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特許7320517ポリグリセリン脂肪酸エステルの調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】ポリグリセリン脂肪酸エステルの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/08 20060101AFI20230727BHJP
   C07C 69/33 20060101ALI20230727BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
C07C67/08
C07C69/33
C07B61/00 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020541960
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 DE2018000363
(87)【国際公開番号】W WO2020119839
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】520280818
【氏名又は名称】イーオーイー オレオ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロッチマン,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】レイェール,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ステハー,マイケル
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-505598(JP,A)
【文献】特表2013-519635(JP,A)
【文献】特表2004-531464(JP,A)
【文献】特開平7-258157(JP,A)
【文献】特開平6-41007(JP,A)
【文献】特表2015-529672(JP,A)
【文献】有機合成化学協会誌,1960年,Vol. 18, No. 2,pp. 88-96
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/08
C07C 69/33
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間生成物からポリグリセリン脂肪酸エステルを精製する方法であって、
前記中間生成物がポリグリセリン脂肪酸エステルに加えて過剰な脂肪酸を含み、
前記中間生成物が反応方法を適応することによって得ることができ、
前記中間生成物の反応方法を含め、所定の順序で実行される以下の工程:
i)ポリグリセリンと脂肪酸が溶融して二相反応混合物を形成する前記反応方法中の液化工程と、
ii)前記反応混合物の乾燥が真空下で行われる前記反応方法中の乾燥工程と、
iii)前記反応混合物を400mbarの圧力で200℃から240℃に加熱する前記反応方法中の加熱工程と、
iv)前記反応混合物への圧力が段階的に400mbarから50mbar未満に低下する前記反応方法中の圧力低下と、
v)脂肪酸塩および脂肪相が形成され、前記脂肪相において1.0mgKOH/g未満の酸価が得られるまで行われる、塩基性溶液を用いた前記中間生成物の精製工程と、
vi)溶媒の除去と、
vii)ポリグリセリン脂肪酸エステルからの脂肪酸塩の分離が行われる分離工程と、によって特徴付けられる、精製方法。
【請求項2】
工程vi)で除去される溶媒は、塩基性溶液を用いた工程v)において導入される、請求項1に記載の精製方法。
【請求項3】
工程ii)の後かつ工程iii)の前に、工程ii-a)において、少なくとも、マンガン、亜鉛、コバルト又はチタンを含有する少なくとも1つの金属化合物を有する触媒が添加され、その他の残りの工程の順序は変化しないままである、請求項1又は2に記載の精製方法。
【請求項4】
前記金属化合物はテトラブチルチタネートからなることを特徴とする、請求項に記載の精製方法。
【請求項5】
工程vi)における前記溶媒の除去は、90℃から110℃で30mbar未満の圧力で行われることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の精製方法。
【請求項6】
脂肪酸と、ポリグリセリンとを含有し、少なくとも1つの金属化合物からなる触媒が添加された反応混合物からポリグリセリン脂肪酸エステルを調製するための合成方法を含み、
前記金属化合物は少なくとも、マンガン、亜鉛、コバルト又はチタンを含有し、
前記合成方法は前記反応混合物に使用される脂肪酸又は脂肪酸誘導体の量によるポリグリセリン脂肪酸フルエステルの調製に向けられている、方法であって、
