(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】半導体レーザ及び半導体レーザの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/028 20060101AFI20230727BHJP
H01S 5/22 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
H01S5/028
H01S5/22
(21)【出願番号】P 2020567210
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2019065369
(87)【国際公開番号】W WO2019238767
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】102018114133.5
(32)【優先日】2018-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514272140
【氏名又は名称】オスラム オーエルイーディー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】OSRAM OLED GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, 93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】アイヒラー クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】レル アルフレート
(72)【発明者】
【氏名】アリ ムハンマド
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-031894(JP,A)
【文献】特開2005-216990(JP,A)
【文献】特開2007-165344(JP,A)
【文献】特開2012-134293(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0215719(US,A1)
【文献】特開2008-205139(JP,A)
【文献】国際公開第2018/077954(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザ(1)であって、
- レーザ放射を発生するための活性領域(22)が配置されている半導体積層体(2)と、
- 前記半導体積層体(2)からの隆起として形成されたリッジ導波路(3)と、
- 前記半導体積層体(2)に電流を注入するために、前記リッジ導波路(3)上に直接設けられた電気的コンタクト層(5)と、
- 前記半導体積層体(2)の上面(20)での前記半導体レーザ(1)の外部電気接続用に前記コンタクト層(5)上に直接設けられた金属電気接続領域(6)と、
- 前記半導体積層体(2)のファセット(27)に直接到達し、前記リッジ導波路(3)上に配置された、金属の破断コーティング(7)と、
を備え、
前記破断コーティング(7)は、電気的に機能せず、前記リッジ導波路(3)の領域における前記半導体積層体(2)よりも低い音速を備え、
前記破断コーティング(7)は、前記ファセット(27)上で見て、前記リッジ導波路(3)の側面を完全にまたは優勢に覆
い、
前記リッジ導波路(3)の前記上面(20)が、破断コーティング(7)によって部分的にのみ覆われている、または、破断コーティング(7)から開放されている、 半導体レーザ(1)。
【請求項2】
- 前記ファセット(27)は、レーザ放射用共振器の共振器端面として形成されており、
- 前記破断コーティング(7)は、前記接続領域(6)とは異なる層構造を備え、
- 前記破断コーティング(7)は、それぞれ前記ファセット(27)の一部に沿ってのみ適用されており、
- 前記破断コーティング(7)は、整合的に配置された複数の部分層からなり、
- 前記破断コーティング(7)の厚さは、0.1μm以上3μm以下である、
請求項1に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項3】
前記破断コーティング(7)が、前記接続領域(6)から、および前記半導体積層体(2)から、電気的に絶縁されている、
請求項1または2に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項4】
前記リッジ導波路(3)に平行な方向における前記破断コーティング(7)と前記接続領域(6)との間の距離が、2μm以上50μm以下である、
請求項3に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項5】
前記破断コーティング(7)は、前記接続領域(6)に直接接続され、前記ファセット(27)に向かって前記接続領域(6)の延長として形成されている、
請求項1または2に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項6】
前記破断コーティング(7)は、前記ファセット(27)から見て、前記側面(37)上において前記上面(20)上とは異なる厚さを備える、
請求項
1に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項7】
前記破断コーティング(7)は、前記ファセット(27)上で見て前記リッジ導波路(3)に対して非対称である、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項8】
前記破断コーティング(7)は、平面図で見たときにそれぞれのファセット(27)に平行なストリップとして形成される、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項9】
前記破断コーティング(7)は、平面図で見たときにそれぞれのファセット(27)に直交して走る複数のストリップを備える、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項10】
電気的絶縁層(9)をさらに備え、
前記絶縁層(9)が、前記半導体積層体(2)と前記破断コーティング(7)との間に完全に延びる、
請求項1から
9のいずれか一項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項11】
前記絶縁層(9)は前記破断コーティング(7)と同様に構成されて、前記絶縁層(9)と前記破断コーティング(7)とが平面図で見たときに少なくとも前記リッジ導波路(3)の前記上面(20)において互いに整合する、
請求項
10に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項12】
前記破断コーティング(7)の上に直接設けられた電気的絶縁被覆層(8)をさらに備え、
前記被覆層(8)は、少なくとも上方から見たときに、前記破断コーティング(7)を完全に覆い、
前記被覆層(8)は、被覆金属層(81)で部分的にまたは完全に覆われる、
請求項1から
11のいずれか一項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項13】
ファセットコーティング(28)をさらに備え、
前記ファセットコーティング(28)は、前記破断コーティング(7)まで延びている。
請求項1から
