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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】ピストンの製造方法及びピストン
(51)【国際特許分類】
   F02F 3/00 20060101AFI20230727BHJP
   F16J 1/00 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
F02F3/00 G
F16J1/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020565804
(86)(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2019000161
(87)【国際公開番号】W WO2019223899
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】102018112458.9
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503219640
【氏名又は名称】シュタビルス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】STABILUS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レーケン、ラース
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ピーロート、ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】プロプスト、ウルリッヒ
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-036832(JP,A)
【文献】特表2016-505122(JP,A)
【文献】米国特許第06018868(US,A)
【文献】独国特許出願公開第19615584(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P15/00
F02F3/00-3/28
F16J1/00-1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン(1)の製造方法であって、前記ピストン(1)はピストン摺動ユニット(2)に取り付け可能であり、前記ピストン摺動ユニット(2)はシリンダ(3)内で縦軸(AL)に沿って移動可能であり、
前記ピストン(1)はディスク状基体(4)を有し、
前記ピストン(1)は、媒質(7)で満たされた前記シリンダ(3)の二つの領域(5、6)を互いに密封するのに適し、かつ、意図されたものであり、
前記ピストン(1)は、前記ピストン(1)面上に隆起した構造として具現化される環状ピストンカラー(8)を含み、
前記方法は、以下の工程
a.材料をピストンモールドにプレスすることによって、前記ピストン(1)を製造する工程
b.隆起した回転対称構造(21)を有するエンボス加工具(20)を用いることで、前記ピストン(1)内に少なくとも一つの流路(13)をプレスする工程であって、
前記エンボス加工具(20)の隆起した回転対称構造(21)が前記ピストン(1)上に載置されるとき、前記エンボス加工具(20)の隆起した回転対称構造(21)は、前記環状ピストンカラー(8)との少なくとも一つの交点(30)を有し、
前記隆起した回転対称構造(21)が前記少なくとも一つの交点(30)で、前記ピストンの中心に向かう前記環状ピストンカラー(8)の内側から、前記ピストンの中心から離れる方向に向かう前記環状ピストンカラー(8)の外側まで前記環状ピストンカラー(8)と交差し、
前記環状ピストンカラー(8)は、前記エンボス加工具(20)の前記隆起した回転対称構造(21)を前記少なくとも一つの交点(30)で前記ピストン(1)内にプレスすることによって、少なくとも部分的に、平坦なおよび/または凹んだ形(31)に加圧成形され、
を含む、製造方法。
【請求項2】
前記環状ピストンカラー(8)は、前記ピストン(1)に対する少なくとも一つの半径方向部分(33)と、前記環状ピストンカラー(8)の円周に対して平行な、少なくとも一つの接線方向部分(34)とを有する、少なくとも一つの蛇行形状の膨らみおよび/または窪み(32)を有することを特徴とする、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記エンボス加工具(20)の前記隆起した回転対称構造(21)の前記少なくとも一つの交点(30)が、前記環状ピストンカラー(8)の少なくとも一つの蛇行形状の膨らみまたは窪み(32)内に配置されることを特徴とする、
請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記エンボス加工具(20)の前記隆起した回転対称構造(21)の少なくとも一つの交点(30)が、前記環状ピストンカラー(8)の前記少なくとも一つの蛇行形状の膨らみまたは窪み(32)の前記少なくとも一つの半径方向部分(33)内に配置されることを特徴とする、
請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
シリンダ(3)内でその縦軸(AL)に沿って移動可能なピストン摺動ユニット(2)上に配置された少なくとも二つのピストン(1)を備える、液圧または空気圧ダンパー(100)であって、前記ピストン(1)のそれぞれはディスク状基体(4)を含み、前記ピストン(1)は媒質(7)で満たされた前記シリンダ(3)の二つの領域(5、6)を互いに密封するのに適し、かつ、意図されたものであり、
a.前記ピストン(1)のそれぞれは、前記ピストン(1)面上に隆起した構造として具現化され、かつ、少なくとも一つの外壁(9)および少なくとも一つの内壁(10)を有する環状ピストンカラー(8)を備え、
b.前記少なくとも一つの内壁(10)は前記少なくとも一つの外壁(9)から半径方向に間隔を置いて配置され、
c.前記少なくとも一つの内壁(10)および前記少なくとも一つの外壁(9)はセグメント状の凹部(11、12)を有し、
d.前記少なくとも一つの内壁(10)の凹部および前記少なくとも一つの外壁(19)の凹部が、前記ピストン(1)の円周に沿って互いにオフセットして配置され、
e.その結果、前記媒質(7)は凹部(11、12)および少なくとも一つの内壁と少なくとも一つの外壁(9、10)との間の中間スペースとを通って流れることができる、ダンパー(100)。
【請求項6】
前記凹部(11、12)と、前記環状ピストンカラー(8)の前記少なくとも一つの内壁と前記少なくとも一つの外壁(9、10)との間の前記中間スペースとは、媒質(7)によって通過可能であり、したがって前記媒質(7)の流路(13)を画定することを特徴とする、
請求項5に記載のダンパー(100)。
【請求項7】
