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特許7320498GM-CSFアンタゴニストを使用した免疫療法関連毒性の治療方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】GM-CSFアンタゴニストを使用した免疫療法関連毒性の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230727BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230727BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230727BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230727BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230727BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230727BHJP
   A61K 35/17 20150101ALN20230727BHJP
   A61K 38/17 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
A61K39/395 U ZNA
A61P37/02
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K35/17
A61K39/395 N
A61K38/17
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020520060
(86)(22)【出願日】2018-10-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 US2018053933
(87)【国際公開番号】W WO2019070680
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-08-16
(31)【優先権主張番号】62/567,187
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/729,043
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520117765
【氏名又は名称】ヒューマニジェン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】デュラン,キャメロン
(72)【発明者】
【氏名】チャペル,デール
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/066262(WO,A1)
【文献】特表2011-516562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 45/00
A61K 35/17
A61K 39/395
A61K 38/17
A61P 37/02
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるCAR-T免疫療法関連毒性の発生又は重症度を阻害又は低減するための医薬組成物であって、組換えhGM-CSFアンタゴニストを含み、
前記組換えhGM-CSFアンタゴニストが、抗hGM-CSF抗体を含み、
前記抗hGM-CSF抗体が、
配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3を備える可変重鎖(VH)領域と、
配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR3を備える可変軽鎖(VL)領域と、
を含む、
医薬組成物。
【請求項2】
前記CAR-T免疫療法が、養子細胞移入、モノクローナル抗体の投与、サイトカインの投与、がんワクチンの投与、T細胞誘導療法、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記養子細胞移入が、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)、T細胞受容体(TCR)修飾T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、キメラ抗原受容体(CAR)修飾ナチュラルキラー細胞、もしくは樹状細胞、又はそれらの任意の組み合わせの投与を含む、
前記モノクローナル抗体が、抗CD3、抗CD52、抗PD1、抗PD-L1、抗CTLA4、抗CD20、抗BCMA抗体、二重特異性抗体、又は二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、及び/又は
前記サイトカインが、IFNα、IFNβ、IFNγ、IFNλ、IL-2、IL-7、IL-15、IL-21、IL-11、IL-12、IL-18、hGM-CSF、TNFα、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、
請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記CAR-T免疫療法関連毒性の発生又は重症度の前記阻害又は低減が、前記対象の血清、組織液、又は脳脊髄液(CSF)中の少なくとも1つの炎症関連因子の濃度を低減することを含み、
前記炎症関連因子が、C反応性タンパク質、hGM-CSF、IL-2、sIL2Rα、IL-5、IL-6、IL-8、IP10、IL-10、IL-15、MCP-1、MIG、MIP1β、IFNγ、CX3CR1、もしくはTNFα、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記組換えhGM-CSFアンタゴニストの投与が、前記CAR-T免疫療法の有効性を低減しない、
前記CAR-T免疫療法が、前記hGM-CSFアンタゴニストの投与なしで投与されるときより高い用量で投与される、
前記組換えhGM-CSFアンタゴニストの投与が、前記CAR-T免疫療法の前、同時、又は後に行われる、及び/又は
前記組換えhGM-CSFアンタゴニストが、コルチコステロイド、抗IL-6抗体、トシリズマブ、シクロスポリン、抗てんかん薬、ベンゾジアゼピン、アセタゾラミド、過換気療法、もしくは高浸透圧療法、又はそれらの任意の組み合わせと共投与される、
請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記CAR-T免疫療法関連毒性が、脳疾患、損傷、又は機能不全を含む、
前記CAR-T免疫療法関連毒性が、脳疾患、損傷、又は機能不全を含み、前記脳疾患、損傷、又は機能不全が、CAR-T細胞関連神経毒性又はCAR-T細胞関連脳症症候群(CRES)を含む、
前記CAR-T免疫療法関連毒性が、CAR-T細胞関連神経毒性を含み、前記CAR-T細胞関連神経毒性が、CAR-T細胞及び対照抗体で治療された対象における神経毒性の低減と比較して、約90%低減される、
前記CAR-T免疫療法関連毒性が、脳疾患、損傷、又は機能不全を含み、前記脳疾患、損傷、又は機能不全の発生の前記阻害又は低減が、前記対象における頭痛、せん妄、不安、振戦、発作活動、混乱、覚醒状態の変化、幻覚、不全失語症、運動失調、失行症、顔面神経麻痺、運動脱力、発作、非痙攣性EEG発作、意識レベルの変化、昏睡、内皮活性化、血管漏出、血管内凝固、又はそれらの任意の組み合わせを低減することを含む、
前記対象のANG2もしくはVWFの血清濃度、又は血清ANG2:ANG1比が低減される、
前記対象が、38℃を超える体温、16pg/mlを超えるIL6血清濃度、又はCAR-T細胞の注入後の最初の36時間の間に1,300pg/mlを超えるMCP-1血清濃度を有する、
前記CAR-T免疫療法関連毒性が、脳疾患、損傷、又は機能不全を含み、前記対象が、前記脳疾患、損傷、又は機能不全を有する素因がある、
前記対象において、CAR-T細胞の注入前の血清中のANG2:ANG1比が1を超える、
前記CAR-T免疫療法関連毒性が、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)又はマクロファージ活性化症候群(MAS)を含む、
前記CAR-T免疫療法関連毒性が、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)又はマクロファージ活性化症候群(MAS)を含み、HLH又はMASの発生の前記阻害又は低減が、生存時間及び/又は再発までの時間を増加させること、マクロファージ活性化を低減すること、T細胞活性化を低減すること、循環IFNγの濃度を低減すること、もしくはhGM-CS
Fの循環濃度を低減すること、又はそれらの任意の組み合わせを含む、
前記対象が、発熱、脾腫、2つ以上の株を伴う血球減少症、高トリグリセリド血症、低フィブリノゲン血症、血球貪食、NK細胞活性の低下又は欠如、500U/mlを超えるフェリチン血清濃度、もしくは2400U/mlを超える可溶性CD25血清濃度、又はそれらの任意の組み合わせを呈する、
前記CAR-T免疫療法関連毒性が、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)又はマクロファージ活性化症候群(MAS)を含み、前記対象が、HLH又はMASを獲得する素因がある、及び/又は
前記対象が、PRF1、UNC13D、STX11、STXBP2、又はRAB27Aから選択される遺伝子に変異を有するか、又は低減されたパーフォリンの発現、又はそれらの任意の組み合わせを有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗hGM-CSF抗体が、中和抗体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記VH領域のCDR3が、RQRFPYYFDY(配列番号15)を含む、
前記VH領域が、配列番号5のアミノ酸配列を備えるVH#5の配列を有する、
前記抗hGM-CSF抗体が、アミノ酸配列FNKを含むCDR3を含むVL領域を含む、
前記VL領域が、QQFNKSPLT(配列番号18)を含むCDR3を含む、及び/又は
前記VH領域もしくは前記VL領域、又は前記VH及びVL領域の両方のアミノ酸配列が、N末端にメチオニンを含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
対象におけるCAR-T免疫療法の有効性を増加させるための医薬組成物であって、組換えhGM-CSFアンタゴニストを含み、
前記組換えhGM-CSFアンタゴニストが、抗hGM-CSF抗体を含み、
前記抗hGM-CSF抗体が、
配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3を備える可変重鎖(VH)領域と、
配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR3を備える可変軽鎖(VL)領域と、
を含む、
医薬組成物。
【請求項10】
前記組換えhGM-CSFアンタゴニストが、前記CAR-T免疫療法の前、同時、又は後に行われ、
前記有効性の増加が、CAR-T細胞拡大の増加、T細胞機能を阻害する骨髄由来抑制細胞(MDSC)の低減、チェックポイント阻害剤との相乗作用、又はそれらの任意の組み合わせを含み、及び/又は
前記有効性の増加がCAR-T細胞拡大の増加を含み、前記CAR-T細胞拡大の増加が、対照と比較して少なくとも50%の増加を含む、
前記有効性の増加がCAR-T細胞拡大の増加を含み、前記CAR-T細胞拡大の増加が、対照と比較して少なくとも4分の1の対数拡大を含む、
前記有効性の増加がCAR-T細胞拡大の増加を含み、前記CAR-T細胞拡大の増加が、対照と比較して少なくとも半分の対数拡大を含む、
前記有効性の増加がCAR-T細胞拡大の増加を含み、前記CAR-T細胞拡大の増加が、対照と比較して少なくとも1の対数拡大を含む、又は
前記有効性の増加がCAR-T細胞拡大の増加を含み、前記CAR-T細胞拡大の増加が、対照と比較して1を超える対数拡大を含む、
請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記hGM-CSFアンタゴニストが、中和抗体を含む、請求項9又は10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
対象におけるCAR-T関連毒性の発生又は重症度を阻害又は低減するための医薬組成物であって、組換えhGM-CSFアンタゴニストを含み、
前記組換えhGM-CSFアンタゴニストが、抗hGM-CSF抗体を含み、
前記抗hGM-CSF抗体が、
配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3を備える可変重鎖(VH)領域と、
配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR3を備える可変軽鎖(VL)領域と、
を含む、
医薬組成物。
【請求項13】
前記CAR-T関連毒性が、神経毒性、CAR-T誘導性サイトカイン放出症候群(CRS)、又はそれらの組み合わせを含む、
前記CAR-T関連毒性が神経毒性を含み、前記神経毒性が、CAR-T細胞及び対照抗体で治療された対象における神経毒性の低減と比較して、約50%低減される、
前記CAR-T関連毒性がCRSを含み、CRSの発生の前記阻害又は低減が、生存時間及び/又は再発までの時間を増加させること、マクロファージ活性化を低減すること、T細胞活性化を低減すること、もしくは循環hGM-CSFの濃度を低減すること、又はそれらの任意の組み合わせを含む、
前記対象が、悪寒、倦怠感、疲労、食欲不振、筋肉痛、関節痛、吐き気、嘔吐、頭痛、皮疹、下痢、頻呼吸、低酸素血症、低酸素、ショック、心血管頻脈、脈圧拡大、低血圧、毛細血管漏出、早期心拍出量の増加、後期心拍出量の減少、Dダイマーの上昇、出血を伴う又は伴わない低フィブリノゲン血症、高窒素血症、高トランスアミナーゼ血症、高ビリルビン血症、精神状態変化、混乱、せん妄、明らかな失語症、幻覚、振戦、測定障害、歩行変化、発作、臓器不全、又はそれらの任意の組み合わせを伴う又は伴わない発熱を呈する、及び/又は
前記CAR-T関連毒性の発生又は重症度の前記阻害又は低減が、前記CAR-T関連毒性の発症を予防することを含む、
請求項12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2017年10月2日に提出された米国仮出願第62/567,187号および2018年9月10日に提出された第62/729,043号の優先権を主張するものであり、それらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書の開示は、対象における免疫療法関連毒性の発生および/または重症度を阻害または低減する方法を提供し、本方法は、組換えGM-CSFアンタゴニストを対象に投与することを含む。
【背景技術】
【0003】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、マクロファージ、T細胞、マスト細胞、ナチュラルキラー細胞、内皮細胞、および線維芽細胞を含む、さまざまな細胞型によって分泌されるサイトカインである。GM-CSFは、顆粒球および単球の分化を刺激する。単球は、次に組織に移動し、マクロファージと樹状細胞に成熟する。したがって、GM-CSFの分泌は、マクロファージ数の急速な増加につながる。GM-CSFは、中枢神経系(CNS)の炎症応答にも関与しており、血液由来の単球およびマクロファージの流入、ならびにアストロサイトおよびミクログリアの活性化を引き起こす。免疫関連毒性は、異なる免疫療法から生じる高レベルの免疫活性化の結果として生じる、生命を脅かす可能性のある免疫応答を含む。免疫関連毒性は現在、がん患者への免疫療法の適用における主要な合併症である。免疫関連毒性を予防および治療する方法が依然として大いに必要であることは明らかである。理想的な方法は、免疫療法の有効性に影響を与えることなく、これらの生命を脅かす合併症のリスクを最小限に抑え、例えば、免疫療法化合物の安全な投与量の増加および/またはT細胞の拡大を可能にすることにより、有効性を潜在的にさらに改善することができる。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、対象における免疫療法関連毒性の発生または重症度を阻害または低減する方法が本明細書に開示され、本方法は、組換えGM-CSFアンタゴニストを対象に投与するステップを含む。
【0005】
関連する態様では、免疫療法は、養子細胞移入、モノクローナル抗体の投与、サイトカインの投与、がんワクチンの投与、T細胞誘導療法、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0006】
別の態様では、養子細胞移入は、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)、T細胞受容体(TCR)修飾T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、キメラ抗原受容体(CAR)修飾ナチュラルキラー細胞、もしくは樹状細胞、またはそれらの任意の組み合わせを投与することを含む。関連する態様では、モノクローナル抗体は、抗CD3、抗CD52、抗PD1、抗PD-L1、抗CTLA4、抗CD20、抗BCMA抗体、二重特異性抗体、または二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体、またはそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。関連する態様では、サイトカインは、IFNα、IFNβ、IFNγ、IFNλ、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-15、IL-21、IL-11、IL-12、IL-18、GM-CSF、TNFα、またはそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。
【0007】
別の態様では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、対象の血清、組織液、またはCSF中の少なくとも1つの炎症関連因子の濃度を低減することを含む。関連する態様では、炎症関連因子は、C反応性タンパク質、GM-CSF、IL-1、IL-2、sIL2Rα、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IP10、IL-15、MCP-1(AKA CCL2)、MIG、MIP1β、IFNγ、CX3CR1、もしくはTNFα、またはそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。別の態様では、組換えGM-CSFアンタゴニストの投与は、該免疫療法の有効性を低減しない。別の態様では、組換えGM-CSFアンタゴニストの投与は、該免疫療法の有効性を増加させる。別の態様では、組換えGM-CSFアンタゴニストの投与は、免疫療法の前、同時、または後に行われる。関連する態様では、組換えGM-CSFアンタゴニストは、コルチコステロイド、抗IL-6抗体、トシリズマブ、抗IL-1抗体、シクロスポリン、抗てんかん薬、ベンゾジアゼピン、アセタゾラミド、過換気療法、もしくは高浸透圧療法、またはそれらの任意の組み合わせと共投与される。
【0008】
別の態様では、免疫療法関連毒性は、脳疾患、損傷、または機能不全を含む。関連する態様では、脳疾患、損傷、または機能不全は、CAR-T細胞関連神経毒性またはCAR-T細胞関連脳症症候群(CRES)を含む。関連する態様では、脳疾患、損傷、または機能不全の発生の阻害または低減は、対象における頭痛、せん妄、不安、振戦、発作活動、混乱、覚醒状態の変化、幻覚、不全失語症、運動失調、失行症、顔面神経麻痺、運動脱力、発作、非痙攣性EEG発作、意識レベルの変化、昏睡、内皮活性化、血管漏出、血管内凝固、またはそれらの任意の組み合わせを低減することを含む。別の態様では、免疫療法関連毒性は、CAR-T誘導性サイトカイン放出症候群(CRS)を含む。関連する態様では、CRSの発生の阻害または低減は、限定されないが、高熱、筋肉痛、吐き気、悪心、低血圧、低酸素、もしくはショック、またはそれらの組み合わせを低減または阻害することを含む。関連する態様では、免疫療法関連毒性は生命を脅かす。
【0009】
別の態様では、対象のANG2もしくはVWFの血清濃度、または血清ANG2:ANG1比が低減される。関連する態様では、対象は、38℃を超える体温、>16pg/mlのIL-6血清濃度、またはCAR-T細胞の注入後の最初の36時間の間に1,300pg/mlを超えるMCP-1血清濃度を有する。関連する態様では、対象は、該脳疾患、損傷、または機能不全を有する素因がある。関連する態様では、対象は、該CAR-T細胞の注入前の血清中のANG2:ANG1比が1を超える。
【0010】
別の態様では、免疫療法関連毒性は、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)またはマクロファージ活性化症候群(MAS)を含む。関連する態様では、HLHまたはMASの発生の阻害または低減は、生存時間および/または再発までの時間を増加させること、マクロファージ活性化を低減すること、T細胞活性化を低減すること、抹消循環におけるIFNγの濃度を低減すること、もしくは抹消循環におけるGM-CSFの濃度を低減すること、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0011】
別の態様では、対象は、発熱、脾腫、2つ以上の株を伴う血球減少症、高トリグリセリド血症、低フィブリノゲン血症、血球貪食、NK細胞活性の低下または欠如、500U/mlを超えるフェリチン血清濃度、もしくは2400U/mlを超える可溶性CD25血清濃度、またはそれらの任意の組み合わせを呈する。関連する態様では、対象は、HLHまたはMASを獲得する素因がある。関連する態様では、対象は、PRF1、UNC13D、STX11、STXBP2、またはRAB27Aから選択される遺伝子に変異を有するか、または低減されたパーフォリンの発現、またはそれらの任意の組み合わせを有する。
【0012】
一実施形態では、GM-CSFアンタゴニストは、抗ヒトGM-CSF抗体(抗hGM-CSF抗体)である。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、GM-CSFの、GM-CSF受容体のアルファサブユニットへの結合を遮断する。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、ポリクローナル抗体である。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、モノクローナル抗体である。別の実施形態では、抗hGM-CSF抗体は、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、またはdABの抗体断片である。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗hGM-CSF抗体、単鎖Fv、およびFabは、ニワトリにおいて生成されてもよく、ニワトリIgYは、トリにおいて哺乳類IgG抗体に相当するものである。(Park et al.,Biotechnology Letters(2005)27:289-295、Finley et al.,Appl.Environ.Microbiol.,May 2006,p.3343-3349)。ニワトリIgY抗体には、結合力、すなわち、抗体と抗原との間の全体的な結合強度が高い、特異性が高い(免疫原以外の哺乳類タンパク質との交差反応性が低い)、卵黄の収量が高く、バックグラウンドが低い(IgYおよびIgGのFc領域の構造の違いにより、偽陽性染色が少なくなる)という利点がある。別の実施形態では、抗hGM-CSF抗体は、ラクダ科動物、例えば、軽鎖を欠く重鎖抗体とも呼ばれる上のラマ由来の単一可変ドメインであり得る(sdAb、VHH、およびNanobodies(登録商標)とも呼ばれる、VHHドメイン(約15kDa)は、完全な結合能力および親和性(従来の抗体と同等)を有する哺乳動物において生じる最小の既知の抗原認識部位である)。(Garaicoechea et al.(2015)PLoS ONE 10(8):e0133665、Arbabi-Ghahroudi M(2017)Front.Immunol.8:1589、Wu et al.,Translational Oncology(2018)11,366-373)。別の実施形態では、抗体断片は、ポリエチレングリコールにコンジュゲートされる。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、約5pM~約50pMの範囲の親和性を有する。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、中和抗体である。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、組換えまたはキメラ抗体である。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、ヒト抗体である。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、ヒト可変領域を含む。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、操作されたヒト可変領域を含む。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、ヒト化可変領域を含む。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、操作されたヒト可変領域を含む。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、ヒト化可変領域を含む。
【0013】
一実施形態では、抗GM-CSF抗体は、ヒト軽鎖定常領域を含む。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、ヒト重鎖定常領域を含む。別の実施形態では、ヒト重鎖定常領域は、ガンマ鎖である。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、キメラ19/2と同じエピトープに結合する。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、キメラ19/2のVH領域のCDR3と、VL領域のCDR3とを含む。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、キメラ19/2のVH領域と、VL領域のCDR1、CDR2、およびCDR3とを含む。
【0014】
一実施形態では、抗GM-CSF抗体は、CDR3結合特異性決定基RQRFPYまたはRDRFPY、Jセグメント、およびVセグメントを含む重鎖可変領域(Jセグメントは、ヒトJH4(YFDYWGQGTLVTVSS)に対して少なくとも95%の同一性を有し、Vセグメントは、ヒト生殖系列VH1 1-02またはVH1 1-03配列に対して少なくとも90%の同一性を有する)、またはRQRFPYを含むCDR3結合特異性決定基を含む重鎖可変領域を含む。別の実施形態では、Jセグメントは、YFDYWGQGTLVTVSSを含む。別の実施形態では、CDR3は、RQRFPYYFDYまたはRDRFPYYFDYを含む。別の実施形態では、重鎖可変領域CDR1またはCDR2は、ヒト生殖系列VH1配列であり得るか、またはCDR1およびCDR2の両方がヒト生殖系列VH1であり得る。別の実施形態では、抗体は、図1に記載されるV領域に示される、重鎖可変領域CDR1もしくはCDR2、またはCDR1およびCDR2の両方を含む。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、図1に示されるV Vセグメント配列を有するVセグメントを有する。別の実施形態では、図1に記載されるVH#1、VH#2、VH#3、VH#4、またはVH#5の配列を有するV
【0015】
別の実施形態では、例えば、上の段落に記載される重鎖可変領域を有する抗GM-CSF抗体は、アミノ酸配列FNKまたはFNRを含むCDR3結合特異性決定基を含む軽鎖可変領域を含む。
【0016】
別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、アミノ酸配列FNKまたはFNRを含むCDR3を含むVL領域を含む。一実施形態では、抗GM-CSF抗体は、ヒト生殖系列JK4領域を含む。別の実施形態では、抗体V領域CDR3は、QQFN(K/R)SPLTを含む。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、QQFNKSPLTを含むCDR3を含むVL領域を含む。別の実施形態では、VL領域は、図1に示されるV領域のCDR1、またはCDR2、またはCDR1およびCDR2の両方を含む。別の実施形態では、V領域は、図1に示されるVKIIIA27 Vセグメント配列に対して少なくとも95%の同一性を有するVセグメントを含む。別の実施形態では、V領域は、図1に記載されるVK#1、VK#2、VK#3、またはVK#4の配列を有する。
【0017】
一実施形態では、抗GM-CSF抗体は、VH領域のCDR3結合特異性決定基RQRFPYまたはRDRFPY、およびQQFNKSPLTを含むCDR3を有するVL領域を有する。別の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、図1に記載されるVH領域配列、および図1に記載されるVL領域配列を有する。別の実施形態では、VH領域もしくはVL領域、またはVHおよびVL領域の両方のアミノ酸配列は、N末端にメチオニンを含む。別の実施形態では、GM-CSFアンタゴニストは、抗GM-CSF受容体抗体または可溶性GM-CSF受容体、シトクロムb562抗体模倣物、GM-CSFペプチド類似体、アドネクチン、リポカリン足場抗体模倣物、カリックスアレーン抗体模倣物、および抗体様結合ペプチド模倣物で構成される群から選択される。
【0018】
一実施形態では、対象におけるCAR-T免疫療法の有効性を増加させる方法が本明細書に開示され、本方法は、組換えGM-CSFアンタゴニストを対象に投与するステップを含み、該投与は、該対象におけるCAR-T免疫療法の有効性を増加させる。別の実施形態では、組換えGM-CSFアンタゴニストの該投与は、CAR-T免疫療法の前、同時、または後に行われる。別の実施形態では、該有効性の増加は、CAR-T細胞拡大の増加、T細胞機能を阻害する骨髄由来抑制細胞(MDSC)数の低減、チェックポイント阻害剤との相乗作用、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、該CAR-T細胞拡大の増加は、対照と比較して少なくとも50%の増加を含む。別の実施形態では、該CAR-T細胞拡大の増加は、対照と比較して少なくとも4分の1の対数拡大を含む。別の実施形態では、該細胞拡大の増加は、対照と比較して少なくとも半分の対数拡大を含む。別の実施形態では、該細胞拡大の増加は、対照と比較して少なくとも1の対数拡大を含む。別の実施形態では、該細胞拡大の増加は、対照と比較して1を超える対数拡大を含む。
【0019】
ある実施形態では、GM-CSFアンタゴニストは、中和抗体を含む。別の実施形態では、中和抗体は、モノクローナル抗体である。
【0020】
ある実施形態では、対象におけるCAR-T関連毒性の発生または重症度を阻害または低減する方法が本明細書に開示され、本方法は、組換えGM-CSFアンタゴニストを対象に投与するステップを含み、該投与は、該対象におけるCAR-T関連毒性の発生または重症度を阻害または低減する。ある実施形態では、CAR-T関連毒性は、神経毒性、CRS、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞関連神経毒性は、CAR-T細胞および対照抗体で治療された対象における神経毒性の低減と比較して、約50%低減される。様々な実施形態では、組換えGM-CSFアンタゴニストは、本明細書に記載される実施形態によるGM-CSF中和抗体である。