12のいずれか一項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項14】
前記コンタクト層(5)は、前記ファセット(27)で直接、前記半導体積層体(2)に電流が注入されないように、前記ファセット(27)から離れた位置で終了する、
請求項1から
13のいずれか一項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項15】
前記半導体積層体(2)は、AlInGaNをベースとし、前記破断コーティング(7)は、Ti部分層と、前記Ti部分層の前記半導体積層体(2)とは反対の側のAu部分層と、を備え、
前記Au部分層は、前記Ti部分層の2倍以上20倍以下の厚さを有する、
請求項1から
14のいずれか一項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項16】
請求項1から
15のいずれか一項に記載の半導体レーザ(1)の製造方法であって、
- 前記半導体積層体(2)を成長基板(25)上に成長させ、
- 前記半導体積層体(2)からリッジ導波路(3)を生成し、
- パッシベーション層(4)と前記コンタクト層(5)とを適用し、
- 前記破断コーティング(7)がそれぞれ分離線(12)を越えて延びるように、前記接続領域(6)と前記破断コーティング(7)を適用し、
- 上面(20)にスクライブ溝(10)を作成し、前記リッジ導波路(3)および前記破断コーティング(7)が前記スクライブ溝(10)から離間して残り、
- 前記ファセット(27)が作成され、前記ファセット(27)で前記破断コーティング(7)が分離されるように、前記分離線(12)に沿って前記半導体積層体(2)をクリービングする、
半導体レーザ(1)の製造方法。
【請求項17】
クリービング中、破断波は前記破断コーティング(7)によって減衰され、
前記破断コーティング(7)におけるクリービング中の音速は、前記リッジ導波路(3)における前記半導体積層体(2)の音速の30%以上80%以下である、
請求項
16に記載の半導体レーザ(1)の製造方法。
【請求項18】
半導体レーザ(1)であって、
- レーザ放射を発生するための活性領域(22)が配置されている半導体積層体(2)と、
- 前記半導体積層体(2)からの隆起として形成されたリッジ導波路(3)と、
- 前記半導体積層体(2)に電流を注入するために、前記リッジ導波路(3)上に直接設けられた電気的コンタクト層(5)と、
- 前記半導体積層体(2)の上面(20)での前記半導体レーザ(1)の外部電気接続用に前記コンタクト層(5)上に直接設けられた金属電気接続領域(6)と、
- 前記半導体積層体(2)のファセット(27)に直接到達し、前記リッジ導波路(3)上に配置された、金属の破断コーティング(7)と、
を備え、
前記破断コーティング(7)は、電気的に機能せず、前記リッジ導波路(3)の領域における前記半導体積層体(2)よりも低い音速を備え、
前記破断コーティング(7)は、前記ファセット(27)上で見て、前記リッジ導波路(3)の側面を完全にまたは優勢に覆う、または、前記破断コーティング(7)は、前記リッジ導波路(3)の上面に限定され、
前記破断コーティング(7)は、平面図で見たときにそれぞれのファセット(27)に平行なストリップとして形成される、
半導体レーザ(1)。
【請求項19】
半導体レーザ(1)であって、
- レーザ放射を発生するための活性領域(22)が配置されている半導体積層体(2)と、
- 前記半導体積層体(2)からの隆起として形成されたリッジ導波路(3)と、
- 前記半導体積層体(2)に電流を注入するために、前記リッジ導波路(3)上に直接設けられた電気的コンタクト層(5)と、
- 前記半導体積層体(2)の上面(20)での前記半導体レーザ(1)の外部電気接続用に前記コンタクト層(5)上に直接設けられた金属電気接続領域(6)と、
- 前記半導体積層体(2)のファセット(27)に直接到達し、前記リッジ導波路(3)上に配置された、金属の破断コーティング(7)と、
を備え、
前記破断コーティング(7)は、電気的に機能せず、前記リッジ導波路(3)の領域における前記半導体積層体(2)よりも低い音速を備え、
前記破断コーティング(7)は、前記ファセット(27)上で見て、前記リッジ導波路(3)の側面を完全にまたは優勢に覆う、または、前記破断コーティング(7)は、前記リッジ導波路(3)の上面に限定され、
前記コンタクト層(5)は、前記ファセット(27)で直接、前記半導体積層体(2)に電流が注入されないように、前記ファセット(27)から離れた位置で終了する、
半導体レーザ(1)。
【請求項20】
半導体レーザ(1)であって、
- レーザ放射を発生するための活性領域(22)が配置されている半導体積層体(2)と、
- 前記半導体積層体(2)からの隆起として形成されたリッジ導波路(3)と、
- 前記半導体積層体(2)に電流を注入するために、前記リッジ導波路(3)上に直接設けられた電気的コンタクト層(5)と、
- 前記半導体積層体(2)の上面(20)での前記半導体レーザ(1)の外部電気接続用に前記コンタクト層(5)上に直接設けられた金属電気接続領域(6)と、
- 前記半導体積層体(2)のファセット(27)に直接到達し、前記リッジ導波路(3)上に配置された、金属の破断コーティング(7)と、
を備え、
前記破断コーティング(7)は、電気的に機能せず、前記リッジ導波路(3)の領域における前記半導体積層体(2)よりも低い音速を備え、
前記破断コーティング(7)は、前記ファセット(27)上で見て、前記リッジ導波路(3)の側面を完全にまたは優勢に覆う、または、前記破断コーティング(7)は、前記リッジ導波路(3)の上面に限定され、
前記破断コーティング(7)が、前記接続領域(6)から、および前記半導体積層体(2)から、電気的に絶縁されている、
半導体レーザ(1)。
【請求項21】
半導体レーザ(1)であって、
- レーザ放射を発生するための活性領域(22)が配置されている半導体積層体(2)と、
- 前記半導体積層体(2)からの隆起として形成されたリッジ導波路(3)と、
- 前記半導体積層体(2)に電流を注入するために、前記リッジ導波路(3)上に直接設けられた電気的コンタクト層(5)と、
- 前記半導体積層体(2)の上面(20)での前記半導体レーザ(1)の外部電気接続用に前記コンタクト層(5)上に直接設けられた金属電気接続領域(6)と、
- 前記半導体積層体(2)のファセット(27)に直接到達し、前記リッジ導波路(3)上に配置された、金属の破断コーティング(7)と、
を備え、
前記破断コーティング(7)は、電気的に機能せず、前記リッジ導波路(3)の領域における前記半導体積層体(2)よりも低い音速を備え、
前記破断コーティング(7)は、前記ファセット(27)上で見て、前記リッジ導波路(3)の側面を完全にまたは優勢に覆う、または、前記破断コーティング(7)は、前記リッジ導波路(3)の上面に限定され、
前記破断コーティング(7)は、平面図で見たときにそれぞれのファセット(27)に直交して走る複数のストリップを備える、
半導体レーザ(1)。
【請求項22】
半導体レーザ(1)であって、
- レーザ放射を発生するための活性領域(22)が配置されている半導体積層体(2)と、
- 前記半導体積層体(2)からの隆起として形成されたリッジ導波路(3)と、
- 前記半導体積層体(2)に電流を注入するために、前記リッジ導波路(3)上に直接設けられた電気的コンタクト層(5)と、
- 前記半導体積層体(2)の上面(20)での前記半導体レーザ(1)の外部電気接続用に前記コンタクト層(5)上に直接設けられた金属電気接続領域(6)と、
