IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エドリントン ディスティラーズ リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-アルコール飲料およびその製造方法 図1
  • 特許-アルコール飲料およびその製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】アルコール飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12H 1/22 20060101AFI20230727BHJP
   C12G 3/07 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
C12H1/22
C12G3/07
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021087698
(22)【出願日】2021-05-25
(62)【分割の表示】P 2018518986の分割
【原出願日】2016-10-17
(65)【公開番号】P2021137018
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】62/242,396
(32)【優先日】2015-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518123523
【氏名又は名称】エドリントン ディスティラーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EDRINGTON DISTILLERS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス ビー ホール
(72)【発明者】
【氏名】ブルース フォーシー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ エム ガーガッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス ジェー ビープル
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0068308(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0149423(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0092636(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12H、C12G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸留酒に、より熟成した蒸留酒の知覚特性を付与するための方法であって、
アルコール度数が約40%~約57%である蒸留酒を容器に導入するステップと、
前記蒸留酒750mLあたり約10g~約120gの割合で、前記容器に木材チップを添加するステップと、
前記容器を密封するステップと、
前記容器内で所定の最大圧力が達成されたら該圧力を開放して前記容器の内部圧力が所定のより低い圧力に戻るように、前記容器の前記内部圧力を約5psi~約20psi(約 34.47kPa~約137.9kPa)に上昇させるステップと、を含み、
前記内部圧力が低下する前に前記蒸留酒が前記所定の最大圧力で保持される最大時間は、24時間未満であり、
前記上昇させるステップを1回以上実行する、方法。
【請求項2】
前記容器の前記内部圧力を上昇させる前記ステップを繰り返すステップをさらに含み、
前記容器の前記内部圧力を合計10回にわたって増減させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記容器の前記内部圧力を上昇させる前記ステップを繰り返すステップをさらに含み、
前記容器の前記内部圧力を合計2~6回にわたって増減させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記蒸留酒750mLあたり約20g~約80gの割合で、前記容器に前記木材チップを添加し、方法の全プロセス時間が24時間未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記蒸留750mLあたり約30g~約50gの割合で、前記容器に前記木材チップを添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記蒸留酒の前記アルコール度数が約40%~約45%であり、方法の全プロセス時間が24時間未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記容器の前記内部圧力を、最大で約10psi~約20psi(約68.94kPa~約137.9kPa)まで上昇させる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記容器内の前記木材チップから前記蒸留酒を濾過するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記木材チップの少なくとも一方側を事前に炭化またはトーストし、該木材チップを、前記容器へ導入する前に仕上