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特許7320507パーキンソン病の治療に使用するための新規なカテコールアミンプロドラッグ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】パーキンソン病の治療に使用するための新規なカテコールアミンプロドラッグ
(51)【国際特許分類】
   C07H 17/02 20060101AFI20230727BHJP
   C07D 221/06 20060101ALI20230727BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20230727BHJP
   A61K 31/473 20060101ALI20230727BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230727BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230727BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230727BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230727BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20230727BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
C07H17/02 CSP
C07D221/06
A61K31/706
A61K31/473
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/30
A61P25/18
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020528199
(86)(22)【出願日】2018-11-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018082361
(87)【国際公開番号】W WO2019101917
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】PA201700674
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591143065
【氏名又は名称】ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【弁理士】
【氏名又は名称】潮 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン,クラウス,ジェルビッグ
(72)【発明者】
【氏名】クヴェルノ,リスベット
(72)【発明者】
【氏名】ユール,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ヨルゲンセン,モルテン
【審査官】小路 杏
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-536889(JP,A)
【文献】Sun, Yan et al.,Oral bioavailability and brain penetration of (-)-stepholidine, a tetrahydroprotoberberine agonist at dopamine D1 and antagonist at D2 receptors, in rats,British Journal of Pharmacology,2009年,Vol.158, No.5,pp.1302-1312
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(Id-ia)
【化1】
によって表される化合物又はその薬剤として許容される塩。
【請求項2】
以下の式(Id-ib)
【化2】
によって表される化合物又はその薬剤として許容される塩。
【請求項3】
以下の式(Id-iab)
【化3】
によって表される化合物又はその薬剤として許容される塩。
【請求項4】
以下の式(Id-iia)
【化4】
によって表される化合物又はその薬剤として許容される塩。
【請求項5】
以下の式(Id-iib)
【化5】
によって表される化合物又はその薬剤として許容される塩。
【請求項6】
固体形態である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその薬剤として許容される塩。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物の薬剤として許容される塩。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物又はその薬剤として許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項9】
治療有効量の、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物又はその薬剤として許容される塩と、1種又は複数の薬剤として許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項10】
以下の式(Id-ia)
【化6】
によって表される化合物又はその薬剤として許容される塩を含む、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
以下の式(Id-ib)
【化7】
によって表される化合物又はその薬剤として許容される塩を含む、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
以下の式(Id-iab)
【化8】
によって表される化合物又はその薬剤として許容される塩を含む、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
以下の式(Id-iia)
【化9】
によって表される化合物又はその薬剤として許容される塩を含む、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項14】
以下の式(Id-iib)
【化10】
によって表される化合物又はその薬剤として許容される塩を含む、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項15】
経口投与のための錠剤又はカプセル剤などの経口医薬組成物である、請求項8~14のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項16】
治療有効量の、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物又はその薬剤として許容される塩を含み、
L-DOPA、セレジリン若しくはラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン若しくはトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン若しくはメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル若しくはガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール若しくはブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬又は抗体標的化α-シヌクレイン、Tau若しくはA-βタンパク質からなる群から選択される化合物をさらに含む、医薬組成物。
【請求項17】
治療有効量の、以下の式(Id-ia)
【化11】
によって表される化合物又はその薬剤として許容される塩を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
治療有効量の、以下の式(Id-ib)
【化12】
によって表される化合物又はその薬剤として許容される塩を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
治療有効量の、以下の式(Id-iab)
【化13】
によって表される化合物又はその薬剤として許容される塩を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
治療有効量の、以下の式(Id-iia)
【化14】
によって表される化合物又はその薬剤として許容される塩を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項21】
治療有効量の、以下の式(Id-iib)
【化15】
によって表される化合物又はその薬剤として許容される塩を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーパミンアゴニスト(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオールのプロドラッグである化合物と、パーキンソン病並びに/又は限定されないが、下肢静止不能症候群、ハンチントン病及びアルツハイマー病など、及びまた限定されないが、精神分裂病、注意欠陥多動障害及び薬物嗜癖などの神経精神疾患及び障害など、ドーパミンアゴニストでの治療が治療上有益な他の症状の治療でのその使用とを提供する。本発明は、本発明の化合物を含む医薬組成物も提供する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病(PD)は、年齢と共に一層蔓延する一般的な神経変性疾患であり、世界的に推定で七百万人~一千万人の人々に影響を及ぼす。パーキンソン病は、運動性及び非運動性の両方の症状を特徴とする多面的な疾患である。運動性症状としては、安静時振せん(震え)、動作緩慢/無動症(動作の緩慢さ及び欠如)、筋固縮、姿勢の安定性及び歩行機能不全が挙げられ、非運動性症状としては、神経精神障害(例えば、鬱病、精神病性症状、不安、感情鈍麻、軽度認知障害及び認知症)並びに自律神経障害及び睡眠障害(Poewe et al.,Nature Review,(2017)vol3 article 17013:1-21)が挙げられる。
【0003】
パーキンソン病の病態生理の重要な顕著な特徴は、線条体及び他の脳領域へのドーパミン作動性神経支配を提供する黒質緻密部における色素性ドーパミン作動性神経細胞の減少である。かかる進行性神経変性は、ドーパミン線条体レベルの低下を引き起こし、その結果、最終的に大脳基底核回路網の一連の変化が生じ、最後にパーキンソン病の4つの主要運動特徴が現れる。線条体におけるドーパミンの主要な標的は、組織分布的突起が突出した、D1又はD2受容体を選択的に発現する中型有棘GABA作動性神経細胞(MSN)からなる。線条体淡蒼球系「間接的経路」とも呼ばれる、外側淡蒼球に投射するGABA作動性MSNは、D2受容体(MSN-2)を発現する。線条体黒質系「直接経路」とも呼ばれる、黒質網様部及び内側淡蒼球に投射するGABA作動性-MSNは、D1受容体(MSN-1)を発現する。ニューロン減少のためのドーパミンの欠乏により、2つの経路の活性が不均衡となり、その結果、視床及び皮質出力活性が著しく減少し、最終的に運動機能不全が生じる(Gerfen et al,Science(1990)250:1429-32;Delong,(1990)Trends in Neuroscience 13:281-5;Alexander et Crutcher,(1990)Trends in Neuroscience 13:266-71及び概説に関してはPoewe et al.,Nature Review(2017)vol.3 article 17013:1-21)。
【0004】
パーキンソン病に罹患しており、且つ運動性症状のコントロールを目標とする患者に利用可能な最も有効な治療戦略は、主に間接的及び直接的ドーパミンアゴニストである。古典的且つ金標準の療法としては、脳において脱カルボキシル化されてドーパミンを形成するL-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)の慢性的な経口摂取が挙げられる。他のアプローチは、D1及びD2受容体サブタイプの両方に作用するアポモルヒネ又はプラミペキソール、ロピニロール及びD2受容体サブタイプに対して優勢に向けられる他のアゴニストなどのドーパミン受容体アゴニストの投与を含む。D1及びD2受容体サブタイプの両方の活性化のため並びに間接的-直接的経路の全体論的な再平衡のため(すなわちD2アゴニストのみが間接的経路の機能不全を逆戻りさせる)、最適なMR(動かすと症状が軽減すること)は、L-DOPA及びアポモルヒネの両方の使用で得られる。
【0005】
以下に示す構造を有するL-DOPA及びアポモルヒネは、現在、臨床的使用において最も有効なPD薬物である。
【化1】
【0006】
L-DOPAは、ドーパミンのプロドラッグであり、運動性パーキンソン病の治療における最も有効な薬物であり続けている。しかしながら、治療の数年(すなわちハネムーン期間)後、疾患の固有の進行(すなわちドーパミン作動性神経細胞の持続した減少)及びL-DOPAの乏しい薬物動態学的(PK)プロファイルのために合併症が起こる。その合併症としては、1)薬物の最適な「時間通りの効果」中に起こる異常な不随意運動であるジスキネジア、及び2)その期間中にL-DOPAのポジティブな効果が徐々に減少し、症状が再び現れるか又は悪化する変動外の期間(Sprenger and Poewe,CNS Drugs(2013),27:259-272)が挙げられる。
【0007】
直接ドーパミン受容体アゴニストは、ドーパミン自己受容体並びに中型有棘神経細胞MSN-1及びMSN-2上に位置するシナプス後ドーパミン受容体を活性化することができる。アポモルヒネは、1,2-ジヒドロキシベンゼン(カテコール)部位を有するドーパミンアゴニストのクラスに属する。フェネチルアミンモチーフと組み合わせた場合、カテコールアミンは、アポモルヒネの場合と同様に経口バイオアベイラビリティが低いか又は全くない場合が多い。アポモルヒネは、臨床的に、非経口送達(一般に、断続的な皮下投与又はポンプによる日中の連続的な非経口的注入)ではあるが、PD治療に使用される。アポモルヒネに関して、動物研究から、経皮送達又は植込錠によって可能性のある投与形態が提供され得ることが示されている。しかしながら、植込錠からのアポモルヒネの送達がサルで研究された場合(Bibbiani et al.,Chase Experimental Neurology(2005),192:73-78)、大部分の事例において、植込手術後の局所的刺激及び他の合併症を防ぐために動物を免疫抑制薬デキサメタゾンで治療しなければならなかったことが判明した。吸入及び舌下製剤などのPDにおけるアポモルヒネ療法の代替の送達戦略が広範に探求されている(例えば、Grosset et al.,Acta Neurol Scand.(2013),128:166-171及びHauser et al.,Movement Disorders(2016),Vol.32(9):1367-1372を参照されたい)。しかしながら、これらの試みは、PDの治療に対して依然として臨床的になされていない。
【0008】
カテコールアミンの非経口製剤の代替法は、経口投与ができるように遊離カテコールヒドロキシル基をマスクするプロドラッグの使用を含む。しかしながら、臨床的使用のためのプロドラッグの開発に伴う既知の問題は、ヒトにおける親化合物への転化を予測することに伴う困難さである。
【0009】
十二指腸送達のための全体的に被覆されたN-プロピル-アポモルヒネ(NPA)(国際公開第02/100377号パンフレット)及びD1-様アゴニストAdrogolide、A-86929のジアセチルプロドラッグ(Giardina and Williams;CNS Drug Reviews(2001),Vol.7(3):305-316)など、カテコールアミンの種々のエステルプロドラッグが文献で報告されている。Adrogolideは、経口投与後に男性において広範な肝初回通過代謝を受け、その結果、低い経口バイオアベイラビリティ(約4%)を有する。PD患者において、静脈内(IV)Adrogolideは、L-DOPAと同等の抗パーキンソン有効性を有する(Giardina and Williams;CNS Drug Reviews(2001),Vol.7(3):305-316)。
【0010】
カテコールアミンのエステルプロドラッグに加えて、代替のプロドラッグアプローチは、対応するメチレン-ジ-オキシ(MDO)アセタールとして、ホルムアルデヒド以外の他のアルデヒドから誘導されるアセタール又は種々のケトンから誘導されるケタールとして2つのカテコールヒドロキシル基のマスキングを含む。このプロドラッグの原理は、例えば、Campbell et al.,Neuropharmacology(1982);21(10):953-961並びに米国特許第4543256号明細書、国際公開第2009/026934号パンフレット及び国際公開第2009/026935号パンフレットに記述されている。
【0011】
カテコールアミンプロドラッグの提案される他のアプローチは、例えば、国際公開第2001/078713号パンフレット及びLiu et al.,Bioorganic Med.Chem.(2008),16:3438-3444で提案されるエノン誘導体の形成である。カテコールアミンプロドラッグのさらなる例については、例えば、Sozio et al.,Exp.Opin.Drug Disc.(2012);7(5):385-406を参照されたい。
【0012】
以下に化合物(I)として示される化合物(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオールは、国際公開第2009/026934号パンフレットに開示されている。トランス異性体は、化合物がラットにおいて低い経口バイオアベイラビリティを有することを示唆する薬理学的データを含む、Liu et al.,J.Med.Chem.(2006),49:1494-1498、次いでLiu et al.,Bioorganic Med.Chem.(2008),16:3438-3444に以前に開示された。最初に、Cannon et al.,J.Heterocyclic Chem.(1980);17:1633-1636にラセミ化合物が開示された。
【化2】

化合物(I)は、混合D1及びD2活性を有するドーパミン受容体アゴニストである。化合物(I)の3つのプロドラッグ誘導体が当技術分野で公知である。
【0013】
Liu et al.,J.Med.Chem.(2006),49:1494-1498及びLiu et al.,Bioorganic Med.Chem.(2008),16:3438-3444は、ラットにおいて活性化合物(I)に転化されることが示された、以下に示す式(Ia)のエノン誘導体を開示している。
【化3】
【0014】
国際公開第2009/026934号パンフレット及び国際公開第2009/026935号パンフレットは、以下の式(Ib)を有するMDO誘導体を含む、化合物(I)の2種類のプロドラッグ誘導体を開示している。
【化4】
【0015】
ラット及びヒト肝細胞における化合物(I)への化合物(Ib)の転化は、国際公開第2010/097092号パンフレットにおいて実証されている。さらに、化合物(Ia)及び(Ib)並びに活性「親化合物」(I)の生体内薬理学は、パーキンソン病に関して様々な動物モデルにおいて試験されている(国際公開第2010/097092号パンフレット)。化合物(I)並びに化合物(Ia)及び(Ib)の両方とも有効であると判明しており、化合物(Ia)及び(Ib)が生体内で化合物(I)に転化されると示されている。3種すべての化合物が、L-dopa及びアポモルヒネに関して確認されたよりも長い作用持続時間を有することが報告された。
【0016】
国際公開第2009/026934号パンフレット及び国際公開第2009/026935号パンフレットで開示されている化合物(I)の他のプロドラッグは、式(Ic)の従来のエステルプロドラッグである。
【化5】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
この分野で長年にわたって関心の対象となっているにもかかわらず、PDの治療のための効率的で、忍容性がよく且つ経口的に作用する薬の開発に関する要求は、依然として明らかに対処されていない。連続的なドーパミン作動性刺激を提供し得る、作用安定なPKプロファイルを与える混合D1/D2アゴニストのプロドラッグ誘導体は、かかる未対処の要求を満たし得る。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、パーキンソン病の治療のための新規な化合物に関する。さらに詳細には、本発明は、化合物(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオールの新規なプロドラッグ誘導体(化合物(I))に関する。本発明の化合物は、化合物(I)の経口送達に特に有用であると証明された。
【0019】
したがって、本発明は、式(Id)
【化6】

