IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイションの特許一覧

<>
  • 特許-縫合技術外科訓練モデル 図1
  • 特許-縫合技術外科訓練モデル 図2
  • 特許-縫合技術外科訓練モデル 図3
  • 特許-縫合技術外科訓練モデル 図4
  • 特許-縫合技術外科訓練モデル 図5
  • 特許-縫合技術外科訓練モデル 図6
  • 特許-縫合技術外科訓練モデル 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】縫合技術外科訓練モデル
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/28 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
G09B23/28
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020526529
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 US2018061275
(87)【国際公開番号】W WO2019099665
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-11-09
(31)【優先権主張番号】62/586,369
(32)【優先日】2017-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【弁理士】
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ホフステッター グレゴリー ケイ
(72)【発明者】
【氏名】カーター ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】レイガン オスカー
【審査官】竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/011436(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0087347(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0030682(US,A1)
【文献】特表2015-532451(JP,A)
【文献】国際公開第2016/069327(WO,A1)
【文献】特開2016-188879(JP,A)
【文献】SimPad,Sim Pad,2016年10月29日,https://web.archive.org/web/20161029112342/http://sim-vivo.com/simpad.html,検索日:2022年06月24日
【文献】SIM SUTURE - 4. The Instrument Tie,YouTube[online][video],2011年07月03日,<URL:https://www.youtube.com/watch?v=wbpQhiNDxvo>,主に0:39~1:04を参照,[2022年7月21日検索]
【文献】SIM SUTURE - 6. The Vertical Mattress Suture,YouTube[online][video],2011年07月03日,<https://www.youtube.com/watch?v=UV-j1zxckXA>,主に0:19~3:10を参照,[2022年7月21日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 5/00-7/12
G09B 23/28-23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫合技術を訓練するための外科訓練モデルであって、
縫合パッドを定める模擬組織材料のシートを備え、該模擬組織材料のシートは、
第1の模擬組織材料層と、
複数のマーキングと、
前記第1の模擬組織材料層の上部で硬化された第2の模擬組織材料層と、
前記模擬組織材料のシートに形成された少なくとも1つの切断部と、
を含み、
前記複数のマーキングは、前記模擬組織材料のシートが延在する方向において前記少なくとも1つの切断部の両側に配置され、かつ前記第1の模擬組織材料層と前記第2の模擬組織材料層との間に配置され、
前記第2の模擬組織材料層は、該第2の模擬組織材料層を通して前記複数のマーキングが見えるように透明又は半透明である、
ことを特徴とする外科訓練モデル。
【請求項2】
前記第1の模擬組織材料層及び前記第2の模擬組織材料層は第1の色を有し、前記複数のマーキングは第2の色を有し、前記第の色は前記第の色に対して暗い
請求項1に記載の外科訓練モデル。
【請求項3】
前記第1の模擬組織材料層及び前記第2の模擬組織材料層は肌色で形成され、前記複数のマーキングは、前記肌色に対して暗い色で形成される、
請求項2に記載の外科訓練モデル。
【請求項4】
前記模擬組織材料のシートに埋め込まれたファブリック層をさらに備える、
請求項1に記載の外科訓練モデル。
【請求項5】
前記複数のマーキングは、複数の円形ドットを含む、
