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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】耐火具及び閉塞部材
(51)【国際特許分類】
   A62C 3/16 20060101AFI20230727BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20230727BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20230727BHJP
   F16L 5/04 20060101ALI20230727BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
A62C3/16 B
H02G3/22
F16L5/02 F
F16L5/04
E04B1/94 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021163836
(22)【出願日】2021-10-05
(62)【分割の表示】P 2018028604の分割
【原出願日】2018-02-21
(65)【公開番号】P2022008850
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 建世
(72)【発明者】
【氏名】杉原 伸和
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-112345(JP,A)
【文献】特開2009-197479(JP,A)
【文献】特開2011-021618(JP,A)
【文献】特開2014-007892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
H02G 3/22
F16L 5/02
F16L 5/04
E04B 1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の防火区画体を軸方向に貫通して形成された貫通部に配線・配管材が挿通され、前記貫通部の内周面と前記配線・配管材の外周面との間に設けられてなる耐火具であって、
記貫通部内に固定され、前記配線・配管材の外周面を所定の間隙を空けて包囲する耐火具本体と、
前記配線・配管材を内挿して前記耐火具本体と前記配線・配管材との間隙を閉塞する圧縮変形可能な閉塞部材と、を備え、
前記耐火具本体および前記閉塞部材の少なくとも一方は熱により膨張する熱膨張性材料からなり、
前記閉塞部材は、前記配線・配管材の外周面と対面する前記閉塞部材の内周部を周方向において複数の分割片に分割する複数の溝部を備え、前記複数の分割片が周方向において互いに個別的に圧縮変形して前記配線・配管材の外周面に密着可能であり、
前記溝部は、周方向に有意な幅をもたない切り込みとして形成され、原形状において、隣接する分割片が当接していることを特徴とする耐火具。
【請求項2】
建築物の防火区画体を軸方向に貫通して形成された貫通部に配線・配管材が挿通され、前記貫通部の内周面と前記配線・配管材の外周面との間に設けられてなる耐火具であって、
前記貫通部内に固定され、前記配線・配管材の外周面を所定の間隙を空けて包囲する、耐火具本体と、
前記配線・配管材を内挿して前記耐火具本体と前記配線・配管材との間隙を閉塞する圧縮変形可能な閉塞部材と、を備え、
前記耐火具本体および前記閉塞部材の少なくとも一方は熱により膨張する熱膨張性材料からなり、
前記閉塞部材は、前記配線・配管材の外周面と対面する前記閉塞部材の内周部を周方向において複数の分割片に分割する複数の溝部を備え、前記複数の分割片が周方向において互いに個別的に圧縮変形して前記配線・配管材の外周面に密着可能であり、
前記溝部は、前記閉塞部材の軸方向の一部の範囲で延在し、前記溝部及び前記分割片は、軸方向の特定の箇所に形成されていることを特徴とする耐火具。
【請求項3】
建築物の防火区画体を軸方向に貫通して形成された貫通部に配線・配管材が挿通され、前記貫通部の内周面と前記配線・配管材の外周面との間に設けられてなる耐火具であって、
前記貫通部内に固定され、前記配線・配管材の外周面を所定の間隙を空けて包囲する、耐火具本体と、
前記配線・配管材を内挿して前記耐火具本体と前記配線・配管材との間隙を閉塞する圧縮変形可能な閉塞部材と、を備え、
前記耐火具本体および前記閉塞部材の少なくとも一方は熱により膨張する熱膨張性材料からなり、
前記閉塞部材は、前記配線・配管材の外周面と対面する前記閉塞部材の内周部を周方向において複数の分割片に分割する複数の溝部を備え、前記複数の分割片が周方向において互いに個別的に圧縮変形して前記配線・配管材の外周面に密着可能であり、
前記溝部の径方向の深さが軸方向において変化していることを特徴とする耐火具。
【請求項4】
前記耐火具本体および前記閉塞部材は、同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の耐火具。
【請求項5】
建築物の防火区画体を軸方向に貫通して形成された貫通部に配線・配管材が挿通され、前記貫通部の内周面と前記配線・配管材の外周面との間に耐火具が設けられてなる耐火構造において、前記配線・配管材の外周面を包囲するように前記貫通部内に固定される耐火具本体と、前記配線・配管材の外周面と、の間の所定の間隙を圧縮変形して閉塞する閉塞部材であって、
熱膨張性材料からなり、
前記配線・配管材の外周面と対面する前記閉塞部材の内周部を周方向において複数の分割片に分割する複数の溝部を備え、
前記複数の分割片が周方向において互いに個別的に圧縮変形して前記配線・配管材の外周面に密着可能であり、
前記溝部は、周方向に有意な幅をもたない切り込みとして形成され、原形状において、隣接する分割片が当接していることを特徴とする閉塞部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の防火区画体の貫通部に耐火措置を施した耐火構造に関し、該耐火構造に用いられる耐火具及び閉塞部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルや保護管(可撓管)などの配線・配管材を建築物の防火区画体に貫通して配設する際、該防火区画体に貫通部を穿設し、その貫通部内に配線・配管材を配設する。このような防火区画体では、貫通部内に防火措置を施すことが求められている。すなわち、防火区画体の一方の壁表側の空間で火災等が発生したとき、貫通部を介して他方側の空間に一方側で発生した火炎、煙、有毒ガス等が流入することを阻止すべく、該貫通部が完全に閉塞されなければならない。そして、火災時に貫通部と配線・配管材との間を密封する特許文献1のような耐火構造が提案されている。
【0003】