- 前記半導体積層体(2)のファセット(27)に直接到達し、前記リッジ導波路(3)上に配置された、金属の破断コーティング(7)と、
を備え、
前記破断コーティング(7)は、電気的に機能せず、前記リッジ導波路(3)の領域における前記半導体積層体(2)よりも低い音速を備え、
前記破断コーティング(7)は、前記ファセット(27)上で見て、前記リッジ導波路(3)の側面を完全にまたは優勢に覆う、または、前記破断コーティング(7)は、前記リッジ導波路(3)の上面に限定され、
前記破断コーティング(7)は、前記ファセット(27)上で見て前記リッジ導波路(3)に対して非対称である、
半導体レーザ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体レーザが特定される。さらに、半導体レーザの製造方法が特定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
解決しようとする課題は、効率よく生産できる半導体レーザを特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
この課題は、とりわけ、独立請求項の特徴を有する半導体レーザおよび製造方法によって解決される。好ましいさらなる展開は、従属請求項の主題である。
【0004】
本明細書に記載の半導体レーザは、ファセットによって限定されたリッジ導波路を備える。このリッジ導波路には、ファセットと面一になるように破断コーティングが施されている。この破断コーティングにより、ファセットの生成時に破断波が減衰されるため、ファセットが正確に破断し、製造方法の歩留まりが向上する。
【0005】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、半導体積層体を備える。半導体積層体では、活性領域が配置されている。活性領域では、動作中にレーザ放射が発生する。
【0006】
半導体積層体は、好ましくはIII-V族化合物半導体材料をベースにしたものである。この半導体材料は、例えば、AlnIn1-n-mGamNのような窒化物系化合物半導体材料、またはAlnIn1-n-mGamPのようなリン化物系化合物半導体材料、またはAlnIn1-n-mGamAsのような砒素系化合物半導体材料、またはAlnGamIn1-n-mAskP1-kのような砒素系化合物半導体材料であり、ここで、0≦n≦1、0≦m≦1、およびn+m≦1、および0≦k<1である。好ましくは、半導体積層体の少なくとも1層または全層に対して、0<n<0.8、0.4≦m<1およびn+m≦0.95、ならびに0<k≦0.5である。半導体積層体は、ドーパントだけでなく、追加の成分を含んでいてもよい。しかしながら、簡略化のために、半導体層配列の結晶格子の必須構成要素、すなわちAl、As、Ga、In、NまたはPのみが与えられ、これらが少量の他の物質によって部分的に置換および/または補強されていてもよい。好ましくは、半導体層配列は、AlInGaNに基づくものである。
【0007】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、1つ以上のリッジ導波路を備える。少なくとも1つのリッジ導波路は、半導体積層体からの隆起として形成される。光波は、リッジ導波路によって半導体積層体内に導かれる。特に、リッジ導波路は、半導体レーザの共振器の共振器長手方向軸を規定する。共振器は、ファセットによって限定されている。好ましくは、ファセットの1つは高反射ミラーとして設計され、ファセットの別の1つは出力カプラーミラーまたは出力面として設計され、特にファセット上の対応するコーティングと一緒に設計される。
【0008】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、パッシベーション層を備える。パッシベーション層は、半導体積層体を上面で部分的に覆う。また、リッジ導波路は、上面に配置されている。特に、パッシベーション層は、リッジ導波路の上面を部分的に、好ましくは、完全に開放する。
【0009】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、電気的コンタクト層を備える。電気的コンタクト層は、リッジ導波路上に直接配置され、半導体積層体に電流を注入するように構成される。電気的コンタクト層は、好ましくは、1つ以上の金属および/または透明導電性酸化物(略してTCO)で作られる。コンタクト層は、リッジ導波路の上面を部分的にまたは完全に覆う。
【0010】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、金属の電気接続領域を含む。接続領域は、コンタクト層上に直接配置される。接続領域は、例えば、ボンドパッドまたははんだ付け面である。半導体レーザは、接続領域を介して外部に電気的に接続されてもよく、任意に、例えばはんだによって機械的に取り付けられてもよい。接続領域は、好ましくは、リッジ導波路の上面の一部を覆う。さらに、接続領域は、好ましくは、リッジ導波路の両側に延びている。
【0011】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、金属の破断コーティングを備える。破断コーティングは、半導体積層体のファセットに直接、したがってリッジ導波路にまで延びている。破断コーティングは、リッジ導波路上に少なくともまたは独占的に配置される。
【0012】
少なくとも1つの実施形態によれば、破断コーティングは、電気的に機能しない。すなわち、破断コーティングは、半導体積層体および/または電気的コンタクト層への電流の展開がない、またはほぼなく、かつ、電流の注入がない、またはほぼないことを意味する。
【0013】
少なくとも1つの実施形態によれば、破断コーティングは、リッジ導波路の領域における半導体積層体よりも低い音速を備える。音速は、特に、ファセットを生成する際の破断波の速度を指す。
【0014】
少なくとも1つの実施形態では、半導体レーザは、レーザ放射を発生させるための活性領域が配置された半導体積層体を備える。リッジ導波路は、半導体積層体の隆起部として形成されている。電気的コンタクト層は、リッジ導波路上に直接配置され、半導体積層体に電流を注入するように設計されている。金属の電気接続領域がコンタクト層に直接配置され、半導体レーザの外部電気接続のために構成される。金属の破断コーティングは、半導体積層体のファセットに直接到達し、リッジ導波路に配置されている。破断コーティングは、電気的に機能せず、リッジ導波路の領域の半導体積層体よりも低い音速、特に破断波のために構成されている。
【0015】
本明細書で説明される半導体レーザでは、高い光出力で歩留まりの良いエッジ発光型半導体レーザを製造することが可能である。そのための重要なパラメータは、レーザファセットの品質である。レーザファセットは、レーザ共振器を囲む鏡であるため、共振器の品質は、可能であればファセットが原子的に滑らかであるかどうかに決定的に依存する。このような滑らかなファセットを生成するために、通常、半導体積層体のための半導体結晶の結晶方向に沿って破断される。達成可能な品質は、エピタキシャル積層体、半導体積層体の幾何学的形状、およびスクライビングおよびブレーク工程に依存する。発生する相互作用のために、より安定な組み合わせとより安定でない組み合わせがあり、これは、完成した半導体レーザの性能および製造工程の歩留まりに直接反映される。
【0016】
