(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】ハロニトロ芳香族の接触水素化のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 209/36 20060101AFI20230727BHJP
C07C 211/52 20060101ALI20230727BHJP
B01J 23/42 20060101ALI20230727BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20230727BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
C07C209/36
C07C211/52
B01J23/42 Z
B01J23/89 Z
C07B61/00 300
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021201689
(22)【出願日】2021-12-13
(62)【分割の表示】P 2018516837の分割
【原出願日】2016-09-30
【審査請求日】2021-12-13
(32)【優先日】2015-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501231613
【氏名又は名称】モンサント テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】カム-トゥ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エイチ・アン
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104130129(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101658788(CN,A)
【文献】特開平04-295449(JP,A)
【文献】米国特許第05068436(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロアミノ芳香族化合物を調製するためのプロセスであって:
該プロセスは、
水素と、ハロニトロ芳香族化合物を含む供給混合物とを、水素化ゾーンに供給し、
ここで、供給混合物は、酸を含む溶媒を更に含み;
前記ハロニトロ芳香族化合物を、支持体上に貴金属を含む水素化触媒の存在下で水素と反応させて、前記ハロアミノ芳香族化合物を含む反応生成物を生成
させ、ここで、水素化触媒は、少なくとも
500℃の温度で焼成され
る、
ことを含み、
ここで、焼成される、その上に貴金属を含む支持体は、還元剤を使用せずに貴金属を支持体上に堆積させることによって調製された非還元貴金属を含
んでもよい、
前記プロセス。
【請求項2】
前記酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸及びこれらの混合物からなる群から選択される有機酸を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記酸が、酢酸を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ハロニトロ芳香族化合物がハロニトロベンゼンを含み、前記ハロアミノ芳香族化合物がハロアニリンを含み、そして、プロセスが、前記反応生成物を
15℃以下の温度に冷却することをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記貴金属が、白金、パラジウムまたはその組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記貴金属が白金を含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記支持体が炭素を含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記水素化触媒が、最大寸法で10nmまでのサイズの白金金属粒子を含み、前記白金金属粒子の
50%(数基準)以下が最大寸法で2nm未満である、請求項6又は7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記水素化触媒が、合計触媒重量の
5重量%以下である白金ローディングを有する、請求項6~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記供給混合物が、脱ハロゲン化抑制剤として機能する添加剤を不含であるかまたは本質的に不含であり、及び/又は、
前記供給混合物が、マグネシウムの水酸化物または酸化物、脂環式アミン、及び酸性リン化合物を不含であるかまたは本質的に不含である、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロニトロ芳香族の接触水素化のためのプロセスに概して関する。特に、本
発明は、白金含有触媒による、2,5-ジクロロ(dicloro)ニトロベンゼンなど
のハロニトロ芳香族の2,5-ジクロロアニリンへの接触水素化のためのプロセスを含む
。本発明はまた、3,6-ジクロロ-2-メトキシ安息香酸(ジカンバ)を生成するため
のプロセスにも関する。
【背景技術】
【0002】
ハロニトロ芳香族化合物として、種々のモノ-及びジ-ハロ置換ニトロ芳香族が挙げら
れる。具体例として、とりわけ、クロロニトロ芳香族化合物、例えば2-、3-、及び4
-クロロニトロベンゼン;2,4-ジクロロ(dicloro)ニトロベンゼン;2,5
-ジクロロ(dicloro)ニトロベンゼン;3,4-ジクロロニトロベンゼンが挙げ
られる。ハロニトロ芳香族の接触水素化は、かなりの工業的重要性を有する反応である。
なぜなら、得られるハロアミノ芳香族化合物(例えば、ハロアニリン)は、ある特定の農
薬、医薬及びポリマーの生成における中間体として有用であるからである。例えば、2,
5-ジクロロアニリンは、農業雑草を含めた様々な望ましくない植生を制御するのに有用
である高度に有効かつ商業的に重要な除草剤である3,6-ジクロロ-2-メトキシ安息
香酸(その一般名称ジカンバによっても知られている)の生成における中間体として有用
であり得る。ジカンバを調製する従来の経済的な方法は、そのため、かなりの工業的重要
性を有する。
【0003】
ハロニトロ芳香族の接触水素化のための種々のプロセスは、米国特許第3,073,8
65号;同第3,145,231号;同第3,291,832号;同第4,020,10
7号;同第4,760,187号;及びKosak,「Hydrogenation o
f Haloaromatic Nitro Compounds」、Catalysi
s in Organic Synthesis,Academic Press,Lo
ndon,1980,107-117などの参照文献に記載されている。水素化プロセス
の際に典型的に遭遇される1つの問題は、ハロアミノ芳香族生成物の脱ハロゲン化を通し
ての所望のハロアミノ芳香族生成物への選択性の損失である。この問題を解決するための
試みは、触媒改質剤または添加剤を反応媒体に導入して脱ハロゲン化反応を抑制すること
に焦点を当てている。例えば、米国特許第3,073,865号は、脱ハロゲン化抑制剤
として反応媒体にマグネシウムの水酸化物または酸化物を添加することを記載している。
米国特許第3,145,231号は、脱ハロゲン化抑制剤としてピペラジン及びモルホリ
ンのような脂環式アミンを使用することを開示している。米国特許第4,020,107
号は、酸性リン化合物を導入して脱ハロゲン化反応を抑制している。米国特許第4,76
0,187号は、脱ハロゲン化も低減する、クロロニトロベンゼンをクロロアニリンにハ
ロゲン化するためのルテニウム-白金触媒を使用している。また、Kosakは、スルフ
ィド化白金触媒の使用が、脱ハロゲン化を最小化するためのより有効な手法の1つである
ことを教示している。
【0004】
これらのプロセスは、ハロニトロ芳香族化合物の脱ハロゲン化を最小にするのに有効な
ストラテジーである場合があるが、これらのプロセスは、反応媒体または触媒材料にさら
なる成分を導入している。ハロニトロ芳香族を水素化する工程を含む多工程プロセスにお
いて、反応混合物にさらなる成分を導入することは、下流のプロセス及び反応に影響する
可能性があり、プロセスコストを増加させるさらなる分離操作を必要とする場合がある。
また、触媒改質剤を導入することが、プロセスコストを増加させ、また、結果として、望
ましくない金属汚染物質の存在、または他の望ましくない反応生成物の生成をもたらす場
合がある。
【0005】
したがって、外部添加剤及び触媒改質剤の導入を最小にするが、さらに、ハロアミノ芳
香族生成物に対する高い選択性を付与し、また、脱ハロゲン化を通しての選択性損失を制
限する、ハロニトロ芳香族化合物の接触水素化のためのプロセスが依然として必要とされ
ている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ハロニトロ芳香族のハロアミノ芳香族への接触水素化のためのプロセスを概
して対象とする。例えば、本発明は、白金含有触媒の存在下での、2,5-ジクロロ(d
icloro)ニトロベンゼンなどのハロニトロ芳香族の2,5-ジクロロアニリンへの
接触水素化のためのプロセスを含む。本発明はまた、本発明によって生成された2,5-
ジクロロアニリンを使用して3,6-ジクロロ-2-メトキシ安息香酸(ジカンバ)を生
成するためのプロセスも含む。
【0007】
本発明の態様は、ハロアミノ芳香族の生成について改良された選択性を有する触媒を使
用した、ハロニトロ芳香族化合物の水素化のためのプロセスを対象とする。特に、本発明
の種々のプロセスは、脱塩素への選択性の損失の低減を提供する(すなわち、脱ハロゲン
化を抑制する)。ハロアミノ芳香族について改良された選択性を有する本発明によるプロ
セスは、プロセス経済を有意に改良する。
【0008】
本発明のさらなる態様は、ハロアミノ芳香族生成物について高い選択性を維持しながら
、水素化反応媒体及び触媒への外部添加剤の添加を最小にするまたは排除するプロセスを