【0021】
別の実施形態では、該CRSの発生の阻害または低減は、生存時間および/または再発までの時間を増加させること、マクロファージ活性化を低減すること、T細胞活性化を低減すること、もしくは循環GM-CSFの濃度を低減すること、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、該対象は、発熱(以下を伴うまたは伴わない:悪寒、倦怠感、疲労、食欲不振、筋肉痛、関節痛、吐き気、嘔吐、頭痛、皮疹、下痢、頻呼吸、低酸素血症、低酸素、ショック、心血管頻脈、脈圧拡大、低血圧、毛細血管漏出、早期心拍出量の増加、後期心拍出量の減少、Dダイマーの上昇、出血を伴うまたは伴わない低フィブリノゲン血症、高窒素血症、高トランスアミナーゼ血症、高ビリルビン血症、精神状態変化、混乱、せん妄、明らかな失語症、幻覚、振戦、測定障害、歩行変化、発作、臓器不全、またはそれらの任意の組み合わせを呈する。
【0022】
別の実施形態では、CAR-T関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、CAR-T関連毒性の発症を予防することを含む。
【0023】
別の実施形態では、細胞におけるGM-CSF遺伝子発現をノックアウトまたはサイレンシングすることを含む、細胞におけるGM-CSF発現を遮断または低減する方法が本明細書に開示される。ある実施形態では、GM-CSF発現の遮断または低減には、低分子干渉RNS(siRNA)、CRISPR、RNAi、DNA指向RNA干渉(ddRNAi)(これは、動物細胞の内因性RNA干渉(RNAi)経路を活性化するためにDNA構築物を使用する遺伝子サイレンシング技法である)、または操作された転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、すなわち、非配列特異的様式でDNAを切断するヌクレアーゼに融合したカスタマイズ可能な配列特異的DNA結合ドメインで構成される人工タンパク質を用いた標的ゲノム編集が含まれる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる(Joung and Sander,Nat Rev Mol Cell Biol.2013 January;14(1):49-55)。ある実施形態では、細胞は、CAR-T細胞である。
【0024】
一実施形態では、対象は、ヒトである。
【0025】
一実施形態では、対象における免疫療法関連毒性の発生または重症度を阻害または低減する方法に使用するためのGM-CSFアンタゴニストが本明細書に開示され、本方法は、組換えGM-CSFアンタゴニストを対象に投与するステップを含む。一実施形態では、抗GM-CSFアンタゴニストを含む医薬組成物が本明細書に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】抗GM-CSF抗体の例示的なVおよびV配列を提供する。
図2】37℃で表面プラズモン共鳴分析(Biacore 3000)により決定されたGM-CSFのAb1(図2A)またはAb2(図2B)への結合。Ab1およびAb2は、Biacoreチップに固定された抗Fabポリクローナル抗体に捕捉された。示されるように、異なる濃度のGM-CSFが表面上に注入された。グローバルフィット分析は、Scrubber2ソフトウェアを使用して1:1の相互作用を想定して行われた。
図3】グリコシル化(図3A)および非グリコシル化GM-CSF(図3B)へのAb1およびAb2の結合。ヒト293細胞から発現されたグリコシル化GM-CSFまたはE.coliで発現された非グリコシル化GM-CSFへの結合は、ELISAによって決定された。単一実験からの代表的な結果が示される(実施例1)。1500ng/mlから開始するAb1およびAb2の2倍希釈液をGM-CSFコーティングウェルに適用した。各ポイントは、3回の測定の平均±標準誤差を表す。シグモイド曲線フィットは、Prism 5.0 Software(Graphpad)を使用して実施された。
図4】Ab1およびAb2の共有エピトープへの結合を示す競合ELISA。50ng/ウェルの組換えGM-CSFでコーティングされたELISAプレートを、様々な濃度の抗体(Ab2、Ab1、またはアイソタイプ対照抗体)で、50nMビオチン化Ab2とともにインキュベートした。ビオチン化抗体結合は、ニュートラアビジン-HRPコンジュゲートを使用してアッセイした。GM-CSFへの結合の競合は、1時間(図4A)または18時間(図4B)であった。各ポイントは、3回の測定の平均±標準誤差を表す。シグモイド曲線フィットは、Prism 5.0 Software(Graphpad)を使用して実施された。
図5】GM-CSF誘導IL-8発現の阻害。各抗体の様々な量を、0.5ng/mlのGM-CSFとインキュベートし、16時間U937細胞とインキュベートした。培養上清に分泌されたIL-8は、ELISAにより決定された。
図6】抗GM-CSF抗体によるヒト顆粒球のGM-CSF刺激CD11bの用量依存的阻害。
図7】抗GM-CSF抗体によるCD14+ヒト初代単球/マクロファージのGM-CSF誘導HLA-DRの用量依存的阻害。
図8】ある特定の白血病、例えば、急性骨髄性白血病(AML)の特有の特徴である、CAR-T関連活性および白血球増殖の刺激における主要なサイトカインとしてのGM-CSF(骨髄性炎症性因子)の役割を図示する。
図9】抗GM-CSF抗体によるヒトGM-CSFの中和による、GM-CSF依存性ヒトTF-1細胞増殖(ヒト赤白血病)の阻害。KB003は、ヒトGM-CSFを標的とし、中和するように設計された組換えモノクローナル抗体である。KB002は、Ludwig Institute for Cancer Researchから使用許諾を得ているキメラmAbである。
図10】キメラ抗原受容体の説明。
図11】CAR-T19は、再発難治性ALLにおいて高い応答率をもたらす。データは、CAR-T19後、R/R ALLの歴史的転帰およびR/R ALLの転帰を示す。(Maude,et al NEJM 2014)。
図12】かなりのGM-CSFが神経毒性に関連していることを示すエビデンス。GM-CSFレベルは、CAR-T細胞療法後の重篤な有害作用と相関している。GM-CSFレベルは、IL-15以外の他のサイトカインに先行し、それを調節する。GM-CSFの上昇は、≧グレード3の神経毒性(NT)と明らかに関連している。IL-2は、この関連を持つ唯一の他のサイトカインである。
図13】CD19 CAR-T細胞療法後のCRSおよびNTの推定時間経過。症状発症のタイミングおよびCRSの重症度は、導入剤、がんの種類、患者の年齢、および免疫細胞の活性化の規模に依存する。CAR-T関連CRS症状の発症は、典型的には、T細胞注入の数日から時折数週間後に発生し、最大T細胞拡大と一致する。mAb療法と関連するCRSと同様に、養子T細胞療法と関連するCRSは、一貫して、IFNγ、IL-6、TNFα、IL-1、IL-2、IL-6、GM-CSF、IL-10、IL-8、IL-5の上昇と関連している。明らかなCAR-T細胞の用量なし:CRSの応答関係は存在するが、非常に高用量のT細胞は、症状のより早い発症をもたらす可能性がある。
図14】GM-CSFはCAR-T有害作用の主要なイニシエーターである。この図は、CRSおよびNTにおけるGM-CSFの中心的な役割を示す。パーフォリンは、グランザイムが腫瘍細胞膜に浸透することを可能にする。CAR-T産生GM-CSFは、CCL2(MCP1)を産生するCCR2+骨髄細胞を腫瘍部位に動員する。CCL2は、CCR2+骨髄細胞の動員により、その自身の産生を積極的に強化する。骨髄細胞からのIL-1およびIL-6は、GM-CSFの産生を誘導することにより、CAR-Tと別の正のフィードバックループを形成する。ホスファチジルセリンは、パーフォリンおよびグランザイムの細胞膜破壊の結果として露出される。ホスファチジルセリンは、CCL2、IL-1、IL-6、および他の炎症性エフェクターの骨髄細胞産生を刺激する。この自己強化フィードバックループの最終転帰は、内皮の活性化、血管透過性、ならびに最終的には、CRSおよび神経毒性をもたらす。さらに、動物モデルのエビデンスは、GM-CSFノックアウトマウスはCRSの徴候を示さないが、IL-6ノックアウトマウスは依然としてCRSを発達させる可能性があることを示す。CCR2+骨髄細胞からのGM-CSF受容体k/oは、神経炎症モデルにおけるカスケードを無効化する。(Sentman,et al.,J.Immunol.;Coxford,et al.Immunity 2015(43)510-514、Ishii et al.,Blood 2016 128:3358、Teachey,et al.Cancer Discov.2016 June 6(6):664-679、Lee,et al.,Blood 2016 124:2:188、Barrett,et al.,Blood 2016:128-654、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。)。
図15】GM-CSF CRISPRノックアウトT細胞は、GM-CSFの発現の低減を示すが、他のサイトカインおよび脱顆粒のレベルは類似することを示す。a.GM-CSFノックアウトCAR-Tの生成。(実施例6を参照されたい)。
図16】本明細書に記載される実施形態によるGM-CSF中和抗体は、CAR-T媒介殺傷、増殖、またはサイトカイン産生を阻害しないが、GM-CSFを良好に中和する(実施例7を参照されたい)。
図17】ヒトCRSのマウスモデルのプロトコルおよび結果。(実施例5)。
図18】本明細書に記載される実施形態による、GM-CSF中和抗体と組み合わせた異種移植モデルにおけるCAR-Tの有効性。GM-CSF中和抗体は、インビボでのCAR-Tの有効性を阻害しないことが示される。(実施例8を参照されたい)。
図19】インビトロおよびインビボの前臨床データは、本明細書に記載される実施形態によるGM-CSF中和抗体が、生存率に対するCAR-Tの影響を損なわないことを示した。GM-CSF中和抗体は、PBMCの不在下で、インビボでのCAR-T細胞の機能を妨げない。生存率は、CAR-T+対照およびCAR-T+GM-CSF中和抗体で類似した。(実施例9を参照されたい)。
図20】インビトロおよびインビボの前臨床データは、本明細書に記載される実施形態によるGM-CSF中和抗体がCAR-T拡大を増加させる可能性があることを示した。GM-CSF中和抗体は、インビトロでのCAR-Tがん細胞殺傷を増加させる可能性がある。この抗体は、CAR-T細胞の増殖を増加させ、有効性を改善する可能性がある。CAR-Tの増殖は、PBMCの存在下でGM-CSF中和抗体によって増加した。(PBMCなしでは影響を受けなかった)。この抗体は、CAR-T脱顆粒、細胞内GM-CSF産生、またはIL-2産生を阻害しなかった。(実施例10を参照されたい)。
図21】CAR-Tの拡大は、全体的な応答率の改善と関連する。CAR AUC(曲線下面積)はCAR-T投与後の最初の28日間にわたる血液のCAR +細胞/μLの累積レベルとして定義された。P値はウィルコクソン順位和検定により計算された。(Neelapu,et al ICML 2017 Abstract 8)。(実施例11を参照されたい)。
図22】本明細書に記載される実施形態によるGM-CSF中和抗体の研究プロトコル。(実施例12を参照されたい)。入院中および最初の30日間の通院中に毎日評価されるCRSおよびNT。CAR-T治療の-1、+1、および+3日目にGM-CSF中和抗体を受ける適格な対象。追加投与は、少なくとも7日目まで延長することが考慮され得る。ベースライン、ならびに1、3、6、9、12、18、および24ヶ月目に実施される腫瘍評価。血液試料(PBMCおよび血清)、-5、-1、0、1、3、5、7、9、11、13、21、28、90、180、270、および360日目。(実施例12を参照されたい)。
図23】GM-CSFの枯渇は、CAR-T細胞拡大を増加させる。a.対照CAR-T細胞と比較してGM-CSFk/o CAR-T細胞の増加したエクスビボ拡大。B.本明細書に記載される実施形態によるGM-CSF中和抗体による治療後のより頑強な増殖。(実施例13を参照されたい)。
図24】本明細書に記載される実施形態によるGM-CSF中和抗体の安全性プロファイル。(実施例14を参照されたい)。
図25】GM-CSF中和抗体は、CAR-T細胞療法に加えられる場合、マウスの前臨床モデルにおいて神経炎症を90%低減させることを示す。図25Aは、CAR-T細胞および対照抗体(上段)の投与後に神経毒性(神経毒性により引き起こされる神経炎症)の徴候を示すマウスの脳と比較して、ならびに未処置(ベースライン)マウスの脳(下段)と比較として、本明細書に記載される実施形態によるCAR-T細胞およびGM-CSF中和抗体の投与後にマウスの脳が明らかな改善を示すMRIデータを示す。図25Bは、ベースラインからのT2 FLAIRのパーセント増加を定量的に示す:CAR-T細胞および対照抗体を投与されたマウスの100%をわずかに超える増加と比較して、本明細書に記載される実施形態によるCAR-TおよびGM-CSF中和抗体を投与されたマウスでは、ベースラインから脳T2/FLAIRがおよそ10%パーセント増加した。比較グラフに示されるように、CAR-TおよびGM-CSF中和抗体を投与したマウスのベースラインからの脳T2/FLAIRの約10%の増加は、CAR-T細胞および対照抗体を受けたマウスに存在する神経炎症の量と比較して、ベースラインからの脳T2/FLAIRにより測定されるとき、神経炎症において90%の低減である。図25C~25Dは、未処置のマウス(500,000~1.5Mの白血病性細胞を有した)およびCAR-T+対照抗体(15,000~100,000の白血病性細胞を有した)と比較して、本明細書に記載される実施形態によるCAR-T+GM-CSF中和抗体による治療が、白血病性細胞の数を大幅に低減させ(500~5,000細胞に減少)、全体的な疾患制御が改善されたことを示す(実施例15を参照されたい)。
図26】GM-CSFの遮断がCART19の毒性を制御するのに役立ち、有効性を改善する可能性があることを示す。図26Aは、CART19およびレンジルマブで処置されたCART19が、UTD(非形質導入T細胞)(1群当たり7~8匹のマウス、n=2)と比較して、高腫瘍負荷NALM6再発モデルの生存転帰において等しく有効であることを示す。図26B~26Dは、レンジルマブおよび抗マウスGM-CSF抗体が、初代ALL異種移植CART19 CRS/NTモデル(1群当たり3匹のマウス、*p<0.05)において、CRS誘導体重減少を制御し、血清ヒトGM-CSFを中和し、血清マウスMCP-1(単球走化性因子タンパク質-1)の発現を低減したことを示す。図26Eは、初代ALL異種移植CART19 CRS/NTモデル(1群当たり3匹のマウス、*p<0.05、**p<0.01)のMRIにより示されるように、レンジルマブおよび抗マウスGM-CSF抗体が脳炎症を低減したことを示す。図26F~26Gは、CART19+レンジルマブおよび抗マウスGM-CSF抗体で処置されたマウスが、CD19+脳白血病性負荷を低減し、初代ALL異種移植CART19 CRS/NTモデル(1群当たり3匹のマウス)の脳マクロファージの割合を低減したことを示す。図26Hは、GM-CSFのCRISPR Cas9 K/Oが、NALM6刺激によるCART19およびUTDにおいて、細胞内染色によりその発現を低減することを示す。(代表的な実験、n=2)図26Iは、CART19およびGM-CSF K/O CART19が腫瘍負荷をUTDよりも良好に制御し、GM/CSF K/O CART19細胞が高腫瘍負荷NALM6再発モデル(1群当たり6匹のマウス、*p<0.05、****p<0.0001)において、CART19よりもわずかに良好に腫瘍負荷を制御することを示す。エラーバーSEM。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本主題は、本開示の一部を形成する以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解することができる。本開示は、記載される、および/または本明細書に示される特定の製品、方法、条件、またはパラメータに限定されるものではなく、また本明細書で使用される用語は、単に例として特定の実施形態を説明する目的のためであり、請求される開示を限定することは意図されていないことが理解されるべきである。
【0028】
免疫療法関連毒性
当業者は、「免疫療法関連毒性」という用語が、高レベルの免疫活性化に起因する一連の炎症症状を指すことを理解するであろう。異なる種類の毒性が異なる免疫療法アプローチと関連する。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性は、毛細血管漏出症候群、心臓病、呼吸器疾患、CAR-T細胞関連脳症症候群(CRES)、神経毒性、大腸炎、痙攣、サイトカイン放出症候群(CRS)、サイトカインストーム、左室駆出率の減少、下痢、播種性血管内凝固、浮腫、脳症、発疹、消化管出血、消化管穿孔、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、肝臓症、高血圧、下垂体炎、免疫関連有害事象、免疫肝炎、免疫不全、虚血、肝毒性、マクロファージ活性化症候群(MAS)、胸水、心嚢液、肺臓炎、多発性関節炎、可逆性白質脳症(PRES)、肺高血圧、血栓塞栓症、および高トランスアミナーゼ血症を含む。
【0029】
異なる種類の毒性は、その病態生理学および臨床症状が異なるが、通常、C反応性タンパク質、GM-CSF、IL-1、IL-2、sIL-2Rα、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IP10、IL-15、MCP-1(AKA CCL2)、MIG、MIP-1β、IFNγ、CX3CR1、またはTNFαなどの炎症関連因子の増加と関連している。当業者は、いくつかの実施形態では、「炎症関連因子」という用語は、炎症中に影響を受ける分子、小分子、ペプチド、遺伝子転写物、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ホルモン、およびバイオマーカーを含むことを理解するであろう。当業者は、炎症中に影響を受ける系が、上方制御、下方制御、活性化、不活性化、または任意の種類の分子修飾を含むことを理解するであろう。サイトカインなどの炎症関連因子の血清濃度は、免疫療法関連毒性の指標として使用されてもよく、サイトカインレベルまたは濃度の倍増、パーセント(%)増加、純増加、または変化率として表されてもよい。血清以外の体液中の炎症関連因子の濃度も、免疫療法関連毒性の指標として使用され得る。いくつかの実施形態では、ある特定のレベルまたは濃度を超える絶対サイトカインレベルまたは濃度は、免疫療法関連毒性を受けている、または経験しようとしている対象の指標であり得る。別の実施形態では、ある特定のレベル、例えば、対照対象において通常見られるレベルまたは濃度における絶対サイトカインレベルまたは濃度は、対象における免疫療法関連毒性の発生を阻害または低減するための方法の指標であり得る。当業者は、「サイトカインレベル」という用語が、濃度の尺度、倍率変化の尺度、パーセント(%)変化の尺度、または速度変化の尺度を包含し得ることを理解するであろう。さらに、血液、脳脊髄液(CSF)、唾液、血清、尿、および血漿中のサイトカインを測定するための方法は、当該技術分野で周知である。
【0030】
神経毒性の種類を分類し、それに応じて管理するために、いくつかのアプローチが作られた。これらの分類は、発熱、低血圧、低酸素、臓器毒性、心機能不全、呼吸機能障害、消化管障害、肝機能障害、腎機能障害、凝固障害、発作の存在、頭蓋内圧、筋緊張、運動能力、フェリチンレベル、および血球貪食などの臨床的および生物学的症状に基づく。同様に、各種類の神経毒性は、その重症度により等級付けされ得る。表1A(Cellular Therapy Implementation:the MDACC Approach,P.Kebriaei,Feb.24,2017から抜粋)は、神経毒性をその重症度によってグレード1、グレード2、グレード3、およびグレード4に等級付けするための方法を開示している。しかしながら、前述の症状のいくつかは、典型的には、神経毒性と関連していない。(Lee,et al.,Blood 2014;124:188-195、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【表1】
【0031】
免疫療法注入後の最初の36時間に体温が38.9℃を超える、IL-6血清濃度が16pg/mlを超える、またはMCP-1(AKA CCL2)血清濃度が1,343.5pg/mlを超える患者は、重度の神経毒性が発達する可能性が高かった(Gust,et al.Cancer Discov.2017 Oct 12)。
【0032】
CRSは、異常なサイトカイン調節、したがって重度の炎症のため、重篤な状態であり、生命を脅かす有害作用である。症状には、発熱、心拍および呼吸障害、吐き気、嘔吐、ならびに発作が含まれ得るが、これらに限定されない。症状およびその重症度を評価することにより、CRSを、例えば、次のように等級付けすることができる:グレード1 CRS:発熱、体質性症状;グレード2CRS:低血圧-体液または1つの低用量の昇圧剤に応答、低酸素-<40%のOに応答、臓器毒性;グレード2;グレード3CRS:低血圧-複数の昇圧剤または高用量の昇圧剤が必要、低酸素-≧40%のOが必要、臓器毒性-グレード3、グレード4の高トランスアミナーゼ血症;グレード4CRS:人工呼吸、臓器毒性-グレード4、高トランスアミナーゼ血症を除く。(Lee,et al.,Blood 2014;124:188-195、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0033】
CRESは、例えば、神経学的評価と、乳頭浮腫、CSF開口圧力、イメージング評価、ならびに発作および運動脱力の存在などの他のパラメータとを組み合わせることによって等級付けすることができる。CRESを等級付けするための方法は、Neelapu et al.,Nat Rev Clin Oncol.15(1):47-62(2018)(Epub 2017 Sep 19)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。表1B(Neelapu et al.,Nat Rev Clin Oncol.15(1):47-62(2018)から抜粋)は、CRESをその重症度によってグレード1、グレード2、グレード3、およびグレード4に等級付けするための方法を開示している。
【表2】
【0034】
神経毒性、CRS、およびCRESの症状には、脳症、頭痛、せん妄、不安、振戦、発作活動、混乱、覚醒状態の変化、意識レベルの減少、幻覚、不全失語症、失語症、運動失調、失行症、顔面神経麻痺、運動脱力、発作、非痙攣性EEG発作、脳浮腫、および昏睡が含まれ得る。CRESは、C反応性タンパク質、GM-CSF、IL-1、IL-2、sIL2Rα、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IP10、IL-15、MCP-1、MIG、MIP1β、IFNγ、CX3CR1、およびTNFαとして循環サイトカインの高濃度と関連している。
【0035】
通常の状態で観察される血清とCSFとの間のサイトカイン濃度勾配は、CRES中に低減するかまたは失われる。加えて、CAR T細胞および高タンパク質濃度が患者のCSFにおいて観察され、状態の重症度と相関する。これはすべて、免疫療法後の血液脳関門機能傷害を示す。血管透過性の増加は、神経毒性を有する患者におけるANG2濃度の増加およびANG2:ANG1比の増加によって部分的に説明することができる。ANG1が内皮細胞の静止を誘導する一方で、ANG2は内皮細胞の活性化および微小血管透過性を引き起こす。免疫療法の前に内皮活性化が増加した患者は、神経毒性を被る可能性が高いと報告されてる(Gust,et al.Cancer Discov.2017 Oct 12)。
【0036】
血球貪食性リンパ組織球症(HLH)は、炎症性サイトカインを大量に分泌する良性リンパ球およびマクロファージの無制御な増殖によって引き起こされる重度の過炎症を含む。いくつかの実施形態では、HLHは、サイトカインストーム症候群の1つとして分類され得る。いくつかの実施形態では、HLHは、全身感染、免疫不全、悪性腫瘍、または免疫療法などの強い免疫学的活性化の後に発生する。いくつかの実施形態では、「HLH」という用語は、すべて同じ本質および意味を有する「血球貪食性リンパ組織球症」、「血球貪食症候群」、または「血球貪食症候群」という用語と交換可能に使用され得る。
【0037】
原発性HLHは、不均一な常染色体劣性遺伝疾患を含む。いくつかの遺伝子のうちの1つにホモ接合性変異を有する患者は、細胞溶解性顆粒エキソサイトーシスに関与するタンパク質の機能喪失を示す。いくつかの実施形態では、HLHは、最小限のトリガーまたはトリガーなしで乳児期に現れ得る。二次性HLH、または後天性HLHは、全身感染、免疫不全、基礎悪性腫瘍、または免疫療法などで発生する強い免疫学的活性化の後に発生する。HLHの両形態は、正常なTリンパ球およびマクロファージの圧倒的な活性化を特徴とし、治療の不在下では常に臨床的および血液学的変化ならびに死につながる。
【0038】
いくつかの実施形態では、HLHは、とりわけ、ウイルス感染、EBV、CMV、パルボウイルス、HSV、VZV、HHV8、HIV、インフルエンザ、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、細菌感染、グラム陰性桿菌、Mycoplasma種およびMycobacterium tuberculosis、寄生虫感染、Plasmodium種、Leishmania種、Toxoplasma種、真菌感染、Cryptococcal種、Candidal種、およびPneumocystis種によって開始され得る。
【0039】
マクロファージ活性化症候群(MAS)は、マクロファージおよびTリンパ球の無制御な活性化および増殖を含む状態を含み、IFNγおよびGM-CSFなどの循環サイトカインレベルが著しく増加する。MASは二次性HLHと密接に関連している。MASの症状には、高熱、肝脾腫、リンパ節腫脹、汎血球減少症、肝機能障害、播種性血管内凝固、血球貪食、低フィブリノゲン血症、高フェリチン血症、および高トリグリセリド血症が含まれる。
【0040】
CRSは、重篤な感染症に見られるのと同様の非抗原特異的免疫応答を含む。CRSは、次の症状のいずれかまたはすべてを特徴とする:以下を伴うまたは伴わない発熱:悪寒、倦怠感、疲労、食欲不振、筋肉痛、関節痛、吐き気、嘔吐、頭痛、皮疹、下痢、頻呼吸、低酸素血症、低酸素、ショック、心血管頻脈、脈圧拡大、低血圧、毛細血管漏出、心拍出量の増加(早期)、潜在的な心拍出量の低下(後期)、Dダイマーの上昇、出血を伴うまたは伴わない低フィブリノゲン血症、高窒素血症、高トランスアミナーゼ血症、高ビリルビン血症、頭痛、精神状態変化、混乱、せん妄、喚語困難または明らかな失語症、幻覚、振戦、測定障害、歩行変化、発作、臓器不全、多臓器不全。死亡も報告されている。重度のCRSは、CAR-T19を受けている患者の最大60%において発生すると報告されている。
【0041】
サイトカインストームは、サイトカインと白血球との間の正のフィードバックループからなる免疫反応を含み、様々なサイトカインのレベルが非常に上昇する。「サイトカインストーム」という用語は、すべて同じ本質および意味を有する「サイトカインカスケード」および「高サイトカイン血症」という用語と交換可能に使用され得る。いくつかの実施形態では、サイトカインストームは、IL-2放出およびリンパ球増殖を特徴とする。サイトカインストームは、心機能不全、成人呼吸窮迫症候群、神経毒性、腎および/または肝不全、ならびに播種性血管内凝固を含む、生命を脅かす可能性のある合併症につながる。
【0042】
述べたように、CAR-T細胞療法は現在、生命を脅かす神経毒性およびCRSのリスクによって制限されている。積極的な管理にもかかわらず、すべてのCAR-T応答者はある程度のCRSを経験する。CD19 CAR-Tで治療された患者の最大50%が、少なくともグレード3のCRSまたは神経毒性を有する。GM-CSFレベルおよびT細胞拡大は、グレード3以上のCRSおよび神経毒性と最も関連する要因である。
【0043】
CAR-Tなどの免疫療法におけるCRSおよび神経毒性の軽減または排除は非常に価値があり、特徴的なCAR-Tの炎症応答を駆動または悪化させているものを決定することが重要である。多くのサイトカイン、シグナル伝達分子、および細胞型がこの経路に関与しているが、GM-CSFは経路の中心にあるように思われる1つのサイトカインである。通常、これは、ヒトの血清では検出されないが、炎症を極端なサイトカインストームおよび内皮活性化に駆動させる周期的な正のフィードバックループの中心である。神経毒性およびサイトカインストームは、サイトカインの同時放出の結果ではなく、むしろ骨髄細胞の腫瘍部位への輸送および動員をもたらす、GM-CSFによって開始された炎症のカスケードの結果である。これらの骨髄細胞は、CRSおよび神経毒性で観察されるサイトカインを産生し、炎症カスケードを持続させる。
【0044】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)
本明細書で使用される場合、「顆粒球マクロファージコロニー刺激因子」(GM-CSF)は、およそ23kDaの分子量を有する内部ジスルフィド結合を有する小さな天然に存在する糖タンパク質を指す。いくつかの実施形態では、GM-CSFは、ヒトGM-CSFを指す。いくつかの実施形態では、GM-CSFは、非ヒトGM-CSFを指す。ヒトでは、これは、ヒト第5染色体のサイトカインクラスター内に位置する遺伝子によってコードされる。ヒトの遺伝子およびタンパク質の配列は既知である。タンパク質は、N末端シグナル配列およびC末端受容体結合ドメインを有する(Rasko and Gough In:The Cytokine Handbook,A.Thomson,et al,Academic Press,New York(1994)pages349-369)。その三次元構造はインターロイキンと類似するが、アミノ酸配列は類似しない。GM-CSFは、造血環境および炎症の末梢部位に存在する間葉系細胞によって、いくつかの炎症性メディエーターに応答して産生される。GM-CSFは、骨髄細胞からの好中球性顆粒球、マクロファージ、および混合顆粒球-マクロファージコロニーの産生を刺激することが可能であり、胎児肝前駆細胞からの好酸球コロニーの形成を刺激することができる。GM-CSFは、成熟顆粒球およびマクロファージのいくつかの機能活性を刺激することもできる。骨髄微小環境に存在するサイトカインであるGM-CSFは、炎症性単球由来樹状細胞を動員し、高レベルのIL-6およびCCL2/MCP-1を分泌し、フィードバックループにつながり、より多くの単球、炎症性樹状細胞を炎症部位に動員する。
【0045】
述べたように、CRSは、IFN-γ、IL-6、IL-8、CCL2(MCP-1)、CCL3(MIP1α)、ならびにGM-CSFを含むいくつかのサイトカインおよびケモカインの増加を伴う。(Teachey,D.et al.(June 2016),Cancer Discovery,CD-16-0040、Morgan R.,et al.,(April 2010),Molecular Therapy.)。主要な炎症性サイトカインの1つであるIL-6は、CAR-T細胞によって産生されない。(Barrett,D.et al.(2016),Blood)。代わりに、これは腫瘍部位に動員される骨髄細胞によって産生される。GM-CSFはこの動員を媒介し、骨髄細胞を活性化し、それらを腫瘍部位へ輸送させるケモカイン産生を誘導する。GM-CSFレベルの上昇は、CRSの予測バイオマーカー、およびその重症度の指標の両方として機能する。炎症カスケードの重要な構成成分以上に、GM-CSFは、CRSおよび神経毒性の両方の原因となる主要なイニシエーターである。本明細書に記載されるように、マウスモデルを使用したインビボ研究は、GM-CSFの遺伝子サイレンシングがサイトカインストームを防ぐ一方で、CAR-Tの有効性を依然として維持することを示す。GM-CSFノックアウトマウスは、インビボで正常レベルのINF-γ、IL-6、IL-10、CCL2(MCP1)、CCL3/4(MIG-1)を有し、CRSを発達させない。(Sentman,M.-L.,et al(2016),The Journal of Immunology,197(12),4674-4685.)。GM-CSFノックアウトCAR-Tモデルでは、GM-CSF+CAR-Tと比較して、NK細胞、CD8細胞、骨髄細胞、および好中球の腫瘍部位への動員は少ない。