げる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記容器に導入する前に、前記木材チップをスモークする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記容器に導入する前に、前記木材チップを仕上げる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記木材チップを、ウイスキーの製造にもはや有用でないとみなされた木製の樽から調達する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記木材チップを、少なくとも10年にわたって空気乾燥させた木材から調達する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記木材チップを、少なくとも100年にわたって空気乾燥させた木材から調達する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記木材チップの一次側(長さ×幅)の寸法は、長さが約1~約2インチ(約25.4mm~約50.8mm)、幅が約1/2~約1インチ(約12.7mm~約25.4mm)であり、且つ、厚さは、約1/8~約1/4インチ(約3.175mm~約6.35mm)である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
蒸留酒に、より熟成した蒸留酒の知覚特性を付与するための方法であって、
アルコール度数が約40%~約50%である蒸留酒を容器に導入するステップと、
前記蒸留酒750mLあたり約30g~約60gの割合で、前記容器に木材チップを添加するステップと、
前記容器が一定の質量のガスを含むように、前記容器を密封するステップと、
前記容器の内部圧力が、約10psi~約20psi(約68.94kPa~約137.9kPa)の範囲の所定の最大圧力に達するまで、前記容器を加熱するステップと、
前記内部圧力が所定のより低い圧力に達するまで、前記容器を冷却するステップと、
前記加熱するステップと前記冷却するステップとを2~5回繰り返すステップと、を含み、前記加熱するステップと前記冷却するステップとを繰り返すステップの間、前記容器が密封され、
前記内部圧力が低下する前に前記蒸留酒が前記所定の最大圧力で保持される最大時間は、24時間未満である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2015年10月16日に出願された米国仮特許出願第62/242,39
6号の利益を主張するものである。
【0002】
<連邦支援研究に関する声明>
適用なし。
【0003】
<共同研究協定に対する締約国の名称>
適用なし。
【0004】
<コンパクトディスクで提出された資料の参照による組み込み>
適用なし。
【0005】
本発明は、概して、アルコール飲料に関する。より詳細には、若い蒸留酒に、より熟成
した蒸留酒の知覚特性を付与するための方法および該方法により得られる蒸留酒に関する
【背景技術】
【0006】
伝統的なウイスキーの製造方法においては、高品質の蒸留物をオーク樽で熟成させ、木
材によって色、滑らかさ、風味およびその他の特性をウイスキーに加える。しかしながら
、木製の樽はますます高価になってきており、また、木製の樽の多孔質性は(熟成プロセ
スにおいては重要である一方で)、顕著な蒸発損失をもたらし得る。
【0007】
さらに、木材費用に関するコスト上の問題は、特定の蒸留酒は3~50年またはそれ以
上の年月をかけて熟成し得る、という実際の熟成プロセスにある。一般的に、長期にわた
って熟成させた蒸留酒は、樽の木材とより多くの相互作用が可能となり、消費者が望むよ
うなより洗練された風味、味、色、後味および滑らかさを発現させることができる。
【0008】
この問題を複雑にしているのは、熟成したウイスキーの在庫が減少しており、伝統的な
スコッチウイスキーや他の熟成した蒸留酒を消費した年代である「ベビーブーム」世代の
ウイスキーの在庫が減少している、という事実である。
【0009】
若い(熟成期間が短い)蒸留酒は、辛くて粗い傾向がある。一般に、蒸留酒は、蒸留酒
を保持する樽をなす木材との相互作用を介して、購入の好みや「滑らかさ」および「飲み
やすさ」といった認識によって測定される、消費者が一般に好む知覚特性を発現する。
【0010】
業界内では、バーボンの製造にはニューアメリカンオークを使用することが法律で義務
付けられているとともに、バーボンの味にとっても当該木材の使用が重要であることが知
られている。スコッチウイスキー業界内では、時間の経過とともに樽が「消耗」し、ウイ
スキーに風味付けする能力が失われることも知られている。
【0011】
したがって、木製の樽を用いて何年も熟成させることにより得られる知覚特性が望まれ
ているが、有意に短期間で製造することにより、製品コストを削減し、典型的な樽での熟
成では得られない新しい味覚を創造する機会を創出することもまた望まれている。
【0012】
これまで、伝統的に熟成した蒸留酒の知覚特性を有する、より若い蒸留酒を製造する試
みがなされてきた。その一つが、特許文献1に記載される「エチルアルコールの熟成方法
」である。特許文献1は、「コニャックを熟成させるための熟成促進」のプロセスを開示
しており、該プロセスは、10mm厚のオークリベットをアルコール入りタンクに装填す