対象とする。有利なことに、外部添加剤を最小にするまたは排除することで、これらの添
加剤を管理するための後のプロセス、例えばさらなる分離プロセスの必要性を低減または
回避し、これによりプロセス経済を改良する。
【0009】
本発明の他の態様は、水素化反応の種々の条件下でより安定である(例えば、酸性溶媒
への浸出に対してより耐性である)触媒を使用するプロセスを対象とする。例えば、触媒
からの白金の浸出の低減は、その有用な寿命を増大させ、また、白金損失及び反応生成物
からの白金の回収に関連するプロセスコストを低減する。
【0010】
本発明のなおさらなる態様は、中間体として、本明細書に記載されている水素化プロセ
スから得られる2,5-ジクロロアニリンを使用した、3,6-ジクロロ-2-メトキシ
安息香酸を調製するためのプロセスを対象とする。
【0011】
種々の実施形態において、本発明は、ハロアミノ芳香族化合物を調製するためのプロセ
スであって:水素と、ハロニトロ芳香族化合物を含む供給混合物とを、水素化ゾーンに供
給することと;炭素支持体上に白金を含む水素化触媒の存在下でハロニトロ芳香族化合物
を水素と反応させて、ハロアミノ芳香族化合物を含む反応生成物を生成することとを含み
、以下の特徴の1以上をさらに含む:
(1)水素化触媒が、焼成された水素化触媒である;
(2)供給混合物が、酸を含む溶媒をさらに含む;
(3)水素化触媒が未改質の水素化触媒である;
(4)供給混合物が脱ハロゲン化抑制剤を不含である;
(5)反応生成物が2-クロロアニリン及び3-クロロアニリンをさらに含み、3-クロ
ロアニリン対2-クロロアニリンのモル比が約6:1以下、約5:1以下、約4:1以下
、約3:1以下、約2:1以下、もしくは約1:1以下である;
(6)反応生成物が2-クロロアニリン及び3-クロロアニリンをさらに含み、2,5-
ジクロロアニリンから2-クロロアニリン及び3-クロロアニリンへの選択性の損失が約
0.4モル%未満、約0.3モル%未満、もしくは約0.2モル%未満である;かつ/ま
たは
(7)水素化触媒が、最大寸法で10nmまでのサイズの白金金属粒子を含み、白金金属
粒子の約50%(数基準)以下、約25%(数基準)以下、約20%(数基準)以下、約
15%(数基準)以下、もしくは約10%(数基準)以下が最大寸法で2nm未満である
;
上記プロセスを対象とする。
【0012】
さらなる実施形態において、本発明は、2,5-ジクロロアニリンを生成するためのプ
ロセスであって:水素と、2,5-ジクロロニトロベンゼン、及び酸を含む溶媒を含む供
給混合物とを、水素化ゾーンに供給することと;2,5-ジクロロニトロベンゼンを、炭
素支持体上に白金を含む不均一系水素化触媒の存在下で水素と反応させて、2,5-ジク
ロロアニリンを含む反応生成物を生成することとを含む上記プロセスを対象とする。
【0013】
本発明の他の実施形態は、2,5-ジクロロアニリンを生成するためのプロセスであっ
て:水素と、2,5-ジクロロニトロベンゼンを含む供給混合物とを、水素化ゾーンに供
給することと;2,5-ジクロロニトロベンゼンを、炭素支持体上に白金を含む不均一系
水素化触媒の存在下で水素と反応させて、2,5-ジクロロアニリンを含む反応生成物を
生成することとを含み、水素化触媒が未改質の水素化触媒であり、供給混合物が脱ハロゲ
ン化抑制剤を不含である、上記プロセスを含む。
【0014】
本発明のなおさらなる実施形態は、2,5-ジクロロアニリンを生成するためのプロセ
スであって:水素と、2,5-ジクロロニトロベンゼンを含む供給混合物とを、水素化ゾ
ーンに供給することと;2,5-ジクロロニトロベンゼンを、炭素支持体上に白金を含む
不均一系水素化触媒の存在下で水素と反応させて、2,5-ジクロロアニリンを含む反応
生成物を生成することとを含み、水素化触媒が、焼成された水素化触媒である、上記プロ
セスを含む。
【0015】
他の目的及び特徴は、以下、一部が明らかになり、また、一部が指摘されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】焼成前の市販の白金担持炭素触媒の表面の一連の走査透過電子顕微鏡(STEM)画像を提示する。
【
図2】焼成後の市販の白金担持炭素触媒の表面の一連のSTEM画像を提示する。
【
図3】焼成後の市販の白金担持炭素触媒の表面の一連のSTEM画像を提示する。
【
図4】焼成後及び15反応サイクル後の市販の白金担持炭素触媒の表面の一連のSTEM画像を提示する。
【
図5】焼成後及び15反応サイクル後の市販の白金担持炭素触媒の表面の一連のSTEM画像を提示する。
【
図6】焼成後の調製された白金担持炭素触媒の表面の一連のSTEM画像を提示する。
【
図7】焼成後の調製された白金担持炭素触媒の表面の一連のSTEM画像を提示する。
【
図8】焼成後及び43水素化反応サイクルでの使用後の調製された白金担持炭素触媒の表面の一連のSTEM画像を提示する。
【
図9】焼成後及び43水素化反応サイクルでの使用後の調製された白金担持炭素触媒の表面の一連のSTEM画像を提示する。
【
図10】焼成前の未還元白金前駆体担持炭素触媒の表面の一連のSTEM画像を提示する。
【
図11】焼成前の未還元白金前駆体担持炭素触媒の表面の一連のSTEM画像を提示する。
【
図12】焼成後の未還元白金前駆体担持炭素触媒の表面の一連のSTEM画像を提示する。
【
図13】焼成後の未還元白金前駆体担持炭素触媒の表面の一連のSTEM画像を提示する。
【
図14】5%の水素ガスの存在下で焼成後の未還元白金前駆体担持炭素触媒の表面の一連のSTEM画像を提示する。
【
図15】5%の水素ガスの存在下で焼成後の未還元白金前駆体担持炭素触媒の表面の一連のSTEM画像を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ハロアミノ芳香族化合物の生成のための、本発明による種々のプロセスは、水素化触媒
の存在下でハロニトロ芳香族化合物を水素によって触媒還元することを概して含む。特に
、本発明の種々の態様によるプロセスは、水素と、ハロニトロ芳香族化合物を含む供給混
合物とを、水素化ゾーンに供給することと、ハロニトロ芳香族化合物を水素化触媒の存在
下で水素と反応させて、ハロアミノ芳香族化合物を含む反応生成物を生成することとを含
む。概して、水素化触媒は、不均一系であり、炭素支持体上に貴金属(例えば、白金)粒
子を含む。貴金属として、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、銀、
オスミウム、及び金が挙げられる。白金は、好ましい貴金属である。水素ガスによる、ハ
ロニトロベンゼン化合物のハロアニリンへの水素化の反応スキームは、以下の通りである
:
式中、Xは、1以上のハロ置換基(例えば、1、2、または3)、例えばフルオロ、クロ
ロ、ブロモ、またはヨードである。
【0018】
本発明のプロセスは、種々のハロニトロ芳香族化合物の変換に使用され得る。例えば、
ハロニトロ芳香族化合物は、ハロニトロベンゼン化合物(例えば、2-、3-、4-クロ
ロニトロベンゼン)であり得る。ハロニトロ芳香族化合物は、1、2、またはそれより多
くのハロ置換基を有することができる。種々の実施形態において、ハロニトロ芳香族化合
物は、ジハロ置換ニトロベンゼン、例えばジクロロニトロベンゼンを含む。ジクロロニト
ロベンゼンの具体例として、2,4-ジクロロ(dicloro)ニトロベンゼン;2,
5-ジクロロ(dicloro)ニトロベンゼン;3,4-ジクロロニトロベンゼン;及
び3,5-ジクロロニトロベンゼンが挙げられる。
【0019】
1つの好ましいハロニトロ芳香族化合物は、3,6-ジクロロ-2-メトキシ安息香酸
(ジカンバ)の生成において有用な中間体である2,5-ジクロロ(dicloro)ニ
トロベンゼンを含む。したがって、本発明の種々のプロセスは、以下の反応スキームに示
されている、2,5-ジクロロニトロベンゼンの2,5-ジクロロアニリンへの水素化を
対象とする。上記プロセスは、水素と、2,5-ジクロロニトロベンゼンを含む供給混合
物とを、水素化ゾーンに供給することと;2,5-ジクロロニトロベンゼンを、炭素支持
体上に白金を含む不均一系水素化触媒の存在下で水素と反応させて、2,5-ジクロロア
ニリンを含む反応生成物を生成することとを概して含む。
【0020】
ハロゲン化反応は、2,5-ジクロロアニリンの収率が、少なくとも約90%、少なく
とも約92%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%で
あるという点において、ほぼ定量的である。しかし、記述されているように、2,5-ジ
クロロアニリン生成物は、さらに還元されて、結果として、脱ハロゲン化された化合物、
例えば2-及び3-クロロアニリンをもたらし得る。脱ハロゲン化反応は以下のように進
行し得る:
脱ハロゲン化反応は、結果として、2,5-ジクロロアニリン生成物への選択性の損失
をもたらす。
【0021】
出願人らは、ハロアミノ芳香族生成物(例えば、2,5-ジクロロアニリン)の脱ハロ
ゲン化から結果として生じる選択性の損失が、水素化触媒における白金の粒径分布を制御
または調整することによって低減され得ることを発見した。理論によって拘束されないが
、出願人らは、脱ハロゲン化反応が、触媒の炭素支持体上の白金の粒径に少なくとも一部
が依存していると考えている。合成したままの触媒における炭素支持体上の非常に小さい
白金粒子(例えば、直径が、<2nm、サブナノメートル)及び/またはいずれかの未還
元Pt(II)種の存在は、脱ハロゲン化反応にとって構造的により有利であると考えら
れる。これらの粒子の割合がより小さい触媒を付与することで、脱ハロゲン化から結果と
して生じる、ハロアミノ芳香族生成物への選択性の損失を低減させることが見出された。
炭素支持体表面上のより大きな白金粒子は、反応条件下でより安定であり、脱塩素メカニ
ズムにとって構造的にあまり有利でないことが見出された。したがって、本発明のプロセ
スは、脱塩素への選択性の損失の低減を提供する。例えば、2,5-ジクロロニトロベン
ゼンの2,5-ジクロロアニリンへの水素化では、2,5-ジクロロアニリンから2-ク
ロロアニリン及び3-クロロアニリンへの選択性の損失が、約0.4モル%未満、約0.