前記媒質(7)の前記流路(13)は、少なくとも一つの湾曲部(14)を有することを特徴とする、
請求項に記載のダンパー(100)。
【請求項8】
前記媒質(7)の前記流路(13)が迷路状であることを特徴とする、
請求項に記載のダンパー(100)。
【請求項9】
少なくとも一つの流路(13)の少なくとも一つの入口および/または出口の点、または少なくとも一つの流路(13)に沿った任意の点、における媒質(7)の流れの方向が、ピストン(1)に対して接線方向であることを特徴とする、
請求項5に記載のダンパー(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ内でその縦軸に沿って移動可能なピストン摺動ユニットに取り付け可能なピストンを製造するための方法とピストンに関し、ピストンはディスク状基体を有し、ピストンは、媒質で満たされたシリンダの二つの領域を互いに密封するのに適し、かつ、意図されている。
【背景技術】
【0002】
ダンパー、特に純粋に革新的なダンパー、すなわち、ピストン摺動ユニットをシリンダ内へ押し込み、および/または、シリンダ外へ引き出すために加えられる力が、線形依存性よりもバネ移動量の増分に伴って、速く増加するダンパーは、ピストン摺動ユニットが減衰シリンダ内へ押し込まれるか、または減衰シリンダ外へ引き出されるとき、媒質がシリンダの一方の領域からシリンダの他方の領域に流れる不変のバイパスまたは流路を有するピストンを有している。ここで、移動した媒質の流れ抵抗は、流速に応じて増加し、これによって革新性を生じる。バイパスの寸法は、革新性および減衰特性に決定的に重要である。これらは、通常、焼結部品または樹脂部品の場合のように工具を介して、またはアルミピストンの場合のように機械加工によって、すでに導入されている。特に、焼結ピストンでは、これらのバイパスは、通常、ピストンをプレスすると焼結性粉末からすでに成形されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
バイパスに関して、処理に係わる公差が大きくなりすぎると、機械加工は特に小さなバイパスにおいてその限界に達する。処理に係わる公差の考えられる理由は、例えば、工具の摩耗、機械上の温度変化、または設定精度などである。
【0004】
焼結ピストンをプレスする場合、バイパスの処理に係わる公差に関して同じ問題が存在する。焼結ピストンの後続の焼結でプレスするとき、ISO tolerance 7(IT 7)からIT 6(有利な場合)までの範囲の製造公差を到達し得る。しかしながら、これは、特に小さなバイパスの製造には十分でない。加えて、プレス処理では、部品のバリ取りのための表面処理、例えば振動研削やショットピーニングが続けられることがしばしばあり、これはバイパスの公差に悪影響を及ぼし得る。
【0005】
本発明の課題は、工業的な大量生産において、より低い製造公差でピストンを生産することを可能にし、これにより上述した問題に対処し得るピストンの製造方法及びピストンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その課題は、シリンダ内でその縦軸に沿って移動し得るピストン摺動ユニットに取り付け可能なピストンの製造方法によって解決される。ピストンはディスク状基体を含み、ピストンは媒質で満たされたシリンダの二つの領域を互いに密封するのに適し、かつ、意図されている。本発明によればピストンの製造方法は、以下の工程を含む。
a.材料をピストンモールドにプレスすることによって、ピストンを製造する工程
b.隆起した回転対称構造を有するエンボス加工具を用いることで、ピストンの表面を平滑化する工程、および/または、ピストン内に少なくとも一つの流路をプレスする工程
【0007】
第一処理工程では、材料をピストンモールドにプレス加工する。材料は、好ましくは、鋼または鉄などの金属や、例えばアルミニウムまたは鉄の粉末などの金属粉末や、酸化アルミニウムや炭化ケイ素などのセラミック粉末などの、焼結可能な粉末である。さらに、当業者に知られている粉末形態の、任意の他の焼結可能な材料の使用、または任意の他の金属の使用が考えられる。プレス処理では、材料をピストン状にプレス加工する。材料によって異なる加圧分布が考えられる。例えば、プレスは、一軸加圧成形および/または静水圧成形であってもよい。プレス処理の後、このようにして製造されたピストンは、好ましくは、媒質のためのバイパス流路をまだ有していない。しかしながら、プレス処理後のピストンは、既にバイパスのプリフォーム、すなわちバイパス自体を有することも考えられる。好ましくは、ピストンが冷間鍛造または当業者に公知の別の冷間成形技術によってプレスされる。
【0008】
予め製造されたピストンが焼結可能な粉末からなる場合、プレス処理において予め製造されたピストンは、後続の焼結処理で、例えば、高温および/または高圧下で、焼結される。この処理工程では、ピストンの硬さ、強度、熱伝導率などの特性を調整することができる。
【0009】
予め製造されたピストンが焼結可能な粉末からなる場合、先に焼結されたピストンは焼結後にバリ取りされる。好ましくは、これはショットピーニングまたは振動研削によって行われるが、当業者に公知の他のバリ取りプロセスも考えられる。
【0010】
処理の最後の工程では、エンボス加工具によってピストンの表面を平滑化する。このために、エンボス加工具は、規定された力および/または規定された量の平滑化されるべき表面とともに、ピストンに対して平坦にプレスされる。さらに、好ましくは、エンボス加工具は、エンボス加工具がピストンにプレスされるとピストンをエンボス加工する、隆起した回転対称構造を有する。これは、ピストン面における隆起した回転対称構造の反転した刻印をもたらす。ピストンは、エンボス加工具によって加圧成形される。しかしながら、この工程において、ピストンの表面がエンボス加工具によって平滑化されるのではなく、エンボス加工具が隆起した回転対称構造を単にピストン内にエンボス加工することも考えられる。また、エンボス加工具がピストンの表面を平滑化するだけであることも考えられる。しかしながら、表面を平滑化し、流路をピストンにプレスする両工程を行うことが好ましい。このようにして得られる、流路の領域における特に平滑な表面は、流路に沿った特に均一で制御された流れを可能にする。
【0011】
エンボス加工具は、好ましくは校正ダイとして具現化されるが、表面の成形または平滑化のために、当業者に公知の任意の他のタイプの加工具として具現化することもできる。校正ダイは、好ましくは構成要素の基本的な成形後に、例えば、構成要素の表面を平滑化するために、またはより低い製造公差に関して成形を最適化するために使用される。しかしながら、校正ダイを用いて、部品の成形を直接行うこともできる。校正ダイは、好ましくはIT 3からIT 4(バッチ散乱)およびIT 4からIT 6(クロスバッチ)の領域で、低い製造公差を維持するために、定期的に正確に再加工できるように、好ましくは回転対称に成形される。
【0012】