請求項1に記載の外科訓練モデル。
【請求項6】
前記模擬組織材料のシートは、シリコーン材料を含む、
請求項1に記載の外科訓練モデル。
【請求項7】
前記第2の模擬組織材料層はテクスチャ加工される、
請求項1に記載の外科訓練モデル。
【請求項8】
前記模擬組織材料のシートは、内部に複数のアパーチャがさらに形成され、前記複数のアパーチャは、ベースに取り付けられるように配置される、
請求項1に記載の外科訓練モデル。
【請求項9】
前記模擬組織材料のシートは矩形を有し、前記複数のアパーチャは、1つのアパーチャが前記矩形の各隅部に隣接して形成された4つのアパーチャを含む、
請求項に記載の外科訓練モデル。
【請求項10】
前記模擬組織材料のシートは、前記第1の模擬組織材料層及び前記第2の模擬組織材料層の両方を貫通する3つの異なる切断部を有し、前記3つの異なる切断部の各々は、両側に配置される各々のマーキングを有する、
請求項1に記載の外科訓練モデル。
【請求項11】
前記3つの異なる切断部の1又は2以上は、直線である、
請求項10に記載の外科訓練モデル。
【請求項12】
前記3つの異なる切断部の1又は2以上は、曲線である、
請求項10に記載の外科訓練モデル。
【請求項13】
前記少なくとも1つの切断部の両側に配置された前記複数のマーキングの各々は、隣接するマーキングから約5mmであり、前記少なくとも1つの切断部から5mm離れている、
請求項1に記載の外科訓練モデル。
【請求項14】
前記模擬組織材料のシートの厚みは、実質的に均一であり、該厚みは、5mmである、
請求項1に記載の外科訓練モデル。
【請求項15】
前記模擬組織材料のシートは、低デュロメータを有する材料で形成される、
請求項1に記載の外科訓練モデル。
【請求項16】
前記第1の模擬組織材料層と前記第2の模擬組織材料層との間に埋め込まれた前記模擬組織材料のシートを補強するように構成された第3の層をさらに含み、前記第3の層は、ファブリック、メッシュ、又は繊維を含む、
請求項1に記載の外科訓練モデル。
【請求項17】
前記複数のマーキングは、前記第2の模擬組織材料層と前記第1の模擬組織材料層との間に配置された前記ファブリック層にインクで描いたもの、型打ちしたもの、又は印刷したものである、
請求項4に記載の外科訓練モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2017年11月15日に出願された「縫合技術外科訓練モデル(Suturing Skills Surgical Training Model)」という名称の米国仮特許出願第62/586,369号に対する優先権及びその利益を主張するものであり、この文献はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本出願は、一般に外科訓練ツールに関し、具体的には、限定するわけではないが、腹腔鏡、内視鏡及び低侵襲手術に関連する様々な外科手術及び処置の指導及び練習のための模擬組織構造及びモデルに関する。
【背景技術】
【0003】
医学生及び新たな外科手術を学ぶ熟練医師は、人間の患者に手術を行う資格を有する前に幅広い訓練を受けなければならない。この訓練では、様々な医療装置を使用して様々な組織タイプの切断、穿通、締め付け、把持、ステープリング、焼灼及び縫合を行う正しい技法を学ばなければならない。訓練生が遭遇し得る可能性の幅は広い。例えば、器官、並びに患者の生体構造及び疾病は、異なるものが提示される。様々な組織層の厚み及び一貫性も身体部位毎及び患者毎に異なる。異なる処置には異なる技能が必要である。さらに、訓練生は、患者の体格及び状態、標的組織のタイプ及び隣接する解剖学的景観、並びにこれらの組織に容易にアクセス可能であるか、それとも比較的アクセスが困難であるか、などの要因によって影響される様々な解剖学的環境で技術を磨かなければならない。
【0004】
低侵襲手術は、観血手術とは異なる性質の技能の習得を必要とする。技能の中には、伝達可能なもの(両手の器用さ(bimanual dexterity)、安定性など)もあれば、計画的な練習及び訓練を通じて獲得しなければならないものもある。これらには、組織処理、針操作、糸結びなどの基本精神運動技能(basic psychomotor skills)が含まれる。外科医が低侵襲診療に転向するためには、このような精神運動技能が必要である。外科訓練生は、これらの精神運動技能の熟練度を手術室での実践に応用する前に実演してみせることが必須である。このようなわけで、外科的シミュレーション訓練機及びシミュレーションモデルが、低侵襲外科技術の発展及び微調整のための有益で安全で効果的な手段を提供する。
【0005】
