(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩およびNaY分子篩を調製する方法
(51)【国際特許分類】
C01B 39/24 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
C01B39/24
(21)【出願番号】P 2020566769
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(86)【国際出願番号】 CN2019088484
(87)【国際公開番号】W WO2019228290
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】201810528722.2
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810525444.5
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】付強
(72)【発明者】
【氏名】李永祥
(72)【発明者】
【氏名】張成喜
(72)【発明者】
【氏名】胡合新
(72)【発明者】
【氏名】慕旭宏
(72)【発明者】
【氏名】舒興田
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101450320(CN,A)
【文献】特開2010-155190(JP,A)
【文献】特表2012-512805(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107758684(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107970969(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 37/00-39/54
B01J 29/00-29/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子篩のAl分布パラメータDが、1.01≦D≦10を満
たすことを特徴とする、表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩。
(D=Al(S)/Al(C);Al(S)はXPS法で測定される、分子篩の表面および表面下2nm~6nmの領域内のアルミニウム含有量を示す;Al(C)は、XRF法で測定される分子篩全体のアルミニウム含有量を示す)
【請求項2】
前記分子篩のAl分布パラメータDが、1.2または1.3≦D≦4を満たすことを特徴とする、請求項1に記載のNaY分子篩。
【請求項3】
表面がアルミニウムに富んだ前記分子篩は、表面のSiO
2/Al
2O
3のモル比が1~10であり
、バルク相のSiO
2/Al
2O
3のモル比が2~20で
あることを特徴とする、請求項1に記載のNaY分子篩。
【請求項4】
表面がアルミニウムに富んだ前記分子篩は、表面のSiO
2
/Al
2
O
3
のモル比が2.5~5であり、バルク相のSiO
2
/Al
2
O
3
のモル比が6~10であることを特徴とする、請求項3に記載のNaY分子篩。
【請求項5】
表面がアルミニウムに富んだ前記NaY分子篩は、Al
2O
3に基づいて計算されるAl含有量が18重量%~26重量%で
あることを特徴とする、請求項1に記載のNaY分子篩。
【請求項6】
表面がアルミニウムに富んだ前記NaY分子篩は、Al
2
O
3
に基づいて計算されるAl含有量が21重量%~25重量%であることを特徴とする、請求項5に記載のNaY分子篩。
【請求項7】
表面がアルミニウムに富んだ前記NaY分子篩の平均粒子径は、200nm~600nmで
あることを特徴とする、請求項1に記載のNaY分子篩。
【請求項8】
表面がアルミニウムに富んだ前記NaY分子篩の平均粒子径は、400nm~500nmであることを特徴とする、請求項7に記載のNaY分子篩。
【請求項9】
請求項1に記載のNaY分子篩を調製する方法であって、
モル組成がNa
2O:Al
2O
3:SiO
2:H
2O=(3~50):1:(3~50):(100~600
)である誘導剤を、第1ケイ素源と混合し、第1混合物を得るステップa、
ステップaにおいて得られた前記第1混合物を、第2ケイ素源、アルミニウム源および水と混合し、第2混合物を得るステップb、および、
ステップbにおいて得られた前記第2混合物の水熱結晶化を行い、固体生成物を収集するステップc、を含み、
前記第1ケイ素源と第2ケイ素源とで、SiO
2に基づいて計算される重量比が、1:(0.001~20)で
あることを特徴とする、方法。
【請求項10】
ステップaにおいて、モル組成がNa
2
O:Al
2
O
3
:SiO
2
:H
2
O=(6~25):1:(6~25):(200~400)である誘導剤を、第1ケイ素源と混合し、第1混合物を得、
前記第1ケイ素源と第2ケイ素源とで、SiO
2
に基づいて計算される重量比が、1:(0.01~12)であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップaにおいて、前記誘導剤を調製する工程は、誘導剤となるアルミニウム
源を水ガラスと混合して得た第3混合物に対して、動的エージングおよび静的エージングを行った後、前記第3混合物を水と混合し、前記誘導剤を得る処理を
含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
前記動的エージングは、15℃~60℃下で5時間~48時間撹拌してエージングする処理を含み、前記静的エージングは、15℃~60℃下で5時間~48時間静置してエージングする処理を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アルミニウム源は、メタアルミン酸ナトリウムである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
ステップaにおいて、前記第1ケイ素源は、水ガラス、コロイドシリカおよびシリカゾルから選択される少なくとも1つである、請求項
9に記載の方法。
【請求項15】
ステップaにおいて、前記第1ケイ素源は固体ケイ素源であり、前記混合は30分~180分の間、撹拌下で行われる、請求項
9に記載の方法。
【請求項16】
ステップbにおいて、前記第2混合物のモル組成は、Na
2O:Al
2O
3:SiO
2:H
2O=(2~6):1:(8~20):(200~400)である、請求項
9に記載の方法。
【請求項17】
ステップbにおいて、前記第2ケイ素源は、水ガラス、シリカアルミナゲルおよびシリカアルミナゾルからなる群より選ばれる少なくとも1つで
ある、請求項
9に記載の方法。
【請求項18】
前記シリカアルミナゲルのSiO
2
/Al
2
O
3
のモル比は6~16であり、前記シリカアルミナゾルのSiO
2
/Al
2
O
3
のモル比は6~16である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップbにおいて、前記アルミニウム源は、メタアルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムおよび擬似ベーマイトからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項
9に記載の方法。
【請求項20】
元素およびモル比に基づいて計算する場合、前記第2混合物中のアルミニウム元素に対する、前記誘導剤中のアルミニウム元素の比率は3%~30%である、請求項
9に記載の方法。
【請求項21】
ステップcにおいて、前記水熱結晶化の条件として、温度が40℃~100℃であり
、時間が10時間~60時間で
ある、請求項
9に記載の方法。
【請求項22】
ステップcにおいて、前記水熱結晶化の条件として、温度が90℃~100℃であり、時間が15時間~48時間である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
改質Y分子篩を調製する方法であって、
請求項
9に記載のステップa、ステップb、およびステップcを含み、
ステップcにおいて得られた前記NaY分子篩に対して、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理と、水熱処理と、Al-Si同形置換とをこの順に行い、改質Y分子篩を得るステップdをさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項24】
ステップdにおいて、アンモニウムと反応させて前記ナトリウム含有量を減らす前記処理は、アンモニウムイオン濃度が0.1mol/L~1.0mol/
Lであるアンモニウム塩溶液を使用し、前記NaY分子篩を処理する工程を含み、
該工程の処理条件として、温度が常温~100℃であり
、液体と固体との重量比が(8~15):1、時間が0.2時間~3時間で
ある、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
ステップdにおいて、アンモニウムと反応させて前記ナトリウム含有量を減らす前記処理は、アンモニウムイオン濃度が0.4mol/L~0.8mol/Lであるアンモニウム塩溶液を使用し、前記NaY分子篩を処理する工程を含み、
該工程の処理条件として、温度が50℃~100℃であり、液体と固体との重量比が(8~15):1、時間が0.5時間~1.5時間である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
アンモニウム塩は、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、および、酢酸アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項
23に記載の方法。
【請求項27】
ステップdにおいて、前記水熱処理は、アンモニウムと反応してナトリウム含有量が減らされた後のNaY分子篩を、100%水蒸気、0.1MPa~0.3MP
aのゲージ圧、400℃~700
℃の温度下で、1時間~3時間処理する工程を含む、請求項
23に記載の方法。
【請求項28】