3モル%未満、または約0.2モル%未満であり得る。
【0022】
本発明の種々の実施形態によると、水素化触媒は、より小さな白金金属粒子または晶子
(例えば、最大寸法で約2nm未満の粒径を有する金属粒子)の集団の低減を示す。これ
らのあまり望ましくない、より小さな金属粒子はまた、特に、触媒が、白金金属を可溶化
する可能性を有する酸性環境において使用されるとき、より大きな粒子よりも浸出しやす
い。より小さな金属粒子または晶子の割合が低減されている白金粒径分布を示す触媒は、
本明細書に記載されているストラテジーを使用して得られ得る。
【0023】
記述されているように、水素化反応は、結果として、望ましくない脱ハロゲン化化合物
の形成をもたらし得る。しかし、これらの脱ハロゲン化化合物のいくらかは、他のものよ
りも、ある特定の反応生成物からより容易に分離される場合がある。例えば、3,6-ジ
クロロ-2-メトキシ安息香酸(ジカンバ)を生成するためのプロセスは、本明細書に記
載されているように、2,5-ジクロロニトロベンゼンを2,5-ジクロロアニリンに還
元する工程を含む。水素化反応生成物は、脱ハロゲン化化合物、例えば2-クロロアニリ
ン及び3-クロロアニリンを含み得る。ジカンバ生成プロセスの後の工程において、2,
5-ジクロロアニリンは、2,5-ジクロロフェノールに変換される。この変換の際に、
2-及び3-クロロアニリンは、それぞれ、2-及び3-モノクロロフェノールに変換さ
れる。3-クロロフェノールは、その沸点が2,5-ジクロロフェノールに近い(214
℃対211℃)ため、蒸留を介して2,5-ジクロロフェノールから分離することが困難
である。一方で、2-モノクロロフェノールは、2,5-ジクロロフェノールよりもかな
り低い沸点(175℃)を有しており、蒸留を介した、より効果的な分離を提供する。こ
のように、この場合、脱ハロゲン化が完全には排除され得ないと仮定すると、ひいては2
-クロロアニリンが3-クロロアニリンよりも好ましい脱ハロゲン化化合物となる。
【0024】
脱塩素選択性(例えば、3-クロロアニリンに対する2-クロロアニリンへの選択性)
もまた、白金触媒の白金粒径に依存することがさらに発見された。理論によって拘束され
ないが、脱塩素のこの構造選択性は、白金粒径効果:より小さな白金粒子ほど、白金部位
に結合しているアミン基の隣に位置しているかさ高いオルト-Cl原子にあまり立体障害
を与えないより開放された構造を有する;による可能性が高い。そのため、この粒子構造
が、3-クロロアニリンの形成をもたらすと考えられる。より大きな白金粒子の場合、オ
ルト-Cl原子上の隣接する白金原子からの立体効果がアレニウスの式の頻度因子(衝突
頻度)を低下させ、これにより、3-クロロアニリンの形成速度を低下させると考えられ
る。したがって、2,5-ジクロロニトロベンゼンを2,5-ジクロロアニリンに水素化
するための本発明の種々のプロセスは、反応生成物における3-クロロアニリン対2-ク
ロロアニリンのモル比の低減を提供する。種々の実施形態において、反応生成物における
3-クロロアニリン対2-クロロアニリンのモル比は、約6:1以下、約5:1以下、約
4:1以下、約3:1以下、約2:1以下、または約1:1以下である。例えば、3-ク
ロロアニリン対2-クロロアニリンのモル比は、約0.5:1~約6:1、約0.5:1
~約5:1、約0.5:1~約4:1、約0.5:1~約3:1、約0.5:1~約2:
1、約1:1~約6:1、約1:1~約5:1、約1:1~約4:1、約1:1~約3:
1、または約1:1~約2:1の範囲であり得る。
【0025】
水素化触媒
炭素支持体の表面上に白金を堆積させるのに使用される方法は、当該分野において一般
に知られており、液相方法、例えば反応堆積技術(例えば、白金金属化合物の還元を介し
た堆積、及び白金金属化合物の加水分解を介した堆積)、イオン交換技術、過剰溶液含浸
、及び初期湿潤含浸;気相方法、例えば物理堆積及び化学堆積;沈殿;電気化学堆積;な
らびに無電解堆積が挙げられる。炭素支持体上への白金の堆積は、炭素支持体の表面が、
還元剤と白金を含む化合物とを含む溶液と接触する、例えば、還元的堆積を含んでいてよ
い。還元剤として、例えば、ホルムアルデヒド、ギ酸、ヒドラジン、クエン酸、ポリオー
ル(例えば、エチレングリコール)、及び水素化ホウ素ナトリウムが挙げられる。
【0026】
記述されているように、本発明のプロセスにおいて使用される水素化触媒は、炭素支持
体の表面上に貴金属(例えば、白金)粒子を含む。触媒における炭素支持体上の非常に小
さな白金粒子及び/またはいずれかの未還元Pt(II)種の存在は、脱ハロゲン化反応
にとって構造的により有利であると考えられる。これらの粒子の割合がより低い触媒を付
与することが、脱ハロゲン化から結果として生じる、ハロアミノ芳香族生成物への選択性
の損失を低減させることが見出された。本発明によると、2nm未満の白金粒子の割合が
低減され、かつ、未還元Pt(II)種の割合がより低い触媒を付与するための1つのス
トラテジーは、触媒を焼成処理に供することである。触媒を焼成処理に供することは、炭
素支持体の表面に存在する白金金属粒子の粒径分布に概して影響する。特に、高温の焼成
は、炭素表面への小さな白金粒子の制御された凝集を誘発し、これにより、より安定であ
り、脱塩素反応にとって構造的にあまり有利でないより大きな白金粒子を形成する。また
、焼成は、水素化触媒が白金の合計重量の約0.1重量%未満、約0.05重量%未満、
または約0.01重量%未満であるPt(II)含量を有するように未還元Pt(II)
種の割合を低減する。したがって、本発明のプロセスは、焼成された水素化触媒の使用を
含む。
【0027】
500℃未満の温度は、焼成に概して十分でない。一方で、触媒を、1200℃を超え
る温度に供すると、炭素支持体の黒鉛化及び/または金属粒子の過焼結を促進する。炭素
支持体の黒鉛化及び金属粒子の過焼結は、触媒活性な炭素及び白金金属の表面積を低減す
ることによって触媒の活性を低減させる傾向がある。また、触媒活性な白金金属の露出表
面積のかかる低減は、コストのかかる白金金属の非経済的な使用となる。そのため、一般
に、触媒は、少なくとも約500℃、例えば約500℃~約1200℃の温度に加熱され
る。
【0028】
所望の粒径分布を示す触媒を得るために、触媒の表面は、典型的には、少なくとも約6
00℃、少なくとも約700℃、少なくとも約800℃、または少なくとも約900℃の
温度に加熱される。例えば、触媒は、約500℃~約1000℃、約600℃~約100
0℃、約700℃~約1000℃、約800℃~約1000℃、約500℃~約950℃
、約600℃~約950℃、約700℃~約950℃、または約800℃~約950℃の
熱処理温度に供され得る。特に、炭素支持体の表面を、少なくともこれらの最小値と同じ
ぐらいの高さ及びこれらの範囲内の温度に加熱することは、より小さな金属粒子(例えば
、最大寸法で約2nm以下のかかる粒子)の集団が低減されている粒径分布を有する炭素
支持体の表面上への白金金属粒子の形成を促進する際に有利な効果を及ぼす。焼成はまた
、触媒の安定性も向上させる。なぜなら、炭素支持体上のより大きな白金粒子が、より小
さな粒子に比べて浸出に対してより耐性であるからである。
【0029】
典型的には、触媒は、不活性な、非酸化性環境において焼成される。不活性な、非酸化
性環境は、不活性ガス、例えば窒素、希ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム)またはその
混合物から本質的になっていてよい。
【0030】
任意選択的に、水素が、炭素支持体の最も深いポア内へのより良好な浸透を可能にする
当該水素の小さな分子サイズに起因して焼成プロセスの非酸化性環境に存在する。水素の
濃度は変動してよいが、約5体積%以下の水素含量が好ましい。典型的には、水素は、約
1~約5体積%、より典型的には、約2~約5体積%の濃度で焼成雰囲気に存在し得る。
残りのガスは、非酸化性ガス、例えば窒素、アルゴン、またはヘリウムから本質的になっ
ていてよい。かかる非酸化性ガスは、少なくとも約90体積%、約90~約99体積%、
及び約95~約98体積%の濃度で焼成雰囲気に存在していてよい。
【0031】
金属堆積後の焼成は、触媒の表面から酸素含有官能基を除去するための高温気相還元を
含み、これにより、米国特許第6,417,133号に記載されているような一酸化炭素
脱着及び/または炭素原子対酸素原子表面比の特徴を示す触媒を得ることができる。
【0032】
より小さな白金粒子の数が低減するほど、炭素支持体上の露出している金属の表面積も
減少する。本発明の触媒の合計露出金属表面積は、静置での一酸化炭素の化学吸着分析を
使用して求められてよい。
【0033】
露出金属表面積(触媒のグラムあたりのm2)は、以下の式を使用して、化学吸着され
たCOの体積から求められてよい:
金属表面積(m2/g触媒)=6.023*1023*V/2*SF*A/22,41
4、式中:
V=化学吸着されたCOの体積(cm3/gSTP)(ガスの1モルの体積は22,4
14cm3STPであり、すなわち、COの1マイクロモルの体積は0.022414c
m3である)
SF=化学量論因子(露出しているPt原子当たり1つ、すなわち1つ(one)のC
O分子に等しいと仮定)
A=1つの露出しているPt原子の有効面積(m2/原子)(8×10-20m2/Pt
原子)
【0034】
2nm未満の白金粒子の割合が低減された触媒を付与するためのさらなるストラテジー
は、未還元白金触媒前駆体を焼成することを含む。このストラテジーにおいて、未還元白
金が炭素支持体上に堆積されて、触媒前駆体(すなわち、還元剤を使用することなく堆積
された)を形成する。その後、触媒前駆体が、本明細書に記載されているように焼成され
る。本明細書において述べられている温度での焼成は、白金金属を還元し、結果として、
さらなる白金凝集をもたらし、触媒上の小さな白金粒子割合を低下させることができる。
【0035】
水素化触媒の白金粒径分布を変更するための他の技術として、活性炭上への白金前駆体
の加水分解及び堆積を制御して、(例えば、ポリオール、より強い還元剤、予め形成され