(式中、R1は、Hであり、且つR2は、以下の置換基(i)及び(ii)の1つから選択されるか、又は
R1は、以下の置換基(i)及び(ii)の1つから選択され、且つR2は、Hであるか、又は
R1及びR2は、両方とも以下の置換基(i)によって表されるか、又は
R1及びR2は、両方とも以下の置換基(ii)によって表されるか、又は
R1は、置換基(i)であり、且つR2は、置換基(ii)であるか、又は
R1は、置換基(ii)であり、且つR2は、置換基(i)であり、
【化7】

ここで、は、結合点を示し、
置換基(i)上の結合点での炭素原子は、S立体配置である)
の化合物又はその薬剤として許容される塩に関する。
【0020】
一実施形態において、本発明は、式(Id)による化合物又はその薬剤として許容される塩と、1種又は複数の薬剤として許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0021】
一実施形態において、本発明は、薬物として使用される式(Id)による化合物に関する。
【0022】
一実施形態において、本発明は、パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害又は精神分裂病、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの神経精神疾患若しくは障害の治療で使用するための、式(Id)による化合物又はその薬剤として許容される塩に関する。
【0023】
一実施形態において、本発明は、パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害又は精神分裂病、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの神経精神疾患若しくは障害の治療の方法であって、治療有効量の、式(Id)による化合物又はその薬剤として許容される塩を、それを必要とする患者に投与することを含む方法に関する。
【0024】
一実施形態において、本発明は、パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害の治療のための、又は精神分裂病、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの神経精神疾患若しくは障害の治療のための薬物を製造するための、式(Id)による化合物又はその薬剤として許容される塩の使用に関する。
【0025】
本発明に関連して、置換基(i)上での結合点での炭素原子は、(i)のアノマー位置にあることが理解される。
【0026】
定義
本発明の化合物
本発明により包含される化合物の参照は、本発明の化合物の遊離物質(両性イオン)、本発明の化合物の薬剤として許容される塩、酸付加塩又は塩基付加塩など、並びに本発明の化合物及びその薬剤として許容される塩の多形及び無形質形態を含む。さらに、本発明の化合物及びその薬剤として許容される塩は、非溶媒和状態及び水、エタノール等の薬剤として許容される溶媒との溶媒和状態で潜在的に存在し得る。溶媒和状態及び非溶媒和状態の両方が本発明によって包含される。
【0027】
薬剤として許容される塩:
本発明に関連して、薬剤として許容される塩は、非毒性、すなわち生理学的に許容される塩を表すことが意図される。
【0028】
「薬剤として許容される塩」という用語は、親分子における窒素原子上の無機酸及び/又は有機酸で形成される塩である、薬剤として許容される酸付加塩を含む。前記酸は、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、亜硝酸、硫酸、安息香酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、グルタミン酸、ピログルタミン酸、サリチル酸、ゲンチシン酸、サッカリン及びスルホン酸、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸から選択され得る。
【0029】
「薬剤として許容される塩」という用語は、式(Id)の化合物の酸性基上の無機塩基及び/又は有機塩基で形成される塩である、薬剤として許容される塩基付加塩も含む。前記塩基は、例えば、水酸化亜鉛及び水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属塩基、並びに水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩基、並びにコリン、ジエチルアミン、トリメチルアミン及びトリエチルアミンなどの有機塩基から選択され得る。
【0030】
薬剤として許容される塩を形成するのに有用な酸及び塩基の他の例は、例えば、Stahl and Wermuth(Eds),Handbook of Pharmaceutical salts.Properties,selection,and use,Wiley-VCH2008に記載されている。
【0031】
固体形態
本発明に関連して、本発明の化合物が固体形態である場合、これは、前記化合物が水性液体、有機液体及びその混合物などのいずれかの液体に溶解されていないことを示す。本発明は、本発明の化合物の遊離物質(両性イオン)の固体形態及び本発明の化合物の薬剤として許容される塩の固体形態を包含する。「固体形態」という用語は、本発明の化合物及びその塩の非晶質形態並びに本発明の化合物及びその塩の結晶質形態の両方を包含する。
【0032】
プロドラッグ
本発明に関連して、「プロドラッグ」又は「プロドラッグ誘導体」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトなどの生体対象に投与した後、体内で薬理学的活性部位に転化される化合物を意味する。転化は、好ましくは、マウス、ラット、イヌ、ミニブタ、ウサギ、サル及び/又はヒトなどの哺乳動物内で起こる。本発明に関連して、「化合物(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオールのプロドラッグ」、又は「式(I)の化合物のプロドラッグ」、又は「化合物(I)のプロドラッグ」は、投与後、体内で化合物(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオールに転化される化合物であると理解される。前記投与は、当技術分野で公知の医薬組成物の従来の投与経路により、好ましくは経口投与であり得る。
【0033】
本発明に関連して、「親化合物」及び「親分子」という用語は、対応するプロドラッグの転化で得られる薬理学的活性部位を意味する。例えば、化合物(Ia)、(Ib)、(Ic)の1つ又は本発明の化合物のいずれかの「親化合物」は、式(I)の化合物であると理解される。
【0034】
化学的製造
本発明に関連して、「化学的製造によって誘導された」とは、前記化合物が、限定されないが、本明細書の実験セクションに記載のプロセスの1つなど、化学プロセスによって製造されていることを意味する。
【0035】
薬物動態学的定義及び略語
本明細書で使用される「PKプロファイル」は、「薬物動態学的プロファイル」の略語である。本明細書に記載の薬物動態学的プロファイル及び薬物動態学的パラメーターは、ノンコンパートメントモデリングを用いて、本発明の化合物を経口投与した後、式(I)の化合物について得られた血漿中濃度-時間データに基づく。省略されたPKパラメーターは、Cmax(最高濃度);tmax(Cmax到達時間);t1/2(半減期);AUC0-∞(投与時点から無限時間までの曲線下面積)である。
【0036】
治療有効量:
本発明に関連して、化合物の「治療有効量」という用語は、前記化合物の投与を含む治療的介入において所定の疾患及びその合併症の臨床症状を軽減するか、阻止するか、部分的に阻止するか、取り除くか又は遅らせるのに十分な量を意味する。これを達成するのに適した量は、「治療有効量」と定義される。それぞれの目的に有効な量は、例えば、疾患又は損傷の重症度並びに対象の体重及び全身状態に応じて異なる。適切な投薬量の決定は、熟練した医師の一般の技術の範囲内にすべてある通常の実験を用いて、値のマトリックスを構築し、そのマトリックスにおける様々なポイントを試験することによって達成されることが理解されるであろう。
【0037】
本発明に関連して、本発明の化合物の「治療有効量」とは、本発明の前記化合物が好ましくは経口経路によって哺乳動物、好ましくはヒトに投与された場合、所定の疾患及びその合併症の臨床症状を軽減するか、阻止するか、部分的に阻止するか、取り除くか又は遅らせるのに十分な化合物(I)の量を提供することができる、本発明の前記化合物の量を意味する。
【0038】
治療及び処置:
本発明に関連して、「治療」又は「処置」は、疾患の臨床症状を緩和するか、阻止するか、部分的に阻止するか、取り除くか又はその進行を遅らせる目的のための患者の管理及びケアを示すことが意図される。治療されるべき患者は、好ましくは、哺乳動物、特にヒトである。
【0039】
治療のための症状:
本発明の化合物は、パーキンソン病及び/又はドーパミンアゴニストでの治療が治療上有益である他の症状など、神経変性疾患及び障害の治療に対して意図される。
【0040】
治療の適応症は、運動性及び/又は非運動性障害を特徴とし、且つその根底にある病態生理の一部が線条体仲介回路網の機能不全である様々な中枢神経系疾患を含む。かかる機能性障害は、限定されないが、パーキンソン病(PD)、下肢静止不能症候群、ハンチントン病及びアルツハイマー病などの神経変性疾患だけでなく、限定されないが、精神分裂病、注意欠陥多動障害及び薬物嗜癖などの神経精神疾患でも見られる。
【0041】
神経変性疾患及び障害に加えて、ドーパミン作動性代謝回転の増加が有益であり得る他の症状において、認知の様々な面を含む精神機能が改善される。それは、抑うつ症患者において正の効果も有し得、食欲抑制薬として肥満症の治療及び薬物嗜癖の治療でも使用され得る。それは、微細脳機能障害(MBD)、ナルコレプシー、注意欠陥多動障害及び精神分裂病の潜在的にネガティブな症状、ポジティブな症状及び認知症状を改善し得る。
【0042】
下肢静止不能症候群(RLS)及び周期性四肢運動障害(PLMD)は、ドーパミンアゴニストで臨床的に治療される別の適応症である。さらに、性交不能、勃起機能不全、SSRI誘発性機能障害、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)及び特定の下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)も、ドーパミンアゴニストで治療することにより改善される可能性がある。ドーパミンは、循環器系及び腎系の調節に関与し、したがって、腎不全及び高血圧症は、本発明の化合物の代替の適応症と見なされ得る。
【0043】
本発明は、上記の疾患及び障害を治療するための、本発明の化合物の使用を包含する。
【0044】
併用
本発明の一実施形態において、式(Id)の化合物は、単独の活性化合物としてスタンドアローン治療で使用される。本発明の他の実施形態において、式(Id)の化合物は、パーキンソン病などの神経変性疾患又は障害の治療に有用な他の薬剤と併用して使用され得る。式(Id)の化合物と、神経変性疾患又は障害の治療に有用である他の化合物とを治療有効量で併用投与することを含む、本発明の方法に関連して本明細書で使用される「併用使用」、「~と併用して」及び「~の組み合わせ」等の用語は、前記他の化合物と共にいずれかの順序で式(Id)の化合物を同時に又は逐次投与することを意味することが意図される。
【0045】
2種類の化合物は、同時に又は2種類の化合物の投与間に時間を挟んで投与され得る。2種類の化合物は、同一医薬製剤若しくは組成物の一部として又は別々の医薬製剤若しくは組成物において投与され得る。2種類の化合物は、同日又は異なる日に投与され得る。それらは、同じ経路、例えば経口投与、皮下注射、経皮投与、デポー、筋肉内注射若しくは静脈内注射などにより、又は一方の化合物が例えば経口投与されるか若しくはデポーによって投与され、もう一方の化合物が例えば注入される異なる経路により投与され得る。2種類の化合物は、1日、1週若しくは1か月に1回若しくは2回などの同じ投与計画又は間隔により、又は例えば一方が1日に1回投与され、もう一方が1日、若しくは週、若しくは月に2回投与される異なる投与計画によって投与され得る。
【0046】
一部の場合、治療される患者は、式(Id)の化合物での治療が開始される際、神経変性疾患又は障害の治療で有用な1種又は複数の他の化合物での治療を既に受けていることができる。他の場合、神経変性疾患又は障害の治療に有用な1種又は複数の他の化合物での治療が開始される際、患者は、式(Id)の化合物での治療を既に受けていることができる。他の場合、式(Id)の化合物での治療及び神経変性疾患又は障害の治療に有用な1種又は複数の他の化合物での治療は、同時に開始される。
【0047】
併用治療のための化合物
本発明に関連して、式(Id)の化合物と併せて使用される化合物は、例えば、L-DOPA、ドロキシドパ、セレジリン又はラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン又はトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン又はメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル又はガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール又はブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬から選択され得る。
【0048】
小分子に加えて、併用される化合物は、例えば、抗体標的化α-シヌクレイン、Tau又はA-βタンパク質など、神経変性疾患又は障害の治療における新興生物製剤アプローチも包含し得る。
【0049】
投与経路
単独の活性化合物として又は他の活性化合物と併せて、式(Id)の化合物を含む医薬組成物は、経口、経直腸、経鼻、経頬粘膜、舌下、経肺、経皮及び非経口的(例えば、皮下、筋肉内及び静脈内)経路などのいずれかの適切な経路による投与のために特に製剤化され得る。本発明に関連して、経口経路が好ましい投与経路である。
【0050】
その経路は、処置される対象の全身状態及び年齢、処置される状態の性質並びに活性成分に応じて異なると理解される。
【0051】
医薬製剤及び賦形剤
以下において、「賦形剤」又は「薬剤として許容される賦形剤」という用語は、限定されないが、担体、充填剤、希釈剤、付着防止剤、結合剤、コーティング、着色剤、崩壊剤、風味、流動促進剤(glidant)、滑沢剤、保存剤、吸着剤、甘味料、溶媒、賦形剤(vehicle)及び補助剤などの医薬品賦形剤を意味する。
【0052】
本発明は、本明細書において実験セクションで開示される化合物の1つなど、式(Id)の化合物を含む医薬組成物も提供する。本発明は、式(Id)の化合物を含む医薬組成物を製造するプロセスも提供する。本発明による医薬組成物は、Remington,The Science and Practice of Pharmacy,22th edition(2012),Edited by Allen,Loyd V.,Jr.に開示される技術など、従来の技術に従い、薬剤として許容される賦形剤を用いて製剤化され得る。
【0053】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、好ましくは、経口投与のための医薬組成物である。経口投与のための医薬組成物としては、錠剤、カプセル剤、粉剤及び顆粒などの固形経口剤形、並びに液剤、乳剤、懸濁剤及びシロップ剤などの液体経口剤形、並びに適切な液体に溶解又は懸濁される粉末及び顆粒が挙げられる。
【0054】
固形経口剤形は、個々の単位(例えば、錠剤又はハード若しくはソフトカプセル剤)として提供されることができ、それぞれが所定の量の活性成分、好ましくは1種又は複数の適切な賦形剤を含有する。適切な場合、固形剤形は、腸溶コーティングなどのコーティングを用いて製造され得るか、又は当技術分野でよく知られている方法に従って遅延性若しくは徐放性などの活性成分の放出制御を提供するように製剤化され得る。適切な場合、固形剤形は、例えば、口腔内分散性錠剤など、唾液中で崩壊する剤形であることもできる。
【0055】
固形経口剤形に適した賦形剤の例としては、限定されないが、微結晶性セルロース、トウモロコシデンプン、ラクトース、マンニトール、ポビドン、クロスカルメロースナトリウム、ショ糖、シクロデキストリン、タルカム、ゼラチン、ペクチン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸及びセルロースの低級アルキルエーテルが挙げられる。同様に、固形製剤は、モノステアリン酸グリセリン又はヒプロメロースなど、当技術分野で公知の遅延性又は徐放性製剤のための賦形剤を含み得る。固体材料が経口投与のために使用される場合、製剤は、例えば、活性成分を固形賦形剤と混合し、続いてその混合物を従来の錠剤化機器で圧縮することによって製造され得るか、又は例えば粉末状、ペレット状若しくはミニ錠剤状の製剤をハードカプセル内に入れられ得る。固形賦形剤の量は、大幅に異なるが、通常、投薬単位あたり約25mg~約1gの範囲である。
【0056】