1又は2以上の外科訓練面のために、数多くの補助教材、訓練機、シミュレータ及びモデル器官を利用することができる。一方で、内視鏡外科手術、腹腔鏡外科手術、低侵襲外科手術及び経腔的外科手術の練習に使用できる、遭遇する可能性の高いモデル器官又は模擬組織要素が必要とされている。腹腔鏡又は低侵襲手術では、5~10mmほどの短さの小切開部を形成し、ここを通じてトロカール又はカニューレを挿入して体腔にアクセスし、腹腔鏡などのカメラを挿入するためのチャネルを形成する。カメラは、画像を取り込んだライブ配信動画を提供し、これらの画像が1又は2以上のモニタ上で外科医に表示される。別のトロカール/カニューレを挿入する少なくとも1つのさらなる小切開部を形成して経路を形成し、ここを通じて手術器具を通して、モニタ上で観察される処置を実行することができる。通常は、二酸化炭素ガスを送出することによって腹部などの標的組織部位を広げて体腔に吹き入れ、外科医が使用するスコープ及び器具を安全に収容できるほど十分に広い作業空間を形成する。組織空洞内の送気圧は、特殊なトロカールを使用することによって維持される。腹腔鏡手術には、開腹手術と比べると多くの利点がある。これらの利点としては、切開部が小さくなることによって痛みが少なく、出血が少なく、回復期間が短かいことが挙げられる。
【0006】
腹腔鏡又は内視鏡による低侵襲手術では、臨床医が直接標的組織を観察しないので、開腹術と比べて高い技能レベルが求められる。標的組織は、小開口部を通じてアクセスされた手術部位の一部を表示するモニタ上で観察される。従って、臨床医は、2次元観察面における組織平面、3次元的奥行き知覚の視覚的判断、手作業による器具の移動、縫合、正確な切断、並びに組織及び器具の操作を練習する必要がある。通常、特定の生体構造又は処置をシミュレートするモデルは、開業医による直接可視化から解剖学的モデルを隠す模擬骨盤訓練機内に配置される。模擬骨盤訓練機は、把持、操作、切断、糸結び、縫合、ステープリング、焼灼、及びこれらの基本的技能を利用する特殊な外科的処置の実行方法などの、腹腔鏡手術において使用される外科医及び研修医の基本的技能及び典型的技術を訓練するための機能的で安価で実用的な手段を提供する。模擬骨盤訓練機は、これらの腹腔鏡手術を実行するために必要な医療装置を実演するのに効果的な販売ツールでもある。
【0007】
腹腔鏡又は低侵襲手術における上述したような練習を必要とする技術の1つは、切断及び縫合である。体内での縫合及び糸結びには、高度な正確さ及び強力な手先の器用さが要求される。このような技術は、低侵襲法を追求することに関心がある全ての外科医がマスターしなければならない。これまで、ボックス訓練機縫合モデルを介して習得された縫合技術が手術室に転用されることが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第14/037,005号明細書
【文献】米国特許第8,764,452号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
学習者が腹腔鏡下縫合中に直面する主要課題としては、精神運動制御、視空間的配向(visuospatial orientation)、糸結び、組織処理、針操作、針の位置決め、針挿入、並びに縫合強度及び安全性の評価が挙げられる。これらの課題を踏まえると、切断及び縫合の練習モデルを求めるニーズが存在する。特定の生体構造をシミュレートするだけでなく、特定の手術ステップ又は段階における生体構造を提示する、或いは訓練生が模擬腹腔鏡環境で練習を行えるように特定の手術ステップを分離するモデルを有することも望ましい。その後、このモデルを、直接的な視覚化からモデルを少なくとも部分的に隠す腹腔鏡訓練機などの模擬腹腔鏡環境内に配置する。実際の手術のように、カメラ及びモニタが開業医に視覚化をもたらす。技術の練習後には、このようなモデルが、容易で、素早い、低コストな反復練習を可能にすることがさらに望ましい。以上を勘案し、本発明の目的は、生体構造リアルにシミュレートし、このような生体構造を分離し、特定の手術ステップ又は段階におけるこのような生体構造を提示して反復練習も可能にする外科訓練装置を提供することである。シミュレーション訓練機の使用は、新任腹腔鏡検査者の技能レベルを大いに高め、非外科的設定において将来の外科医を訓練するのに最適なツールであることが実証されている。このような改善されたリアルで効果的な外科訓練モデルが必要とされている。腹腔鏡下縫合は、腹腔内の組織及び器官内に形成された裂傷、切開部又は切断部を密封する方法である。縫合は、実行される外科手術に応じて様々な解剖学的構造に対して行うことができる。腹腔鏡検査、特に腹腔鏡下縫合は、技能の習得及び練習を可能にするモデルが必要とされている外科技能である。この訓練は、外科医又は外科研修医が組織反応の触覚フィードバックを得ることができる物理的モデル上で行われることが必要である。この触覚フィードバックは、訓練生が縫合中の組織に加えるべき適切な力レベルを習得するために重要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
いくつかの実施形態では、縫合技術を訓練するための外科訓練モデルを提供する。このモデルは、縫合パッドを定める模擬組織材料のシートを含む。このシートは、第1の模擬組織材料層と、第2の模擬組織材料層と、少なくとも1つの切断部とを含む。第1の模擬組織材料層は、複数のマーキングによって定められる。第2の模擬組織材料層は、第1の模擬組織材料層に対して硬化する。少なくとも1つの切断部は、模擬組織材料のシート内に形成される。第1の層のマーキングは、少なくとも1つの切断部の両側に配置される。
【0011】