たコロイド状のPtまたはPtリガンド錯体を使用して)より大きな白金クラスタを得る
ための手法が挙げられる。
【0036】
2nm未満の白金粒子の割合が低減された触媒を付与するための別のストラテジーは、
比較的小さなポア(例えば、マイクロポア)を選択的にブロックすることによって白金堆
積の前に炭素支持体を改質することを含む。ポアのブロッキングは、1以上の反応体にア
クセルできない、ポア内の白金の堆積を優先的に防止する。マイクロポアを選択的にブロ
ックするのに使用されるポアブロッカーは、例えば、種々の糖(例えば、スクロース)、
5-または6-員環含有化合物(例えば、1,3-及び1,4-二置換シクロヘキサン)
、ならびにこれらの組み合わせを含めた様々な化合物から選択されてよい。マイクロポア
の選択的ブロッキングに関連する使用に好適な化合物として、1,4-シクロヘキサンジ
メタノール(1,4-CHDM)、1,4-シクロヘキサンジオンビス(エチレンケター
ル)、1,3-または1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジ
オンモノエチレンアセタール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
ポアブロッカーは、1以上のポアブロッキング化合物前駆体間の反応(例えば、縮合反
応)の生成物を含んでいてよい。得られるポアブロッキング化合物は、一旦形成されると
、ポアブロッキング化合物がポアから出ることを防止する少なくとも1つの寸法を有して
いることのおかげで、支持体の選択されたポア内に優先的に保持され得る。
【0038】
例えば、シクロヘキサン誘導体とグリコールとのカップリング生成物は、白金金属また
は他の金属触媒を支持するのに使用される粒子状炭素支持体のマイクロポアのポアブロッ
キング剤として利用されてよいことが観察された。より詳細には、ポアブロッキング剤は
、二置換、三置換または四置換のシクロヘキサン誘導体とグリコールとのカップリング生
成物であってよい。特に、シクロヘキサン誘導体は、1,4-シクロヘキサンジオン、1
,3-シクロヘキサンジオン、1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、及びこれ
らの組み合わせからなる群から選択されてよい。グリコールは、エチレングリコール、プ
ロピレングリコール、及びこれらの組み合わせからなる群から一般に選択される。
【0039】
概して、支持体は、ポアブロッキング剤またはポアブロッキング剤の1以上の前駆体(
複数可)を含む液体と接触する。典型的には、処理される支持体は、液体接触媒体(例え
ば、脱イオン水)に分散または溶解された1以上のポアブロッキング化合物または前駆体
(複数可)を含む混合物または溶液と接触する。例えば、支持体は、シクロヘキサン誘導
体及びグリコールを含む混合物もしくは溶液、またはシクロヘキサン誘導体及びグリコー
ルから本質的になる液体接触媒体と接触してよい。支持体はまた、前駆体の1以上を含む
液体または液体媒体と逐次的に接触してもよい。
【0040】
ポアブロッカーとして最終的に機能する化合物がブロッキング化合物を形成する支持体
または前駆体のポア内に導入されるか否かに関わらず、ポアブロッカーは、ポア内に一旦
配置または形成されたポアブロッキング剤によって仮定される配座配置のおかげで、選択
された支持体ポア(例えば、マイクロポア)内に優先的に保持され得る。例えば、種々の
ポアブロッカー分子は、より線状の椅子型配座から、よりかさ高い舟形配座に転換し、こ
れにより、マイクロポア内への化合物のトラップをもたらすと現在考えられている。特に
、親水性末端基を含む種々のポアブロッキング剤は、多孔質の炭素支持体の性質のために
、当該炭素支持体のマイクロポア(複数可)内で舟形配座を好む(すなわち、舟形配座が
、炭素支持体表面の比較的疎水性の性質のために、親水性末端基を有するポアブロッキン
グ化合物に好まれる)と現在考えられている。親水性末端基を含むポアブロッキング化合
物の例として、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4-シクロヘキサンジメタ
ノール(CHDM)が挙げられる。
【0041】
ポアブロッカーの配座変化はまた、例えば、pHを調整すること及び/または液体媒体
の温度を調整することを含めた、支持体と接触しているポアブロッキング剤を含む液体媒
体を操作することによって促進または誘発されてもよい。
【0042】
記述されているように、支持体をポアブロッキング剤または前駆体と接触させることに
より、結果として、ポアブロッキング剤が、支持体のマイクロポア内に、また、所定の範
囲外のより大きなポア内に導入されるまたは配置されることになると考えられる。所定の
範囲内のマイクロポアが優先的にブロックされている処理された支持体を付与するために
、支持体は、その後、洗浄液体と接触して、マイクロポアドメイン外のポア(すなわち、
ポアブロッキング剤が、ポアの開口より大きな少なくとも1つの寸法を有する当該剤のお
かげで、優先的に保持されていないこれらのポア)からブロッキング剤を除去する。
【0043】
これらのストラテジーの1以上を用いることによって、2nm未満である白金粒子の割
合が低減された触媒を提供する。種々の実施形態において、触媒の白金粒子は、最大寸法
で10nmまでのサイズの白金金属粒子について、白金金属粒子の約50%(数基準)以
下、約25%(数基準)以下、約20%(数基準)以下、約15%(数基準)以下、また
は約10%(数基準)以下が最大寸法で2nm未満であるような(電子顕微鏡を使用して
求められる)粒径分布を有することを特徴とする。また、最大寸法で10nmまでの白金
金属粒子の少なくとも約25%(数基準、少なくとも約40%(数基準)、少なくとも約
50%(数基準)または少なくとも約60%(数基準)、少なくとも約70%(数基準)
、または少なくとも約80%(数基準)が最大寸法で2nm~10nmである。
【0044】
概して、最大寸法で10nmまでの白金金属粒子は、約2.5nm超、約3nm超、約
4nm超、または約5nm超の平均粒径を有することを特徴とし得る。最大寸法で10n
mまでの白金金属粒子の平均粒径は、約2.5~約8nm、約3~約7nm、約3~約6
nm、または約3~約4nmの範囲であり得る。
【0045】
炭素支持体の表面における白金金属粒子の粒径分布は、電子顕微鏡を含めた、当該分野
において公知の種々の技術を使用して求められてよい。粒径分布は、最大寸法で10nm
のサイズの粒子について特性決定される。しかし、本発明の触媒は、より大きな粒子(例
えば、10~15nmまたはさらにより大きい)を含有していてよいことが認識されるべ
きである。
【0046】
水素化触媒は、合計触媒重量の約5重量%以下である白金ローディングを典型的には有
する。より高い白金ローディングが、より多量の触媒部位を与え得るが、より低い白金ロ
ーディングが水素化反応には適しており、触媒コストを有益なことに低減することが見出
された。したがって、水素化触媒は、合計触媒重量の約4重量%以下、約3重量%以下、
約2重量%以下、約1.5重量%以下、または約1重量%以下である白金ローディングを
有することができる。例えば、水素化触媒は、合計触媒重量の約0.1重量%~約5重量
%、約0.1重量%~約4重量%、約0.1重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2
重量%、約0.1重量%~約1.5重量%、約0.1重量%~約1重量%、約0.5重量
%~約5重量%、約0.5重量%~約4重量%、約0.5重量%~約3重量%、約0.5
重量%~約2重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、または約0.5重量%~約1重
量%である白金ローディングを有することができる。
【0047】
記述されているように、水素化触媒は、炭素支持体上に白金を含む。好ましくは、水素
化触媒の炭素支持体は、活性炭を含む。活性化された、非黒鉛化炭素支持体が好ましい。
これらの支持体は、ガス、蒸気及びコロイド状固体への高い吸着能、ならびに比較的高い
比表面積を特徴とする。支持体は、好適には、当該分野において公知の手段によって、例
えば、木材、泥炭、褐炭、石炭、ナッツ殻、骨、野菜、または他の天然もしくは合成炭素
系物質の分解蒸留によって生成される炭素、炭化物、または炭であってよいが、好ましく
は、吸着力を発生させるように「活性化」されている。活性化は、通常、多孔質粒子構造
及び増加した比表面積をもたらす水蒸気または二酸化炭素と共に高温(例えば、>800
℃)に加熱することによって達成される。
【0048】
水素化触媒の炭素支持体は、比較的大きな表面積を概して保有する。N2を使用したラ
ングミュア法によって測定される、炭素支持体の合計比表面積は、典型的には、少なくと
も約500m2/g、少なくとも約600m2/g、少なくとも約800m2/g、より
好ましくは少なくとも約900m2/g、少なくとも約1000m2/g、少なくとも約
1100m2/g、または少なくとも約1200m2/gである。例えばN2を使用した
ラングミュア法によって測定される、炭素支持体の合計比表面積は、約500m2/g~
約3000m2/g、約750m2/g~約3000m2/g、約1000m2/g~約
3000m2/g、約1250m2/g~約3000m2/g、または約1500m2/
g~約3000m2/gであり得る。ある特定の実施形態において、支持体の合計表面積
は、約1500m2/g~約2000m2/gまたは約2500m2/g~約3000m
2/gである。これらの値は、N2を使用した、同様の周知のブルナウアー-エメット-
テラー(B.E.T.)法によって測定される値に概して相当することが理解される。
【0049】
2nm未満の直径を有するポア(すなわち、マイクロポア)に起因する炭素支持体のラ
ングミュア表面積は、典型的には、少なくとも約750m2/g、少なくとも1000m
2/g、または少なくとも約1250m2/gである。炭素支持体のラングミュアマイク
ロポア表面積は、約750m2/g~約2000m2/g、約1000m2/g~約20