液体経口剤形は、例えば、エリキシル剤、シロップ剤、経口ドロップ剤又は液体充填カプセル剤として提供され得る。液体経口剤形は、水性又は非水性液中の溶液又は懸濁液のための粉末としても提供され得る。液体経口剤形に適した賦形剤の例としては、限定されないが、エタノール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ソルビトール、ポリソルベート、モノグリセリド及びジグリセリド、シクロデキストリン、ヤシ油、パーム油及び水が挙げられる。液体経口剤形は、例えば、水性又は非水性液中に活性成分を溶解若しくは懸濁することにより、又は水中油型若しくは油中水型液体エマルジョンに活性成分を組み込むことにより製造され得る。
【0057】
着色剤、風味及び保存剤等のさらなる賦形剤が固形及び液体経口製剤に使用され得る。
【0058】
非経口投与のための医薬組成物としては、注射又は注入のための滅菌水溶液及び非水溶液、分散液、懸濁液又はエマルジョン、注射又は注入のための濃縮物並びに使用前に注射又は注入のために滅菌溶液又は分散液に溶解される滅菌粉末が挙げられる。非経口製剤に適した賦形剤の例としては、限定されないが、水、ヤシ油、パーム油及びシクロデキストリンの溶液が挙げられる。水性製剤は、必要に応じて適切に緩衝化し、十分な生理食塩水又はグルコースで等張性を付与されるべきである。
【0059】
他のタイプの医薬組成物としては、坐剤、吸入剤、クリーム剤、ゲル剤、経皮パッチ、植込錠及び口腔内又は舌下投与のための製剤が挙げられる。
【0060】
医薬製剤に使用される賦形剤は、意図する投与経路に適合し、活性成分と適合性であることが必須である。
【0061】
用量:
一実施形態において、本発明の化合物は、1日あたり約0.0001~約5mg/kg体重の量で投与される。特に、1日量は、1日あたり0.001~約1mg/kg体重の範囲であり得る。正確な投薬量は、処置すべき対象の頻度及び投与形式、性別、年齢、体重及び全身状態、処置すべき状態の性質及び重症度、処置されるべき付随する疾患、処置の所望の効果並びに当業者に公知の他の因子に応じて異なる。
【0062】
成人の一般的な経口投薬量は、本発明の化合物0.1~100mg/日の範囲であり、例えば0.05~50mg/日、0.1~10mg/日又は0.1~5mg/日の範囲である。好都合には、本発明の化合物は、約0.01~50mg、例えば0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、15mg、20mg又は50mgまでの量で前記化合物を含有する単位剤形で投与される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】化合物(I)と、化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)及び(Id-iib)との間の体内での抱合及び脱抱合の平衡状態の図示である。
図2】実施例4による経口投与後に得られる、ウィスターラットにおけるPKプロファイルである。プロファイルは、それぞれの化合物に対して対象3匹からの平均血漿中濃度に基づく。X軸:時間(時);Y軸:以下の化合物の投与後に得られた化合物(I)(pg/mL)の血漿中濃度
【数1】
:化合物(Ia);
【数2】
:化合物(Ib);
【数3】
:化合物(Id-ia);
【数4】
:化合物(Id-ib);
【数5】
:化合物(Id-iia);
【数6】
:化合物(Id-iib)、
【数7】
:化合物(Id-iab)、及び
【数8】
:化合物(Id-iiab)。
図3-4】賦形剤(HO、経口)又は化合物(Id-ia)(10、30、100又は300μg/kg、経口)での治療後の、且つ標準治療(SoC):アポモルヒネ(APO、3mg/kg、皮下)、プラミペキソール(PPX、0.3mg/kg、皮下)と比較した歩行活動時間経過(図3)及び総移動距離(図4)である。60分の試験チャンバ内の習慣化期間後にt=60分において動物に投与し、その後、活動を350分間モニターした。ダン多重比較検定と共にクラスカル-ウォリス検定を用いてデータを評価し、全体のP値<0.0001が得られた。図3:X軸:時間(分);Y軸:移動距離(cm)±SEM/5分-bins。図4:Y軸:総移動距離(cm)±SEM。ポストホック比較(賦形剤群に対する)の有意性レベルが示される:*<0.05、**<0.01、***<0.001、****<0.0001。
図5-6】化合物(Id-ia)と化合物(I)との血漿中濃度間の関係及び化合物(Id-ia)(100μg/kg、経口)によって誘発される機能亢進(図5)、並びに血漿アポモルヒネ濃度とアポモルヒネ(3mg/kg、皮下)によって誘発される機能亢進との対応する関係(図6)である。X軸時間(分);Y軸左:移動距離(cm)±SEM/5-分-bins;Y軸右(図5):化合物(I)の血漿中濃度(pg/mL);Y軸右(図6):アポモルヒネの血漿中濃度(ng/mL)。□:移動距離(cm)●血漿濃度。
図7】ラット(7a)及びヒト(7b)肝細胞における化合物(I)への化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、(Id-iib)及び(Id-iab)の転化である。X軸時間(分);Y軸:化合物(I)の濃度(pg/mL)。
【数9】
:化合物(Id-ia);
【数10】
:化合物(Id-ib);
【数11】
:化合物(Id-iia);
【数12】
:化合物(Id-iib);
【数13】
:化合物(Id-iab)。
図8】ラット(8a)及びヒト(8b)全血における化合物(I)への化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)及び(Id-iib)の転化である。X軸時間(分);Y軸:化合物(I)の濃度(pg/mL)。
【数14】
:化合物(Id-ia);
【数15】
:化合物(Id-ib);
【数16】
:化合物(Id-iia);
【数17】
:化合物(Id-iib)。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明者らは、表2に記載の生体外データを有するデュアルD1/D2アゴニストである(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール[化合物(I)]のプロドラッグである新規な化合物を同定した。
【0065】
本発明者らは、化合物(I)が、グルクロニド誘導体(Id-ia)及び(Id-ib)並びに硫酸誘導体(Id-iia)及び(Id-iib)とラット及びヒト肝細胞において抱合することを確認した。抱合体は、図1に示されるように、体内での抱合及び脱抱合により、化合物(I)に転化されることが示された。
【0066】
グルクロニド及び硫酸誘導体は、腸内で不安定であることが一般に知られている。誘導体は、非常に極性及び可溶性の代謝産物として形成されて、体からの化合物の除去を促進し、結果的に容易に排出される。例えば、胆管カニューレ挿入されたラットにおいて、グルクロニド及び硫酸抱合体は、多くの場合に胆汁中で見つけられ、その脱抱合体(すなわち親化合物)は、大便中で見つけられる。ときに続いて再吸収される親化合物への腸内のグルクロニド及び硫酸抱合体のバックコンバージョン(back-conversion)は、腸肝再循環プロセスの一部として知られている。上述されるように、アポモルヒネなどのフェネチルカテコールアミンの経口投与は、一般に、バイオアベイラビリティが低いために成功しないことが証明されている。同様に、化合物(I)も低い経口バイオアベイラビリティを有する(Liu et al.,Bioorganic Med.Chem.(2008),16:3438-3444)。これを念頭において、且つ胃腸管におけるグルクロニド及び硫酸抱合体の不安定性を考慮すると、化合物(I)のグルクロニド及び硫酸抱合体の経口投与を用いて、化合物の十分な血漿曝露を達成できることは、期待されないであろう。
【0067】
経口送達のためのプロドラッグとしてグルクロニド誘導体を適用する原則は、レチノイン酸に関して(Goswami et al.,J.Nutritional Biochem.(2003)14:703-709)並びにモルヒネに関して(Stain-Texier et al.,Drug Metab.及びDisposition(1998)26(5):383-387)考察されている。いずれの研究からも、誘導体を経口投与した後の親化合物の曝露レベルが非常に低いことが示された。他の研究では、腸管システム自体からのプロドラッグの乏しい吸収に基づく、潰瘍性大腸炎の治療のための、大腸へのブデソニドの局所送達のためのプロドラッグとしてのブデソニド-β-D-グルクロニドの使用が示唆されている(Nolen et al.,J.Pharm Sci.(1995),84(6):677-681)。
【0068】
それにもかかわらず、意外にも、本発明者らは、ラット及びミニブタにおける化合物(I)の代謝産物としてすべて同定されたグルクロニド抱合体(Id-ia)、(Id-ib)並びに硫酸抱合体(Id-iia)及び(Id-iib)の経口投与により、血漿中の化合物(I)の全身的な曝露を提供し、化合物(I)の経口活性プロドラッグとしての化合物(I)のグルクロニド及び硫酸誘導体の有用性が示唆されることを見出した。本発明者らは、それぞれ両方のカテコールヒドロキシル基においてグルクロニド又は硫酸のいずれかで置換されている化合物(Id-iab)及び(Id-iiab)を探求し、これら2種類の化合物もプロドラッグ活性を示すことをさらに見出した。
【0069】
実施例4に従い、ウィスターラットへの化合物(Ia)及び(Ib)の経口投与並びに化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、(Id-iib)、(Id-iab)及び(Id-iiab)の経口投与から得られる化合物(I)の血漿プロファイルを図2に示す。すべての化合物について、化合物(I)287μg/kgに対応する化合物(Ib)300μg/kgの用量に等しくなるように分子量によって用量が補正された。本発明者らは、ウィスターラットへの化合物(Ia)及び(Ib)の経口投与により、化合物(I)の初期及び高ピーク濃度が得られることを見出した。かかる高ピーク濃度は、ヒトにおいて、例えば悪心、嘔吐及びめまいなどのドーパミン作動性副作用を伴う可能性がある。対照的に、化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、(Id-iib);(Id-iab)及び(Id-iiab)の投与によって吸収速度が遅くなり、血漿中の化合物(I)の持続性曝露を伴う急速なピーク濃度を防ぐ。さらに、得られた化合物(I)のAUCは、化合物(Ib)の投与後に得られるAUCよりも一般に低いが、ウィスターラットにおける化合物(I)の血漿曝露は、24時間を通して維持される。しかしながら、副作用を誘発すると予想される化合物(I)のピーク濃度が低いことから、より高い用量の化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、(Id-iib)、(Id-iab)及び(Id-iiab)を投与して、化合物(Ia)及び(Ib)を投与することから達成可能な濃度と比較して、化合物(I)のより高い総血漿中濃度が潜在的に達成され得る。化合物(Ic)のPK特性を調査した際、本発明者らは、化合物(I)の血漿中濃度が非常に低く、経口投与のための化合物(I)のプロドラッグとして化合物(Ic)が不適当なままであることを見出し、本発明の化合物の経口バイオアベイラビリティは、非常に予測不可能であることが確認された。ウィスターラットでのPK研究についてのPKパラメーターを表3に列挙する。
【0070】
PK実験は、実施例5に従ってミニブタに化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)及び(Id-iib)を経口投与することでも実施された。この研究から、4種すべての化合物がミニブタにおいて化合物(I)に転化され、経口投与後に化合物(I)の血漿曝露が提供されることが実証された。この研究のPKパラメーターを表4に列挙する。
【0071】
ヒトにおける化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、(Id-iib)及び(Id-iab)のバイオコンバージョンは、実施例1の実験によって支持され、ラット及びヒト肝細胞における式(I)の化合物への化合物の転化が示され、化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、(Id-iib)についてラット及びヒト血液において示された(図7及び8)。
【0072】
したがって、結論として、本発明の化合物は、化合物(I)の経口活性プロドラッグとして有用であり、且つ既知のプロドラッグ(Ia)及び(Ib)で確認されるピークCmaxを回避し、化合物(Ic)よりも著しく高い化合物(I)のAUCが得られるPKプロファイルを提供することがラットにおいて確認された。本発明の好ましい化合物は、グルクロニド抱合体(Id-ia)、(Id-ib)及び(Id-iab)である。
【0073】
比較例として、アポモルヒネの、グルクロニド1つとスルフェート2つとの抱合体((2S,3S,4S,5R,6S)-6-[[(6aR)-11-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10-イル]オキシ]-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボン酸;[(6aR)-11-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10-イル]硫酸水素塩及び[(6aR)-10-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-11-イル]硫酸水素塩)がウィスターラットに投与された。4977μg/kgの高い用量でウィスターラットにアポモルヒネの抱合体を経口投与した結果、グルクロニド抱合体の投与からの1時点(4時間)での916pg/mlを除いて、血漿中のアポモルヒネの測定可能な曝露(定量化の下限500pg/ml)が生じず、アポモルヒネの抱合体の経口バイオアベイラビリティが低い/ないことが示された。比較すると、アポモルヒネ3000μg/kg自体を経口投与した結果、アポモルヒネ3000μg/kgを皮下投与した後に見られるよりも100倍を超えて低い血漿AUCが生じ、アポモルヒネの既知の不十分な経口バイオアベイラビリティが確認された。本発明の化合物の経口アベイラビリティがかなり予想外であることがこれによってさらに裏付けられる(実験については、実施例4を参照されたい)。
【0074】
化合物(Id-ia)は、実施例6に従ってラットの歩行活動アッセイにおいてさらに調べられた。化合物(Id-ia)の経口投与後に得られるドーパミン作動性作用がアッセイから実証された(図3、4及び5を参照されたい)。(Id-ia)を含む本発明の化合物は、生体外ドーパミン作動性活性を保持しない(実施例2及び表1を参照されたい)という事実から、ラット歩行活動アッセイにおける化合物(Id-ia)の作用は、化合物(I)への化合物(Id-ia)の転化によって得られることがさらに示されている。
【0075】
最終的に、先行技術の化合物(Ib)に伴う重要な問題は、この化合物が5-HT2B受容体のアゴニストであることである。長期間の曝露後の心臓弁膜症(VHD)の病因と5-HT2B受容体アゴニストが関連していることから、かかる化合物は、慢性疾患の治療での使用に適していない(Rothman et al.,Circulation(2000),102:2836-2841及びCavero and Guillon,J.Pharmacol.Toxicol.Methods(2014),69:150-161)。したがって、本発明の化合物のさらなる利点は、5-HT2Bアゴニストでないことである(実施例3及び表1を参照されたい)。
【0076】
本発明の化合物は、パーキンソン病及び/又はドーパミンアゴニストでの治療が治療上有益である他の症状など、神経変性疾患及び障害の治療において有用である。経口投与に適している化合物は、パーキンソン病における新規な治療パラダイムを提供する可能性を有する。
【0077】
本発明の一実施形態において、化合物は、神経変性疾患又は障害のスタンドアローン治療として使用される。本発明の他の実施形態において、化合物は、L-DOPA、セレジリン若しくはラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン若しくはトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン若しくはメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル若しくはガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール若しくはブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬からなる群から選択される化合物など、PD治療のための他の薬剤と併せて、又は抗体標的化α-シヌクレイン、Tau若しくはA-βタンパク質と併せて使用される。
【0078】
本発明の実施形態
以下において、本発明の実施形態が開示される。第1実施形態は、E1で示され、第2実施形態は、E2で示される。
【0079】
E1.式(Id)
【化8】