【0046】
「可溶性顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子受容体」(sGM-CSFR)という用語は、GM-CSFに結合するが、リガンドに結合した場合、シグナルを伝達しない、非膜結合受容体を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、「ペプチドGM-CSFアンタゴニスト」は、GM-CSFまたはその受容体と相互作用して、さもなければGM-CSFの細胞上で発現するその同族受容体への結合から生じるであろうシグナル伝達を(部分的または完全のいずれかで)低減または遮断するペプチドを指す。GM-CSFアンタゴニストは、受容体に結合するために利用可能なGM-CSFリガンドの量を減らすことによって作用する(例えば、GM-CSFに結合されると、GM-CSFのクリアランス速度を増加させる抗体)か、またはGM-CSFもしくは受容体のいずれかに結合することによって、リガンドがその受容体に結合するのを防ぐ(例えば中和抗体)。GM-CSFアンタゴニストはまた、GM-CSFまたはその受容体に結合して、シグナル伝達を部分的または完全に阻害するポリペプチドを含み得る他のペプチド阻害剤も含み得る。ペプチドGM-CSFアンタゴニストは、例えば、抗体、GM-CSFに拮抗する天然もしくは合成のGM-CSF受容体リガンド、または他のポリペプチドであり得る。GM-CSFアンタゴニスト活性を検出するための例示的なアッセイは、実施例1に提供される。典型的には、中和抗体などのペプチドGM-CSFアンタゴニストは、10nM以下のEC50を有する。
【0048】
本明細書で使用される場合、「精製された」GM-CSFアンタゴニストは、その天然の状態で見られる、通常それに付随する構成成分を実質的または本質的に含まないGM-CSFアンタゴニストを指す。例えば、血液または血漿から精製される抗GM-CSF抗体などのGM-CSFアンタゴニストは、他の免疫グロブリン分子などの他の血液または血漿構成成分を実質的に含まない。純度および均一性は、典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技法を使用して決定される。調製物中に存在する主要な種であるタンパク質は、実質的に精製される。典型的には、「精製された」とは、タンパク質が天然に存在する構成成分に対して、タンパク質が少なくとも85%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、最も好ましくは少なくとも99%純粋であることを意味する。
【0049】
抗体
本明細書で使用される場合、「抗体」は、機能的には結合タンパク質として定義され、構造的には、抗体を産生する動物の免疫グロブリンをコードする遺伝子のフレームワーク領域に由来するものとして当業者により認識されるアミノ酸配列を含むと定義されるタンパク質を指す。抗体は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片によって実質的にコードされる1つ以上のポリペプチドからなり得る。認識されている免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、およびミューの定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンに分類され、それぞれ、免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを定義する。
【0050】
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含むことが知られている。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一対で構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kD)および1つの「重」鎖(約50~70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識に関与する約100~110以上のアミノ酸の可変領域を画定する。可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)という用語は、それぞれ、これらの軽鎖および重鎖を指す。
【0051】
「抗体」という用語は、結合特異性を保持する抗体断片を含む。例えば、十分に特徴付けられた抗体断片がいくつかある。したがって、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域のジスルフィド結合の抗体C末端を消化して、それ自体がジスルフィド結合によってVH-CH1に結合する軽鎖であるFabの二量体であるF(ab’)2を産生する。F(ab’)2は、穏やかな条件下で還元されて、ヒンジ領域のジスルフィド結合を破壊し、それにより、(Fab’)2二量体をFab’単量体に変換することができる。Fab’単量体は、本質的にヒンジ領域の一部を伴うFabである(他の抗体断片のより詳細な説明については、Fundamental Immunology,W.E.Paul,ed.,Raven Press,N.Y.(1993)を参照されたい)。様々な抗体断片がインタクト抗体の消化に関して定義されるが、当業者は、断片が化学的にまたは組換えDNA方法論を利用することによるいずれかにより新規に合成することができることを理解するであろう。したがって、抗体という用語は、本明細書で使用される場合、全抗体の修飾によって産生されるか、または組換えDNA方法論を使用して合成されるかのいずれかの抗体断片も含む。
【0052】
抗体には、一本鎖抗体(単一のポリペプチド鎖として存在する抗体)、例えば、可変重鎖および可変軽鎖領域が(直接またはペプチドリンカーを介して)一緒に結合されて、連続ポリペプチドを形成する一本鎖Fv抗体(sFvまたはscFv)を含む、V-V二量体、V二量体、またはV二量体などの二量体が含まれる。一本鎖Fv抗体は、直接結合されるか、またはペプチドコードリンカーにより結合されるかのいずれかのV-およびVコード配列を含む核酸から発現され得る、共有結合されたV-Vヘテロ二量体である(例えば、Huston,et al.Proc.Nat.Acad.Sci.USA,85:5879-5883,1988)。VおよびVは、単一のポリペプチド鎖としてそれぞれに接続されているが、VおよびVドメインは、非共有結合的に会合する。あるいは、抗体は、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)などの別の断片であり得る。組換え技法の使用を含む、他の断片も生成することができる。scFv抗体、ならびに自然に凝集したが、抗体V領域から化学的に分離された軽および重ポリペプチド鎖を、抗原結合部位の構造と実質的に同様の三次元構造に折り畳まれた分子に変換するいくつかの他の構造が当業者に既知である(例えば、米国特許第5,091,513号、同第5,132,405号、および同第4,956,778号を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体は、ファージ上に提示された、または鎖が可溶性タンパク質として分泌されるベクターを使用する組換え技術によって生成されたもの、例えば、scFv、Fv、Fab、(Fab’)2、または鎖が可溶性タンパク質として分泌されるベクターを使用する組換え技術によって生成されたものを含む。本発明で使用するための抗体はまた、二抗体およびミニ抗体も含み得る。
【0053】
本発明の抗体はまた、ラクダ科動物からの抗体などの重鎖二量体も含む。ラクダ科動物の重鎖二量体IgGのV領域は、軽鎖と疎水性相互作用をする必要がないため、通常は軽鎖と接触する重鎖の領域が、ラクダ科動物の親水性アミノ酸残基に変更される。重鎖二量体IgGのVドメインは、VHHドメインと呼ばれる。本発明で使用するための抗体は、単一ドメイン抗体(dAb)およびナノボディを含む(例えば、Cortez-Retamozo,et al.,Cancer Res.64:2853-2857,2004を参照されたい)。
【0054】
本明細書で使用する場合、「V領域」は、フレームワーク1、CDR1、フレームワーク2、CDR2、およびフレームワーク3(CDR3およびフレームワーク4を含む)のセグメントを含む抗体可変領域ドメインを指し、このセグメントは、B細胞分化中の重鎖および軽鎖V領域遺伝子の再配置の結果としてVセグメントに追加される。本明細書で使用される場合、「Vセグメント」は、V遺伝子によってコードされるV領域(重鎖または軽鎖)の領域を指す。重鎖可変領域のVセグメントは、FR1-CDR1-FR2-CDR2およびFR3をコードする。本発明の目的のために、軽鎖可変領域のVセグメントは、FR3を通ってCDR3まで伸長すると定義される。
【0055】
本明細書で使用される場合、「Jセグメント」という用語は、CDR3およびFR4のC末端部分を含む、コードされた可変領域の部分配列を指す。内因性Jセグメントは、免疫グロブリンJ遺伝子によってコードされる。
【0056】
本明細書で使用する場合、「相補性決定領域(CDR)」は、軽鎖および重鎖可変領域によって確立された4つの「フレームワーク」領域を中断する各鎖の3つの超可変領域を指す。CDRは、主に抗原のエピトープへの結合に関与する。各鎖のCDRは、典型的には、CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれ、N末端から順に番号が付けられ、典型的には、特定のCDRが位置する鎖によって同定される。したがって、例えば、V CDR3は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメインに位置しているのに対して、V CDR1は、それが見出される抗体の軽鎖の可変ドメインからのCDR1である。
【0057】
異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域、つまり構成要素である軽鎖および重鎖の組み合わされたフレームワーク領域は、CDRを三次元空間に配置しアライメントするように機能する。
【0058】
CDRおよびフレームワーク領域のアミノ酸配列は、当該技術分野で周知の様々な定義、例えば、Kabat、Chothia、international ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)、およびAbM(例えば、Johnson et al.,上記、Chothia & Lesk,1987,Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins.J.Mol.Biol.196,901-917、Chothia C.et al.,1989,Conformations of immunoglobulin hypervariable regions.Nature 342,877-883、Chothia C.et al.,1992,structural repertoire of the human VH segmentsJ.Mol.Biol.227,799-817、Al-Lazikani et al.,J.Mol.Biol 1997,273(4)を参照されたい)を使用して決定することができる。抗原結合部位の定義は、以下にも記載されている:Ruiz et al.,IMGT,the international ImMunoGeneTicsデータベース。Nucleic Acids Res.,28,219-221(2000)、およびLefranc,M.-P.IMGT,the international ImMunoGeneTicsデータベース。Nucleic Acids Res.Jan 1;29(1):207-9(2001)、MacCallum et al,Antibody-antigen interactions:Contact analysis and binding site topography,J.Mol.Biol.,262(5),732-745(1996)、およびMartin et al,Proc.Natl Acad.Sci.USA,86,9268-9272(1989)、Martin,et al,Methods Enzymol.,203,121-153,(1991)、Pedersen et al,Immunomethods,1,126,(1992)、およびRees et al,In Sternberg M.J.E.(ed.),Protein Structure Prediction.Oxford University Press,Oxford,141-172 1996)。
【0059】
「エピトープ」または「抗原決定基」は、抗体が結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、隣接アミノ酸またはタンパク質の三次折り畳みによって並置された非隣接アミノ酸の両方から形成され得る。隣接アミノ酸から形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒への曝露時に保持されるのに対して、三次折り畳みによって形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒による処理で失われる。エピトープは、典型的には、独特の空間的コンフォメーションにおいて少なくとも3個、より通常には少なくとも5個、または8~10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的コンフォメーションを決定する方法には、例えば、X線結晶学および2次元核磁気共鳴が含まれる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66,Glenn E.Morris,Ed(1996)を参照されたい。
【0060】
本発明の文脈で使用される場合、「結合特異性決定基」または「BSD」という用語は、抗体の結合特異性を決定するために必要なCDR領域内の最小の隣接または非隣接アミノ酸配列を指す。本発明において、最小結合特異性決定基は、抗体の重鎖および軽鎖のCDR3配列の一部または完全長内に存在する。
【0061】
本明細書で使用される場合、「抗GM-CSF抗体」または「GM-CSF抗体」は、GM-CSFに結合し、GM-CSF受容体活性を阻害する抗体を指すように交換可能に使用される。そのような抗体は、GM-CSFの結合および/または機能を評価する、当該技術分野で認識されている任意の数のアッセイを使用して同定することができる。例えば、アルファ受容体サブユニットへのGM-CSF結合の阻害を測定するELISAアッセイなどの結合アッセイを使用することができる。GM-CSF曝露に応答するサイトカインの産生量、例えば、IL-8の産生量を測定するアッセイと同様に、GM-CSF受容体シグナル伝達の細胞ベースのアッセイ(制限量のGM-CSFに応答するGM-CSF依存性細胞株の増殖速度を決定するアッセイなど)も便利に用いられる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「中和抗体」は、GM-CSFに結合し、GM-CSF受容体によるシグナル伝達を阻害する、またはGM-CSFのその受容体への結合を妨げる抗体を指す。
【0063】
本明細書で使用される場合、「ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子」(hGM-CSF)は、およそ23kDaの分子量を有する内部ジスルフィド結合を有する小さな天然に存在する糖タンパク質を指し、GM-CSFの源および標的はヒトであり、そのため、本明細書の実施形態に記載されるように、抗hGM-CSF抗体は、ヒトおよび霊長類のGM-CSFにのみ結合し、マウス、ラット、および他の哺乳類のGM-CSFには結合しない。本明細書の実施形態に記載されるように、hGM-CSF抗体は、ヒトGM-CSFを中和する。いくつかの実施形態では、ヒトのhGM-CSFは、ヒト第5染色体のサイトカインクラスター内に位置する遺伝子によってコードされる。ヒトの遺伝子およびタンパク質の配列は既知である。タンパク質は、N末端シグナル配列およびC末端受容体結合ドメインを有する(Rasko and Gough In:The Cytokine Handbook,A.Thomson,et al,Academic Press,New York(1994)pages 349-369)。その三次元構造はインターロイキンと類似するが、アミノ酸配列は類似しない。GM-CSFは、造血環境および炎症の末梢部位に存在するいくつかの炎症性メディエーターに応答して産生される。GM-CSFは、骨髄細胞からの好中球性顆粒球、マクロファージ、および混合顆粒球-マクロファージコロニーの産生を刺激することが可能であり、胎児肝前駆細胞からの好酸球コロニーの形成を刺激することができる。GM-CSFは、成熟顆粒球およびマクロファージのいくつかの機能的活性を刺激し、顆粒球およびマクロファージのアポトーシスを阻害することもできる。
【0064】
(K)と略される「平衡解離定数」または「親和性」という用語は、解離速度定数(k、時間-1)を会合速度定数(k、時間-1-1)で割ったものを指す。平衡解離定数は、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して測定することができる。本発明の抗体は、高親和性抗体である。そのような抗体は、37℃で実施された表面プラズモン共鳴分析によって決定されるように、約10nMよりも良い(未満)、そして多くの場合約500pMよりも良い、または約50pMよりも良い一価の親和性を有する。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、50pM未満、典型的には約25pM未満、またはさらには10pM未満の親和性(表面プラズモン共鳴を使用して測定される)を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明の抗GM-CSF抗体は、GM-CSFとの一価の相互作用に関して、37℃で表面プラズモン共鳴分析によって決定されたおよそ10-4-1、好ましくは5x10-5-1未満、最も好ましくは10-5-1未満の解離速度定数(kd)で、遅い解離速度を有した。
【0066】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が異なるまたは改変されたクラス、エフェクター機能、および/もしくは種の定常領域、またはキメラ抗体に新しい特性を付与する完全に異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物などに連結されるように、定常領域またはその一部が改変される、置き換えられる、もしくは交換される、あるいは(b)可変領域またはその一部が、異なるもしくは改変された抗原特異性を有する可変領域もしくはその一部、または別の種もしくは別の抗体クラスもしくはサブクラスからの対応する配列で改変される、それに置き換えられる、またはそれと交換される、免疫グロブリン分子を指す。
【0067】
本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」は、ドナー抗体からのCDR中の免疫グロブリン分子がヒトフレームワーク配列にグラフトされることを指す。ヒト化抗体はまた、フレームワーク配列中にドナー起源の残基も含み得る。ヒト化抗体はまた、ヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部も含み得る。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体または移入されたCDRまたはフレームワーク配列のいずれにも見られない残基も含み得る。ヒト化は、当該技術分野で既知の方法を使用して実施することができ(例えば、Jones et al.,Nature 321:522-525;1986、Riechmann et al.,Nature 332:323-327,1988、Verhoeyen et al.,Science 239:1534-1536,1988)、Presta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596,1992、米国特許第4,816,567号)、「超ヒト化(superhumanizing)」抗体(Tan et al.,J.Immunol.169:1119,2002)および「再表面化(resurfacing)」(例えば、Staelens et al.,Mol.Immunol.43:1243,2006、およびRoguska et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA 91:969,1994)などの技法を含む。
【0068】
本発明の文脈において、「ΗUMANEERED(商標)」抗体は、参照抗体の結合特異性を有する操作されたヒト抗体を指す。本発明で使用するための操作されたヒト抗体は、ドナー免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含む免疫グロブリン分子を有する。いくつかの実施形態では、操作されたヒト抗体は、参照抗体のCDR3領域からの最小限の必須結合特異性決定基のみを保持し得る。典型的には、操作されたヒト抗体は、参照抗体の重鎖のCDR3領域からの結合特異性決定基(BSD)をコードするDNA配列をヒトVセグメント配列に、そして参照抗体からの軽鎖CDR3 BSDをヒトVセグメント配列に結合することにより操作される。「BSD」は、結合特異性を媒介するCDR3-FR4領域またはこの領域の一部である。したがって、結合特異性決定基は、CDR3-FR4、CDR3、CDR3の最小限の必須結合特異性決定基(抗体のV領域に存在する場合に結合特異性を付与するCDR3よりも小さい任意の領域を指す)、Dセグメント(重鎖領域に関して)、または参照抗体の結合特異性を付与するCDR3-FR4の他の領域であり得る。ヒト抗体を操作する方法は、米国特許出願公開第2005/0255552号および米国特許出願公開第2006/0134098号に提供されている。
【0069】
本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、実質的にヒトである、すなわち、ヒト免疫系からのFR領域、および多くの場合CDR領域を有する抗体を指す。したがって、この用語は、ヒト化およびヒューマニア化(humaneered)抗体、ならびにヒト免疫系で再構成されたマウスから単離された抗体および提示ライブラリーから単離された抗体を含む。
【0070】
核酸の一部に関して使用される場合、「異種」という用語は、核酸が、通常、自然界において互いに同じ関係で見出されない2つ以上の部分配列を含むことを示す。例えば、典型的には、例えば、新しい機能的核酸を作製するために配置された無関係の遺伝子からの2つ以上の配列を有する核酸は、組換えにより産生される。同様に、異種タンパク質は、自然界では互いに同じ関係で見出されない2つ以上の部分配列を指すことが多い。
【0071】
「組換え」という用語は、例えば、細胞、もしくは核酸、タンパク質、またはベクターに関して使用される場合、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターが、異種の核酸もしくはタンパク質の導入または天然の核酸もしくはタンパク質の改変によって修飾されているか、または細胞がそのように修飾された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、細胞の天然(非組換え)形態内に見出されない遺伝子を発現するか、そうでなければ異常に発現される、過少発現される、または全く発現されない天然遺伝子を発現する。本明細書における「組換え核酸」という用語は、一般に、例えば、自然界では通常見られない形態のポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを使用した核酸の操作により、もともとインビトロで形成された核酸を意味する。このようにして、異なる配列の作動可能な連結が達成される。したがって、線状形態の単離された核酸、または通常は結合されないDNA分子をライゲートすることによりインビトロで形成される発現ベクターは、本発明の目的のために両方とも組換え体と見なされる。組換え核酸が作製され、宿主細胞または生物に再導入されると、非組換えにより、すなわち、インビトロ操作ではなく、宿主細胞のインビボ細胞機構を使用して複製されることが理解される。しかしながら、そのような核酸は、組換えにより生成されると、続いて非組換えにより複製されるが、本発明の目的のために依然として組換え体と見なされる。同様に、「組換えタンパク質」は、組換え技法を使用して、すなわち組換え核酸の発現を通じて作製されたタンパク質である。
【0072】
抗体に「特異的(または選択的)に結合する」または「~と特異的(または選択的)に免疫反応性」であるという語句は、抗体が目的の抗原に結合する結合反応を指す。本発明の文脈において、抗体は、典型的には、500nM以下の親和性で抗原、例えばGM-CSFに結合し、他の抗原に対して5000nM以上の親和性を有する。
【0073】
2つ以上のポリペプチド(または核酸)配列の文脈において、「同一」またはパーセント「同一性」という用語は、以下に記載するデフォルトのパラメータを用いたBLASTまたはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用して、または手動アライメントおよび視覚的検査(例えば、NCBIウェブサイトを参照されたい)により測定されるとき、同じであるか、または同じである特定の割合のアミノ酸残基(またはヌクレオチド)(すなわち、比較ウィンドウまたは指定された領域にわたる最大対応について比較およびアライメントされた場合、特定の領域にわたって約60%の同一性、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性)を有する2つ以上の配列または部分配列を指す。そのような配列は、「実質的に同一」であると言われる。「実質的に同一な」配列には、欠失および/または付加を有する配列、ならびに置換を有する配列、ならびに天然に存在する、例えば、多型または対立遺伝子変異型、および人工変異型も含まれる。以下に記載されるように、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどからなり得る。好ましくは、タンパク質配列同一性は、長さが少なくとも約25個のアミノ酸である領域にわたって、またはより好ましくは長さが50~100個のアミノ酸=である領域にわたって、またはタンパク質の長さにわたって存在する。
【0074】
本明細書で使用される場合、「比較ウィンドウ」は、2つの配列が最適にアライメントされた後に、配列が同じ数の隣接位置の参照配列と比較され得る、典型的には、20~600、通常は約50~約200、より通常には約100~約150からなる群から選択されるいくつかの隣接位置のうちの1つのセグメントへの言及を含む。比較のための配列のアライメント方法は、当該技術分野で周知である。比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)のローカルホモロジーアルゴリズム、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)のホモロジーアライメントアルゴリズム、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似検索法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化されたインプリメンテーション(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または手動アライメントおよび視覚的検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.1995補足)を参照されたい)により行うことができる。
【0075】
2つのポリペプチドが実質的に同一であることの指標は、第1のポリペプチドが第2のポリペプチドに対して産生された抗体と免疫学的に交差反応性であることである。したがって、ポリペプチドは、典型的には、例えば、2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合、第2のポリペプチドと実質的に同一である。
【0076】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの好ましい例には、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムが含まれ、これらは、Altschul et al.,Nuc.Acids Res.25:3389-3402(1977)およびAltschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)に記載されている。BLASTおよびBLAST2.0は、本明細書に記載されているパラメータを用いて、本発明の核酸およびタンパク質のパーセント配列同一性を決定するために使用される。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長3、および期待値(E)10、ならびにBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff & Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照されたい)アライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両方の鎖の比較を使用する。
【0077】
「単離された」、「精製された」、または「生物学的に純粋な」という用語は、その天然の状態で見られる、通常付随する構成成分を実質的または本質的に含まない材料を指す。純度および均一性は、典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技法を使用して決定される。調製物中に存在する主要な種であるタンパク質は、実質的に精製される。いくつかの実施形態では、「精製された」という用語は、タンパク質が電気泳動ゲルにおいて本質的に1つのバンドを生じさせることを示す。好ましくは、それは、タンパク質が少なくとも85%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、最も好ましくは少なくとも99%純粋であることを意味する。
【0078】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書では、アミノ酸残基のポリマーを指すように交換可能に使用される。本用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマー、修飾された残基を含むもの、および天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。
【0079】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するおよび合成のアミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされているもの、ならびに後に修飾されるそれらのアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を持つ化合物、例えば、水素、カルボキシル基、アミノ基、R基に結合しているα炭素、およびR基、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有し得るが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持している。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化学化合物を指す。
