(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】改良されたセパレータ、鉛酸電池、およびそれと関連する方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20230727BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20230727BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20230727BHJP
H01M 50/44 20210101ALI20230727BHJP
H01M 50/466 20210101ALI20230727BHJP
H01M 50/411 20210101ALI20230727BHJP
H01M 50/454 20210101ALI20230727BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20230727BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20230727BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/417
H01M50/457
H01M50/44
H01M50/466
H01M50/411
H01M50/454
H01M50/434
H01M50/463 B
(21)【出願番号】P 2021197867
(22)【出願日】2021-12-06
(62)【分割の表示】P 2018543375の分割
【原出願日】2017-02-17
【審査請求日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】PCT/US2016/018217
(32)【優先日】2016-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505458359
【氏名又は名称】ダラミック エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ミッタル,スレンドラ クマール
(72)【発明者】
【氏名】ナイーハ,ムハンマド
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/058240(WO,A1)
【文献】特表2006-508497(JP,A)
【文献】特開平06-302313(JP,A)
【文献】特開平06-272189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/451
H01M 50/417
H01M 50/457
H01M 50/44
H01M 50/466
H01M 50/411
H01M 50/454
H01M 50/434
H01M 50/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛酸電池において、フロート充電を減らし、水電解を減らし、および/または水損失率を減らすための電池セパレータであって、
少なくとも5.0g/m
2の密度
を有する非イオン性界面活性剤である少なくとも1つの添加剤と、
少なくとも1.0g/m
2の密度の少なくとも1つの金属塩と
の少なくとも1つを有する多孔質膜を含み、
前記少なくとも1つの添加剤および/または前記少なくとも1つの金属塩が前記多孔質膜上にコーティングとして存在し、前記少なくとも1つの金属塩がZnSO
4塩を含む、前記電池セパレータ。
【請求項2】
前記多孔質膜が、ポリエチレンを含む、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項3】
前記多孔質膜が、超高分子量ポリエチレンを含む、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項4】
前記金属塩が、1.0g/m
2の密度で存在する、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項5】
前記添加剤および前記金属塩の均一層を含む、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項6】
前記多孔質膜と隣り合う前記添加剤の層、および前記添加剤の層と隣り合う前記金属塩の層を含む、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項7】
さらに繊維質層を含む、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項8】
前記繊維質層が、0.3~1.25mmの厚さである、請求項
7に記載の電池セパレータ。
【請求項9】
前記多孔質膜が、断片、スリーブ、ラップ、または封筒形状である、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項10】
鉛酸電池において、フロート充電を減らし、水電解を減らし、および/または水損失率を減らすための電池セパレータであって、
5.0~10.0g/m
2
の密度を有する非イオン性界面活性剤である添加剤と、
1.0~7.5g/m
2の密度の金属塩と
を有する多孔質膜を含み、
前記少なくとも1つの添加剤および/または前記少なくとも1つの金属塩が前記多孔質膜上にコーティングとして存在し、前記少なくとも1つの金属塩がZnSO
4塩を含む、前記電池セパレータ。
【請求項11】
請求項1に記載の電池セパレータを含む鉛酸電池。
【請求項12】
請求項1に記載の電池セパレータを含み、低いフロート電流、低減した水損失、低減した故障率、または低減した増加内部抵抗の少なくとも1つによって特徴付けされた鉛酸電池。
【請求項13】
請求項1に記載の電池セパレータを提供することを含む、鉛酸電池における故障を減らす方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2016年2月17日出願の国際出願番号PCT/US2016/ 018217に対する優先権およびその利益を主張する。
【0002】