(式中、R1は、Hであり、且つR2は、以下の置換基(i)及び(ii)の1つから選択されるか、又は
R1は、以下の置換基(i)及び(ii)の1つから選択され、且つR2は、Hであるか、又は
R1及びR2は、両方とも以下の置換基(i)によって表されるか、又は
R1及びR2は、両方とも以下の置換基(ii)によって表されるか、又は
R1は、置換基(i)であり、且つR2は、置換基(ii)であるか、又は
R1は、置換基(ii)であり、且つR2は、置換基(i)であり、
【化9】

は、結合点を示し、
置換基(i)上の結合点での炭素原子は、S立体配置である)
による化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0080】
E2.R1は、Hであり、且つR2は、置換基(i)及び(ii)の1つから選択されるか、又は
R1は、置換基(i)及び(ii)の1つから選択され、且つR2は、Hであるか、又は
R1及びR2は、両方とも以下の置換基(i)によって表されるか、又は
R1及びR2は、両方とも以下の置換基(ii)によって表される、実施形態1による化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0081】
E3.R1は、置換基(i)であり、且つR2は、Hであるか、又は
R1及びR2は、両方とも以下の置換基(i)によって表される、実施形態1による化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0082】
E4.以下の式(Id-ia)
【化10】

によって表される、実施形態1による化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0083】
E5.以下の式(Id-ib)
【化11】

によって表される、実施形態1による化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0084】
E6.以下の式(Id-iab)
【化12】

によって表される、実施形態1による化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0085】
E7.R1は、Hであり、且つR2は、置換基(ii)であるか、又は
R1は、置換基(ii)であり、且つR2は、Hであるか、又は
R1及びR2は、いずれも置換基(ii)によって表される、実施形態1による化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0086】
E.8.以下の式(Id-iia)
【化13】

によって表される、実施形態1による化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0087】
E9.以下の式(Id-iib)
【化14】

によって表される、実施形態1による化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0088】
E10.以下の式(Id-iiab)
【化15】

によって表される、実施形態1による化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0089】
E11.(Id-ia):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸、
(Id-ib):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸、
(Id-iia):(4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル硫酸水素塩、
(Id-iib):(4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)硫酸水素塩、
(Id-iab):(2S,2’S,3S,3’S,4S,4’S,5R,5’R,6S,6’S)-6,6’-(((4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイル)ビス(オキシ))ビス(3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸)、
(Id-iiab):(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイルビス(硫酸水素塩)
からなる群から選択される、実施例1による化合物又はこれらの化合物のいずれかの薬剤として許容される塩。
【0090】
E12.前記化合物は、哺乳動物の体外で誘導される、実施形態1~11のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0091】
E13.前記化合物は、化学的製造によって誘導される、実施形態1~12のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0092】
E14.前記化合物は、単離形態上にある、実施形態1~13のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0093】
E15.前記化合物は、その中で天然に平衡状態にある化合物を実質的に含有しない単離形態上にある、実施形態1~14のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0094】
E16.前記化合物は、式(I)の化合物を実質的に含有しない単離形態上にある、実施形態1~15のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0095】
E17.化合物(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール(化合物(I))のプロドラッグである化合物であって、前記プロドラッグが、(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール287μg/kgに対応する用量でウィスターラットに経口投与された場合、前記プロドラッグは、(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオールのCmaxが500~2500pg/mL、例えば750~2500pg/mL、例えば1000~2500pg/mL、例えば1000~2000pg/mLであるPKプロファイルを提供する、化合物又は前記化合物の薬剤として許容される塩。
【0096】
E18.化合物(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール(化合物(I))のプロドラッグであり、前記プロドラッグが、(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール287mg/kgに対応する用量でウィスターラットに経口投与された場合、前記プロドラッグは、(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオールのAUC0-∞が7000pgh/mLを超える、例えば8000を超える、例えば9000を超える、例えば10000を超える、例えば11000を超える、例えば12000を超える、例えば13000を超える、例えば14000を超える、例えば15000を超える、例えば16000pgh/mLを超える、PKプロファイルを提供する、実施形態17に記載の化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0097】
E19.前記PKプロファイルは、本明細書の実施例4に記載のPK実験によって得られたものである、実施形態17~18のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0098】
E20.固体形態である、実施形態1~19のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0099】
E21.実施形態1~20のいずれかによる化合物の薬剤として許容される塩。
【0100】
E22.実施形態1~20のいずれかによる化合物の酸付加塩である、実施形態21による薬剤として許容される塩。
【0101】
E23.実施形態1~20のいずれかによる化合物の塩基付加塩である、実施形態21による薬剤として許容される塩。
【0102】
E24.治療において使用するための、実施形態1~23のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0103】
E25.薬物として使用するための、実施形態1~23のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0104】
E26.前記薬物は、経口投与のための錠剤又はカプセル剤などの経口薬物である、実施形態25による薬物として使用するための化合物又は薬剤として許容される塩。
【0105】
E27.治療有効量の、実施形態1~23のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩と、1種又は複数の薬剤として許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【0106】
E28.経口投与のためのものである、実施形態27による医薬組成物。
【0107】
E29.経口医薬組成物である、実施形態27~28のいずれかによる医薬組成物。
【0108】
E30.固形経口剤形である、実施形態27~29のいずれかによる医薬組成物。
【0109】
E31.経口投与のための錠剤又はカプセル剤である、実施形態27~30のいずれかによる医薬組成物。
【0110】
E32.パーキンソン病などの神経変性疾患又は障害の治療において有用である他の薬剤をさらに含む、実施形態27~31のいずれかによる医薬組成物。
【0111】
E.33.L-DOPA、セレジリン若しくはラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン若しくはトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン若しくはメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル若しくはガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール若しくはブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬又は抗体標的化α-シヌクレイン、Tau若しくはA-βタンパク質からなる群から選択される化合物をさらに含む、実施形態27~31のいずれかによる医薬組成物。
【0112】
E34.パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害の治療又は精神分裂病、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの神経精神疾患若しくは障害の治療に使用するための、実施形態1~23のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0113】
E35.実施形態34による治療で使用するためのものであり、前記神経変性疾患又は障害は、パーキンソン病である、実施形態1~23のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0114】
E36.実施形態34~35のいずれかによる治療で使用するためのものであり、前記化合物は、パーキンソン病などの神経変性疾患又は障害の治療において有用である他の薬剤と併せて使用される、実施形態1~23のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0115】
E37.実施形態34~35のいずれかによる治療で使用するためのものであり、前記化合物は、L-DOPA、セレジリン若しくはラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン若しくはトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン若しくはメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル若しくはガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール若しくはブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬からなる群から選択される化合物と併せて、又は抗体標的化α-シヌクレイン、Tau若しくはA-βタンパク質と併せて使用される、実施形態1~23のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0116】
E38.実施形態34~37のいずれかによる治療で使用するためのものであり、前記治療は、前記化合物の経口投与によって行われる、実施形態1~23のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0117】
E39.実施形態34~38のいずれかによる治療で使用するためのものであり、前記化合物は、経口投与のための錠剤又はカプセル剤などの医薬組成物中に含まれる、実施形態1~23のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0118】
E40.パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害又は精神分裂病、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの神経精神疾患若しくは障害の治療の方法であって、治療有効量の、実施例1~23のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩を、それを必要とする患者に投与することを含む方法。
【0119】
E41.前記神経変性疾患又は障害は、パーキンソン病である、実施形態40による方法。
【0120】
E42.実施形態1~23のいずれかによる前記化合物又はその薬剤として許容される塩は、パーキンソン病などの神経変性疾患又は障害の治療において有用である他の薬剤と併せて使用される、実施形態40~41のいずれかによる方法。
【0121】
43.実施形態1~23のいずれかによる前記化合物又はその薬剤として許容される塩は、L-DOPA、セレジリン若しくはラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン若しくはトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン若しくはメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル若しくはガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール若しくはブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬からなる群から選択される化合物と併せて、又は抗体標的化α-シヌクレイン、Tau若しくはA-βタンパク質と併せて使用される、実施形態40~41のいずれかによる方法。
【0122】
E44.前記投与は、経口経路によって行われる、実施形態40~43のいずれかによる方法。
【0123】
E45.実施形態1~23のいずれかによる前記化合物又はその薬剤として許容される塩は、経口投与のための錠剤又はカプセル剤などの経口医薬組成物中に含まれる、実施形態40~44のいずれかによる方法。
【0124】
E46.パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害の治療のための、又は精神分裂病、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの神経精神疾患若しくは障害の治療のための薬物の製造における、実施形態1~23のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩の使用。
【0125】
E47.前記神経変性疾患又は障害は、パーキンソン病である、実施形態46による方法。
【0126】
E48.前記薬物は、パーキンソン病などの神経変性疾患又は障害の治療において有用である他の薬剤と併せて使用される、実施形態46~47のいずれかによる使用。
【0127】
E49.前記薬物は、L-DOPA、セレジリン若しくはラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン若しくはトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン若しくはメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル若しくはガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール若しくはブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬からなる群から選択される化合物と併せて、又は抗体標的化α-シヌクレイン、Tau若しくはA-βタンパク質と併せて使用される、実施形態46~47のいずれかによる使用。
【0128】
E50.前記薬物は、経口投与のための錠剤又はカプセル剤などの経口薬物である、実施形態46~49のいずれかによる使用。
【0129】
本発明に関連して、置換基(i)上の結合点の炭素原子(実施形態1に示す)は、(i)のアノマー位置にあることが理解される。
【0130】
本明細書に記載の刊行物、特許出願及び特許を含むすべての参考文献は、その全体として、且つ各参考文献が個々に及び具体的に参照により組み込まれるかのように示され且つその全体が記載されているのと同程度に(法律によって認められる最大限度まで)参照により本明細書に組み込まれる。
【0131】
見出し及び小見出しは、本明細書において便宜的に使用され、本発明を限定するものと決して解釈されるべきではない。
【0132】
1つ又は複数の要素に言及する場合に「含む」、「有する」、「包含する」又は「含有する」などの用語を用いた、本発明のいずれかの態様又は本発明の態様の本明細書における説明は、別段の指定がない限り又は文脈に明確に矛盾がない限り、その1つ又は複数の特定の要素「からなる」、「から本質的になる」又は「実質的に含む」、本発明の同様の態様又は本発明の態様に対する支持を提供することが意図される(例えば、特定の要素を含むと本明細書に記載される組成物は、別段の指定がない限り又は文脈に明確に矛盾がない限り、その要素からなる組成物も述べていると理解されるべきである)。
【0133】
本明細書におけるいずれかの及びすべての実施例又は例示的な用語(「例えば(for instance)」、「例えば(for example)」、「例として」及び「それ自体」など)の使用は、単に本発明をより明確にすることが意図され、別段の指定がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0134】
本明細書に記載の本発明の種々の態様、実施形態、実行及び特徴は、別々に又はいずれかの組み合わせで特許請求され得ると理解されるべきである。
【0135】
本発明は、適用可能な法律によって認められる通り、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載された主題のすべての修正形態及び均等物を包含する。
【0136】
本発明の化合物
【0137】
【表1】
【0138】
実験セクション
本発明の化合物の製造
式(Id)の化合物は、有機化学分野で公知の合成方法又は当業者によく知られた修正形態と共に、以下に記載の方法によって製造される。本明細書で使用される出発原料は、市販されているか、又は当技術分野で公知の慣例的な方法、例えば“Compendium of Organic Synthetic Methods,Vol.I-XII”(Wiley-Interscience出版)などの標準参考図書に記載の方法によって製造することができる。好ましい方法としては、限定されないが、以下の方法が挙げられる。
【0139】
そのスキームは、本発明の化合物の合成に有用な方法を表す。それらは、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
【0140】
LC-MS法
以下に同定される方法を用いてLC-MS分析データを得た。
【0141】
方法550:カラムマネジャー、二成分溶媒マネジャー、試料オーガナイザー、PDA検出器(254nMで操作)、ELS検出器及び陽イオンモードで動作するAPPI源を備えたTQ-MSを含む、Waters AquityからなるWaters Aquity UPLC-MSでLC-MSを行った。
LC条件:カラムは、水+0.05%トリフルオロ酢酸(A)及びアセトニトリル/水(95:5)+0.05%トリフルオロ酢酸からなる二成分勾配1.2ml/分を用いて、60℃で動作する、Acquity UPLC BEH C18 1.7μm;2.1×50mmであった。
勾配:
0.00分 10%B
1.00分 100%B
1.01分 10%B
1.15分 10%B
合計実施時間:1.15分
【0142】
方法551:カラムマネジャー、二成分溶媒マネジャー、試料オーガナイザー、PDA検出器(254nMで動作)、ELS検出器及び陽イオンモードで動作するAPPI源を備えたTQ-MSを含む、Waters AquityからなるWaters Aquity UPLC-MSでLC-MSを行った。
LC条件:カラムは、水+0.05%トリフルオロ酢酸(A)及びアセトニトリル/水(95:5)+0.05%トリフルオロ酢酸からなる二成分勾配1.2ml/分を用いて、60℃で動作する、Acquity UPLC HSS T3 1.8μm;2.1×50mmであった。
勾配:
0.00分 2%B
1.00分 100%B
1.15分 2%B
合計実施時間:1.15分
【0143】
方法555:カラムマネジャー、二成分溶媒マネジャー、試料オーガナイザー、PDA検出器(254nMで動作)、ELS検出器及び陽イオンモードで動作するAPPI源を備えたTQ-MSを含む、Waters AquityからなるWaters Aquity UPLC-MSでLC-MSを行った。
LC条件:カラムは、水+0.05%トリフルオロ酢酸(A)及びアセトニトリル/水(95:5)+0.05%トリフルオロ酢酸からなる二成分勾配0.6ml/分を用いて、60℃で動作する、Acquity UPLC BEH C18 1.7μm;2.1×150mmであった。
勾配:
0.00分 10%B
3.00分 100%B
3.60分 10%B
合計実施時間:3.6分
【0144】
方法111:190~800nMで動作するPDA検出器及びポジティブモードで動作するESI源を備えたMSからなるShimadzu LCMS-2020でLC-MSを実施した。
LC条件:カラムは、水+0.1%ギ酸(A)及びアセトニトリル+0.1%ギ酸(B)からなる勾配0.5ml/分を用いて、25℃で動作するPhenomenex Kinetex EVO C18 2.6?m;2.1×100mmであった。
勾配:
0.00分 2%B
1.00分 2%B
10.00分 90%B
13.00分 90%B
13.10分 2%B
18.00分 2%B
合計実施時間:18分
【0145】
方法222:190~800nMで動作するPDA検出器及びポジティブモードで動作するESI源を備えたMSからなるShimadzu LCMS-2020でLC-MSを実施した。
LC条件:カラムは、水+0.1%ギ酸(A)及びアセトニトリル(B)からなる勾配0.5ml/分を用いて、25で動作するPhenomenex Kinetex EVO C18 2.6?m;2.1×100mmであった。
勾配:
0.00分 2%B
1.00分 2%B
10.00分 90%B
13.00分 90%B
13.10分 2%B
18.00分 2%B
合計実施時間:18分
【0146】
分取LCMSを、以下に同定される方法を用いて実施した。
質量/UV検出の組み合わせを用いたWaters AutoPurificationシステム。
カラム:Sunfire 30×100mm、粒子5um。水+0.05%トリフルオロ酢酸(A)及びアセトニトリル/水(3:5)+0.05%トリフルオロ酢酸からなる二成分勾配90ml/分を用いて40℃で動作する。
勾配:
0.00分 98%A
5.00分 50%A
5.50分 98%A
6.00分 98%A
【0147】
ポジティブ又はネガティブモードで動作するエレクトロスプレーを備えたBruker Compact qTOFで高分解能(HighRes)MSを実施した。直接注入を用い、ギ酸ナトリウムで較正を行った。
【0148】
本発明の化合物の製造 - 一般的方法
例えば、国際公開第2009/026934号パンフレットに開示されるように製造することができる化合物(I)を本発明の化合物の合成に中間体として使用した。簡単に言えば、本発明の化合物(Id-ia)及び(Id-ib)は、ジクロロメタン中のDIPEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)の存在下においてトリイソプロピルシリルクロリドと(I)を反応させ、モノシリル化中間体(4aR,10aR)-1-プロピル-7-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-オール及び(4aR,10aR)-1-プロピル-6-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-オールの混合物を得て、それを続いてt-ブチルオキシカルボニル保護性基での保護、Boc保護にかけて、中間体t-ブチル((4aR,10aR)-1-プロピル-7-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)カーボネート[A]及びt-ブチル((4aR,10aR)-1-プロピル-6-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)カーボネート[Bを得ることにより、(I)から製造することができ、続いて、TEA-3HF(トリエチルアミントリヒドロフルオリド)を使用してシリル基の除去及びアセチル無水物を用いて再保護を行い、(4aR,10aR)-6-((t-ブトキシカルボニル)オキシ)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イルアセテートと、(4aR,10aR)-7-((t-ブトキシカルボニル)オキシ)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イルアセテートの混合物が得られる。次いで、ルイス酸触媒として、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(BF-OEt)の存在下において、四酢酸共役供与体((2S,3R,4S,5S,6S)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,4,5-テトライルテトラアセテート)を用いてグルクロニド共役を行い、目的の共役付加物(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(((4aR,10aR)-7-アセトキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)オキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテートと、(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(((4aR,10aR)-6-アセトキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテートとの混合物を得た。次いで、湿潤メタノール中のKCNを用いて、粗混合物を加水分解にかけて、(Id-ia)及び(Id-ib)が得られ、それをカラムクロマトグラフィーによって分離することができる。簡単に言えば、本発明の化合物(Id-iia)及び(Id-iib)は、((I)をピリジン中のピリジン三酸化硫黄と反応させ、モノスルフェート(Id-iia)及び(Id-iib)の混合物を提供することにより、(I)から製造することができ、それをカラムクロマトグラフィーによって分離することができる。
【0149】
本発明の例示的な化合物
(Id-iia):(4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル硫酸水素塩、及び
(Id-iib):(4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル硫酸水素塩。
【化16】