少なくとも一つのさらなる実施例によれば、エンボス加工具の隆起した回転対称構造は、環状ピストンカラーを備えるピストン上に配置されるときに、少なくとも一つの、環状ピストンカラーとの交点を有する。
【0013】
ピストンは、環状ピストンカラーを有することが好ましい。ピストンカラーは、好ましくはピストン面上に隆起した構造として具現化される。ピストンカラーの表面はシール面を表し、シール対向面にプレスされると、媒質で満たされたシリンダの二つの領域を互いに密封する。シール対向面は、例えば金属またはプラスチックからなるシールリングのようなシール要素の表面である。シール要素は可撓性であることが考えられる。また、シール要素が回転対称であるか、または、例えば媒質の通過に対して非回転対称の要素を有することも考えられる。シール要素は、環状ピストンカラーを有するピストンの表面上に配置される。この面に対してシール要素を直接固定できる。ピストン摺動ユニットでピストンとシール要素を共用する配置も考えられるし、ピストン摺動ユニットでピストンまたはシール要素のみが配置される配置も考えられる。さらに、シール要素はピストン上に浮いて配置され、シリンダの二つの領域間の圧力差によって、ピストン摺動ユニットが軸方向に所定の方向(シリンダ内またはシリンダ外に)に動作したときにのみ、ピストンの表面に押しつけられることが考えられる。
【0014】
ピストン面上にエンボス加工具が配置されると、エンボス加工具はエンボス加工具の隆起した回転対称構造とピストンの環状ピストンカラーとが少なくとも一つの点で互いに静止し、少なくとも一つの交差点を有するようにピストンに対して相対的に配置される。交点において、エンボス加工具の回転対称構造は、それによって、ピストン中心に対向する側からピストン中心から離れて対向するピストンカラーの側まで、またはピストン中心から離れて対向するピストンカラーの側からピストン中心に対向するピストンカラーの側まで、ピストンカラーと交差する。
【0015】
ここで、エンボス加工具は先に説明した配置でピストンに対してプレスされるか、またはピストンがエンボス加工具に対してプレスされ、それによって、両方の場合において、接触圧および/または量が正確に調整され得る。接触圧および/または量は、様々なパラメータ、例えば、使用される材料の強度、弾性および塑性、またはそれらの比降伏点またはプロセス温度に応じて選択され、それによって、ピストンは、具体的に、エンボス加工具をそれにプレスされることで塑性変形できる。さらに、接触圧および/または規定された量は、当業者に公知の他のパラメータに応じて選択されることも考えられる。
【0016】
少なくとも一つのさらなる実施形態によれば、エンボス加工具の隆起した回転対称構造を、エンボス加工具の隆起した回転対称構造と環状ピストンカラーとの少なくとも一つの交点でピストン内にプレスすることによって、環状ピストンカラーは、少なくとも部分的に、平坦化された形状および/または凹んだ形状に加圧成形される。
【0017】
プレス処理の間、エンボス加工具と環状ピストンカラーの隆起した回転対称構造は、ここで、交点の少なくとも一点で互いにプレスされる。この処理において、エンボス加工具の隆起した回転対称構造は交点の少なくとも一点または少なくとも一つの交点の領域において、より平坦な形状に環状ピストンカラーをプレスし、その結果、環状ピストンカラーは少なくともこの点で、より平坦な形状に加圧成形される。このように、環状ピストンカラーは、エンボス加工具の隆起した回転対称構造によって少なくとも一点で平坦化される。これは、ディスク状基体によって定義される平面に垂直な方向と、ピストン摺動ユニットに平行な方向(ピストンがピストン摺動ユニット上に配置されている場合)と、の相対的なピストンカラーの高さが、平坦化された点において、減少することを意味する。交点または交点の領域は、回転対称構造とピストンカラーとの間の接触面によって定義される。ピストンカラーは回転対称構造とピストンカラーの接する面全体で平坦化される。
【0018】
このような環状ピストンカラーの平坦化により、ピストンカラーの表面は、シール要素上に配置されるとき、平坦化された領域のシール対向面と、もはや接触することはない。ピストンカラーのピストン中心に面する側からピストンカラーのピストン中心から離れた側にピストンカラーの平坦化が延びる交点において、ピストンカラーの表面はシール要素のシール対向面に全く接しておらず、これにより、ピストンによって互いに密封された媒質で満たされたシリンダの二つの領域の一方から、他方の領域への媒質のための流路が形成される。この流路は、上述した、ダンパーの、ダンパーの特徴的な曲線を決定するバイパスを表す。少なくとも一つの平坦化された点におけるピストンカラーの高さの低下は非常に大きいので、媒質が流れ得る流路に沿ってバイパスが形成される。
【0019】
エンボス加工具、特に校正ダイを用いてバイパスを製造することにより、IT 3からIT 4(バッチ散乱)およびIT 4からIT 6(クロスバッチ)の領域における製造公差を低減することができ、したがって、ピストンを本発明の課題に従って工業的に連続して製造できる。
【0020】
少なくとも一つのさらなる実施形態によれば、環状ピストンカラーは少なくとも一つの蛇行形状の膨らみおよび/または窪みを有し、これらの蛇行形状の膨らみおよび/または窪みは、好ましくは、少なくとも一つのピストンに対する、少なくとも一つの半径方向部分と接線方向部分とを有する。
【0021】
環状ピストンカラーは、好ましくは、少なくとも一つの蛇行形状の膨らみまたは窪み、および/または少なくとも一つの方向の変化を有する。蛇行形状の窪みの場合、環状ピストンカラーはピストンの表面上で完全に円形に連続するのではなく、窪みの始点で、ピストンカラーが隣接する直線部分と一緒に配置されているピストン表面の中心方向の第一曲線を記述し、それにより、ピストンのディスク状基体に対して半径方向に配置されるピストンカラー部分を有する。
【0022】
窪みのさらなる進路において、ピストンカラーは、好ましくは反対方向の第二曲線を有し、また、隣接する直線部分を有し、したがって、ピストンのディスク状基体に対して接線方向に配置されるピストンカラー部分を有する。次いで、ピストンカラーは、好ましくは第二曲線と同じ方向に第三曲線を有し、それに続いて直線部分も存在する。このようにして、窪みはピストンのディスク状基体に対して半径方向に配置された第2のピストンカラー部分を有する。この第二の半径方向部分に続いて、第四曲線が続き、この曲線は第一曲線と同じ方向に連続するため、ピストンカラーは、円の基本形状に沿って連続し続ける。膨らみの場合、ピストンカラーはこの記載と同様の形状であるが、曲線が他の方向に繋がるか、またはピストンカラーが配置されているピストン面の中心から離れて繋がるという違いがある点で、本明細書と同様の形状をしている。さらに、ピストンカラーは、曲線の代わりに、窪みまたは膨らみの領域に角を有することが考えられる。
【0023】
上述の好ましい窪みまたは膨らみは、角が丸みを帯びているか、または丸みを帯びていない角張った「U」字形状を有する。しかしながら、他の形状の窪みまたは膨らみ、例えば、「V」字形状または半円形状、またはエンボス加工具の隆起した回転対称構造が少なくとも一つの点でピストンカラーと交差する、当業者に知られている任意の他の形状も考えられる。