00m2/g、または約1250m2/g~約2000m2/gであり得る。2nm超の
直径を有するポア(すなわち、メソポア及びマクロポア)に起因する炭素支持体のラング
ミュア表面積は、約100m2/g~約1000m2/g、約200m2/g~約800
m2/g、または約300m2/g~約800m2/gであり得る。
【0050】
示されているように、炭素支持体の表面積の比較的大部分が、マイクロポアに起因し得
る。種々の実施形態において、炭素支持体の合計ラングミュア表面積の少なくとも約50
%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%が、マイクロ
ポアに起因する。これら及び他の実施形態において、炭素支持体の合計ラングミュア表面
積の約50%~約90%、約60%~約90%、または約65%~約85%がマイクロポ
アに起因する。
【0051】
炭素支持体はまた、約0.5nm~約5nm、約1nm~約5nm、1nm~約4nm
、約1nm~約3nm、または約2nm~約5nmの範囲である平均ポア直径を有するこ
ともできる。さらに、本発明によると、炭素支持体は、少なくとも約0.3ml/g、少
なくとも約0.4ml/g、または少なくとも約0.5ml/gのポア体積を有すること
ができる。炭素支持体は、約0.1~約2.5ml/g、約0.2~約2.0ml/g、
または約0.4~約1.5ml/gのポア体積を有することができる。また、炭素支持体
は、0.5nm~5nmの直径のポアに起因する約0.3ml/g~約0.1ml/g、
または約0.5ml/g~約0.1ml/gであるポア体積を有することができる。
【0052】
支持体は、モノリス支持体であり得る。好適なモノリス支持体は、様々な形状を有して
いてよい。かかる支持体は、例えば、スクリーンまたはハニカムの形態であってよい。種
々の実施形態において、支持体は、粒子状物の形態である。好適な粒子状支持体は、様々
な形状を有していてよい。例えば、かかる支持体は、顆粒の形態であってよい。支持体は
また、粉末または粒子状物の形態であることもできる。これらの粒子状支持体は、単体粒
子として反応器システムにおいて使用されてよく、または、スクリーンもしくはインペラ
などの、反応器システムにおける構造体に結合していてよい。
【0053】
ハロアミノ芳香族生成物の脱ハロゲン化を抑制するのに一般的に使用されている1つの
アプローチは、金属促進剤(例えば、銅、ニッケル、ルテニウム;白金担持炭素触媒にお
ける合金もしくは共金属のいずれか)、または触媒(例えば、スルフィド処理された白金
担持炭素触媒)に添加される非金属の形態での触媒改質剤の組み込みを通してのものであ
る。しかし、触媒改質剤の組み込みは、除去を必要とするさらなる不純物(例えば、浸出
した触媒金属)をもたらす場合がある。触媒改質剤はまた、水素化工程または後のプロセ
ス工程からの反応混合物からの分離を必要とする場合があるさらなる不純物を導入する可
能性もある他の望ましくない副反応を触媒する場合もある。さらなる触媒改質剤の使用を
回避することで、触媒コストを低減することもできる。
【0054】
有利には、本発明の水素化プロセスにおいて使用される水素化触媒は、改質剤を本質的
に不含であり得るか、または不含であり得る。換言すると、本発明の水素化プロセスにお
いて使用される水素化触媒は、未改質の水素化触媒であり得る。本明細書において使用さ
れているとき、用語「改質剤」は、触媒に添加されているさらなる成分を指す。そのため
、用語「未改質の水素化触媒」は、触媒に1以上のさらなる成分を導入しないプロセス、
例えば焼成によって改変されている触媒を指さない。
【0055】
触媒改質剤は、種々の金属促進剤を含む。したがって、種々の実施形態において、水素
化触媒は、非促進触媒であり得る。すなわち、金属促進剤(またはドーパント)は必要と
されず、また、本発明の種々のプロセスでは回避され得る。種々の実施形態において、金
属促進剤は、遷移金属である。例えば、金属促進剤は、銅、ニッケル、鉄、及びこれらの
組み合わせからなる群から選択され得る。これら及び他の実施形態において、金属促進剤
は、アルカリ及びアルカリ土類金属であり得る。本明細書において使用されているとき、
用語「金属」は、元素、金属酸化物、金属水酸化物、金属イオンなどを含めた金属の種々
の形態を含む。
【0056】
しかし、ある特定の微量金属(すなわち、白金以外の金属)が、炭素支持体における不
純物、支持体に堆積した白金における不純物、及び/または供給混合物における不純物(
例えば、反応ベッセル/配管もしくは上流の触媒から浸出した金属)として存在している
場合がある。種々の実施形態において、水素化触媒の微量の金属含量は、触媒の合計重量
の約0.1重量%以下、約0.05重量%以下、約0.01重量%以下、約0.005重
量%以下、または約0.001重量%以下である。水素化触媒の微量の金属含量は、触媒
の合計重量の約0.0001重量%~約0.1重量%、約0.0001重量%~約0.0
5重量%、約0.0001重量%~約0.01重量%、約0.0001重量%~約0.0
05重量%、または約0.0001重量%~約0.001重量%であり得る。
【0057】
本発明のプロセスにおいて使用されている水素化触媒はまた、他の非金属触媒改質剤(
例えば、触媒毒)を本質的に不含であり得るか、または不含であり得る。例えば、水素化
触媒は、非金属触媒改質剤、例えば硫化物を不含であり得るか、または本質的に不含であ
り得る。
【0058】
種々の実施形態において、水素化ゾーン内に導入された水素化触媒は、炭素支持体上の
白金からなるか、または本質的になる。炭素支持体及び白金「から本質的になる」触媒は
、そのため、炭素支持体(典型的には活性炭支持体)の全ての成分及び少量の置換分、な
らびに堆積された白金活性相を含む。しかし、この触媒は、触媒活性相を形成するまたは
触媒活性相を改質することが意図される、炭素支持体表面に堆積されるいずれのさらなる
触媒改質剤も含まない。
【0059】
水素化反応
反応混合物は、水素と、ハロニトロ芳香族反応体(例えば、2,5-ジクロロニトロベ
ンゼン)とを概して含む。水素化触媒と同様に、ハロニトロ芳香族反応体(及び反応混合
物)を含む供給混合物は、脱ハロゲン化抑制剤として機能する添加剤を本質的に不含であ
り得るか、または不含であり得る。脱ハロゲン化抑制剤として、例えば、とりわけ、マグ
ネシウムの水酸化物または酸化物、ピペラジン及びモルホリンのような脂環式アミン、酸
性リン化合物が挙げられる。そのため、本発明の種々のプロセスは、水素と、2,5-ジ
クロロニトロベンゼンなどのハロニトロ芳香族化合物を含む供給混合物とを水素化ゾーン
に供給することと;ハロニトロ芳香族化合物(例えば、2,5-ジクロロニトロベンゼン
)を、不均一系水素化触媒の存在下で水素と反応させて、ハロアミノ芳香族化合物(例え
ば、2,5-ジクロロアニリン)を含む反応生成物を生成することとを含み、水素化触媒
が未改質の水素化触媒であり、供給混合物が脱ハロゲン化抑制剤を不含である。
【0060】
水素化反応は、溶媒を用いてまたは用いずに行われ得る。種々の実施形態において、供
給混合物は、溶媒(例えば、水、アルコール、及び/または酸)を含む。そのため、これ
らのプロセスは、水素と、2,5-ジクロロニトロベンゼンなどのハロニトロ芳香族化合
物及び溶媒を含む供給混合物とを水素化ゾーンに供給することと;ハロニトロ芳香族化合
物(例えば、2,5-ジクロロニトロベンゼン)を、不均一系水素化触媒の存在下で水素
と反応させて、ハロアミノ芳香族化合物(例えば、2,5-ジクロロアニリン)を含む反
応生成物を生成することとを含み、水素化触媒が炭素支持体上に白金を含んでいる。
【0061】
種々の実施形態において、溶媒はアルコールを含む。アルコール溶媒を使用する1つの
利点は、これらの溶媒が他の溶媒よりも概して除去しやすく、反応生成物の単離を容易に
するということである。例えば、アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール
、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、及びこれらの
混合物であり得る。
【0062】
種々の実施形態において、溶媒は、酸を含む。理論によって拘束されないが、触媒の使
用の際、酸性溶媒は、触媒支持体上の小さな白金粒子(<2nm)の数を低減することに
よって脱塩素への選択性の損失を低減するのに有益であり得ると考えられている。より小
さな白金粒子は、より大きな白金粒子よりも典型的には安定でなく、酸性環境において炭
素支持体からより容易に浸出され得る。また、酸性溶媒の使用は、水素化プロセスが、ま
た同じ溶媒を使用する他のプロセス工程と一体化されるとき、有益である場合がある。
【0063】
酸性溶媒は、有機酸を含むことができる。例えば、有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン
酸、酪酸、クエン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。ある特定の実施
形態において、有機酸は、酢酸を含む。酸性溶媒を使用するとき、酸性溶媒は、供給混合
物の約20重量%~約95重量%、約30重量%~約95重量%、約40重量%~約95
重量%、約50重量%~約95重量%、約60重量%~約95重量%、または約70重量
%~約95重量%であり得る。
【0064】
酸性溶媒、例えば酢酸を、2,5-ジクロロニトロベンゼンの2,5-ジクロロアニリ
ンへの水素化において使用するとき、生成物2,5-ジクロロアニリンと酢酸との間の水
素化後反応は、結果として、2,5-ジクロロアセトアニリンへの不可逆的損失をもたら
す場合がある。この反応は以下のように進行する:
2,5-ジクロロアセトアニリンへのこの損失は、反応生成物を約15℃以下または約
10℃以下に続いて冷却することによって制御され得ることが見出された。本発明の種々
のプロセスにおいて、反応生成物は、約0℃と約15℃との間、約5℃と約15℃との間
、または約5℃と約10℃との間の温度(例えば、約10℃)に冷却される。
【0065】
水素化反応の際、水素化触媒の白金金属の一部が、特に酸性溶媒を使用するときに、炭