特許文献1は、貫通部の耐火構造を開示している。以下、当該段落において、()内に特許文献1の符号を示す。建築物の防火区画壁(W)に設けられた貫通部の耐火構造は、貫通孔(Wa)に電線管(14)が挿通され、貫通孔(Wa)の内周面と電線管(14)の外周面との間に、熱膨張性耐火具(11)が設けられてなるものである。この貫通部の耐火構造において、熱膨張性耐火具(11)は、電線管(14)の外周面に対し間隙(Ka)を空けて取り囲むように配置されて防火区画壁(W)に固定されている。間隙(Ka)には、閉塞部材として1体の発泡性材料(例えば、スポンジ)からなる環状の充填材(21)が充填されるとともに、充填材(21)によって間隙(Ka)が閉塞されている。充填材(21)は、内径及び外径を縮径させた状態、すなわち圧縮させた状態で間隙(Ka)に押し込まれている。そして、充填材(21)は、内周面が電線管(14)の外周面に密接するとともに、外周面が耐火具本体(12)の内周面に密接している。なお、充填材(21)は、舌片(16c)を押し退けて貫通孔(Wa)の奥に到達するまで間隙(Ka)には充填されず、舌片(16c)によって耐火具本体(12)から飛び出ることが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014- 7892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような従来の耐火構造では、配線・配管材と耐火具本体との間の隙間を閉塞するように1体の発泡性材料が充填される。しかしながら、このような従来の耐火構造では、1体の発泡性材料が全体として撓み変更することから、配線・配管材との間に隙間が形成されやすい。特には、配線・配管材が巻き癖等により直線状でなかったり、配線・配管材自体の外形に凹凸があったり、配線・配管材と発泡性材料との間に物体(特許文献1では耐火具本体の舌片)が介在しているような場合において、少なくとも配線・配管材の周方向に沿って隙間が形成されやすい。このような隙間の存在によって、貫通部の閉塞率が低下し、火災時に火炎、煙、有毒ガス等が防火区画体を通過する虞が高くなることが問題であった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、より確実に防火区画体の貫通部を閉塞する耐火構造、耐火具及び閉塞部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態の耐火構造は、建築物の防火区画体を貫通して形成された貫通部に配線・配管材が挿通され、前記貫通部の内周面と前記配線・配管材の外周面との間に耐火具が設けられてなる耐火構造であって、
前記耐火具は、
熱により膨張する熱膨張性材料からなり、前記貫通部内に固定され、前記配線・配管材の外周面を所定の間隙を空けて包囲する耐火具本体と、
前記配線・配管材を内挿して前記耐火具本体と前記配線・配管材との間隙を閉塞するように圧縮変形した閉塞部材と、を備え、
前記閉塞部材は、前記配線・配管材の外周面と対面する前記閉塞部材の内周部を周方向において複数の分割片に分割する複数の溝部を備え、前記複数の分割片が周方向において互いに個別的に圧縮変形して前記配線・配管材の外周面に密着していることを特徴とする。
【0008】
本発明の耐火構造によれば、配線・配管材外周面を包囲する圧縮変形可能な閉塞部材の内周部には、該内周部を周方向において複数の分割片に分割する複数の溝部が設けられている。そして、溝部は、所定の溝深さで内周部表面に形成され、隣接する分割片を周方向において個別的に且つ自由に変形可能とするように分割している。これにより、溝部によって周方向に分割された閉塞部材の内周部が、当接する対象の形状に合わせて、よりランダム且つ流動的に変形することが可能となる。すなわち、配線・配管材の外周面の形状が巻き癖等の要因で単純でない場合であっても、閉塞部材の内周部は、各分割片が配線・配管材の比較的複雑な形状に個別に追従して圧縮変形することで、周方向において配線・配管材の外周面に良好に密着することが可能である。したがって、本発明の耐火構造では、配線・配管材と耐火具本体との間の間隙を閉塞部材がより確実に閉塞することが可能である。
【0009】
本発明のさらなる形態の耐火構造は、上記一形態の耐火構造において、前記耐火具本体と前記配線・配管材との間隙を閉塞する前記閉塞部材の径方向の厚みは、前記耐火具本体の径方向の厚みよりも大きいことを特徴とする。すなわち、熱膨張性部材からなる耐火具本体の径方向厚みよりも、閉塞部材の径方向厚みよりも大きいことにより、配線・配管材と耐火具本体との間隙が比較的大きくなり、配線・配管材の設置が容易となる。
【0010】
本発明のさらなる形態の耐火構造は、上記一形態の耐火構造において、前記閉塞部材の内周部と前記配線・配管材の外周面との間には、摩擦抵抗軽減部材が介在していることを特徴とする。すなわち、閉塞部材の内周部と配線・配管材の外周面との間に摩擦抵抗軽減部材が介在していることにより、閉塞部材は、配線・配管材の軸方向への移動を許容するように配線・配管材を内挿し、配線・配管材が軸方向に移動したときに耐火具本体内に維持されることが可能である。
【0011】
本発明のさらなる形態の耐火構造は、上記一形態の耐火構造において、前記摩擦抵抗軽減部材は、前記各分割片の(径方向の)先端面に貼着された複数のシート体からなることを特徴とする。すなわち、摩擦抵抗軽減部材が各分割片の先端面に貼着された複数のシート体からなることにより、各分割片の先端面と配線・配管材との摩擦抵抗を効果的に軽減することができる。
【0012】
本発明のさらなる形態の耐火構造は、上記一形態の耐火構造において、前記各溝部は、前記閉塞部材の外周部に到達しない径方向深さで形成され、前記複数の分割片が前記閉塞部材の外周部において連結されていることを特徴とする。すなわち、各溝部が閉塞部材の壁部を完全に切断せずに複数の分割片が前記閉塞部材の外周部において連結されていることにより、配線・配管材の外周面への密着性を担保しつつ、閉塞部材の携帯や施工が容易となる。
【0013】
本発明のさらなる形態の耐火構造は、上記一形態の耐火構造において、前記各溝部は、前記閉塞部材を径方向に切断するように前記閉塞部材の内周部から外周部にまで到達し、前記複数の分割片が前記閉塞部材の外周部において分離し、前記間隙内で隣接する前記分割片同士が変形して密着していることを特徴とする。すなわち、閉塞部材の壁部を径方向に切断する溝部によって、複数の分割片がブロック状に周方向に分離していることより、各分割片の圧縮変形における独立性をより向上させて、配線・配管材と耐火具本体との間の閉塞性を高めることができる。なお、本明細書において、「溝部」は、閉塞部材の内周部を分割する要素として定義され、閉塞部材の周壁部を完全に分離する空間をも含む概念である。
【0014】
本発明のさらなる形態の耐火構造は、上記一形態の耐火構造において、前記閉塞部材は、前記複数の分割片のうちの隣接する分割片の少なくとも一部を、前記閉塞部材の外周側で連結する連結体をさらに備えることを特徴とする。すなわち、連結体が分離した各分割片を閉塞部材の外周部で連結することにより、各分割片の圧縮変形における高い独立性を維持しつつ、閉塞部材の携帯や施工が容易となる。
【0015】
本発明のさらなる形態の耐火構造は、上記一形態の耐火構造において、前記複数の分割片のうちの隣接する分割片は、異なる圧縮率を有することを特徴とする。すなわち、隣接する分割片が異なる圧縮率で変形することにより、閉塞部材の内周部を全体としてよりランダムに変形させることが可能となり、様々な配線・配管材の外周形状に対して高い密着性を発揮することが可能となる。
【0016】
本発明の一形態の耐火具は、建築物の防火区画体を貫通して形成された貫通部に配線・配管材が挿通され、前記貫通部の内周面と前記配線・配管材の外周面との間に設けられてなる耐火具であって、
熱により膨張する熱膨張性材料からなり、前記貫通部内に固定され、前記配線・配管材の外周面を所定の間隙を空けて包囲する耐火具本体と、
前記配線・配管材を内挿して前記耐火具本体と前記配線・配管材との間隙を閉塞する圧縮変形可能な閉塞部材と、を備え、
前記閉塞部材は、前記配線・配管材の外周面と対面する前記閉塞部材の内周部を周方向において複数の分割片に分割する複数の溝部を備え、前記複数の分割片が周方向において互いに個別的に圧縮変形して前記配線・配管材の外周面に密着可能であることを特徴とする。
【0017】
本発明の耐火具によれば、配線・配管材外周面を包囲する圧縮変形可能な閉塞部材の内周部には、該内周部を周方向において複数の分割片に分割する複数の溝部が設けられている。そして、溝部は、所定の溝深さで内周部表面に形成され、隣接する分割片を周方向において個別的に且つ自由に変形可能とするように分割している。これにより、溝部によって周方向に分割された閉塞部材の内周部が、当接する対象の形状に合わせて、よりランダム且つ流動的に変形することが可能となる。すなわち、配線・配管材の外周面の形状が巻き癖等の要因で単純でない場合であっても、閉塞部材の内周部は、各分割片が配線・配管材の比較的複雑な形状に個別に追従して圧縮変形することで、周方向において配線・配管材の外周面に良好に密着することが可能である。したがって、本発明の耐火具では、配線・配管材と耐火具本体との間の間隙を閉塞部材がより確実に閉塞することが可能である。