【0024】
少なくとも一つのさらなる実施形態によれば、エンボス加工具の回転対称構造における少なくとも一つの交点は、環状ピストンカラーの少なくとも一つの蛇行形状の窪みまたは膨らみ内に配置される。
【0025】
少なくとも一つのさらなる実施形態によれば、エンボス加工具の回転対称構造における少なくとも一つの交点は、ピストンに対して半径方向に整列している環状ピストンカラーの少なくとも1つの蛇行形状の膨らみまたは窪みの少なくとも一つの部分に配置されている。
【0026】
好ましくは、ピストンカラーは一つ以上の蛇行形状の窪みを有する。蛇行形状の窪みは、好ましくは、丸くすることができる直角のコーナーを有する。エンボス加工具の隆起した回転対称構造は、リング形状であることが好ましい。隆起した回転対称構造のリング直径が、蛇行形状の窪みのないピストンカラーのリング直径よりも小さいが、ピストンカラーの窪みの接線方向に連続する部分に沿った仮想リングのリング直径よりも大きい場合に、特に有利である。したがって、各窪みにおいて、エンボス加工具の隆起した回転対称構造とピストンカラーとの交点が2点存在し、それぞれが窪みのピストンカラーの半径方向に配置された部分内にある。エンボス加工具の隆起した回転対称構造のリング径がピストンカラーのリング径よりも小さい場合には特に有利であるが、それでも、十分な大きさを確実にするために、エンボス加工具の隆起した回転対称構造が、リング全周に沿って、リング中心に対してその外側にあるが、窪みの外側にあり、リング中心に対して内側のリング幅の一部を載置させた状態でピストンカラーの形状に合わせて加圧して、より平坦な形状に成形できる。
【0027】
ピストンカラーの蛇行形状の膨らみでは、隆起した回転対称構造のリング直径が蛇行形状の膨らみのないピストンカラーのリング直径よりも有利に大きくなるが、ピストンカラーの膨らみの接線方向に連続する部分に沿った仮想リングのリング直径よりも小さくなる。つまり、エンボス加工具の隆起した回転対称構造と、膨らみのピストンカラーの半径方向に配置された部分内の各膨らみにおけるピストンカラーとの交点も2点存在することになる。
【0028】
本発明による課題は、ピストン摺動ユニット上に配置可能な液圧または空気圧ダンパーのピストンによっても解決される。ピストン摺動ユニットはシリンダ内でその縦軸に沿って移動可能であり、ピストンはディスク状基体を含み、ピストンは媒質で満たされたシリンダの二つの領域を互いに密封するのに適し、かつ、意図されている。
【0029】
前記ピストンは、少なくとも一つの外壁と少なくとも一つの内壁を有する環状ピストンカラーを備え、前記少なくとも一つの内壁は前記少なくとも一つの外壁から半径方向に離間しており、前記少なくとも一つの内壁と前記少なくとも一つの外壁はセグメント状の凹部を有し、前記少なくとも一つの内壁の凹部と前記少なくとも一つの外壁の前記凹部は、前記少なくとも一つの内壁と前記少なくとも一つの外壁との間の前記凹部および前記中間スペースが前記媒質によって通過可能となるように、前記ピストンの円周に沿って互いにずれて配置されることを特徴とする。
【0030】
ダンパーは、液圧または空気圧ダンパー(例えば、ガススプリング)として、モノチューブまたはツインチューブ設計で、または当業者に知られている任意の他のダンパー設計で具現化されることが考えられる。ダンパーは、少なくとも、一つのシリンダ、一つのピストン、一つのピストン摺動ユニット、一つのシール要素、および一つの媒質を備える。媒質は、シリンダ内に配置される。ピストンはピストン摺動ユニットの一端に配置される。シール要素もこの一端に配置される。ピストン摺動ユニットは、少なくとも部分的にシリンダ内に、したがって媒質内に配置されるが、少なくともピストンが取り付けられる一端に配置される。ピストンは、媒質で満たされたシリンダの二つの領域を互いに分離する。ピストン摺動ユニットとそれに取り付けられたピストンは、シリンダ内でピストン摺動ユニットの縦軸に沿って移動できる。媒質は、好ましくはオイルまたは気体である。媒質がオイルである場合、シリンダは、好ましくはオイルで完全には満たされず、残りの容積は気体で満たされる。
【0031】
ピストンは、シリンダの内径よりも小さい直径のディスク状基体を有する。さらに、ピストンは、ピストン摺動ユニットの縦軸の方向に厚みを有する。しかし、ピストンの他の形状も考えられる。さらに、ピストンは、上側または下側にピストンカラーを備える。ピストンカラーは、好ましくは隆起構造を有する環状ピストンカラーとして具現化される。好ましくは、ピストンカラーがディスク状基体の表面に平行な平坦な表面を有する。この表面は、シール要素のシール対向面上に配置されると好ましい。このように、ピストンカラーは、ピストンによって互いに分離されているシリンダの二つの領域を互いに密封する。一方の領域はピストンカラーの内側(環状ピストンカラーの環状中心に対して)の領域に流体的に接続され、他方の領域はピストンカラーの外側の領域に流体的に接続される。
【0032】
ピストンカラーは環状であると好ましい。ピストンカラーは内壁と外壁を含む備えていると好ましい。内外壁はそれぞれ一定の肉厚(リング幅ともいう)を有する。外壁と内壁は、ピストンカラーの円周に沿って凹部を有する。ピストンカラーは、好ましくは、これらの凹部で中断される。したがって、これらの点ではピストンカラーがなく、ディスク状基体だけがある。さらに、ピストンカラーは、凹部で完全に中断されるのではなく、ピストンカラーの表面がシール対向面に到達しないように平坦化または成形されるだけであることが考えられる。外壁および内壁の凹部は、好ましくは互いにずれている。これは、外壁が凹部を有する円周に対するピストンカラーの位置では内壁は凹部を有さず、逆も同様であることを意味する。換言すれば、ピストンは、ピストン中心からピストン縁部までの各々の半径方向に少なくとも一つまたは少なくとも二つの壁を有する。
【0033】
さらに、外壁内の凹部の点と内壁内の凹部の点との間に、内壁も外壁も凹部を持たない円周に対してピストンカラーの領域があれば有利である。この領域では、ピストンカラーの周囲との関係で壁の重なりがある。重なりの領域では、壁の間の中間スペースは少なくとも部分的に、平坦形状に成形されたピストンカラーで満たされていると考えられる。また、凹部は、壁自身よりも円周に対して大きな延長部を有することも考えられる。本実施形態では、外壁の凹部は円周に対して小さくすると好ましい。本実施形態では、内壁の凹部は円周に対して大きいとさらに好ましい。特に、内壁の凹部が、内壁自身よりもピストンカラーの周囲に対して、より大きな延長部を有する場合には有利である。さらに、外壁の凹部は、ピストンカラーの円周に対して外壁自身よりも大きく伸びており、内壁の凹部は円周に対して小さくなっていることも考えられる。ピストンカラーが2つの壁よりも多いことも考えられる。また、ピストンカラーが2つの壁より多く、全ての壁が、ピストンカラーの円周に対してずれているか、または互いに対してずれていないか、または互いに対して少なくとも部分的にずれている、凹部を有することも考えられる。