いくつかの実施形態では、縫合技術を訓練するための外科訓練モデルを提供する。この外科訓練モデルは、縫合パッドを定める模擬組織材料のシートを含む。このシートは、間に厚みを定める上面及び下面を有する。シートは、第1の切断部と、第1の複数のマーキングと、第2の切断部と、第2の複数のマーキングと、第3の切断部と、第3の複数のマーキングとを含む。第1の切断部は、模擬組織材料のシートを上面から下面まで貫通する。第1の複数のマーキングは、第1の切断部の両側に配置される。第2の切断部は、模擬組織材料のシートを上面から下面まで貫通する。第2の複数のマーキングは、第2の切断部の両側に配置される。第3の切断部は、模擬組織材料のシートを上面から下面まで貫通する。第3の複数のマーキングは、第3の切断部の両側に配置される。
【0012】
いくつかの実施形態では、縫合技術を訓練するための外科訓練モデルを製造する方法を提供する。この方法は、金型を準備するステップと、マーキング金型を準備するステップと、マーキング金型にウェットシリコーンを適用するステップと、マーキング金型を配置するステップと、ウェットシリコーンを鋳造するステップとを含む。金型は、外科訓練モデルに対応するようなサイズ及び形状のウェルを含む。マーキング金型は、金型のウェルの内部に収まるようなサイズを有する。マーキング金型の内部には、複数の穴が形成される。マーキング金型へのウェットシリコーンの適用中、ウェットシリコーンはマーキング金型の穴に入り込む。マーキング金型の配置中、マーキング金型は金型のウェル内に配置される。ウェットシリコーンの鋳造中、ウェットシリコーンは、金型内に配置されたマーキング金型を覆って鋳造される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ベースの支柱に取り付けられた縫合パッドの実施形態の上面部分的透視図である。
図2図1の縫合パッドの上面図である。
図3】縫合パッド金型の上面斜視図である。
図4】マーキング金型の上面斜視図である。
図5図3の金型のウェル内のマーキング金型の上面斜視図である。
図6】縫合糸を含む縫合パッドの上面斜視図である。
図7】縫合糸を含む縫合パッドの上面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図2に、縫合パッド10の実施形態を示す。図示の実施形態では、縫合パッド10が、間に厚みを定める上面12及び下面14を有する模擬組織材料のシートである。この厚みは、パッド全体にわたって実質的に均一であり、約5ミリメートルである。パッド10の厚み及び特性は、熟練した腹腔鏡下縫合による組織再接合(tissue re-approximation)をシミュレートすることが理想的である。縫合パッド10は、1つの変形例では図2に示すような矩形を定める周縁部18を有する。周縁部の形状は、あらゆる好適な形状とすることができる。縫合パッド10は、シリコーン、低デュロメータシリコーン、或いはKRATON(登録商標)又は熱可塑性エラストマなどの他の好適なポリマー材料で形成される。低デュロメータは、縫合パッド10が軟組織をシミュレートする触覚フィードバックを有することを可能にする。材料は、手術室で遭遇し得る生きた組織の弾力性、針抵抗及び取扱適性(handling characteristics)をシミュレートするように選択される。材料は、他のゴム状材料、又は軟質デュロメータを有する熱硬化プラスチック材料とすることもできる。
【0015】
1つの変形例では、縫合パッド10が、パッドの厚み内に埋め込まれたファブリック又はメッシュの層を含む。ファブリック又はメッシュは、ストレッチナイロン、スパンデックス、又はストレッチナイロン/スパンデックス混合メッシュ又はファブリックなどの2方向又は4方向ストレッチ材料であることが好ましい。ファブリック又はメッシュ材料は、伸縮自在であり、多孔性であり、1平方ヤード当たり約79グラムの重さである。縫合パッド10は、メッシュ又はファブリック材料に加えて又はその代わりに、補強材、繊維、染料及び表面テクスチャリングを含むこともできる。図2の上面及び下面12、14は滑らかであり、表面テクスチャリングを含んでいない。縫合パッド10は柔軟であり、伸びることができる。メッシュ、ファブリック、繊維又は他のフィラー材料は、シートが縫合糸を保持できるように、或いは操作時又はベースへの接続時に裂けずに伸張できるように、シリコーンに補強をもたらす。ユーザを組織技術に関して訓練するために、メッシュ、ファブリック、繊維又はその他のフィラー材料を省いて、弾力性が低く、損傷しやすく、操作時に裂けやすいパッドを形成し、これによって練習の難易度を高めることもできる。
【0016】