【0018】
本発明のさらなる形態の耐火具は、上記一形態の耐火具において、前記複数の分割片の径方向長さが不均一であることを特徴とする。すなわち、各分割片の径方向長さが不均一であることにより、閉塞部材の内周部を全体としてよりランダムに変形させることが可能となり、様々な配線・配管材の外周形状に対して高い密着性を発揮することが可能となる。
【0019】
本発明のさらなる形態の耐火具は、上記一形態の耐火具において、前記複数の溝部の周方向の間隔が不均等であることを特徴とする。すなわち、各溝部の周方向の間隔が不均等であることにより、閉塞部材の内周部を全体としてよりランダムに変形させることが可能となり、様々な配線・配管材の外周形状に対して高い密着性を発揮することが可能となる。
【0020】
本発明のさらなる形態の耐火具は、上記一形態の耐火具において、前記複数の溝部の周方向幅が不均一であることを特徴とする。すなわち、各溝部の周方向幅が不均一であることにより、閉塞部材の内周部を全体としてよりランダムに変形させることが可能となり、様々な配線・配管材の外周形状に対して高い密着性を発揮することが可能となる。
【0021】
本発明のさらなる形態の耐火具は、上記一形態の耐火具において、前記各溝部は、前記閉塞部材の外周部に到達しない径方向深さで形成され、前記複数の分割片が前記閉塞部材の外周部において連結されていることを特徴とする。すなわち、各溝部が閉塞部材の壁部を完全に切断せずに複数の分割片が前記閉塞部材の外周部において連結されていることにより、配線・配管材の外周面への密着性を担保しつつ、閉塞部材の携帯や施工が容易となる。
【0022】
本発明のさらなる形態の耐火具は、上記一形態の耐火具において、前記各溝部は、前記閉塞部材を径方向に切断するように前記閉塞部材の内周部から外周部にかけて延在し、前記複数の分割片が互いに分離していることを特徴とする。すなわち、閉塞部材の壁部を径方向に切断する溝部によって、複数の分割片がブロック状に周方向に分離していることにより、各分割片の圧縮変形における独立性をより向上させて、配線・配管材と耐火具本体との間の閉塞性を高めることができる。
【0023】
本発明のさらなる形態の耐火具は、上記一形態の耐火具において、前記閉塞部材は、前記複数の分割片のうちの隣接する分割片の少なくとも一部を、前記閉塞部材の外周側で連結する連結体をさらに備えることを特徴とする。すなわち、連結体が分離した各分割片を閉塞部材の外周部で連結することにより、各分割片の圧縮変形における独立性を維持しつつ、閉塞部材の携帯や施工が容易となる。
【0024】
本発明のさらなる形態の耐火具は、上記一形態の耐火具において、前記閉塞部材は、熱により膨張する熱膨張性を有することを特徴とする。すなわち、閉塞部材が熱膨張性であることにより、火災時に耐火具本体とともに熱膨張することにより、貫通部をより確実に閉塞することが可能である。
【0025】
本発明のさらなる形態の耐火具は、上記一形態の耐火具において、前記耐火具本体は、クッション性を有することを特徴とする。すなわち、耐火具本体がクッション性を有することにより、耐火具本体の外周面と貫通部の内周面とをより一層密接させることが可能となる。
【0026】
本発明のさらなる形態の耐火具は、上記一形態の耐火具において、前記耐火具本体は、前記防火区画体の貫通部周縁に掛け止まる掛止部を有することを特徴とする。すなわち、耐火具本体の掛止部を防火区画体の貫通部周縁に当接させて配置することにより、耐火具の貫通部への設置が容易となる。
【0027】
本発明のさらなる形態の耐火具は、上記一形態の耐火具において、前記耐火具本体を内挿する筒部、及び、前記筒部外周から突出したフランジ部を有し、前記貫通部の内周面と前記耐火具本体の外周面との間に配置される外枠をさらに備えることを特徴とする。すなわち、外枠のフランジ部を貫通部周縁に当接させることで外枠を貫通部に対して容易に配置することが可能であり、且つ、貫通部の内周面形状を問わずに外枠の筒部内に耐火具本体を安定的に保持することが可能である。
【0028】
本発明のさらなる形態の耐火具は、上記一形態の耐火具において、前記耐火具本体及び前記閉塞部材の少なくとも一方は、前記配線・配管材を径方向から内部に配置するための開口を形成するように、壁部を軸方向に沿って分割するスリット部を有することを特徴とする。スリット部を介して配線・配管材を径方向から耐火具本体又は閉塞部材の内部に配置することができる。これにより、予め壁孔に配設された配線・配管材に対して事後的に耐火具を取り付けることができる。
【0029】
本発明の一形態の閉塞部材は、建築物の防火区画体を貫通して形成された貫通部に設けられてなる耐火構造において、前記配線・配管材を内挿して前記貫通部内に生じる間隙を閉塞する閉塞部材であって、
内周部及び外周部を有する環状の圧縮変形可能なスポンジ体と、
前記配線・配管材の外周面と対面する前記閉塞部材の内周部を周方向において複数の分割片に分割する複数の溝部と、を備え、
前記複数の分割片が周方向において互いに個別的に圧縮変形して前記配線・配管材の外周面に密着可能であることを特徴とする。
【0030】
本発明の閉塞部材によれば、配線・配管材外周面を包囲する圧縮変形可能な閉塞部材の内周部には、該内周部を周方向において複数の分割片に分割する複数の溝部が設けられている。そして、溝部は、所定の溝深さで内周部表面に形成され、隣接する分割片を周方向において個別的に且つ自由に変形可能とするように分割している。これにより、溝部によって周方向に分割された閉塞部材の内周部が、当接する対象の形状に合わせて、よりランダム且つ流動的に変形することが可能となる。すなわち、配線・配管材の外周面の形状が巻き癖等の要因で単純でない場合であっても、閉塞部材の内周部は、各分割片が配線・配管材の比較的複雑な形状に個別に追従して圧縮変形することで、周方向において配線・配管材の外周面に良好に密着することが可能である。したがって、本発明の閉塞部材は、配線・配管材の形状起因により、貫通部内で配線・配管材周囲に生じる間隙をより確実に閉塞することが可能である。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、防火区画体に形成された貫通部に対して、配線・配管材と耐火具本体との間の間隙を閉塞部材がより確実に閉塞し、より効果的に耐火措置を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態の耐火構造の概略斜視図。
図2】本発明の一実施形態の耐火具の分解斜視図。
図3図2の耐火具の耐火具本体の(a)正面から見た斜視図、及び(b)背面から見た斜視図。
図4図3の耐火具本体の(a)正面図、(b)背面図及び(c)A-A断面図。
図5図2の耐火具の閉塞部材の(a)斜視図及び(b)正面図。
図6図5の耐火具の(a)B-B断面図及び(b)C-C断面図。
図7図1の耐火構造の概略断面図。
図8図7の耐火構造の(a)D-D断面図及び(b)E-E断面図。
図9図1の耐火構造を構築する一工程を示す概略図。
図10】本発明の別実施形態の閉塞部材の(a)斜視図及び(b)正面図。
図11】本発明の別実施形態の閉塞部材の(a)斜視図及び(b)正面図。
図12】本発明の別実施形態の閉塞部材の(a)斜視図、(b)正面図及び(c)部分展開図。
図13】本発明の別実施形態の閉塞部材の(a)斜視図及び(b)正面図。
図14】本発明の別実施形態の閉塞部材の(a)斜視図及び(b)正面図。