るステップと、その後、タンクの内圧を24~48時間かけて2~5ATAに上昇させて
から24~48時間無圧にするステップと、を含む。特許文献1に記載されるプロセスは
従来の方法に比べて速いが、より迅速なサイクルタイムによって同様の結果を得ることが
好ましい。
【0013】
Lixによる特許文献2のような他の特許は、加圧容器内でウイスキーを製造するため
のプロセスに関する一般的な情報を提供しているが、アルコールを入れた容器内に配置さ
れる樽板のプロファイルを教示する以外には、該プロセスに関する多くの詳細を提供して
いない。
【0014】
Watsonによる特許文献3は、「エタノールベースの飲料の熟成を加速させる」た
めの方法を開示している。当該方法では、少なくとも200psi~5000psiの圧
力を用いる方法を非常に一般的に説明しており、それ未満の圧力は所望の反応を「得るの
に不十分である」であるとしている。しかしながら、そのような圧力は、生産工程で実現
するのは非常にコスト高であるとともに、大半の生産設備では達成できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】ロシア登録特許第2084510号明細書
【文献】米国特許第8889206号明細書
【文献】米国特許出願第2010/092636号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、熟成した蒸留酒の知覚的印象を、1日未満の全プロセス時間かつより低い
適応圧力によって得ることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、若い蒸留酒に、熟成した蒸留酒の知覚特性を付与するための方法である。本
発明の方法は、アルコール度数が約40%~約57%である蒸留酒を容器に導入するステ
ップと、蒸留精液750mLあたり約10g~約120gの割合で、容器に木材チップを
添加するステップと、容器を密封するステップと、容器内で所定の最大圧力が達成された
ら該圧力を開放して容器の内部圧力が所定のより低い圧力に戻るように、容器の内部圧力
を約5psi~約50psiに上昇させるステップと、を含む。容器の内部圧力の増減は
、必要に応じて繰り返すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】蒸留酒を急速に熟成させる方法を示すフローチャートである。
図2】アルコール度数42%の蒸留酒を用いて15psiの圧力下で行った、本発明に従う試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照して、本発明は、若い蒸留酒に、伝統的な熟成した蒸留酒の知覚特性を有意
に短期間で付与するための方法を含む。
【0020】
なお、本発明の方法の特徴は、特定の消費者市場に向けられていることに留意されたい
。特に、本発明の方法の特徴は、現在「ミレニアルズ」として認識されている、一般に、
1980年~2000年生まれを含む世代が魅力を感じることが判明している、蒸留酒に
おける風味、質感、色、滑らかさ、および、飲みやすさの知覚特性を提供する。
【0021】
この方法を研究するにあたっては、21~39歳の消費者をアルコール消費法に沿って
リサーチした。本発明の方法に従って得られる蒸留酒の知覚特性は、伝統的なウイスキー
、バーボンまたは他の蒸留酒の酒飲みにとっては、総じて美味しくない可能性がある。し
かしながら、ミレニアルズは最も勢いのある消費者に成長しているので、本発明の方法お
よび当該方法により得られた完成品に関して実施した調査は、主にミレニアルズに焦点を
当てている。また、分野横断的な業界慣習と同様に、商品およびサービスの新しいカテゴ
リに導入されているがため法的にその製品を使用することができる、若年層を惹きつける
必要がある。
【0022】
本発明の方法は、まず、木材チップを取得することから始まる。木材チップは、以前に
使用された樽から取得することができる。しかしながら、木材チップは、業界内で一般に
知られているように整調されているものであれば、他の木材から供給することもできる。
【0023】
例示的な一実施形態において、木材チップの一次側(長さ×幅)の寸法は、長さが約1
~約2インチ、幅が約1/2インチ~約1インチであり、且つ厚さは、約1/8~約1/
4インチである。木材チップの形状は、実質的に矩形状として説明されているが、当業者
には、木材チップの形状およびサイズが変化し、寸法が均一でない可能性があることは理
解される。
【0024】
容器に木材チップを導入し、該容器内の木材チップに蒸留酒を導入する。
【0025】
本発明の方法では、木材チップに加えて、または、木材チップに替えて、ナッツの殻を
蒸留酒との混合に用いることができる。
【0026】
背景技術に記載されるように、バーボンの製造に使用する木材には、ニューアメリカン
オークを使用する必要があり、また、使用することが重要である。また、スコッチウイス
キーの業界内では、時間の経過とともに樽が「消耗」し、ウイスキーに風味付けする能力
が失われることも知られている。本発明の方法において、木材チップは、ウイスキー/ウ
ィスキーの製造においてもはや有用でないとされた木製の樽から調達することができる。
例示的な一実施形態における木材は、木材を少なくとも10年間空気乾燥させた樽または
他の供給源によるものである。さらに、例示的な他の一実施形態における木材は、木材を
少なくとも100年間空気乾燥させた樽または他の供給源によるものである。