素支持体から浸出される場合がある。結果として、反応生成物は、白金をさらに含む可能
性がある。反応生成物からの白金の回収は、プロセス経済をさらに向上させる。したがっ
て、種々の実施形態において、プロセスは、反応生成物から白金を回収することをさらに
含む。
【0066】
2,5-ジクロロニトロベンゼンの2,5-ジクロロアニリンへの水素化において、2
,5-ジクロロアセトアニリンならびに2-及び3-クロロアニリンへの選択性損失が、
高温によって増加することが見出され、このことは、温度が増加するにつれてアセチル化
及び脱塩素反応がより有利になることを示している。したがって、比較的低い反応温度が
好ましい。水素化反応は、約20℃~約100℃、約25℃~約100℃、約40℃~約
100℃、約40℃~約85℃、または約40℃~約70℃である温度で行われ得る。
【0067】
典型的には、水素化反応は、少なくとも約20kPa、少なくとも約100kPa、少
なくとも約200kPa、または少なくとも約500kPaである水素分圧下で行われる
。種々の実施形態において、水素の分圧は、約20kPa~約2000kPa、約200
kPa~約1500kPa、または約500kPa~約1000kPaである。
【0068】
水素化反応は、様々なバッチ、セミバッチ、及び連続反応器システムにおいて実施され
てよい。反応器の構成は厳密ではない。好適な従来の反応器構成として、例えば、撹拌槽
反応器、固定床反応器、トリクルベッド反応器、流動床反応器、気泡流反応器、栓流反応
器、バスループ反応器、及び並流反応器が挙げられる。
【0069】
3,6-ジクロロ-2-メトキシ安息香酸(ジカンバ)の生成のためのプロセス
本明細書に記載されているプロセスのいずれかによって生成される2,5-ジクロロア
ニリンは、3,6-ジクロロ-2-メトキシ安息香酸(ジカンバ)及びその塩またはエス
テルの生成において有用な中間体である。参照により本明細書に組み込まれる国際特許出
願公開公報第WO2015/095284号は、3,6-ジクロロ-2-メトキシ安息香
酸の生成のための1つのプロセスを記載している。概して、このプロセスは、2,5-ジ
クロロアニリンをジアゾ化して2,5-ジクロロベンゼンジアゾニウムを付与することを
含む。2,5-ジクロロベンゼンジアゾニウムは、次いで加水分解されて、2,5-ジク
ロロフェノールを形成する。その後、2,5-ジクロロフェノールはカルボキシル化され
て2-ヒドロキシ-3,6-ジクロロ安息香酸(3,6-ジクロロサリチル酸)を生成す
る。この中間体は、次いでメチル化されて、3,6-ジクロロ-2-メトキシ安息香酸塩
及び/またはそのエステルを含むメチル化反応生成物を形成することができる。メチル化
生成物は、次いで3,6-ジクロロ-2-メトキシ安息香酸に鹸化され得る。そのため、
本発明の水素化プロセスは、種々の3,6-ジクロロ-2-メトキシ安息香酸を生成する
ためのプロセスとさらに組み合わされ得る。
【0070】
本発明を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲に定義されている発明の範囲から逸
脱することなく変更及び変形が可能であることが明らかである。
【実施例】
【0071】
以下の非限定例を提供して本発明をさらに例示する。
【0072】
実施例1:白金担持炭素触媒の焼成
1重量%の白金を担持した活性炭(Pt/C)触媒を900℃の温度で加熱管において
アルゴン雰囲気下でおよそ2時間焼成した。その後、触媒を加熱管から除去し、混合して
、当該加熱管に沿ったいずれの不均一な温度分布も最小にした。次いで、触媒を、900
℃でおよそ2時間の第2熱処理のために加熱管内に再投入した。代替的には、触媒を回転
管において焼成して均一な温度を達成することができる。
【0073】
触媒表面を、走査透過電子顕微鏡(STEM)を使用して焼成前後に撮像した。
図1は
、焼成前の市販のPt/C触媒の触媒表面の一連の画像を表す。
図2及び3は、焼成後の
市販のPt/C触媒の触媒表面の一連の画像を表す。これらの画像は、焼成が小さな白金
粒子(<2nm)の焼結及び凝集を高めたことを示しており、これにより、より大きな白
金粒子(>2nm)の割合を増加させたと思われる。
【0074】
実施例2:貴金属触媒による2,5-ジクロロニトロベンゼンの2,5-ジクロロアニ
リンへの水素化(一般手順)
各サイクルについて2,5-ジクロロニトロベンゼンの2,5-ジクロロアニリンへの
水素化の一般手順に従った。貴金属(例えば、白金またはパラジウム)担持触媒をHAS
TELLOYオートクレーブ反応器(およそ300ml)に投入し、次いで、反応器を密
閉した。2,5-ジクロロベゼン(bezene)(10~30重量%)の酢酸溶液を、
入口を通して反応器に導入し、あらゆる漏れについて系をチェックした。系を窒素で3回
パージした(すなわち、窒素によって反応器を239kPa(20psig)に加圧し、
続いてパージした)。パージ後、反応器を239kPa(20psig)の窒素で加圧し
、撹拌(1400rpm)及び加熱の両方を開始した。混合物の温度が所望の温度(例え
ば、およそ65℃)に達したら、撹拌を停止し、窒素をパージした。反応器に、次いで、
水素ガスを(例えば、687kPa(85psig)の圧力まで)仕込み、撹拌(140
0rpm)を再開させた。反応の終わりに、加熱を停止し、系において水素をパージした
。系を、次いで、上記と同じプロトコルを使用して窒素で3回パージした。反応混合物を
、フィルタを通して容器内に出口を通してドレインした。次のサイクルを、水素化用Pt
/C触媒を含有する系内に2,5-ジクロロベゼン(bezene)の酢酸溶液を再投入
することによって繰り返した。
【0075】
収集した反応混合物をRP-HPLC法によって2,5-ジクロロアニリン(2,5-
DCA);2,5-ジクロロアセトアニリン(2,5-DCAN);2-クロロアニリン
(2-CA);及び3-クロロ(chlro)アニリン(3-CA)について分析した。
【0076】
水素化反応のパラメータを以下の実施例に記載されているように変化させた。例えば、
触媒金属、触媒支持体、触媒のローディングは100mg~800mgの範囲であり、反
応温度は45℃~65℃の範囲であり、水素圧は377kPa(40psig)~127
3kPa(170psig)の範囲であり、酢酸中の2,5-ジクロロベゼン(beze
ne)溶液の濃度は10重量%~30重量%の範囲であった。
【0077】
実施例3:触媒金属及び支持体の効果
実施例2の水素化手順を、異なる金属(白金及びパラジウム)ならびに触媒支持体(炭
素及びシリカ)を含有する様々な触媒によって行った。触媒は、1重量%のPt/C、1
重量%のPt/SiO
2、1重量%のPd/C、及び0.5重量%のFeによって促進さ
れた5重量%のPt/C(5重量%のPt/0.5重量%のFe/C)であった。これら
の触媒を、5重量%のPt/0.5重量%のFe/C触媒を除いて、焼成しなかった。5
重量%のPt/0.5重量%のFe/C触媒を使用前に高温(およそ900℃)で焼成し
た。水素化反応手順の各ランにおいて、およそ755mg(乾燥基準)の各触媒、及び1
50gの、酢酸中30重量%の2,5-ジクロロニトロベンゼンを反応器内に投入した。
水素を687kPa(85psig)の圧力で反応器に仕込んだ。反応器を45℃の温度
に加熱した。1反応サイクル後のこれらのランの結果を表1に与える。
表1:触媒の金属及び支持体対脱塩素
【0078】
使用した触媒の中でも、Pd/C触媒及びPt/SiO2触媒は、両方とも、水素化反
応にとってあまり有利でないことが観察された。Pd/C触媒は、反応がかなり長時間(
すなわち、約300分)で完了すること、また、クロロアニリンへの損失(すなわち、お
よそ3モル%)が白金触媒と比較して有意に高かったことが実証されているように、水素
化によって2,5-ジクロロニトロベンゼンを2,5-ジクロロアニリンに変換するのに
相対的にあまり活性でなかった。Pt/SiO2触媒もまた、200分後の約90%の変
換率によって実証されているように、あまり活性でなかった。また、このタイプのPt/
SiO2触媒は、反応混合物において崩壊した。結果として、かなりの量の触媒材料が反
応器フリットを通過し、反応生成物に集まった。各サイクルにおける触媒損失は、炭素支
持体上の他の触媒と比較してPt/SiO2触媒で有意に高かった(すなわち、約12%
対約5%)。Pd/C及びPt/SiO2触媒によるより長い反応時間のために、2,5
-ジクロロアセトアニリン(2,5-DCAN)への選択性損失がPt/C触媒と比較し
てより高いことが観察された。
【0079】
1重量%のPt/C触媒は、少なくとも約99%の変換率を達成する反応時間によって
示されているように、1重量%のPd/C及び1重量%のPt/SiO2と比較してより
一層活性であり、5重量%のPt/0.5重量%のFe/C触媒と同様の活性を有した。
しかし、2-クロロアニリン及び3-クロロアニリンへの選択性損失は、5重量%のPt
/0.5重量%のFe/C触媒と比較してPt/C触媒では有意により高かった。さらに
、特に2,5-ジクロロアニリン生成物のオルト位置での脱塩素(結果として3-CAを
生じる)は、3-CA/2-CAの比の増加によって示されているように、白金のみの触
媒(Pt/SiO2を含む)で増加した。これらの触媒を使用した、2-または3-クロ
ロアニリンへのより大きな選択性損失は、モノクロロアニリンの形成を好むと考えられる
、炭素支持体上のより小さなサイズの白金粒子(<2nm)の存在に起因する可能性があ
った。
【0080】
5重量%のPt/0.5重量%のFe/C触媒を水素化反応について評価した。この触
媒を使用前に高温(およそ900℃)で焼成した。この触媒は、表1に列挙されている他
の白金触媒より大きな白金粒子(例えば、およそ7nmの平均サイズ)を有すると理解さ
れる。このタイプの触媒は、3-CA/2-CAの比の減少によって示されているように
、脱塩素に起因する2-及び3-クロロアニリンへの選択性損失の量の低減、ならびに、
2-クロロアニリンへの最も高い選択性を付与したことが観察された。
【0081】
実施例4:水素圧、反応温度、及び反応溶媒の効果