請求項のいずれか一項に記載の精製方法によって特徴付けられる方法。
【請求項7】
脂肪酸と、ポリグリセリンとを含有し、少なくとも1つの金属化合物からなる触媒が添加された反応混合物からポリグリセリン脂肪酸エステルを調製するための合成方法を含み、
前記金属化合物は少なくとも、マンガン、亜鉛、コバルト又はチタンを含有する、方法であって、
前記合成方法が、前記反応混合物に使用される脂肪酸又は脂肪酸誘導体の量によるポリグリセリン脂肪酸部分エステルの調製に向けられ、
ポリグリセリンと脂肪酸が溶融して二相反応混合物を形成する液化工程と、
前記反応混合物の乾燥が真空下で行われる乾燥工程と、
前記反応混合物を400mbarの圧力で200℃から240℃に加熱する加熱工程と、
前記反応混合物への圧力が段階的に400mbarから50mbar未満に低下する圧力低下と、を含み、
請求項3~5のいずれか一項に記載の精製方法によって特徴付けられる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
金属触媒が添加された反応混合物からポリグリセリン脂肪酸エステルを調製するための方法、ならびにポリグリセリン脂肪酸エステルに加えて過剰な脂肪酸を含む中間合成生成物の精製のための方法について説明する。先行技術と比較して、原材料、補助材料、溶媒及びエネルギーのより経済的な使用とともに、大幅に改善された収率及びより高いプロセス速度が得られる。
【背景技術】
【0002】
PGEと略されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、例えば、食品及び化粧品業界の乳化剤として、防錆剤の成分として、繊維業界又は殺虫剤の可塑剤として、すでに工業的に使用されている。最近、医薬品の配合において適用の可能性が生じたが、ここで、好ましい調製は、潜在的に有毒な出発物質を使用せず、有毒な中間生成物及び副産物を生成しない合成によるものである。
【0003】
PGEの基本構造を形成できる最も単純なポリグリセリンは、実験式C14の直鎖及び分岐状ジグリセロールであり、これは、工業的規模及び知られた方法で合成でき、例えば、エーテル結合の形成を伴う塩基触媒作用下でグリセロールを2,3-エポキシ-1-プロパノールと反応させることにより、又は塩基触媒作用下での熱縮合により、ここで、主にジグリセロールを含む画分をその後分離することができる。
【発明の概要】
【0004】
ジグリセロールは、3つの異なる構造異性体の形で、つまり、直鎖の形で発生し、この場合、関与する2つのグリセロール分子のそれぞれの第1の炭素原子間にエーテルブリッジが形成され、分岐の形で、使用される第2のグリセロール分子の第1及び第2の炭素原子の第1の炭素原子の間にエーテルブリッジが形成され、そして核デンドリマー(nucleodendrimeric)の形で、それぞれの第2の炭素原子の間にエーテルブリッジが形成される。アルカリによって触媒された2つのグリセロール分子の縮合の場合、直鎖の形は最大約80%、分岐の形では最大約20%が発生するが、核デンドリマーの形は非常に少量しか生成されない。
【0005】
脂肪酸によるエステル化の場合、2つを超えるグリセリル単位を含むポリグリセリンも使用することができる。一般に、ポリグリセリンは「PG」と省略され、整数nが接尾辞として追加され、これにより、ポリグリセリル単位の数、つまり「PG」が提供される。例として、トリグリセロールはPGとして記述され、実験式C20を有する。脂肪酸、例えばステアリン酸による完全なエステル化は、PG分子のすべての遊離ヒドロキシル基で行われるはずである。直鎖PGの場合、これは第1のグリセリル単位の第1と第2の炭素原子、第2のグリセリル単位の第2の炭素原子、及び第3のグリセリル単位の第2と第3の炭素原子で起こる。従って、この例の実験式はC15として与えられ、ここで、各Rは、実験式C18OH35を使用して選択された例では、脂肪酸残基を表す。
【0006】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの場合、部分エステルとフルエステルを区別する必要がある。飽和非分岐脂肪酸でエステル化されたポリグリセリンの確立された略語は、PG(n)-Cmフルエステル、又は適宜、PG(n)-Cm部分エステルであり、括弧内の「n」は、ポリグリセリンの指定と同様に、分子に含まれるグリセリル単位の数を示し、mは、エステル化反応に使用される飽和脂肪酸の炭素原子の数を表す。従って、「n」は、実験式CRを有するグリセリル単位の数を表し、ここで、Rは、脂肪酸残基又は遊離ヒドロキシル基の水素原子を表すことができる。従って、「PG(2)-C18フルエステル」は、実験式C78150のポリグリセリン脂肪酸フルエステルを表す。PG(n)-Cm-部分エステルの場合、脂肪酸残基の数が平均化され、同時に、実験式により、大部分に最も多く存在するエステル化の変動を含む画分が得られる。