ステップdにおいて、前記水熱処理は、アンモニウムと反応してナトリウム含有量が減らされた後のNaY分子篩を、100%水蒸気、0.1MPa~0.2MPaのゲージ圧、500℃~650℃の温度下で、1時間~3時間処理する工程を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ステップdにおいて、前記Al-Si同形置換は、水熱処理後のNaY分子篩をスラリー化して液体と固体との重量比が(3~10):1のスラリーを得た後、NaY分子篩100gあたり、10g~60
gの(NH
4)
2SiF
6投入量で、前記スラリーに(NH
4)
2SiF
6を添加し、80℃~120
℃の温度下で、0.5時間~5時間撹拌し、生成物を回収する工程を含む、請求項
23に記載の方法。
【請求項30】
ステップdにおいて、前記Al-Si同形置換は、水熱処理後のNaY分子篩をスラリー化して液体と固体との重量比が(3~10):1のスラリーを得た後、NaY分子篩100gあたり、20g~40gの(NH
4
)
2
SiF
6
投入量で、前記スラリーに(NH
4
)
2
SiF
6
を添加し、85℃~99℃の温度下で、0.5時間~5時間撹拌し、生成物を回収する工程を含む、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本開示は、表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩およびNaY分子篩を調製する方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
1950年代後半、MiltonとBreckはY型分子篩の合成に成功した。X型分子篩に比べ、NaY分子篩は、その構造におけるSiO2/Al2O3比が大きいため、熱安定性および水安定性が向上している。そして1970年代初頭、Grace社は、誘導剤法によりNaY分子篩を合成する方法を開発した。該NaY分子篩は、原材料として高価なシリカゾルの代わりに水ガラスが使用され、工程が簡素化され、成長周期が短縮されたため、NaY分子篩は、石油化学産業、特に石油クラッキングの分野に急速に広く利用されるようになった。これまでに開発された百種類以上の分子篩の中で、産業上、最もよく使用されているのはY分子篩である。現在、産業上、NaY分子篩を合成する主な方法は、種晶ゲル法である。種晶ゲルの使用および改良により、Y型分子篩の合成・結晶化時間が大幅に短縮され、Y型分子篩の産業化を可能にした。
【0003】
Y型分子篩はFAUトポロジー構造を有し、各々の単位胞が192個のTO4(T=Si、Al)によって構成されている。Y分子篩は、直径1.2nm~1.3nmのスーパーケージを含み、12員環による細孔の直径が0.74nm~0.75nmに達する。市販の合成された原料Y分子篩は、通常、アルミナに対するシリカの比が2.8未満である。Loewenstein理論によれば、骨格AL原子に隣接する四面体部位にAL原子が配置されてはならない。そのため、AL原子周囲の最も近い他のAL原子は、その隣接4員環における対応する位置にしか分布し得ない。ここで、AL原子に隣接する4員環中の対応する位置のアルミニウム原子は、NNN-ALと呼ばれ、各々の骨格アルミニウムにおけるNNN-ALの数は、0、1、2および3で有り得る。29Si MAS NMRを用いて脱アルミニウムY分子篩中のNNN-ALを発現させると、当該分子篩中のSi(nAI)(n≧2)が少ないほど、0-NNN-ALの相対含有量が多いことがわかった。分子篩の骨格アルミニウムの理論的計算では、NNN-ALの数の増加につれ、分子篩の酸性が徐々に低下し、孤立したアルミニウム原子(0-NNN-AL)のみが強酸の性質を示すことがわかった。分子篩の水熱安定性は、分子篩中の骨格アルミニウムの含有量にも関係している。分子篩中の骨格アルミニウムの含有量の低下につれ、分子篩の単位胞が小さくなり、熱安定性が向上する。
【0004】
通常、市販の直接合成されたY型分子篩は、Na型であり、骨格におけるアルミナに対するシリカの比(Si/Al)が2.8未満であるため、触媒中に添加する前に、脱ナトリウムおよび脱アルミニウム処理を行う必要がある。脱アルミニウム工程は、Y分子篩の応用にとって非常に重要であり、Y型分子篩の水熱安定性および酸強度を向上させるとともに、分子篩内部に二次的チャネルを構築することができる。しかし、脱アルミニウム工程では、分子篩内の骨格アルミニウムの分布が変化し、脱アルミニウム後のY分子篩の酸性に影響を与える。研究によると、分子篩の脱アルミニウムの進行につれ、分子篩の酸強度が徐々に増加する。これは、弱酸性の骨格アルミニウム原子が除去されやすいことを意味する。一般的に、直接合成されたNaY分子篩は、アルミニウムに対するケイ素の比が低い。分子篩が適度に脱アルミニウムされるとき、弱酸性のn-NNN-AL(n=1、2、3)が優先的に除去され、強酸性の0-NNN-ALが好適に残される。したがって、分子篩の強酸性点(strong acidity point)の相対含有量は脱アルミニウムにより増加する。FAU分子篩の単位胞中のアルミニウム原子が64を超える場合、FAU分子篩が0-NNN-ALを含まなくなり、このときの分子篩は強酸性点を含まない。脱アルミニウムの進行につれ、FAU分子篩中の0-NNN-ALの数が徐々に増加し、強酸性点も徐々に増加する。FAU分子篩単位胞中のアルミニウム原子が29にまで減少したとき、FAU分子篩中の0-NNN-ALの数および強酸性点の含有量が最も多い。しかし、引き続きY分子の脱アルミニウムを行うと、逆に0-NNN-ALが減少し、強酸性点も減少する。脱アルミニウム工程では、n-NNN-ALが選択的に除去されるため、アルミニウムに対するケイ素の比が同じ場合、直接合成されたY分子篩に比べ、脱アルミニウムY分子篩はn-NNN-ALがより少なく、0-NNN-ALおよび強酸性点がより多い。
【0005】
分子篩の脱アルミニウム工程は複雑で制御が困難である。アルミニウムの除去は、厳しい脱アルミニウム条件が要求され、触媒の表面の脱アルミニウムと、バルク相の脱アルミニウムとを同程度にすることも困難である。通常、分子篩の表面のアルミニウムが除去されやすいが、分子篩のバルク相のアルミニウムを除去するためには、より厳しい脱アルミニウム条件が必要とされる。しかし、このような条件では、分子篩の骨格構造の崩壊、微細孔の破壊を招来する。したがって、脱アルミニウム改質前のY分子篩のアルミニウム分布は、脱アルミニウム後の細孔構造および酸性質の両方に大きな影響を及ぼす。
【0006】
従来の文献では、表面がアルミニウムに富んだ分子篩、特に、NaY分子篩に関する研究が少ない。CN1363517Aには、合成材料の供給比を調整することにより、アルミニウムに富んだグメリナイト-Naを結晶化するという、アルミニウムに富んだAFI型分子篩の合成方法が開示されている。CN101096274AおよびCN101096275Aには、アルミニウムに富んだBeta-ゼオライトを合成する方法が開示されている。該方法は、加水分解剤の存在下で、まず、シリカ-アルミナ共ゲルを合成し、または、シリカ源に酸性アルミニウム源を浸漬することにより、シリカ-アルミニウム源を調製した後、焼成、粉砕を行い、シリカ-アルミニウム源として、アルミニウムに富んだBeta-ゼオライトを合成する。CN101274764AおよびCN101353168Aでは、上記と類似する方法を用い、または、フッ素イオンの存在下で、アルミニウムに富んだナノサイズのBeta-ゼオライトを調製する。アルミニウムに富んだ分子篩を調製するためのこれらの方法は、いずれも一段階の水熱合成工程により実現される。USP2882244に記載されたように、初期のX型分子篩は、高アルミニウム含有量のフォージャサイト構造の分子篩に属するが、Y型分子篩の範疇には属さず、且つ水熱下の構造安定性が悪いため、Y分子篩、またはアルミニウムに富んだY分子篩の代わりに触媒作用工程へ使用することができない。CN102173436Bに開示された方法では、二段階水熱合成の方法を使用し、アルミニウムに富んだY分子篩を調製し、レアアースによる改質を行う。当該分子篩が次のように作成されることが該方法の特徴である。モル比としてNa2O/SiO2=0.3~0.5、SiO2/Al2O3=5~7、H2O/Na2O=40~70であるケイ素源およびアルミニウム源から調製されたコロイドと、同じ重量のNaY型分子篩とを均一に混合し、60℃~110℃下で二段階の水熱合成を0.5時間~4時間行い、表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩を得る;レアアースによるイオン水熱交換を経た後、アンモニア水によってスラリーのpH値を7~10に調整することによって、レアアース酸化物を沈着させる;その後、450℃~750℃、系内圧力0.001MPa~0.09MPa下で、0.5時間~4時間真空焼成し、さらにNa2O含有量≦1.0重量%となるまでアンモニウム塩水溶液で置換する;これにより、RE2O3に基づいて計算されるレアアース含有量が10重量%~20重量%であり、BET比表面積≧600m2/gである大表面積のレアアースY型分子篩を得る。上記の合成工程から見れば、誘導剤が不十分なため、二段階の水熱合成によって足されたアルミニウム元素がY分子篩の骨格に入って骨格アルミニウムになることは難しい。
【0007】
〔発明の概要〕
本開示の目的は、表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩およびNaY分子篩を調製する方法を提供することである。該NaY分子篩は、粒子の表面から中心までのアルミニウム分布において、従来のNaY分子篩よりも大きな勾配が存在する。
【0008】
上記目的を実現するために、本開示の第1の態様は、表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩を提供する。前記分子篩のAl分布パラメータDは、1.01≦D≦10を満たし、好ましくは1.1≦D≦6、より好ましくは1.2または1.3≦D≦4を満たす(D=Al(S)/Al(C)。Al(S)は、XPS法によって測定される分子篩の表面および表面下2nm~6nmの領域内のアルミニウム含有量を示し、Al(C)は、XRF法によって測定される分子篩全体のアルミニウム含有量を示す。)ことを特徴とする。好ましい一実施形態では、表面がアルミニウムに富んだ前記分子篩は、表面のSiO2/Al2O3のモル比が1~10であり、好ましくは2~8であり、より好ましくは2.5~5であり、バルク相のSiO2/Al2O3のモル比が2~20であり、好ましくは4~15であり、より好ましくは6~10である。