【0034】
少なくとも一つのさらなる実施形態によれば、凹部およびピストンカラーの少なくとも一つの内壁と少なくとも一つの外壁との間の中間スペースは、媒質によって通過可能であり、したがって媒質の流路を画定する。
【0035】
前述した、このような、ずれる凹部は、環状ピストンカラーの内側から環状ピストンカラーの外側の領域まで流路を形成する。ピストンカラーはピストンによって互いに分離されたシリンダの二つの領域を完全に密閉するのではなく、流路の助けを借りて両方の領域を接続する。この流路は、シリンダの直径と比べて流路断面の点で小さいと好ましい。流路断面は、好ましくは壁の間の中間スペースにおいて、平坦形状に成形されるピストンカラーのスペース部分によって調節可能である。よって、流路断面は、好ましくは成形されたピストンカラーの高さを決定するエンボス加工具の隆起した回転対称構造の高さによって調節可能である。したがって、異なる高さを有する隆起した回転対称の構成を有するエンボス加工具のためのエンボス加工具を交換することによって、異なる流路断面をピストン内にエンボス加工することが考えられる。隆起した回転対称構造の高さを変えることも考えられる。したがって、一つの工具で異なる流路断面を成形できる。
【0036】
したがって、流路は、冒頭で説明したダンパーのバイパスを表す。このようにして、流路断面は、ダンパーの特性曲線の進行を引き起こす。ピストンを取り付けた状態でピストン摺動ユニットを軸方向に動作させると、ピストンはシリンダ内でピストン摺動ユニットの縦軸に沿って移動する。媒質は、ピストンのピストンカラー内の少なくとも一つの流路を通って、シリンダの一方の領域から他方の領域に流れる。少なくとも一つの他の実施形態によれば、媒質の流路は少なくとも一つの湾曲部を有する。
【0037】
公知のピストンはしばしば、半径方向のバイパスを有する。これは、バイパスがピストンのディスク状基体に対して半径方向の直線に沿って、媒質により通過可能であることを意味する。これらの場合、ピストンカラーはしばしば、凹部を有する一つの壁面のみを有する。凹部はバイパスを直接的に表し、媒質は環状ピストンカラーの内側の領域に流体的に接続されているシリンダの一方の領域から、環状ピストンカラーの外側の領域に接続されているシリンダの他方の領域に、あるいはその逆に、半径方向に直線的に流れる。対照的に、ピストンは、好ましくは少なくとも一つの湾曲部を有する流路を有する。これは、媒質が流路に沿ってバイパスを通って直線的に流れるのではなく、少なくとも一つの曲線の周りを流れることを意味する。好ましくは、湾曲部を有する流路がピストンのディスク状基体の面に平行な面内に配置される。好ましくは、湾曲部の流路が、少なくとも、60度、70度または80度、および多くとも100度、110度または120度、好ましくは90度の曲線を表す。しかしながら、0°ではない他の角度も考えられる。
【0038】
少なくとも一つの他の実施形態によれば、媒質の流路は迷路状である。
【0039】
本発明の文脈において、迷路状とは、流路が少なくとも一つ、好ましくは二つ、またはさらには三つ以上の偏向を有することを意味する。特に、迷路状の(流)路を覗くとき、アウトレットまたは出口は、インレットまたは入口から見えない。偏向とは、媒質の流れが、流路の境界によって直線的な流れ方向から曲げられる部分をいう。好ましくは、偏向が前述の湾曲部を表す。
【0040】
少なくとも一つのさらなる実施形態によれば、少なくとも一つの流路のインレットおよび/またはアウトレットの点、または少なくとも一つの流路に沿った任意の点、における媒質の流れの方向は、ピストンに対して接線方向である。
【0041】
上述したように、公知のピストンはしばしば、半径方向のバイパスを有する。これは、媒質がバイパスを半径方向に流れることができることを意味する。対照的に、本発明によるピストンは少なくとも一つの点を有するが、好ましくは少なくとも一つの流路に沿った領域を有し、流れの方向は接線方向、すなわち、環状ピストンカラーの円周に平行である。好ましくは、この点または領域が、少なくとも一つの流路の入口および/または出口に直接的に配置される。好ましくは、この流路の接線方向の領域が環状ピストンカラーの内壁と外壁によって制限される。
【0042】
したがって、流路の接線領域は、内壁も外壁も、凹部を有さない領域に配置されることが好ましい。したがって、流路の接線領域は、好ましくはピストンカラーの円周に対して壁が重なる領域に配置される。その上に配置されたピストンを有するピストン摺動ユニットにおける軸方向動作中の媒質の流れは、好ましくは媒質がピストンカラーを満たすまで、(ピストンのディスク状基体に対して)半径方向外方に連続する。ピストンカラーでは、媒質が少なくとも一つのバイパスを通って流路に入る。ピストンは、好ましくは三つのバイパスを有する。媒質は、環状ピストンカラーの内側の領域、内壁の円周方向の左右凹部を通る内壁のセグメントに流体的に接続されている、シリンダの領域の周りを流れる。これに直接隣接して、流路は内壁と外壁との間を通る接線部分、すなわち、壁の重複領域にある。このように、流路は流路のインレットにおいて直接的な湾曲部を有し、媒質が(ピストンのディスク状基体に対して)半径方向から接線方向に流れの方向を変化させる。
【0043】
接線方向の流れの方向を有する領域に隣接するのは、媒質が流動方向を(ピストンのディスク状基体に対して)接線方向から半径方向に変化させる、流路の別の湾曲部である。次いで、流路は、環状ピストンカラーから外壁の凹部を半径方向に連続する。このように媒質は外壁内の凹部からシリンダの他方の領域に流出し、これは環状ピストンカラーの外側の領域に流体的に接続される。
【0044】
少なくとも一つの他の実施例によれば、少なくとも二つのピストン(1)がピストン摺動ユニット(2)上のダンパー内に配置される。
【0045】
すでに説明したように、ピストンに浮いたシール要素を配置することができる。この場合、ダンパーが一方(前方)に動作し、媒質が流路を通ってシリンダの一方の領域から他方の領域にしか流れることができないとき、シール要素は、シリンダの二つの領域の間の圧力差によってピストンにプレスされる。ダンパーを反対方向(後退方向)に動作させると、シール要素は、現在は反対方向に存在する圧力差のため、ピストンから離れる方向にプレスされる。このケースでは、媒質がはるかに大きな流れ断面を通って第一領域に逆流できる。このように、ダンパーは、第一(前進)方向よりも、この第二(後退)方向の方が、はるかに容易に操作できる。第一(前進)方向が第二(後退)方向よりも操作しやすいように、ピストンとフローティングシール要素とがピストン摺動ユニット上で逆方向に配置されていることが考えられる。さらに、二つのピストンおよび一つ以上の浮動シール要素がピストン摺動ユニット上に配置されることも考えられる。このとき、ピストンは、流路が刻印された面が対向するように配置されることが好ましい。流路が刻印された側には、一つのシール要素が浮いて配置されることが好ましく、これにより、一つの浮いているシール要素が流路を対向させて配置された二つのピストンに対して充分であってもよい。このようにして、前方方向の減衰挙動は後方方向のそれに対応する。ここで、二つのピストンが同じ流れ断面を有しないことも考えられる。この場合、前後方向の減衰挙動は異なり、特に流れ断面を選択することにより異なる要求に適応できる。この場合、前進方向と後退方向の減衰挙動を互いに完全に自由に調整できる。