図15】本発明の別実施形態の閉塞部材の(a)斜視図、(b)正面図及び(c)背面図。
図16】本発明の別実施形態の閉塞部材の(a)斜視図及び(b)正面図。
図17】本発明の別実施形態の閉塞部材の(a)斜視図及び(b)正面図。
図18】本発明の別実施形態の耐火構造の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。また、本発明における上下左右の方向は、相対的な位置を示す概念にすぎず、これらを入れ替えて適用可能であることは言うまでもない。
【0034】
本実施形態の耐火構造10は、防火区画体12の一方の壁表側の空間で火災等が発生したとき、他方側の空間に一方側で発生した火炎、煙、有毒ガス等が流入することを防止するように、両空間を区画する壁構造である。図1は、耐火構造10の概略斜視図である。
【0035】
図1に示すとおり、耐火構造10は、建築物の防火区画体12を軸方向(厚み方向)に貫通して形成された貫通部13に配線・配管材14が挿通され、該貫通部13の内周面と該配線・配管材14の外周面との間に耐火具11が設けられてなる。
【0036】
本実施形態の防火区画体12は、垂直に立設した中空又は中実の所定厚の耐火壁である。防火区画体12は、石膏ボードやコンクリート壁などで構成され得る。防火区画体12には、所定の太さの配線・配管材14が貫通可能な径を有する貫通部13が穿設されている。この貫通部13は正円形状を有し、その内径は耐火具11の筒状部111の外径と略同一(わずかに大きく)に形成されている。なお、本発明の防火区画体は防火区画用の天井や床等の構造体をも含む概念であり、本実施形態の形態に限定されない。また、本実施形態の配線・配管材14の例として、送電ケーブル、制御用ケーブル、同軸ケーブル、光ケーブル等の配線材や、合成樹脂製可撓保護管、蛇腹管等の配管材が挙げられるが、本発明の配線・配管材は種々の長尺材を意味する幅広い概念であり、これに限定されない。
【0037】
本実施形態の耐火具11は、図2に示すように、熱により膨張する熱膨張性材料からなり、配線・配管材14の外周面を所定の間隙15を空けて包囲するように貫通部13内に固定される耐火具本体110と、配線・配管材14を内挿して耐火具本体110と配線・配管材14との間隙15を閉塞するように圧縮変形した閉塞部材120と、を備える。なお、本実施形態では、閉塞部材120が耐火具本体110に接着剤によって一体的に接着されているが、本発明はこれに限定されない。以下、本実施形態の耐火具11を構成する各部材について詳細に説明する。
【0038】
本実施形態の耐火具本体110は、熱によって膨張するとともに自身で原形状を維持可能な熱膨張性材料で一体成形されたものである。より具体的には、熱膨張性材料は熱膨張性ゴムであり、この熱膨張性ゴムは高熱(例えば300℃以上)に曝されると体積が加熱前の2倍以上に膨張する膨張材(膨張黒鉛)を混入し、所定形状に成形した(成形工程を経た)ゴムに加硫工程を経てなるものである。なお、加硫工程とは、成形工程を経たゴムに熱を加え、加硫(架橋)反応や接着反応を起こさせ、ゴム弾性を有する製品を得る工程である。そして、耐火具本体110は、弾性変形可能であり、熱膨張性ゴム自身により円筒状(形状)を維持している。
【0039】
図3及び図4に示すとおり、耐火具本体110は、防火区画体12の貫通部13内に配置される中空円筒状に形成された筒状部111と、該筒状部111の一端側から外方に一体的に張り出した板状のフランジ部112と、該筒状部111の他端側の開口を閉塞する閉鎖部113とを備えてなる。
【0040】
該筒状部111は、一端側に開口し、その軸方向に沿って一様な径で一端から他端に向けて直線状に延びる環状体である。この中空筒状の筒状部111の内周面は、横断面視円形状を有し、該内周面の内方には、配線・配管材14を内挿可能な挿通空間が定められている。他方、筒状部111の外形(輪郭)は、横断面視円形状の外周面によって定められている。すなわち、筒状部111の内周面及び外周面の間の肉厚部分(熱膨張性材料)が貫通部13の内周面と配線・配管材14の外周面との間に配置される。
【0041】
筒状部111の外径は、貫通部13の直径と略同一に形成され、且つ、当該外周面の形状(円形)と貫通部13の形状(円形)とが略同一になっている。また、筒状部111の内径は、配線・配管材14の直径よりも大きく、配線・配管材14を挿通空間に内挿したときに筒状部111内周面と配線・配管材14外周面との間に所定の大きさの間隙が形成される。そして、筒状部111の内径は、円筒壁の厚み(筒状部111の外半径と内半径との差)よりも大きい。この耐火具本体110の円筒壁の厚みは、火災等で発生した熱によって加熱され、筒状部111の内径方向へ膨張して挿通空間を閉塞する(すなわち、内周面の内側空間を埋める)ことが可能な厚みであることが好ましい。
【0042】
フランジ部112は、筒状部111の一端の外周縁から径方向に延びるように該筒状部111の周方向全体で薄肉状に形成されている。フランジ部112の輪郭を定める外縁は円形状であり、その直径は貫通部13の直径よりも大きい。すなわち、フランジ部112は、その裏面で貫通部13の周縁の壁面に当接可能であり、防火区画体12の貫通部13周縁に掛け止まる掛止部として機能する。
【0043】
閉鎖部113は、フランジ部112と同様に薄肉状に形成され、筒状部111の他端を閉鎖している。この閉鎖部113は、その中心を通る複数の切り込みで複数に分割されている。つまり、該閉鎖部113には、筒状部111他端で内周面から径方向内方(中心側)に延びる複数の舌片113aが形成されている。各舌片113aは、その基端を支点として軸方向に沿って弾性変形可能である。舌片113aを弾性変形させることにより、該閉鎖部113は、筒状部111の他端側端面を開放するように配線・配管材14を通過可能に変形する。そして、該閉鎖部113では、配線・配管材14を挿し込んだ後に舌片113aが弾性復帰することにより、各舌片113aが配線・配管材14の外面に密着して、再度端面を閉鎖する(図7参照)。
【0044】
また、筒状部111には、軸方向全体に亘って延びるとともに、軸方向に対して直交する方向(径方向)へ延びるスリット部114が形成されている。そして、スリット部114は、筒状部111の円筒壁及びフランジ部112を軸方向全体に沿って切断し、内周面及び外周面の壁部を軸方向に分割している。筒状部111が外側に弾性変形することにより、このスリット部114が開口する。つまり、スリット部114を介して、配線・配管材14をその径方向から挿通空間に挿入可能である。なお、このスリット部114は、舌片113a形成するための複数の切り込みのうちの1つであり、舌片113aの形成に利用されている。
【0045】
閉塞部材120は、配線・配管材14と耐火具本体110との間隙に充填されるように圧縮変形可能に構成されている。該閉塞部材120は、自身で原形状を維持可能であるとともに圧縮変形可能であるウレタン発泡体などの難燃性の発泡性材料(例えば、スポンジ)から形成されている。そして、閉塞部材120は、非熱膨張性又は熱膨張性の発泡体である。なお、熱膨張性の発泡体は、熱によって膨張する熱膨張材として未焼成バーミキュライトや膨張黒鉛等を発泡体内に分散させることによって形成される。
【0046】