【0009】
本発明にかかる、表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩は、Al2O3に基づいて計算されるAl含有量が18重量%~26重量%であり、好ましくは21重量%~25重量%である。
【0010】
本発明にかかる、表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩の平均粒子径は200nm~600nmであり、好ましくは400nm~500nmである。
【0011】
本発明にかかる、表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩の比表面積(BET法)は640m2/g~790m2/gであり、好ましくは690m2/g~780m2/gである。本発明にかかる、表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩の細孔体積(BET法)は0.34ml/g~0.50ml/gであり、好ましくは0.36ml/g~0.45ml/gである。
【0012】
本開示の第2の態様は、本開示の第1の態様に記載のNaY分子篩を調製する方法を提供する。
【0013】
該方法は、モル組成がNa2O:Al2O3:SiO2:H2O=(3~50):1:(3~50):(100~600)、好ましくは(6~25):1:(6~25):(200~400)である誘導剤を、第1ケイ素源と混合し、第1混合物を得るステップa、
ステップaにおいて得られた前記第1混合物を、第2ケイ素源、アルミニウム源および水と混合し、第2混合物を得るステップb、および、
ステップbにおいて得られた前記第2混合物の水熱結晶化を行い、固体生成物を収集するステップc、を含み、
前記第1ケイ素源と第2ケイ素源とで、SiO2に基づいて計算される重量比が、1:(0.001~20)であり、好ましくは1:(0.01~12)である。
【0014】
任意に、ステップaにおいて、前記誘導剤を調製する工程は、誘導剤となるアルミニウム源(例えばメタアルミン酸ナトリウム)を水ガラスと混合して得た第3混合物に動的エージングおよび静的エージングを行った後、水と混合し、前記誘導剤を得る処理を含む。
【0015】
好ましくは、前記動的エージングは、15℃~60℃下で1時間~100時間、好ましくは3時間~60時間、より好ましくは5時間~48時間または15時間~48時間撹拌してエージングする処理を含み、前記静的エージングは、15℃~60℃下で、0.5時間~100時間、好ましくは3時間~60時間、より好ましくは5時間~48時間、5時間~15時間または15時間~48時間静置してエージングする処理を含む。
【0016】
任意に、ステップaにおいて、前記第1ケイ素源は、水ガラス、コロイドシリカおよびシリカゾルから選択される少なくとも1つである。
【0017】
任意に、ステップaにおいて、撹拌下で前記混合を行う。均一混合が実現可能であれば、撹拌の条件は特に限定されない。特に、前記第1ケイ素源が固体ケイ素源である場合、前記混合は、例えば30分~180分の間、撹拌下で行われる。
【0018】
任意に、ステップbにおいて、前記第2混合物のモル組成が、Na2O:Al2O3:SiO2:H2O=(1~10):1:(5~50):(100~600)、好ましくは(2~6):1:(8~20):(200~400)となる条件であれば、前記第1混合物、第2ケイ素源、アルミニウム源および水の用量は特に限定されない。
【0019】
任意に、ステップbにおいて、前記第2ケイ素源は、水ガラス、シリカアルミナゲルおよびシリカアルミナゾルからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、好ましくは、前記シリカアルミナゲルのSiO2/Al2O3のモル比は3~30であり、好ましくは6~16であり、前記シリカアルミナゾルのSiO2/Al2O3のモル比は3~30であり、好ましくは6~16である。
【0020】
任意に、ステップbにおいて、前記アルミニウム源は、メタアルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムおよび擬似ベーマイトからなる群より選ばれる少なくとも1つである。
【0021】
任意に、元素およびモル比に基づいて計算する場合、前記第2混合物中のアルミニウム元素に対する、誘導剤由来のアルミニウム元素の比率は3%~30%である。
【0022】
任意に、ステップbにおいて、撹拌下で前記混合を行う。均一混合が実現可能であれば、撹拌の条件は特に限定されない。
【0023】
任意に、ステップcにおいて、前記水熱結晶化の条件は特に限定されない。本発明に必要なNaY分子篩を得ることができれば、本分野で知られている通常の水熱結晶化の条件を採用することができる。任意に、例えば、水熱結晶化の条件としては、温度が40℃~100℃であり、好ましくは90℃~100℃であり、時間が10時間~60時間であり、好ましくは15時間~48時間である。
【0024】
前記の技術的構成によれば、本開示は、まず、誘導剤を第1ケイ素源と接触させ、高ケイ素濃度の局所が形成されることにより、高ケイ素濃度の結晶核がより形成されやすくなる。その後の結晶粒の成長では、ケイ素源がアルミニウム源よりも速く消費され、ケイ素原子の濃度の低下がより速くなるため、結晶核の表面のアルミニウムに対するケイ素の比が徐々に減少し、最終的に、表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩が得られる。該NaY分子篩は、粒子の表面から中心までの骨格アルミニウム分布において、従来の分子篩よりも大きな勾配が存在する。本開示の方法は、テンプレート剤または添加剤を余分に追加する必要がなく、使用される原材料は安価で入手しやすく、一段階の水熱結晶化だけで調製可能で、工程が簡素化されている。
【0025】
本開示の第3の態様は、表面がメソポアに富んだ改質Y分子篩を提供する。該改質Y分子篩は、バルク相のSiO2/Al2O3モル比は、6~20であり、好ましくは8~15、より好ましくは10~13であり、BET法による全細孔体積は、0.35cm3/g以上であり、好ましくは0.38cm3/g以上であり、または、0.40cm3/g以上であり、BET法による二次細孔の細孔体積は、0.06cm3/g以上であり、好ましくは0.08cm3/g以上、または、0.09cm3/g以上であり、単位胞パラメータは、a=b=c=2.44nm~2.46nmであり、前記改質Y分子篩中の酸化ナトリウムの含有量は、前記改質Y分子篩の総重量に対して0.1重量%以下であることを特徴とする。
【0026】
さらに、前記改質Y分子篩のBET法による全細孔体積は0.6cm3/g以下であってもよく、好ましくは0.55cm3/g以下であり、または、0.50cm3/g以下であり、BET法による二次細孔の細孔体積は、0.4cm3/g以下であってもよく、好ましくは0.3cm3/g以下であり、または0.25cm3/g以下である。
【0027】
本開示によれば、前記BET法によりY分子篩の全細孔体積および二次細孔の細孔体積を測定するための方法、および、単位胞パラメータを測定するための方法は、当業者にとって周知の方法であり、本開示ではその説明を省略する。
【0028】
本発明の改質Y分子篩は、Al2O3に基づいて計算されるAl含有量が15重量%~24重量%であり、好ましくは16重量%~21重量%である。
【0029】
本発明の改質Y分子篩の平均粒子径は、200nm~600nmであり、好ましくは400nm~500nmである。
【0030】
本発明の改質Y分子篩の比表面積(BET法)は、640m2/g~790m2/gであり、好ましくは690m2/g~780m2/gである。
【0031】
本開示の第4の態様は、第2の態様に記載の方法におけるステップa、b、およびcを含み、さらに、
ステップcにおいて得られた前記NaY分子篩に対して、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理と、水熱処理と、Al-Si同形置換とをこの順に行い、改質Y分子篩を得るステップdを含むことを特徴とする、改質Y分子篩を調製する方法を提供する。
【0032】
任意に、ステップdにおいて、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理は、アンモニウムイオン濃度が0.1mol/L~1.0mol/L、好ましくは0.2mol/L~0.9mol/L、より好ましくは0.4mol/L~0.8mol/Lであるアンモニウム塩溶液を使用し、前記NaY分子篩を処理する工程を含み、該処理は、ステップcにおいて得られた前記NaY分子篩を前記アンモニウム塩溶液に浸漬する工程を含んでもよいが、これに限定されない。該処理の条件は、常温~100℃、好ましくは50℃~100℃の処理温度と、(8~15):1である液体と固体との重量比と、0.2時間~3時間、好ましくは0.5時間~1.5時間の処理時間とを含む。任意に、撹拌下で該処理を行う。前記アンモニウム塩は、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、および、酢酸アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つである。
【0033】
任意に、ステップdにおいて、前記水熱処理は、アンモニウムと反応してナトリウム含有量が減らされた後のNaY分子篩を、100%水蒸気、0.1MPa~0.3MPa、好ましくは0.1MPa~0.2MPaのゲージ圧、400℃~700℃、好ましくは500℃~650℃の温度下で、1時間~3時間処理する工程を含む。
【0034】
任意に、ステップdにおいて、前記Al-Si同形置換は、水熱処理後のNaY分子篩をスラリー化して液体と固体との重量比が(3~10):1のスラリーを得た後、NaY分子篩100gあたり、10g~60g、好ましくは20g~40gの(NH4)2SiF6投入量で、前記スラリーに(NH4)2SiF6を添加し、80℃~120℃、好ましくは85℃~99℃の温度下で、0.5時間~5時間、例えば1時間~3時間撹拌し、生成物を回収する工程を含む。
【0035】