実施例2を、焼成せずに使用した市販の1重量%のPt/C触媒によって繰り返した。
水素化反応手順のこれらのランにおいて、およそ755mg(乾燥基準)の触媒、及び1
50gの、酢酸中30重量%の2,5-ジクロロニトロベンゼンを反応器内に投入した。
反応器に仕込む水素の量を、474kPa(54psig)、687kPa(85psi
g)、及び860kPa(110psig)の圧力でラン間において変化させた。反応器
の温度もまた、45℃または65℃のいずれかで変化させた。1反応サイクル後のこれら
のランの結果を表2-Aに与える。
表2-A:H
2圧及び反応温度対3-クロロアニリンへの損失
【0082】
より高い水素圧及びより高い反応温度は、水素化反応を加速したが、3-クロロアニリ
ンへの脱塩素も好まれた。そのため、87kPa(85psig)の水素圧及び45℃の
反応温度をさらなる評価に選択した。
【0083】
別の実験セットにおいて、実施例2を、焼成せずに使用した市販の1重量%のPt/C
触媒によって繰り返し;反応溶媒をラン間で変化させた。水素化反応手順のこれらのラン
において、およそ755mg(乾燥基準)の触媒、及び150gの、溶媒(すなわち、酢
酸またはメタノールのいずれか)中30重量%の2,5-ジクロロニトロベンゼンを反応
器内に投入した。反応器に仕込む水素の量は687kPa(85psig)であり、反応
器の温度は45℃であった。3反応サイクル後のこれらのランの結果を表2-Bに与える
。
表2-B:反応溶媒対脱塩素及び反応時間
【0084】
非酢酸溶媒中、例えば、メタノール中での水素化は、脱塩素の増加及び反応時間の低減
を与えることが観察された。酢酸中よりもメタノール中でのより高い水素の溶解度は、結
果として、より短い反応時間及びさらなる脱塩素をもたらす場合がある。2,5-ジクロ
ロアセトアニリン(2,5-DCAN)は、酢酸中でのみ形成されるため、反応溶媒とし
てメタノールを使用することにより排除され得る。
【0085】
実施例5:白金触媒に対する焼成の効果
実施例2を、焼成した及び未焼成の1重量%のPt/C触媒を使用して繰り返した。1
重量%のPt/C触媒は市販のPt/C触媒であった。焼成を、焼成温度を変化させた(
例えば、500℃、700℃、及び900℃)ことを除いて、実施例1に記載されている
手順によって実施した。水素化反応手順のこれらのランにおいて、およそ755mg(乾
燥基準)の触媒、及び150gの、酢酸中30重量%の2,5-ジクロロニトロベンゼン
を反応器内に投入した。水素を687kPa(85psig)の圧力で反応器に仕込んだ
。反応器を45℃の温度に加熱した。1反応サイクル後のこれらのランの結果を表3に与
える。
表3:触媒焼成温度対不純物プロファイル及び触媒活性
【0086】
2,5-ジクロロアセトアニリン(2,5-DCAN)への選択性損失は、触媒の焼成
の温度に関わらず一定であることが観察された。2,5-ジクロロアニリンの脱塩素時の
2-及び3-クロロアニリンへの選択性損失は、焼成温度が増加するにつれかなり減少し
た。さらに、2-クロロアニリンレベルは比較的一定に維持されたが、3-クロロアニリ
ンは有意に少なく、結果として、3-クロロアニリン対2-クロロアニリンの比(3-C
A/2-CA)の減少をもたらした。この観察は、白金粒子のサイズの増加が、特に2,
5-ジクロロアニリン生成物のオルト位置で脱塩素を減少させるという理論と一致してい
る。しかし、触媒の活性は、より長い反応時間によって示されているように、焼成温度の
温度が増加するにつれて僅かに減少した。
【0087】
実施例6:種々の白金触媒の比較
実施例2を様々なPt/C触媒を使用して繰り返した。触媒は、1重量%のPt/C触
媒(焼成せずに使用した)、500℃で焼成した1重量%のPt/C触媒、700℃で焼
成した1重量%のPt/C触媒、900℃で焼成した1重量%のPt/C触媒、及び90
0℃で焼成した0.5重量%のFeによって促進した5重量%のPt/C触媒であった。
1重量%のPt/C触媒は市販のPt/C触媒であった。
【0088】
水素化反応手順の各ランにおいて、およそ755mg(乾燥基準)の各触媒、及び15
0gの、酢酸中30重量%の2,5-ジクロロニトロベンゼンを反応器内に投入した。水
素を687kPa(85psig)の圧力で反応器に仕込んだ。反応器を45℃の温度に
加熱した。一連の反応サイクル後のこれらのランの結果を表4に与える。
表4:触媒の品種、反応サイクル対脱塩素
【0089】
多数の反応サイクルでの、好ましい脱塩素化合物2-クロロアニリンへの選択性は、3
-CA/2-CA比の減少によって示されているように、焼成温度を増大させることによ
って増大した。900℃で焼成した1重量%のPt/C触媒は、5重量%のPt/0.5
重量%のFe/C触媒と比較して好ましい脱塩素化合物2-クロロアニリンへの同様の選
択性を与えた。
【0090】
反応媒体における焼成触媒の安定性を評価するために、900℃で焼成した1重量%の
Pt/C触媒を、第1反応サイクル(すなわち、フレッシュな触媒)の前に、次いで、1
5サイクルの後に再び、STEMを使用して撮像した。
図2及び3は、焼成後であるが使
用前の触媒表面の一連の画像を表す。
図4及び5は、15反応サイクル後の触媒表面の一
連の画像を表す。これらの画像は、触媒が、多数の反応サイクルにわたって安定である(
例えば、浸出に対して耐性がある)ことを示している。
【0091】
実施例7:活性炭上の1重量%の白金触媒の調製(一般手順)
以下は、1重量%のPt/C触媒の調製のための一般手順である。炭素スラリー濃度、
pH調整、還元剤(NaBH4)の量、温度、及びスラリーの最終pHは、調製のプロセ
スの際に変動し得る。以下の方法(Ia、Ib、II、III、IV、V、VI、VII
、VIIIa、VIIIb、IX、Xa及びXb)は、いくつかの可変パラメータによる
代表的な手順である。
【0092】
A.方法Ia
活性炭(15.0g)を懸濁させて、約20分間撹拌しながら脱イオン水(およそ15
0mL)中のスラリーを形成した。得られたスラリーのpHは、pH8.48であった。
H2PtCl6・6H2O(0.40g)の脱イオン水(およそ15mL)溶液を炭素ス
ラリーに約15分間かけて滴下して添加した。得られたスラリーのpHは、白金溶液の添
加の終了時にpH5.17まで降下した。得られたスラリーをさらに30分間周囲温度で
撹拌した。pHを1M HCl溶液で約pH4.50に調整した。スラリーを、次いで、
pHを1M NaOH溶液の添加によって約pH4.50に維持しながら、およそ30分
間かけて60℃に加熱した。60℃の温度に達したら、スラリーのpHを1M NaOH
溶液の添加によって5分毎に0.5の増加量で約pH6.00まで増加させた。スラリー
の撹拌を60℃及びpH6.0で10分間継続し、次いで、およそ50℃未満に冷却した
。NaBH4の14M NaOH(12重量%、0.50g)溶液を脱イオン水で5mL
に希釈し;希釈した溶液を上記の調製したスラリーに5分間かけて滴下して添加した。撹
拌をかかる添加後にさらに10分間継続させ、次いで、8.49の終了pHでおよそ50
℃に加熱した。濾過後、湿潤ケーキを脱イオン水(4×300mL)で50℃において洗
浄した一方でpHが7.51になり、続いて、水(1×300mL)でさらに任意選択的
に洗浄した。触媒ケーキを次いで真空下およそ110℃で10時間乾燥して、乾燥した1
重量%のPt/C触媒(14.8g)を得た。
【0093】
B.方法Ib(NaBH4還元なし)
活性炭(15.7g)を懸濁させて、約20分間撹拌しながら脱イオン水(およそ14
0mL)中のスラリーを形成した。得られたスラリーのpHは、pH7.78であった。
H2PtCl6・6H2O(0.41g)の脱イオン水(およそ15mL)溶液を炭素ス
ラリーに約17分間かけて滴下して添加した。得られたスラリーのpHは、白金溶液の添
加の終了時にpH3.67まで降下した。得られたスラリーをさらに28分間周囲温度で
撹拌し、pHが約pH4.25に上昇した。スラリーを、次いで、pHを1M NaOH
溶液の添加によって約pH4.00に維持しながら、およそ30分間かけて60℃に加熱
した。60℃の温度に達したら、スラリーのpHを1M NaOH溶液の添加によって5
分毎に0.5の増加量で約pH6.00まで増加させた。スラリーの撹拌を60℃及びp
H6.0で10分間継続した。溶液を次いでおよそ50℃に冷却し、溶液がpH6.08
を有した。スラリーのpHを、およそ43℃に冷却し続けながら7.65まで徐々に上昇
させた。これを、次いで、8.99の終了pHで、およそ55℃まで14分で加熱した。
濾過後、湿潤ケーキを脱イオン水(4×300mL)で50℃において洗浄した。触媒ケ
ーキを次いで真空下およそ110℃で10時間乾燥して、乾燥した1重量%のPt/C触
媒(15.3g)を得た。
【0094】
C.方法II
活性炭(15.7g)を懸濁させて、約40分間撹拌しながら脱イオン水(およそ12
0mL)中のスラリーを形成した。得られたスラリーのpHを1M NaOH溶液の添加
によってpH8.33に調整した。H2PtCl6・6H2O(0.40g)の脱イオン
水(およそ10mL)溶液を炭素スラリーに約8分間かけて滴下して添加した。得られた
スラリーのpHは、白金溶液の添加の終了時にpH3.60まで降下した。得られたスラ
リーをさらに10分間周囲温度で撹拌し、pHがpH4.05に上昇した。pHを、次い
で、1M NaOHによって約pH5.0に調整し、得られた溶液をさらに8分間撹拌し
た。スラリーを、次いで、pHを1M NaOH溶液の添加によって約pH5.0に維持
しながら、約15分間かけて60℃まで加熱した。5分間で60℃の温度に達したら、ス
ラリーのpHを1M NaOH溶液の添加によって約pH6.0に増加させ、10分間維
持した。スラリーのpHを約pH6.5に再び増加させ、さらに10分間維持した。得ら
れたスラリーを次いで約10分で約50℃未満に冷却した。NaBH4の14M NaO
H(12重量%、0.50g)溶液を脱イオン水で5mLに希釈し;希釈した溶液を上記
の調製したスラリーに5分間かけて滴下して添加した。撹拌をかかる添加後さらに5分間
継続し、スラリーの得られるpHがpH8.41に上昇した。スラリーを、次いで、9.