さらに、ファセットの安定性、特に高出力では、ファセットが張り出した金属で汚染されていないことが非常に重要である。ファセット上の金属残留物または痕跡は、局所的にレーザ放射の比較的高い吸収をもたらし、その結果、ホットスポットを発生させる。これは、破局的なファセット損傷(Catastrophic Optical Mirror DamageまたはCOMDとしても知られている)を引き起こす可能性がある。したがって、金属がファセットに張り出してしまうことを避けるために、製造工程において対策を講じなければならない。さらに、COMDに関する安定性は、ファセットで直接半導体積層体に電流が供給されないか、またはほぼ供給されないように、ファセットを電気的にポンピングしないことにより高められ得る。
【0017】
通常、pコンタクトメタライゼーションおよび/または続くボンドパッドは、後のレーザファセットの位置において製造工程で完全に除去され、この金属のない領域でファセットが後に破断する可能性がある。これは、金属がファセットをはみ出すことがなく、ファセットが電気的にポンピングされず、COMDの安定性を高めるという利点を有する。
【0018】
しかし、この金属の後退は、ファセット破断時の破断波の伝播に強い影響を与える。これは、ファセットの形態を乱す可能性があり、半導体レーザの性能に悪影響を及ぼす。さらに、これは、製造工程においてかなりの歩留まり損失を伴う。
【0019】
本明細書に記載の半導体レーザにおいて、前記破断コーティングの形態の破断波用の1以上の減衰要素が、前記リッジ導波路上および/または前記リッジ導波路のクリティカルポイントに適用されている。このようにして、ファセット破断時の外乱の発生を防止または低減することができる。好ましくは、減衰要素は、ボンドパッド、すなわち電気接続領域から電気的に分離されている。好ましくは、減衰要素は、下層の電気絶縁層によって半導体積層体から電気的に分離されている。
【0020】
さらに、減衰要素、すなわち破断コーティングは、好ましくは、延性というよりは脆性である層スタックから作られる。減衰要素は、その平均音伝搬速度が半導体積層体の材料よりも低く、したがって特にGaNよりも低い、材料または層スタックで作られている。
【0021】
さらに、好ましくは、減衰要素は、クリティカルポイントのみに適用され、すなわち、表面全体にわたってファセットに適用されない。このようにして、ファセット上の金属不純物を低減することができる。
【0022】
本明細書に記載される破断コーティングの形態の減衰要素により、ファセットを生成する際の破断波の局所速度は、リッジ導波路の端部のような、別法であれば破断の乱れをもたらしうる点であっても、滑らかな破断が得られるように誘導される。減衰要素が半導体およびボンドパッドから電気的に分離されていることにより、高いCOMD安定性がもたらされる。減衰要素の延性よりはむしろ脆性の設計により、破断コーティングの材料がファセット破断中に塑性変形および/または伸長することが防止され、したがってファセット領域に横たわることが防止される。これにより、COMDの安定性も向上する。
【0023】
ファセットに破断コーティングを比較的局所的に適用し、破断コーティングを介して破断波を導くことにより、製造工程における歩留まりを大幅に向上させることができる。
【0024】
少なくとも1つの実施形態によれば、ファセットは、レーザ放射のための共振器の共振器端面として形成される。環境に対する屈折率差のために、ファセットは、鏡面として機能してもよく、好ましくは、ブラッグミラーのような反射コーティングを提供してもよい。さらに、保護コーティングは、ファセット上の腐食を防止するために、または少なくともファセット上の腐食を著しく遅らせるために、表面全体または部分的にファセットに適用されてもよい。
【0025】
少なくとも1つの実施形態によれば、破断コーティングは、接続領域とは異なる層構造を備える。例えば、破断コーティングは、接続領域と比較して、材料および/または層の数が減少したものを備える。破断コーティングは、接続領域よりも薄いことが可能である。例えば、破断コーティングの厚さは、接続領域の厚さまたは平均厚さの70%または50%または40%以下、および/または、10%または20%以上である。
【0026】
少なくとも1つの実施形態によれば、破断コーティングは、それぞれ、ファセットの一部に沿ってのみ適用される。特に、破断コーティングは、リッジ導波路とリッジ導波路の側面への領域に限定され、ここで、リッジ導波路の側面への領域は、好ましくは、リッジ導波路自体の幅の50%または20%または10%以上の幅で構成される。このようにして、ファセットの金属汚染を回避または低減することができる。
【0027】
少なくとも1つの実施形態によれば、破断コーティングは、他方の上に1つずつ配置された複数の整合性のある部分層で構成されている。あるいは、これらの部分層は、上から見たときに異なる面を構成してもよい。好ましくは、全ての部分層は金属層である。
【0028】
少なくとも一つの実施形態によれば、破断コーティングの厚さは、50nm、または0.1μm、または0.2μm、または0.3μm以上である。代替的または追加的に、破損コーティングの厚さは、10μmまたは5μmまたは3μmまたは2μm以下である。特に、破断コーティングの厚さは、1μm±0.5μmである。
【0029】
少なくとも1つの実施形態によれば、破断コーティングは、接続領域および半導体積層体から電気的に絶縁されている。特に、破断コーティングと接続領域との間には、一体化接続が存在せず、かつ/または金属材料を介した接続が存在しない。
【0030】
少なくとも1つの実施形態によれば、破断コーティングと接続領域とは、リッジ導波路に平行な方向および/または半導体レーザの長手方向共振器軸に平行な方向に互いに間隔をあけて配置されている。破断コーティングと接続領域との間のこの方向に沿った距離は、好ましくは、1μmまたは2μmまたは5μm以上、並びに/或いは100μmまたは50μmまたは30μmまたは15μm以下である。
【0031】
少なくとも1つの実施形態によれば、破断コーティングは、接続領域に直接接続されている。破断コーティングと接続領域は、一体に形成されていてもよく、かつ/または破断コーティングと接続領域との間に直接金属接続が存在する。例えば、破断コーティングは、接続領域の1つ以上の部分層によって形成される。しかし、好ましくは、破断コーティングは、接続領域の全ての部分層を含まない。
【0032】
少なくとも1つの実施形態によれば、破断コーティングは、ファセットに向かう接続領域の延長として形成される。例えば、破断コーティングは、ファセットに向かう接続領域の1つ以上の細長い延長部および/または狭窄部として形成される。破断コーティングは、接続領域とは異なる積層体、特に、より少ない層および/またはより薄い層の積層体を備えてもよい。
【0033】
少なくとも1つの実施形態によれば、破断コーティングは、ファセット上で見てリッジ導波路の上面に限定される。リッジ導波路の上面は、破断コーティングによって部分的にまたは完全に覆われている。好ましくは、破断コーティングによるリッジ導波路の上面の被覆の程度は、10%または30%以上、並びに/或いは80%または70%以下である。これは、特に、ファセットで直接かつファセット上で見た場合に当てはまる。
【0034】
少なくとも1つの実施形態によれば、破断コーティングは、ファセット上で見てU字形にリッジ導波路を取り囲む。これは、リッジ導波路の上面およびリッジ導波路の側面が、好ましくは完全にまたは少なくとも優勢に破断コーティングによって覆われていることを意味する。優勢とは、ここでは特に60%または70%または80%以上を意味する。