(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール塩酸塩(1.51g)を室温で窒素雰囲気下においてピリジン(25ml)中に懸濁し、ピリジン三酸化硫黄錯体(2.31g)を添加し、懸濁液を室温で攪拌した。15及び23時間後、さらなるピリジン三酸化硫黄錯体(2×(2.1g、13.1mmol))を添加し、混合物を室温で一晩攪拌した。合計2日間攪拌した後、粗混合物をMeOH/ジクロロメタンで希釈し、濾過助剤で直接蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(溶離剤:酢酸エチル/トリエチルアミン/MeOH、95:5:0~70:5:25)によって精製し、比約3:1の2種類のスルフェートが得られた。混合物をMeOH10mLに懸濁し、水50mLをゆっくりと添加し、得られた懸濁液を室温で攪拌した。7時間後、懸濁液を濾過し、沈殿物を水2×10mLで洗浄し、40℃において真空オーブン内で一晩乾燥させ、固形物として1.26gの粗収量を得た。分取LC-MSを用いて、スルフェートの混合物を分離し、(Id-iib)と(Id-iia)とのいずれも、50mL MeOH中で還流し、室温で32時間攪拌することにより、粉砕による精製にかけた。懸濁液を濾過し、沈殿物をMeOH 2×5mLで洗浄し、40℃において真空オーブン内で一晩乾燥させ、次いでアセトニトリル50mLに懸濁し、室温で19時間攪拌し、沈殿物をアセトニトリル2×10mLで洗浄し、40℃において真空オーブン内で乾燥させて、固形物として(Id-iib)(4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル硫酸水素塩(0.52g、1.5mmol、収率30%)及び固形物として(Id-iia)(4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル硫酸水素塩(0.15g、0.45mmol、収率9%)を得た。
【0150】
(Id-iib)
LCMS(方法555)1.29分.
H NMR(600MHz,DMSO-d)δ 9.06(s,1H),8.89(s,1H),6.89(d,J=8.2Hz,1H),6.58(d,J=8.3Hz,1H),3.52(d,J=12.1Hz,1H),3.35-3.32(m,1H),3.31-3.22(m,2H),3.10-3.01(m,2H),2.97(dd,J=17.4,5.1Hz,1H),2.74(dd,J=15.6,11.1Hz,1H),2.18(dd,J=17.4,11.6Hz,1H),1.97-1.69(m,5H),1.68-1.56(m,1H),1.35(qd,J=13.0,3.8Hz,1H),0.96(t,J=7.3Hz,3H).
【0151】
(Id-iia)
LCMS(方法555)1.37分.
H NMR(600MHz,DMSO-d)δ 9.07(s,1H),8.84(s,1H),6.82(d,J=8.3Hz,1H),6.70(d,J=8.3Hz,1H),3.51(d,J=12.0Hz,1H),3.34-3.30(m,1H),3.26(bs,2H),3.17-2.94(m,3H),2.75-2.67(m,1H),2.35(dd,J=17.6,11.9Hz,1H),1.90(t,J=13.8Hz,2H),1.85-1.69(m,3H),1.67-1.57(m,1H),1.40-1.31(m,1H),0.95(t,J=7.3Hz,3H).
【0152】
(Id-iiab):(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイルビス(硫酸水素塩)(トリエチルアミン塩)
【化17】

(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール塩酸塩(0.500g、1.68mmol)及びピリジン三酸化硫黄錯体(5.34g、33.6mmol)をアセトニトリル(10ml)に懸濁し、トリエチルアミン(7.02ml、50.4mmol)を室温で添加した。懸濁液を80℃に加熱し、窒素雰囲気下において16.5時間攪拌した。混合物を室温に冷却し、濾過助剤(10g)上で蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(溶離剤:酢酸エチル/トリエチルアミン/MeOH、75:5:20~45:5:50)によって精製し、オイル(1.51g)を得た。オイルをMeOH(10mL+DMSO3滴)で希釈し、t-ブチルメチルエーテル(MTBE)(2×10mL)をシリンジで添加した。油状固体が即座に沈殿した。懸濁液を濃縮し、得られた残留物をMeOH(20mL)及びトリエチルアミン(5mL)に吸収させて、濾過した。2分間にわたってMTBE(40mL)を濾液に添加し、固形物が徐々に沈殿した。沈殿物を濾過し、真空オーブン内で35℃において15分間乾燥させて、H NMR分析により(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイルビス(硫酸水素塩)を固形物として、且つトリエチルアミンとの1:1.3錯体として得た(0.531g、0.957mmol、収率57%)。
LCMS(方法555)rt=1.00分.
酸性条件でジスルフェートが不安定であるため、LCMSにより純度の良好な検出は得られない。
H NMR(600MHz,DMSO-d)δ 8.93(s,1H),8.80(s,1H),7.40(d,J=8.5Hz,1H),6.77(d,J=8.6Hz,1H),3.48(d,J=11.7Hz,1H),3.37-3.19(m,5H),3.10(q,J=7.3Hz,7.8H,トリエチルアミン),3.02(s,1H),2.76-2.67(m,1H),2.46(dd,J=17.7,12.2Hz,1H),1.85(d,J=11.3Hz,2H),1.81-1.56(m,4H),1.37-1.26(m,1H),1.17(t,J=7.3Hz,11.7H,トリエチルアミン),0.95(t,J=7.3Hz,3H).
HRMS(ESI):C16H21NO8S22-[M-2H+]のm/z計算値209.5360,測定値209.5360.
【0153】
(Id-ia)、(Id-ib)及び(Id-iab)の製造のための中間体
中間体:(4aR,10aR)-1-プロピル-7-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-オール及び(4aR,10aR)-1-プロピル-6-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-オール。
【化18】

(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール塩酸塩(2.21g、7.43mmol)をジクロロメタン(80ml)に室温で窒素雰囲気下において懸濁し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(4.44g、6.0ml、34.4mmol)を添加し、続いてトリイソプロピルシリルクロリド(2.73g、3.0ml、14.16mmol)を添加し、混合物を室温で92時間攪拌した。MeOH10mLを添加し、粗混合物を蒸発させ、ジクロロメタン/ヘプタンで2回同時蒸発させて、ジクロロメタンに再溶解し、濾過助剤上で直接蒸発させ、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:n-ヘプタン/酢酸エチル/トリエチルアミン、100:0:0~35:60:5)によって精製し、オイルとして、(4aR,10aR)-1-プロピル-7-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-オール(3.14g)と、(4aR,10aR)-1-プロピル-6-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-オールとの混合物として3.14gを得た。NMR(CDCl3)からシリル化異性体の>30:1混合物であることが判明した。
【0154】
中間体:t-ブチル((4aR,10aR)-1-プロピル-7-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)カーボネート[A]及びt-ブチル((4aR,10aR)-1-プロピル-6-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)カーボネート[B]。
【化19】