【0027】
本明細書全体を通して使用される蒸留酒という用語は、少なくとも5体積%のアルコー
ル(ABV)を含有する蒸留された飲料をいう。本明細書に記載される蒸留酒は、若い蒸
留酒または熟成した蒸留酒である。熟成した蒸留酒は、いくつかの国の規制によれば、少
なくとも3年間は木材の中に保持される必要があり、また、若い蒸留酒は、新しく製造さ
れた蒸留酒として定義される。本発明の方法は、そのような若い蒸留酒または熟成した蒸
留酒における、さらなる処置および/または仕上げを可能にする。
【0028】
蒸留酒は、ウイスキー、スコッチウイスキー、バーボン、ウォッカ、ジン、ラム酒、ブ
ランデー、オー・ドゥ・ヴィ(フルーツブランデーまたはシュナップス)、テキーラ、白
酒、ソジュ、アグアルディエンテ、パリンカ、カシャーサ、シンガニ、ボロヴィチュカ、
スリヴォヴィッツ、ムーンシャイン、蒸留精液もしくは若い蒸留酒のいずれか、または、
それらの組み合わせとすることができる。
【0029】
木材チップとアルコールとの比は、本発明の重要な特徴である。750ml(標準的な
ボトル)の蒸留酒に対して、木材チップの量は30グラム(g)~120gの間とするべ
きであることが判明している。実際の木材チップの量は、結果として得られる蒸留酒に望
まれる知覚特性に基づいて変化する。本発明における蒸留酒のアルコール度数は、約40
%~約57%であることが好ましいことが判明している。
【0030】
木材チップと蒸留酒の混合物を保持する容器を密封し、密封した容器の内部における測
定圧力が最低でも5psiに上昇するまで加熱するが、約50psiは超えないようにす
る。木材チップの望ましくない知覚特性が、結果として得られる蒸留酒に引き出される可
能性があるため、圧力が50psiを超えないことが重要である。
【0031】
容器内の圧力が上昇すると、蒸留酒分子が木材チップに押し込まれて、蒸留酒が木材チ
ップの表面だけでなく内部と相互作用することが実験によって示された。圧力が低下する
と、蒸留酒が木材チップから排出される。これにより、木材の内部の一部に蒸留酒が導入
され、該木材の内部の一部が蒸留酒と相互作用して新しい化合物を生成する相互作用が引
き起こされる。
【0032】
圧力は、約10psi~約20psiの間であることが最も好ましい。なお、このより
低い圧力は、従来技術および当業者が設定すべきであると主張する圧力に反していること
に留意されたい。しかしながら、このより低い圧力によれば、より高い圧力で抽出される
木材チップの望ましくない特性によって結果として得られるアルコールが汚染させるのを
防止し、関心のある消費者にとって望ましくない知覚特性が蒸留酒に付与されるのを防止
できることが見出されている。
【0033】
続いて、容器を熱から取り出し、実質的に室温まで冷却して、容器の内部圧力を所定の
より低い圧力まで低下させる。
【0034】
木材チップと蒸留酒の混合物が入った容器を約5psi~20psiの雰囲気に加熱し
、その後、該容器の温度を冷却して標準圧力にすることは、熟成の1サイクルと考えられ
る。
【0035】
容器の内部圧力が最大圧力に達したら、圧力を低下させて標準圧力にすることが好まし
い。換言すれば、容器の内容物を長時間にわたって最大圧力のもとで保持しないことが好
ましく、所望の知覚特性に基づいて24時間未満とすることが好ましい。とはいえ、いっ
たん最大圧力に達してから減圧することが好ましい。各サイクルの実際の所要時間は、蒸
留酒、および木材の量、並びに、最大圧力、所望の味覚特性および生産効率などに基づい
て変化する。
【0036】
蒸留酒と木材チップとの混合は、1回以上の熟成サイクルを経て行うが、実際のサイク
ル数は、結果として得られる急速に熟成した蒸留酒に求められる所望の知覚特性に基づい
て変化する。このサイクルは、ミレニアル世代の消費者に望まれる知覚特性を結果として
得られる蒸留酒に提供するように、蒸留酒と木材チップとを相互作用させることが要求さ
れる。
【0037】
より好ましいサイクル数は、結果として得られる蒸留酒あたり2~5回である。
【0038】
所望のサイクル数を実行した後、結果として得られた蒸留酒を濾過して、木材チップお
よび他の粒子状物質からそれを分離する。急速に熟成した蒸留酒は、その後、貯蔵または
消費される。
【0039】
驚くべきことに、木材チップの2つの一次側の少なくとも一方または木材チップ全体を
炭化させると、本発明の方法が促進されることが分かった。これは、木材チップの少なく
とも一方側を、該木材チップを蒸留酒と混合する前に炭化させ、1回以上のサイクルを経
ることによれば、より少ないサイクル数で、木材チップから蒸留酒により多くの色および
風味を付与できることを意味する。または、別の言い方をすれば、木材チップを炭化させ
ると、蒸留酒に付与される異なる知覚特性が変化する。
【0040】
他の実施形態では、木材チップを炭化させることに加えて、または、木材チップを炭化
させる代わりに、木材チップをトーストする。炭化と同様に、木材をトーストすると蒸留
酒に付与される異なる知覚特性が変化する。
【0041】
木材チップを炭化させる代わりに、または、木材チップを炭化させることに加えて、木
材チップを容器に導入して蒸留酒と混合する前に、木材チップをスモークすることができ
る。従来行われているように、木材チップ全体を炭化させることやトーストすることもで
きる。
【0042】
業界内で周知であるように、特定の木製樽は、樽内の蒸留酒に異なる知覚特性を付与す