図5及び図6に示すとおり、閉塞部材120は、軸方向に延びるとともに軸方向両端で開口した中空円筒状(又は環状)のスポンジ体121を備える。スポンジ体121は、軸方向に延びる肉厚の周壁部(又は壁部)を有する。閉塞部材120(スポンジ体121)の内周面には、配線・配管材14の外周面と対面する内周部122が定められる。この内周部122内側の内部空間には、配線・配管材14を内挿するための挿通部が定められる。そして、閉塞部材120の内周部122の径は、配線・配管材14の外径よりも小さい。なお、閉塞部材120の内周部122の径は、予定する配線・配管材14の径に対応させて定めることも可能であるが、原形状において、挿通部が(各分割片126の先端が中央で接触する程の)極めて小径の孔として定められてもよい。すなわち、閉塞部材120の内径が、配線・配管材14の径と比較して大幅に小さいとしても、配線・配管材14を挿通部に強引に挿入すると、内周部122が外方に圧縮変形しつつ押し拡げられる。内周部122の径が小さい程、スポンジ体121の圧縮量が増加し、配線・配管材14への密着力が強くなる。また、閉塞部材120の外周面には、耐火具本体110の内周面と対面する外周部123が定められる。閉塞部材120の外周部123の径は、耐火具本体110の内周面の径と実質的に同じであるか、又は、(圧縮変形して内挿されるように)より大きい。また、閉塞部材120の径方向の厚み(内周部122と外周部123との間の径方向に沿った距離)は、耐火具本体110の筒状部111の径方向の厚みよりも大きい。すなわち、耐火具本体110に閉塞部材120を内挿した状態で、閉塞部材120の挿通部に配線・配管材14を配置したときに、スポンジ体121が圧縮変形して、配線・配管材14と耐火具本体110との間隙を(好ましくは完全に)閉塞するように、閉塞部材120の寸法形状が定められている。換言すると、想定される耐火具本体110及び配線・配管材14の間隙の体積よりも閉塞部材120の体積の方が少なくとも大きい。そして、閉塞部材120の体積は、当該間隙よりも15%以上大きく形成されることが好ましい。
【0047】
そして、閉塞部材120は、内周部122表面に凹設され、該内周部122を周方向において複数の分割片126に分割する複数(本実施形態では8つ)の溝部125を備える。詳細には、各溝部125は、図5及び図6に示すように、正面視(又は横断面形状)において、スポンジ体121の内周部122表面から径方向外側に所定深さで放射状に刻まれた溝であり、軸方向全体に亘って同一の断面形状で連続して延在している。また、各溝部125は、閉塞部材120の外周部123に到達しない径方向深さで形成されている。つまり、複数の分割片126が閉塞部材120の外周部123において連結されている。換言すると、溝部125先端と外周部123との間に残された肉部が、隣接する分割片126同士を繋いでいる。本実施形態では、各溝部125は、内周部122において周方向に所定の幅を有する正面視V字形状を有している。これにより、閉塞部材120の圧縮変形前の原形状において、隣接する分割片126が互いに当接せずに溝部125を隔てて離隔している。この隣接する分割片126を隔てる溝部125は、分割片126が径方向(長さ方向)に圧縮変形したときに幅方向に拡張することを案内する。後述するとおり、各分割片126が弾性的に圧縮変形したときに、分割片126の一部が溝部125を占有するように変形することで、隣接する分割片126が隙間無く接触する(図8参照)。また、本実施形態では、複数の溝部125は、同一形状をそれぞれ有しているとともに周方向に等間隔に配置されている。そして、各分割片126の周方向幅(分割片126の筒軸を中心とする同一円周上での円弧長)及び径方向長さ(分割片126の外周面側端部から先端面までの径方向の距離)が均一である。
【0048】
また、スポンジ体121には、軸方向全体に亘って延びるとともに、軸方向に対して直交する方向(径方向)へ延びるスリット部127が形成されている。そして、スリット部127は、溝部125の1つに連通するように、隣接する分割片126を繋ぐ肉部を軸方向全体に沿って切断し、内周部122及び外周部123の間の壁部を軸方向に分割している。しかしながら、このスリット部127は、分割片126の間でなく、周方向の任意の位置に形成されてもよい。そして、スポンジ体121が外側に弾性変形することにより、このスリット部127が開口する。つまり、開口したスリット部127を介して、配線・配管材14をその径方向から内周部122内側の挿通部に挿入可能である。なお、耐火具本体110のスリット部114と閉塞部材120のスリット部127とが連通するように位置合わせされた上で、閉塞部材120が耐火具本体110に装着されることが好ましい。
【0049】
そして、閉塞部材120の内周部122には、配線・配管材14との摩擦を軽減するための摩擦抵抗軽減部材(複数のシート体124)が任意に設けられている。具体的には、摩擦抵抗軽減部材は、各分割片126の内周部に貼着された複数のシート体124からなる。シート体124は、スポンジ体121の表面よりも低い摩擦係数からなる材料(例えば、不織布)からなる。当該シート体124が配線・配管材14外周面と閉塞部材120の内周部122との間に介在することにより、配線・配管材14と閉塞部材120との間の摩擦抵抗を軽減し、配線・配管材14の軸方向への滑らかな移動を許容する。そして、配線・配管材14を閉塞部材120に内挿した状態で配線・配管材14が軸方向に移動したときに閉塞部材120が耐火具本体110内に維持され得る。なお、材料的性質として、閉塞部材120のスポンジ体121表面の摩擦係数は、熱膨張性ゴムからなる耐火具本体110の表面の摩擦係数よりも低い。すなわち、摩擦抵抗軽減部材の貼着や、閉塞部材120及び耐火具本体110間の接着がなくても、閉塞部材120と耐火具本体110との間に生じる摩擦力が、閉塞部材120と配線・配管材14との間に生じる摩擦力を上回ることから、閉塞部材120は、耐火具本体110に対する配線・配管材14の軸方向への相対移動を許容し、かつ、配線・配管材14が軸方向に移動したときに、閉塞部材120が貫通部13内に位置したままとなるように構成されている。よって、摩擦抵抗軽減部材は省略されてもよい。
【0050】
以上の説明を踏まえて、図7及び図8を参照して、本発明の一実施形態の耐火構造10をより詳細に説明する。図7は、図1の耐火構造10の軸方向に沿って切断した縦断面図である。図8(a),(b)は、図7のD-D,E-E横断面図である。
【0051】
図7に示すように、耐火構造10では、耐火具本体110の中空円筒状の筒状部111が防火区画体12の貫通部13内に挿入されている。上述したように、筒状部111の外径と貫通部13の内径とがほぼ等しいため、筒状部111の外周面と貫通部13の内周面とがほぼ密接している。また、耐火具本体110の一端が壁表側に配置され、他端が壁裏側を向いており、フランジ部112裏面が貫通部13周縁の壁面に当接している。該耐火具本体110は、両面テープ等を介して防火区画体12に固定されている。そして、閉塞部材120が、耐火具本体110の筒状部111内の挿通空間に配置されている。本実施形態では、閉塞部材120の外周部123が耐火具本体110の内周面に一体的に接着されている。しかしながら、これらが一体的に接着されず、閉塞部材が耐火具本体に摩擦力のみによって保持されてもよい。
【0052】
また、配線・配管材14が防火区画体12を貫通するように貫通部13の略中心に貫通配置されている。この配線・配管材14は、耐火具本体110の挿通空間及び閉塞部材120の挿通部を軸方向に貫通している。そして、耐火具本体110の閉鎖部113の各舌片113aが挿通空間内で一端(壁表)側に折れ曲がり、その弾性復帰力により各舌片113aが配線・配管材14の外周面に密着している。
【0053】
そして、閉塞部材120は、原形状から弾性的に圧縮変形して、配線・配管材14と耐火具本体110との間隙を実質的に隙間無く閉塞している。図7に示すように、閉塞部材120の一端(壁表)側部位及び中央部位では、内周部122が(シート体124を介して)配線・配管材14の外周面のみに密接している。他方、閉塞部材120の他端(壁裏)側部位では、内周部122が配線・配管材14の外周面及び舌片113aの表面の両方に密接している。
【0054】