該第4の態様の追加ステップdによれば、表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩に対して、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理、水熱処理およびAl-Si同形置換という後処理によって最終的な改質を行い、表面がメソポアに富んだ改質Y分子篩を得る。
【0036】
本開示の他の特徴および利点は、以下の具体の実施形態において詳しく説明する。
【0037】
〔図面の説明〕
図面は、本開示の更なる理解を提供するためのものであり、明細書の一部を構成し、以下の具体の実施形態とともに本開示の解釈に供されるが、本開示を限定するものではない。
【0038】
図1は実施例9において調製された改質Y分子篩のTEM写真である。
【0039】
図2は実施例9において調製された改質Y分子篩のTEM写真である。
【0040】
図3は比較例7において調製されたY分子篩のTEM写真である。
【0041】
〔発明の実施形態〕
以下、図面を参照しながら、本開示の具体的な実施形態を詳細に説明する。なお、ここで記載される具体的な実施形態は、本開示を説明、解釈するためのものであり、本開示を限定するものではない。
【0042】
本明細書に言及される全ての出版物、特許出願、特許およびその他の参考文献は、全て参照により本明細書中に組み込まれる。本明細書に使用される全ての技術用語および科学用語は、別途で定義する場合を除き、当業者が一般に理解している意味を持つが、理解に衝突が存在する場合には本明細書中の定義に準ずる。
【0043】
本明細書において、「当業者周知」、「本分野の公知」、または類似する用語を用いて材料、方法、部材、装置または設備などを説明する場合、当該用語は、本願の出願の時点で本分野において通常に使用されているものを包含する。但し、現在では慣用ではないが、将来にその類似する目的に適合すると本分野において公認されるであろうものも含む。
【0044】
別途、定義する場合を除き、本明細書に開示されている様々な範囲はいずれもその端点を含む。また、量、濃度、その他の値またはパラメータについて、範囲、1つまたは複数の好ましい範囲、または、好ましい上限値および好ましい下限値が多数示される場合、これは、任意の範囲における上限値または好ましい値と、任意の範囲における下限値または好ましい値とからなる任意のペア値によって規定されるあらゆる範囲が、当該数値のペアの逐一開示の有無に関係なく、具体的に開示されている、と理解されるべきである。
【0045】
本発明において、列挙された特定の要素を「包含する」、「含む」などのように開放的に限定にする形によって、技術的構成を示す場合、当業者に理解される通り、これらの要素から構成され、または基本的にこれらの要素から構成される実施形態は、前記技術的構成の実施に用いることができることが明白である。したがって、当業者に理解される通り、本発明において、開放的な限定によって示される技術的構成は、列挙され要素によって構成され、または、列挙された要素によって実質的に構成される実施形態も含む。
【0046】
最後に、明確な説明がない限り、本明細書に記載されているすべてのパーセンテージ、部数、比率などは重量に基づいている。ただし、当該基準は当業者の従来認識と矛盾する場合、当業者の従来認識によって決定される。
【0047】
本開示の第1の態様は、表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩を提供する。前記分子篩のAl分布パラメータDは、1.01≦D≦10を満たし、好ましくは1.1≦D≦6、より好ましくは1.2または1.3≦D≦4を満たす(D=Al(S)/Al(C)。Al(S)は、XPS法によって測定される分子篩の表面および表面下2nm~6nmの領域内のアルミニウム含有量を示し、Al(C)は、XRF法によって測定される分子篩全体のアルミニウム含有量を示す。)。好ましい一実施形態では、表面がアルミニウムに富んだ分子篩は、表面のSiO2/Al2O3のモル比が1~10、好ましくは2~8、より好ましくは2.5~5であり、バルク相SiO2/Al2O3のモル比が2~20、好ましくは4~15、より好ましくは6~10である。
【0048】
本発明にかかる、表面がアルミニウムに富んだ前記NaY分子篩は、Al2O3に基づいて計算されるAl含有量が18重量%~26重量%であり、好ましくは21重量%~25重量%である。
【0049】
本発明にかかる、表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩の平均粒子径は、200nm~600nmであり、好ましくは400nm~500nmである。
【0050】
本発明にかかる、表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩の比表面積(BET法)は640m2/g~790m2/gであり、好ましくは690m2/g~780m2/gである。本発明にかかる、表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩の細孔体積(BET法)は0.34ml/g~0.50ml/gであり、好ましくは0.36ml/g~0.45ml/gである。
【0051】
本開示によれば、分子篩の表面のSiO2/Al2O3比およびバルク相SiO2/Al2O3比の定義および測定方法は当業者に周知の方法であり、XPS法およびXRF法で分子篩のアルミニウム含有量を測定する方法も当業者に周知の方法であり、本開示ではその説明を省略する。
【0052】
本発明におけるAl分布パラメータDに示されるように、本開示にかかる、表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩は、粒子の表面から中心までの骨格アルミニウム分布において、従来の分子篩よりも大きな勾配が存在する。したがって、本発明により分子篩を調製する場合、脱アルミニウムによる改質後の、触媒の表面のアルミニウム含有量とバルク相のアルミニウム含有量と、を同量にすることがより容易に実現され、触媒の表面におけるより大きなメソポア体積も、好ましく得られる。
【0053】
本開示の第2の態様は、本開示の第1の態様に記載のNaY分子篩を調製する方法を提供する。該方法は、
モル組成がNa2O:Al2O3:SiO2:H2O=(3~50):1:(3~50):(100~600)、好ましくは(6~25):1:(6~25):(200~400)である誘導剤を、第1ケイ素源と混合し、第1混合物を得るステップa、
ステップaにおいて得られた前記第1混合物を、第2ケイ素源、アルミニウム源および水と混合し、第2混合物を得るステップb、および、
ステップbにおいて得られた前記第2混合物の水熱結晶化を行い、固体生成物を収集するステップc、を含み、
前記第1ケイ素源の第2ケイ素源に対する、SiO2に基づいて計算される重量比は、1:(0.001~20)であり、好ましくは1:(0.01~12)である。
【0054】
本開示は、まず、誘導剤を第1ケイ素源と接触させ、高ケイ素濃度の局所が形成されることにより、高濃度のケイ素原子の結晶核がより形成されやすくなる。その後の結晶粒の成長では、ケイ素源がアルミニウム源よりも速く消費され、ケイ素原子の濃度の低下がより速くなるため、結晶核の表面のアルミニウムに対するケイ素の比が徐々に減少し、最終的に、表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩が得られる。該NaY分子篩は、粒子の表面から中心までの骨格アルミニウム分布において、従来の分子篩よりも大きな勾配が存在する。
【0055】
本開示によれば、ステップaにおいて、前記誘導剤は、NaY分子篩を調製するための当業者に周知なタイプの誘導剤であり、従来技術の工程によって調製されてもよい。例えば、前記誘導剤を調製する工程は、酸化物に基づいて計算されるモル比として、好ましくは例えば(6~25)Na2O:Al2O3:(6~25)SiO2:(200~400)H2Oの、ケイ素源(例えばケイ酸ナトリウム)、アルミニウム源(例えばメタアルミン酸ナトリウム)および任意の水を均一に混合し、室温~70℃の温度下で、0.5時間~48時間静置し、誘導剤を得る処理を含む。本開示の好ましい一実施形態では、より理想的な効果を得るために、前記誘導剤を調製する工程は、誘導剤となるアルミニウム源(例えばメタアルミン酸ナトリウム)を水ガラスと混合して得た第3混合物に対して動的エージングおよび静的エージングを行った後、水と混合し、前記誘導剤を得る処理を含む。さらに、前記動的エージングは、15℃~60℃で、1時間~100時間、好ましくは3時間~60時間、より好ましくは5時間~48時間または15時間~48時間撹拌してエージングする処理を含んでもよい。前記静的エージングは、15℃~60℃下で、0.5時間~100時間、好ましくは3時間~60時間、より好ましくは5時間~48時間、5時間~15時間または15時間~48時間静置してエージングする処理を含んでもよい。前記動的エージングにより、メタアルミン酸ナトリウムと水ガラスとがより十分に混合される。静的エージング後、誘導剤における所望のモル配合比になるまで、撹拌下で水を入れてもよい。上記の好ましい実施形態によって調製された誘導剤を用いることにより、表面がアルミニウムに富んだNaY分子篩の合成はより好適となる。
【0056】
本開示によれば、ステップaにおいて、前記第1ケイ素源は、NaY分子篩を調製するための通常の様々な無機ケイ素源を使用することができる。例えば、水ガラス、コロイドシリカおよびシリカゾルからなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。本開示の一実施形態では、撹拌下で前記混合を行ってもよい。均一混合が実現可能であれば、撹拌の条件は特に限定されない。特に、前記第1ケイ素源が固体ケイ素源(例えばコロイドシリカ)である場合、前記混合は、例えば30分~180分の間、撹拌下で行われることが好ましい。これにより、固体ケイ素源と誘導剤とがより十分に混合され、本開示の目的を実現することができる。本開示の別の実施形態では、前記第1ケイ素源が液体ケイ素源(例えば水ガラス、シリカゾル等)である場合、ステップaにおける前記混合は、誘導剤と第1ケイ素源とを合流させて混合してもよく、高速撹拌下で混合してもよい。
【0057】