ポリグリセリン脂肪酸部分エステルのより正確な名称は、ヒドロキシル価の追加の提供によって提供され、これは、非エステル化ヒドロキシル基含有量の尺度であり、従って部分エステルのエステル化の程度に関する情報を提供する。おそらく立体的な理由(steric reasons)から、この場合のエステル化反応は外側から内側へ優先的に起こる。従って、最初に、エステル化されるヒドロキシル基は、脂肪酸残基に最高の自由度を可能にするものである。直鎖ポリグリセリンでの第1のエステル化反応は、一方の端にある限界ポリグリセリル単位の第1の炭素原子のヒドロキシル基で優先的に行われ、次に、第2のエステル化反応は、もう一方の端の限界ポリグリセリル単位の第1の炭素原子のヒドロキシル基で起こる。次に、すでにエステル化されている位置にすぐ隣接する炭素原子位置のヒドロキシル基がエステル化され、以下同様である。
【0007】
PGフルエステルの合成は、特にPG部分エステルの合成とは異なり、前者においては、エステル化されるポリグリセリンに必然的に多くの脂肪酸が提供されなければならず、それにより、存在するポリグリセリンのヒドロキシル基のすべてがエステル化されることが可能になる。例として、PGフルエステルを得るために、1モルの直鎖ジグリセロールを4モルの脂肪酸で理論的にエステル化する必要があり、これは、ジグリセロールの各分子に4つの遊離ヒドロキシル基があり、従ってエステル化できるためである。実際には、完全なエステル化に理論的に必要な量を超えるモル過剰の使用が有利であり、エステル化を完了するまでの反応時間を可能な限り短く保つために、必要に応じて、遊離ヒドロキシル基の数の反応に起因する減少(reaction-dictated reduction)に従って減少した。このタイプの反応に起因する減少は、反応混合物の加熱による昇華プロセスのために発生する可能性がある。
【0008】
ここで使用される「脂肪酸」という用語は、脂肪族モノカルボン酸を意味すると理解されるべきであり、好ましくは6から22個の炭素原子を含み、これは好ましくは非分岐及び飽和であり、偶数の炭素原子を有するが、奇数を含んでもよく、分岐及び/又は不飽和であってもよい。特に好ましくは、精製されるポリグリセリン脂肪酸フルエステルの調製のために、16、18、20又は22個の炭素原子を含む非分岐飽和脂肪酸、すなわちパルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸又はベヘン酸が使用される。
【0009】
前述のPG(n)-Cmフルエステルの調製の場合、合成中に使用される過剰な脂肪酸は、可能な限り完了しているエステル化反応に続いて除去されなければならない。これに関しては、関与する努力及び関与する成分の高沸点のために、方法としての蒸留が不可能であるという問題が生じ、これは、反応生成物が非常に熱ストレスを受け、目標の酸価が1 mg KOH/g未満になるとは予想されなかったためである。その代わりに、水酸化ナトリウム又はカリウムの希薄水溶液による精製が通常行われ、その間に脂肪酸の対応するナトリウム又はカリウム塩も形成され、一般的には石鹸と呼ばれる。次に、形成された石鹸を、特にMichael Bockischによって“Handbuch der Lebensmitteltechnologie”[Food Technology Manual], Ulmer Verlag, Stuttgart 1993, p. 484ff に記載されているように、通常、いくつかの工程で水で洗浄する。この場合の問題は、石鹸が乳化剤として機能し、これで発生する実質的なエマルジョンの形成により、ポリグリセリン脂肪酸エステルの収量が減少することであり、これは、通常、50%超になる。しかしながら、3.0mgKOH/g未満の酸価までアルカリ精製が行われるとすぐに、非常に多くの石鹸が形成され、エマルションに関連する収率の損失はもはや許容されなくなる。
【0010】
DE 41 01 431 A1に開示されているように、希薄水酸化物を使用する精製の代替として、乾式精製も試みられており、ここで、完全なエステル化反応の後、過剰な脂肪酸を含む反応生成物には、PGフルエステルから形成された石鹸を機械的に分離するために、清澄剤として炭酸ナトリウム十水和物又は炭酸水素ナトリウムが補充される。反応は脂肪酸と清澄剤の間の界面でのみ起こり得るという事実のために、ここでの変換の程度は、粒度分析及び混合の強度に大きく依存する。この方法では、石鹸と過剰な清澄剤は、ベントナイトなどのフィルター助剤を使用して濾別され、付随的で望ましくない収率の損失は12%超である。従って、目的は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの調製のための合成条件を、それぞれの反応混合物の非毒性成分を使用して製薬目的でより効率的にすること、及び合成後の精製の過程で過剰な脂肪酸を可能な限り定量的に分離すると同時に、収率を90%超に高めることである。