【0035】
少なくとも1つの実施形態によれば、破断コーティングは、リッジ導波路の側面を完全にまたは主にファセット上で見て覆う。リッジ導波路の上面は、破断コーティングによって部分的にしか覆われておらず、例えば、最大で40%または20%まで、または破断コーティングがないことさえあり得る。特に、破断コーティングは、側面から上面にのみ延びているので、平面図で見たときに、リッジ導波路の上面の中央領域が破断コーティングから開放されていてもよい。
【0036】
少なくとも1つの実施形態によれば、破断コーティングは、ファセット上で見て上面とは異なる厚さの側面で構成されている。例えば、破断コーティングは、側面よりも上面で薄い。逆に、破断コーティングはまた、側面よりも上面で厚くてもよい。
【0037】
少なくとも1つの実施形態によれば、破断コーティングは、ファセット上で見てリッジ導波路に対して非対称である。特に、破断コーティングは、ファセットを製造する際に破断方向に沿ってリッジ導波路に先行するリッジ導波路の一方の側にのみ配置される。
【0038】
少なくとも1つの実施形態によれば、破断コーティングは、平面図で見たときにストリップとして形成される。ストリップは、それぞれのファセットに平行に配向されてもよく、好ましくは、その全長に沿って、それぞれのファセットに直接配置されている。例えば、平面図で見ると、ストリップは、長方形またはほぼ長方形の形状を構成する。
【0039】
少なくとも1つの実施形態によれば、破断コーティングは、平面図で見ると、1つ以上のストリップを備える。少なくとも1つのストリップは、それぞれのファセットに対して直交するように配向される。これは、特に、最大30°または最大15°または最大5°の公差で適用される。
【0040】
ストリップという用語は、特に、対応する構造物の長手方向の延長が、横方向の延長よりも少なくとも2または3または5倍大きいことを意味する。
【0041】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは絶縁層を備える。絶縁層は、半導体レーザが意図されたとおりに使用されたときに電気的に絶縁される。例えば、絶縁層は、酸化シリコンのような酸化物、または窒化シリコンのような窒化物で形成される。
【0042】
少なくとも1つの実施形態によれば、絶縁層は、半導体積層体と破断コーティングとの間全体に延びている。破断コーティングは、絶縁層によって半導体積層体から電気的に絶縁され得る。
【0043】
少なくとも1つの実施形態によれば、絶縁層は、破断コーティングと同様に構成されている。すなわち、絶縁層と破断コーティングとは、少なくともリッジ導波路の上面または半導体積層体の上面全体において、平面視で互いに整合していてもよい。特に、整合性は、5μmまたは2μmまたは1μm以下の公差で達成される。
【0044】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、少なくとも1つの電気的に絶縁性の被覆層からなる。1つまたは複数の被覆層は、破断コーティング上に直接、特に半導体積層体とは反対の側に配置されている。被覆層は、平面視において、破断コーティングを優勢にまたは完全に覆う。任意に、被覆層はまた、破断コーティングの露出した側面、特に破断コーティングのファセットとは反対の側を覆ってもよい。
【0045】
少なくとも1つの実施形態によれば、被覆層は、金属層または金属層のスタックで形成された被覆金属層によって部分的にまたは完全に覆われている。被覆金属層は、特に、外部実装面にはんだ付けされるように構成されている。被覆金属層は、半導体レーザと外部キャリアとの熱的接続を改善することを可能にする。
【0046】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、1つ以上のファセットコーティングを備える。少なくとも1つのファセットコーティングは、ファセットから破断コーティングまで延びている。ファセットコーティングが破断コーティングを部分的にだけでなく完全に覆うことが可能である。したがって、破断コーティングは、ファセットコーティングおよび半導体積層体によって、および任意選択で、絶縁層および/または被覆層および/またはパッシベーション層によって完全に封入され得る。
【0047】
少なくとも1つの実施形態によれば、コンタクト層は、ファセットから離れた位置で終了するか、または半導体積層体とコンタクト層との間にファセット上に電気的に絶縁された層が存在する。これにより、ファセットで直接半導体積層体に電流が注入されないようにすることができる。
【0048】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体積層体上の破断コーティングは、金属の接着促進層および/または金属の補助層からなる。接着促進層および/または補助層の例としては、Ti、Cr、Ni、Ni-Pt、Ti-Pt、Ti-Pdが挙げられる。
【0049】
少なくとも1つの実施形態によれば、破断コーティングは、次の材料のうちの少なくとも2つ、好ましくは部分層として、Au、Cr、Ni、Pd、Pd、Tiを備える。
【0050】
少なくとも1つの実施形態によれば、破断コーティングは、チタン部分層と金部分層とを備えるか、またはこれら2つの部分層からなる。好ましくは、金部分層は、チタン部分層の半導体積層体とは反対の側に配置される。金層は、チタン層の厚さの2倍または3倍、以上および/または200倍または20倍または8倍以下の厚さを備えてもよい。特に、チタン部分層は、半導体積層体に向けて金部分層の接着促進層として形成され、破断コーティングの音速の調整は、本質的に金部分層を介して行われる。
【0051】
また、破断コーティングには、Ti-Auの層対の他に、それぞれ半導体積層体とは反対方向の、次の層対、三重層、四重層Cr-Au、Ti-Pt-Au、Ti-Pd-Au、Cr-Pt-Au、Cr-Pd-Au、Ni-Au、Ni-Pd-Au、Ni-Pt-Au、Ni-Pd-Pt-Au、Ti-Pd-Pt-Auが特に好適である。
【0052】
さらに、製造方法が規定されている。好ましくは、製造方法は、上述した1つ以上の実施形態に関連して記載された半導体レーザを製造するために使用される。したがって、半導体レーザの特徴は、製造方法についても開示されており、またその逆もまた開示されている。
【0053】
少なくとも1つの実施形態では、製造方法は、好ましくは与えられた順序で、
- GaN基板などの成長基板上に半導体積層体を成長させ、
- 半導体積層体から、例えばエッチングによってリッジ導波路を生成し、
- パッシベーション層とコンタクト層を適用し、
- 破断コーティングが続く分離線上に延びるように、接続領域と破断コーティングとを適用し、
-上面にスクライブ溝を作成し、それによってリッジ導波路および破断コーティングは、好ましくはそれぞれスクライブ溝から離間して残り、
-ファセットが形成され、ファセットで破断コーティングが分離されるように、分離線に沿って半導体層のシーケンスをクリービングする、
ステップを備える。
【0054】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体積層体および成長基板のクリービング中の破断波は、破断コーティングによって減衰される。これは、特に、クリービング中の破断コーティングにおける破断波の音速および/または速度が、リッジ導波路における半導体積層体の破断波の音速および/または速度の少なくとも20%または30%または50%以上および/または90%または80%または70%以下であることによって達成される。