閉塞部材120の一端(壁表)側寄りの部位における断面では、図8(a)に示すように、径方向に延びる複数の溝部125によって分割された閉塞部材120の内周部122が、配線・配管材14の外周面形状に追従して全体として断面視円形状に変形している。そして、複数の分割片126の径方向の先端部位又は先端面が、周方向において互いに個別的且つ不規則的(ランダム)に圧縮変形して配線・配管材14の外周面に密着している。このとき、各分割片126が全体として径方向外側に潰れるように圧縮変形することで、分割片126(スポンジ体121)の一部が(原形状において隣接する分割片126を隔てる)溝部125を埋めている。つまり、溝部125の空間が分割片126の不規則な形状への圧縮変形をより一層促進している。換言すると、溝部125によって隣接する分割片126が隔てられていることにより、各分割片126がより自由に(又は、互いへの影響を軽減して)変形することが可能である。そして、その先端面(内周面)が配線・配管材14に密着して径方向(又は高さ方向)に圧縮変形した各分割片126が周方向(又は幅方向)に不規則に拡がることで、隣接する分割片126同士が周方向に隙間なく当接している。その結果として、閉塞部材120は、配線・配管材14と耐火具本体110との間隙を隙間なく閉塞している。
【0055】
閉塞部材120の他端(壁裏)側寄りの部位における断面では、配線・配管材14の外周面の一部を複数の舌片113aが覆っており、配線・配管材14の外周面と舌片113aが間隙に向けて交互に露出している。そして、図8(b)に示すように、径方向に延びる複数の溝部125によって分割された閉塞部材120の内周部122が、配線・配管材14及び舌片113aを組み合わせた比較的複雑な外面形状に追従して全体として複雑に変形している。つまり、閉塞部材120の内周部122は、図8(a)と比べて、よりランダム且つ流動的に変形している。そして、複数の分割片126の径方向の先端部位又は先端面が、周方向において互いに個別的且つ不規則的(ランダム)に圧縮変形して配線・配管材14及び舌片113aの表面に密着している。特には、各分割片126が周方向において溝部125を介して互いに独立しているので、隣接する分割片126の先端面(内周面)が周方向の位置に応じて異なる形状で変形している。また、各分割片126が全体として径方向外側に潰れるように圧縮変形することで、分割片126(スポンジ体121)の一部が(原形状において隣接する分割片126を隔てる)溝部125を埋めている。つまり、溝部125の空間が分割片126の不規則な形状への圧縮変形をより一層促進している。そして、当該先端面が配線・配管材14及び舌片113aに密着して径方向(又は高さ方向)に圧縮変形した各分割片126が周方向(又は幅方向)に不規則に拡がることで、隣接する分割片126同士が周方向に隙間なく当接している。その結果として、閉塞部材120は、配線・配管材14と耐火具本体110との間隙を隙間なく閉塞している。
【0056】
図示しないが、配線・配管材14が巻き癖により曲がって配設されたとしても、各分割片126が互いに周方向に独立して自由に変形することから、上記と同様に、閉塞部材120は、配線・配管材14と耐火具本体110との間隙を隙間なく閉塞し得る。すなわち、本実施形態の耐火構造10は、閉塞部材120の周方向に分割された内周部122によって、配線・配管材14の外面形状に合わせて貫通部13をより確実に閉塞したものある。
【0057】
次に、図9を参照して、本発明の一実施形態の耐火構造10を構築する方法を例示的に説明する。まず、配線・配管材14を防火区画体12の貫通部13内に貫通配置する。次いで、耐火具本体110内に閉塞部材120を装着した耐火具11を準備する。ここでは、耐火具本体110内周面に閉塞部材120の外周部123が両面テープや接着剤やパテ等で接着されている。耐火具本体110及び閉塞部材120を一体的に弾性変形させてスリット部114,127を開放し、この開放したスリット部114,127を介して閉塞部材120の挿通部に配線・配管材14を挿入する。そして、耐火具本体110及び閉塞部材120を弾性復帰させることにより、スリット部114,127が閉じて配線・配管材14を挿通部内に保持することができる。続いて、耐火具11を配線・配管材14に沿ってスライドさせて、耐火具本体110の筒状部111の貫通部13に配置すると共にフランジ部112を壁面に当接させる。耐火具11は、両面テープ等によって防火区画体12に固定される。そして、耐火具11が固定された状態で、閉塞部材120が耐火具本体110に対する配線・配管材14の軸方向への相対移動を許容することから、閉塞部材120を貫通部13内に維持しつつ、配線・配管材14を軸方向に移動させて敷設することが可能である。以上の工程によって、図1で示した耐火構造10が構築される。
【0058】
なお、ここで説明した方法は、一例にすぎず、当業者であれば、各工程の順序を入れ替え、又は、状況に応じて不要な工程を省略することも可能である。例えば、耐火具本体110を先に貫通部13に設置して、その一端又は他端の開口を介して、閉塞部材120、配線・配管材14をその長尺方向から挿通空間に挿し込むことも可能である。
【0059】
以下、本発明に係る一実施形態の耐火構造10(耐火具11)の作用効果について説明する。
【0060】
本実施形態の耐火構造10及び耐火具11によれば、配線・配管材14外周面を包囲する圧縮変形可能な閉塞部材120の内周部122には、該内周部122を周方向において複数の分割片126に分割する複数の溝部125が設けられている。そして、溝部125は、所定の溝深さで内周部122表面に形成され、隣接する分割片126を周方向において個別的に且つ自由に変形可能とするように分割している。これにより、溝部125によって周方向に分割された閉塞部材120の内周部122が、当接する対象の形状に合わせて、よりランダム且つ流動的に変形することが可能となる。特には、閉塞部材120の原形状において溝部125が隣接する分割片126を当接しないように隔てていることから、各分割片126が配線・配管材14の外周形状に合わせてより自由に変形することができる。すなわち、配線・配管材14の外周面の形状が巻き癖等の要因で単純でない場合であっても、閉塞部材120の内周部122は、各分割片126が配線・配管材14の比較的複雑な形状に個別に追従して圧縮変形することで、周方向において配線・配管材14の外周面に良好に密着することが可能である。したがって、本発明の耐火構造10では、配線・配管材14と耐火具本体110との間の間隙を閉塞部材120がより確実に閉塞することが可能である。
【0061】
以上のとおり、本発明の基本的な構成に係る実施形態を説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の技術的範囲の下で、種々の実施形態や変形例を取り得る。なお、各実施形態、変形例において、三桁で示される構成要素において下二桁が共通する構成要素は、特別な説明がない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
【0062】