【0011】
目的は、請求項1に記載の方法による合成条件に関して、及び請求項3に記載の方法による精製に関して達成される。有利な実施形態は、それぞれの従属請求項で定義されている。
【0012】
脂肪酸とポリグリセリンを含む反応混合物からポリグリセリン脂肪酸エステルを調製するための合成方法を含む方法が提案されている。これに関して、触媒は、少なくとも金属マンガン、亜鉛、コバルト又はチタン、例えば、酢酸亜鉛、酢酸コバルト又は酢酸マンガン(II)のそれぞれの四水和物を含む少なくとも1つの金属化合物を有する反応混合物に添加される。変換の程度と反応速度に関して高い効率は、無毒のテトラブチルチタネートによって提供され、これは、本発明によれば、ポリグリセリン脂肪酸フルエステルの合成に好ましく、ポリグリセリン及び脂肪酸からのPG(n)-Cm部分エステルの合成のための効率を高めるためにも使用され得る。チタンは4価であるため、n-ブタノールリガンド球は、それぞれ少なくとも1つの反応性ヒドロキシル基を持つ最大4つの試薬と交換できる。これに関して、強力なルイス酸チタン(IV)は、脂肪酸と反応して対応するエステルを形成する試薬の活性剤として機能する。
【0013】
このような中間生成物から、精製される中間生成物中で、ポリグリセリン脂肪酸エステル、特にポリグリセリン脂肪酸フルエステルの触媒又は非触媒合成中に生じる過剰な脂肪酸の除去は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの精製方法も提案され、その中間生成物は、例えば、ポリグリセリン及び脂肪酸又はその誘導体から、反応方法を実施することにより得ることができ、ここで、好ましくは液化した中間生成物は、依然として過剰な脂肪酸を含み、塩基性溶液で、好ましくは希水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムで、脂肪酸塩が形成され、1.0 mg KOH/g未満の脂肪相の酸価が得られるまで精製され、その後、好ましくは減圧による溶媒の除去を有利に行うために、好ましくは、その後に、遠心分離によって、又は代わりにろ過によって、ポリグリセリン脂肪酸エステルから脂肪酸塩を分離するための分離工程が続く。驚くべきことに、脂肪相の酸価が1.0 mg KOH/g未満になるように、収率を低下させることなく精製工程を実行でき、溶媒の除去は、約100℃で乾燥し、段階的に圧力を20 mbar未満に低減することにより、水性清澄剤を使用するときに実行できるため、溶媒中の脂肪酸塩によって媒介されるポリグリセリン脂肪酸エステルの十分なエマルジョンを急速に破壊する。このようにして、後続の分離工程で、90%超のポリグリセリン脂肪酸フルエステルの収率を実現できる。有利には、分離工程は、石鹸が既に部分的に固化している温度範囲で溶媒を除去した後に行われる。反応方法としては、加熱によりポリグリセリンと脂肪酸の混合物から開始される直接エステル化反応が好ましい。
【0014】
精製される中間生成物の上流の反応方法を変更することにより、精製方法の効率を高めることができる。これに関しては、使用されるポリグリセリンと脂肪酸が約80℃の温度であり、二相混合物の形成でそれらを溶かすことが有利であることが示され、これは驚くべきことに、とりわけ二相反応混合物が反応方法の過程で均質化するため、後の収率又はポリグリセリン脂肪酸フルエステルの生成物特性に全く悪影響を及ぼさない。明らかに、さらに、反応混合物の成分の1つだけを液体の形で導入することができ、反応混合物の液化は、成分間の熱交換によって達成することができた。
【0015】
さらに、上流の反応方法は、前述の特徴を有する適切な触媒の添加を含み得、過剰な脂肪酸、従って中間生成物から除去される脂肪酸の割合は、反応時間を延長することなくより小さくなり得るという利点を有する。
【0016】
反応方法に必要な過剰な脂肪酸はまた、好ましくは、最初に、反応混合物に加えられる圧力が、20 mbar未満の常圧より低い圧力である乾燥工程によって低減され得る。好ましくは、この乾燥工程は、触媒を添加する前に行われる。
【0017】
出発物質の反応を可能な限り定量的に得るために、反応方法は、好ましくは、反応混合物を400mbarの圧力で235℃まで加熱する加熱工程を含む。この場合、目的のエステル化反応は約200℃で開始される。
【0018】
さらに、後続の精製方法及び中間生成物中の少量の脂肪酸については、反応方法の間、反応した反応混合物の圧力が有利に低減し、その間、反応混合物への圧力は、好ましくは、400mbarから50 mbar未満に段階的に低減される。
【0019】
さらに、ポリグリセリン脂肪酸エステルの精製方法は、精製される中間生成物が20mgKOH/g未満、好ましくは10mgKOH/g未満、特に好ましくは4mgKOH/g未満のヒドロキシル価、同時に、15mgKOH/g未満、好ましくは10mgKOH/g未満、特に好ましくは4mgKOH/g未満の酸価を有する場合、特に効率的であることが示されている。ポリグリセリン脂肪酸部分エステルと比較して低いヒドロキシル価は、使用されるポリグリセリンの遊離ヒドロキシル基のほぼ完全なエステル化を示し、酸価は中間生成物中の過剰な脂肪酸の量を示す。