少なくとも選択された実施態様によれば、本開示または発明は、新規のまたは改良されたセパレータ、特に鉛酸電池用のセパレータに関する。少なくとも選択された実施態様によれば、本開示または発明は、新規のまたは改良されたセパレータ、電池セパレータ、電池、セル、システム、車両、および/またはそのようなセパレータ、電池セパレータ、セル、システム、および/または電池の製造、および/または使用方法に関する。少なくとも特定の実施態様によれば、本開示または本発明は、鉛酸電池用の改良されたセパレータ、および/またはそのような改良されたセパレータを有するかかる電池を使用する改良された方法に関する。さらに、電池寿命を延ばし、電池の故障を低減し、水損失を低減し、フロート電流を低下させ、内部抵抗増加を最小化し、濡れ性を増加させ、酸層化を低減し、酸拡散を改善し、鉛酸電池の均一性を改良する方法、システム、処理および電池セパレータが本明細書に開示される。少なくとも特定の実施態様によれば、本開示または本発明は、セパレータが改良された機能性コーティングを含む鉛酸電池用の改良されたセパレータに関する。
【背景技術】
【0003】
電圧低下は、一般的な鉛酸電池の寿命にわたってしばしば観察される。鉛酸電池がサイクルされると、特に過充電の期間中、電解液中に存在する水が水素ガスと酸素ガスに可逆的に分割され得る。しかし、システムから失われた水素および酸素ガスは、逆反応に利用できず、時間の経過とともに電池の水位が低下する。このような水の電気分解および水位の低下は、水損失と呼ばれる。水の損失は、電池の容量の枯渇および低下、グリッド腐食、硫酸化などをもたらし、最終的に電池セパレータの分解および電池の故障に寄与する。水の電気分解の率は、充電レベルと相関する。フロート充電が高いほど、電気分解率が高くなり、こうして水損失率が高くなる。フロート充電を低減させた電池は、電解が減少し、それに対応して水損失率が低下する。
【0004】
亜鉛は、鉛酸電池の水損失を低減するための電池添加剤として研究されてきた。米国特許第4,086,392号(特許文献1)および国際公開第2010/058240号(特許文献2)は、グリッド材料または電解質のいずれかに亜鉛化合物を添加することにより、フロート電流を低減し、それによって水の消費および水損失を低減することを記載している。電解液中の亜鉛化合物の分散は水損失を減少させたが、この方法は、製造操作において付加的な処理工程を必要とするため、商業的環境において実現することは困難である。さらに、電解液中の亜鉛化合物の有効性は、セパレータの機能性コーティングに大きく依存していた。したがって、追加の製造プロセスを導入する必要がなくなるように、セパレータ自体にこの特徴を有することが望ましい。
【0005】
減少した水損失および/またはフロート充電を有する電池が依然として必要とされている。上述の必要性を満たす電池部品が依然として必要とされている。容易に製造することができ、既存の電池製造作業に容易に組み込むことができるような部品の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4,086,392号明細書
【文献】国際公開第2010/058240号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
少なくとも選択された実施態様によれば、本開示または本発明は、上記の問題または要求に対処することができるか、または上述の問題を克服する改良された電池セパレータを提供することを目的とする。例えば、電池の寿命を延ばし、電池の故障を減らし、水損失を減らし、フロート充電電流を低下させ、内部抵抗の増加を最小化し、濡れ性を増加させ、酸層化を低減し、酸拡散を改良し、および/または鉛酸電池の均一性を改良することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
少なくとも選択された実施態様によれば、本開示または本発明は、新規のまたは改良されたセパレータ、特に鉛酸電池用のセパレータに関する。少なくとも選択された実施態様によれば、本開示または本発明は、新規のまたは改良されたセパレータ、電池セパレータ、電池、セル、システム、車両、および/またはそのようなセパレータ、電池セパレータ、セル、システム、および/または電池の製造、および/または使用方法に関する。少なくとも特定の実施態様によれば、本開示または本発明は、鉛酸電池用の改良されたセパレータ、および/またはそのような改良されたセパレータを有するかかる電池を使用する改良された方法に関する。さらに、バッテリ寿命を延ばし、電池の故障を減らし、水損失を低減し、フロート電流を低下させ、内部抵抗増加を最小化し、濡れ性を増加させ、酸層化を低減し、酸拡散を改良し、および/または鉛酸電池の均一性を改良する方法、システム、処理および電池セパレータが、本明細書に開示されている。少なくとも特定の実施態様によれば、本開示または本発明は、改良された機能性コーティングを含む鉛酸電池用の改良されたセパレータに関する。
【0009】
少なくとも特定の態様、側面または目的によれば、本開示または発明は、鉛酸電池用の改良されたセパレータおよび/またはそのような改良されたセパレータを有するそのような電池を使用する改良された方法に関するか、またはそれらを提供する。少なくとも選択された実施態様によれば、本開示または本発明は、上記の課題またはニーズに対処することができ、および/または新規のまたは改良された鉛酸電池を提供することができる。少なくとも選択された実施態様によれば、本開示または発明は、新規のまたは改良されたセパレータ、電池セパレータ、鉛酸電池セパレータ、電池、セル、および/またはそのようなセパレータ、電池セパレータ、鉛酸電池セパレータ、セル、および/または電池を製造、および/または使用する方法に関する。さらに、バッテリ寿命を延長し、電池の故障、水損失を減少し、濡れ性を増加し、酸層化を減少し、酸拡散を改良し、および/または鉛酸電池の均一性を改良するための方法、システムおよび電池セパレータが本明細書に開示されている。少なくとも特定の実施態様によれば、本開示または発明は、改良された機能性コーティングを含む、鉛酸電池用の改良されたセパレータに関する。
【0010】
少なくとも特定の選択された態様によれば、鉛酸電池におけるフロート充電電流の減少を可能にする微多孔セパレータが提供される。
【0011】
少なくとも特定の選択された態様によれば、鉛酸電池における水損失を減少させる微多孔セパレータが提供される。
【0012】
セパレータは、界面活性剤および/または金属塩のような1つまたは複数の性能向上添加剤を、他の添加剤または薬剤、残留油および充填剤とともに含有することができる。このような性能向上添加剤は、セパレータの酸化を低減し、水損失をさらに低減し、フロート充電電流を低下させ、内部抵抗の増加を最小限にし、および/または膜を横切るイオンの輸送を促進することができる。
【0013】
すべての図において、本開示または本発明の実施態様のセパレータを有するものを含む、様々なセパレータを有する試験された電池の結果は、20時間の放電速度で75Ahの容量を有する、充電電圧14.4V、試験温度60℃で行った自動車用電池のものであった。電池は84日間試験された。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、5つの異なるセパレータ態様を含む試験電池に対する21日の間隔で84日間にわたって水損失データを示すチャートである。