縫合パッド10は、少なくとも1つの切断部(cut)20を含む。切断部20は、縫合パッド10に形成された模擬裂傷である。図2では、縫合パッド10内に3つの切断部20a、20b、20cを示す。通常、切断部20は、パッド10の厚みを横切って上面12から下面14まで延びる。1又は2以上の切断部には、厚み全体にわたって延びていない部分的切断部20を採用することもできる。切断部20は、あらゆる形状とすることができる。例えば、切断部20は、直線又は曲線とすることができる。曲線は閉曲線又は開曲線とすることができ、複数の切断部20を組み合わせて採用して様々な難易度の縫合線又は様々な練習配向を定めることもできる。裂傷は、学習者が手術室で遭遇する様々な組織配向に自身のスキルセット(skillset)を適合できるように様々な配向で戦略的に配置される。図2の縫合パッド10は、様々な練習配向を提供するように互いに対して配向された2つの直線的な切断部20a、20bと1つの曲線的な切断部20cとを含む。2つの直線的な切断部20a、20bは、互いに垂直に示しているが、本発明はこのように限定されるものではない。2つの切断部20は、 互いに対してあらゆる角度とすることも、特定の器官に関連する又は実際の手術で遭遇する実際の縫合線を模倣することも、或いは特定の技能の教示、利き手(hand dominance)の訓練、及び異なる縫合糸の通し方(suture run styles)の練習などを行うように設計することもできる。各切断部20は、上面及び下面12、14に対して実質的に垂直であり、互いに向き合う2つの逆向きに配置された内面を含む。
【0017】
切断部20の2つの内面は、接合時に近接して並置され、従ってユーザが切断部を区別することは困難となり得る。縫合パッド10は、ベースに取り付けられると伸張し、これによって切断部20が開き、縫合時に内面同士を接合するのに大きな力を必要とする広い空間を内面間に定めることができる。図2に示す変形例では、第1の切断部20aの長さが約4.0センチメートルであり、第2の切断部20bの長さが約3.5センチメートルであり、第3の切断部20cの長さが約4.0センチメートルである。図2は、縮尺通りに示したものではない。切断部20は予め形成され、1つの変形例では、ユーザが技能訓練演習の一部として切開部を形成できるように切断部20が予め形成されていない。縫合パッド10は、パッド10をベース上に取り付けるようなサイズ及び構成の予め形成された小アパーチャ22を周縁部付近にさらに含むことができる。図2の変形例は、矩形パッドの各隅部に4つのアパーチャ22を含む。
【0018】
縫合パッド10は、切断部20の両側に配置された複数のマーキング24をさらに含む。マーキング24は、切断部20の長さに沿った一方の側の第1の列26、及び切断部20の長さに沿った反対側の第2の列28で配置される。マーキング24の第1の列26は、マーキング24の第2の列28の正反対に存在する。各列のマーキング24は、互いに等間隔を空ける。具体的に言えば、各マーキング24は、互いに約5ミリメートルだけ離間する。同じ列の各マーキングの中心間距離は、約5ミリメートルである。2つの列26、28間の裂傷を横切る距離は、約10ミリメートルである。各列は、裂傷から約5ミリメートル離れている。図2で分かるように、曲線形状を有する切断部20の場合、曲線の内側マーキング24は、必然的に曲線の外側のマーキング24に比べて互いに間隔が狭くなる。裂傷に沿ったマーキング24の数は様々であり、切断部20の長さに依存する。例えば、約4ミリメートルの長さを有する切断部20は、9回の縫合糸通し(結び目を含めて10回)のための10個のマーキングを各列に有し、従って全部で20個のマーキング24を有する。約3.5ミリメートルの長さを有する切断部20は、8回の縫合糸通し(結び目を含めて9回)のための9個のマーキングを各列に有し、従って全部で18個のマーキング24を有する。結び目、及び切断部20の端部のマーキング24を含む最後に通される縫合糸は、裂傷の長さをわずかに越えて延びる。マーキングドット(marking dots)は、エンドユーザが針を刺し込むべき正確な目標としての役割を果たす。各マーキングペア間の距離は、縫合糸通しを行うべき標準距離と、切開部を閉じる縫合糸の咬み合い(suture bite)間の標準距離とをもたらす。
【0019】
1つの変形例では、マーキング24が、約1/16インチの直径を有する小さな円形ドットである。マーキング24は、円形形状を有することに限定されるものではない。例えば、マーキング24は、X字形、黒丸、白丸、四角形、星形、又は切断部の長さ及びサイズのための目標をかなりの精度で伝える他のいずれかの形状とすることができる。マーキング24は、パッド10の色との可視的対照性をユーザに示す暗色又はいずれかの好適な色である。マーキングは、予め形成された切開部を含む縫合パッド10のシリコーン部分との間に高い色対照性(color contrast)をもたらす色を有する。縫合パッド10の各部分間の色対照性は、明るい肌色の矩形フットプリントに対する黒色ドットペアである。
【0020】
マーキング24は、あらゆる数の好適な方法でパッド10に適用することができる。例えば、マーキング24は、インクで描いたもの、型打ちしたもの、及び印刷したものなどとすることができる。マーキング24は、上面12又は上面の直下に可視的に適用することができる。例えば、マーキングは、最終シリコーン層を成型する前に埋め込み織物層又は中間シリコーン層上に印刷し、埋め込み先の透明又は半透明シリコーンを通して見えるようにすることができる。以下、マーキング24を適用する別の方法について説明する。
【0021】