【0046】
本発明のさらなる利点、目的および特徴は、添付の図面の以下の説明によって説明される。同じ種類の構成要素は、異なる実施形態において同じ参照符号を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】好ましい実施形態におけるダンパーに配置された本発明によるピストンの概観である。
図2】好ましい実施形態におけるピストンの斜視図である。
図3a】上面視における好ましい実施形態によるエンボス加工具の概略図である。
図3b】線A-A(図3a参照)に沿った断面としての好ましい実施形態によるエンボス加工具の概略図である。
図4】上面視における好ましい実施形態によるエンボス加工具のピストンと隆起した回転対称構造の概略図である。
図5】線B-B(図4参照)に沿った断面としての好ましい実施形態によるピストンとエンボス加工具の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1には、液圧または空気圧ダンパー100の、ピストン摺動ユニット2に取り付けることのできるピストン1が概略的に示されている。ピストン摺動ユニットは、シリンダ3内でその縦軸ALに沿って移動可能であり、ピストン1は、ディスク状基体4を備え、それによって、ピストン1は、媒質7で満たされたシリンダ3の二つの領域5、6を互いに密封するのに適し、かつ、意図されている。
【0049】
本発明では、ピストン1は、少なくとも一つの外壁9と少なくとも一つの内壁10を有する環状ピストンカラー8を備え、少なくとも一つの内壁10は少なくとも一つの外壁9から半径方向に離間しており、少なくとも一つの内壁10と少なくとも一つの外壁9はセグメント状の凹部11、12を有し、少なくとも一つの内壁の凹部12と少なくとも一つの外壁の凹部11は、凹部11、12と少なくとも一つの内壁9、10との間の中間スペースが媒質7によって通過可能となるように、ピストン1の円周に沿って互いにずれて配置されることを特徴とする(図1ではなく、図2参照)。
【0050】
ダンパー100は、少なくとも一つの、シリンダ3と、ピストン1と、ピストン摺動ユニット2と、シール要素15と、媒質7とを備える。媒質7は、シリンダ3内に配置される。ピストン1は、好ましくはピストン摺動ユニット2の一端に配置される。シール要素15もこの一端に配置される。ピストン摺動ユニット2は、少なくとも部分的にシリンダ3内に、したがって媒質7内に配置されるが、少なくともピストン1が取り付けられる一端に配置される。ピストン1は、媒質7で満たされたシリンダ3の二つの領域5、6を互いに分離する。ピストン摺動ユニット2とそれに取り付けられたピストン1は、シリンダ3内でピストン摺動ユニットの縦軸ALに沿って移動できる。シリンダ3は、好ましくは媒質7、例えばオイル、で完全には満たされず、残りの容積は気体で満たされる。
【0051】
ピストン1は、シリンダ3の内径よりも小さい直径のディスク状基体4を有する。また、ピストン1は、ピストン摺動ユニットの縦軸ALの方向に厚みを有する。さらに、ピストン1は、上側および/または下側にピストンカラー8を有する。ピストンカラー8は、好ましくは環状ピストンカラー隆起構造として具現化される。好ましくは、ピストンカラー8は、ディスク状基体の表面に平行で平坦な表面を有する。この表面は、シール要素15のシール対向面上に配置されると好ましい。このように、ピストンカラーは、ピストンによって分離されているシリンダの二つの領域を互いに密封する。一方の領域はピストンカラーの内側(環状ピストンカラーの環状中心に対して)の領域に流体的に接続され、他方の領域はピストンカラーの外側の領域に流体的に接続される。
【0052】
図2にピストン1の斜視図を示す。ピストンカラー8は環状であると好ましい。ピストンカラー8は内壁10と外壁9とを有していると好ましく、内壁10と外壁9はそれぞれ一定の肉厚(リング幅ともいう)を有する。外壁9および内壁10は、ピストンカラー8の円周に沿って凹部11、12を有する。ピストンカラー8は、好ましくは、これらの凹部11、12で中断される。また、ピストンカラー8は、凹部11、12で完全に中断されるのではなく、ピストンカラー8の表面がシール要素15のシール対向面に到達しないように平坦化または成形されるだけであることも考えられる。外壁9および内壁10の凹部11、12は、互いにずれて配置されることが好ましい。
【0053】
これは、外壁9が凹部11を有する円周に対するピストンカラー8上の点では、内壁10は凹部12を有さず、その逆もまた同様であることを意味する。さらに、外壁9内の凹部11と内壁10内の凹部12の点との間に、ピストンカラー8の円周に対する領域が、内壁10および外壁9のいずれも凹部11,12を有しないように配置されていれば、有利である。この領域では、壁11、12がピストンカラー8の円周に対して重なっている。また、凹部11、12が、壁9、10自体よりも、円周に対して大きな延長部を有することも考えられる。本実施形態では、外壁9の凹部11が円周に対して小さくなっていると好ましい。本実施形態では、内壁10の凹部12が円周に対して大きいとさらに好ましい。特に、内壁10の凹部12が、内壁10自身よりもピストンカラー8の円周に対してより大きな延長部を有すると有利である。しかしながら、外壁9の凹部11はピストンカラー8の円周に対して外壁9自身よりも大きく延びており、内壁10の凹部12は、円周に対して小さくなっていることも考えられる。また、ピストンカラー8が二つ以上の壁を有することも考えられる。全ての壁が、ピストンカラーの円周に対してずれているか、または互いにずれていないか、または互いに少なくとも部分的にずれている凹部を有することも考えられる。
【0054】
凹部11、12、および、ピストンカラー8の少なくとも一つの内壁と少なくとも一つの外壁9、10との間の中間スペースは、好ましくは媒質7によって通過可能であり、したがって、媒質7の流路13を画定する。前述した、このような、ずれる凹部11、12は、環状ピストンカラー8の内側から環状ピストンカラー8の外側の領域まで流路13を形成する。ピストンカラー8は、もはやピストンによって互いに分離されたシリンダ5、6の二つの領域を完全に密閉するのではなく、流路13の助けを借りて両方の領域を接続する。この流路13は、シリンダ3の直径に比べて流路断面の点で小さいと好ましい。したがって、この流路13は、冒頭で説明したダンパー100のバイパスを表す。このようにして、流路断面はダンパー特性曲線の進行度を決定する。ピストン1を取り付けた状態でピストン摺動ユニット2を軸方向に動作させると、ピストン1はシリンダ3内でピストン摺動ユニット2の縦軸ALに沿って移動する。媒質7はピストン1のピストンカラー8内の少なくとも一つの流路13を通って、シリンダの一方の領域5から他方の領域6に、またはその逆に流れる。