【0080】
本明細書では、アミノ酸は、それらの一般的に知られている3文字記号またはIUPAC-IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)が推奨する1文字記号のいずれかによって言及され得る。同様に、ヌクレオチドは、それらの一般的に受け入れられている1文字コードによって言及され得る。
【0081】
「保存的に修飾された変異型」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異型は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードするそれらの核酸、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一または関連する、例えば、自然に隣接する配列を指す。遺伝暗号の縮重のため、多くの機能的に同一の核酸が大半のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって特定されるすべての位置で、コドンは、コードされるポリペプチドを改変することなく、記載される対応する別のコドンに改変され得る。そのような核酸変異は「サイレント変異」であり、保存的に修飾された変異の一種である。ポリペプチドをコードする本明細書のすべての核酸配列は、核酸のサイレント変異も説明する。ある特定の文脈では、核酸の各コドン(通常メチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾して、機能的に同一の分子をもたらすことができることを、当業者は認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸のサイレント変異は、発現産物に関して記載された配列において暗黙的である場合が多いが、実際のプローブ配列に関してはそうではない。
【0082】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コード配列における単一のアミノ酸またはわずかな割合のアミノ酸を改変する、追加する、または欠失させる核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列への個々の置換、欠失、または追加が、改変によりアミノ酸が化学的に類似したアミノ酸で置換される「保存的に修飾された変異型」であることを認識するであろう。保存的置換表、および機能的に類似したアミノ酸を提供するBLOSUMなどの置換行列は当該技術分野で周知である。そのような保存的に修飾された変異型は、本発明の多型変異型、種間ホモログ、および対立遺伝子に加えられ、それらを除外しない。相互の典型的な保存的置換には、次のものが含まれる:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton,Proteins(1984)を参照されたい)。
【0083】
免疫療法関連毒性の予防または治療方法
いくつかの実施形態では、対象における免疫療法関連毒性を阻害する方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、本明細書は、対象における免疫療法関連毒性の発生を低減する方法である。いくつかの実施形態では、hGM-CSFを中和する方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、本方法は、組換えhGM-CSFアンタゴニストを対象に投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、hGM-CSF遺伝子サイレンシングを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、hGM-CSF遺伝子ノックアウトを含む。遺伝子サイレンシングおよび遺伝子ノックアウトの方法は、当業者に周知であり、RNA干渉(RNAi)、CRISPR、低分子干渉RNS(siRNA)、DNA指向RNA干渉(ddRNAi)、操作された転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)による標的ゲノム編集、または他の好適な技法を含むが、これらに限定されない。
【0084】
いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、免疫活性化を低減することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、毛細血管漏出症候群を寛解させることを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、心機能不全を寛解させることを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、脳症を寛解させることを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、大腸炎を軽減することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、痙攣を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、CRSを寛解させることを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、神経毒性を寛解させることを含む。様々な実施形態では、対象におけるCAR-T細胞関連神経毒性は、CAR-T細胞および対照抗体で治療された対象における神経毒性の低減と比較して、約90%低減される。ある特定の実施形態では、組換えGM-CSFアンタゴニストは、抗体、特に、実施例15を含む、本明細書に記載される実施形態によるGM-CSF中和抗体である。
【0085】
いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、サイトカインストーム症状を低減することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、低下した左室駆出率を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、下痢を寛解させることを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、播種性血管内凝固を寛解させることを含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、浮腫を低減することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、発疹を軽減することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、消化管出血を低減することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、胃腸穿孔を治療することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)を治療することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、肝臓症を治療することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、低血圧を低減することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、下垂体炎を低減することを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、免疫関連有害事象を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、免疫肝炎を低減することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、免疫不全を低減することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、虚血を治療することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、肝毒性を低減することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、マクロファージ活性化症候群(MAS)を治療することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、神経毒性症状を低減することを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、胸水を低減することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、心嚢液を低減することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、肺臓炎を低減することを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、多発性関節炎を低減することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、可逆性白質脳症(PRES)を治療することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、肺高血圧を低減することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、血栓塞栓症を治療することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、トランスアミナーゼ血症を低減することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、患者のCRES、神経毒性(NT)、および/またはサイトカイン放出症候群(CRS)グレードを低減することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、患者のCARTOX-10スコアを改善することを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、免疫療法は、活性化免疫療法である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、がん治療として提供される。いくつかの実施形態では、免疫療法は、養子細胞移入を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、養子細胞移入は、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)の投与を含む。当業者は、キメラ抗原受容体(CAR)が、細胞外腫瘍結合部分、最も一般的にはモノクローナル抗体からの単鎖可変断片(scFv)に融合した細胞内T細胞シグナル伝達ドメインで構成される一種の抗原標的受容体であることを理解するであろう。CARは、MHC媒介提示とは関係なく、細胞表面抗原を直接認識し、すべての患者の任意の所与の抗原に特異的な単一の受容体構築物の使用を可能にする。初期のCARは、抗原認識ドメインをT細胞受容体(TCR)複合体のCD3ζ活性化鎖に融合させた。これらの第1世代のCARは、インビトロでT細胞エフェクター機能を誘導したが、インビボでの抗腫瘍効果があまりないため、主に制限された。後続のCARの反復には、CD28または4-1BB(CD137)およびOX40(CD134)などの様々なTNF受容体ファミリー分子からの細胞内ドメインを含む、CD3ζと並行して二次共刺激シグナルが含まれた。さらに、第3世代の受容体には、CD3ζに加えて、最も一般的にはCD28および4-1BBからの2つの共刺激シグナルが含まれる。第2および第3世代のCARは、抗腫瘍効果を劇的に改善し、場合によっては進行がん患者の完全寛解を誘導する。一実施形態では、CAR T細胞は、CARがその抗原に結合すると活性化される、CARを発現するように修飾された免疫応答性細胞である。
【0092】
一実施形態では、CAR T細胞は、その受容体がその抗原に結合すると活性化される、抗原受容体を含む免疫応答性細胞である。一実施形態では、本明細書に開示される組成物および方法で使用されるCAR T細胞は、第1世代のCAR T細胞である。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物および方法で使用されるCAR T細胞は、第2世代のCAR T細胞である。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物および方法で使用されるCAR T細胞は、第3世代のCAR T細胞である。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物および方法で使用されるCAR T細胞は、第4世代のCAR T細胞である。
【0093】
いくつかの実施形態では、養子細胞移入は、T細胞受容体(TCR)修飾T細胞を投与することを含む。当業者は、TCR修飾T細胞が腫瘍組織からT細胞を単離し、それらのTCRαおよびTCRβ鎖を単離することにより製造されることを理解するであろう。これらのTCRαおよびTCRβは後にクローニングされ、末梢血から単離されたT細胞にトランスフェクトされ、これは、その後、腫瘍を認識するT細胞からTCRαおよびTCRβを発現する。
【0094】
いくつかの実施形態では、養子細胞移入は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を投与することを含む。いくつかの実施形態では、養子細胞移入は、キメラ抗原受容体(CAR)修飾NK細胞を投与することを含む。当業者は、CAR修飾NK細胞が、患者から単離されたNK細胞、または腫瘍特異的タンパク質を認識するCARを発現するように操作された市販のNKを含むことを理解するであろう。
【0095】
いくつかの実施形態では、養子細胞移入は、樹状細胞を投与することを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、免疫療法は、モノクローナル抗体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は、がん細胞上の特定のタンパク質に付着し、したがって、免疫系がそれらを発見および破壊するための細胞にフラグを付ける。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は、免疫チェックポイントを阻害することによって機能し、したがって、がん細胞による免疫系の阻害を妨げる。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は、チェックポイント阻害剤と相乗作用するようにCAR-Tの有用性を改善する。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗体は、5AC、5T4、アクチビン受容体様キナーゼ1、AGS-22M6、アルファ-フェトプロテイン、アンジオポエチン2、アンジオポエチン3、B7-H3、BAFF、BCMA、C242抗原、CA-125、炭酸脱水酵素9、CCR4、CD125、CD152、CD184、CD19、CD2、CD20、CD200、CD22、CD221、CD23、CD25、CD27、CD274、CD276、CD28、CD3、CD30、CD33、CD37、CD38、CD4、CD40、CD41、CD44 v6、CD49b、CD5、CD51、CD52、CD54、CD56、CD6、CD70、CD74、CD79B、CD80、CEA、CFD、CGRP、ch4D5、CLDN18.2、クランピング因子A、CSF1R、CSF2、CTGF、CTLA-4、DLL3、DLL4、DPP4、DR5、EGFL7、EGFR、エンドグリン、EpCAM、エフリン受容体A3、エピシアリン、ERBB3(HER3)、FAP、FGF23、フィブリンII、ベータ鎖、フィブロネクチンエクストラドメイン-B、葉酸加水分解酵素、葉酸受容体、Frizzled受容体、GCGR、GD2ガングリオシド、GD3ガングリオシド、GDF-8、グリピカン3、GM-CSF、GM-CSF受容体α鎖、GPNMB、GUCY2C、HER1、HER2/neu、HGF、HHGFR、ヒストン複合体、ヒト散乱因子受容体キナーゼ、ヒトTNF、ICOSL、IFN-α、IGF1、IGF2、IGHE、IL-17A、IL-13、IL1A、IL-2、IL-6、IL-6受容体、IL-8、IL-9、ILGF2、インテグリンα4、インテグリンα5β1、インテグリンα7β7、インテグリンαvβ3、IP10、KIR2D、KLRC1、ルイス-Y抗原、MAGE-A、MCP-1、メソセリン、MIF、MIG、MIP1β、MS4A1、MSLN、MUC1、ムチンCanAg、N-グリコリルノイラミン酸、NOGO-A、Notch 1、Notch受容体、NRP1、OX-40、PD-1、PDCD1、PDGF-Rα、リン酸ナトリウム共輸送体、ホスファチジルセリン、血小板由来成長因子受容体ベータ、前立腺癌細胞、RHD、RON、RTN4、SDC1、sIL2Rα、SLAMF7、SOST、スフィンゴシン-1-リン酸、Staphylococcus aureus、STEAP1、TAG-72、T細胞受容体、TEM1、テネイシンC、TFPI、TGFベータ1、TGFベータ2、TGF-β、TNFRスーパーファミリーメンバー4、TNF-α、TRAIL-R1、TRAIL-R2、TRP-1、TRP-2、TSLP、腫瘍抗原CTAA16.88、MUC1の腫瘍特異的グリコシル化、腫瘍関連カルシウムシグナルトランスデューサー2、TWEAK受容体、TYRP1(糖タンパク質75)、VEGFA、VEGFR-1、VEGFR2、ビメンチン、およびVWFを含む群から選択されるタンパク質を標的とする。
【0098】
いくつかの実施形態では、抗体は二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、リツキシマブ、TGN1412、アレムツズマブ、OKT3、またはそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。
【0099】
いくつかの実施形態では、免疫療法は、サイトカインを投与することを含む。当業者は、免疫細胞毒性細胞によるその認識および殺傷を増加させることによって腫瘍を攻撃するように免疫系を増強させるために、サイトカインが投与され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IFNα、IFNβ、IFNγ、IFNλ、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-15、IL-21、IL-11、IL-12、IL-18、GM-CSF、TNFα、またはそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。
【0100】
いくつかの実施形態では、免疫療法は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含む。当業者は、免疫チェックポイントが、T細胞がそれを発現する細胞を攻撃するのを防ぐ膜タンパク質であることを理解するであろう。免疫チェックポイントは、がん細胞によって発現されることが多く、したがって、T細胞がそれらを攻撃するのを防ぐ。いくつかの実施形態では、チェックポイントタンパク質は、PD-1/PD-L1およびCTLA-4/B7-1/B7-2を含む。チェックポイントタンパク質の遮断は、T細胞ががん細胞を攻撃し、殺傷するのを阻害することを解除することが示された。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、またはPD-L1を遮断する分子を含む群から選択される。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、抗体またはその一部である。
【0101】
いくつかの実施形態では、免疫療法は、多糖類を投与することを含む。当業者は、キノコに見られるある特定の多糖類が免疫系およびその抗がん特性を増強することを理解するであろう。いくつかの実施形態では、多糖類は、ベータグルカンまたはレンチナンである。
【0102】
いくつかの実施形態では、免疫療法は、投与することまたはがんワクチンを含む。当業者は、がんワクチンが免疫系をがん特異的抗原およびアジュバントに曝露することを理解するであろう。いくつかの実施形態では、がんワクチンは、シプリューセル-T、GVAX、ADXS11-001、ADXS31-001、ADXS31-164、ALVAC-CEAワクチン、ACワクチン、タリモジーン・ラハーパレプベック、BiovaxID、Prostvac、CDX110、CDX1307、CDX1401、CimaVax-EGF、CV9104、DNDN、NeuVax、Ae-37、GRNVAC、タルモゲン、GI-4000、GI-6207、GI-6301、ImPACT療法、IMA901、ヘプコルテスペンリシムト(hepcortespenlisimut)-L、Stimuvax、DCVax-L、DCVax-Direct、DCVax Prostate、CBLI、Cvac、RGSH4K、SCIB1、NCT01758328、およびPVX-410を含む群から選択される。
【0103】
いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、体液中の少なくとも1つの炎症関連因子の濃度を減少させることを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、血清中の少なくとも1つの炎症関連因子の濃度を減少させることを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、脳脊髄液(CSF)中の少なくとも1つの炎症関連因子の濃度を減少させることを含む。いくつかの実施形態では、血清中の少なくとも1つの炎症関連因子の濃度を減少させるための方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、組織液中の少なくとも1つの炎症関連因子の濃度を減少させるための方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、CSF中の少なくとも1つの炎症関連因子の濃度を減少させるための方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、血清中の少なくとも1つの炎症関連因子の濃度が減少する。いくつかの実施形態では、組織液中の少なくとも1つの炎症関連因子の濃度が減少する。いくつかの実施形態では、CSF中の少なくとも1つの炎症関連因子の濃度が減少する。炎症関連因子の濃度の減少が、対象における該炎症関連因子の産生を減少もしくは阻害すること、または対象における免疫療法関連毒性の発生もしくは重症度を阻害もしくは低減することを含むことを当業者は理解するであろう。別の実施形態では、炎症関連因子の産生の減少または阻害は、免疫療法関連毒性を治療することを含む。別の実施形態では、炎症関連因子の産生の減少または阻害は、免疫療法関連毒性を予防することを含む。別の実施形態では、炎症関連因子レベルの産生の減少または阻害は、免疫療法関連毒性を軽減することを含む。別の実施形態では、炎症関連因子の産生の減少または阻害は、免疫療法関連毒性を寛解させることを含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、炎症関連因子はサイトカインである。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、血清中の少なくとも1つのサイトカインの濃度を減少させることを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性の発生または重症度の阻害または低減は、CSF中の少なくとも1つのサイトカインの濃度を減少させることを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、サイトカインは、hGM-CSFである。いくつかの実施形態では、サイトカインは、インターロイキン(IL)-1βである。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL-2である。いくつかの実施形態では、サイトカインは、sIL2Rαである。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL-5である。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL-6である。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL-8である。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL-10である。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IP10である。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL-13である。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL-15である。いくつかの実施形態では、サイトカインは、腫瘍壊死因子α(TNFα)である。いくつかの実施形態では、サイトカインは、インターフェロンγ(IFNγ)である。いくつかの実施形態では、サイトカインは、ガンマインターフェロン(MIG)によって誘導されるモノカインである。いくつかの実施形態では、サイトカインは、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)1βである。いくつかの実施形態では、サイトカインは、C反応性タンパク質である。いくつかの実施形態では、サイトカインレベルの産生の減少または阻害は、1つのサイトカインの産生を減少または阻害することを含む。いくつかの実施形態では、サイトカインレベルの産生の減少または阻害は、少なくとも1つのサイトカインの産生を減少または阻害することを含む。いくつかの実施形態では、サイトカインレベルの産生の減少または阻害は、いくつかのサイトカインの産生を減少または阻害することを含む。
【0106】
一実施形態では、本明細書に開示される方法は、免疫療法の有効性に影響を与えない。別の実施形態では、本明細書に開示される方法は、免疫療法の有効性を約5%未満低減する。別の実施形態では、本明細書に開示される方法は、免疫療法の有効性を約10%未満低減する。別の実施形態では、本明細書に開示される方法は、免疫療法の有効性を約15%未満低減する。別の実施形態では、本明細書に開示される方法は、免疫療法の有効性を約20%未満低減する。別の実施形態では、本明細書に開示される方法は、免疫療法の有効性を約50%未満低減する。
【0107】
一実施形態では、本明細書に記載される方法は、免疫療法の有効性を増加させる。一実施形態では、有効性を増加させることにより、免疫療法の臨床管理、患者の転帰、および治療指数の改善が可能になる。別の実施形態では、有効性の増加により、より高い免疫療法用量の投与が可能になる。別の実施形態では、有効性の増加により、入院ならびに追加の治療および監視が低減する。ある実施形態では、免疫療法は、CAR-Tを含む。
【0108】
細胞毒性を定量化する任意の適切な方法を使用して、免疫療法の有効性が実質的に変化しないままであるかどうかを決定することができる。例えば、細胞毒性は、実施例に記載される細胞毒性アッセイなどの細胞培養ベースのアッセイを使用して定量化することができる。細胞毒性アッセイでは、死細胞のDNAを優先的に染色する色素を用いることができる。他の場合では、細胞集団内の生細胞と死細胞の相対数を測定する蛍光および発光アッセイが使用され得る。そのようなアッセイでは、プロテアーゼ活性は、細胞生存性および細胞毒性のマーカーとして機能し、標識された細胞透過性ペプチドは、試料中の生存細胞の数に比例する蛍光シグナルを生成する。別の実施形態では、細胞毒性の測定は、定性的であり得る。別の実施形態では、細胞毒性の測定は、定量的であり得る。
【0109】
ある実施形態では、該有効性の増加は、CAR-T細胞拡大の増加、T細胞機能を阻害する骨髄由来抑制細胞(MDSC)の低減、チェックポイント阻害剤との相乗作用、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、該CAR-T細胞拡大の増加は、対照と比較して少なくとも50%の増加を含む。別の実施形態では、該CAR-T細胞拡大の増加は、対照と比較して少なくとも4分の1の対数拡大を含む。別の実施形態では、該細胞拡大の増加は、対照と比較して少なくとも半分の対数拡大を含む。別の実施形態では、該細胞拡大の増加は、対照と比較して少なくとも1の対数拡大を含む。別の実施形態では、該細胞拡大の増加は、対照と比較して1を超える対数拡大を含む。
【0110】
一実施形態では、免疫療法関連毒性は、免疫療法の施行後2日~4週間の間に現れる。一実施形態では、免疫療法関連毒性は、免疫療法の施行後0~2日間の間に現れる。いくつかの実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、予防として免疫療法と同時に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行0~2日後に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行2~3日後に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行7日後に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行10日後に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行14日後に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行2~14日後に対象に投与される。
【0111】
別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行2~3時間後に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行7時間後に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行10時間後に対象に投与される。別の実施形態では、GM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行14時間後に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行2~14時間後に対象に投与される。
【0112】
代替の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、予防として免疫療法の前に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行1日前に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行2~3日前に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行7日前に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行10日前に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行14日前に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行2~14日前に対象に投与される。
【0113】