図3に、金型30を示す。金型30は、所望のサイズ及び形状の縫合パッド10に対応するようなサイズ及び形状のウェル32を含む。図4に示すマーキング金型34を準備する。マーキング金型34は、マーキング金型34内に形成された複数の穴36を含む。穴36は、パッド10上に形成すべき所望のサイズ及び形状のマーキング24に対応するようなサイズ及び形状を有する。図5に示すように、マーキング金型34は、金型30のウェル32の内側に収まるようなサイズを有する。図5には、金型30のウェル32の内部に配置されたマーキング金型34を示す。このマーキング24を含む縫合パッド10の製造方法では、パッド10の色に対して暗い/対照的な色を有するウェットシリコーンをマーキング金型34に適用して、各穴36にウェットシリコーンが入り込むようにする。余分なウェットシリコーンを拭き取り、穴36の内部のシリコーンを硬化させる。次に、穴36の内部に硬化シリコーンを含むマーキング金型34を金型30のウェル32内に配置/入れ子状態にした後に、硬化した黒色シリコーンを含むマーキング金型に加えて及び/又はこれを覆って、パッド用の肌色ウェットシリコーンをウェル32に流し込んで硬化させる。パッド10の未硬化シリコーンは、硬化すると穴36の内部の硬化シリコーンに付着する。1つの変形例では、第1の肌色シリコーン層が硬化した後にメッシュ層又はマーキングを追加できるように、肌色層を金型の最上部まで満たさないようにする。メッシュ層/ファブリック層/補強層及び/又はマーキング層を追加した後に、第2の肌色シリコーン層を形成するさらなる肌色シリコーンを追加して、縫合パッドの厚みを完成させる。肌色層は、シリコーン同士の付着特性によって互いに付着し、従って間にメッシュ層を封入することができる。メッシュ層は、様々な力で引っ張られる様々な縫合糸を保持する補強部としての役割を果たす。第2のシリコーン層は、これを通してあらゆるマーキングが見えるように透明及び/又は半透明とすることができる。シリコーンが硬化した後に、マーキング24が付着したパッドを金型30から取り外す。マーキングを層に埋め込む場合、ファブリック層上に印刷する場合、又は第1のシリコーン層上に印刷する場合には、マーキング金型を使用しない。肌色シリコーン層は、シリコーンの付着特性によって黒色ドットに付着することができる。各黒色ドットペアの上部にシリコーン接着剤をさらに使用して、ドットと肌色層との間の付着をさらに補強することもできる。結果として得られるマーキング24は、上面12に対して盛り上がっている。全てのシリコーン層が硬化したら、切断ダイの中心に縫合パッド10を配置して、各ドットペアの中心に切開部を切り抜く。切開部の長さは様々とすることができる。1つの変形例では、それぞれ9回及び8回である複数回通された縫合糸を捕捉するために、これらの長さが少なくとも4.0cm及び3.5cmである。結び目に対応するために、各長さに合わせてさらに縫合糸を通すこともできる。
【0022】
マーキング24は、縫合糸を通す目標としての役割を果たし、学習者を裂傷の周囲の理想的な針挿入地点の方へ導くように意図される。ユーザは、縫合針及び縫合糸をマーキング24の中心に通すことによって裂傷の縫合を練習する。ユーザの技能の評価は、縫合針及び縫合糸がマーキングの中心を通過したか否かを観察することによって容易に行われる。従って、縫合パッド10は、ユーザが自身の縫合技術の習得、練習及び改善を行うためのツールを提供する。マーキング10は、ユーザの技能を容易に評価する手段としての役割も果たす。マーキングの配置は、目標精度に基づく縫合性能の反映的評価(reflective assessment)を可能にする。図6に、例示的な縫合糸42の配置を示す。図7には、縫合練習の終了後の縫合パッドを示す。図7で分かるように、目標マーキング24に的中した縫合糸もあればそうでないものもある。いくつかの縫合実習(suture practice exercises)では、約70cmの長さの典型的な2-O被膜バイクリル(ポリグラクチン)染色縫合糸(2-O coated vicryl(polyglactin)dyed suture)を使用し、縫合パッド10を用いた理想的な操作のために、この糸を裂傷の4倍の長さに切断することができる。他の実習では、本明細書で説明した縫合パッドと共に様々なタイプ及び長さの縫合糸及び針を利用することができる。ユーザは、単純な連続する縫合糸の通し方を採用して全ての3つの裂傷/配向全てに縫合を実行することができる。
【0023】
縫合パッド10の肌色部分はテクスチャ加工することができる。テクスチャ加工表面は、縫合パッド10の容易な把持及び操作を可能にする。さらに脆弱な組織に対する訓練をシミュレートするために、メッシュ層を除去することもできる。腹腔内組織と同様のリアルな触覚フィードバック反応を得るために、縫合パッド10の肌色部分に使用されるデュロメータは、低及び高の少なくとも2つの異なるシリコーンデュロメータの混合物で形成することができる。縫合を伴う特定の手術を訓練する場合には、縫合パッド10の矩形フットプリントを様々なサイズ又は形状に再形成することもできる。切開部20は、角度の付いた真っ直ぐな切開部を含むことができる。縫合パッドは、あらゆる数の切開部を含むことができる。切開部の長さは、4.0cm又は3.5cm未満とすることもできる。縫合パッド10の色は、肌色及び黒色に限定されるわけではない。しかしながら、目標24及び下にあるシリコーン層の色は、エンドユーザが各特徴を区別できるように互いにコントラスト差をもたらすべきである。
【0024】