前の工程からの混合物(4aR,10aR)-1-プロピル-7-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-オールと、(4aR,10aR)-1-プロピル-6-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-オール(2.94g、7.04mmol)とを窒素雰囲気下においてジクロロメタン(30ml)に溶解し、0℃に冷却した。ピリジン(6.00ml)に続いてジ-t-ブチルジカーボネート(6.30g)を添加し、反応混合物を3~4時間、室温に温め、次いで一晩室温で攪拌した。MeOH10mLを添加し、反応混合物を蒸発させ、ジクロロメタン/n-ヘプタンで2回同時蒸発させ、ジクロロメタンに溶解し、濾過助剤上で蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(溶離剤:n-ヘプタン/酢酸エチル/トリエチルアミン、100:0:0~75:20:5)による精製により、オイルとして、t-ブチル((4aR,10aR)-1-プロピル-7-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)カーボネート[A]と、t-ブチル((4aR,10aR)-1-プロピル-6-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)カーボネート[B]との混合物(3.6g)が得られた。乾燥後にNMR(CDCl3)から位置異性体の混合物が示された。
【0155】
中間体:(4aR,10aR)-6-((t-ブトキシカルボニル)オキシ)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イルアセテート及び(4aR,10aR)-7-((t-ブトキシカルボニル)オキシ)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イルアセテート。
【化20】

t-ブチル((4aR,10aR)-1-プロピル-7-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)カーボネート(3.600g、6.95mmol)(前の工程からの[A]:[B]の混合物)を0℃で窒素雰囲気下においてTHF(150ml)に溶解し、トリエチルアミントリヒドロフルオリド(2.97g、3.00ml、18.42mmol)を添加し、混合物を0℃で攪拌した。0℃で3時間後、ピリジン(10.0ml、124mmol)及び無水酢酸(4.33g、4.00ml、42.4mmol)を0℃で反応混合物に直接添加し、反応混合物を室温に温めた。16時間後、MeOH20mLを添加し、反応混合物を蒸発させ、ジクロロメタン/ヘプタンに再溶解し、濾過助剤上で蒸発させ、続いて乾燥カラム真空クロマトグラフィーで精製して、(4aR,10aR)-6-((t-ブトキシカルボニル)オキシ)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イルアセテート及び(4aR,10aR)-7-((t-ブトキシカルボニル)オキシ)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イルアセテートをオイル/泡として得た。
LCMS(方法550)rt=0.56分,[M+H]=404e/z.
【0156】
中間体:(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(((4aR,10aR)-7-アセトキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)オキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート及び(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(((4aR,10aR)-6-アセトキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート。
【化21】

(4aR,10aR)-6-((t-ブトキシカルボニル)オキシ)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イルアセテート(2.489g、6.17mmol)(想定される、(4aR,10aR)-6-((t-ブトキシカルボニル)オキシ)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イルアセテートと、(4aR,10aR)-7-((t-ブトキシカルボニル)オキシ)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イルアセテートとの混合物)を室温で窒素雰囲気下においてジクロロメタン(60ml)に溶解し、(2S,3R,4S,5S,6S)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,4,5-テトライルテトラアセテート(7.529g、20.01mmol)を添加し、続いて三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(6.72g、6.0ml、47.3mmol)を添加し、混合物を室温で5日間攪拌した。混合物をジクロロメタン及びMeOHで希釈し、濾過助剤上で蒸発させた。乾燥カラム真空クロマトグラフィーによって精製し、(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(((4aR,10aR)-7-アセトキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)オキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテートと、(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(((4aR,10aR)-6-アセトキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート(4.37g)との混合物を泡/固形物として得た。
LC-MS(方法555)rt=1.94分,[M+H]=620e/z.
【0157】
中間体:メチル(2S,3S,4S,5R,6S)-6-[[(4aR,10aR)-1-プロピル-6-[(2S,3R,4S,5S,6S)-3,4,5-トリアセトキシ-6-メトキシカルボニル-テトラヒドロピラン-2-イル]オキシ-3,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロ-2H-ベンゾ[g]キノリン-7-イル]オキシ]-3,4,5-トリアセトキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボキシレート
【化22】

(2S,3S,4S,5R,6R)-2-(メトキシカルボニル)-6-(2,2,2-トリクロロ-1-イミノエトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート(1.286g、2.69mmol)及び(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール塩酸塩(0.4g、1.343mmol)をジクロロメタン(5.28g、4.00ml、62.2mmol)に溶解し、次いで三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(0.381g、0.340ml、2.69mmol)を窒素雰囲気下において添加し、8mLバイアル中で窒素下において混合物を3日間攪拌した。さらなる(2S,3S,4S,5R,6R)-2-(メトキシカルボニル)-6-(2,2,2-トリクロロ-1-イミノエトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート(1.286g、2.69mmol)、及び
三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(0.381g、0.340ml、2.69mmol)を添加し、混合物を4時間攪拌し、次いで混合物を飽和水溶液NaHCO(30mL)中に注ぎ、次いでジクロロメタン(2×20mL)で抽出し、合わせた有機相を乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空内で乾燥状態まで蒸発させた。粗製フォームをヘプタン/酢酸エチル(1:1)に懸濁し、一晩攪拌した。続いてエーテル中のHCl(0.672ml、1.343mmol、2モル)を添加し、混合物を1時間攪拌し、真空内で乾燥状態まで蒸発させ、MTBE(40mL)を添加し、混合物を加熱して還流し、室温に冷却し、次いで混合物を濾過し、固形物を真空オーブン内で40℃において1日間乾燥させ、メチル(2S,3S,4S,5R,6S)-6-[[(4aR,10aR)-1-プロピル-6-[(2S,3R,4S,5S,6S)-3,4,5-トリアセトキシ-6-メトキシカルボニル-テトラヒドロピラン-2-イル]オキシ-3,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロ-2H-ベンゾ[g]キノリン-7-イル]オキシ]-3,4,5-トリアセトキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボキシレート塩酸塩(1.0854g、1.167mmol、収率87%)を得た。
LC-MS方法550rt=0.63分,[M+H]=895.7e/z.
【0158】
(Id-ib):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸、及び
(Id-ia):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸。
【化23】

(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(((4aR,10aR)-7-アセトキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)オキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテートと、(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(((4aR,10aR)-6-アセトキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート(3.82g、6.17mmol)との混合物をMeOH(100ml)及び水(20ml)に溶解し、0℃に冷却し、シアン化カリウム(7.295g、112mmol)を添加し、懸濁液を17.5時間ゆっくりと室温にした。粗混合物を濾過助剤上で蒸発させて乾燥させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:酢酸エチル/MeOH/水100:0:0~0:50:50)によって粗混合物を精製し、(Id-ib)及び(Id-ia)の比5~6:1を得た。混合物を分取LCMSによって分離した。(Id-ib)を含有する収集ピーク1画分をプールし、蒸発させ、同様の手法で製造された(Id-ib)-TFA186mgの他のバッチと合わせ、MeOHを用いて蒸発させ、乾燥させて固形物を得た。(Id-ib)をEtOH10mLに再懸濁し、MTBE100mLを添加し、得られた懸濁液を室温で8時間攪拌し、懸濁液を濾過し、沈殿物を2×10mL MTBEで洗浄し、真空オーブン内で一晩乾燥させて、(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸に対応する固形物として(Id-ib)1.601gを得た。(Id-ia)を含有する収集ピーク2画分をプールし、蒸発させ、MeOHが入った小さいフラスコに移し、蒸発させ、MeOH約12mLに再溶解し、分取LCMSによって再精製し、蒸発させてフォーム/固形物を得た。適切な画分をプールし、蒸発させ、小さいフラスコにMeOHと共に移し、蒸発させ、同様の手法で製造された40.7mg(Id-ia)の他のバッチと合わせた。合わせたバッチをEtOH2.5mLに溶解し、MTBE25mLを添加し、懸濁液を室温で攪拌した。8時間後、懸濁液を濾過し、沈殿物を2×2.5mL MTBEで洗浄し、真空オーブン内で一晩乾燥させて、固形物として(Id-ia)362.2mgを得た。(Id-ia)をEtOH約10mLに懸濁し、MTBE50mLを添加し、懸濁液を室温で攪拌し、19時間後に濾過し、沈殿物を2×10mL MTBEで洗浄し、真空オーブン内において40℃で乾燥させて、固形物として(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸(Id-ia)0.279gを得た。
【0159】
(Id-ib)
LCMS(方法551)rt=0.37分.
H NMR(600MHz,メタノール-d)δ 7.02(d,J=8.4Hz,1H),6.65(d,J=8.4Hz,1H),4.73(d,J=7.7Hz,1H),3.89(d,J=9.7Hz,1H),3.68-3.58(m,2H),3.54(dd,J=9.3,7.7Hz,1H),3.49(t,J=9.1Hz,1H),3.47-3.36(m,2H),3.30(dt,J=11.2,5.6Hz,1H),3.21-3.11(m,3H),2.85(dd,J=15.4,11.3Hz,1H),2.35(dd,J=17.6,11.5Hz,1H),2.12-2.02(m,2H),2.02-1.84(m,3H),1.81-1.71(m,1H),1.49(qd,J=13.0,3.7Hz,1H),1.09(t,J=7.3Hz,3H).
【0160】
(Id-ia)
LCMS(方法551)rt=0.39分.
H NMR(600MHz,メタノール-d)δ 6.87(d,J=8.3Hz,1H),6.74(d,J=8.4Hz,1H),4.62(d,J=7.9Hz,1H),3.75(dd,J=17.7,4.9Hz,1H),3.66-3.62(m,2H),3.61-3.51(m,2H),3.50-3.35(m,3H),3.31-3.22(m,1H),3.14(qd,J=12.7,4.0Hz,2H),2.83(dd,J=15.2,11.3Hz,1H),2.37(dd,J=17.7,11.7Hz,1H),2.12(d,J=13.4Hz,1H),2.08-2.00(m,1H),1.98-1.83(m,3H),1.81-1.71(m,1H),1.44(qd,J=13.2,3.9Hz,1H),1.09(t,J=7.3Hz,3H).
【0161】
(Id-iab):(2S,2’S,3S,3’S,4S,4’S,5R,5’R,6S,6’S)-6,6’-(((4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイル)ビス(オキシ))ビス(3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸)
【化24】

合成A
(1S,4aR,10aR)-1-プロピル-6,7-ビス(((2S,3R,4S,5S,6S)-3,4,5-トリアセトキシ-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン(0.25g、0.269mmol)を水(1.209g、1.209ml、67.1mmol)に溶解し、MeOH(3.83g、4.84ml、120mmol)及びKOH(0.393g、0.270ml、3.22mmol、46%)を添加し、密閉バイアル内で室温において一晩攪拌した。一晩で沈殿物が形成し、それを濾過によって単離した。固形物をMeOH(1.5mL)で洗浄し、(2S,2’S,3S,3’S,4S,4’S,5R,5’R,6S,6’S)-6,6’-(((4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイル)ビス(オキシ))ビス(3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸)2カリウム(0.096g、0.139mmol、収率51.6%)を得た。
LC-MS方法551rt 0.31分,[M+H]=614.2e/z.
【0162】
合成B
(1S,4aR,10aR)-1-プロピル-6,7-ビス(((2S,3R,4S,5S,6S)-3,4,5-トリアセトキシ-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン(0.2585g、0.278mmol)を水(1.250g、1.25ml、69.4mmol)に溶解し、MeOH(3.96g、5ml、124mmol)及びKCN(0.344g、5.28mmol)を添加し、密閉バイアルで室温において一晩攪拌した。一晩で沈殿物が形成し、それを濾過によって単離した。固形物をMeOH(1.5mL)で洗浄し、(2S,2’S,3S,3’S,4S,4’S,5R,5’R,6S,6’S)-6,6’-(((4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジyl)ビス(オキシ))ビス(3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸)2カリウム(0.0963g、0.139mmol、収率50.1%)を得た。
LC-MS 方法551 rt=0.34分,[M+H]=614.6e/z.
1H NMR(600MHz,DMSO-d6)δ 7.09(d,J=8.5Hz,1H),6.84(d,J=8.5Hz,1H),4.91-4.79(m,1H),4.78-4.66(m,1H),3.93(bs,22H(OH/水)),3.42(d,J=9.8Hz,1H),3.37-3.21(m,7H),3.19(s,1H),3.11(dd,J=16.2,4.9Hz,1H),2.90(d,J=11.0Hz,1H),2.67(ddd,J=12.9,10.7,5.6Hz,1H),2.49(dd,J=15.9,10.9Hz,1H),2.39-2.27(m,1H),2.15(dt,J=17.5,11.5Hz,2H),2.05(td,J=10.4,4.9Hz,1H),1.86(d,J=11.7Hz,1H),1.67-1.38(m,5H),1.03(qd,J=12.3,5.1Hz,1H),0.85(t,J=7.3Hz,3H).
【0163】
本発明の範囲によって包含されるさらなる化合物
以下の2種類の化合物も本発明の範囲によって包含される:
(Id-iaiib):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((4aR,10aR)-1-プロピル-7-スルホ-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸、及び
(Id-iiaib):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((4aR,10aR)-1-プロピル-6-スルホ-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸。
【化25】
【0164】
PK比較のためのアポモルヒネ抱合体の製造
(R)-11-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10-イル硫酸水素塩
【化26】