別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行2~3時間前に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行7日前に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行10日前に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行14日前に対象に投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、免疫療法の施行2~14時間前に対象に投与される。
【0114】
別の実施形態では、免疫療法関連毒性が発生したら、hGM-CSFアンタゴニストを治療的に投与することができる。一実施形態では、免疫療法関連毒性の開始に至るまで、またはそれを証明する病態生理学的プロセスが検出されたら、hGM-CSFアンタゴニストを投与することができる。一実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、病態生理学的プロセスを終わらせ、その続発症を回避することができる。いくつかの実施形態では、病態生理学的プロセスは、血清中のサイトカイン濃度の増加、CSF中のサイトカイン濃度の増加、血清中のC反応性タンパク質(CRP)の増加、血清中のフェリチンの増加、血清中のIL-6の増加、内皮活性化、播種性血管内凝固(DIC)、ANG2血清濃度の増加、血清中のANG2:ANG1比の増加、CSF中のCAR T細胞の存在、フォン・ヴィルブランド因子(VWF)血清濃度の増加、血液脳関門(BBB)漏出、またはそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。
【0115】
別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、複数の時点で治療的に投与され得る。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストの投与は、少なくとも2つの時点においてである。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストの投与は、少なくとも3つの時点においてである。
【0116】
一実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、1回投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、2回投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、3回投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、4回投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、少なくとも4回投与される。別の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、5回以上投与される。
【0117】
当業者は、免疫療法関連毒性が異なる治療によって管理されることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、他の治療と共投与される。いくつかの実施形態では、他の治療は、サイトカイン指向療法、抗IL-6療法、コルチコステロイド、トシリズマブ、シルツキシマブ、低用量昇圧剤、変力剤、酸素補給、利尿、胸腔穿刺、抗てんかん薬、ベンゾジアゼピン、レベチラセタム、フェノバルビタール、過換気、高浸透圧療法、および特定の臓器毒性に対する標準療法を含む群から選択される。
【0118】
いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性は、脳疾患、損傷、または機能不全を含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性は、CAR T細胞関連神経毒性を含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性は、CAR T細胞関連脳症症候群(CRES)を含む。いくつかの実施形態では、脳疾患、損傷、または機能不全の発生を阻害または低減するための方法が本明細書で提供される。
【0119】
いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、頭痛を寛解させることを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、せん妄を軽減することを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、不安を低減することを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、振戦を低減することを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、発作活動を減少させることを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、混乱を減少させることを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、覚醒状態の変化を低減することを含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、幻覚を低減することを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、不全失語症を低減することを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、運動失調を低減することを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、失行症を低減することを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、顔面神経麻痺を寛解させることを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、運動脱力を低減することを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、発作を低減することを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、非痙攣性EEG発作を低減することを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生率または重症度の阻害または低減は、昏睡回復を改善することを含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、CRESの発生または重症度の阻害または低減は、内皮活性化を低減することを含む。当業者は、内皮活性化が、白血球との相互作用の増加を特徴とする内皮細胞の炎症性および凝血促進状態であることを理解するであろう。
【0122】
いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、血管漏出を低減することを含む。「血管漏出」という用語は、すべて同じ本質および意味を有する「血管漏出症候群」および「毛細血管漏出症候群」という用語と交換可能に使用され得る。当業者は、血管漏出は内皮細胞が分離し、血漿の漏出および炎症性細胞の体組織への経内皮移動を可能にし、組織および臓器の損傷をもたらすことと関連していることを理解するであろう。さらに、好中球は微小循環閉塞を引き起こし、組織灌流を減少させる可能性がある。いくつかの実施形態では、CRESの発生の低減は、血管内凝固を低減させることを含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、少なくとも1つの循環サイトカインの濃度を低減することを含む。いくつかの実施形態では、サイトカインは、hGM-CSF、IFNγ、IL-1、IL-15、IL-6、IL-8、IL-10、およびIL-2を含む群から選択される。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、ANG2の血清濃度を低減することを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、血清中のANG2:ANG1比を低減することを含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、CRESグレードを低減することを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、CARTOX-10スコアを改善することを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、頭蓋内圧の上昇を低減することを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、発作を低減することを含む。いくつかの実施形態では、CRESの発生の阻害または低減は、運動脱力を低減することを含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性は、CAR T細胞関連CRSを含む。いくつかの実施形態では、CRSおよび/または神経毒性(NT)の発生または重症度を阻害または低減するための方法が本明細書で提供される。
【0126】
いくつかの実施形態では、CRSまたはNTの発生の阻害または低減は、限定されないが、発熱(以下を伴うまたは伴わない:悪寒、倦怠感、疲労、食欲不振、筋肉痛、関節痛、吐き気、嘔吐、頭痛、皮疹、下痢、頻呼吸、低酸素血症、低酸素、ショック、心血管頻脈、脈圧拡大、低血圧、毛細血管漏出、早期心拍出量の増加、後期心拍出量の減少、Dダイマーの上昇、出血を伴うまたは伴わない低フィブリノゲン血症、高窒素血症、高トランスアミナーゼ血症、高ビリルビン血症、精神状態変化、混乱、せん妄、明らかな失語症、幻覚、振戦、測定障害、歩行変化、発作、臓器不全、もしくはそれらの任意の組み合わせ、またはCRSと関連すると当該技術分野で既知の任意の他の症状もしくは特徴を寛解させることを含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、CRSの発生の阻害または低減は、少なくとも1つの循環サイトカインの濃度を低減することを含む。いくつかの実施形態では、サイトカインは、GM-CSF、IFNγ、IL-1、IL-15、IL-6、IL-8、IL-10、およびIL-2を含む群から選択される。
【0128】
いくつかの実施形態では、CRSの発生の阻害または低減は、CRSグレードを低減することを含む。いくつかの実施形態では、NTの発生の阻害または低減は、NTグレードを低減することを含む。いくつかの実施形態では、CRSの発生の阻害または低減は、CARTOX-10スコアを改善することを含む。いくつかの実施形態では、NTの発生の阻害または低減は、CARTOX-10スコアを改善することを含む。いくつかの実施形態では、CRSの発生の阻害または低減は、頭蓋内圧の上昇を低減することを含む。いくつかの実施形態では、CRSの発生の阻害または低減は、発作を低減することを含む。いくつかの実施形態では、CRSの発生の阻害または低減は、運動脱力を低減することを含む。いくつかの実施形態では、NTまたはCRSの発生の阻害または低減は、発生を60%未満に阻害または低減することを含む。いくつかの実施形態では、NTまたはCRSの発生の阻害または低減は、発生を50%未満に阻害または低減することを含む。いくつかの実施形態では、NTまたはCRSの発生の阻害または低減は、発生を40%未満に阻害または低減することを含む。いくつかの実施形態では、NTまたはCRSの発生の阻害または低減は、発生を30%未満に阻害または低減することを含む。いくつかの実施形態では、NTまたはCRSの発生の阻害または低減は、発生を20%未満の患者に阻害または低減することを含む。いくつかの実施形態では、NTまたはCRSの発生の阻害または低減は、NTまたはCRSを排除することを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、対象は、グレード1のCRSおよび/またはNTを有する。いくつかの実施形態では、対象は、グレード2のCRSおよび/またはNTを有する。いくつかの実施形態では、対象は、グレード3のCRSおよび/またはNTを有する。いくつかの実施形態では、対象は、グレード4のCRSおよび/またはNTを有する。いくつかの実施形態では、対象は、上記の任意の組み合わせを有する。
【0130】
いくつかの実施形態では、NTまたはCRSの発生の阻害または低減は、CRSグレード、NTグレード、またはその両方を低減することを含む。いくつかの実施形態では、グレードは、95%の患者において≦3のNTおよび/またはCRSに低減される。
【0131】
いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、37℃を超える体温を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、38℃を超える体温を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、39℃を超える体温を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、40℃を超える体温を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、41℃を超える体温を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、42℃を超える体温を有する。
【0132】
いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、10pg/mLを超えるIL-6血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、12pg/mLを超えるIL-6血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、14pg/mLを超えるIL-6血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、16pg/mLを超えるIL-6血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、18pg/mLを超えるIL-6血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、20pg/mLを超えるIL-6血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、22pg/mLを超えるIL-6血清濃度を有する。
【0133】
いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、200pg/mlを超えるMCP-1血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、400pg/mlを超えるMCP-1血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、600pg/mlを超えるMCP-1血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、800pg/mlを超えるMCP-1血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、1000pg/mlを超えるMCP-1血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、1200pg/mlを超えるMCP-1血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、1400pg/mlを超えるMCP-1血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、1600pg/mlを超えるMCP-1血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、1800pg/mlを超えるMCP-1血清濃度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法施行後、2000pg/mlを超えるMCP-1血清濃度を有する。
【0134】
いくつかの実施形態では、対象は、グレード1のCRESを有する。いくつかの実施形態では、対象は、グレード2のCRESを有する。いくつかの実施形態では、対象は、グレード3のCRESを有する。いくつかの実施形態では、対象は、グレード4のCRESを有する。
【0135】
いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法の前に脳疾患、損傷、または機能不全を有する素因がある。いくつかの実施形態では、素因は、遺伝的である。いくつかの実施形態では、素因は、獲得される。いくつかの実施形態では、素因は、既存の医学的状態に関する。いくつかの実施形態では、素因は、免疫療法の前に診断される。いくつかの実施形態では、素因は診断されない。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法の前に免疫療法関連の脳疾患、損傷、または機能不全を獲得する素因を決定するために医学的評価を受ける。
【0136】
いくつかの実施形態では、医学的評価は、体液中のANG1濃度を決定することを含む。いくつかの実施形態では、医学的評価は、血清中のANG1濃度を決定することを含む。いくつかの実施形態では、医学的評価は、体液中のANG2濃度を決定することを含む。いくつかの実施形態では、医学的評価は、血清中のANG2濃度を決定することを含む。いくつかの実施形態では、医学的評価は、血清中のANG2:ANG1比を計算することを含む。いくつかの実施形態では、免疫療法前に血清ANG2:ANG1比が0.5を超える対象は、CRESにかかりやすい。いくつかの実施形態では、免疫療法前に血清ANG2:ANG1比が0.7を超える対象は、CRESにかかりやすい。いくつかの実施形態では、免疫療法前に血清ANG2:ANG1比が0.9を超える対象は、CRESにかかりやすい。いくつかの実施形態では、免疫療法前に血清ANG2:ANG1比が1を超える対象は、CRESにかかりやすい。いくつかの実施形態では、免疫療法前に血清ANG2:ANG1比が1.1を超える対象は、CRESにかかりやすい。いくつかの実施形態では、免疫療法前に血清ANG2:ANG1比が1.3を超える対象は、CRESにかかりやすい。いくつかの実施形態では、免疫療法前に血清ANG2:ANG1比が1.5を超える対象は、CRESにかかりやすい。
【0137】
いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性は、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)を含む。いくつかの実施形態では、免疫療法関連毒性は、マクロファージ活性化症候群(MAS)を含む。いくつかの実施形態では、HLHの発生を阻害または低減するための方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、MASの発生を阻害または低減するための方法が本明細書で提供される。
【0138】
いくつかの実施形態では、HLHの発生の阻害または低減は、対象の生存を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、HLHの発生の阻害 低減は、再発までの時間を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、MASの発生の阻害または低減は、対象の生存を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、MASの発生の阻害 低減は、再発までの時間を増加させることを含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、HLHまたはMASの発生の阻害または低減は、マクロファージの活性化および/または増殖を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、HLHまたはMASの発生の阻害または低減は、Tリンパ球の活性化および/または増殖を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、HLHまたはMASの発生の阻害または低減は、循環IFNγの濃度を低減することを含む。いくつかの実施形態では、HLHまたはMASの発生の阻害または低減は、GM-CSFの循環濃度を低減することを含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に発熱を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に脾腫を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に血球減少症を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に2つ以上の細胞株において血球減少症を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に高トリグリセリド血症を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に低フィブリノゲン血症を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に血球貪食を呈する。いくつかの実施形態では、血球貪食は、骨髄で観察される。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に低NK細胞活性を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後にNK活性の欠如を呈する。
【0141】
いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に100U/mlを超えるフェリチン血清濃度を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に300U/mlを超えるフェリチン血清濃度を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に500U/mlを超えるフェリチン血清濃度を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に700U/mlを超えるフェリチン血清濃度を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に900U/mlを超えるフェリチン血清濃度を呈する。
【0142】
いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に1200U/mlを超える可溶性CD25血清濃度を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に1500U/mlを超える可溶性CD25血清濃度を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に1800U/mlを超える可溶性CD25血清濃度を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に2000U/mlを超える可溶性CD25血清濃度を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に2200U/mlを超える可溶性CD25血清濃度を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に2400U/mlを超える可溶性CD25血清濃度を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に2700U/mlを超える可溶性CD25血清濃度を呈する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法後に3000U/mlを超える可溶性CD25血清濃度を呈する。
【0143】
いくつかの実施形態では、対象は、HLHを有する素因がある。いくつかの実施形態では、素因は、遺伝的である。いくつかの実施形態では、素因は、既存の医学的状態に関する。当業者は、散発性HLHがいくつかの遺伝的変異と関連していることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、対象は、PRF1、UNC13D、STX11、STXBP2、もしくはRAB27A、またはそれらの任意の組み合わせから選択される遺伝子に変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、パーフォリンの発現が低減しているか、または不在である。
【0144】
hGM-CSFアンタゴニスト
使用に好適なhGM-CSFアンタゴニストは、hGM-CSFの受容体への結合を低減させることにより、hGM-CSF受容体によるシグナル伝達の誘導を選択的に妨げる。そのようなアンタゴニストには、hGM-CSF受容体に結合する抗体、hGM-CSFに結合する抗体、E21RなどのGM-CSF類似体、およびhGM-CSFのその受容体への結合について競合するか、または通常、リガンドの受容体への結合から生じるシグナル伝達を阻害する他のタンパク質もしくは小分子が含まれ得る。
【0145】
多くの実施形態では、本発明で使用されるhGM-CSFアンタゴニストは、ポリペプチド、例えば、抗hGM-CSF抗体、抗hGM-CSF受容体抗体、可溶性hGM-CSF受容体、または受容体へのhGM-CSFとの結合について競合するが、不活性である修飾されたGM-CSFポリペプチドである。そのようなタンパク質は、組換え発現技術を使用して生産されることが多い。そのような方法は、当該技術分野で広く知られている。発現方法を含む一般的な分子生物学的方法は、例えば、Sambrook and Russell(2001)Molecular Cloning:A laboratory manual 3rd ed.Cold Spring Harbor Laboratory Press;Current Protocols in Molecular Biology(2006)John Wiley and Sons ISBN:0-471-50338-Xなどの取扱説明書に見出すことができる。
【0146】
様々な原核性および/または真核性ベースのタンパク質発現系を用いて、hGM-CSFアンタゴニストタンパク質を産生することができる。そのような系の多くは、商業的供給業者から広く入手可能である。
【0147】
hGM-CSF抗体
本発明のhGM-CSF抗体は、hGM-CSFに高い親和性で結合する抗体であり、hGM-CSFのアンタゴニストである。抗体は、ヒト生殖系列のVおよびV配列に対して高度の同一性を有する可変領域を含む。好ましい実施形態では、本発明の抗体のCDRH3におけるBSD配列は、アミノ酸配列RQRFPYまたはRDRFPYを含む。CDRL3のBSDは、FNKまたはFNRを含む。
【0148】
BSDがCDR3の一部を形成する完全なV領域を生成し、追加の配列を使用して、CDR3を完成させ、FR4配列を追加する。典型的には、BSDを除くCDR3の部分および完全なFR4は、ヒト生殖系列配列で構成されている。いくつかの実施形態では、BSDを除くCDR3-FR4配列は、各鎖上の2個以下のアミノ酸だけヒト生殖系列配列と異なる。いくつかの実施形態では、Jセグメントは、ヒト生殖系列Jセグメントを含む。ヒトの生殖系列配列は、例えば、公的に利用可能なinternational ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)およびV-base(vbase.mrc-cpe.cam.ac.ukのワールドワイドウェブ上)により決定することができる。
【0149】
ヒト生殖系列Vセグメントレパートリーは、51の重鎖V領域、40Kの軽鎖Vセグメント、および31のλ軽鎖Vセグメントの、合計3,621の生殖系列V領域対からなり、加えて、これらのVセグメントの大半の安定した対立遺伝子変異型が存在するが、これらの変異型の生殖系列レパートリーの構造的多様性に対する寄与は限られている。すべてのヒト生殖系列Vセグメント遺伝子の配列は既知であり、MRC Centre for Protein Engineering,Cambridge,United Kingdomによって提供されるV-baseデータベースにおいてアクセスすることができる(Chothia et al.,1992,J Mol Biol 227:776-798、Tomlinson et al.,1995,EMBO J 14:4628-4638、およびWilliams et al.,1996,J Mol Biol 264:220-232も参照されたい)。
【0150】
本明細書に記載される抗体または抗体断片は、原核性または真核性の微生物系、または哺乳類細胞などの高等真核生物の細胞において発現させることができる。
【0151】
本発明で用いられる抗体は、任意の形式であってよい。例えば、いくつかの実施形態では、抗体は、定常領域、例えば、ヒト定常領域を含む完全な抗体であり得るか、または完全な抗体の断片もしくは誘導体、例えば、Fd、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、Fv、Fv断片、またはナノボディもしくはラクダ科動物抗体などの単一ドメイン抗体であり得る。そのような抗体は加えて、当業者に周知の方法によって組換え操作され得る。上に述べたように、そのような抗体は、既知の技法を使用して産生することができる。
【0152】
いくつかの実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、hGM-CSFに結合する抗体、またはhGM-CSF受容体αもしくはβサブユニットに結合する抗体である。抗体は、hGM-CSF(またはhGM-CSF受容体)タンパク質、または断片に対して産生され得るか、または組換えにより産生され得る。本発明で使用するためのGM-CSFに対する抗体は、中和され得るか、または循環中のhGM-CSFレベルが低減されるようにGM-CSFに結合し、hGM-CSFのインビボクリアランスの速度を増加させる非中和抗体であり得る。多くの場合、hGM-CSF抗体は中和抗体である。
【0153】
ポリクローナル抗体を調製する方法は当業者に既知である(例えば、Harlow & Lane,Antibodies,A Laboratory Manual(1988);Methods in Immunology)。ポリクローナル抗体は、免疫剤、および必要に応じてアジュバントを1回以上注射することによって哺乳動物において産生することができる。免疫剤は、GM-CSFもしくはGM-CSF受容体タンパク質、例えば、ヒトGM-CSFもしくはGM-CSF受容体タンパク質、またはそれらの断片を含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、本発明で使用するためのGM-CSF抗体は、ヒト血漿から精製される。そのような実施形態では、GM-CSF抗体は、典型的には、ヒト血漿中に存在する他の抗体から単離されるポリクローナル抗体である。そのような単離手順は、例えば、親和性クロマトグラフィーなどの既知の技法を使用して実施することができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、GM-CSFアンタゴニストは、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、Kohler & Milstein,Nature 256:495(1975)により記載されているものなどのハイブリドーマ法を使用して調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物が、典型的には、ヒトGM-CSFなどの免疫剤で免疫化されて、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生する、または産生することができるリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫化されてもよい。免疫剤は、好ましくは、ヒトGM-CSFタンパク質、その断片、またはその融合タンパク質を含む。