【
図2】
図2は、5つの異なるセパレータ態様を含む試験電池に対する21日の間隔で84日間にわたって内部抵抗データを示すチャートである。
【
図3A】
図3Aは、5つの異なるセパレータ態様を含む試験電池に対する21日の間隔で84日間にわたってフロート電流データを示すチャートである。
【
図3B】
図3Bは、5つの異なるセパレータ態様を含む試験電池に対する21日の間隔で84日間にわたってフロート電流データを示すチャートである。
【
図3C】
図3Cは、5つの異なるセパレータ態様を含む試験電池に対する21日の間隔で84日間にわたってフロート電流データを示すチャートである。
【
図3D】
図3Dは、5つの異なるセパレータ態様を含む試験電池に対する21日の間隔で84日間にわたってフロート電流データを示すチャートである。
【
図4】
図4は、試験の84日間の終わりに試験電池サンプルの3つにおいて、全有機化合物(TOC)を示すチャートである。
【
図5】
図5は、試験の84日間の終わりに試験電池サンプルの3つにおいて、化学的酸素要求量(COD)を示すチャートである。
【
図6】
図6は、少なくともセパレータの部分およびその片側のガラスマットの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
少なくとも選択された実施態様によれば、おそらく好ましい本発明のセパレータは、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、PVC、天然または合成ゴム、合成木材パルプ(SWP)、ガラス繊維、セルロース系繊維、またはそれらの組み合わせなどの天然または合成の材料から製造された、多孔質膜(約1μm未満の細孔を有する微多孔膜、メソポーラス膜、または約1μmより大きい細孔を有するマクロ多孔質膜)を包含し、より好ましくは熱可塑性ポリマーから製造された微孔質膜を包含する。好ましい微多孔膜は、約0.1μm(100ナノメートル)の細孔直径および約60%の多孔度を有し得る。熱可塑性ポリマーは、原則として、鉛酸蓄電池に使用するのに適した全ての耐酸性熱可塑性材料を含むことができる。好ましい熱可塑性ポリマーとしては、ポリビニルおよびポリオレフィンを包含する。ポリビニルには、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)を包含する。ポリオレフィンとしては、例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン等を包含する。1つの好ましい膜の実施態様は、充填剤(例えば、シリカ)とUHMWPE(および任意に残留油)との混合物を包含し得る。
【0016】
多孔質膜層は、ポリプロピレン、エチレン-ブテンコポリマー、好ましくはポリエチレン、より好ましくは高分子量ポリエチレン、すなわち少なくとも600,000の分子量を有するポリエチレン、さらにより好ましくは超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、すなわち少なくとも1,000,000、特に4,000,000超、および最も好ましくは5,000,000~8,000,000の分子量(粘度測定によって測定され、マルゴリーの式によって計算される)を有するポリエチレン、実質的に0の標準的な負荷メルトインデックス(標準荷重2,160gを使用してASTM D 1238(条件E)に規定されるように測定された)および600ml/g以上、好ましくは1,000ml/g以上、より好ましくは2,000ml/g以上、最も好ましくは3,000ml/g以上(デカリン100g中のポリオレフィン0.02gの溶液中130℃にて測定)の粘度数である、などのポリオレフィンを包含し得る。
【0017】
少なくとも1つの実施態様によれば、多孔質膜は、加工油およびシリカと混合された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を包含し得る。少なくとも1つの実施態様によれば、微多孔膜は、加工油、添加剤およびシリカと混合された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を包含し得る。混合物はまた、セパレータ技術分野で一般的であるような少量の他の添加剤または薬剤(湿潤剤、着色剤、帯電防止添加剤など)を包含してもよい。微多孔ポリマー層は、8~100体積%のポリオレフィン、0~40体積%の可塑剤および0~92体積%の不活性充填材料の均質混合物であってもよい。充填剤は、乾燥した微粉シリカであることができる。好ましい可塑剤は石油である。可塑剤は、ポリマー/充填剤/可塑剤組成物から除去するのが最も簡単な成分であるので、電池セパレータに多孔性を付与するのに有用である。いくつかの実施態様において、多孔質膜は、約30重量%のシリカを約10重量%のUHMWPEと、約60重量%の加工油とを押出機中で混合することによって製造することができる。
【0018】
微多孔膜は、成分を加熱押出機を通し、押出機によって生成された押出物をダイを通して2つの加熱されたカレンダーロールによって形成されたニップに通して連続ウェブを形成し、相当量の加工油をウェブから溶媒の使用によって抽出し、抽出されたウェブを乾燥させ、所定の幅のレーンにウェブをスリットし、レーンをロールに巻き取ることにより、製造され得る。カレンダーロールは、リブ、鋸歯、エンボスなどを膜に付与するために様々な溝パターンで刻むことができる。別法として、または追加的に、リブなどは、追加の適切な溝を有するカレンダーロールまたはプレスに押出膜を通すことによって、多孔質膜に付与することができる。
【0019】
微多孔ポリマー層は、直径が1μm未満の平均孔サイズを有することができる。好ましくは、細孔の50%超が直径0.5μm以下である。細孔の少なくとも90%が0.5μm未満の直径を有することが特に好ましい。微多孔ポリマー層は、0.05~0.5μm、好ましくは0.1~0.2μmの範囲内の平均孔サイズを有することが好ましい。
【0020】
いくつかの実施態様において、添加剤は界面活性剤を含む。適切な界面活性剤としては、アルキルサルフェートの塩;アルキルアリールスルホネート塩;アルキルフェノール-アルキレンオキシド付加生成物;石鹸;アルキルナフタレンスルホネート塩;スルホコハク酸塩のジアルキルエステル;第四級アミン;エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマー;モノおよびジアルキルリン酸エステルの塩などの界面活性剤を包含する。添加剤は、ポリオール脂肪酸エステル、ポリエトキシル化エステル、ポリエトキシル化アルコール、アルキルポリグリコシドおよびそのブレンドなどのアルキル多糖類、アミンエトキシレート、ソルビタン脂肪酸エステルエトキシレート、オルガノシリコーン系界面活性剤、エチレン酢酸ビニルターポリマー、エトキシル化アルキルアリールリン酸エステル、脂肪酸の蔗糖エステルなどの非イオン系界面活性剤であり得る。
