲回して構成されている。正極および負極の一方にはリード線210が接続されている。リード線210は、封口板の中央領域の内側面に溶接等により接続される。正極および負極の他方には、別のリード線が接続され、別のリード線は電池缶の内面に溶接等により接続される。
【0087】
(負極)
【0088】
負極は、帯状の負極集電体と、負極集電体の両面に形成された負極活物質層とを有する。負極集電体には、金属フィルム、金属箔などが用いられる。負極集電体の材料は、銅、ニッケル、チタンおよびこれらの合金ならびにステンレス鋼からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。負極集電体の厚みは、例えば5~30μmであることが好ましい。
【0089】
負極活物質層は、負極活物質を含み、必要に応じて結着剤と導電剤を含む。負極活物質層は、気相法(例えば蒸着)で形成される堆積膜でもよい。負極活物質としては、Li金属、Liと電気化学的に反応する金属もしくは合金、炭素材料(例えば黒鉛)、ケイ素合金、ケイ素酸化物、金属酸化物(例えばチタン酸リチウム)などが挙げられる。負極活物質層の厚みは、例えば1~300μmであることが好ましい。
【0090】
(正極)
【0091】
正極は、帯状の正極集電体と、正極集電体の両面に形成された正極活物質層とを有する。正極集電体には、金属フィルム、金属箔(ステンレス鋼箔、アルミニウム箔もしくはアルミニウム合金箔)などが用いられる。
【0092】
正極活物質層は、正極活物質および結着剤を含み、必要に応じて導電剤を含む。正極活物質は、特に限定されないが、LiCoO2、LiNiO2のようなリチウム含有複合酸化物を用いることができる。正極活物質層の厚みは、例えば1~300μmであることが好ましい。
【0093】
各活物質層に含ませる導電剤には、グラファイト、カーボンブラックなどが用いられる。導電剤の量は、活物質100質量部あたり、例えば0~20質量部である。活物質層に含ませる結着剤には、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ゴム粒子などが用いられる。結着剤の量は、活物質100質量部あたり、例えば0.5~15質量部である。
【0094】
(セパレータ)
【0095】
セパレータとしては、樹脂製の微多孔膜や不織布が好ましく用いられる。セパレータの材料(樹脂)としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアミドイミドなどが好ましい。セパレータの厚さは、例えば8~30μmである。
【0096】
(電解質)
【0097】
電解質にはリチウム塩を溶解させた非水溶媒を用い得る。リチウム塩としては、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、イミド塩類などが挙げられる。非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートなどの鎖状炭酸エステル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどの環状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0098】
上記では、リチウムイオン二次電池を例として説明したが、本発明は、一次電池か二次電池かを問わず、封口体を用いて電池缶の封口を行う電池において利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係る電池は、種々の缶型の電池に利用可能であり、例えば携帯機器、ハイブリッド自動車、電気自動車等の電源として使用するのに適している。
【0100】
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【符号の説明】
【0101】
10A、10B、10C:電池
100A、10B、10C:電池缶
110A、110B、110C:開口縁
110E:端部
110S:テーパ領域
110T:端面
111:突起部
120A、120B、120C:筒部
130A、130B、130C:底壁
140:縮径部
141a:第1縮径部
141b:第2縮径部
200:電極体
210:リード線
300A、300B、300C:封口体
300X:第1主面
300Y:第2主面
300Z:側面
310A、310B、310C:封口板
311T:端面
3111:凹溝
311A、311B、311C:周縁部
312A、312B、312C:中央領域
313A、313B、313C:薄肉部
314:凹部
320A、320B、320C:ガスケット
321A、321B、321C:外側リング部
322A、322B、322C:内側リング部
323A、323B、323C:側壁部
3231:凹部
324:突起部
400:キャップ
401:第1部分
402:第2部分
403:切り込み
410:接合材
501:第1外部リード線
502:第2外部リード線
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C