【0055】
媒質7の流路13は、少なくとも一つの湾曲部14を有することが好ましい。これは、媒質7が直線的に流路13に沿ってバイパスを通って流れるのではなく、少なくとも一つの曲線の周りを流れることを意味する。好ましくは、湾曲部14を有する流路13がピストン1のディスク状基体4の表面に平行な面内に配置される。好ましくは、湾曲部14における流路13は90度の曲線を表す。
【0056】
媒質7の流路13は、好ましくは迷路状である。本発明の文脈において、迷路状とは、流路13が少なくとも一つ、好ましくは二つ以上の曲がりを有することを意味する。特に、迷路状の(流)路を覗くとき、アウトレットまたは出口は、インレットまたは入口から見えない。偏向とは媒質7の流れが、流路13の境界によって直線的な流れ方向から曲げられる部分をいう。好ましくは、偏向が前述の湾曲部14を表す。
【0057】
媒質7の流れの方向は、少なくとも一つの流路13の少なくとも一つのインレットおよび/またはアウトレットの点、または少なくとも一つの流路13に沿った任意の点、において、ピストン1に対して接線方向であると好ましい。本発明によれば、ピストン1は少なくとも一つの点を有するが、好ましくは少なくとも一つの流路13に沿った領域を有し、該流路の方向は接線方向、すなわち、環状ピストンカラー8の円周に対して平行である。好ましくは、この点または領域が少なくとも一つの流路13の入口および/または出口の点に直接的に配置される。好ましくは、流路13のこの接線領域が環状ピストンカラー8の内壁10および外壁9によって囲まれる。したがって、流路13の接線領域は、好ましくは内壁10も外壁9も凹部11、12を有していない領域に配置される。したがって、流路13の接線領域は、壁9、10がピストンカラー8の円周に対して重なる領域に配置されると好ましい。ピストン1がその上に配置されたピストン摺動ユニット2の軸方向動作中における媒質7の流れは、媒質7がピストンカラー8に接触するまで、(ピストン1のディスク状基体4に対して)半径方向外側へ向かうと好ましい。ピストンカラー8において、媒質7は、少なくとも一つのバイパスを介して流路13に入る。ピストン1は、好ましくは二つまたは三つのバイパスを有する。媒質7は、環状ピストンカラー8の内側の領域に流体的に接続されているシリンダ3の領域6から来て、内壁10の円周方向における左右の凹部12を通って内壁10のセグメントの周りを流れる。これに直接隣接して、流路13は、内壁10と外壁9との間、すなわち壁9、10の重なる領域、に延びる接線部を有する。このようにして、流路13は流路13のインレットにおいて直接的に湾曲部14を有し、この湾曲部において、媒質7は、(ピストン1のディスク状基体4に対して)半径方向から接線方向に流れの方向を変化させる。その隣には流路13の別の、媒質7が流れの方向を接線方向から半径方向に(ピストン1のディスク状基体4に対して)変化させる湾曲部14がある。これに直接隣接して、流路13は、外壁9内の凹部11を通って環状ピストンカラー8から半径方向へ延びる。このように媒質7は外壁9の凹部11から出て、シリンダ3の他方の領域5に流入し、環状ピストンカラー8の外側の領域に流体的に接続される。逆の流れの方向もまた考えられる。
【0058】
請求項1による方法でピストン1を製造するために、ピストン1の表面が平滑化され、および/または流路13がピストン1内にプレスされる。これらの工程の両方または片方は隆起した回転対称構造21を有するエンボス加工具20によって行われる。
【0059】
エンボス加工具20は、図3a(上面図)および図3b(A-Aに沿った断面図)に概略的に示されている。対応する処理工程において、先にバリ取りされたピストン1の面は、エンボス加工具20によって平滑化される。このために、エンボス加工具20は、規定された力および/または規定された量の平滑化されるべき表面を用いて、ピストン1に対して平坦にプレスされる。さらに、エンボス加工具20は、エンボス加工具20がピストン1にプレスされると、ピストン1をエンボス加工する、隆起した回転対称構造21を有している。これは、ピストン面における隆起した回転対称構造21の反転した刻印をもたらす。ピストン1は、エンボス加工具20の助けを借りて加圧成形される。しかしながら、この処理工程において、ピストン1の表面がエンボス加工具20によって平滑化されるのではなく、エンボス加工具20が、隆起した回転対称構造21を単にピストン1内にエンボス加工することも考えられる。また、エンボス加工具20がピストン1の表面を平滑化するだけであることも考えられる。
【0060】
エンボス加工具20は、好ましくは校正ダイとして具現化される。校正ダイは、好ましくはIT 3からIT 4(バッチ散乱)およびIT 4からIT 6(クロスバッチ)の領域で、低い製造公差を維持するために、定期的に正確に再加工することができるように、好ましくは回転対称に成形される。
【0061】
エンボス加工具20の隆起した回転対称構造21は、好ましくは、環状ピストンカラー8を備えるピストン1上に配置されるときに、少なくとも一つの、環状ピストンカラー8との交点を有する。図4および図5図4のBに沿う断面)に概略的に示されるピストン面上にエンボス加工具20が配置されると、エンボス加工具20はエンボス加工具20の隆起した回転対称構造21とピストン1の環状ピストンカラー8とが少なくとも一つの点で互いに静止し、少なくとも一つの交点30を有するようにピストン1に対して相対的に配置される。交点30において、エンボス加工具20の回転対称構造21は、それによって、ピストン中心に対向するピストンカラー8の側からピストン中心から離れて対向するピストンカラー8の側まで、またはピストン中心から離れて対向するピストンカラー8の側からピストン中心に対向するピストンカラー8の側まで、ピストンカラー8と交差する。
【0062】
ここで、先に示されたピストン21への配置において、エンボス加工具20はピストン1に対してプレスされるか、または、ピストン1がエンボス加工具20に対してプレスされ、それによって、両方の場合において、接触圧または量が正確に調整され得る。エンボス加工具20の隆起した回転対称構造21をピストン1にプレスすることにより、エンボス加工具20の隆起した回転対称構造21と環状ピストンカラー8との交点30の少なくとも一つの点で、環状ピストンカラー8は、好ましくは平坦形状31に少なくとも部分的に加圧成形される。プレス処理の間、エンボス加工具20と環状ピストンカラー8の隆起した回転対称構造21は、交点30の少なくとも一点で互いにプレスされる。この処理の間、エンボス加工具20の隆起した回転対称構造21は少なくとも交点30の少なくとも一つの点で環状ピストンカラー8を平坦および/または凹状の形にプレスし、それにより、環状ピストンカラー8は、少なくともこの点で、より平坦な形状に加圧成形される。このように、環状ピストンカラー8は、エンボス加工具20の隆起した回転対称構造21によって少なくとも一点で平坦化される。これはピストンカラー8の高さが、ディスク状基体4によって画定され、かつピストン摺動ユニット2に平行な平面に垂直な方向(ピストン1がピストン摺動ユニット2上に配置されている場合)に関して、平坦化された点において減少することを意味する。