【0021】
特定の態様において、添加剤は式(I)の化合物によって表され得る。
【化1】
式中:Rは、酸素原子によって遮られ得る10~4200の炭素原子、好ましくは13~4200の炭素原子を有する非芳香族系炭化水素基である。
R
1=H,-(CH
2)
kCOOM
x+
1/xまたは-(CH
2)
k-SO
3M
x+
1/xであり、好ましくはHであり、ここで、k=1または2である。
Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、H
+、NH
4
+であり、ここで、全ての変数Mが同時にH
+を意味しない。
n=0または1;
m=0または10~1400の整数;
x=1または2
である。
【0022】
式(I)の化合物における炭素原子に対する酸素原子の比は、1:1.5~1:30であり、mとnは同時に0ではあり得ない。しかしながら、好ましくは変数nおよびmの1つのみが0とは異なる。
【0023】
非芳香族炭化水素基は、芳香族基を含有しないか、またはそれら自身が非芳香族基を表す基を意味する。炭化水素基は、酸素原子によって遮られ、すなわち、1または複数のエーテル基を含有する。
【0024】
Rは、好ましくは、酸素原子によって遮られ得る直鎖、または分枝状脂肪族炭化水素基である。飽和未架橋炭化水素基が極めてとりわけ好ましい。
【0025】
驚くべきは、電池セパレータの製造のために式(I)の化合物の使用を介して該化合物が酸化分解に対して効果的に保護され得る。
【0026】
式(I)による化合物を含有する電池セパレータが、好ましく、式中、
Rは、1~60個、好ましくは1~20個、極めてとりわけ好ましくは1~8個の酸素原子、とりわけ好ましくは式R2-[(OC2H4)p(OC3H6)q]-の炭化水素基で遮られていてもよい、10~180個、好ましくは12~75個、極めてとりわけ好ましくは14~40個の炭素原子を有する炭化水素基であり、ここで;
R2は、10~30個の炭素原子、好ましくは12~25個、とりわけ好ましくは14~20個の炭素原子を有するアルキル基であり;
pは、0~30、好ましくは0~10、とりわけ好ましくは0~4の整数であり;
qは、0~30、好ましくは0~10、とりわけ好ましくは0~4の整数であり;
化合物は、pとqの和が0~10、とりわけ0~4の場合がとりわけ好ましく;
n=1;および
m=0である。
【0027】
式R2-[(OC2H4)p(OC3H6)q]-はまた、鍵括弧内の基の配列が示されているものと異なる化合物も含むと理解すべきである。例えば、本発明によれば、括弧内の基が交互(OC2H4)および(OC3H6)基によって形成される化合物が適している。
【0028】
R2が10~20個、好ましくは14~18個の炭素原子を有する直鎖、分枝状アルキル基である添加剤がとりわけ有利であることが判明した。OC2H4は、とりわけOCH2CH2を表し、OC3H6は、OCH(CH3)2および/またはOCH2CH2CH3を表す。
【0029】
好ましい添加剤として、特定のアルコール(p=q=0;m=0)が記述され、第1級アルコールが好ましく、脂肪族アルコールエトキシレート(p=1~4、q=0)、脂肪族アルコールプロポキシレート(p=0;q=1~4)、および脂肪族アルコールアルコキシレート(p=1~2;q=1~4)、第1級アルコールのエトキシレートが好ましい。脂肪族アルコールアルコキシレートは、例えば、対応するアルコール類とエチレンオキシド、またはプロピレンオキシドとの反応を介して入手可能である。
【0030】
水および硫酸に不溶または難溶であるタイプm=0の添加剤は、とりわけ有利であることが判明した。
【0031】
好ましいものはまた、式(I)による化合物を含む添加剤であり、ここで;
Rは、20~4200個、好ましくは、50~750個および極めてとりわけ好ましくは80~225個の炭素原子を有するアルカン基である;
Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属イオン、H+、またはNH4
+、とりわけLi+、Na+、K+またはH+であり、ここで、変数Mのすべてが同時にH+を意味しない。
n=0;
mは、10~1400の整数;および
x=1または2である。
【0032】
好適な添加剤としては、酸基が少なくとも部分的に、すなわち好ましくは40%、とりわけ好ましくは80%中和されたポリアクリル酸、ポリメタクリル酸およびアクリル酸-メタクリル酸コポリマーが挙げられる。%は、酸基の数を意味する。完全に塩の形で存在するポリ(メタ)アクリル酸が極めてとりわけ好ましい。ポリ(メタ)アクリル酸とは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸およびアクリル酸-メタクリル酸共重合体を意味する。ポリ(メタ)アクリル酸が好ましく、特に1,000~100,000g/mol、とりわけ好ましくは1,000~15,000g/mol、極めてとりわけ好ましくは1,000~4,000g/molの平均分子量Mwを有するポリアクリル酸が好ましい。ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーおよびコポリマーの分子量は、ポリマーの水酸化ナトリウム溶液で中和された1%水溶液の粘度(Fikentscher定数)を測定することによって確かめられる。
【0033】
また、(メタ)アクリル酸以外に、特にコモノマーとしてエチレン、マレイン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよび/またはアクリル酸エチルヘキシルを含む(メタ)アクリル酸の共重合体も好適である。少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも80重量%の(メタ)アクリル酸モノマーを含有する共重合体が好ましく、そのパーセンテージはモノマーまたはポリマーの酸形態に基づく。
【0034】
ポリアクリル酸ポリマーおよびコポリマーを中和するために、水酸化カリウム、特に水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属水酸化物が、特に適している。
【0035】