【0156】
ヒトモノクローナル抗体は、ファージ提示ライブラリーを含む、当該技術分野で既知の様々な技法を使用して産生され得る(Hoogenboom & Winter,J.MoI.Biol.227:381(1991)、Marks et al,J.MoI.Biol.222:581(1991))。ColeらおよびBoernerらの技法は、ヒトモノクローナル抗体の調製にも利用可能である(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,p.77(1985)およびBoerner et al.,J.Immunol.147(l):86-95(1991))。同様に、ヒト抗体は、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されているトランスジェニック動物、例えばマウスにヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによって作製することができる。投与すると、ヒトの抗体の産生が観察され、これは、遺伝子再構成、アセンブリ、および抗体レパートリーを含む、あらゆる点でヒトに見られるものによく似ている。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、および以下の科学出版物:Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992)、Lonberg et al,Nature 368:856-859(1994)、Morrison,Nature 368:812-13(1994)、Fishwild et al,Nature Biotechnology14:845-51(1996)、Neuberger,Nature Biotechnology14:826(1996)、Lonberg & Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)に記載されている。
【0157】
いくつかの実施形態では、抗GM-CSF抗体は、キメラまたはヒト化モノクローナル抗体である。上記に述べられるように、抗体のヒト化形態は、ヒト抗体の相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種のCDRからの残基に置き換えられるキメラ免疫グロブリンである。
【0158】
本発明のいくつかの実施形態では、抗体は、例えば、抗体が反復投与に好適であるように、免疫原性を低減させるようにさらに操作される。免疫原性が低減した抗体を生成するための方法には、例えば、1つ以上のフレームワーク領域において抗体をさらに操作して、T細胞エピトープを除去する、ヒト化/ヒューマニア化手順および脱免疫化などの修飾技法が含まれる。
【0159】
いくつかの実施形態では、抗体はヒューマニア化抗体である。ヒューマニア化抗体は、参照抗体の重鎖のCDR3領域からの結合特異性決定基(BSD)をコードするDNA配列をヒトVHセグメント配列に、および参照抗体からの軽鎖CDR3 BSDをヒトVLセグメント配列に結合することにより得られる、参照抗体の結合特異性を有する操作されたヒト抗体である。ヒューマニア化の方法は、米国特許出願公開第2005/0255552号および米国特許出願公開第2006/0134098号に提供されている。E.coliからの抗体断片のシグナルレス(signal-less)分泌のための方法は、米国特許出願第2007/0020685に記載されている。
【0160】
抗体をさらに脱免疫化して、抗体のV領域から1つ以上の予測されるT細胞エピトープを除去することができる。そのような手順は、例えば、WO00/34317に記載されている。
【0161】
重鎖定常領域は、多くの場合、ガンマ鎖定常領域、例えば、ガンマ-1、ガンマ-2、ガンマ-3、またはガンマ-4の定常領域である。いくつかの実施形態では、例えば、抗体が断片である場合、抗体は、例えば、ポリエチレングリコール(ペグ化)または血清アルブミンなどのインビボでの延長された半減期を提供するために、別の分子にコンジュゲートされ得る。抗体断片のPEG化の例は、Knight et al(2004)Platelets 15:409(アブシキシマブに関して)、Pedley et al(1994)Br.J.Cancer 70:1126(抗CEA抗体に関して)Chapman et al(1999)Nature Biotech.17:780に提供されている。
【0162】
本発明で使用するための抗体は、hGM-CSFまたはhGM-CSF受容体に結合する。抗体結合特異性を決定するために、任意の数の技法を使用することができる。抗体の特異的免疫反応性を決定するために使用され得るイムノアッセイの形式および条件の説明については、例えば、Harlow & Lane,Antibodies,A Laboratory Manual(1988)を参照されたい。
【0163】
本発明で使用するのに好適な例示的な抗体は、cl9/2(ヒトマウスキメラ抗hGM-CSF抗体)である。いくつかの実施形態では、cl9/2と同じエピトープへの結合について競合するか、またはcl19/2と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体が使用される。特定の抗体が別の抗体と同じエピトープを認識する能力は、典型的には、第1の抗体が第2の抗体の抗原への結合を競合的に阻害する能力によって決定される。同じ抗原に対する2つの抗体間の競合を測定するために、いくつかの競合結合アッセイのいずれかを使用することができる。例えば、サンドイッチELISAアッセイをこの目的に使用することができる。これは、捕捉抗体(capture antibody)を使用して、ウェルの表面をコーティングすることによって行われる。次に、タグ付けされた抗原の飽和未満(subsaturating)の濃度が捕捉表面に添加される。このタンパク質は、特定の抗体:エピトープ相互作用により抗体に結合する。検出可能な部分(例えば、標識抗体が検出抗体として定義されるHRP)に共有結合されている二次抗体を洗浄した後、ELISAに添加される。この抗体が捕捉抗体と同じエピトープを認識する場合、その特定のエピトープはもはや結合に利用できないため、標的タンパク質に結合することができない。しかしながら、この二次抗体が標的タンパク質上の異なるエピトープを認識する場合、結合することができ、この結合は、関連する基質を使用して活性(したがって抗体結合)のレベルを定量化することによって検出することができる。バックグラウンドは、単一の抗体を捕捉および検出抗体の両方として使用することによって定義されるが、最大シグナルは、抗原特異的抗体で捕捉し、抗原上のタグに対する抗体で検出することによって確立することができる。参照としてバックグラウンドおよび最大シグナルを使用することにより、抗体をペアワイズ様式で評価して、エピトープ特異性を決定することができる。
【0164】
一次抗体は、二次抗体の抗原への結合が、上述のアッセイのいずれかを使用して、一次抗体の存在下で少なくとも30%、通常は少なくとも約40%、50%、60%、または75%、多くの場合、少なくとも約90%低減される場合、二次抗体の結合を競合的に阻害するとみなされる。
【0165】
本発明のいくつかの実施形態では、既知の抗体、例えば、cl19/2と同じエピトープへの結合と競合する、またはそれに結合する抗体が用いられる。エピトープをマッピングする方法は、当該技術分野で周知である。例えば、ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(hGM-CSF)の機能的に活性な領域の局在化のための1つのアプローチは、抗hGM-CSFモノクローナル抗体を中和することにより認識されるエピトープをマッピングすることである。例えば、cl9/2(中和抗体LMM102と同じ可変領域を有する)が結合するエピトープは、細菌合成hGM-CSFの酵素消化によって得られたタンパク質分解断片を使用して定義されている(Dempsey,et al,Hybridoma 9:545-558,1990)。トリプシン消化物のRP-HPLC分画により、66個のアミノ酸(タンパク質の52%)を含む免疫反応性「トリプシンコア」ペプチドが同定された。この「トリプシンコア」をS.aureus V8プロテアーゼでさらに消化することにより、残基88と121の間のジスルフィド結合によって連結された2つのペプチド、残基86~93および112~127を含む独特の免疫反応性hGM-CSF産物が産生された。個々のペプチドは抗体によって認識されなかった。
【0166】
いくつかの実施形態では、本発明での使用に好適な抗体は、ヒトGM-CSFまたはhGM-CSF受容体に対して高い親和性結合を有する。抗体の解離定数(KD)が<約10nM、典型的には<1nM、好ましくは<100pMの場合、抗体と抗原の間に高い親和性結合が存在する。いくつかの実施形態では、抗体は、毎秒約10-4以上の解離速度を有する。
【0167】
当業者に周知であるように、表面プラズモン共鳴アッセイ、飽和アッセイ、またはELISAもしくはRIAなどのイムノアッセイなどの様々な方法を使用して、その標的抗原に対する抗体の結合親和性を決定することができる。結合親和性を決定するための例示的な方法は、Krinner et al,(2007)MoI.Immunol.Feb;44(5):916-25.(Epub 2006 May H))により記載されているように、CM5センサーチップを使用したBIAcore(商標)2000機器(Biacore AB,Freiburg,Germany)での表面プラズモン共鳴分析によるものである。
【0168】
いくつかの実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、hGM-CSFのその受容体もしくは受容体サブユニットへの結合を妨げる様式で結合する、hGM-CSF、その受容体、またはその受容体サブユニットに対する中和抗体である。いくつかの実施形態では、本発明で使用するための抗hGM-CSF抗体は、hGM-CSF受容体のアルファサブユニットへの結合を阻害する。そのような抗体は、例えば、hGM-CSFが受容体に結合する領域でhGM-CSFに結合し、それにより結合を阻害することができる。別の実施形態では、抗hGM-CSF抗体は、hGM-CSF受容体のアルファサブユニットへのその結合を遮断することなく、hGM-CSF機能を阻害する。
【0169】
II.重鎖
本発明の抗hGM-CSF抗体の重鎖は、以下の要素を含む重鎖V領域を含む:
1)FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3を含むヒト重鎖Vセグメント配列
2)アミノ酸配列R(Q/D)RFPYを含むCDRH3領域
3)ヒト生殖系列J遺伝子セグメントにより提供されるFR4。
【0170】
相補的V領域とともに、上述のCDR3-FR4セグメントと組み合わせてhGM-CSFへの結合を支持するVセグメント配列の例を図1に示す。Vセグメントは、例えば、ヒトVH1サブクラスからのものであり得る。いくつかの実施形態では、Vセグメントは、生殖系列セグメントVH1 1-02またはVH1 1-03に対して高度のアミノ酸配列同一性、例えば、少なくとも80%、85%、または90%以上の同一性を有するヒトV1サブクラスセグメントである。いくつかの実施形態では、Vセグメントは、VH1 1-02またはVH1 1-03と15以下の残基、好ましくは7つ以下の残基だけ異なる。
【0171】
本発明の抗体のFR4配列は、ヒトJH1、JH3、JH4、JH5、もしくはJH6遺伝子生殖系列セグメント、またはヒト生殖系列JHセグメントと高度のアミノ酸配列同一性を有する配列によって提供される。いくつかの実施形態では、Jセグメントは、ヒト生殖系列JH4配列である。
【0172】
CDRH3は、ヒトJセグメントに由来する配列も含む。典型的には、BSDを除くCDRH3-FR4配列は、ヒトの生殖系列Jセグメントと2個以下のアミノ酸だけ異なる。典型的な実施形態では、CDRH3のJセグメント配列は、FR4配列に使用されたのと同じJセグメントからのものである。したがって、いくつかの実施形態では、CDRH3-FR4領域は、BSDおよび完全なヒトJH4生殖系列遺伝子セグメントを含む。CDRH3およびFR4配列の例示的な組み合わせが以下に示され、BSDは太字であり、ヒトの生殖系列JセグメントJH4残基には下線が引かれている:
【0173】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、生殖系列セグメントVH 1-02もしくはVH1-03に対して少なくとも90%の同一性、または少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の同一性を有するVセグメント、あるいはVH#1、VH#2、VH#3、VH#4、またはVH#5のVセグメント部分などの図1に示されるV領域のVセグメントのうちの1つを含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、V領域のVセグメントは、図1に示されるCDR1および/またはCDR2を有する。例えば、本発明の抗体は、配列GYYMHもしくはNYYIHを有するCDR1、または配列WINPNSGGTNYAQKFQGもしくはWINAGNGNTKYSQKFQGを有するCDR2を有し得る。
【0175】
特定の実施形態では、抗体は、図1に示されるV領域Vセグメントのうちの1つからのCDR1およびCDR2と、R(Q/D)RFPY、例えば、RDRFPYYFDYまたはRQRFPYYFDYを含むCDR3との両方を有する。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の抗GM-CSF抗体は、例えば、図1に示される配列R(Q/D)RFPYYFDYWGQGTLVTVSSならびにCDR1および/またはCDR2を有するCDR3-FR4を有し得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体のV領域は、結合特異性決定基R(Q/D)RFPYを有するCDR3、ヒト生殖系列VH1セグメントからのCDR2、またはヒト生殖系列VH1からのCDR1を有する。いくつかの実施形態では、CDR1およびCDR2の両方が、ヒト生殖系列VH1セグメントからのものである。
【0177】
III.軽鎖
本発明の抗hGM-CSF抗体の軽鎖は、以下の要素を含む軽鎖V領域を含む:
1)FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3を含むヒト軽鎖Vセグメント配列
2)配列FNKまたはFNRを含むCDRL3領域、例えば、QQFNRSPLTまたはQQFNKSPLT。
3)ヒト生殖系列J遺伝子セグメントにより提供されるFR4。
【0178】
領域は、VラムダまたはVカッパVセグメントのいずれかを含む。相補的なV領域と組み合わせて結合を支持するVカッパ配列の例を図1に提供する。
【0179】
領域のCDR3配列は、Jセグメント由来の配列を含む。典型的な実施形態では、CDRL3のJセグメント配列は、FR4に使用されたのと同じJセグメントからのものである。したがって、いくつかの実施形態の配列は、ヒトカッパ生殖系列のVセグメントおよびJセグメントの配列と2個以下のアミノ酸だけ異なり得る。いくつかの実施形態では、CDRL3-FR4領域は、BSDおよび完全なヒトJK4生殖系列遺伝子セグメントを含む。カッパ鎖の例示的なCDRL3-FR4の組み合わせが以下に示され、最小の必須結合特異性決定基は太字で示され、JK4配列には下線が引かれている:
【0180】
Vカッパセグメントは、典型的には、VKIIIサブクラスのものである。いくつかの実施形態では、セグメントは、ヒト生殖系列VKIIIサブクラスに対して少なくとも80%の配列同一性、例えば、ヒト生殖系列VKIIIA27配列に対して少なくとも80%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、Vカッパセグメントは、VKIIIA27と18以下の残基だけ異なり得る。他の実施形態では、本発明の抗体のV領域Vセグメントは、図1に示されるV領域のヒトカッパVセグメント配列、例えば、VK#1、VK#2、VK#3、またはVK#4のVセグメント配列に対して少なくとも85%の同一性、または少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の同一性を有する。
【0181】
いくつかの実施形態では、可変領域は、ヒトV遺伝子配列で構成される。例えば、可変領域配列は、ヒト生殖系列V遺伝子配列と少なくとも80%の同一性、または少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%以上の同一性を有することができる。
【0182】
いくつかの実施形態では、V領域のVセグメントは、図1に示されるCDR1および/またはCDR2を有する。例えば、本発明の抗体は、RASQSVGTNVAもしくはRASQSIGSNLAのCDR1配列、またはCDR2配列STSSRATを有し得る。
【0183】
特定の実施形態では、本発明の抗GM-CSF抗体は、図1に記載されるV領域のVセグメントのうちの1つに示される、組み合わせでのCDR1およびCDR2と、FNKまたはFNRを含むCDR3配列とを有し得、例えば、CDR3は、QQFNKSPLTまたはQQFNRSPLTであり得る。いくつかの実施形態では、そのようなGM-CSF抗体は、FGGGTKVEIKであるFR4領域を含み得る。したがって、本発明の抗GM-CSF抗体は、例えば、図1に示されるV領域のうちの1つからのCDR1およびCDR2と、FGGGTKVEIKであるCDR3-FR4領域との両方を含むことができる。
【0184】
IV.hGM-CSF抗体の調製
本発明の抗体は、図1に示される、V領域VH#1、VH#2、VH#3、VH#4、またはVH#5のいずれかを含み得る。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、図1に示される、V領域VK#1、VK#2、VK#3、またはVK#4のいずれかを含み得る。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、米国特許第8,168,183号および同第9,017,674号(それらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように、図1に示される、V領域VH#1、VH#2、VH#3、VH#4、またはVH#5、および図1に示されるV領域VK#1、VK#2、VK#3、またはVK#4を有する。
【0185】
抗体を試験して、抗体がhGM-CSF活性に拮抗する活性を保持していることを確認することができる。アンタゴニスト活性は、増殖アッセイを含む任意の数のエンドポイントを使用して決定することができる。中和抗体および他のhGM-CSFアンタゴニストは、hGM-CSF機能を評価する任意の数のアッセイを使用して同定または評価され得る。例えば、hGM-CSF受容体シグナル伝達のための細胞ベースのアッセイ、例えば、限定量のhGM-CSFに応答してhGM-CSF依存性細胞株の増殖速度を決定するアッセイが便利に使用される。ヒトTF-1細胞株は、そのようなアッセイで使用するのに好適である。Krinner et al.,(2007)Mol.Immunol.を参照されたい。いくつかの実施形態では、本発明の中和抗体は、90%の最大TF-I細胞増殖を刺激するhGM-CSF濃度が使用される場合、hGM-CSF刺激TF-I細胞増殖を少なくとも50%阻害する。したがって、典型的には、本発明で使用するための中和抗体または他のhGM-CSFアンタゴニストは、10nM未満のEC50を有する(例えば、表2)。本発明での使用に好適な中和抗体の同定に使用するのに好適なさらなるアッセイは、当業者に周知であろう。他の実施形態では、中和抗体は、hGM-CSF刺激増殖を、マウスモノクローナル抗体LMM102およびCDRの可変領域を有する抗体キメラc19/2(例えば、WO03/068920)のアンタゴニスト活性の少なくとも約75%、80%、90%、95%、または100%阻害する。
【0186】
hGM-CSFアンタゴニストとしての使用に好適な例示的なキメラ抗体はcl9/2である。c19/2抗体は、表面プラズモン共鳴分析によって決定されるように、約l0pMの一価の結合親和性でhGM-CSFに結合する。cl9/2の重鎖および軽鎖可変領域配列は既知である(例えば、WO03/068920)。Kabatに従って定義されたCDRは次のとおりである:
CDRH1 DYNIH
CDRH2 YIAPYSGGTGYNQEFKN
CDRH3 RDRFPYYFDY
CDRL1 KASQNVGSNVA
CDRL2 SASYRSG
CDRL3 QQFNRSPLT。
【0187】
CDRは、当該技術分野で周知の他の定義、例えば、Chothia、international ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)、およびAbMを使用して決定することもできる。
【0188】
いくつかの実施形態では、本発明で使用される抗体は、cl9/2と同じエピトープへの結合について競合するか、またはそれに結合する。cl9/2によって認識されるGM-CSFエピトープは、残基88と121の間のジスルフィド結合によって連結された2つのペプチド、残基86~93および残基112~127を有する産物として同定されている。cl9/2抗体は、細胞が0.5ng/mlのGM-CSFで刺激されるとき、30pMのEC50でヒトTF-I白血病細胞株のGM-CSF依存性増殖を阻害する。いくつかの実施形態では、本発明で使用される抗体は、cl9/2と同じエピトープに結合する。
【0189】
cl9/2などの投与用の抗体をさらにヒューマニア化することができる。例えば、cl9/2抗体は、ヒトV遺伝子セグメントを含むようにさらに操作することができる。
【0190】
高親和性抗体は、結合活性および親和性を決定するための周知のアッセイを使用して同定され得る。そのような技法には、ELISAアッセイ、ならびに表面プラズモン共鳴または干渉法を用いる結合決定が含まれる。例えば、親和性は、ForteBio(Mountain View,CA)Octetバイオセンサーを使用したバイオレイヤー干渉法によって決定することができる。本発明の抗体は、典型的には、グリコシル化および非グリコシル化形態の両方のhGM-CSFに類似の親和性で結合する。
【0191】
本発明の抗体は、hGM-CSFへの結合についてc19/2と競合する。本明細書に記載される抗体がhGM-CSFへの結合についてc19/2を遮断する、またはそれと競合する能力は、抗体が同じエピトープc19/2、またはc19/2によって結合されるエピトープと近い、例えば、オーバーラップするエピトープに結合することを示す。他の実施形態では、本明細書に記載される抗体、例えば、図1に提供される表に示されるVおよびV領域の組み合わせを含む抗体は、別の抗体がhGM-CSFへの結合について競合するかどうかを評価するための参照抗体として使用され得る。試験抗体は、参照抗体の抗原への結合が、試験抗体の存在下で少なくとも30%、通常は少なくとも約40%、50%、60%、または75%、多くの場合、少なくとも約90%低減される場合、参照抗体の結合を競合的に阻害するとみなされる。ELISAならびにイムノブロットなどの他のアッセイを含む多くのアッセイを用いて、結合を評価することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、同じ条件下でアッセイされた参照キメラc19/2モノクローナル抗体よりも少なくとも2~3倍遅い解離速度を有するが、hGM-CSF活性を測定する細胞ベースのアッセイにおいてhGM-CSF活性を中和する際に、参照抗体よりも少なくとも6~10倍大きい効力を有する。
【0192】
ヒト生殖系列配列に近いV領域配列を有する抗体を単離するための方法は、以前に記載されている(米国特許出願公開第2005/0255552号および同第2006/0134098号)。抗体ライブラリーは、哺乳類細胞、酵母細胞、または原核細胞を含む好適な宿主細胞において発現され得る。いくつかの細胞系での発現に関して、シグナルペプチドがN末端に導入されて、細胞外培地に直接分泌されてもよい。抗体は、シグナルペプチドを含むまたは含まないE.coliなどの細菌細胞から分泌され得る。E.coliからの抗体断片のシグナルレス分泌のための方法は、米国特許出願第2007/0020685号に記載されている。
【0193】
いくつかの実施形態では、図1に示される本発明のVH領域のうちの1つからのCDRを有する抗体が、図1に示されるV領域のうちの1つのCDRを有する抗体と組み合わされ、好適な発現系においていくつかの形式のいずれかで発現される、本発明のhGM-CSF結合抗体が生成される。したがって、抗体は、宿主細胞内にまたは分泌によるいずれかで、scFv、Fab、Fab’(免疫グロブリンヒンジ配列を含む)、F(ab’)(2つのFab’分子のヒンジ配列間のジスルフィド結合形成により形成される)、全免疫グロブリンもしくは切り詰められた免疫グロブリンとして、または原核もしくは真核宿主細胞における融合タンパク質として、発現され得る。メチオニン残基は、任意に、例えば、シグナルレス発現系において産生されたポリペプチドのN末端に存在してもよい。本明細書に記載されるV領域のそれぞれは、V領域のそれぞれと対合されて、抗hGM-CSF抗体を生成することができる。ある実施形態では、融合タンパク質は、本発明の抗hGM-CSF結合抗体またはその断片(非限定的な例では、抗hGM-CSF抗体断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、またはdAB)、およびヒトトランスフェリンを含み、ヒトトランスフェリンは、Shin,S-U.,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.92,pp.2820-2824,1995(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように、重鎖定常領域1(C1)の末端、ヒンジの後、またはC3の後に抗体に融合される。
【0194】
重鎖および軽鎖の例示的な組み合わせは、図1に提供される表に示される。いくつかの実施形態では、抗体VL領域、例えば、図1のVK#1、VK#2、VK#3、またはVK#4は、完全な軽鎖を形成するためにヒトカッパ定常領域と組み合わされる。さらに、いくつかの実施形態では、VH領域は、ヒトガンマ-1定常領域と組み合わされる。f-アロタイプなどの任意の好適なガンマ-1アロタイプを選択することができる。したがって、いくつかの実施形態では、抗体は、VH#1、VH#2、VH#3、VH#4、またはVH#5から選択されるVH(図1)、およびVK#1、VK#2、VK#3、またはVK#4から選択されるVL(図1)を有する、例えば、f-アロタイプを有するIgGである。
【0195】
本発明の抗体は、例えば、受容体へのhGM-CSFの結合を阻害することによりhGM-CSF受容体の活性化を阻害し、hGM-CSFへの高い親和性結合、例えば500pMを示す。いくつかの実施形態では、抗体は、毎秒約10-4以下の解離定数を有する。理論に拘束されないが、解離定数が遅い抗体は、改善された治療利益をもたらす。例えば、c19/2より3倍遅いオフ速度を有する本発明の抗体は、例えば、IL-8産生などの細胞ベースのアッセイにおいて、10倍より強力なhGM-CSF中和活性をもたらした(実施例2を参照されたい)。
【0196】
抗体は、原核性および真核性の両方の発現系を含む、任意の数の発現系を使用して産生することができる。いくつかの実施形態では、発現系は、CHO細胞発現系などの哺乳類細胞発現である。そのような系の多くは、商業的供給業者から広く入手可能である。抗体がVおよびV領域の両方を含む実施形態では、VおよびV領域は、単一のベクターを使用して、例えば、ジシストロニック発現単位において、または異なるプロモーターの制御下で発現され得る。他の実施形態では、VおよびV領域は、別個のベクターを使用して発現され得る。本明細書に記載されるVまたはV領域は、任意に、N末端にメチオニンを含み得る。
【0197】
本発明の抗体は、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、またはdABを含む、任意の数の形式で産生され得る。本発明の抗体は、ヒト定常領域も含み得る。軽鎖の定常領域は、ヒトカッパまたはラムダ定常領域であり得る。重鎖定常領域は、多くの場合、ガンマ鎖定常領域、例えば、ガンマ-1、ガンマ-2、ガンマ-3、またはガンマ-4定常領域である。他の実施形態では、抗体はIgAであり得る。
【0198】
本発明のいくつかの実施形態では、抗体V領域、例えば、図1のVK#1、VK#2、VK#3、またはVK#4は、完全な軽鎖を形成するためにヒトカッパ定常領域(例えば、配列番号:10)と組み合わされる。
【0199】
本発明のいくつかの実施形態では、V領域は、ヒトガンマ-1定常領域と組み合わされる。f-アロタイプなどの任意の好適なガンマ-1 fアロタイプを選択することができる。したがって、いくつかの実施形態では、抗体は、VH#1、VH#2、VH#3、VH#4、またはVH#5(図1)から選択されるVを有するf-アロタイプ定常領域、例えば配列番号11を有するIgGである。いくつかの実施形態では、抗体は、VK#1、VK#2、VK#3、またはVK#4(図1)から選択されるVを有する(図1)。特定の実施形態では、抗体は、配列番号10に記載されるカッパ定常領域と、配列番号11に記載される重鎖定常領域とを有し、重鎖および軽鎖可変領域は、図1に記載される配列からの以下の組み合わせのうちの1つを含む:a)VH#2、VK #3;b)VH#1、VK#3;c)VH#3、VK#1;d)VH#3、VL#3;e)VH#4、VK#4;f)VH#4、VK#2;g)VH#5、VK#1;h)VH#5、VK#2;i)VH#3、VK#4;またはj)VH#3、VL#3)。
【0200】
いくつかの実施形態では、例えば、抗体が断片である場合、抗体は、別の分子、例えば、ポリエチレングリコール(PEG化)または血清アルブミンにコンジュゲートされて、インビボでの延長された半減期を提供し得る。抗体断片のPEG化の例は、Knight et al.Platelets 15:409,2004(アブシキシマブに関して)、Pedley et al.,Br.J.Cancer 70:1126,1994(抗CEA抗体に関して)、Chapman et al.,Nature Biotech.17:780,1999、およびHumphreys,et al.,Protein Eng.Des.20:227,2007)に提供されている。
【0201】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、Fab’断片の形態である。完全長軽鎖は、V領域をヒトカッパまたはラムダ定常領域に融合することによって生成される。どちらの定常領域も任意の軽鎖に使用することができるが、典型的な実施形態では、カッパ定常領域はVカッパ可変領域と組み合わせて使用され、ラムダ定常領域は、Vラムダ可変領域とともに使用される。
【0202】
Fab’の重鎖は、本発明のV領域をヒト重鎖定常領域配列、第1の定常(CH1)ドメイン、およびヒンジ領域に融合することにより生成されるFd’断片である。重鎖定常領域配列は、免疫グロブリンクラスのいずれかからのものであり得るが、多くの場合IgGからのものであり、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4からのものであり得る。本発明のFab’抗体はまた、ハイブリッド配列であってもよく、例えば、ヒンジ配列は、1つの免疫グロブリンサブクラスからのものであり得、CH1ドメインは、異なるサブクラスからのものであり得る。
【0203】
V.GM-CSFが標的である疾患の治療のための抗hGM-CSF抗体の投与。