別の変形例では、マーキング24が、上面12の上方で外向きに広がるのではなく縫合パッド10内に埋め込まれる。別の変形例では、マーキング24が、マーカーなどの異なるインク、或いはシリコーン顔料又はシリコーンインクで型打ちされる。1つの変形例では、マーキング24が、縫合パッド10内のいずれかの好適な目標形状を有する穴である。マーキング24のペア又は列は、例えば対応する幾何学的形状のペアのみに縫合糸を通すようにユーザに求めることによって訓練をさらに困難にするために、異なるように成形されたマーキングの組み合わせとすることもできる。縫合幅に特化した訓練を行うように設計された別の変形例では、ドットを切開部の両側に矩形特徴として表すこともできる。また、縫合パッド10の使用回数を増やすために、各ドットペア間の空間に対して連続縫合を行うこともできる。
【0025】
図1に示すように、通常、本発明の縫合パッド10はベース38に取り付けられる。ベース38は、縫合パッド10の底部支持体としての役割を果たすプラットフォームであり、ベース38及びパッド10がひっくり返らないようなサイズ及び構成を有する。プラットフォームは、金属又はプラスチックなどのいずれかの材料で形成される。ベース38は、ユーザによる操作中にその安定性を維持できるほどの十分な重さを有する。ベース38は、支柱40を含む。一般に、ベース38には4つの支柱40が接続される。各支柱38は細長い円筒形状であり、ベース38に接続された近位端と、ベース38から上向きに延びる遠位端とを有する。1つの変形例では、遠位端が、ユーザを傷つけないように尖ってはいないがベース38への取り付け用の縫合パッド10内の穴を貫通できるほど十分な鋭さの先端面で終端するテーパ付き部分を含む。各支柱40は、パッド10が支柱40の上下にスライドするのを防ぐためにパッド10の厚みを内部に受け取るように構成された、半径方向内向きに延びる少なくとも1つの円周方向ノッチを含む。例示的なベースは、2013年9月25日に出願された「腹腔鏡手術のための外科訓練モデル(Surgical training model for laparoscopic procedures)」という名称の米国特許出願公開第14/037,005号に記載されており、この文献はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0026】
縫合パッド10は、支柱34に接続されて、基本的にベースから一定距離だけ懸架される。図1に示すように、縫合パッド10は、わずかに引き伸ばされた緊張状態で支柱40間に取り付けられて支柱40に接続される。縫合パッド10の張力は、支柱40に角を付けることによって、或いは縫合パッド10の模擬組織部分沿いの互いに近い位置を引き伸ばして穿孔することによって調整することができる。ベース上に縫合パッド10を配置すると、組織配向のさらなる操作が可能になるという利点がある。縫合パッドにシリコーンを使用するとパッドが柔軟になり、ベース上に組み立てた時に、パッドを垂直位置又は水平位置、及びこれらの間のあらゆる角度に配向できるようになる。これによって縫合パッドの複数の平面ビューがもたらされ、この技能のための空間的に困難な訓練が可能になる。
【0027】
縫合パッド10は、単独で使用することも、或いはベース38に取り付けることもできる。いずれの場合にも、単独での又はベース38に取り付けられた縫合パッド10は、腹腔鏡環境における縫合練習のために外科訓練装置の内部に配置することができる。通常、外科訓練装置は、患者の腹部などの胴部を模倣するように構成される。外科訓練装置の例は、「ポータブル腹腔鏡訓練機(Portable Laparoscopic Trainer)」という名称の米国特許第8,764,452号に記載されており、この文献はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。外科訓練装置は、実質的にユーザから隠されて内部に縫合パッドを受け取るように構成された体腔を提供する。体腔及びその内部に配置された縫合パッドは、ユーザが腹腔鏡装置を使用して貫通させた訓練機内の組織シミュレーション領域を介してアクセスされる。外科訓練機は、外科手術を受ける患者のシミュレーションにおける様々な外科手術及びその関連器具の教示、練習及び実演にとって有用なツールである。手術器具は、組織シミュレーション領域、及び予め定められた頂部カバーのアパーチャを通じて体腔に挿入される。縫合パッド10は、訓練機にクリップで接続することができる。ベース38を使用する場合には、ベース及び訓練機の床面に取り付けられたフックアンドループタイプの締結材料(VELCRO(登録商標))のパッチを使用してベース38を保持することができる。ユーザには、内視鏡などのカメラを介した訓練機の体腔内の模擬的手術野のビューがビデオディスプレイモニタによって提供される。
【0028】