本開示によれば、ステップbにおいて、前記第2ケイ素源は、第1ケイ素源と同じであってもよく、異なってもよい。理想的な効果を得るために、通常、前記第2ケイ素源は、液状ケイ素源である。例えば、水ガラス、シリカアルミナゲルおよびシリカアルミナゾルからなる群より選ばれる少なくとも1つであってもよい。さらに、好ましくは、前記ケイ素アルミニウムゲルのSiO2/Al2O3のモル比は3~30であり、好ましくは6~16であり、前記シリカアルミナゾルのSiO2/Al2O3のモル比は3~30であり、好ましくは6~16である。前記第1混合物を第2ケイ素源、アルミニウム源および水と混合するとき、合流させて混合する法を使用してもよく、高速撹拌下で混合してもよい。さらに、第2ケイ素源、アルミニウム源および水は、前記第1混合物から比較的遠く離れた位置において合流させるように添加し、混合してもよい。
【0058】
本開示によれば、ステップbにおいて、前記アルミニウム源は、NaY分子篩を調製するための通常タイプのものであり、例えば、メタアルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムおよび擬似ベーマイトから選ばれる少なくとも1つであってもよい。前記の水は、脱イオン水または蒸留水であってもよい。
【0059】
本開示によれば、ステップbにおいて、前記第2混合物のモル組成が、Na2O:Al2O3:SiO2:H2O=(1~10):1:(5~50):(100~600)、好ましくは(2~6):1:(8~20):(200~400)となる条件であれば、前記第1混合物、第2ケイ素源、アルミニウム源および水の用量は特に限定されない。元素およびモル比に基づいて計算する場合、前記第2混合物中のアルミニウム元素に対する、誘導剤由来のアルミニウム元素の比率は3%~30%である。任意に、ステップbにおいて、撹拌下で前記混合を行う。均一混合が実現可能であれば、撹拌の条件は特に限定されない。
【0060】
本開示によれば、ステップcにおいて、前記水熱結晶化の条件は特に限定されない。本発明に必要なNaY分子篩を得ることができれば、本分野で知られている通常の水熱結晶化の条件を採用することができる。任意に、例えば、水熱結晶化の条件としては、温度が40℃~100℃であり、好ましくは90℃~100℃であり、時間が10時間~60時間であり、好ましくは15時間~48時間である。
【0061】
本開示の第3の態様は、表面がメソポアに富んだ改質Y分子篩を提供する。該改質Y分子篩のバルク相の骨格SiO2/Al2O3モル比は6~20であり、好ましくは8~15、より好ましくは10~13であり、BET法による全細孔体積は、0.35cm3/g以上であり、好ましくは0.38cm3/g以上、または0.40cm3/g以上であり、BET法による二次細孔の細孔体積は、0.06cm3/g以上であり、好ましくは0.08cm3/g以上、または、0.09cm3/g以上であり、単位胞パラメータは、a=b=c=2.44nm~2.46nmであり、前記改質Y分子篩中の酸化ナトリウムの含有量は前記改質Y分子篩の総重量に対して0.1重量%以下である。
【0062】
さらに、前記改質Y分子篩のBET法による全細孔体積は、0.38cm3/g~0.6cm3/gであってもよく、BET法による二次細孔の細孔体積は、0.06cm3/g~0.4cm3/gであってもよい。
【0063】
本開示によれば、前記BET法によりY分子篩の全細孔体積および二次細孔の細孔体積を測定するための方法、および、単位胞パラメータを測定するための方法は、当業者に周知の方法であり、本開示ではその説明を省略する。
【0064】
本開示の第4の態様は、第1の態様に記載の改質Y分子篩を調製する方法を提供する。該方法は、第2の態様に記載の方法におけるステップa、b、およびcを含み、さらに、
ステップcにおいて得られた前記NaY分子篩に対して、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理と、水熱処理と、Al-Si同形置換とをこの順に行い、改質Y分子篩を得るステップdを含む。
【0065】
本開示によれば、水熱結晶化後に通常の濾過、洗浄、乾燥ステップを経て得られたNaY分子篩に対して、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理と、水熱処理と、Al-Si同形置換とを行うことにより、本開示の改質NaY分子篩を得ることができる。
【0066】
本開示によれば、ステップdにおいて、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理は、当業者に周知の処理であり、分子篩中の酸化ナトリウムの含有量を減らし、例えば2.5重量%~5.0重量%にまで減らすことを目的としている。具体的には、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理は、アンモニウムイオン濃度0.1mol/L~1.0mol/Lのアンモニウム塩溶液を使用し、前記NaY分子篩を処理する工程を含んでもよい。該処理は、ステップcにおいて得られた前記NaY分子篩を前記アンモニウム塩溶液に浸漬する工程を含んでもよいが、これに限定されない。該処理の条件は、50℃~100℃の処理温度と、(8~15):1である液体と固体との重量比と、0.5時間~1.5時間の処理時間とを含んでもよい。該処理は撹拌下で行ってもよい。前記アンモニウム塩は、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、および、酢酸アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つであってもよい。アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理は、1回行ってもよく、あるいは、NaY分子篩中の酸化ナトリウムの含有量が目標値になるまで、同じまたは異なるアンモニウム塩を使用し複数回行ってもよい。
【0067】
本開示によれば、ステップdにおいて、前記水熱処理およびAl-Si同形置換は当業者に周知の方法でもある。具体的には、前記水熱処理は、例えば、アンモニウムと反応してナトリウム含有量が減少した後のNaY分子篩を、100%水蒸気、ゲージ圧0.1MPa~0.2MPa、温度500℃~650℃下で、1時間~3時間処理する工程を含んでもよい。前記Al-Si同形置換は、例えば、水熱処理後のNaY分子篩をスラリー化して液体と固体との重量比が(3~10):1のスラリーを得た後、NaY分子篩100gあたり、10g~60gの(NH4)2SiF6投入量で、前記スラリーに(NH4)2SiF6を添加し、80~120℃の温度下で、0.5時間~5時間撹拌し、生成物を回収する工程を含んでもよい。前記生成物を回収する工程は濾過および乾燥を含んでもよい。
【0068】
〔実施例〕
以下、実施例および比較例を挙げつつ本開示をさらに説明する。但し、本開示の範囲はこれらの実施例に限定されない。
【0069】
各実施例および比較例では、X線回折分析装置SIMADU XRD 6000型を用い、NaY分子篩の相対結晶化度を測定した。実験条件としては、CuKa放射、チューブ圧40kV、チューブ電流40mAであった。相対結晶化度は、SH/T 0340-92標準法(『化学工業標準集』,中国標準出版社,2000年出版)に基づいて測定した。
【0070】
分子篩表面のSiO2/Al2O3モル比はXPS法を用いて測定した。なお、該方法では、サンプルの表面および表面下2nm~6nmの領域内のアルミニウム含有量であるAl(S)を同時に測定した。試験装置は、AlKα(1486.6ev)を放射源とするX線光電子分光器(Perkin-Elmer PHI 5000 ESCA Systerm)を使用し、測定時の解析セルの圧力は10-7Pa未満とした。測定前に、サンプルをAr+イオンで15分間エッチングすることにより、サンプル処理過程にて生じた酸化物を除去しておいた。全ての元素の結合エネルギーはいずれも、汚染炭素(EC16=284.6eV)に基づいて校正した。具体的な測定方法は、『触媒作用学報』(11(2),1993年;127頁)に開示されている。
【0071】
分子篩のバルク相のSiO2/Al2O3モル比、および、分子篩全体のアルミニウム含有量であるAl(C)は、X線蛍光分光法(XRF)を用いて測定した。試験装置としては、理学電機工業株式会社製のX線蛍光分光解析装置3271E型を用いた。測定プロセスとして、ターゲットはロジウム、励起電圧は50kV、励起電流は50mAとした。シンチレーションカウンタおよび比例カウンタによって各元素のスペクトル強度を検出し、サンプルのSiO2含有量およびAl2O3含有量を定量分析した。
【0072】
分子篩の単位胞に関するパラメータは、SH/T 0339-92標準法(『化学工業標準集』,中国標準出版社,2000年出版)に基づいて測定した。
【0073】
分子篩の比表面積および細孔構造は、米マイクロメリティックス社製の物理吸着分析装置ASAP2420型および物理吸着分析装置ASAP2020型を用いて測定し、BET法に基づいて分子篩の全細孔体積および二次孔の細孔体積を算出した。具体的なプロセスとして、BET比表面積は、0.05~0.35の範囲内に限定された窒素分圧のうち、3つ~5つの圧力を選択して実際の窒素吸着量を測定した後、BET方程式によって比表面積を求めた。T-plotグラフに基づき、マイクロポアの体積および全細孔体積を算出した。二次孔の細孔体積はBJH公式によって算出した。
【0074】
分子篩の形態および結晶粒子の大きさは電子顕微鏡で測定した。走査型電子顕微鏡(SEM)装置は、加速電圧が10kVで、アクセサリとしてエネルギー分光器(EDS)を備えたHitachi S-4300型を用いた。測定前はサンプルの表面に金メッキを施した。フィールド放射透過型電子顕微鏡FEI Tecnai G2F 20を用いて触媒を観察した。なお、サンプルは、懸濁法で調製した触媒サンプルを無水エタノールに分散し、均一になるまで振蕩させた後、混合物を銅網上に滴下し、エタノールが完全に揮発した後に、観察に供した。
【0075】
分子篩中の酸化ナトリウムの含有量は、X線蛍光分光法(XRF)を用いて測定した。試験装置としては、理学電機工業株式会社製のX線蛍光分光解析装置3271E型を用いた。測定プロセスとして、ターゲットはロジウム、励起電圧は50kV、励起電流は50mAとした。シンチレーションカウンタおよび比例カウンタによって各元素のスペクトル強度を検出し、定量分析または半定量分析を行った。
【0076】
実施例および比較例において用いた一部の原料の性質は以下のとおりである。
【0077】
高アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液は、中石化股ふん有限公司の長嶺触媒支社から入手し、Al2O3含有量40.2g/L、Na2O含有量255g/L、比重1.324のものであった。水ガラスは、中石化股ふん有限公司の長嶺触媒支社から入手し、SiO2含有量260.6g/L、Na2O含有量81.6g/L、比重1.2655、係数(modulus)3.3のものであった。コロイドシリカは、国薬集団化学試薬有限公司から入手し、SiO2含有量≧90%のものであった。低アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液は、中石化股ふん有限公司の長嶺触媒支社から入手し、Al2O3含有量194g/L、Na2O含有量286.2g/L、比重1.413のものであった。硫酸アルミニウムは、中石化股ふん有限公司の長嶺触媒支社から入手し、Al2O3含有量88.9g/L、比重1.2829のものであった。アルカリ性シリカゾルは、国薬集団化学試薬有限公司から入手し、アンモニウム系、NaO2含有量0.2%~0.4%、pH値9~10、SiO2含有量40%のものであった。ケイ素アルミニウムゲルAは、国薬集団化学試薬有限公司から入手し、SiO2含有量90%、Al2O3含有量10%、SiO2/Al2O3モル比15.3のものであった。ケイ素アルミニウムゲルBは、国薬集団化学試薬有限公司から入手し、SiO2含有量85%、Al2O3含有量15%、SiO2/Al2O3モル比9.6のものであった。
【0078】
実施例1~8では、本開示の第2態様に係る方法におけるステップa~cに基づいて調製されるNaY分子篩について説明する。
【0079】
(実施例1)
642.44gの高アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液を866.51gの水ガラスに添加し、室温20℃下で48時間アクティブ撹拌してエージングした。続いて、60℃下で5時間静置してエージングした。最後に、撹拌下で195gの脱イオン水を添加し、モル比での組成が、15Na2O:Al2O3:15SiO2:320H2Oである誘導剤を得た。
【0080】
室温および高速撹拌(回転速度900r/min)下で上記誘導剤348.4gを12.63gの第1ケイ素源であるコロイドシリカと混合し、引き続き30分間撹拌して第1混合物を得た。続いて、同様に室温および高速撹拌下で、第1混合物と、508.14gの第2ケイ素源である水ガラスと、43.10gのアルミニウム源である低アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液と、286.5gのアルミニウム源である硫酸アルミニウムと、166.5gの水とを合流させながら原料混合用タンク内に投入し、モル比での組成が、2.7Na2O:Al2O3:8.6SiO2:259H2Oである第2混合物を得た。なお、第1ケイ素源と第2ケイ素源とで、SiO2に基づいて算出された重量比は1:8.3であった。また、誘導剤の添加量については、誘導剤中のアルミニウム元素のモル数が第2混合物中のアルミニウム元素のモル数のうちの15%を占めるように、添加量を算出した。均一に撹拌した後、これをステンレス反応釜内に投入し、100℃下で24時間スタティック結晶化させた。続いて、ろ過、洗浄、乾燥を行い、NaY分子篩製品A1を得た。該製品の相対結晶化度などのパラメータの測定結果は表1に示す。
【0081】
(実施例2)
642.44gの高アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液を866.51gの水ガラスと混合し、室温20℃下で48時間アクティブ撹拌してエージングした。続いて、60℃の温度下で5時間静置してエージングした。最後に、撹拌下で195gの脱イオン水を添加し、モル比での組成が、15Na2O:Al2O3:15SiO2:320H2Oである誘導剤を得た。
【0082】
室温および高速撹拌(回転速度900r/min)下で上記誘導剤311.6gを12.63gの第1ケイ素源であるコロイドシリカと混合し、引き続き60min撹拌して第1混合物を得た。続いて、同様に室温および高速撹拌(回転速度1200r/min)下で、第1混合物と、441.37gの第2ケイ素源である水ガラスと、40.00gのアルミニウム源である低アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液と、251.00gのアルミニウム源である硫酸アルミニウムと、200.63gの水とを合流させながら原料混合用タンク内に投入し、モル比での組成が、2.7Na2O:Al2O3:8.6SiO2:269H2Oである第2混合物を得た。なお、第1ケイ素源と第2ケイ素源とで、SiO2に基づいて算出された重量比は1:7.1であった。また、誘導剤の添加量については、誘導剤中のアルミニウム元素のモル数が第2混合物中のアルミニウム元素のモル数のうちの15%を占めるように、添加量を算出した。均一に撹拌した後、これをステンレス反応釜内に投入し、100℃下で24時間スタティック結晶化させた。続いて、ろ過、洗浄、乾燥を行い、NaY分子篩製品A2を得た。該製品の相対結晶化度などのパラメータの測定結果は表1に示す。
【0083】
(実施例3)
164.54gの高アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液を291.37gの水ガラスと混合し、30℃下で20時間アクティブ撹拌してエージングした。続いて、40℃下で15時間静置してエージングした。最後に、撹拌下で60gの脱イオン水を添加し、モル比での組成が、20Na2O:Al2O3:20SiO2:380H2Oである誘導剤を得た。
【0084】
室温および高速撹拌(回転速度900r/min)下で上記誘導剤515.91gと、592.62gの第1ケイ素源である水ガラスとを合流させて混合し、第1混合物を得た。続いて、高速撹拌(回転速度900r/min)下で、500gの第2ケイ素源である水ガラスと、166.31gのアルミニウム源である低アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液と、332.87gのアルミニウム源である硫酸アルミニウムと、479.4gの水とを、第1混合物から比較的遠く離れた位置において合流させながら第1混合物に添加し、モル比での組成が、4Na2O:Al2O3:9SiO2:220H2Oである第2混合物を得た。なお、第1ケイ素源と第2ケイ素源とで、SiO2に基づいて算出された重量比は1:0.83であった。また、誘導剤の添加量については、誘導剤中のアルミニウム元素のモル数が第2混合物中のアルミニウム元素のモル数のうちの10%を占めるように、添加量を算出した。均一に撹拌した後、これをステンレス反応釜内に投入し、95℃下で24時間スタティック結晶化させた。続いて、ろ過、洗浄、乾燥を行い、NaY分子篩製品A3を得た。該製品の相対結晶化度などのパラメータの測定結果は表1に示す。
【0085】
(実施例4)
251.76gの高アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液を349.64gの水ガラスと混合し、40℃下で15時間アクティブ撹拌してエージングした。続いて、15℃下で20時間静置してエージングした。最後に、撹拌下で78gの脱イオン水を添加し、モル比での組成が、16Na2O:Al2O3:16SiO2:290H2Oである誘導剤を得た。
【0086】
室温および高速撹拌下で上記誘導剤679.4gと、1000gの第1ケイ素源である水ガラスとを合流させて混合し、第1混合物を得た。続いて、第1混合物と、129.04gの第2ケイ素源である水ガラスと、55.90gのアルミニウム源である低アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液と、514.81gのアルミニウム源である硫酸アルミニウムと、489.2gの水とを順に原料混合用タンク内に投入し、モル比での組成が、3Na2O:Al2O3:10SiO2:250H2Oである第2混合物を得た。なお、第1ケイ素源と第2ケイ素源とで、SiO2に基づいて算出された重量比は1:0.13であった。また、誘導剤の添加量については、誘導剤中のアルミニウム元素のモル数が第2混合物中のアルミニウム元素のモル数のうちの15%を占めるように、添加量を算出した。均一に撹拌した後、これをステンレス反応釜内に投入し、95℃下で36時間スタティック結晶させた。続いて、ろ過、洗浄、乾燥を行い、NaY分子篩製品A4を得た。該製品の相対結晶化度などのパラメータの測定結果は表1に示す。
【0087】
(実施例5)
642.44gの高アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液を866.51gの水ガラスに添加し、室温20℃下で48時間アクティブ撹拌してエージングした。続いて、60℃下で5時間静置してエージングした。最後に、撹拌下で195gの脱イオン水を添加し、モル比での組成が、15Na2O:Al2O3:15SiO2:320H2Oである誘導剤を得た。
【0088】
室温および高速撹拌下で上記誘導剤348.4gと、31.57gの第1ケイ素源であるアルカリ性シリカゾルとを混合し、第1混合物を得た。続いて、高速撹拌(回転速度900r/min)下で、第2ケイ素源である508.14gの水ガラスと、43.10gのアルミニウム源である低アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液と、286.5gのアルミニウム源である硫酸アルミニウムと、147.55gの水とを、第1混合物から比較的遠く離れた位置において合流させながら第1混合物に添加し、モル比での組成が、2.7Na2O:Al2O3:8.6SiO2:259H2Oである第2混合物を得た。なお、第1ケイ素源と第2ケイ素源とで、SiO2に基づいて算出された重量比は1:10.9であった。また、誘導剤の添加量については、誘導剤中のアルミニウム元素のモル数が第2混合物中のアルミニウム元素のモル数のうちの15%を占めるように、添加量を算出した。均一に撹拌した後、これをステンレス反応釜内に投入し、100℃下で24時間スタティック結晶化させた。続いて、ろ過、洗浄、乾燥を行い、NaY分子篩製品A5を得た。該製品の相対結晶化度などのパラメータの測定結果は表1に示す。
【0089】
(実施例6)