(1)図10は、本発明の第2実施形態の耐火具の閉塞部材220を示している。閉塞部材220は、内周部222を周方向において複数の分割片226に分割する複数(本実施形態では8つ)の溝部225を備える。詳細には、各溝部225は、図10に示すように、正面視(又は横断面形状)において、スポンジ体221の内周部222表面から径方向外側に所定深さでに放射状に刻まれた溝であり、軸方向全体に亘って同一の断面形状で連続して延在している。また、各溝部225は、閉塞部材220の外周部223に到達しない径方向深さで形成されている。各溝部225は、内周部222において周方向に所定の幅を有する正面視V字形状を有している。これにより、閉塞部材220の圧縮変形前の原形状において、隣接する分割片226が当接せずに溝部225を隔てて離隔している。また、本実施形態では、複数の溝部225は、同一形状をそれぞれ有しているとともに周方向に等間隔に配置されている。他方、各分割片226の周方向幅(分割片226の筒軸を中心とする同一円周上での円弧長)が均一であるが、径方向長さ(分割片226の外周面側端部から先端面までの径方向の距離)が不均一である。すなわち、隣接する分割片226の径方向長さが異なる。特には、複数の分割片226は、相対的に径方向長さが大きい第1の分割片226-1と、相対的に径方向長さが小さい第2の分割片226-2とからなる。そして、第1の分割片226-1と第2の分割片226-2が周方向に交互に連続している。また、第1の分割片226-1の周方向幅が小さい先端部位の方が第2の分割片226-2の先端部位よりも径方向に変形し易い。つまり、変形し易い背の高い第1の分割片226-1と変形し難い背の低い第2の分割片226-2が交互に周方向に並んでいる。このように、各分割片226の径方向長さが不均一であることにより、閉塞部材220の内周部222を全体としてよりランダムに変形させることが可能となり、様々な配線・配管材の外周形状に対して高い密着性を発揮することが可能となる。
【0063】
(2)図11は、本発明の第3実施形態の耐火具の閉塞部材320を示している。閉塞部材320は、内周部322を周方向において複数の分割片326に分割する複数(本実施形態では16)の溝部325を備える。詳細には、各溝部325は、図11に示すように、正面視(又は横断面形状)において、スポンジ体321の内周部322表面から径方向外側に所定深さで放射状に刻まれた溝であり、軸方向全体に亘って同一の断面形状で連続して延在している。また、各溝部325は、閉塞部材320の外周部323に到達しない径方向深さで形成されている。各溝部325は、内周部322において周方向に所定の幅を有する正面視V字形状を有している。これにより、閉塞部材320の圧縮変形前の原形状において、隣接する分割片326が当接せずに溝部325を隔てて離隔している。また、本実施形態では、複数の溝部325は、同一形状をそれぞれ有しているとともに周方向に不均等に配置されている。他方、各分割片326の径方向長さ(分割片326の外周面側端部から先端面までの径方向の距離)は均一であるが、周方向幅(分割片326の筒軸を中心とする同一円周上での円弧長)が不均一である。周方向幅が小さい分割片326の方が径方向に変形し易い。そして、複数の分割片326は、幅が大きい方から順に第1~第4の分割片326-1,2,3,4から構成されている。閉塞部材320の正面視において中心角90度の円弧領域において、周方向において大きい第1の分割片326-1から第4の分割片326-4まで大きさ順に並んでいる。そして、平面視において点対称となるように4つの分割片326-1~4を含む各円弧領域が配置されている。このように、各溝部325の周方向の間隔が不均等であり、分割片326の周方向幅が不均一であることにより、閉塞部材320の内周部322を全体としてよりランダムに変形させることが可能となり、様々な配線・配管材の外周形状に対して高い密着性を発揮することが可能となる。
【0064】
(3)図12は、本発明の第4実施形態の耐火具の閉塞部材420を示している。閉塞部材420は、内周部422を周方向において複数の分割片426に分割する複数の溝部425を備える。図12に示すように、溝部の形状は、正面視V字形状に限定されない。すなわち、溝部425は、内周側に開口する矩形の内側部分と、細長い錐状の外側部分とを組み合わせたものである。換言すると、分割片426は、2つの台形を組み合わせた先細りの形状を有している。当該形状の閉塞部材420は、配線・配管材の外周面に比較的深い細溝がある場合に選択されると有利である。また、本実施形態の閉塞部材420は、図12(c)に示すように、原形状でシート状であるが、設置時に筒状に巻かれることにより、図12(a),(b)に示す円筒形状に変形する。
【0065】
(4)図13は、本発明の第5実施形態の耐火具の閉塞部材520を示している。閉塞部材520は、内周部522を周方向において複数の分割片526に分割する複数の溝部525を備える。本実施形態の閉塞部材520では、図13に示すように、分割片526は、U字状の隆起として形成されており、溝部525の径方向深さが全体の径に対して小さい。当該形状の閉塞部材520は、配線・配管材の外周面に細かい多くの凹凸がある場合に選択されると有利である。
【0066】
(5)図14は、本発明の第6実施形態の耐火具の閉塞部材620を示している。閉塞部材620は、内周部622を周方向において複数の分割片626に分割する複数の溝部625を備える。本実施形態の閉塞部材620では、図14に示すように、溝部625は、周方向に有意な幅をもたない切り込みとして形成されている。そして、原形状において、隣接する分割片626が当接している。当該形状の閉塞部材620において、所定幅を有する溝部と比べて、分割片626の変形の自由度が低いが、少なくとも、複数の分割片626は周方向において互いに個別的に圧縮変形して配線・配管材の外周面に密着可能である。なお、当該実施形態の閉塞部材620では、スリット部が省略されている。
【0067】
(6)図15は、本発明の第7実施形態の耐火具の閉塞部材720を示している。閉塞部材720は、内周部722を周方向において複数の分割片726に分割する複数の溝部725を備える。本実施形態の閉塞部材720では、図15に示すように、溝部725は、閉塞部材720の軸方向全体でなく、軸方向の一部の範囲で延在している。すなわち、溝部725及び分割片726は、軸方向の特定の箇所に形成されてもよい。当該形状の閉塞部材720では、配線・配管材の分割片726の先端面が当接する箇所において、複数の分割片726は周方向において互いに個別的に圧縮変形して配線・配管材の外周面に密着可能である。なお、当該実施形態の閉塞部材720では、スリット部が省略されている。
【0068】
(7)図16は、本発明の第8実施形態の耐火具の閉塞部材820を示している。閉塞部材820は、内周部822を周方向において複数の分割片826に分割する複数の溝部(分断部)825を備える。各溝部825は、スポンジ体821を径方向に切断又は分断するように内周部822から外周部823にかけて延在し、複数の分割片826が互いに完全に分離している。すなわち、閉塞部材820(スポンジ体821)の壁部を径方向に沿って切断する溝部825によって、複数の分割片826がブロック状に周方向に分離している。これにより、各分割片826の圧縮変形における独立性をより向上させて、配線・配管材と耐火具本体との間の閉塞性を高めることができる。また、好ましくは、耐火具本体にブロック状の各分割片826を接着等により固定すると作業性が向上する。
【0069】
(8)図17は、本発明の第9実施形態の耐火具の閉塞部材920を示している。閉塞部材920は、内周部922を周方向において複数の分割片926に分割する複数の溝部925を備える。各溝部925は、閉塞部材920を径方向に切断するように閉塞部材920の内周部922から外周部923にかけて延在し、複数の分割片926が互いに完全に分離している。すなわち、閉塞部材920(スポンジ体921)の壁部を径方向に切断する溝部925によって、複数の分割片926がブロック状に周方向に分離している。さらに、閉塞部材920は、複数の分割片926のうちの隣接する分割片926を外周側で連結する連結シート(連結体)929をさらに備える。連結シート929は、不織布等から選択され得る。連結シート929が分離した各分割片926を閉塞部材920の外周部923の外側で連結することにより、各分割片926の圧縮変形における独立性を維持しつつ、閉塞部材920の携帯や施工が容易となる。なお、連結シートは、複数の分割体のうち一部の分割体を連結するものであってもよい。また、連結体は、シート状でなくてもよく、ステープルなどの金属片であってもよい。
【0070】