る。例えば、スコットウイスキーは、シェリーオーク製の樽で仕上げられる。したがって
、本発明のさらに他の実施形態では、木材チップを、業界内で既知の仕上げ手順によって
整調する。
【0043】
蒸留酒を熟成させるために実行する実際のサイクル数は、蒸留酒に対する木材チップの
割合、木材チップの炭化状態、木材チップの種類、蒸留酒の種類に応じて変化する。図2
は、3年熟成させたスコッチウイスキーを用いた試験の結果を示している。3年の熟成期
間は、合法的にスコッチウイスキーとしてみなされる最短の熟成期間であり、単一のサイ
ズに炭化させたシェリーオーク樽の木材チップを用いた。スコッチウイスキーのアルコー
ル度数は42%であり、内容物を15psiの圧力にかけた。「X」でマークされたマト
リックスのセルは、所望の知覚特性、すなわち、熟成期間がより長いスコットランド産の
ウイスキーの知覚特性が得られることが分かった。
【0044】
実施例1
【0045】
本発明に従う蒸留酒(ウイスキー)を以下のように調製した。
木材チップの量 30g
蒸留酒の量 750ml
蒸留酒のアルコール度数 42%
サイクルあたりの最大圧力 15psi
サイクル数 4
結果として得られた蒸留酒のアルコール度数も42%であった。ペア比較のブラインド
テストを実施して、米国および国際セールスに基づく売り上げ第2位の、酒齢18年のス
ーパープレミアムウイスキーと比較した。無作為に選ばれた21~39歳の米国人が試飲
した。「購入意向」の評価では、本発明の実施例1が71%であり、29%であるスーパ
ープレミアムウイスキーよりも好まれる結果となった。
【0046】
実施例2
【0047】
本発明に従う蒸留酒(ウイスキー)を以下のように調製した。
木材チップの量 120g
蒸留酒の量 750ml
蒸留酒のアルコール度数 42%
サイクルあたりの最大圧力 15psi
サイクル数 4
結果として得られた蒸留酒のアルコール度数も42%であった。21~39歳の米国人
を無作為にサンプリングしてペア比較のブラインドテストを実施し、上述の実施例1と比
較した。「購入意向」の評価では、実施例2が43%であり、57%である実施例1に劣
った。同じペア比較における消費者の「滑らかさ」および「飲みやすさ」の評価において
も、実施例2は実施例1に劣った。これらの結果は、アルコールに対する木材チップの割
合の上限を裏付けるのに役立った。
【0048】
実施例3
【0049】
本発明に従う蒸留酒(ウイスキー)を以下のように調製した。
木材チップの量 30g
蒸留酒の量 750ml
蒸留酒のアルコール度数 57%
サイクルあたりの最大圧力 15psi
サイクル数 4
結果として得られた蒸留酒のアルコール度数も57%であった。21~39歳の米国人
を無作為にサンプリングしてペア比較のブラインドテストを実施し、上述の実施例1と比
較した。「購入意向」の評価では、実施例3が34%であり、66%である実施例1に劣
った。同じペア比較における消費者の「滑らかさ」および「飲みやすさ」の評価において
も、実施例3は実施例1に劣った。これらの結果は、アルコール度数の上限を裏付けるの
に役立った。
【0050】
実施例4
【0051】
本発明に従う蒸留酒(ウイスキー)を以下のように調製した。
木材チップの量 30g
蒸留酒の量 750ml
蒸留酒のアルコール度数 42%
サイクルあたりの最大圧力 50psi
サイクル数 4
結果として得られた蒸留酒のアルコール度数も42%であった。21~39歳の米国人
を無作為にサンプリングしてペア比較のブラインドテストを実施し、上述の実施例1と比
較した。「購入意向」の評価では、実施例4が37%であり、63%である実施例1に劣
った。同じペア比較における消費者の「滑らかさ」および「飲みやすさ」の評価において
も、実施例4は実施例1に劣った。これらの結果は、サイクルあたりの最大圧力の上限を
裏付けるのに役立った。
【0052】
実施例5
【0053】
本発明に従う蒸留酒(ウイスキー)を以下のように調製した。
木材チップの量 30g
蒸留酒の量 750ml
蒸留酒のアルコール度数 42%
サイクルあたりの最大圧力 15psi
サイクル数 4
なお、木材チップは、少なくとも100年間にわたって空気乾燥させた木材を供給源と
している。結果として得られた蒸留酒のアルコール度数も42%であった。ペア比較のブ
ラインドテストを実施して、米国および国際セールスに基づくトップセールスの1つであ
るスーパープレミアムウイスキーと比較した。無作為に選ばれた21~39歳の米国人が
試飲した。「購入意向」の評価では、本発明の実施例5が66%であり、34%であるス
ーパープレミアムウイスキーよりも好まれる結果となった。
【0054】
本発明を、以上に概説した特定の実施形態とともに説明したが、当業者にとって、多く
の代替、修正および変形が可能であることは明らかである。従って、上述した本発明の好
適な実施形態は、例示的なものであり、本発明を限定するものではない。本発明の精神お
よび範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができる。
【0055】
本明細書の開示の一部には、著作権保護の対象となる資料が含まれている。著作権者は
、特許商標庁の特許ファイルまたは記録に記載されているように、特許文書または特許開
示のいずれかによるファクシミリ複製に異論を唱えないものとし、それ以外の場合はすべ
ての著作権を留保するものとする。
図1
図2