【0063】
このような環状ピストンカラー8の平坦化により、ピストンカラー8の表面は、シール要素15上に配置されるとき、平坦化された領域のシール対向面と、もはや接触することはない。ピストンカラー8のピストン中心に面する側からピストンカラー8のピストン中心から離れた側にピストンカラー8の平坦化が延びる交点30において、ピストンカラー8の表面はシール要素15のシール対向面に全く接しておらず、これにより、ピストン1によって互いに密封された媒質7で満たされたシリンダ3の二つの領域6の一方から、他方の領域5への媒質7のための流路13が形成される。この流路13は、上述した、ダンパー100の、ダンパーの特徴的な曲線をもたらすバイパスを表している。少なくとも一つの平坦化された領域におけるピストンカラー8の高さの低下は非常に大きいので、媒質7が流れ得る流路13に沿ってバイパスが形成される。
【0064】
エンボス加工具20、特に校正ダイを用いてバイパスを製造することにより、IT 3からIT 4(バッチ散乱)およびIT 4からIT 6(クロスバッチ)の領域の製造公差を低減することができ、したがって、ピストン1を、本発明による課題にしたがって工業的に連続して製造できる。
【0065】
環状ピストンカラー8は、好ましくは、少なくとも一つの蛇行形状の凹部および/または窪み32を有し、これらは、好ましくは、少なくとも一つの半径方向部分33と、ピストン1に対する接線方向部分34と、を有する。蛇行形状の窪み32の場合、環状ピストンカラー8は、ピストン8の表面上で完全に円形に連続するのではなく、窪み32の始点で、ピストンカラー8が隣接する直線部と一緒に配置されているピストン表面の中心方向の第一曲線を記述し、それにより、ピストン1のディスク状基体4に対して半径方向に配置されるピストンカラー部分33を有する。窪み32のさらなる進路において、ピストンカラー8は同じく隣接する直線部を有する反対方向の第二曲線を有し、従って、ピストン1のディスク状基体4に対して接線方向に配置されるピストンカラー部分34を有する。次いで、ピストンカラー8は第二曲線と同じ方向に第三曲線を有し、それに続いて、直線部も存在する。このようにして、窪み32はピストン1のディスク状基体4に対して半径方向に配置された第2のピストンカラー部分33を有する。この第二の半径方向部分33に続いて、第四曲線が続き、これは第一曲線と同じ方向に連続する。したがって、ここでは、ピストンカラー8は円の基本形状に沿って続く。膨らみの場合、ピストンカラーはこの記載と同様に成形され、曲線が反対方向に進み、ピストンカラーの第一の半径方向部分33は、ピストンカラー8が配置されるピストン面の中心から離れて進むという違いがある。また、ピストンカラー8は、曲線の代わりに、窪み32または膨らみの領域に角を有することも考えられる。
【0066】
上述の好ましい窪み32または膨らみは、角が丸みを帯びているか、または丸みを帯びていない角張った「U」字形状を有する。しかしながら、他の形状の窪み32または膨らみ、例えば、「V」字形状または半円形状、またはエンボス加工具20の隆起した回転対称構造21が少なくとも一点でピストンカラー8を交差する、当業者に知られている任意の他の形状も考えられる。
【0067】
好ましくは、エンボス加工具20の回転対称構造21における少なくとも一つの交点30は、環状ピストンカラー8の少なくとも一つの蛇行形状の窪み32または膨らみの内に配置される。さらに、好ましくは、エンボス加工具20の回転対称構造21との交点30の少なくとも一つの点が、環状ピストンカラー8の少なくとも一つの蛇行形状の窪み32または膨らみの少なくとも一つの部分33内に配置され、ピストン1に半径方向に整列される。蛇行形状の窪み32は、好ましくは丸くすることができる直角のコーナーを有する。エンボス加工具20の隆起した回転対称構造21は、リング形状であることが好ましい。隆起した回転対称構造21のリング直径は、蛇行形状の窪み32を含まないピストンカラー8のリング直径よりも小さいが、ピストンカラー8の窪み32における接線方向に連続する部分34に沿った仮想的なリングのリング直径よりも大きい場合には、特に有利である。これにより、エンボス加工具20の隆起した回転対称構造21とピストンカラー8との交点30が窪み32ごとに2点あり、それぞれが窪み32のピストンカラー8の半径方向に配置された部分33にある。ここで特に有利なのは、エンボス加工具20の隆起した回転対称構造21のリング直径がピストンカラー8のリング直径よりも小さいが、それでもエンボス加工具20の隆起した回転対称構造21が、リング中心に対して、リング全周に沿って、しかし、窪み32の外側に配置され、リング幅の一部がピストンカラー8のリング中心に対して内側にあるリング幅の一部に静止するのに十分な大きさであり、また、より平坦な形状に加圧成形されることである(図5の右側参照)。
【0068】
ピストンカラー8の蛇行形状の膨らみの場合では、隆起した回転対称構造21のリング直径は、蛇行形状の膨らみを含まずにピストンカラー8のリング直径よりも大きいが、ピストンカラー8の膨らみにおける接線方向に連続する部分34に沿った仮想的なリングのリング直径よりも小さいことが、有利である。その結果、エンボス加工具20の隆起した回転対称構造21とピストンカラー8のそれぞれの膨らみにおける、半径方向に配置された部分33には、それぞれ二つの交点30も存在する。
【0069】
出願人は、出願書類に開示された全ての特徴が個々にまたは組み合わせて、先行技術と比較して新規であることを条件として、本発明に不可欠であると主張する権利を留保する。さらに、個々の図は、それ自体が有利であり得る特徴も記載していることを指摘しておく。当業者は、図に記載された特定の特徴がその図からさらなる特徴を採用しなくても有利であり得ることを直ちに認識できる。さらに、当業者は、個々の図または異なる図に示されるいくつかの特徴の組み合わせからも利点が生じ得ることを認識する。
【符号の説明】
【0070】
1:ピストン
2:ピストン摺動ユニット
3:シリンダ
4:ディスク状基体
5:シリンダの領域
6:シリンダのもう一つの領域
7:媒質
8:ピストンカラー
9:外壁
10:内壁
11:外壁の凹部
12:内壁の凹部
13:流路
14:流路の湾曲部
15:シール要素
20:エンボス加工具
21:隆起した回転対称構造
30:交点
31:ピストンカラーの平坦形状
32:ピストンカラーの膨らみまたは窪み
33:ピストンカラーの半径方向に連続する部分
34:ピストンカラーの接線方向部分
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5