多孔質膜は、添加剤、薬剤、充填剤、または添加剤類を用いて様々な方法で提供することができる。例えば、添加剤は、それが完成したとき(すなわち、抽出後)、および/または膜を製造するために使用される混合物または成分に添加されるとき、多孔質膜に適用される。好ましい実施態様によれば、添加剤または添加剤の溶液は、多孔質膜の表面に適用される。この変形は、特に、非熱安定性添加剤およびその後の抽出に使用される溶媒に可溶な添加剤の適用に適している。本発明による添加剤のための溶剤として特に適しているのは、メタノールおよびエタノールなどの低分子量のアルコール、ならびにこれらのアルコールと水との混合物である。この適用は、負極に面する側、正極に面する側または微多孔膜の両側で起こり得る。
【0036】
適用はまた、添加剤または添加剤の溶液中に微多孔膜を浸漬し、続いて場合によっては溶媒を除去すること、例えば乾燥によって行うことができる。このようにして、添加剤の適用は、例えば、セパレータ製造中にしばしば適用される抽出と組み合わせることができる。
【0037】
別の好ましい選択肢は、添加剤(単数または複数)を、熱可塑性ポリマー、場合によっては充填剤、および多孔質膜を製造するために使用される他の添加剤の混合物に混合することである。添加剤を含有する均質な混合物は、次いでウェブ形状の材料に成形される。
【0038】
添加剤は、少なくとも約0.5g/m2,1.0g/m2,1.5g/m2,2.0g/m2,2.5g/m2,3.0g/m2,3.5g/m2,4.0g/m2,4.5g/m2,5.0g/m2,5.5g/m2,6.0g/m2,6.5g/m2,7.0g/m2,7.5g/m2,8.0g/m2,8.5g/m2,9.0g/m2,9.5g/m2または10.0g/m2の密度にて存在し得る。添加剤はセパレータ上に約0.5-10g/m2,1.0-10.0g/m2,1.5-10.0g/m2,2.0-10.0g/m2,2.5-10.0g/m2,3.0-10.0g/m2,3.5-10.0g/m2,4.0-10.0g/m2,4.5-10.0g/m2,5.0-10.0g/m2,5.5-10.0g/m2,6.0-10.0g/m2,6.5-10.0g/m2,7.0-10.0g/m2,7.5-10.0g/m2,5.0-10.5g/m2,5.0-11.0g/m2,5.0-12.0g/m2,または5.0-15.0g/m2の密度にて存在し得る。添加剤は微多孔膜上に約6.0-10.0g/m2,6.5-9.5g/m2,6.5-9.0g/m2,6.5-8.5g/m2,6.5-8.0g/m2,または7.0-8.0g/m2の密度にて存在し得る。いくつかの態様において、添加剤は約7.5g/m2の密度にて存在し得る。いくつかの態様において、添加剤は微多孔膜上に約2.0-8.0g/m2、2.5-7.5g/m2、3.0-7.0g/m2、3.5-6.5g/m2、4.0-6.0g/m2、または4.5-5.5g/m2の密度にて存在し得る。いくつかの態様において、添加剤は約5.0g/m2の密度にて存在し得る。
【0039】
特定の選択された実施態様において、多孔質膜は金属塩を含有し得る。例示的な金属塩には、亜鉛およびビスマス化合物(それらの混合物を含む)を含有する。適切な対イオンには、硫酸塩、水酸化物、リン酸塩、テトラフルオロボレートおよびフッ化物を含有する。
【0040】
いくつかの実施態様において、金属塩は、ZnSO4またはBi2(SO4)3のような硫酸塩であり得る。特記しない限り、用語「ZnSO4」は、無水塩ならびにZnSO4・7H2Oのようなその水和物/溶媒和物を含有する。
【0041】
金属塩は、多孔質膜が完成したとき(すなわち抽出後)、および/または膜を製造するために使用される混合物に添加されたときに、適用することができる。好ましい実施態様によれば、金属塩の溶液は多孔質膜の表面に適用される。金属塩の溶媒として特に適しているのは、水または希硫酸である。この適用は、負極に面する側、正極に面する側または微多孔膜の両側で起こり得る。
【0042】
適用はまた、微多孔膜を金属塩の溶液に浸漬し、続いて、例えば乾燥することによって任意に溶媒を除去することによって行うことができる。このようにして、金属塩の適用は、例えば、セパレータ製造中にしばしば適用される抽出と組み合わせることができる。
【0043】
別の好ましい選択肢は、金属塩を、熱可塑性ポリマー、および任意に充填剤および多孔質膜を製造するために使用される他の添加剤の混合物に混合することである。次いで、金属塩含有均質混合物がウェブ状材料に成形される。
【0044】
金属塩は、上記添加剤と同じ層の多孔質膜に供給することができる。そのような実施態様において、金属塩および添加剤は、単一の溶液に組み合わされ、上記の1つ以上を使用して適用され得る。一般的に、そのような組み合わせの適用は、多孔質膜上に添加剤および金属塩の均質なコーティングをもたらす。他の実施態様において、金属塩は、添加剤とは別の層として適用することができる。添加剤は、金属塩が多孔質膜に適用される前または後のいずれかに、多孔質膜に適用され得る。そのような実施態様は、層状コーティングと呼ぶことができる。層状コーティングは必ずしも完全に互いに分離している必要はないことを理解されたい。すなわち、添加剤被覆層が金属塩被覆層にいくらか浸透することがあり、その逆もあり得る。特定の選択された実施態様において、本発明のセパレータは、添加剤層および金属塩層を有する多孔質膜を含有することができ、添加剤層は、多孔質膜と金属塩層との間にある。
【0045】
図1~5に示すように、添加剤と金属塩の両方のコーティングを有するセパレータを用いて調製された電池は、金属塩を含まないセパレータを有する電池と比較して、水損失の減少、内部抵抗の低減、フロート電流の減少を発揮する。また、添加剤および金属塩の別個の層を有するセパレータは、添加剤および塩の単一の組み合わせコーティングを有するセパレータと比較して、水損失の減少、内部抵抗の低減、およびフロート電流の減少を有すことができる。
【0046】
金属塩は、少なくとも約0.5g/m2、1.0g/m2,1.5g/m2,2.0g/m2,2.5g/m2,3.0g/m2,3.5g/m2,4.0g/m2,4.5g/m2,5.0g/m2,5.5g/m2,6.0g/m2,6.5g/m2,7.0g/m2,7.5g/m2,8.0g/m2,8.5g/m2,9.0g/m2,9.5g/m2または10.0g/m2の密度にて存在し得る。金属塩は、約0.5-10g/m2,0.5-8.0g/m2,0.5-7.0g/m2,1.0-7.0g/m2,1.0-6.0g/m2,2.0-6.0g/m2,2-5g/m2,2-4.0g/m2,2.5-4.0g/m2,または2.5-3.5g/m2の間の密度にてセパレータ上に存在し得る。いくつかの態様において、金属塩は、約3.0g/m2の密度にて存在する。
【0047】