本発明はまた、hGM-CSF活性を阻害することが望ましい、すなわち、hGM-CSFが治療標的である、hGM-CSFが関与する疾患を有する患者を治療する方法も提供する。いくつかの実施形態では、そのような患者は、慢性炎症性疾患、例えば、関節炎、例えば、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎、全身型スティル病、および関節の他の炎症性疾患;炎症性腸疾患、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、バレット症候群、回腸炎、腸炎、好酸球性食道炎、およびグルテン過敏性腸症;喘息、好酸球性喘息、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー性鼻炎、珪肺症、慢性閉塞性肺疾患、過敏性肺疾患、間質性肺疾患、びまん性実質性肺疾患、気管支拡張症などの呼吸器系の炎症性障害;乾癬、強皮症、ならびに湿疹、アトピー性皮膚炎、じんま疹、そう痒症などの炎症性皮膚疾患を含む皮膚の炎症性疾患;多発性硬化症、特発性脱髄性多発ニューロパチー、ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、神経線維腫症、およびアルツハイマー病などの神経変性疾患を含む、中枢および末梢神経系の炎症を伴う障害を有する。本発明の方法を使用して、他の様々な炎症性疾患を治療することができる。これらには、全身性エリテマトーデス、免疫介在性腎疾患、例えば、糸球体腎炎、および脊椎関節症;ならびに全身性硬化症、特発性炎症性ミオパシー、シェーグレン症候群、血管炎、サルコイドーシス、甲状腺炎、痛風、耳炎、結膜炎、副鼻腔炎、サルコイドーシス、ベーチェット症候群、自己免疫性リンパ増殖性症候群(またはALPS、カナル-スミス症候群としても知られる)、Ras関連自己免疫白血球増殖性障害(またはRALD)、ヌーナン症候群、肝炎などの肝胆道疾患、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、および硬化性胆管炎などの望ましくない慢性炎症性構成要素を伴う疾患が含まれる。いくつかの実施形態では、患者は心血管系の損傷後に炎症を有する。他の様々な炎症性疾患には、川崎病、多中心性キャッスルマン病、結核、および慢性胆嚢炎が含まれる。さらなる慢性炎症性疾患は、例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine,12th Edition,Wilson,et al.,eds.,McGraw-Hill,Inc.)に記載されている。いくつかの実施形態では、抗体で治療された患者は、GM-CSFが腫瘍またはがん細胞の成長に寄与するがんを有し、これには、例えば、急性骨髄性白血病、叢状神経線維腫、自己免疫リンパ増殖性症候群(またはALPS、カナル-スミス症候群としても知られる)、Ras関連自己免疫性白血球増殖性障害(またはRALD)、ヌーナン症候群、慢性骨髄単球性白血病、若年性骨髄単球性白血病、および急性骨髄性白血病が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の抗体で治療される患者は、例えば、虚血性心疾患、脳卒中、およびアテローム性動脈硬化症などの心血管系への虚血性損傷による心不全を有するか、またはそのリスクがある。いくつかの実施形態では、本発明の抗体で治療される患者は喘息を有する。いくつかの実施形態では、本発明の抗体で治療される患者は、アルツハイマー病を有する。いくつかの実施形態では、本発明の抗体で治療される患者は、骨減少症、例えば、骨粗鬆症を有する。いくつかの実施形態では、本発明の抗体で治療される患者は、血小板減少性紫斑病を有する。いくつかの実施形態では、患者はI型またはII型糖尿病を有する。いくつかの実施形態では、患者は、GM-CSFが治療標的である2つ以上の疾患を有し得、例えば、患者は、関節リウマチおよび心不全、または骨粗鬆症および関節リウマチなどを有し得る。
【0204】
中和抗GM-CSF抗体の他の2つの例は、Li et al,(2006)PNAS 103(10):3557-3562に記載されているヒトElO抗体およびヒトG9抗体である。ElOおよびG9は、IgGクラスの抗体である。ElOは、GM-CSFに対して870pMの結合親和性を有し、G9は、GM-CSFに対して14pMの親和性を有する。両抗体は、ヒトGM-CSFへの結合に特異的であり、TFl細胞増殖アッセイで評価されるとき、強い中和活性を示す。
【0205】
追加の例示的な中和抗GM-CSF抗体は、Krinnerら(MoI Immunol.44:916-25,2007;Epub 2006 May 112006)によって記載されているMT203抗体である。MT203は、ピコモルの親和性でGM-CSFに結合するIgG1クラスの抗体である。この抗体は、TF-I細胞増殖アッセイによって評価されるとき、強力な阻害活性、およびU937細胞においてIL-8産生を遮断するその能力を示す。
【0206】
本発明での使用に好適なさらなる抗体は、当業者に既知であろう。
【0207】
抗hGM-CSF受容体抗体であるhGM-CSFアンタゴニストはまた、本開示の方法で用いることもできる。そのようなhGM-CSFアンタゴニストには、hGM-CSF受容体アルファ鎖またはベータ鎖に対する抗体が含まれる。本発明で用いられる抗hGM-CSF受容体抗体は、例えば、インタクト、キメラ、モノクローナル、ポリクローナル、抗体断片、ヒト化、ヒューマニア化など、上記で説明された、任意の抗体形式であり得る。本発明での使用に好適な抗hGM-CSF受容体抗体の例、例えば、中和、高親和性抗体は既知である(例えば、米国特許第5,747,032号およびNicola et al.,Blood 82:1724,1993を参照されたい)。
【0208】
非抗体GM-CSFアンタゴニスト
hGM-CSFとその受容体との生産的な相互作用を妨げる可能性のある他のタンパク質には、hGM-CSFに結合し、細胞表面受容体への結合と競合するhGM-CSF受容体鎖の一方または両方の細胞外部分の少なくとも一部を含む、変異hGM-CSFタンパク質および分泌型タンパク質が含まれる。例えば、可溶性hGM-CSF受容体アンタゴニストは、sGM-CSFRアルファのコード領域をマウスIgG2aのCH2-CH3領域と融合させることにより調製することができる。例示的な可溶性hGM-CSF受容体は、Raines et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci USA 88:8203に記載されている。GM-CSFRアルファ-Fc融合タンパク質の例は、例えば、Brown et al(1995)Blood 85:1488に提供されている。いくつかの実施形態では、そのような融合のFc構成成分は、Fc受容体への結合を調節する、例えば、結合を増加させるように操作することができる。
【0209】
他のhGM-CSFアンタゴニストには、hGM-CSF変異体が含まれる。例えば、Hercus et al.Proc.Natl.Acad.Sci USA 91:5838,1994により記載される、hGM-CSFのアミノ酸残基21のアルギニンまたはリジン(E21RまたはE21K)への変異を有するhGM-CSFは、マウス異種移植モデルにおけるhGM-CSF依存性白血病細胞の播種を防止する際にインビトロ活性を有することが示されている(Iversen et al.Blood 90:4910,1997)。当業者によって理解されるように、そのようなアンタゴニストは、アミノ酸残基21で述べられる置換などの置換を有するhGM-CSFの保存的に修飾された変異型、または例えば、半減期を延長するためにアミノ酸類似体を有するhGM-CSF変異型を含み得る。
【0210】
いくつかの実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、ペプチドであり得る。例えば、hGM-CSFペプチドアンタゴニストは、受容体の結合および生物活性に関係するヒトGM-CSFのBおよびCヘリックス上の特定の残基の位置を構造的に模倣するように設計されたペプチドであり得る(例えば、Monfardini et al,J.Biol.Chem 271:2966-2971,1996)。
【0211】
他の実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、抗体と同様の方法で抗原を標的とし、それに結合する「抗体模倣物」である。これらの「抗体模倣物」のいくつかは、抗体の可変領域の代替タンパク質フレームワークとして非免疫グロブリンタンパク質足場を使用する。例えば、Kuら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA92(14):6552-6556(1995))は、シトクロムb562のループのうちの2つをランダム化し、ウシ血清アルブミンに対する結合のために選択されたシトクロムb562に基づく抗体の代替案を開示している。個々の変異体は、抗BSA抗体と同様にBSAと選択的に結合することがわかった。米国特許第6,818,418号および同第7,115,396号は、フィブロネクチンまたはフィブロネクチン様タンパク質足場および少なくとも1つの可変ループを特徴とする抗体模倣物を開示している。アドネクチンとして知られるこれらのフィブロネクチンベースの抗体模倣物は、任意の標的リガンドに対する高い親和性および特異性を含む、天然または操作された抗体と同じ特徴の多くを示す。これらのフィブロネクチンベースの抗体模倣物の構造は、IgG重鎖の可変領域の構造に類似する。したがって、これらの模倣物は、性質および親和性が天然の抗体のものと類似した抗原結合特性を示す。さらに、これらのフィブロネクチンベースの抗体模倣物は、抗体および抗体断片に対してある特定の利点を示す。例えば、これらの抗体模倣物は、天然の折り畳み安定性に関してジスルフィド結合に依存しないため、通常は抗体を分解する条件下で安定している。加えて、これらのフィブロネクチンベースの抗体模倣物の構造は、IgG重鎖と類似しているため、インビボでの抗体の親和性成熟のプロセスと類似する、ループのランダム化およびシャッフリングのプロセスをインビトロで用いることができる。
【0212】
Besteら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA96(5):1898-1903(1999))は、リポカリン足場(Anticalin(登録商標))に基づく抗体模倣物を開示している。リポカリンは、タンパク質の末端に4つの超可変ループを有するβバレルで構成されてる。ループはランダム変異誘発を受け、例えば、フルオレセインとの結合のために選択された。3つの変異型はフルオレセインとの特異的結合を示し、1つの変異型は抗フルオレセイン抗体と同様の結合を示した。さらなる分析により、ランダム化された位置のすべてが可変であることが明らかになり、Anticalinが抗体の代替として使用するのに好適であることを示す。したがって、Anticalinsは、典型的には160~180の残基の小さな一本鎖ペプチドであり、これは、生産コストの削減、保存時の安定性の増加、および免疫反応の減少を含む、抗体に対していくつかの利点をもたらす。
【0213】
米国特許第5,770,380号は、結合部位として使用される複数の可変ペプチドループが付加された、カリックスアレーンの剛性の非ペプチド有機足場を使用する合成抗体模倣物を開示している。ペプチドループはすべて、互いに対して、カリックスアレーンから幾何学的に同じ側から突出している。この幾何学的な確認により、ループのすべてが結合に利用可能であり、リガンドへの結合親和性を増加させる。しかしながら、他の抗体模倣物と比較して、カリックスアレーンベースの抗体模倣物はペプチドのみからなるわけではなく、したがって、プロテアーゼ酵素による攻撃を受けにくい。足場も、純粋にペプチド、DNA、またはRNAからなるわけではない、つまり、この抗体模倣物は、極端な環境条件で比較的安定しており、寿命が長い。さらに、カリックスアレーンベースの抗体模倣物は比較的小さいため、免疫原性応答をもたらす可能性は低い。
【0214】
Muraliら(Cell MoI Biol 49(2):209-216(2003))は、抗体をより小さなペプチド模倣物に低減するための方法論を記載しており、これらは、「抗体様結合ペプチド模倣物」(ABiP)と呼ばれ、抗体の代替物としても有用であり得る。
【0215】
非免疫グロブリンタンパク質フレームワークに加えて、抗体の特性は、RNA分子および非天然オリゴマーを含む化合物(例えば、プロテアーゼ阻害剤、ベンゾジアゼピン、プリン誘導体、およびベータターン模倣物)においても模倣されている。したがって、非抗体GM-CSFアンタゴニストは、そのような化合物も含み得る。
【0216】
治療的投与
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、hGM-CSFアンタゴニスト(例えば、抗hGM-CSF抗体)を、CRSまたはサイトカインストームを有する対象に医薬組成物として投与することを含む。いくつかの実施形態では、hGM-CSFアンタゴニストは、疾患の治療に好適な投与計画を使用して治療有効量で投与される。
【0217】
いくつかの実施形態では、治療有効量は、状態またはその症状を少なくとも部分的に阻止する量である。例えば、治療有効量は、免疫活性化を阻止し得る、循環サイトカインのレベルを減少させ得る、T細胞活性化を減少させ得る、または発熱、倦怠感、疲労、食欲不振、筋肉痛、関節痛、吐き気、嘔吐、頭痛、皮疹、吐き気、嘔吐、下痢、頻呼吸、低酸素血症、心血管頻脈、脈圧拡大、低血圧、心拍出量の増加(早期)、潜在的な心拍出量の減少(後期)、Dダイマーの上昇、出血を伴うまたは伴わない低フィブリノゲン血症、高窒素血症、高トランスアミナーゼ血症、高ビリルビン血症、頭痛、精神状態変化、混乱、せん妄、喚語困難または明らかな失語症、幻覚、振戦、測定障害、歩行変化、または発作を寛解させ得る。
【0218】
本発明の方法は、疾患の治療に好適な投与計画を使用して、治療有効量で医薬組成物として抗hGM-CSF抗体を患者に投与することを含む。組成物は、様々な薬物送達系で使用するために製剤化され得る。1つ以上の生理学的に許容される賦形剤または担体も、適切な製剤のために組成物に含めることができる。本発明での使用に好適な製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,Philadelphia,PA.Lippincott Williams & Wilkins,2005に見出される。薬物送達のための方法の簡単な概説については、Langer,Science 249:1527-1533(1990)を参照されたい。
【0219】
本発明の方法で使用するための抗hGM-CSF抗体は、注射用の無菌等張水溶液などの、患者への注射に好適な溶液で提供される。抗体は、許容される担体中に好適な濃度で溶解または懸濁される。いくつかの実施形態では、担体は、水性、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などである。組成物は、pH調整剤および緩衝剤、張度調節剤(tonicity adjusting agents)などの、生理学的条件に近づけるために必要とされる補助医薬物質を含み得る。
【0220】
本発明の医薬組成物は、疾患または疾患の症状およびその合併症を治癒または少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で、患者、例えば、骨減少症、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、全身型スティル病、喘息、好酸球性喘息、好酸球性食道炎、多発性硬化症、乾癬、アトピー性皮膚炎、叢状神経線維腫、自己免疫リンパ増殖性症候群(またはALPS、カナル-スミス症候群としても知られる)、Ras関連自己免疫白血球増殖性障害(またはRALD)、ヌーナン症候群、慢性骨髄単球性白血病、若年性骨髄単球性白血病、急性骨髄性白血病、多中心性キャッスルマン病、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、びまん性実質性肺疾患、特発性血小板減少性紫斑病、アルツハイマー病、心不全、川崎病、虚血事象による心臓損傷、または糖尿病を有する患者に投与される。これを達成するのに十分な量は、「治療有効用量」と定義される。治療有効用量は、療法に対する患者の応答を監視することによって決定される。治療有効用量を示す典型的なベンチマークには、患者の疾患の症状の寛解が含まれる。この使用に有効な量は、疾患の重症度、および年齢、体重、性別、投与経路などの他の要因を含む患者の健康の一般的な状態に依存する。抗体の単回または複数回投与は、必要に応じて、および患者により認容される投与量および頻度により投与され得る。いずれにせよ、本方法は、患者を効果的に治療するのに十分な量の抗hGM-CSF抗体を提供する。
【0221】
抗体は、目的の疾患を治療するために、単独で、または他の療法と組み合わせて投与することができる。
【0222】
抗体は、静脈内、皮下、筋肉内、または腹腔内経路を含むがこれらに限定されない任意の好適な経路を介して注射または注入によって投与することができる。いくつかの実施形態では、抗体は吹送によって投与することができる。例示的な実施形態では、抗体は、4℃で注射用の無菌等張生理食塩水溶液に10mg/mlで保存することができ、患者への投与前に注射用に100mlまたは200mlのいずれかの0.9%塩化ナトリウムで希釈される。抗体は、0.2~10mg/kgの用量で1時間かけて静脈内注入により投与される。他の実施形態では、抗体は、例えば、15分~2時間の期間にわたって静脈内注入により投与される。さらに他の実施形態では、投与手順は、皮下または筋肉内注射による。
【0223】
いくつかの実施形態では、hGM-CSFアンタゴニスト、例えば、抗hGM-CSF抗体は、脊髄周囲(perispinal)経路によって投与される。脊髄周囲投与は、最初の投与時に治療分子を脊椎の近くに直接配置するように行われる解剖学的に局所化された送達を伴う。脊髄周囲投与は、例えば、米国特許第7,214,658号およびTobinick&Gross,J.Neuroinflammation 5:2,2008に記載されている。
【0224】
hGM-CSFアンタゴニストの用量は、CRSまたはサイトカインストームと診断された対象に効果的な治療を提供するために選択される。用量は、典型的には、約0.1mg/kg体重~約50mg/kg体重の範囲、または患者当たり約1mg~約2gの範囲である。用量は、約1~約20mg/kgまたはおよそ約50mg~約2000mg/患者の範囲である場合が多い。用量は、アンタゴニストの薬物動態(例えば、循環中の抗体の半減期)および薬力学的応答(例えば、抗体の治療効果の持続時間)により、1日1回~3ヶ月に1回の範囲であり得る適切な頻度で繰り返され得る。アンタゴニストが抗体または修飾された抗体断片であるいくつかの実施形態では、約7~約25日のインビボ半減期および抗体投与は、1週間に1回~3ヶ月に1回繰り返される。他の実施形態では、抗体はおよそ月に1回投与される。
【0225】
本発明のV領域および/またはV領域は、診断目的のためにも使用され得る。例えば、Vおよび/またはV領域は、患者のGM-CSFレベルの検出などの臨床分析に使用されてもよい。本発明のVまたはV領域は、例えば、抗Id抗体を産生するためにも使用され得る。
【0226】
本明細書で別段の定義がない限り、本出願に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈で特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0227】
一実施形態では、「治療すること」は治療上の処置を含み、「予防すること」は予防的または防止的手段を含み、その目的は、上述の標的とする病的状態または障害を予防または軽減することである。したがって、一実施形態では、治療することは、疾患、障害、もしくは状態と関連する症状、またはその組み合わせに直接影響を与える、またはそれを治癒する、抑制する、阻害する、予防する、その重症度を低減する、その発症を遅らせる、それを低減することを含み得る。したがって、一実施形態では、「治療すること」、「寛解させること」、および「軽減すること」は、とりわけ、進行を遅らせること、寛解を促進すること、寛解を誘導すること、寛解を増強させること、回復を加速させること、代替療法の有効性を増加させるもしくはそれに対する耐性を減少させること、またはそれらの組み合わせを指す。一実施形態では、「予防すること」は、とりわけ、症状の発症を遅らせること、疾患への再発を予防すること、再発エピソードの数もしくは頻度を減少させること、症候性エピソード間の潜伏期を増加させること、またはそれらの組み合わせを指す。一実施形態では、「抑制する」または「阻害する」は、とりわけ、症状の重症度を低減すること、急性エピソードの重症度を低減すること、症状の数を低減すること、疾患関連症状の発生を低減すること、症状の潜伏期を低減すること、症状を寛解させること、二次症状を低減させること、二次感染を低減させること、患者の生存期間を延長させること、またはこれらの組み合わせを指す。
【0228】
本開示において、単数形「a」、「an」、および「the」は、複数の参照を含み、特定の数値への参照は、文脈が明らかに別様に示さない限り、少なくともその特定の値を含む。本明細書で使用される場合、「複数」という用語は、2つ以上を意味する。値の範囲が表される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。
【0229】
同様に、先行詞「約」を使用することにより、値が近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。すべての範囲は包括的かつ組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、示される数または数の範囲から、0.0001~5%の偏差を指す。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、示される数または数の範囲から、1~10%の偏差を指す。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、示される数または数の範囲から、最大25%の偏差を指す。「含む」という用語は、列記されているすべての要素を包含することを意味するが、追加の不特定の要素も含まれる場合があり、すべて同じ本質および意味を有する「包含する(encompass)」、「含む(include)」、または「含有する(contain)」という用語と交換可能に使用され得る。「からなる(consisting of)」という用語は、列挙された要素またはステップで構成されることを意味し、すべて同じ本質および意味を有する「で構成される(composed of)」という用語と交換可能に使用され得る。
【実施例
【0230】
実施例1-GM-CSFに対する例示的なヒューマニア化抗体
米国特許出願公開第2006/0134098号および同第2005/0255552号に記載されるように、cl9/2の特異性を有する操作されたFab’分子のパネルを、エピトープに焦点を当てたヒトVセグメントライブラリーから生成した。エピトープに焦点を当てたライブラリーは、ヒト生殖系列Jセグメント配列とともにCDRH3およびCDRL3にBSD配列を含むCDR3-FR4領域に連結されたヒトVセグメントライブラリー配列から構築された。重鎖にはヒト生殖系列JH4配列を使用し、軽鎖にはヒト生殖系列JK4配列を使用した。
【0231】
組換えヒトGM-CSFへの結合を支持する、Vh1制限ライブラリーからの完全長ヒューマニア化V領域が選択された。マウスc19/2 Vセグメントの一部のみがヒト配列のライブラリーに最初に置き換えられた、米国特許出願公開第2006/0134098号に記載されている「カセット」ライブラリーの構築のベースとして、「完全長」V-カッパライブラリーを使用した。2種類のカセットを構築した。V-カッパ鎖のカセットは、フレームワーク2領域内で共通の配列が重複するブリッジPCRによって作製された。このようにして、「フロント-エンド」および「中間」ヒトカセットライブラリーが、ヒトV-カッパIIIアイソタイプ用に構築された。GM-CSFへの結合を支持したヒトV-カッパIIIカセットは、コロニーリフト結合アッセイにより同定され、ELISAの親和性によりランク付けされた。V-カッパヒト「フロント-エンド」および「中間」カセットをブリッジPCRで一緒に融合して、GM-CSF結合活性を支持した完全なヒトV-カッパ領域を再構築した。したがって、ヒューマニア化Fabは、ヒトGM-CSFへの結合を支持するヒューマニア化V-重およびV-カッパ領域からなる。
【0232】
結合活性は、表面プラズモン共鳴(spr)分析により決定された。ビオチン化GM-CSFは、ストレプトアビジンでコーティングされたCM5バイオセンサーチップに捕捉された。E.coliから発現されたヒューマニア化Fab断片を、pH7.4の、10mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1mg/mlのBSA、および0.005%P20において30 nMの開始濃度に希釈した。3倍希釈系列を使用して各Fabを4回希釈し、各濃度を37℃で2回試験して、異なる密度の抗原表面との結合速度を決定した。3つのすべての表面からのデータは、解離定数を抽出するために全体的に適合された。
【0233】
結合速度は、Biacore 3000表面プラズモン共鳴(SPR)により分析された。組換えヒトGM-CSF抗原をビオチン化し、ストレプトアビジンCM5センサーチップに固定した。Fab試料を3nMの開始濃度に希釈し、3倍希釈系列で実行した。アッセイは、pH7.4および37℃で、10mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1mg/mLのBSA、および0.005%p20において実行した。各濃度を2回試験した。Fab’結合アッセイを、2つのデータセットを提供する2つの抗原密度表面で実行した。1:1ラングミュア結合モデルを使用して計算された、6つの様々なヒューマニア化抗GM-CSF Fabクローンのそれぞれの平均親和性(KD)を表2に示す。
【0234】
TF-I細胞増殖アッセイを使用して、GM-CSF中和についてFabを試験した。ヒトTF-I細胞のGM-CSF依存性増殖を、MTSアッセイ(Cell titer 96、Promega)を使用して0.5ng/mlのGM-CSFとともに4日間インキュベートした後に測定して、生存細胞を決定した。すべてのFabがこのアッセイで細胞増殖を阻害し、これらが中和抗体であることを示す。細胞ベースのアッセイでは、抗GM-CSF Fabの相対親和性とEC50との間に良好な相関関係がある。18pM~104pMの範囲の一価の親和性を有する抗GM-CSF抗体は、細胞ベースのアッセイにおいてGM-CSFの効果的な中和を示す。
【0235】
例示的な操作された抗GM-CSF V領域配列を図1に示す。
【表3】
【0236】
実施例2-ヒューマニア化GM-CSF抗体の評価
この例では、マウス抗体LMM102からの可変領域を有するキメラIgG1k抗体(Ab2)(Nice et al.,Growth Factors 3:159,1990)と比較した、細胞ベースのアッセイでヒューマニア化抗GM-CSF抗体の結合活性および生物学的効力を評価する。Ab1は、Ab2と同一の定常領域を有するGM-CSFに対するヒューマニア化IgG1k抗体である。
【0237】
ヒトGM-CSFのAb1およびAb2への結合の表面プラズモン共鳴分析
表面プラズモン共鳴分析を使用して、Biacore 3000機器を使用して、Ab1およびAb2とグリコシル化ヒトGM-CSFとの相互作用の結合速度および一価の親和性を比較した。ポリクローナル抗ヒトF(ab’)2を使用して、Ab1またはAb2をBiacoreチップ表面に捕捉した。ヒト293細胞から発現されたグリコシル化組換えヒトGM-CSFを分析物として使用した。速度定数は、2つの独立した実験において決定された(図2A~2Bおよび表3を参照されたい)。結果は、GM-CSFがこの実験において比較可能な一価の親和性でAb2およびAb1に結合したことを示す。しかしながら、Ab1はAb2よりも2倍遅い「オン速度」であったが、およそ3倍遅い「オフ速度」であった。
【表4】
【0238】
GM-CSFは、N結合およびO結合の両方のグリコシル化部位で自然にグリコシル化されるが、グリコシル化は生物学的活性には必要ない。GM-CSFグリコシル化がAb1またはAb2の結合に影響を与えるかどうかを決定するために、2つの異なる源;E.coliで発現されたGM-CSF(非グリコシル化)およびヒト293細胞から発現されたGM-CSF(グリコシル化)からの組換えGM-CSFを使用して、抗体をELISAで比較した。図3A~3Bおよび表4の結果は、両方の抗体がグリコシル化および非グリコシル化GM-CSFに同等の活性で結合したことを示した。2つの抗体は、このアッセイにおいて比較可能なEC50値も示した。
【表5】
【0239】
Ab1は、Ab2に存在するマウス可変領域に由来したヒューマニア化抗体である。Ab1は、競合ELISAにより重複エピトープ特異性(Ab2)について試験された。
【0240】
ビオチン化Ab2は、既知の技法を使用して調製された。ELISAにより決定されるとき、ビオチン化はAb2のGM-CSFへの結合に影響を与えなかった。アッセイでは、Ab2またはAb1を、一定量のビオチン化Ab2とともに様々な濃度で添加した。ビオチン化Ab2の検出は、非標識AbまたはAb1競合物質の存在下でアッセイされた(図4A~4B)。Ab1およびAb2の両方がGM-CSFへの結合についてビオチン化Ab2と競合したため、同じエピトープへの結合が示された。Ab1は、GM-CSFへの結合について、Ab2よりも効果的に競合し、表面プラズモン共鳴分析によるAb2と比較した場合、Ab1の遅い解離速度と一致した。
【0241】
Ab1およびAb2によるGM-CSF活性の中和
GM-CSF活性を中和するための細胞ベースのアッセイを用いて、生物学的効力を評価した。このアッセイは、GM-CSFで誘導されたU937細胞からのIL-8分泌を測定する。培養上清に分泌されたIL-8は、0.5ng/mlのE.coli由来GM-CSFで16時間インキュベートした後、ELISAにより決定される。
【0242】
このアッセイにおけるAb1およびAb2の中和活性の比較は、図5の代表的なアッセイにおいて示される。3つの独立した実験において、IC50を比較すると、Ab1はAb2よりも効果的にGM-CSF活性を阻害した(表5)。
【表6】
【0243】
要約
ヒューマニア化Ab1は、25pMの計算された平衡結合定数(KD)でGM-CSFに結合した。Ab2は、30.5pMのKDでGM-CSFに結合した。Ab2は、GM-CSFについてAb1よりも2倍高い会合定数(k)を示したが、Ab1は、Ab2よりも3倍遅い解離速度(k)を示した。Ab2およびAb1は、抗原結合ELISAにおいてグリコシル化および非グリコシル化GM-CSFに対して類似した結合活性を示した。競合ELISAは、両方の抗体が同じエピトープについて競合することを確認し、Ab1はAb2よりも高い競合結合活性を示した。加えて、Ab1は、GM-CSF誘導IL-8誘導アッセイにおいてAb2よりも高いGM-CSF中和活性を示した。
【0244】
実施例3-免疫療法関連毒性のマウスモデルにおける中和抗GM-CSF抗体の投与
免疫療法関連毒性のマウスモデルを使用して、免疫療法関連毒性を予防および治療するための抗GM-CSF抗体の有効性を示すことができる。免疫療法関連毒性の1つのモデルでは、毒性を引き起こす用量でCAR T細胞をマウスに注射する。例えば、参照により本明細書に組み込まれるvan der Stegenら(J.Immunol 191:4589-4598(2013))は、T4 T細胞と呼ばれる30x10細胞の単回用量のi.p.注射により誘導されるCRSモデルを説明している。T4 T細胞は、キメラAg受容体(CAR)T1E28zを発現する操作されたT細胞である。T1E28zを発現するように操作されたT細胞は、ErbB1-およびErbB4ベースの二量体ならびにErbB2/3ヘテロ二量体を発現する細胞によって活性化される。
【0245】