【0055】
以下では、本明細書に記載された半導体レーザおよび本明細書に記載された製造方法を、例示的な実施形態により図面を参照してより詳細に説明する。同一の参照符号は、個々の図において同一の要素を示す。縮尺参照は示されていないが、個々の要素は、よりよく理解するために大きい寸法である場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1A】
図1Aは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態の概略平面図である。
【
図1B】
図1Bは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態をファセット上からみた図である。
【
図2A】
図2Aは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態の概略平面図である。
【
図2B】
図2Bは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態をファセット上からみた図である。
【
図3A】
図3Aは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態の概略平面図である。
【
図3B】
図3Bは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態をファセット上からみた図である。
【
図4A】
図4Aは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態の概略平面図である。
【
図4B】
図4Bは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態をファセット上からみた図である。
【
図5A】
図5Aは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態の概略平面図である。
【
図5B】
図5Bは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態をファセット上からみた図である。
【
図6A】
図6Aは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態の概略平面図である。
【
図6B】
図6Bは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態のファセット上の概略図である。
【
図6C】
図6Cは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態のファセット上の概略図である。
【
図7A】
図7Aは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態の概略平面図である。
【
図7B】
図7Bは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態のファセット上の概略図である。
【
図8】
図8は、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態の概略平面図である。
【
図9A】
図9Aは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態の概略平面図である。
【
図9B】
図9Bは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態のファセット上の概略図である。
【
図10A】
図10Aは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態の概略平面図である。
【
図10B】
図10Bは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態のファセット上の概略図である。
【
図11A】
図11Aは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態の概略平面図である。
【
図11B】
図11Bは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態のファセット上の概略図である。
【
図12A】
図12Aは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態の概略平面図である。
【
図12B】
図12Bは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態のファセット上の概略図である。
【
図13A】
図13Aは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態のファセット上の概略図である。
【
図13B】
図13Bは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態のリッジ導波路を通る概略断面図である。
【
図13C】
図13Cは、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態のリッジ導波路を通る概略断面図である。
【
図14】
図14は、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態のリッジ導波路を通る概略断面図である。
【
図15】
図15は、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態のファセットを生成する前のリッジ導波路を通る概略断面図である。
【
図16A】
図16Aは、本明細書に記載された半導体レーザの製造方法の方法ステップの概略断面図である。
【
図16B】
図16Bは、本明細書に記載された半導体レーザの製造方法の方法ステップの概略断面図である。
【
図16C】
図16Cは、本明細書に記載された半導体レーザの製造方法の方法ステップの概略断面図である。
【
図16D】
図16Dは、本明細書に記載された半導体レーザの製造方法の方法ステップの概略平面図である。
【
図16E】
図16Eは、本明細書に記載された半導体レーザの製造方法の方法ステップの概略断面図である。
【
図17】
図17は、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態のファセット上の概略図である。
【
図18】
図18は、本明細書で説明される半導体レーザの例示的な実施形態のファセット上の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1Aは、半導体レーザ1の例示的な実施形態の平面図であり、
図1Bは、半導体レーザ1の例示的な実施形態のファセット上からみた図である。半導体レーザ1は、基板25上に配置された半導体積層体2を備える。基板25は、例えば成長基板である。半導体積層体2は、活性領域22を備える。動作時には、エレクトロルミネッセンスにより、活性領域22にレーザ光が発生する。半導体積層体2は、材料系AlInGaNをベースとする。
【0058】