特定の選択された実施態様において、充填剤は、1つ以上のゼオライトまたはPIMS材料をさらに含有し得る。ゼオライトを充填材料の1つとして混合物に添加し、それによって、複合材マット内に絡み合ったゼオライトを提供することができる。ゼオライトは、複合材を通る金属および半金属の移動を減少させ、それによって金属誘発酸化、アンチモン中毒などを低減する。特定の選択された実施態様において、セパレータは、PIMS材料に見出されるようなピロリン酸塩を含有し得る。魚骨由来のPIMS鉱物(市販のラボ粉砕魚粉など)は、金属イオンに対して高い親和性を有することが示されている。少なくとも特定の実施態様によれば、魚骨粉は、シリカの約1~20重量%、より好ましくは約2~10重量%、最も好ましくは約2重量%~5重量%の置換レベルでシリカの一部を置換するために添加されることが好ましい。少なくとも他の特定の実施態様によれば、粉砕した魚骨粉(粉砕魚粉)を添加して、シリカの約1~50重量%またはそれ以上、より好ましくは約5~30重量%、最も好ましくは約10~20重量%の置換レベルでシリカの一部を置換することが好ましい。
【0048】
選択されるいくつかの実施態様において、多孔質セパレータはリブを有することができる。多孔質膜は、長手方向リブと同様に膜の反対面に横方向交差リブを有することができる。交差リブは、長手方向リブに平行であってもよく、またはそれに対してある角度で配置されてもよい。例えば、交差リブは、長手方向リブに対して約90°、80°、75°、60°、50°、45°、35°、25°、15°または5°に向けることができる。交差リブは、長手方向のリブに対して約90-60°、60-30o、60-45o、45-30o、または30-0oに向けることができる。典型的には、交差リブは、負極に面する膜の面上にある。本発明のいくつかの実施態様において、リブ付き膜は、少なくとも約0.005mm、0.01mm、0.025mm、0.05mm、0.075mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、 0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、または1.0mmの横方向交差リブの高さを有する。本発明のいくつかの実施態様において、リブ付き膜は、約1.0mm、0.5mm、0.25mm、0.20mm、0.15mm、0.10mmまたは0.05mm以下の横方向交差リブの高さを有することができる。
【0049】
本発明のいくつかの実施態様において、リブ付き膜は、少なくとも約0.005mm、0.01mm、0.025mm、0.05mm、0.075mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、または1.0mmの横方向交差リブ幅を有し得る。 本発明のいくつかの実施形態では、リブ付き膜は、約1.0mm、0.5mm、0.25mm、0.20mm、0.15mm、0.10mmまたは0.05mm以下の横方向の交差リブ幅を有し得る。
【0050】
本発明のいくつかの実施態様において、リブ付き膜は、少なくとも約0.005mm、0.01mm、0.025mm、0.05mm、0.075mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、または1.5mmの長手方向のリブ高さを有し得る。
【0051】
本発明のいくつかの実施態様において、リブ付き膜は、少なくとも約0.005mm、0.01mm、0.025mm、0.05mm、0.075mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、または1.5mmの長手方向のリブ幅を有し得る。リブ付き膜は、約0.005-1.5mm、0.01-1.0mm、0.025-1.0mm、0.05-1.0mm、0.075-1.0mm、0.1-1.0mm、0.2-1.0mm、0.3-1.0mm、0.4-1.0mm、0.5-1.0mm、0.4-0.8mmまたは0.4-0.6mmの間の長手方向のリブ幅を有し得る。
【0052】
特定の選択された実施態様において、多孔質膜は、約0.10~0.15mmの横方向交差リブ高さ、および約0.1~0.15mmの長手方向リブ高さを有し得る。いくつかの実施態様において、多孔質膜は、約0.10~0.125mmの横方向交差リブ高さおよび約0.1~0.125mmの長手方向リブ高さを有し得る。
【0053】
微多孔膜は、少なくとも0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mmまたは1.0mmである、バックウェブ厚さを有し得る。リブ付きセパレータは、約1.0mm、0.9mm、0.8mm、0.7mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mmまたは0.1mm以下のバックウェブ厚さを有し得る。いくつかの態様において、微多孔膜は、約0.1-1.0mm、0.1-0.8mm、0.1-0.5mm、0.1-0.5mm、0.1-0.4mm、0.1-0.3mmの間のバックウェブ厚さを有し得る。いくつかの態様において、微多孔膜は、約0.2mmのバックウェブ厚さを有し得る。
【0054】
繊維質層は、少なくとも約0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mmまたは1.5mmの厚さで微多孔膜上に存在し得る。いくつかの態様において、繊維質層は、約0.1-1.5mm、0.5-1.5mm、0.75-1.5mm、0.75-1.25mmまたは1.0-1.25mmの間の厚さで微多孔膜上に存在し得る。
【0055】
図6は、少なくともセパレータ100の部分およびその片側のガラスマット110の略図である。セパレータ100は、膜の片側または両側にバックウェブ102およびリブ104を有する多孔質膜であり得る。かかるセパレータは、浸水した鉛酸電池に使用され得、ガラスマット110ありまたはなしで使用され得、またはガラスマット110をその両側に有し得る。
【0056】
本発明のセパレータは、シート状または封筒の形態で提供することができる。いくつかの実施態様において、少なくとも1つの繊維質層で少なくとも片側を覆うことができる微孔質膜が、ポケットまたは封筒として提供される。繊維質層が存在する場合、微多孔膜は繊維質層よりも表面積が大きいことが好ましい。従って、微多孔膜と繊維質層とを組み合わせる場合、繊維質層は微多孔層を完全に覆わない。ポケットまたは封筒の形成を容易にするヒートシール用の縁部を提供するために、膜層の少なくとも2つの対向する縁部領域が覆われないままであることが好ましい。セパレータはハイブリッド封筒を形成するように加工することができる。ハイブリッド封筒は、セパレータシートを半分に折り曲げ、セパレータシートの縁を合わせて封筒を形成する前、その間、またはその後に、1つまたは複数のスリットまたは開口部(封筒の基部または折り目の近くなどに)を形成することによって形成し得る。セパレータシートの一方の側をセパレータシートの他方の側に接触させるシームを形成するために、側部は溶接部または機械的シールを用いて一緒に接合される。溶接は、例えば、熱または超音波プロセスを用いて達成することができる。このプロセスは、底部で折り曲げられた端部と2つの側端部とを有する封筒形状をもたらす。