使用時には、ユーザが、ベース38に接続された支柱40に少なくとも1つの縫合パッド10を取り付ける。縫合パッド10が予め形成されたアパーチャ22を含む場合、縫合パッド10の取り付けは、各支柱34上にアパーチャ22を配置し、模擬組織部分36をスライドさせて、支柱34に形成された少なくとも1つのノッチ42のうちの1つの内部に静止させることを含む。縫合パッド10は、4つの支柱40全てに取り付けられる。これより少ない支柱を使用して縫合パッド10を懸架させることもできる。ノッチは、縫合パッド40の1つの側面又は少なくとも1つの隅部が他の隅部及び支柱に対して上側又は下側のノッチに取り付けられるように、縫合パッド10全体を傾斜させた取り付けを可能にするという利点を有する。縫合パッド10が予め形成されたアパーチャ22を含まない場合には、支柱40のテーパ状の遠位端を使用してパッド10のあらゆる箇所にアパーチャ22を貫通させることができる。従って、ユーザは、縫合パッド10を支柱40に取り付ける際に、縫合パッド10の張力を選択することができる。例えば、縫合パッド10にアパーチャ22を穿孔することによって縫合パッド10を取り付ける際には、縫合パッド10を別の支柱40に取り付けることなどのために少なくとも第2のアパーチャ22を穿孔する前に縫合パッド10を選択的に引き伸ばして、ユーザが望む通りに緊張させ又は緩めることができる。ファブリックで補強されたシリコーン材料は、アパーチャ22が広がるのを防ぐ。
【0029】
縫合パッド10は、腹腔鏡環境における訓練のための模擬的な縫合可能組織を提示するリアルなプラットフォームを提供する。臨床医は、切断及び縫合などの特定の技術を練習する際に、把持器、カッター、縫合針、縫合糸、腹腔鏡、内視鏡及び套管針などの特定の器具を使用する。支柱上に支持された縫合パッドがこのような器具に接触すると、模擬組織構造が力を受けることによって撓んで屈曲し、取り付け張力に応じて一定程度偏向する。この縫合パッドのダイナミズムは、実際の操作時に崩壊、移動及び屈曲を示すリアルな生きた組織を有利に模倣する。また、懸架され、緊張状態にあり、一定の量の偏向を可能にする縫合パッドに対して切断及び縫合を実行すると、その感じ方も異なる。これらのシミュレーションは、本発明の縫合パッド10によって有利に提供され、ユーザが模擬腹腔鏡環境において縫合、切断及び穿刺を行いながら奥行き知覚及び組織操作技能を微調整できる腹腔鏡外科技術を練習する際に特に有用である。本発明は、計画的練習を通じた腹腔鏡下縫合スキルセットの進展のための誘導的縫合糸配置モデルを提供する。
【0030】
縫合パッドは、腹腔内に見られる軟組織をシミュレートした反応を示す。縫合パッド10は、腹腔鏡縫合訓練を可能にするので、腹腔鏡ハサミ、把持器及びメリーランド鉗子などの腹腔鏡器具を使用して把持し、操作することができる。また、このパッドは、外科手術内で遭遇し得る様々なタイプの縫合糸を保持できるほど十分に頑丈でもある。縫合パッド10は、縫合に耐えるほど十分に頑丈ではあるが、縫合を行うのに必要な強度及び力が腹腔鏡手術中に遭遇する組織反応に類似するように十分に脆弱でもある。縫合パッドの目標腹腔鏡技能は縫合であるため、この縫合パッドは、複数の縫合配向の習得及び練習を可能にする。また、この縫合パッドは、単純な連続縫合などの腹腔鏡連続縫合を行うことも可能にする。この縫合パッドは、複数の平面ビューに対応するために、正面配向又は傾斜配向を有するようにベースに固定することができる。この縫合パッドは、習得及び訓練を最大化するために、複数回の縫合糸通しを可能にするように複数の裂傷又は切開部を含む。この縫合パッドは、縫合技術の完全な訓練を可能にするために、エンドユーザによる結び目及び最終縫合の形成も可能にする。この縫合パッドは、複数の縫合配向の習得を促すために、縫合すべき複数の裂傷又は切開部配向を有する。これにより、訓練生に合わせた難易度での視覚的課題及び動き課題が可能になる。また、この縫合パッドは、現職の外科医又は外科研修医が縫合糸の動きを通じて器用さ及び正確さを実証することも可能にする。訓練生は、正確な縫合目標を含む縫合パッドを有することによって、自身の腹腔鏡の器用さを練習することができる。また、この縫合パッドは、これらの目標が訓練生の腹腔鏡下縫合の器用さを表す評価可能な指標としての役割を果たすことも可能にする。この縫合パッドは、客観的評価を可能にするために、裂傷又は切開部間の間隔、及びパッド上の各連続する正確な目標マーキングペア間の間隔が一貫した明確な目標を有する。目標間の間隔は、強固な縫合糸配置を容易にするように選択される。縫合目標から逸脱すると、縫合が完全性を失って組織を再接合できなくなるようにすることもできる。さらに、縫合パッドの材料特性は、ユーザが縫合糸に適切な量の張力を加えることを練習できるようなものでもある。ユーザが縫合糸に加える力又は張力が強すぎると、組織が強く締まり(chich)、又は過接合するようになる。縫合糸が緩すぎると、ユーザは、裂傷が開いたままになって組織を再接合できないことが分かる。
【0031】
例示的な実施形態を参照しながらいくつかの実施形態を詳細に図示し説明したが、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に定める趣旨及び範囲から逸脱することなく形態及び詳細を様々に変更することができると理解するであろう。
【符号の説明】
【0032】
10 縫合パッド
14 下面
20a 第1の切断部
20b 第2の切断部
20c 第3の切断部
22 アパーチャ
24 マーキング
38 ベース
40 支柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7