アポモルヒネ塩酸塩半水化物1.0g(3.19mmol、1.0当量)をアルゴン雰囲気下において室温でピリジン3.3mLに懸濁した。三酸化硫黄-ピリジン錯体1.7g(10.68mmol、3.34当量)をこの懸濁液に添加し、温度40℃において17時間攪拌し、分取HPLCによって精製した。主要な異性体(R)-11-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10-イル硫酸水素塩を単離し(78mg)、UV純度98.8%であった。
LC-MS 方法111 rt=5.18分,[M+H]=348.1e/z.
1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ 9.91(br,1H),9.30(s,1H),8.27(d,J=5.0Hz,1H),7.39(m,1H),7.20(d,J=5.0Hz,1H),7.10(d,J=5.0Hz,1H),6.84(d,J=5.0Hz,1H),4.42(bs,1H),3.77(bs,1H),3.45(d,J=10.0Hz,2H),3.25-3.21(m,1h),3.20-3.10(m,4h),2.71(t,J=10.0Hz,1H).
【0165】
(R)-10-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-11-イル硫酸水素塩:
【化27】

(R)-11-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10-イル硫酸水素塩と同じ方法を用いたが、マイナー成分(minor component)を得るためにわずかな変更のみ行った。反応時間を3時間に減らし、三酸化硫黄-ピリジンを3回に分けて添加した(850mgから開始し、且つ500mgから2回開始して、3回のバッチを実施した)。反応混合物をプールし、分取HPLCで精製し、マイナーな異性体(R)-10-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-11-イル硫酸水素塩50mgを得た。
LC-MS 方法222 rt=4.99分,[M+H]=348.1e/z.
1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ 10.00(br,1H),9.30(s,1H),8.26(bs,1H),7.23(bs,1H),7.11(bs,1H),7.01(d,J=10.0Hz,1H),6.78(d,J=10.0Hz,1H),3.50-2.20(m,7h).
【0166】
中間体:(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(((R)-11-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10-イル)オキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート
【化28】

アポモルヒネ(遊離塩基)480mg(1.796mmol)及び1,2,3,4-テトラ-o-アセチル-β-D-グルコピランウロネート4.72g(12.54mmol、7.0当量)をアルゴン雰囲気下において室温でジクロロメタン40mLに溶解した。10分で溶解された出発原料により、青色の溶液が得られた。この溶液に三フッ化ホウ素エチルエーテラート3.0mL(3.45g、13.5当量)をアルゴン雰囲気下において添加し、それを室温で2時間攪拌した。重炭酸ナトリウム飽和溶液80mLに反応を注ぎ、10分間攪拌し、次いで分離した。水相をCHCl(3×40mL)で抽出した。合わせた有機相を飽和重炭酸ナトリウム溶液(1×40mL)及びブライン(1×40mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させて固形物4.5gを得た(理論収量約1.0g)。CHCl:MeOH=96:4を用いて、フラッシュクロマトグラフィーで粗生成物を精製した。精製後、(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(((R)-11-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10-イル)オキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート190mgを得た。
【0167】
(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((R)-11-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸
【化29】