【0057】
封筒の形態で本明細書に開示されたセパレータは、封筒の折り畳まれたまたはシールされた折り目に沿って1つ以上のスリットまたは開口部を有することができる。開口部の長さは、全端部の長さの少なくとも1/50、1/25、1/20、1/15、1/10、1/8、1/5、1/4、または1/3であり得る。開口部の長さは、全端部の長さの1/50~1/3、1/25~1/3、1/20~1/3、1/20~1/4、1/15~1/4、1/15~1/5、または1/10~1/5であり得る。ハイブリッド封筒は、1~5個、1~4個、2~4個、2~3個または2個の開口部を有することができ、これらの開口部は、底縁部の長さに沿って均等に配置されても、されなくてもよい。封筒の角に開口部がないことが好ましい。セパレータが折り曲げられてシールされた後、スリットが切られて封筒が形成されてもよいし、多孔質膜が封筒に成形される前にスリットが形成されてもよい。
【0058】
本明細書で提供されるセパレータは、従来のセパレータから製造されるか、または従来のセパレータを用いて製造される電池と比較して、水損失が少なく、および/または低減されたフロー電流を有する電池の製造を可能にする。いくつかの実施態様において、水損失は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%を超えて減少させ得る。いくつかの実施形態では、フロート電流は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%を超えて減少させることができる。開示されたセパレータを使用して製造された電池は、経時的に減少した内部抵抗の増加を示し、場合によっては増加した内部抵抗を示さない。
【実施例】
【0059】
以下の例は、下記の表1に記載される属性を有する5つの別個の電池セットに関する。試験したすべての電池は、20℃で容量75Ah、充電電圧14.4V、試験温度60℃の自動車用電池であった。電池を84日間試験した。
【0060】
【0061】
図1-3D:電池Aは、太い実線で示され、電池Bは、丸のデータ点の点線で示され、電池Cは、丸のデータ点の実線で示され、電池Dは、三角のデータ点の点線で示され、電池Eは、三角のデータ点の実線で示されている。
【0062】
ここで
図1を参照すると、累積水損失データ(グラム)は、84日間の試験期間にわたってチャート形式で示される。データは、21日間隔で採取した(21日目に試験、42日目に試験、63日目に試験、84日目に試験)。見れば分かるとおり、電池Cは、試験期間中に最も少ない量の水損失を示す。以下の表2は、試験期間中、21日毎に採取した累積水損失データを示す。これは
図1に示されたのと同じデータである。図から分かるとおり、水損失が最も少ない電池から最も多い水損失の順番は、以下の通りである。電池C;電池E;電池B;電池D;電池A。ZnSO
4添加剤と共に使用される界面活性剤添加剤が水損失の点で最良の性能を示したことを示している。
【0063】
【0064】
ここで
図2を参照すると、内部抵抗データ(mΩ単位)は、84日間の試験期間にわたってチャート形式で示される。データは、21日間隔で採取した(21日目試験、42日目試験、63日目試験、84日目試験)。下記の表3は、試験期間中、21日毎に採取した内部抵抗データを示す。これは
図2に示されたのと同じデータである。電池Aは最も低い内部抵抗で試験を開始したが、見れば分かるように、電池Cと電池Eは、試験期間中最も低い内部抵抗を示した。ZnSO
4添加剤と共に使用される界面活性剤添加剤が最良の性能を示したことを再度示している。
【0065】
【0066】
ここで
図3A~
図3Dを参照すると、様々なセパレータの実施態様を有する5つの試験電池の84日間にわたるフロート電流データを示すチャートが示されている。21日目から84日目までの21日間隔で取られた電池のフロート電流結果を示す。
図3Aは、21日目のデータを示し、
図3Bは42日目のデータを示し、
図3Cは、63日目のデータを示し、
図3Dは84日目のデータを示す。これらのデータを比較すると、ZnSO
4を用いたセパレータを利用したバッテリは、他のバッテリよりも優れていることがわかる。さらに、界面活性剤とZnSO
4の二段階コーティングを利用した電池Cは、84日間の試験で最低のフロート充電電流を生じた。
【0067】
ここで
図4および
図5に移ると、電池A、電池Bおよび電池Dについて、総有機化合物(TOC)および化学的酸素要求量(COD)を測定した。これらの値が低いほど電池が良好に機能する。示されているように、第1の界面活性剤を有するセパレータを有する電池の電池Bは、界面活性剤も、または他の界面活性剤をも有さない電池よりも良好に機能した。
【0068】
水損失を低減し、バッテリ寿命を延ばすことに加えて、好ましいセパレータは、他の利点をもたらすようにも設計されている。組み立てに関して、セパレータは、曲げ剛性を最大にし、最高の製造生産性を保証するために、負の交差リブ設計を有する。高速組立およびその後の寿命の間の短絡を防止するために、セパレータは、標準的なPEセパレータと比較して優れた耐穿刺性および耐酸化性を有する。
【0069】
少なくとも特定の実施態様、側面または目的によれば、本開示または発明は、新規のまたは改良されたセパレータ、特に鉛酸電池用のセパレータ;新規のまたは改良されたセパレータ;電池セパレータ、電池、セル、システム、車両、および/またはそのようなセパレータ、電池セパレータ、セル、システムおよび/または電池の製造および/または使用の方法;鉛酸電池用の改良されたセパレータおよび/またはそのような改良されたセパレータを有するかかる電池の改良された方法;電池寿命の向上、電池の故障の低減、水損失の低減、フロート電流の低減、内部抵抗の増加の最小化、濡れ性の向上、酸層化の低減、酸拡散の改良、および/または鉛酸電池における均一性の改良のための方法、システム、処理、および電池セパレータ;鉛酸電池用の改良されたセパレータに関し、ここで、セパレータは、改良された機能性コーティングを含み、鉛酸電池において水損失を低減する改良された電池セパレータ、かかる改良されたセパレータを含む改良された鉛酸電池、長寿命の自動車鉛酸電池、ハイブリッド合金型自動車用電池、ハイブリッド合金平板インバーター電池、改良された浸水鉛酸電池など、乾式充電電池、および/または低減されたフロート充電および/または低下した電気分解および/または低下した水損失率などを有する電池を含む。