半導体積層体2に、リッジ導波路3が形成されている。リッジ導波路3は、半導体積層体2の残りの領域の上に隆起を形成する。リッジ導波路3は、半導体レーザ1の共振器端面を形成する2つのファセット27の間で発生したレーザ放射を導く。半導体積層体2は、リッジ導波路3を除いた上面20でパッシベーション層4によって覆われている。リッジ導波路3の上面には、好ましくは、例えば金属またはTCOで作られた電気的コンタクト層5が配置される。
【0059】
半導体レーザ1の電気的外部接触のために、例えば、層スタックTi/Pt/Au/Ti/Pt/Auのような1つ以上の金属層によって形成された電気接続領域6が存在する。接続領域6は、例えば、ボンディングワイヤコンタクトまたははんだ付けのために形成される。好ましくは、接続領域6は、上面20を広範囲に覆っており、リッジ導波路3に隣接して両側に延びている。接続領域6は、ファセット27から離れた位置で終了する。
【0060】
さらに、半導体レーザ1は、破断コーティング7を構成している。破断コーティング7は、両ファセット27上に配置され、ファセット27に平行に、かつファセット27に直接沿ってストリップ状に延びている。破断コーティング7は、ファセット27がファセット27上から見て破断コーティング7から優勢になるように、リッジ導波路3に限定される。
【0061】
ファセット27から見て、破断コーティング7はU字形をしている。したがって、破断コーティング7は、リッジ導波路3の上面20およびリッジ導波路3の側面37をそれぞれ完全に覆う。側面37では、破断コーティング7と半導体積層体2との間にパッシベーション層4が配置される。
【0062】
破断コーティング7は、好ましくは破線で示す複数の部分層から構成されている。半導体積層体2には、好ましくは密着促進用のTi層が配置されている。Ti層は、Au層で覆われている。Au層は、好ましくはTi層よりも厚い。例えば、破断コーティング7は、約1μmの厚さを備え、Ti層が約200nmの一部を構成し、残りの部分がAu層によって形成されている。あるいは、厚さ5nmのTi層と厚さ100nmのAu層、あるいは厚さ50nmのTi層と厚さ1000nmのAu層が用いられる。
【0063】
例えば、リッジ導波路3の幅は、1μm~70μmである。ファセット27間のリッジ導波路3の長さは、好ましくは、0.3mm以上および/または3mm以下である。半導体積層体2の他の領域より上のリッジ導波路3の高さは、例えば、0.3μm以上および/または3μm以下である。ファセット27に沿った破断コーティング7のストライプは、好ましくは可能な限り狭く、例えば、2μmまたは5μmまたは10μm以上並びに/或いは100μmまたは50μmまたは20μm以下の幅を備える。破断コーティング7と接続領域6との間の距離は、例えば、5μm以上および/または50μm以下である。これらの値は、他のすべての例示的な実施形態に、個別にまたは一緒に適宜適用することができる。
【0064】
破断コーティング7は、ファセット27のクリービング中の破断波の伝播を減衰させるので、高いクリービング品質とファセット品質を確保することができる。同時に、破断コーティング7は、ファセット27の特定の領域にのみ適用されるので、ファセット27のクリービング中に金属がファセット27にキャリーオーバーすることが防止され、COMDの発生確率を低減することができる。このように、破断コーティング7は、電気的な機能を果たすことはなく、専ら機械的な目的を果たす。特に、破断コーティング7は、ファセット27をファセット27上で直接クリービングする際の破断伝播速度を調整する。
【0065】
図1から離れて、
図2の例示的な実施形態では、破断コーティング7は、リッジ導波路3の側面37に独占的に配置されている。リッジ導波路3の上面20は、破断コーティング7から開放されている。
【0066】
図2から離れて、
図3による破断コーティング7は、電気接続領域6の延長として形成されている。ただし、破断コーティング7は、半導体積層体2と電気的に接触しておらず、パッシベーション層4によって半導体積層体2から電気的に分離されている。
【0067】
さらに、
図2は、
図1からのコンタクト層5がファセット27に直接存在しないことを示す。したがって、ファセット27に直接電流が供給されることを防止することができる。ファセット27にコンタクト層5が直接存在しないリッジ導波路3の対応する構成は、他のすべての例示的な実施形態においても可能である。
【0068】
図3から離れて、
図4の破断コーティング7は、側面37から部分的にリッジ導波路3の上面20に向かって延びている。この場合、破断コーティング7は、ファセット27上で見たときに、半導体積層体2とは反対の側に段差をつけることができる。
【0069】
パッシベーション層4は、
図4とは対照的に、リッジ導波路3に等しく延びることができる。コンタクト層5は、代替的にまたは追加的に破断コーティング7の下で除去することができる。
【0070】
図5は、破断コーティング7が、リッジ導波路3の一方の側面37にのみ配置されていることを示す。例えば、破断コーティング7の側面からファセット27のクリービングが行われる。
【0071】
図5に示すような破断コーティング7のこの非対称な適用は、破断コーティング7の他のすべての例示的な実施形態にも適用することができる。
【0072】
図6は、破断コーティング7がリッジ導波路3の上面20上で側面37上とは異なる厚さを有することを示す。
【0073】
図6Bによれば、破断コーティング7は、上面20上で側面37上よりも厚い。
【0074】
図6Cでは、破断コーティング7は、上面20上の中央領域において、縁部よりも薄くなっている。直接、リッジ導波路3の長手方向の縁部および側面37において、破断コーティング7は、このように厚く、例えば、上面20上の中央領域よりも少なくとも2倍または3倍の厚さである。好ましくは、上面20上の中央領域は、リッジ導波路3の上面20全体のうち、40%または60%または80%以上並びに/或いは90%または70%以下を占めている。
【0075】
図7は、破断コーティング7がリッジ導波路3の上面20を部分的にしか覆っていないことを示しており、ここで破断コーティング7は上面20に限定されている。破断コーティング7は、上面20中央に配置することができる。あるいは、
図5に類似した、偏心した配置も可能である。破断コーティング7は、好ましくは、リッジ導波路3の上面20を40%または60%または70%以上並びに/或いは90%または80%以下覆う。
【0076】
図8を参照すると、破断コーティング7は、平面図で見ると、複数のストリップに分割されている。ストリップは、接続領域6から電気的に分離されており、ファセット27に対して直交してまたはほぼ直交して延びる。3つのストリップは、例えば、上から見たときに、それぞれが同じ幅および長さであってもよく、または
図8とは対照的に、異なる幅および/または異なる長さを備えてもよい。
【0077】
図9は、
図8の3本のストライプの代わりに、破断コーティング7の合計4本のストライプがあることを示している。ストライプは、リッジ導波路3上に対称に配置されていてもよい。また、4本以上のストライプがあってもよい。また、外側のストライプは、側面37を覆っていてもよいし、
図8及び
図9とは異なり、側面37が破断コーティング7から開放されていてもよい。
【0078】
図10の例示的な実施形態では、追加の電気的絶縁層9は、ファセット27にのみ存在する。絶縁層9は、ファセット27に完全に沿って比較的狭いストリップとして延びることができる。これは、パッシベーション層4と絶縁層9とが、ファセット27において互いの上部に直接横たわることを意味する。絶縁層9は、破断コーティング7を半導体積層体2から、特にコンタクト層5からも電気的に分離する。