642.44gの高アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液を866.51gの水ガラスと混合し、室温20℃下で48時間アクティブ撹拌してエージングした。続いて、60℃下で5時間静置してエージングした。最後に、撹拌下で195gの脱イオン水を添加し、モル比での組成が、15Na2O:Al2O3:15SiO2:320H2Oである誘導剤を得た。
【0090】
室温および高速撹拌(回転速度900r/min)下で上記誘導剤311.6gと、6.63gの第1ケイ素源であるコロイドシリカと、15gのアルカリ性シリカゾルとを混合し、回転速度900r/min下で170min撹拌して第1混合物を得た。続いて、同様に室温および高速撹拌(回転速度900r/min)下で、第1混合物と、441.37gの第2ケイ素源である水ガラスと、40gのアルミニウム源である低アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液と、251gのアルミニウム源である硫酸アルミニウムと、191.63gの水を合流させながら原料混合用タンク内に投入し、モル比での組成が、2.7Na2O:Al2O3:8.6SiO2:269H2Oである第2混合物を得た。なお、第1ケイ素源と第2ケイ素源とで、SiO2に基づいて算出された重量比は1:8.1であった。また、誘導剤の添加量については、誘導剤中のアルミニウム元素のモル数が第2混合物中のアルミニウム元素のモル数のうちの15%を占めるように、添加量を算出した。均一に撹拌した後、これをステンレス反応釜内に投入し、100℃下で24時間スタティック結晶化させた。続いて、ろ過、洗浄、乾燥を行い、NaY分子篩製品A6を得た。該製品の相対結晶化度などのパラメータの測定結果は表1に示す。
【0091】
(実施例7)
251.76gの高アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液を349.64gの水ガラスに添加し、室温20℃下で48時間アクティブ撹拌してエージングした。続いて、60℃下で5時間静置してエージングした。最後に、撹拌下で78gの脱イオン水を添加し、モル比での組成が、16Na2O:Al2O3:16SiO2:290H2Oである誘導剤を得た。
【0092】
室温および高速撹拌(回転速度900r/min)下で上記誘導剤679.4gと、1000gの第1ケイ素源である水ガラスとを合流させて混合し、第1混合物を得た。続いて、高速撹拌(回転速度1200r/min)下で、29.36gの第2ケイ素源であるシリカアルミナゲルAと、62.41gのアルミニウム源である低アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液と、533.44gのアルミニウム源である硫酸アルミニウムと、479.0gの水とを、第1混合物から比較的遠く離れた位置において合流させながら第1混合物に添加し、モル比での組成が、3Na2O:Al2O3:10SiO2:250H2Oである第2混合物を得た。なお、第1ケイ素源と第2ケイ素源とで、SiO2に基づいて算出された重量比は1:0.13であった。また、誘導剤の添加量については、誘導剤中のアルミニウム元素のモル数が第2混合物中のアルミニウム元素のモル数のうちの15%を占めるように、添加量を算出した。均一に撹拌した後、これをステンレス反応釜内に投入し、95℃下で24時間スタティック結晶化させた。続いて、ろ過、洗浄、乾燥を行い、NaY分子篩製品A7を得た。該製品の相対結晶化度などのパラメータの測定結果は表1に示す。
【0093】
(実施例8)
シリカアルミナゲルAの代わりに同量のシリカアルミナゲルBを用いた以外は、実施例7の方法と同様にNaY分子篩を調製した。調製したNaY分子篩製品A8の相対結晶化度などのパラメータの測定結果は表1に示す。
【0094】
比較例1~6では、NaY分子篩の作成プロセスにおけるケイ素源添加手法が本開示とは異なる方法について説明する。
【0095】
(比較例1)
室温および高速撹拌下で実施例1と同様の、誘導剤348.4gと、12.63gのコロイドシリカと、508.14gのケイ素源である水ガラスと、43.10gのアルミニウム源である低アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液と、286.5gのアルミニウム源である硫酸アルミニウムと、166.5gの水とを原料混合用タンク内に投入し、モル比での組成が、2.7Na2O:Al2O3:8.6SiO2:259H2Oである反応混合物を得た。均一に撹拌した後、これをステンレス反応釜内に投入し、100℃下で24時間スタティック結晶化させた。続いて、ろ過、洗浄、乾燥を行い、NaY分子篩製品B1を得た。該製品の相対結晶化度などのパラメータの測定結果は表1に示す。
【0096】
(比較例2)
室温および高速撹拌下で実施例1と同様の、誘導剤348.4gと、508.14gの水ガラスと、43.10gの低アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液と、286.5gの硫酸アルミニウムと、166.5gの水とを合流させながら原料混合用タンク内に投入した。均一に混合した後、同様に室温および高速撹拌下で、上記混合物をさらに12.63gのコロイドシリカと均一に混合し、モル比での組成が、2.7Na2O:Al2O3:8.6SiO2:259H2Oである反応混合物を得た。均一に撹拌した後、これをステンレス反応釜内に投入し、100℃下で24時間スタティック結晶化させた。続いて、ろ過、洗浄、乾燥を行い、NaY分子篩製品B2を得た。該製品の相対結晶化度などのパラメータの測定結果は表1に示す。
【0097】
(比較例3)
室温および高速撹拌下で、515.9gの誘導剤(実施例3と同様のもの)と、166.31gの低アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液と、332.87gの硫酸アルミニウムと、1092.62gの水ガラスと、479.4gの水とを、この順に原料混合用タンク内に投入し、モル比での組成が、4Na2O:Al2O3:9SiO2:220H2Oである反応混合物を得た。均一に撹拌した後、これをステンレス反応釜内に投入し、95℃下で24時間スタティック結晶化させた。続いて、ろ過、洗浄、乾燥を行い、NaY分子篩製品B3を得た。該製品の相対結晶化度などのパラメータの測定結果は表1に示す。
【0098】
(比較例4)
室温および高速撹拌下で、1129.04gの水ガラスと、55.90gの低アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液と、514.81gの硫酸アルミニウムと、679.4gの誘導剤(実施例4と同様のもの)と、489.2gの水とを、この順に原料混合用タンク内に投入し、モル比での組成が、3Na2O:Al2O3:10SiO2:250H2Oである反応混合物を得た。均一に撹拌した後、これをステンレス反応釜内に投入し、95℃下で24時間スタティック結晶化させた。続いて、ろ過、洗浄、乾燥を行い、NaY分子篩製品B4を得た。該製品の相対結晶化度などのパラメータの測定結果は表1に示す。
【0099】
(比較例5)
室温および高速撹拌下で、348.4gの誘導剤(実施例5と同様のもの)と、43.10gの低アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液と、286.5gの硫酸アルミニウムと、31.57gのアルカリ性シリカゾルと、508.14gの水ガラスと、147.55gの水とを同時に原料混合用タンク内に投入し、モル比での組成が、2.7Na2O:Al2O3:8.6SiO2:259H2Oである反応混合物を得た。均一に撹拌した後、これをステンレス反応釜内に投入し、95℃下で24時間スタティック結晶化させた。続いて、ろ過、洗浄、乾燥を行い、NaY分子篩製品B5を得た。該製品の相対結晶化度などのパラメータの測定結果は表1に示す。
【0100】
(比較例6)
室温および高速撹拌下で、311.6gの誘導剤(実施例6と同様のもの)と、441.37gの水ガラスと、40gの低アルカリ性メタアルミン酸ナトリウム溶液と、251gの硫酸アルミニウムと、6.63gのコロイドシリカと、15gのアルカリ性シリカゾルと、191.63gの水とを同時に原料混合用タンク内に投入し、モル比での組成が、2.7Na2O:Al2O3:8.6SiO2:269H2Oである反応混合物を得た。均一に撹拌した後、これをステンレス反応釜内に投入し、90℃下で48時間スタティック結晶化させた。続いて、ろ過、洗浄、乾燥を行い、NaY分子篩製品B6を得た。該製品の相対結晶化度などのパラメータの測定結果は表1に示す。
【0101】
【0102】
表1から分かるように、本開示の方法を用いて調製されたNaY分子篩は、表面がアルミニウムに富み、粒子の表面から中心までのアルミニウム分布において、通常の分子篩よりも大きな勾配が存在する。
【0103】
実施例9~16では、実施例1~8で調製されたNaY分子篩に対して、本開示の第4態様の方法におけるステップdに準じ、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理と、水熱処理と、Al-Si同形置換とを行って得た改質Y分子篩を説明する。
【0104】
(実施例9)
実施例1において得られたサンプルALに対して、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理と、水熱処理と、Al-Si同形置換とを行い、表面がメソポアに富んだ改質Y分子篩を得た。具体的なプロセスは以下の通りである。
【0105】
濃度0.5mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液を10L調製し、AL分子篩を1000g秤量して調製済みの硝酸アンモニウム水溶液10Lに投入し、回転撹拌速度300rpm、90℃の定温下で1時間撹拌した後、分子篩をろ過した。この操作を、分子篩中のNa
2O含有量が4.5重量%に達するまで繰り返した。得られた乾燥後のサンプルを、500℃、100%水蒸気、ゲージ圧0.1MPa下で1.5時間、水熱処理した。続いて、1Lの脱イオン水を秤量し、200gの上記サンプルを脱イオン水中に投入し、温度95℃になるまで速やかに昇温しながら、回転撹拌速度300rpmで撹拌した。この分子篩スラリー中に、計50gのヘキサフルオロケイ酸アンモニウムとなるようにヘキサフルオロケイ酸アンモニウム水溶液を速やかに添加した。続いて、定温、恒速下で2時間撹拌し、ろ過、乾燥を経て、製品番号NY-1の改質NaY分子篩を得た。性質は表1に示す。