【0020】
反応法により製造されたポリグリセリン脂肪酸エステル含有中間生成物の精製を成功させるために、有利には、方法の工程は以下の順序で行われる:
i)請求項7に記載の液化工程、
ii)請求項8に記載の乾燥工程、
iii)請求項9に記載の加熱工程、
iv)請求項10に記載の圧力低下、
v)請求項3に記載の精製工程、
vi)請求項4又は請求項5に記載の溶媒抽出、
ii)請求項6に記載の分離工程。
【0021】
有利には、次いで、1μmフィルターを使用してろ過を行うことができる。
【0022】
反応混合物で使用される脂肪酸又は脂肪酸誘導体の量により、ポリグリセリン脂肪酸エステルの調製プロセスを、触媒合成法がポリグリセリン脂肪酸部分エステル又はポリグリセリン脂肪酸フルエステルのいずれかをもたらすような方法で制御することができる。反応混合物が、エステル化されるカルボキシル基又はカルボキシレート基と比較して、ポリグリセリン結合ヒドロキシル基(polyglycerol-bonded hydroxyl groups)をかなり過剰に含む場合、部分エステルが生成される。一方、反応混合物は、エステル化されるカルボキシル基又はカルボキシレート基のそれぞれに対して少なくとも1つのポリグリセリン結合ヒドロキシル基、好ましくは過剰のそのようなヒドロキシル基を含み、次いで触媒合成法はポリグリセリン脂肪酸フルエステルに向けられる。
【0023】
調製方法の過程において、合成方法は、過剰な脂肪酸を含有する中間生成物からのポリグリセリン脂肪酸エステルの精製のための方法によって有利に補足され得る。合成方法中の触媒の添加は、部分エステルに向けられた合成とフルエステルに向けられた合成の両方で、好ましくは反応方法について説明した乾燥工程と次の加熱工程の間に行われ、反応方法で使用される工程の残りの順序は変化しないままである。ここでも、その後、1μmフィルターを使用してろ過を行うことができ、例えば、テトラブチルチタネートを使用すると、酸化チタンなどの触媒又はその反応生成物をほぼ完全に除去できる。しかしながら、使用される触媒のそれぞれの金属は、最終生成物において微量で依然として検出可能である。
【0024】
合成方法を含む反応混合物からポリグリセリン脂肪酸エステルを調製するための方法を、2つの例を用いてより詳細に説明し、ここで、最初の例は部分エステルの調製に関するものであり、2番目の例は、過剰な脂肪酸を除去するための精製を含むフルエステルの調製に関するものである。
【0025】
実施例 1 (PG(3)-C16/C18 部分エステル):
2700gのPG(3)、2390gのパルミチン酸、5590gのステアリン酸を反応器に入れ、80℃で溶融した。真空下(<20mbar)で乾燥した後、触媒としてテトラブチルチタネート3.3gを加えた。反応混合物を400mbarの真空下で235℃まで加熱した。反応は約200℃を超えて開始された。400 mbarに達した後、反応圧力を<50mbarに段階的に低減した。< 1.0 mg KOH/gの酸価が得られるまでエステル化を継続した。反応時間は4から6時間であった。反応時間は、触媒なしの手順と比較して短いため、生成物の色が大幅に改善された。この方法で得られた単相PG(3)-C16/C18部分エステルを、1μmフィルターでろ過し、デカントした。ここで触媒はほぼ完全に除去されたが、それぞれの金属はまだ微量で検出できた。
【0026】
実施例 2 (PG(2)-C18フルエステル):
1580gのPG(2)と10700gのステアリン酸を反応器に入れ、80℃で溶融した。20mbar未満の圧力で乾燥した後、得られた二相混合物に、触媒として3gのテトラブチルチタネートを加えた。次に、反応混合物を400 mbarの圧力で235℃まで加熱すると、約200℃で反応が開始した。次に、反応圧力を段階的に50mbar未満に低減した。4mgKOH/g未満のヒドロキシル価が得られるまでエステル化を継続した。同時に、酸価は通常4から6mgKOH/gであるが、最大15mgKOH/gに達する可能性がある。次に、ポリグリセリン脂肪酸フルエステルを含む中間生成物を、10.5 %のNaOH水溶液を使用して酸価が1.0mgKOH/g未満になるまで80℃から90℃で精製し、脂肪酸塩を形成した。次に、乾燥の目的で、800mbarの圧力から始めて、100℃で段階的に20mbar未満に減圧した。得られた石鹸は、遠心分離により分離された、又は代わりにろ過された。単相PGフルエステルの収率は90%超になった。デカンテーションの前に、PGフルエステルを1μmフィルターでろ過して取り除くことができる。これにより触媒はほぼ完全に除去されたが、それぞれの金属はまだ微量で検出できた。