(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(((R)-11-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10-イル)オキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート250mg(0.432mmol)をMeOH6.1mL及び水1.2mLの混合物に溶解し、0℃に冷却した。その温度でKCN526mg(8.07mmol、18.7当量)を添加した。反応混合物を攪拌し、室温に温め、さらに2時間攪拌した。反応を濾過し、水-アセトニトリル-0.1%TFA溶離剤中で直接、分取HPLCで精製した。回収された画分からアセトニトリルを室温において真空中で蒸発させ、水性残留物を凍結乾燥させて、粉末として(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((R)-11-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸のTFA塩133mgを得た。その構造は、LCMS及びNMRによって検証された。
LC-MS 方法111 rt=4.30分,[M+H]=444.2e/z.
1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ 12.84(br,1H),10.00(bs,1H),8.87(s,1H),8.29(d,J=10.0Hz,1H),7.40(m,1H),7.21(d,J=5.0Hz,1H),7.02(d,J=10.0Hz,1H),6.83(d,J=5.0Hz,1H),5.77(s,1H),5.45-5.20(m,2H),4.84(d,J=5.0Hz,1H),4.34(bs,1H),3.92(d,J=10.0Hz,1H),3.76(bs,1h),3.55-3.00(m,11H,OH/水),2.75-3.30(m,4H).
【0168】
本発明の化合物の生体外及び生体内での特徴付け
実施例1a:ラット及びヒト肝細胞における本発明の化合物の転化
HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を含むDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)(pH7.4)に懸濁されたヒト又はラット由来の肝細胞と共に、1μg/mLにおいて化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、(Id-iib)、(Id-iab)及び(Id-iiab)をそれぞれインキュベートした。インキュベーションでの細胞濃度は、1×10生細胞/mLであった。インキュベーションは、ガラス管内において37℃で実施し、総インキュベーション体積3.5mLであり、それぞれの試験アイテムに対して二重反復でインキュベーションを行った。肝細胞懸濁液3.5mLを37℃に設定された水浴中で10分間平衡化し、その後、DMSO(ジメチルスルホキシド)中の試験アイテムのストック溶液3.5μLを添加し、穏やかにチューブを反転させることにより、インキュベーションが開始された。インキュベーションにおける最終溶媒濃度は、0.1%DMSOであった。肝細胞懸濁液の均一性が確実になった後、0.25、5、15、30及び60分の所定の時点で600μLの試料をインキュベーションから採取した。0.5Mクエン酸中に氷冷アスコルビン酸(100mg/mL)60μL及び氷冷100mM糖酸1.4-ラクトン30μLを含有する、湿った氷上の1mL Nuncクライオチューブに、採取された体積を添加した。チューブを混合し、氷冷の20%ギ酸溶液35μLを添加した。チューブを十分に混合し、-80℃で保管して分析を待った。(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)及び(Id-iib)の投与からの(I)の分析のために使用される分析方法及び装置は、「化合物(Ic)、(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、(Id-iib)、(Id-iab)及び(Id-iiab)の投与からの化合物(I)の分析のために使用される装置」のセクションにおいて実施例4及び5に記載の方法及び装置であった。
【0169】
(Id-iab)及び(Id-iiab)の投与からの(I)の分析に使用される分析方法及び装置は、試料と沈殿溶液(10%メタノール(MeOH)及び1%ギ酸を含むアセトニトリル(MeCN))との等しいアリコートを混合すること、続いて16000gにおいて4℃で10分間遠心分離することからなった。上清を回収し、LC-MS/MSによって分析した。質量分析計:Waters Acquity-Waters Xevo TQ-MS。分析カラム:Acquity UPLC HSS T3、100×2.1mm、1.8μm。移動相A:水中で0.2%ギ酸。移動相B:アセトニトリル中0.2%ギ酸。5分で95/5%から60/40に移動する勾配。流量0.3mL/分。研究試料及び分析標準における(I)のMRMモニタリング。
【0170】
図7から、ラット及びヒト肝細胞の両方における(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、(Id-iib)及び(Id-iab)から化合物(I)への時間依存的転化が示される。(Id-iiab)について、化合物(I)の形成は、所定の試験条件において検出することができなかった。
【0171】
実施例1b:新鮮なラット及びヒトの血液中での本発明の化合物の転化
ヒト血液(ドナー3名の平均)及びラット血液(ドナー45匹の平均)中の(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)及び(Id-iib)の(I)への転化を、それぞれ(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)及び(Id-iib)1μg/mLでスパイクされた37℃の新鮮血液中で示し、(I)を単離血漿中で0、5、15、30及び60分において測定した。「化合物(Ic)、(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、(Id-iib)、(Id-iab)及び(Id-iiab)の投与からの化合物(I)の分析に使用される装置」のセクションにおいて以下の実施例4及び5に記載される分析方法及び装置である。
【0172】
図8から、ラット及びヒト血液の両方中の(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)及び(Id-iib)から化合物(I)への時間依存的転化が示される。
【0173】
実施例2:ドーパミンアゴニスト活性
ドーパミンD1受容体アゴニズム
HD Biosciences(China)によって開発されたプロトコルを用いて、CisBioからのHTRF cAMPを使用してドーパミンD1受容体アゴニズムを測定した。簡潔には、アッセイは、細胞によって産生された天然cAMPと、XL-665で標識化されたcAMPとの競合イムノアッセイにおける細胞によるcAMPの産生を測定する、ホモジニアス時間分解-蛍光共鳴エネルギー移動(HTRF)アッセイである。クリプテート標識化抗cAMP抗体がトレーサーを可視化する。製造元からの説明書に従ってアッセイを実施した。
【0174】
マイクロプレートのウェルに試験化合物を添加した(384フォーマット)。ヒトD1受容体を発現するHEK-293細胞を1000細胞/ウェルでプレーティングし、室温で30分間インキュベートした。cAMP-d2トレーサーをウェルに添加し、続いて抗cAMP抗体-クリプテート調製物を添加し、暗所で室温において1時間インキュベートした。337nmレーザー(「TRFライトユニット」)でドナーを励起し、続いて200マイクロ秒の時間窓にわたる615nm及び665nmでのクリプテート及びd2発光(繰り返し間の時間窓2000マイクロ秒/100フラッシュを測定することによってHTRF cAMPを測定した(遅延時間100マイクロ秒)。Envisionマイクロプレートリーダー(パーキンエルマー(PerkinElmer))でのHTRF測定を実施した。615nmに対して665nmにおいて発光比としてHTRFシグナルを計算した。DMSO溶媒又は30uMドーパミンを含むコントロールウェルを使用して、試験化合物について読み取られたHTRF比を0%及び100%刺激に正規化した。Xlfit4(IDBS,Guildford,Surrey,UK,モデル205)を使用して、シグモイド型用量反応(可変勾配)を用いて、非線形回帰によって試験化合物効力(EC50)を推定した。
y=(A+((B-A)/(1+((C/x)^D))))
式中、yは、試験化合物の所定の濃度に対する正規化されたHTRF比測定値であり、xは、試験化合物の濃度であり、Aは、無限化合物希釈での推定効力であり、Bは、最大効力である。Cは、EC50値であり、Dは、ヒル(Hill)勾配係数である。EC50推定値は、非依存的実験から得られ、対数平均が計算された。
【0175】
ドーパミンD2受容体アゴニズム
HD Biosciences(China)によって開発されたカルシウム動員アッセイプロトコルを用いて、ドーパミンD2受容体アゴニズムを測定した。簡潔には、ヒトD2受容体を発現するHEK293/G15細胞を、密度15000細胞/ウェルにおいて透明底のマトリゲル(Matrigel)コート384ウェルプレートにプレーティングし、5%COの存在下において37℃で24時間増殖させた。細胞をカルシウム感受性蛍光染料Fluo8と共に、37℃において暗所で60~90分間インキュベートした。Ca2+及びMg2+を有する1×HBSSバッファー中の3倍濃縮溶液で試験化合物を調製した。化合物プレートからFLIPR(Molecular Devices)の細胞プレートに化合物を添加した後、カルシウム流入シグナルを直ちに記録した。蛍光データを正規化して、0%及び100%刺激のそれぞれの刺激なし(バッファー)及び完全刺激(ドーパミン1μM)に対する反応を得た。Xlfit4(IDBS,Guildford,Surrey,UK,モデル205)を使用して、シグモイド型用量反応(可変勾配)を用いて、非線形回帰によって試験化合物効力(EC50)を推定した。
y=(A+((B-A)/(1+((C/x)^D))))
式中、yは、試験化合物の所定の濃度に対する正規化された比測定値であり、xは、試験化合物の濃度であり、Aは、無限化合物希釈での推定効力であり、Bは、最大効力である。Cは、EC50値であり、Dは、ヒル勾配係数である。EC50推定値は、非依存的実験から得られ、対数平均が計算された。
【0176】
実施例3:5-HT2Bアゴニスト活性及び結合アッセイ
5-HT2Bアゴニスト活性アッセイ
HTRF検出法を用いて、Eurofins/Cerep(France)により、イノシトール一リン酸(IP1)産生に対する化合物の作用を測定して、ヒト5-HT2B受容体での化合物(I)、(Ia)及び(Ib)のアゴニスト活性の評価を行った。簡潔には、ヒト5-HT2B受容体がトランスフェクトCHO細胞において発現された。10mM Hepes/NaOH(pH7.4)、4.2mM KCl、146mM NaCl、1mM CaCl、0.5mM MgCl、5.5mMグルコース及び50mM LiClを含有するバッファー中に細胞を懸濁し、次いで密度4100細胞/ウェルにおいてマイクロプレートに分配し、バッファー(基礎コントロール)、試験化合物又は参照アゴニストの存在下において37℃で30分間インキュベートした。刺激されたコントロールの測定のために、個々のアッセイウェルは、1μM 5-HTを含有した。インキュベーション後、細胞を溶解し、蛍光受容体(フルオロフェン(fluorophen)D2標識化IP1)及び蛍光供与体(ユーロピウムクリプテートで標識化された抗IP1抗体)を添加した。室温において60分後、λ(Ex)337nm並びにλ(Em)620及び665nmにおいて、マイクロプレートリーダー(Rubystar,BMG)を使用して蛍光の移行を測定した。665nmで測定されたシグナルを620nmで測定されたシグナルで割ることにより、IP1濃度を決定した(比率)。その結果を1μM 5-HTに対するコントロールの応答のパーセントとして表した。標準参照アゴニストは、5-HTであり、それを数通りの濃度でそれぞれの実験で試験して、濃度反応曲線を作成し、その曲線から、そのEC50値は、ドーパミン機能性アッセイについて上述のように計算される。
【0177】
5-HT2B結合アッセイ
ヒト5-HT2B受容体に対する化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、(Id-iib)及び(Id-iab)の親和性の評価をEurofins/Cerep(フランス(France))で放射性リガンド結合アッセイにおいて決定した。50mM トリスHCl(pH7.4)、5mM MgCl、10μMパージリン及び0.1%アスコルビン酸を含有するバッファー中の試験化合物の非存在下又は存在下において、ヒト5HT2B受容体を発現するCHO細胞から調製された膜ホモジネートを0.2nM[125I](±)DOI(1-(4-ヨード-2,5-ジメトキシフェニル)プロパン-2-アミン)と共に室温で60分間インキュベートした。非特異的な結合は、1μM(±)DOIの存在下において決定される。インキュベーション後、0.3%ポリエチレンイミン(PEI)で予浸されたガラス繊維フィルター(GF/B,Packard)を通して、試料を真空下において迅速に濾過し、96試料細胞ハーベスター(Unifilter,Packard)を使用して、氷冷50mMトリスHClで数回すすいだ。フィルターを乾燥させ、シンチレーションカクテル(Microscint 0,Packard)を使用してシンチレーション計数器(Topcount,Packard)において放射能についてカウントした。コントロール放射性リガンド特異的な結合の抑制パーセントとして結果を表す。標準参照化合物は、(±)DOIであり、それを数通りの濃度でそれぞれの実験で試験して、競合曲線が得られ、その曲線からそのIC50が計算される。
【0178】
【表2】
【0179】
実施例4:ラットにおけるPK実験
すべての実験に関して、約0.68mLの血液試料を尾又は舌下静脈から採取し、予め冷却されており、且つ水中のアスコルビン酸80μL及び100mMD-糖酸1,4ラクトン40μLからなる安定化溶液で調製されたK3EDTAチューブに血液試料を入れた。チューブを6~8回穏やかに反転させ、十分に混合し、次いで湿った氷上に置いた。遠心分離するまで、回収チューブを湿った氷上に30分までの間置いた。湿った氷から除去した後、遠心分離を直ちに開始した。遠心分離が終了した直後に試料を湿った氷上に戻した。予め冷却されたギ酸(20%)を含有する適切に標識された3つのクライオチューブのそれぞれに血漿130μLの3つの副試料を移した(チューブは、予めスパイクされており、使用前に冷蔵保存された)。チューブの蓋を直ちに取り換え、穏やかに6~8回反転させることにより、血漿溶液を完全に混合した。サンプリング後60分以内に試料を名目上-70℃において凍結保存した。遠心条件は、4℃で3000Gにおいて10分間であった。回収後、血漿を氷水上に置いた。約-70℃での最終保存。
【0180】
固相抽出又は直接タンパク質沈殿に続いて、UPLC-MS/MSによって血漿試料を分析した。応答を補正する内標準を使用した、化合物(I)の特異的な質量/電荷トランジションのモニタリングによる陽イオンモードでのエレクトロスプレーを用いたMS検出。適切なノンコンパートメント技術を用いて標準ソフトウェアを使用して、濃度-時間データを分析し、誘導PKパラメーターの推定値を得た。
【0181】
化合物(Ia)を投与することからの化合物(I)の分析に使用される装置:
質量分析計(LC-MS/MS)Waters Acquity-Sciex API 5000。分析カラムWaters BEH UPLC Phenyl 100×2.1mmカラム、粒径1.7μm。移動相A:20mMギ酸アンモニウム(水性)+0.5%ギ酸。移動相B:アセトニトリル。6.1分で95/5%から2/98%に移動する勾配。流量0.5mL/分。試験アイテム及び追加された分析標準のMRMモニタリング(多重反応モニタリング)。
投与及び血液サンプリング:Charles River Laboratories,Sulzfeld,GermanyによってHanウィスターラットが供給された。自動制御の人工的な12時間の明及び暗サイクルを維持した。Brogaardenから入手した標準実験室食餌(Altromin1324ペレット)がラットに与えられた。ラットは、食餌に自由にアクセスできた。研究(4週間の毒性研究)中、経管栄養法によってラットに(Ia)の用量を1日1回経口投与した。(Ia)300μg/kgが投与されたラットから、雄のサテライト動物3匹からの血液試料)を29日目の以下の時点:投与後0.5、1、2、4、6、8、12及び24時間で採取した。
【0182】
化合物(Ib)の投与からの化合物(I)の分析に使用される装置:
質量分析計(LC-MS/MS)Waters Acquity -Sciex API5000。分析カラムWaters BEH UPLC Phenyl 100×2.1mmカラム、粒径1.7μm。移動相A:20mMギ酸アンモニウム(水性)+0.5%ギ酸。移動相B:アセトニトリル。6.1分で95/5%から2/98に移動する勾配。流量0.5mL/分。試験アイテム及び追加された分析標準のMRMモニタリング。
投与及び血液サンプリング:Charles River Laboratories(UK)によってHanウィスターラットが供給された。自動制御の人工的な12時間の明及び暗サイクルを維持した。標準実験室食餌(Teklad 2014C Diet)がラットに与えられた。ラットは、食餌に自由にアクセスできた。研究(26週間の毒性研究)中、経管栄養法によってラットに(Ib)の用量を1日1回経口投与した。(Ib)300μg/kgが投与されたラットから、雄のサテライト動物3匹からの血液試料を182日目の以下の時点:投与後0.5、1、2、4、8及び24時間で採取した。
【0183】
化合物(Ic)、(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、(Id-iib)、(Id-iab)及び(Id-iiab)の投与からの化合物(I)の分析に使用される装置:
質量分析計(LC-MS/MS)Waters Acquity-Waters Xevo TQ-S。分析カラムAcquity BEH C18 100×2.1mm、1.7μm。移動相A:20mMギ酸アンモニウム+0.2%ギ酸。移動相B:アセトニトリル+0.2%ギ酸。11.0分で95/5%から5/95%に移動する勾配。流量0.3mL/分。試験アイテム及び追加された分析標準のMRMモニタリング。
化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)及び(Id-iib)の投与及び血液サンプリング:Charles River Laboratories,Wiga GmbH,GermanによってHanウィスターラットが供給された。自動制御の人工的な12時間の明及び暗サイクルを維持した。Brogaardenから入手した標準実験室食餌(Altromin1324ペレット)がラットに与えられた。ラットは、食餌に自由にアクセスできた。(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)及び(Id-iib)のそれぞれを単回経口経管栄養法投与で雄のHanウィスターラットに経管栄養法によって経口投与した。(Id-ia)及び(Id-ib))633μg/kg又は(Id-iia)及び(Id-iib)392μg/kgが投与されたラットから、雄の動物3匹からの血液試料を1日目の以下の時点:投与後1、2、4、6、8及び24時間で採取した。
化合物(Ic)、(Id-iab)及び(Id-iiab)の投与及び血液サンプリング:Envigo,UKによってHanウィスターラットが供給された。自動制御の人工的な12時間の明及び暗サイクルを維持した。標準実験室食餌Teklad 2014Cがラットに与えられた。ラットは、食餌に自由にアクセスできた。(Ic)、(Id-iab)及び(Id-iiab)のそれぞれを単回経口経管栄養法で雄のHanウィスターラットに経管栄養法によって経口投与した。ラットに(Id-iab)793μg/kg、(Id-iiab)703μg/kg及び(Ic)494μg/kgを投与した。雄の動物3匹からの血液試料を1日目の以下の時点:投与後1、2、4、6、8及び24時間で採取した。
【0184】
アポモルヒネ並びに対応するグルクロニド抱合体:(((2S,3S,4S,5R,6S)-6-[[(6aR)-11-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10-イル]オキシ]-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボン酸及び硫酸抱合体:[(6aR)-11-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10-イル]硫酸水素塩及び[(6aR)-10-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-11-イル]硫酸水素塩)を投与することからの分析アポモルヒネに使用される装置:
質量分析計(UPCLC-MS/MS)Waters Acquity I-Class-Waters Xevo TQ-S。分析カラムAcquity HSS T3 C18 50×2.1mm、1.8μm。移動相A:10mMギ酸アンモニウム0.2%ギ酸:アセトニトリル(95:5)。移動相B:10mMギ酸アンモニウム0.2%ギ酸:アセトニトリル(5:95)。2.40分で95/5%から5/95%に移動する勾配。流量0.3mL/分。試験アイテム及び追加された分析標準のMRM検出。
投与及び血液サンプリング:Charles River Laboratories,Wiga GmbH,GermanyによってHanウィスターラットが供給された。自動制御の人工的な12時間の明及び暗サイクルを維持した。Brogaardenから入手した標準実験室食餌(Altromin1324ペレット)がラットに与えられた。ラットは、食餌に自由にアクセスできた。雄のHanウィスターラットにアポモルヒネを単回投与で皮下投与するか若しくは経管栄養法により経口投与するか、又はアポモルヒネ抱合体を単回投与で皮下投与するか若しくは経管栄養法により経口投与した。3000μg/kg(アポモルヒネ)又は3899μg/kg(硫酸抱合体)又は4977μg/kg(グルクロニド抱合体)が投与されたラットから、雄の動物3匹からの血液試料を1日目の以下の時点:皮下投与の0.25、0.5、1、2、4及び8時間並びに経口投与した後の0.5、1、2、4、8及び24時間で採取した。
【0185】
【表3】
【0186】
実施例5:ミニブタにおけるPK実験
血液試料約0.5mLをシリンジによって頚静脈から採取し、実施例4のラットについて記載の安定化溶液を含む、予め冷却されたEDTAチューブに血液試料を入れた。血漿中の化合物の濃度を測定した。固相抽出又は直接タンパク質沈殿に続いて、UPLC-MS/MSによって血漿試料を分析した。応答を補正する内標準を使用して、問題の化合物の特異的な質量/電荷トランジションのモニタリングによる陽イオンモードでのエレクトロスプレーを用いたMS検出。適切なワンコンパートメント技術を用いて標準ソフトウェアを使用して、濃度-時間データを分析し、誘導PKパラメーターの推定値を得た。
【0187】
化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)及び(Id-iib)の投与からの化合物(I)の分析に使用される装置。
質量分析計(LC-MS/MS)Waters Acquity-Waters Xevo TQ-S。分析カラムAcquity BEH C18 100×2.1mm、1.7μm。移動相A:20mMギ酸アンモニウム+0.2%ギ酸。移動相B:アセトニトリル+0.2%ギ酸。11.0分で95/5%から95/5%に移動する勾配。流量0.3mL/分。試験アイテム及び追加された分析標準のMRMモニタリング。
Ellegaard,DKによって供給された雌のEllegaard Gottingenミニブタにおける単回投与薬物動態学的研究からの投与及び血液サンプリング。自動制御の人工的な12時間の明及び暗サイクルを維持した。Brogaardenからの標準実験室食餌(Altrominペレット)がミニブタに与えられた。ミニブタは、食餌に自由にアクセスできた。化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)及び(Id-iib)がそれぞれ経管栄養法によりミニブタに経口投与された。化合物(Id-ia)及び(Id-ib)をそれぞれ160μg/kg又は化合物(Id-iia)及び(Id-iib)をそれぞれ80μg/kgミニブタに投与し、メスの動物3匹からの血液試料を1日目の以下の時点:投与後1、2、4、6、8、12及び24で採取した。
【0188】
【表4】
【0189】
実施例6:ラットの機能亢進アッセイにおける化合物(Id-ia)/化合物(I)のPK/PD
動物
合計で体重200~250グラム(到着時165~190グラム)の雄のCDラット(Charles River,Germany)206匹を研究に使用した。動物を標準温度(22±1℃)において、且つ食餌及び水に自由にアクセスできる光制御環境(午前7時から午後8時まで点灯)において動物を収容した。Charles River Discovery Research Services Finland Ltd.の標準作業手順に従い、且つ動物試験に関するThe National Animal Experiment Board of Finland(Elainkoelautakunta,ELLA)authorityに従って以下に記載の実験を実施した。
【0190】
歩行活動試験、オープンフィールド
試験デバイスは、正方形のプレキシグラス領域(測定値40×40×40cm)であり、その中でのラットの移動経路が活動モニター(Med.Associates Inc.)によって記録される。試験期間が開始される前にラットをその試験ケージに60分間慣らす。慣らしが完了したら、動物を化合物又は賦形剤のいずれかで処置し、オープンフィールド装置内に戻す。測定される主要な試験パラメーターは移動距離である(5分区間で記録される)。最初の処置を受けた後の全体の測定時間は、360分であった。研究における総経過観察時間は、慣らしの60分を含む420分であった。
【0191】
結果
化合物(Id-ia)の経口投与がラットの歩行活動アッセイにおいて評価され、次いで、この機能的読み取り値は、化合物(I)の血漿中濃度と相関した。アポモルヒネ及びプラミペキソールも、比較としてこのアッセイにおいて同時に試験され(すなわちパーキンソン病分野で公知の標準治療(SoC))、アポモルヒネについて血漿中濃度を分析した。図3に示すように、化合物(Id-ia)(10~300μg/kg、経口)により、歩行活動が増加し、投与後約2時間で効果が始まり(およそ180分の時点)、記録の最後(415分時点)まで続いた。対照的に、アポモルヒネ(3mg/kg、皮下)により誘発される機能亢進は、即時であるが、投与後1.5時間で効果が消えたために(150分の時点で)短時間のみ続く。プラミペキソール(0.3mg/kg、皮下)も活動の増加を誘発するが、その効果は、投与後約1時間で現れ、2.5時間後に消失する(270分の時点)。図4に見られる総移動距離から、試験された化合物(Id-ia)と2つの比較物との両方に関して活動の有意な増加が実証され、この効果は、ドーパミンアゴニストから予想される効果である。
【0192】
歩行活動アセスメントと並行して、異なる6時点(化合物(Id-ia)で処理された動物に関して投与後0.5、1、2、3、4及び6時間)でサテライト動物から血漿試料が採取された。薬物動態学的分析から、化合物(Id-ia)(100μg/kg、経口)の行動上の効果は、化合物(I)の血漿中濃度と相関することが実証され(図5を参照されたい)、化合物(Id-ia)自体ではなく化合物(I)により、化合物(Id-ia)の行動上の効果が誘導されることが実証されている。アポモルヒネ(投与後0.25、0.5、1、2、4及び6時間で)の対応する曝露分析により、アポモルヒネの血漿中濃度と機能亢進挙動との相関性が生じた(図6を参照されたい)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8