図1~2に示す当該改質NaY分子篩のTEM写真からメソポア構造が分かる。
【0106】
(実施例10)
実施例2において得られたサンプルA2に対して、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理と、水熱処理と、Al-Si同形置換とを行い、表面がメソポアに富んだ改質Y分子篩を得た。具体的なプロセスは以下の通りである。
【0107】
濃度0.2mol/Lの硫酸アンモニウム水溶液を10L調製し、A2分子篩を1000g秤量して調製済みの硝酸アンモニウム水溶液10Lに投入し、回転撹拌速度300rpm、90℃の定温下で1時間撹拌した後、分子篩をろ過した。この操作を、分子篩中のNa2O含有量が5.0重量%に達するまで繰り返した。得られた乾燥後のサンプルを、570℃、100%水蒸気、ゲージ圧0.2MPa下で、2.0時間、水熱処理した。続いて、1Lの脱イオン水を秤量し、300gの上記サンプルを脱イオン水中に投入し、温度80℃になるまで速やかに昇温しながら、回転撹拌速度300rpmで撹拌した。この分子篩スラリー中に、計50gのヘキサフルオロケイ酸アンモニウムとなるようにヘキサフルオロケイ酸アンモニウム水溶液を速やかに添加した。続いて、定温、恒速下で2時間撹拌し、ろ過、乾燥を経て、製品番号NY-2の改質Y分子篩を得た。性質は表1に示す。
【0108】
(実施例11)
実施例3において得られたサンプルA3に対して、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理と、水熱処理と、Al-Si同形置換とを行い、表面がメソポアに富んだ改質Y分子篩を得た。具体的なプロセスは以下の通りである。
【0109】
濃度0.5mol/Lの塩化アンモニウム水溶液を10L調製し、A3分子篩を1000g秤量して調製済みの硝酸アンモニウム水溶液10Lに投入し、回転撹拌速度300rpm、90℃の定温下で1時間撹拌した後、過分子篩をろ過した。この操作を、分子篩中のNa2O含有量が2.5重量%~5重量%に達するまで繰り返した。得られた乾燥後のサンプルを、550℃、100%水蒸気、ゲージ圧0.2MPa下で2.5時間、水熱処理した。続いて、1Lの脱イオン水を秤量し、100gの上記サンプルを脱イオン水中に投入し、温度95℃になるまで速やかに昇温しながら、回転撹拌速度300rpmで撹拌した。この分子篩スラリー中に、計60gのヘキサフルオロケイ酸アンモニウムとなるようにヘキサフルオロケイ酸アンモニウム水溶液を速やかに添加した。続いて、定温、恒速下で2時間撹拌し、ろ過、乾燥を経て、製品番号NY-3の改質Y分子篩を得た。性質は表1に示す。
【0110】
(実施例12)
実施例4において得られたサンプルA4に対して、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理と、水熱処理と、Al-Si同形置換とを行い、表面がメソポアに富んだ改質Y分子篩を得た。具体的なプロセスは以下の通りである。
【0111】
濃度0.7mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液を10L調製した。A4分子篩を1000g秤量して調製済みの硝酸アンモニウム水溶液10Lに投入し、回転撹拌速度300rpm、90℃の定温下で1時間撹拌した後、分子篩をろ過した。この操作を、分子篩中のNa2O含有量が4.0重量%に達するまで繰り返した。得られた乾燥後のサンプルを、600℃、100%水蒸気、ゲージ圧0.1MPa下で、1.0時間、水熱処理した。続いて、1Lの脱イオン水を秤量し、200gの上記サンプルを脱イオン水中に投入し、温度95℃になるまで速やかに昇温しながら、回転撹拌速度300rpmにて撹拌した。この分子篩スラリー中に、計50gのヘキサフルオロケイ酸アンモニウムとなるようにヘキサフルオロケイ酸アンモニウム水溶液を速やかに添加した。続いて、定温、恒速下で2時間撹拌し、ろ過、乾燥を経て、製品番号NY-4の改質Y分子篩を得た。性質は表1に示す。
【0112】
(実施例13)
実施例5において得られたサンプルA5に対して、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理と、水熱処理と、Al-Si同形置換とを行い、表面がメソポアに富んだ改質Y分子篩を得た。具体的なプロセスは以下の通りである。
【0113】
濃度0.7mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液を10L調製した。A5を1000g秤量して調製済みの硝酸アンモニウム水溶液に投入し、回転撹拌速度300rpm、90℃の定温下で1時間撹拌した後、分子篩をろ過した。この操作を、分子篩中のNa2O含有量が3.0重量%に達するまで繰り返した。得られた乾燥後のサンプルを、600℃、100%水蒸気、ゲージ圧0.1MPa下で1.0時間、水熱処理した。続いて、1Lの脱イオン水を秤量し、200gの上記サンプルを脱イオン水中に投入し、温度95℃になるまで速やかに昇温しながら、回転撹拌速度300rpmにて撹拌した。この分子篩スラリー中に、計60gのヘキサフルオロケイ酸アンモニウムとなるようにヘキサフルオロケイ酸アンモニウム水溶液を添加した。続いて、定温、恒速下で2時間撹拌し、ろ過、乾燥を経て、製品番号NY-5の改質Y分子篩を得た。性質は表1に示す。
【0114】
(実施例14)
実施例6において得られたサンプルA6に対して、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理と、水熱処理と、Al-Si同形置換とを行い、表面がメソポアに富んだ改質Y分子篩を得た。具体的なプロセスは以下の通りである。
【0115】
濃度0.7mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液を10L調製した。A6を1000g秤量して調製済みの硝酸アンモニウム水溶液10Lに投入し、回転撹拌速度300rpm、90℃の定温下で1時間撹拌した後、分子篩をろ過した。この操作を、分子篩中のNa2O含有量が4.5重量%に達するまで繰り返した。得られた乾燥後のサンプルを、600℃、100%水蒸気、ゲージ圧0.1MPa下で1.0時間、水熱処理した。続いて、1Lの脱イオン水を秤量し、200gの上記サンプルを脱イオン水中に投入し、温度95℃になるまで速やかに昇温しながら、回転撹拌速度300rpmにて撹拌した。この分子篩スラリー中に、計60gのヘキサフルオロケイ酸アンモニウムとなるようにヘキサフルオロケイ酸アンモニウム水溶液を速やかに添加した。続いて、定温、恒速下で2時間撹拌し、ろ過、乾燥を経て、製品番号NY-6の改質Y分子篩を得た。性質は表1に示す。
【0116】
(実施例15~16)
実施例9の方法に準じ、実施例7~8において得られたサンプルに対して、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理と、水熱処理と、Al-Si同形置換とを行い、製品番号NY-7、NY-8である、表面がメソポアに富んだ改質Y分子篩を得た。性質は表1に示す。
【0117】
(比較例7)
実施例9の方法に準じ、比較例1において得られたサンプルに対して、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理と、水熱処理と、Al-Si同形置換とを行い、番号DB-1の比較製品を得た。性質は表1に示す。
図3のTEM写真に示すように、メソポア構造を有さないことが分かる。
【0118】
(比較例8)
実施例9の方法に準じ、比較例2において得られたサンプルに対して、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理と、水熱処理と、Al-Si同形置換とを行い、番号DB-2の比較製品を得た。性質は表1に示す。
【0119】
(比較例9)
実施例11の方法に準じ、比較例3において得られたサンプルに対して、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理と、水熱処理と、Al-Si同形置換とを行い、番号DB-3の比較製品を得た。性質は表1に示す。
【0120】
(比較例10)
実施例12の方法に準じ、比較例4において得られたサンプルに対して、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理と、水熱処理と、Al-Si同形置換とを行い、番号DB-4の比較製品を得た。性質は表1に示す。
【0121】
(比較例11)
実施例13の方法に準じ、比較例5において得られたサンプルに対して、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理と、水熱処理と、Al-Si同形置換とを行い、番号DB-5の比較製品を得た。性質は表1に示す。
【0122】
(比較例12)
実施例14の方法に準じ、比較例6において得られたサンプルに対して、アンモニウムと反応させてナトリウム含有量を減らす処理と、水熱処理と、Al-Si同形置換とを行い、番号DB-6の比較製品を得た。性質は表1に示す。
【0123】
【0124】
以上、図面を挙げつつ、本開示における好ましい実施形態を説明した。但し、本開示は上述した実施形態の具体的な細部に限定されず、本開示の技術思想の範囲において、本開示の技術的構成に対して複数種類の簡単な変形を施すことができる。これら簡単な変形のいずれも本開示の保護範囲に含まれる。
【0125】
なお、上述した具体的な実施形態において説明された各々の具体的な特徴は、矛盾が生じない範囲で任意の方式によって組み合わせることができる。但し、不必要な重複を避けるために、本開示では、実施可能な組み合わせの態様について繰り返して説明しない。
【0126】
また、本開示における様々な異なる実施形態同士を任意に組み合わせることもできる。本開示の思想から逸脱しない限り、当該組み合わせも、同様に本開示の内容と理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【
図1】実施例9において調製された改質Y分子篩のTEM写真である。
【
図2】実施例9において調製された改質Y分子篩のTEM写真である。
【
図3】比較例7において調製されたY分子篩のTEM写真である。