CRSの予防および治療に対する抗GM-CSF抗体の有効性を評価するために、マウスを群(n=10)に分け、各群に次のいずれかを与える:a)単一i.p.生理食塩水注射、b)30x10 T4 T細胞のi.p.注射、c)T4 T細胞と共投与した、30x10 T4 T細胞のi.p.注射および0.25mgの静脈内(i.v.)抗GM-CSFモノクローナル抗体22E9(組換えラット抗マウスGM-CSF抗体)、d)T4 T細胞と共投与した、30x10 T4 T細胞のi.p.注射および0.25mgの鼻腔内(i.n.)抗GM-CSF抗体22E9、e)T4 T細胞投与の6時間前に、30x10 T4 T細胞のi.p.注射および0.25mgのi.v.抗GM-CSF抗体22E9、f)T4 T細胞投与の6時間前に、30x10 T4 T細胞のi.p.注射および0.25mgのi.n.抗GM-CSF抗体22E9、g)T4 T細胞投与の2時間後に、30x10 T4 T細胞のi.p.注射および0.25mgのi.v.抗GM-CSF抗体22E9、またはh)T4 T細胞投与の2時間後に、30×10 T4 T細胞のi.p.注射および0.25mgのi.n.抗GM-CSF抗体22E9。さらなる用量、投与時間、および投与経路が評価される。
【0246】
抗GM-CSF抗体22E9の効果を評価するために、臓器をマウスから収集し、ホルマリン固定し、組織病理学的分析に供する。血液を収集し、ヒトIFNγ、ヒトIL-2、ならびにマウスIL-6、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、IL-17、IFNγ、およびTNFαの濃度を、ELISAアッセイなどの文献に十分に記載されている方法により評価する。マウスの体重、行動、臨床症状を観察する。
【0247】
実施例4-免疫療法に対する抗GM-CSF抗体の効果
マウスモデルを使用して、GM-CSFアンタゴニストががん免疫療法の有効性に悪影響を与えないことを示すことができる。SCIDベージュマウスにがん細胞株を接種し、抗GM-CSF抗体とともにまたはなしで、T4 T細胞として、CRSを誘導することが知られている免疫療法剤で処置することができる。
【0248】
抗GM-CSF抗体が免疫療法の有効性に影響を与えるかどうかを評価するために、マウスを群(n=10)に分け、各群に次にいずれかを与える:a)30x10 SKOV3細胞の皮下(s.c.)注射、b)30x10 SKOV3細胞のs.c.注射および30x10 T4 T細胞の i.p.注射、またはc)30x10 SKOV3細胞のs.c.インプラント、30x10 T4 T細胞のi.p.注射、および0.25mgの抗GM-CSF抗体22E9のi.v.注射。
【0249】
T4 T細胞の有効性に対する抗GM-CSF抗体22E9の効果を評価するために、腫瘍サイズを4日ごとにキャリパーで測定し、腫瘍体積を次の式で計算した:0.5×(大径)×(小径)。マウスの体重、行動、臨床症状を観察する。実験の終わりに、動物を屠殺し、腫瘍組織を採取し、量る。
【0250】
実施例5-ヒトCRSのマウスモデル
CRSの治療または予防におけるヒト化抗GM-CSFモノクローナル抗体の効果を調査するためのCRSのマウスモデルを開発した。(図17a.~17b.)。
【0251】
方法:使用されるモデルは原発性AMLモデルである。ヒトSCF、IL-3、およびGM-CSFにさらにトランスジェニックである免疫低下状態のNSG-Sマウスに、CD123陽性のAML患者由来のAML芽球を移植した。2~4週間後、出血させて、移植および高疾患負荷の達成を確認した。次に、以前に研究された用量よりも10倍高い1x10細胞の高用量のCAR-T123でマウスを処置した。
【0252】
結果:CAR-T細胞注射後1~2週間以内に、これらのマウスが脱力感、るいそう、体の丸まり、離脱症状、乏しい運動反応を特徴とする病気を発達させたことが観察された。マウスは最終的に7~10日以内にそれらの疾患で死亡した。症状は、マウスでの大幅なT細胞拡大、ならびにIL-6、MIP1α、IFN-γ、TNFα、GM-CSF、MIP1β、およびIL-2などの複数のヒトサイトカインの上昇と、ならびにCAR-T細胞療法後のヒトCRSに見られるものに似ているパターンにおいて相関する。GM-CSFの倍率変化は他のサイトカインよりも有意に大きかった。(図17a~b)。
【0253】
実施例6-GM-CSFノックアウトCAR-Tの生成
GM-CSF CRISPRノックアウトT細胞が生成され、GM-CSFの発現の低減を示すが、免疫細胞の機能性を示した、他のサイトカインおよび脱顆粒のレベルは類似することを示した。(図15a~15gを参照されたい)。
【0254】
実施例7-抗GM-CSF中和抗体はCAR-T媒介殺傷、増殖、またはサイトカイン産生を阻害しないが、GM-CSFを中和する
抗GM-CSF中和抗体は、CAR-T媒介殺傷、増殖、またはサイトカイン産生を阻害しないが、GM-CSFを良好に中和する。(図16a~16iを参照されたい)。
【0255】
実施例8-抗GM-CSF中和抗体はインビボでのCAR-Tの有効性を阻害しない
中和hGM-CSF抗体であるヒト化抗GM-CSFモノクローナル抗体は、インビボでのCAR-Tの効果を阻害しない(図18a~18c)。本明細書に記載される実施形態による、抗GM-CSF中和抗体と組み合わせた異種移植モデルにおけるCAR-Tの有効性。図18aに示されるように、NSGマウスにNALM-6-GFP/ルシフェラーゼ細胞(ヒト末梢血白血病プレB細胞)を注射し、生物発光イメージング(BLI0を実施して腫瘍成長を確認した。マウスを、(1)抗GM-CSF抗体(10mg/Kgを10日間毎日)および(a)CART19もしくは(b)非形質導入ヒトT細胞(UTD)1x10細胞、または(2)IgG対照抗体(10mg/Kgを10日間毎日)および(a)CART19もしくは(b)形質導入ヒトT細胞(UTD)1x10細胞のいずれかで処置した。図18bおよび18cは、抗GM-CSF中和抗体がインビボでのCAR-Tの有効性を阻害しなかったことを示す。
【0256】
実施例9-抗GM-CSF中和抗体は生存率に対するCAR-Tの影響を損なわない
インビトロおよびインビボの前臨床データは、抗GM-CSF中和抗体(ヒト化抗GM-CSFモノクローナル抗体)がマウスモデルの生存率に対するCAR-Tの影響を損なわないことを示す。(図19)。
【0257】
抗GM-CSF中和抗体は、PBMCの不在下で、インビボでのCAR-T細胞の機能を妨げない。CAR-T+対照およびCAR-T+抗GM-CSF中和抗体で類似していると示された生存率。
【0258】
実施例10-抗GM-CSF中和抗体はCAR-T拡大を増加させ得る
インビトロおよびインビボの前臨床データは、抗GM-CSF中和抗体(ヒト化抗GM-CSFモノクローナル抗体)がCAR-T拡大を増加させ得ることを示す(図20)。抗GM-CSF中和抗体は、インビトロでのCAR-Tがん細胞殺傷を増加させ得る。この抗体は、CAR-T細胞の増殖を増加させ、有効性を改善し得る。CAR-Tの増殖は、PBMCの存在下でGM-CSF中和抗体によって増加した。(PBMCなしでは影響を受けなかった)。この抗体は、脱顆粒、細胞内GM-CSF産生、またはIL-2産生を阻害しなかった。
【0259】
実施例11-全体的な応答率の改善と関連するCAR-T拡大
全体的な応答率の改善と関連するCAR-T拡大。(図21)。CAR AUC(曲線下面積)はCAR-T投与後の最初の28日間にわたる血液のCAR +細胞/μLの累積レベルとして定義された。P値はウィルコクソン順位和検定により計算された。(Neelapu,et al ICML 2017 Abstract 8)。
【0260】
実施例12-本明細書に記載される実施形態による抗GM-CSF中和抗体の研究プロトコル
本明細書に記載される実施形態による抗GM-CSF中和抗体(ヒト化抗GM-CSFモノクローナル抗体)の研究プロトコル。(図22を参照されたい)。入院中および最初の30日間の通院中に毎日評価されるCRSおよびNT。CAR-T治療の-1、+1、および+3日目にGM-CSF中和抗体を受ける適格な対象。ベースライン、ならびに1、3、6、9、12、18、および24ヶ月目に実施される腫瘍評価。血液試料(PBMCおよび血清)、-5、-1、0、1、3、5、7、9、11、13、21、28、90、180、270、および360日目。
【0261】
実施例13-GM-CSF枯渇はCAR-T細胞拡大を増加させる
GM-CSF枯渇はCAR-T細胞拡大を増加させる。(図23A~23B)図23Aは、対照CAR-T細胞と比較して、GM-CSFk/o CAR-T細胞の増加したエクスビボ拡大を示す。図23bは、本明細書に記載される実施形態による抗GM-CSF中和抗体(ヒト化抗GM-CSFモノクローナル抗体)でのインビボ処置後のより頑強な増殖を示す。
実施例14->100人のヒト患者における抗GM-CSF中和抗体の安全性プロファイル*
第I相:健康な成人ボランティアにおける単一用量、用量漸増。目的は、安全性/忍容性、PK、および免疫原性を分析することであった。
登録数/用量:
(n=12)
3/1mg/kg
3/3mg/kg
3/10mg/kg
3/プラセボ
安全性の結果:
クリーン安全性プロファイル:
薬物に関連した深刻な有害作用(SAE)なし
非免疫原性
第II相:1)関節リウマチ患者における0、2、4、8、12週目の用量。目的は、有効性、安全性/忍容性、PK、および免疫原性を分析することであった。
登録数/用量:
(n=9)
7/600mg
2/プラセボ
安全性の結果:
クリーン安全性プロファイル:
薬物に関連した深刻な有害作用(SAE)なし
非免疫原性
2)重度の喘息患者における0、2、4、8、12、16 20週目の用量。目的は、有効性、安全性/忍容性、PK、および免疫原性を分析することであった。
登録数/用量:
(n=160)
78/400mg
82/プラセボ
安全性の結果:
クリーン安全性プロファイル:
薬物に関連した深刻な有害作用(SAE)なし
非免疫原性
*上に示す研究の94人の患者+進行中のCMML第I相試験(薬物は十分に忍容されている)の12人の患者。追加の76人の患者が、GM-CSF中和Ab(KB002)のキメラ型を受け、同様の安全性プロファイルを示した。
【0262】
すべての研究は無作為化二重盲検プラセボ対照、IV内投与。(実施例24を参照されたい。)
【0263】
実施例15-CART活性および毒性に対する抗GM-CSF抗体の効果
この研究では、キメラ抗原受容体T細胞(CART)の活性および毒性に対する、抗GM-CSF抗体によるGMCSF遮断の効果を調査する。これは、これら2つのAIMによって達成され得る:
AIM#1:CART細胞エフェクター機能に対する抗GM-CSF抗体によるGMCSF遮断の効果を調査すること
AIM#2:CART細胞療法研究戦略後のサイトカイン放出症候群の低減に対する抗GM-CSF抗体によるGMCSF遮断の効果を研究すること。以下の実験を提案する:
【0264】
モデル:ALLに対するCART19を使用して、骨髄細胞の存在下または不在下で、4つの異なる用量の、抗GM-CSF抗体によるGMCSF遮断とCART細胞(サイトカイン産生(GM-CSF、IL-2、INFg、IL-6、IL-8、MCP-1を含む30プレックスLumiex)、抗原特異的殺傷、脱顆粒、増殖、および消耗)とを組み合わせたインビトロ研究。
【0265】
以下の2つのモデルを使用して、異なる用量の、抗GM-CSF抗体(マウスGMCSF遮断あり/なし)によるGMCSF遮断とCART細胞とを組み合わせたインビボ研究:
CD19陽性細胞株(NALM6)を移植した異種移植片、抗GM-CSF抗体を伴うまたは伴わないCART19で処置;および
原発性ALLの患者由来異種移植片、次いで、抗GM-CSF抗体を伴うまたは伴わないCART19で処置。
【0266】
抗GM-CSF抗体10mg/kgを、CART細胞移植の直前および10mg/kg/日で10日間、マウスにi.p.投与する。腫瘍応答および生存についてマウスを追跡する。後眼窩出血を、CART細胞療法の1週間後から開始し、その後毎週得る。疾患の負荷、T細胞拡大速度、消耗マーカーの発現、およびサイトカインレベル(30プレックス)を分析する。実験の完了時に、脾臓および骨髄を採取し、腫瘍の特徴およびCAR-T細胞数を分析する。
【0267】
以下のモデルを使用した、PBMCの存在下で、CRSモデルにおいて抗GM-CSF抗体によるGMCSF遮断(マウスGMCSF遮断ありまたはなし)とCART細胞とを組み合わせたインビボ研究(このモデルでは、高用量のCART細胞を使用してCRSを誘導する):
【0268】
原発性ALL患者由来異種移植片、次いで抗GM-CSF抗体を伴うまたは伴わないCART19で処置。
【0269】
抗GM-CSF抗体10mg/kgを、CART細胞移植の直前およびおよび10mg/kg/日で10日間、マウスにi.p.投与する。腫瘍応答、CRSの毒性症状、および生存についてマウスを追跡する。後眼窩出血を、ベースライン、CART細胞療法の2日後、1週間後、およびその後毎週得る。疾患の負荷、T細胞拡大速度、消耗マーカーの発現、およびサイトカインレベル(30プレックス)を分析する。実験の完了時に、脾臓および骨髄を採取し、腫瘍の特徴およびCAR-T細胞数を分析する。
【0270】
インビボ神経毒性アッセイ
上記#3で説明したモデルを使用して、CART細胞療法後の神経毒性の発達を評価するために、病気のマウスをMRIで画像化する。CART細胞および抗GM-CSF抗体対対照抗体を与えられたマウス間の画像を比較する。繰り返し実験を実施する。これらの繰り返し実験では、CART細胞の14日後にマウスを安楽死させる。脳組織は、マルチプレックスアッセイによるサイトカイン、単球、ヒトT細胞の存在、ならびにIHC、フロー、および顕微鏡による血液脳関門の完全性について分析される。
【0271】
実施例16
抗hGM-CSF中和抗体は、CAR-T細胞関連神経毒性(NT)における神経炎症を低減する
GM-CSFがCAR-T細胞療法の開始後に見られるサイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性(NT)、および炎症カスケードの開始に不可欠であることを示す広範な科学的根拠がある。研究された仮説は、中和抗体(レンジルマブ)で可溶性GM-CSFを遮断することにより、CAR-T細胞療法で観察されるCRSおよびNTの両方の発症および重症度が無効化されるか、または予防されるというものである。重要なことに、CAR-T細胞の活性は保存されるか、または可能であれば改善される必要がある。実験設計は、CAR-T細胞エフェクター機能、腫瘍異種移植モデルにおけるCAR-Tの有効性、CRS異種移植モデルにおけるCRSの発達、ならびにMRIイメージングおよび容量分析を使用してCAR-T細胞療法で見られる神経炎症を定量化するNTの発達に対する、抗GM-CSF抗体(レンジルマブ)によるGM-CSF遮断の効果を試験する。ヒトPBMCの存在下および不在下の両方でCAR-T+/-レンジルマブを用いたインビトロおよびインビボ実験を検討した。(実施例9および10、図19および20a~20bを参照されたい)。
【0272】
方法
GM-CSF中和抗体レンジルマブとヒトCD19+ CAR-T細胞との組み合わせを、ヒトPBMCの存在下または不在下で、抗原特異的殺傷、脱顆粒、増殖、および消耗について評価するために、インビトロ研究が行われた。
【0273】
CAR-T細胞の増殖および有効性に対する抗GM-CSF抗体(レンジルマブ)の影響を評価するために、続いて、以下のモデル(マウスGM-CSF遮断あり/なし)を使用して、インビボ研究を行った:
【0274】
エフェクター/標的対照実験:CD19陽性細胞株(NALM6)を移植した異種移植片、ヒトPBMCの不在下で抗GM-CSF抗体(レンジルマブ)を伴うまたは伴わないCART19で処置。
抗GM-CSF抗体(レンジルマブ)10mg/kgを、CAR-T細胞移植の直前およびその後同じ用量で毎日10日間、NSGマウスにi.p.投与した後、腫瘍応答および生存を評価した。後眼窩出血を、CAR-T細胞療法の1週間後から開始し、その後毎週得た。疾患の負荷、T細胞拡大速度、消耗マーカーの発現、およびサイトカインレベル(30プレックス)も分析した。実験の完了時に、脾臓および骨髄を採取し、腫瘍の特徴およびCAR-T細胞数を分析した。
【0275】
CRS/NT実験:原発性ALLの患者由来異種移植片、その後、ヒトPBMCの存在下でレンジルマブを伴うまたは伴わないCART19で処置:
CAR-T誘導CRSおよびNTの発症および重症度の無効化または予防に対するレンジルマブの影響を評価するために、レンジルマブを伴うまたは伴わないCART19で処置された原発性ALL患者由来異種移植片を使用して、PBMCの存在下で、CRSモデル(高用量のCAR-T細胞を使用してCRSを不法化した)においてヒトCAR-T細胞(マウスGM-CSF遮断ありおよびなし)を用いてインビボ研究を行った。レンジルマブ10mg/kgを、CAR-T細胞移植の直前およびその後10日間毎日、NSGマウスにi.p.投与した。腫瘍応答、生存、CRS、およびNTの症状についてマウスを追跡した。脳MRIスキャンをベースライン、CAR-T細胞療法中および終了時に実施し、容量分析を行って、治療群全体の神経炎症およびMRI T2 FLAIRを評価および定量化した。体重および後眼窩出血を、ベースライン、CAR-T細胞療法の2日後、1週間後、およびその後毎週得た。疾患の負荷、T細胞拡大速度、消耗マーカーの発現、およびサイトカインレベル(30プレックス)を分析した。実験の完了時に、脾臓および骨髄を採取し、腫瘍の特徴およびCAR-T細胞数を分析した。
【0276】
結果:
インビトロモデル
この実験では、CAR-T細胞のエフェクター機能に対するレンジルマブによるGM-CSF中和の影響を調査した。GM-CSFは非常に高レベル(1,500pg/mlを超える)でCAR-T細胞によって分泌され、レンジルマブの使用によりGM-CSFが完全に中和されるが、CAR-Tの脱顆粒、細胞内GM-CSF産生、またはIL2生産を阻害しなかったことを示した。さらに、レンジルマブは、CAR-T抗原特異的増殖またはCAR-T殺傷を阻害しなかった。エフェクター対標的比(E:T)は、CAR-T+レンジルマブ対CAR-T+対照抗体で類似した(p=ns)(図16a~16dおよび16j)。
【0277】
インビボモデル:
エフェクター/標的対照実験:
インビボでのCART19細胞機能に対するレンジルマブの効果を研究するために、ヒトPBMCの不在下で免疫低下状態のNOD-SCID-g-/-にCD19+ALL細胞株NALM6を移植した。レンジルマブと組み合わせたCART19による治療は、これらのマウスのGM-CSFレベルが完全に中和されているにもかかわらず、対照抗体を伴うCART19と同様に、強力な抗腫瘍活性および全体的な生存の改善をもたらし、PBMCの不在下で、GM-CSFがインビボでのCAR-T細胞活性を損なわないことを示す(図16fおよび16g)。
【0278】
CRSおよびNT実験:
ヒトALL芽球、ヒトCD19 CAR-T、およびヒトPBMCを使用して、CAR-T細胞療法と組み合わせたレンジルマブが、定量的MRI T2 FLAIRにより評価されたCAR-T単独と比較して、神経炎症を約90%低減することがわかった。これは画期的な発見であり、CAR-T細胞療法によって引き起こされた神経炎症が効果的に無効化され得ることがインビボで示されたのは初めてである。著しく増加した炎症を示した対照抗体+CAR-T細胞療法後のMRI画像とは際立って対照的に、レンジルマブ+CAR-T細胞療法後のMRI画像は、ベースライン前処置スキャンと類似した。さらに、骨髄細胞の減少は、CAR-Tおよび対照抗体で処置されたマウスと比較して、レンジルマブ+CAR-Tで処置されたマウスの脳で見られた。この発見は、重篤なグレード>3の神経毒性を有する患者のCSFで骨髄細胞の増加が観察された、CD19 CAR-T細胞療法を用いた臨床試験で報告されたデータと一致する。加えて、CAR-T細胞療法と組み合わせたレンジルマブは、CAR-T+対照抗体と比較して、CRSの発症および重症度を低減することがわかった。この発見は、インビボで見られるCRSの最も客観的なマーカーおよび特徴的な症状である、CAR-T+対照で治療されたマウスに見られる体重の統計的に有意な低減により支持される。レンジルマブ+CAR-Tで処置されたマウスでは、体重は、CAR-T+対照と比較してベースラインレベルで維持された(p<0.05)。さらに、CAR-T+対照抗体で処置されたマウスは、丸まった姿勢、離脱症状、および脱力を含むCRSと一致する身体症状を示したが、CAR-T+レンジルマブで治療したマウスは健康に見えた。重要なことに、レンジルマブ+CAR-Tは、PBMCを含んだこれらのCRS/NT実験において、CAR-T+対照と比較して、CAR-T細胞の増殖が有意に5倍増加することも示す。これは、CAR-Tの増殖または拡大の改善が有効性の改善(ORR、CRを含む)と相関する様々なCD19 CAR-T細胞療法を用いた臨床試験で以前に示されており、レンジルマブが抗腫瘍応答を潜在的に改善し得ることを示唆する。この発見は一部、GM-CSFによって広まることが知られているMDSC拡大および輸送の減少によって説明され得る。最後に、CAR-Tおよび対照抗体と比較して、レンジルマブ+CAR-Tの組み合わせは、フローサイトメトリーによって定量化されるとき、有意に良好な白血病性制御をもたらす。未処置のマウス(500,000~1.5Mの白血病性細胞を有した)およびCAR-T+対照抗体(15,000~100,000の白血病性細胞を有した)と比較して、CAR-T+レンジルマブによる処置は、白血病性細胞の数を大幅に低減させ(500~5,000細胞に減少)、全体的な疾患制御が改善された(図25A~25Dを参照されたい)。
【0279】
図25AのMRI画像は、本明細書に記載される実施形態による、CAR-T細胞および抗GM-CSF中和抗体を投与されたマウスの脳における神経毒性(NT)(神経炎症)の明らかな改善を示す。対照的に、CAR-T細胞および対照抗体を投与されたマウスの脳は、MRI画像において神経毒性の徴候を示した。図25Bは、群2のマウスにおいて増加したNTと比較して、群1のマウスにおいてNTが90%低減したことをグラフで示す。本明細書に記載される実施形態によるCAR-T細胞および抗GM-CSF中和抗体の投与後の定量的改善の程度(NTの90%低減)は、予想外の発見であった。
【0280】
結論
抗GM-CSF抗体(レンジルマブ)は、CAR-T細胞療法と組み合わせたとき、CRSおよびNTの発症および重症度を予防する可能性を示し、一方でヒトALL芽球、ヒトCD19 CAR-T、およびヒトPBMCを使用してCAR-Tの拡大/増殖およびインビボでの全体的な白血病性制御を改善する。CAR-T誘導神経毒性がインビボで無効化され得ることが示されたのはこれが初めてである。CAR-T細胞療法を組み合わせたレンジルマブを用いた主要な臨床試験を計画して、安全性および有効性の改善に関するこれらの発見を検証する。
【0281】
実施例17
キメラ抗原受容体T細胞療法中のGM-CSF遮断は、サイトカイン放出症候群および神経毒性を低減し、それらのエフェクター機能を増強し得る
その有効性にもかかわらず、キメラ抗原受容体T細胞療法(CART)は、サイトカイン放出症候群(CRS)および神経毒性(NT)の発達によって制限される。CRSはサイトカインの極端な上昇および大幅なT細胞拡大に関連しているが、NTの正確な機構はまだ解明されていない。予備研究では、NTは血液脳関門を横断する骨髄細胞によって媒介され得ることが示唆されている。これは、重度のNTを発達させた患者の脳脊髄液でCD14+細胞数が増加したCART19主要試験からの相関分析によって支持される(Locke et al,ASH 2017)。したがって、この研究の目的は、単球制御を介したCART細胞療法後のCRSおよびNTの予防におけるGM-CSF中和の役割を調査することであった。
【0282】
最初に、CART細胞のエフェクター機能に対するGM-CSF遮断の効果を調査した。ここでは、第II相臨床試験で安全であることが示されているヒトGM-CSF中和抗体(レンジルマブ、Humanigen,Burlingame,California)を使用した。レンジルマブ(10ug/kg)は、CART19細胞がCD19+ルシフェラーゼ+急性リンパ芽球性白血病(ALL)細胞株NALM6で刺激されるときにGM-CSFを中和するが、インビボでのCART細胞の機能を損なわない。悪性腫瘍関連マクロファージがCARTの増殖を低減することがわかった。レンジルマブによるGM-CSFの中和は、単球の存在下でCART細胞抗原特異的増殖の増強をもたらす。これをインビボで確認するために、NOD-SCID-g-/-マウスに高い疾患負荷のNALM6を移植し、レンジルマブまたはアイソタイプ対照抗体と組み合わせて、低用量のCART19または対照T細胞(腫瘍の再発を誘導するため)で処置した。CART19およびレンジルマブの組み合わせは、対照T細胞と比較して有意な抗腫瘍活性および全体的な生存利益をもたらし(図26A)、アイソタイプ対照抗体と組み合わせたCART19で処置されたマウスと類似し、GM-CSFの中和がインビボでのCART細胞活性を損なわないことを示す。この抗腫瘍活性は、ALL患者由来の異種移植モデルにおいて検証された。
【0283】
次に、新規患者由来の異種移植モデルにおいて、CART細胞関連毒性に対するGM-CSF中和の影響を調査した。ここでは、NOD-SCID-g-/-マウスに、ALL再発リスクの高い患者に由来する白血病芽球(1~3x106細胞)を移植した。次に、マウスを高用量のCART19細胞(静脈内に2~5x106)で処置した。CART19処置の5日後、マウスは、循環ヒトサイトカインレベルの大幅な上昇と相関する進行性の運動脱力、体の丸まり、および体重減少を発達させ始めた。この症候群中の脳の磁気共鳴イメージング(MRI)は、CART細胞およびマウス活性化骨髄細胞の中枢神経系(CNS)浸潤と関連するびまん性亢進および浮腫を示した。これは、重度のNT患者のCART19臨床試験で報告されたものと類似する。CART19、レンジルマブ(ヒトGM-CSを中和するため)、およびマウスGM-CSF遮断抗体(マウスGM-CSFを中和するため)の組み合わせにより、体重減少が予防され(図26B)、重要な骨髄性サイトカインが減少し(図26C~26D)、脳浮腫が低減され(図26E)、脳の白血病制御が増強され(図26F)、脳マクロファージが低減した(図26G)。
【0284】
最後に、CART細胞製造のプロセス中にCRISPR/Cas9遺伝子編集を介してGM-CSFを破壊することにより、GM-CSFの分泌が低減した機能的CART細胞がもたらされるであろうという仮説を立てた。GM-CSF遺伝子のエクソン3を標的とするガイドRNAを設計し、GM-CSFk/o CART19細胞を生成した。予備データは、これらのCARTが活性化時に著しく少ないGM-CSFを産生するが、他のサイトカインを同様に産生し続け、インビトロで正常なエフェクター機能を示すことを示唆する(図26H)。上述のNALM6高腫瘍負荷再発異種移植モデルを使用して、GM-CSFk/o CART19細胞は、CART19細胞と比較してわずかに増強された疾患制御をもたらした(図26I)。
【0285】
したがって、GM-CSF遮断を介した骨髄細胞の挙動の調節は、CART媒介毒性の制御に役立ち得、それらの免疫抑制の特徴を低減して、白血病性制御を改善し得る。これらの研究は、潜在的にCART細胞機能も増強するGM-CSFの中和を介してNTおよびCRSを無効化する新しいアプローチを明らかにする。これらの結果に基づいて、第II相臨床試験は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者においてCART関連毒性を予防するためのモダリティとしてレンジルマブを使用して設計された。
【0286】
前述の発明は、理解を明確にする目的のために例証および例としてある程度詳細に説明されてきたが、本発明の教示に照らして、ある特定の変更および修正が添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなくそれに対してなされてもよいことは、当業者には容易に明らかであろう。
【0287】
本明細書で引用されるすべての刊行物、受入番号、特許、および特許出願は、それぞれが具体的かつ個々に参照により組み込まれることが示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。

本発明の抗GM-CSF抗体の例示的なV領域配列:
配列番号:1(VH#1、図1
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCVRRDRFPYYFDYWGQGTLVTVSS
配列番号:2(VH#2、図1
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYSFTNYYIHWVRQAPGQRLEWMGWINAGNGNTKYSQKFQGRVAITRDTSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCARRDRFPYYFDYWGQGTLVTVSS
配列番号:3(VH#3、図1
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYSFTNYYIHWVRQAPGQRLEWMGWINAGNGNTKYSQKFQGRVAITRDTSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCARRQRFPYYFDYWGQGTLVTVSS
配列番号4(VH#4、図1
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYSFTNYYIHWVRQAPGQRLEWMGWINAGNGNTKYSQKFQGRVAITRDTSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCVRRQRFPYYFDYWGQGTLVTVSS
配列番号5(VH#5、図1
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYSFTNYYIHWVRQAPGQRLEWMGWINAGNGNTKYSQKFQGRVTITRDTSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCVRRQRFPYYFDYWGQGTLVTVSS
本発明の抗GM-CSF抗体の例示的なV領域配列:
配列番号6(VK#1、図1
EIVLTQSPATLSVSPGERATLSCRASQSVGTNVAWYQQKPGQAPRVLIYSTSSRATGITDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQFNRSPLTFGGGTKVEIK
配列番号7(VK#2、図1
EIVLTQSPATLSVSPGERATLSCRASQSVGTNVAWYQQKPGQAPRVLIYSTSSRATGITDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQFNKSPLTFGGGTKVEIK
配列番号8(VK#3、図1
EIVLTQSPATLSVSPGERATLSCRASQSIGSNLAWYQQKPGQAPRVLIYSTSSRATGITDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQFNRSPLTFGGGTKVEIK
配列番号9(VK#4、図1
EIVLTQSPATLSVSPGERATLSCRASQSIGSNLAWYQQKPGQAPRVLIYSTSSRATGITDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQFNKSPLTFGGGTKVEIK
配列番号10 例示的なカッパ定常領域
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号11 例示的な重鎖定常領域、f-アロタイプ:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15a-15b】
図15c-15g】
図16a-16d】
図16e-16j】
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図19
図20A
図20B
図21
図22
図23A
図23B
図24
図25A
図25B
図25C
図25D
図26A
図26B
図26C
図26D
図26E
図26F
図26G
図26H
図26I
【配列表】
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