【0079】
図10から離れて、コンタクト層5は、任意選択で、
図2のように、ファセット27に存在しない。
【0080】
図11は、破断コーティング7のストリップが接続領域6から延びていてもよいことを示している。この設計においても、破断コーティング7と接続領域6は、好ましくは、互いに異なって形成され、例えば、異なる金属層スタックを備える。
【0081】
図11に示すような破断コーティング7のストリップのような幾何学的形状もまた、特に
図8から
図10の例示的な実施形態において存在し得る。そのような絶縁層9が存在する場合、破断コーティング7は、
図1、
図6または
図7の例示的な実施形態の幾何学的形状において、接続領域6の延長として形成されてもよい。
【0082】
図12に示すように、絶縁層9は、破断コーティング7と同様に構成されているため、破断コーティング7と絶縁層9とが整合している。
【0083】
【0084】
【0085】
各破断コーティング7の上には、電気的に絶縁性を有する被覆層8が適用される。
【0086】
被覆層8は、例えば、電気的に絶縁性のある酸化物または窒化物で形成される。被覆層8の厚さは、好ましくは、最大200nmまたは100nmである。
図10~
図12の絶縁層9についても同じことが当てはまる。
【0087】
図13Bでは、被覆層8は、破断コーティング7の半導体積層体2とは反対の側に限定されている。
【0088】
これに対して、
図13Cの被覆層8もまた、破断コーティング7のファセット27とは反対の側に延びている。このように、破断コーティング7が被覆層8によって封止されているため、例えば半導体レーザ1を未延伸の外部キャリアにはんだ付けする際に、破断コーティング7の上に電気接続が生じることを防止することができる。
【0089】
図14のビューは、
図13Bおよび
図13Cのビューに対応する。また、ファセットコーティング28は、例えば、ミラー層や反射防止層として配置されている。ファセットコーティング28により、レーザ放射に対するファセット27の反射率を調整することができる。
【0090】
ファセットコーティング28は、ファセット27から被覆層8の、半導体積層体2とは反対側の上面に延びている。このように、断面で見た破断コーティング7は、ファセットコーティング28および被覆層8とともに半導体積層体によって完全に封止され、周囲から電気的に分離されていてもよい。
【0091】
主に破断コーティング7と任意選択で絶縁層9および被覆層8とによって形成されるファセット27における層スタックにより、ファセット27を生成させる際の破断波を調整することができる。例えば、金の音速は約1740m/s、チタンの音速は約4140m/sである。適切な混合比により、中間的な有効音速を設定することができる。一方、二酸化シリコンは、約5900m/sの音速を備える。
【0092】
比較すると、GaN系材料の音速は、特定の材料組成およびリッジ導波路3の形状やそれぞれの結晶方位にもよるが、約3.5km/s~5.5km/sの範囲にある。例えば、ファセットにおける二酸化シリコン層だけでは、二酸化シリコンの音速がこの目的には高すぎるため、破断波の調整はできない。
【0093】
図15の例示的な実施形態では、被覆金属層81が被覆層8に適用されていることが図示される。被覆金属層81によって、半導体レーザ1がリッジ導波路3を有する側を介して実装される場合に、破断コーティング7を介して半導体積層体2の機械的、特に熱的な接続を達成することが可能である。
図15によれば、破断工程のための分離ライン12は、好ましくは、まだ分離の影響を受けていない破断コーティング7を、関連する部品8、81とともに通って中央に走る。
【0094】
特に、
図15のこの構成では、リッジ導波路3を有する側のいわゆるpダウン設置が可能である。
【0095】
図16は、半導体レーザ1の製造方法の一例を示す図である。
図16Aによれば、成長基板25上に活性領域22が形成された状態で半導体積層体2が成長する。
【0096】
図16Bは、リッジ導波路3が半導体積層体2から構成されることを示している。
【0097】
図16Cは、さらなる構成要素4、5、6、7が適用されていることを示している。図示を簡略化するために、さらなる構成要素4、5、6、7は、
図16の他の部分では描かれていないか、または部分的にしか描かれていない。
【0098】
図16Dの平面図では、スクライブ溝10が分離線12に沿って形成されていることが例示されている。スクライブ溝10の1つは、好ましくは、半導体積層体2と成長基板25との外縁に位置している。任意選択で、さらなるスクライブ溝10が、リッジ導波路3の少なくとも一部の間に位置している。好ましくは、リッジ導波路3およびさらに破断コーティング7は、スクライブ溝10から間隔をあけて配置されている。スクライブ溝10は、不図示のスクライブ工具を用いて作成される。
【0099】
図16の断面図では、端部のスクライブ溝10から始まる分離線12に沿って破断することにより、ファセット27が作成されることが示されている。成長基板25のリッジ導波路3と反対の側には、クリービング工具11が使用される。このようにして、破断は破断コーティング7を介して行われる。
【0100】
任意選択で、個々の半導体レーザ1への分離、または複数のリッジ導波路3を構成する半導体レーザバー1への分離は、切断線13に沿って行われる。切断線13は、リッジ導波路3と平行に走る。
【0101】
図17の例示的な実施形態では、破断コーティング7は、リッジ導波路3の上面20からその側面37にわたってリッジ導波路3に隣接する半導体積層体2の上面20まで延びている。リッジ導波路3に隣接する半導体積層体2の上面20のうち、破断コーティング7によって覆われている領域は、好ましくは比較的狭い領域である。例えば、この領域は、リッジ導波路3の両側の幅の150%または75%または40%の幅を備える。
【0102】
図18の例示的な実施形態は、
図17と
図5の例示的な組み合わせに対応する。リッジ導波路3の上面20は、好ましくは、破断コーティング7によって最大50%または30%まで覆われている。
【0103】
別段の記載がない限り、図示された構成要素は、好ましくは、与えられた順序で互いに直接追従している。図中で互いに接触していない層は、好ましくは間隔をあけて配置される。線が互いに平行に描かれている場合、対応する面は、好ましくは、互いに平行に整列している。同様に、特に示されない限り、図中では、互いに描かれた構成要素の相対的な位置が正しく示されている。
【0104】
本発明は、例示的な実施形態に基づいて説明することによって例示的な実施形態に限定されるものではない。むしろ、本発明は、任意の新規な特徴および任意の特徴の組み合わせを包含し、特に、この特徴またはこの組み合わせ自体が特許請求の範囲または例示的な実施形態において明示的に規定されていなくても、特許請求の範囲における特徴の任意の組み合わせおよび例示的な実施形態における特徴の任意の組み合わせを構成する。
【0105】
本特許出願は、ドイツ特許出願102018114133.5の優先権を主張し、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0106】
1 半導体レーザ
2 半導体積層体
20 上面
22 活性領域
25 成長基板
27 ファセット
28 ファセットコーティング
3 リッジ導波路
37 側面
4 パッシベーション層
5 電気コンタクト層
6 電気接続領域
7 破断コーティング
8 被覆層
81 被覆金属層
9 絶縁層
10 スクライブ溝
12 分離線
13 切断線