【0070】
本明細書には、新規のまたは改良されたセパレータ、電池セパレータ、鉛酸電池セパレータ、電池、セル、および/またはそのようなセパレータ、電池セパレータ、鉛酸電池セパレータ、セルおよび/または電池の製造および/または使用方法が開示される。少なくとも特定の実施態様によれば、本開示または発明は、鉛酸電池用の新規のまたは改良された電池セパレータに関する。さらに、本明細書には、電池寿命を延長し、水損失を低減し、フロート電流を低減し、内部抵抗の増加を最小限に抑え、故障率を低減し、酸層化の低減および/または少なくとも鉛酸電池の均一性の改良のための方法、システムおよび電池セパレータが開示される。少なくとも特定の実施態様によれば、本開示または発明は、改良されたコーティング、改良された配置、および/または同様のものを含む鉛酸電池用の改良されたセパレータに関する。
【0071】
本発明は、その精神および本質的な特性から逸脱することなく、他の実施態様で実施することができ、したがって、本発明の範囲を示すものとして、前述の明細書ではなく添付の特許請求の範囲を参照すべきである。
【0072】
さらに、本明細書に例示的に開示された本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素が存在しない場合に、適切に実施することができる。
【0073】
本発明は、その精神および本質的な特性から逸脱することなく、他の実施態様で実施することができ、したがって、本発明の範囲を示すものとして、前述の明細書ではなく添付の特許請求の範囲を参照すべきである。
【0074】
前述の構造および方法の記述は、説明のためにのみ提示されたものである。実施例は、最良の形態を含む例示的な実施態様を開示するために使用され、任意のデバイスまたはシステムを作成および使用し、組み込まれた方法を実行することを含む、当業者が本発明を実施することを可能にする。これらの例は網羅的であることを意図するものではなく、開示された正確なステップおよび/または形態に本発明を限定するものではなく、上記教示に照らして多くの修正および変形が可能である。本明細書に記載される特徴は、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書に記載の方法のステップは、物理的に可能な任意の順序で実施することができる。本発明の特許可能な範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定され、当業者に思い付く他の例を含むことができる。そのような他の例は、特許請求の範囲の文字通りの言葉と異ならない構造的要素を有する場合、またはそれらが請求項の文字通りの言葉との非実質的に相違する同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内とされる。
【0075】
添付の特許請求の範囲の組成物および方法は、本明細書に記載される特定の組成物および方法によって範囲が限定されるものではなく、特許請求の範囲のいくつかの態様の例示とし意図される。機能的に等価である組成物および方法はすべて、特許請求の範囲に入るものとする。本明細書に示され説明されたものに加えて、組成物および方法の様々な改変は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。さらに、本明細書に開示されている特定の代表的な組成物および方法のステップのみが具体的に記載されているが、組成物および方法のステップの他の組み合わせも、特に記載されていないとしても添付の特許請求の範囲に含まれる。したがって、ステップ、要素、構成要素、または構成成分の組合せが、本明細書で明示的に言及されてもよいし、以下で明示されてもよいが、明示されていないとしてもステップ、要素、構成要素および構成成分の他の組み合わせが含まれる。
【0076】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。範囲は、本明細書では、「約」と1つの特定の値、および/または「約」と別の特定の値から表現されてもよい。そのような範囲が表されるとき、別の実施態様は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値まで含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行する「約」の使用により、特定の値が別の実施態様を形成することが理解される。さらに、各範囲の終点は、他方の終点に関して重要であり、他方の終点とは無関係であることがさらに理解されるであろう。「任意の」または「任意に」とは、後に記載される事象または状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、前記記載には、前記事象または状況が起こる場合および起こらない場合が含まれることを意味する。
【0077】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」という用語および「comprising」および「comprises」などの単語の変形は、「含むがこれに限定されない」を意味し、例えば、他の添加剤、成分、整数、またはステップを排除する意図はない。用語「本質的に~からなる」および「~からなる」は、本発明のより具体的な実施態様を提供するために「含む(comprising)」および「包含する(including)」の代わりに使用することができ、また開示される。「例示的」は「~の一例」を意味し、好ましいまたは理想的な実施態様の指示を伝えることを意図するものではない。「などの」は、限定的な意味ではなく、説明的または例示的な目的のために使用される。
【0078】
特に明記されていない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される幾何学的形状、寸法などを表すすべての数字は、少なくとも均等論の適用を特許請求の範囲の適用に限定しようとするものではなく、重要な桁数および通常の丸めアプローチに照らして解釈されるべきである。
【0079】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、開示される発明が属する分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に引用される刊行物およびそれらが引用される資料は、参照により具体的に組み込まれる。
【0080】
さらに、本明細書に例示的に開示された本発明は、本明細書に具体的に開示されていない、任意の要素が存在しない場合に、適切に実施し得る。