(9)本発明の閉塞部材は、図示した上記形態以外にも種々の形状を取り得る。例えば、閉塞部材の溝部の断面形状(例えば、周方向幅又は径方向深さ)が、軸方向において変化してもよい。また、閉塞部材は、溝部の周方向幅、間隔及び径方向深さ、並びに、分割片の周方向幅、径方向長さの一部又は全てが不規則に形成されたものであってもよい。さらに、閉塞部材の内周部及び外周部の横断面形状は、円周形状に限定されず、長円、楕円、多角形状、歪な形状等の任意の形状であってもよく、配線・配管材や貫通部の形態に応じて最適に選択され得る。閉塞部材は、例えば、テーパー形状などの軸方向において一様でない形状を有してもよい。
【0071】
(10)図18は、本発明の別実施形態の耐火構造100の断面図を示している。耐火構造100には、建築物の防火区画体102を軸方向に貫通して形成された貫通部103に配線・配管材104が挿通され、貫通部103の内周面と配線・配管材104の外周面との間に耐火具101が設けられてなる。耐火具101は、熱により膨張する熱膨張性材料からなり、貫通部103内に固定され、配線・配管材104の外周面を所定の間隙を空けて包囲する耐火具本体1010と、配線・配管材104を内挿して耐火具本体1010と配線・配管材104との間隙を閉塞するように圧縮変形した閉塞部材1020と、貫通部103の内周面と耐火具本体1010の外周面との間に配置される外枠1030とを備える。本実施形態では、耐火具本体1010は、フランジのない筒状体として形成されている。すなわち、耐火具本体1010は、筒状部1011と閉鎖部1013(舌片1013a)とを備えてなる。外枠1030は、耐熱性の金属片からなり、耐火具本体1010を内挿する筒部1031、及び、筒部1031外周から突出したフランジ部1032を有する。本実施形態では、外枠1030のフランジ部1032を貫通部103周縁に当接させることで外枠1030を貫通部103に対して容易に配置することが可能であり、且つ、貫通部103の内周面形状や表面状態を問わずに外枠1030の筒部1031内に耐火具本体1010を安定的に保持することが可能である。そして、当該変形例においても、本発明の作用効果を発揮し得ることは云うまでもない。すなわち、当業者の想定し得る限り、本発明の耐火構造は任意に修正又は改変可能である。
【0072】
(11)上記実施形態の閉塞部材において、複数の分割片のうちの隣接する分割片が材料的に異なる圧縮率を有してもよい。スポンジ体の材料密度や材質を部分的に変化するように制御することによって、隣接する分割片の圧縮率を変化させることができる。例えば、異なる圧縮率を有する材料で分割片を形成した上で分割片を一体的に周方向に接着するか、異なる圧縮率の分離した分割片を図16,17のように周方向に並べることで、隣接する分割片の圧縮率を変化させることができる。すなわち、隣接する分割片が異なる圧縮率で変形することにより、閉塞部材の内周部を全体としてよりランダムに変形させることが可能となり、様々な配線・配管材の外周形状に対して高い密着性を発揮することが可能となる。特には、図10の閉塞部材220の形態において、径方向に長い(背の高い)第1の分割片226-1の圧縮率を径方向に短い(背の低い)第2の分割片226-2よりも高くすることが好ましい。すなわち、閉塞部材220の内周部222において、第2の分割片226-2よりも内側に突出する第1の分割片226-1の方が、配線・配管材の外面に対して、相対的に至近距離から強く当接し易い。そこで、第1の分割片226-1の圧縮率(圧縮し易さ)を相対的に高めることにより、閉塞部材220の内周部222が配線・配管材に全体としてバランス良く密着することが可能となる。
【0073】
(12)上記実施形態の耐火具において、耐火具本体は、熱膨張性ゴムに限らず、所定のクッション性を有する熱膨張性発泡体であってもよい。例えば、耐火具本体は、閉塞部材と同じ材料や類似の材料で形成されてもよい。また、同一材料の耐火具本体及び閉塞部材が一体的に保持されてもよい。さらに、耐火具本体は、熱膨張性部材と非熱膨張部材からなる2部品以上で構成されてもよい。
【0074】
(13)上記一実施形態の耐火具において、耐火具本体及び閉塞部材は、配線・配管材を径方向から内部に配置すべくスリット部を有するが、当該スリット部を設ける代わりに、耐火具本体又は閉塞部材を軸方向に沿って2つに分割された半割状で形成してもよい。この場合、配線・配管材を挟むように半割体を接合することにより、配線・配管材を内部に配置可能である。
【0075】
(14)本発明の耐火具本体は、上記実施形態の形態に限定されない。耐火具本体の横断面形状は、円環形状に限定されず、長円、楕円、多角形状、歪な形状等の任意の形状であってもよく、配線・配管材や貫通部の形態に応じて最適に選択され得る。また、耐火具本体は、例えば、テーパー形状などの軸方向において一様でない形状を有してもよい。さらに、耐火具本体から舌片(閉鎖部)が省略されてもよい。あるいは、舌片(閉鎖部)は、例えば、壁表側の軸方向一端など、上記実施形態とは異なる位置に形成されてもよい。
【0076】
(15)上記実施形態の耐火構造では、1本の配線・配管材が耐火具に内挿されているが、複数本の配線・配管材が耐火具に内挿されてもよい。多数の配線・配管材を貫通部に挿通させて配置する場合、配線・配管材の束に閉塞部材の内周部形状を追従変形させるべく、閉塞部材の内周部の径を各配線・配管材の径に対して相対的に小さくすることが好ましい。例えば、配線・配管材が多量である場合、スポンジ体の圧縮量を増加させるように閉塞部材の内周部の径を(針の径ほどに)極小に定めてもよい。他方、配線・配管材が1本ないし少量である場合、上記実施形態のように、配線・配管材の径に合わせて閉塞部材の内周部の径を定めてもよい。
【0077】
(16)上記実施形態では、耐火具本体が熱膨張性材料で構成され、閉塞部材が熱膨張性材料又は非熱膨張性材料で構成されている。しかしながら、耐火具本体が、金属筒(例えば、図18の外枠1030を参照)などの非熱膨張の難燃又は耐熱材料により構成され、閉塞部材が熱膨張性材料で構成され得る。
すなわち、前記耐火具は、
非熱膨張性の難燃(耐熱)材料からなり、前記貫通部内に固定され、前記配線・配管材の外周面を所定の間隙を空けて包囲する耐火具本体と、
前記配線・配管材を内挿して前記耐火具本体と前記配線・配管材との間隙を閉塞するように圧縮変形した熱膨張性の閉塞部材と、を備え、
前記閉塞部材は、前記配線・配管材の外周面と対面する前記閉塞部材の内周部を軸方向に分割する複数の溝部と、前記複数の溝部の間に形成された複数の分割片と、を備え、前記複数の分割片が軸方向において互いに個別的に圧縮変形して前記配線・配管材の外周面に密着していることを特徴とする。
当該形態の耐火具においても上記実施形態と同様に、圧縮変形可能な閉塞部材の内周部には、該内周部を周方向において複数の分割片に分割する複数の溝部が設けられていることから、配線・配管材と耐火具本体との間の間隙を閉塞部材がより確実に閉塞することが可能である。
【0078】
上述した各実施形態及び変形例の一部又は全ての特徴が組み合わされて、耐火構造、耐火具及び閉塞部材に適用されてもよいことは云うまでもない。
【0079】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0080】
10 耐火構造
11 耐火具
12 防火区画体
13 貫通部
14 配線・配管材
110 耐火具本体
111 筒状部
112 フランジ部
113 閉鎖部
113a 舌片
114 スリット部
120 閉塞部材
121 スポンジ体
122 内周部
123 外周部
124 シート体(摩擦抵抗軽減部材)
125 溝部(径方向溝部)
126 分割片
127 スリット部
929 連結シート(連結体)
1030 外枠
1031 筒部
1032 フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図17
図18