16の終了pHで約10分間かけて約57℃に加熱した。濾過後、湿潤ケーキを6.03
の最終pHで脱イオン水(4×350mL)によって50℃で洗浄した。触媒ケーキを次
いで真空下約110℃で10時間乾燥して、乾燥した1重量%のPt/C触媒(15.3
g)を得た。
【0095】
D.方法III
活性炭(15.5g)を懸濁させて、約45分間撹拌しながら脱イオン水(およそ12
0mL)中のスラリーを形成した。得られたスラリーのpHを1M NaOH溶液の添加
によってpH9.00に調整した。H2PtCl6・6H2O(0.41g)の脱イオン
水(およそ10mL)溶液を炭素スラリーに約8.5分間かけて滴下して添加した。得ら
れたスラリーのpHは、白金溶液の添加の終了時にpH3.99まで降下した。得られた
スラリーをさらに20分間周囲温度で撹拌し、pHがpH4.77に上昇した。pHを、
次いで、1M NaOHによって約pH5.0に調整した。スラリーを、次いで、pHを
1M NaOH溶液の添加によって約pH5.0に維持しながら、約15分間かけて60
℃まで加熱した。5分間で60℃の温度に達したら、スラリーのpHを1M NaOH溶
液の添加によって約pH6.0に増加させ、10分間維持した。スラリーのpHを約pH
6.5に再び増加させ、さらに10分間維持した。得られたスラリーを次いで約15分で
約50℃未満に冷却した。NaBH4の14M NaOH(12重量%、0.52g)溶
液を脱イオン水で5mLに希釈し;希釈した溶液を上記の調製したスラリーに5分間かけ
て滴下して添加した。撹拌をかかる添加後さらに5分間継続し、スラリーの得られるpH
がpH8.14に上昇した。スラリーを、次いで、8.94の終了pHで約10分間かけ
て約55℃に加熱した。濾過後、湿潤ケーキを6.38の最終pHで脱イオン水(4×3
50mL)によって50℃で洗浄した。触媒ケーキを次いで真空下約110℃で10時間
乾燥して、乾燥した1重量%のPt/C触媒(15.2g)を得た。
【0096】
E.方法IV
活性炭(15.6g)を懸濁させて、約27分間撹拌しながら脱イオン水(およそ11
0mL)中のスラリーを形成した。得られたスラリーのpHを1M NaOH溶液の添加
によってpH8.50に調整した。H2PtCl6・6H2O(0.41g)の脱イオン
水(およそ10mL)溶液を、1M NaOHを共添加して、炭素スラリーに約12分間
かけて滴下して添加した。得られたスラリーのpHは、白金溶液の添加の終了時にpH4
.57まで降下した。得られたスラリーをさらに30分間周囲温度で撹拌し、pHがpH
5.12に上昇した。スラリーを、次いで、約14分間かけて60℃に加熱し、一方で、
pHはpH4.11に降下した。60℃の温度に達したら、スラリーのpHを1M Na
OH溶液の添加によって15分間、約pH4.1に維持した。その後、pHを約pH4.
5に増加させ、さらに10分間維持した。スラリーのpHを1M NaOH溶液の添加に
よって10分毎に0.5の増加量で約pH6.0まで増加させた。スラリーの撹拌を60
℃及びpH6.0で10分間継続し、次いで、約15分で約45℃に冷却した。NaBH
4の14M NaOH(12重量%、0.80g)溶液を脱イオン水で8mLに希釈し;
希釈した溶液を上記の調製したスラリーに8分間かけて滴下して添加した。撹拌をかかる
添加後さらに12分間継続し、スラリーの得られるpHが37℃の温度でpH8.00に
上昇した。スラリーを、次いで、8.81の終了pHで約16分間かけて約55℃に加熱
した。濾過後、湿潤ケーキを6.40の最終pHで脱イオン水(4×350mL)によっ
て50℃で洗浄した。触媒ケーキを次いで真空下約110℃で10時間乾燥して、乾燥し
た1重量%のPt/C触媒(15.2g)を得た。
【0097】
F.方法V
活性炭(15.6g)を懸濁して、スラリーを41℃に約20分間加熱しながら、撹拌
により、脱イオン水(およそ110mL)中のスラリーを形成した。得られたスラリーの
pHを1M NaOH溶液の添加によってpH9.00に調整した。H2PtCl6・6
H2O(0.41g)の脱イオン水(およそ10mL)溶液を、スラリーのpHを6.0
超にかつ温度を約41℃に維持しながら、1M NaOHを共添加して、炭素スラリーに
約11分間かけて滴下して添加した。スラリーを、次いで、約41℃でさらに20分間撹
拌し、スラリーのpHを必要に応じて1M NaOHの共添加によってpH6.1に維持
した。スラリーを、次いで、pHを1M NaOHによってpH6.1からpH6.2の
間に維持しながら、約20分間かけて約70℃に加熱した。70℃の温度に達したら、ス
ラリーのpHを1M NaOH溶液によってpH7.0に上昇させ、10分間維持した。
スラリーを約17分で50℃未満に冷却した後、脱イオン水(10mL)中に希釈したN
aBH4の14M NaOH(12重量%、1.00g)溶液を8分間かけて滴下により
添加した。撹拌をかかる添加後にさらに10分間継続させ、スラリーの得られるpHが約
42℃の温度でpH9.52に上昇した。スラリーを、次いで、9.78の終了pHで、
約10分で約60℃に加熱した。濾過後、湿潤ケーキを7.90の最終pHで脱イオン水
(4×350mL)によって55℃で洗浄した。触媒ケーキを次いで真空下約110℃で
10時間乾燥して、乾燥した1重量%のPt/C触媒(15.2g)を得た。
【0098】
G.方法VI
活性炭(15.7g)を懸濁させて、約45分間撹拌しながら脱イオン水(およそ11
0mL)中のスラリーを形成した。得られたスラリーのpHを1M HCl溶液の添加に
よって約pH6.50に調整した。H2PtCl6・6H2O(0.40g)の脱イオン
水(およそ10mL)溶液を炭素スラリーに周囲温度で約11分間かけて滴下して添加し
た。得られたスラリーのpHは、白金溶液の添加の終了時にpH3.27まで降下した。
得られたスラリーをさらに22分間周囲温度で撹拌し、pHがpH3.65に上昇した。
pHを1M HCl溶液によってpH3.28に調整した。スラリーを、次いで、さらに
18分間撹拌し、スラリーのpHがpH3.54で終了した。スラリーを、次いで、約1
5分間かけて約60℃に加熱し、一方で、pHがpH3.13に降下した。60℃に達し
たら、スラリーのpHを1M NaOH溶液によって約pH3.5に上昇させ、10分間
維持した。スラリーのpHを1M NaOH溶液の添加によって5分毎に0.5の増加量
で約pH6.0まで増加させた。スラリーの撹拌を60℃及びpH6.0で10分間継続
し、次いで約50℃未満に冷却した。脱イオン水(4.5mL)で希釈したNaBH4の
14M NaOH(12重量%、0.56g)溶液を、6分間かけて滴下により添加した
。撹拌をかかる添加後にさらに10分間継続させ、スラリーの得られるpHが約42℃の
温度でpH7.95に上昇した。スラリーを、次いで、8.64の終了pHで、約10分
で約52℃に加熱した。濾過後、湿潤ケーキを7.30の最終pHで脱イオン水(約50
℃で3×300mL、最後に周囲温度で1×300mL)によって洗浄した。触媒ケーキ
を次いで真空下約110℃で10時間乾燥して、乾燥した1重量%のPt/C触媒(15
.2g)を得た。
【0099】
H.方法VII
活性炭(15.7g)を懸濁させて、約30分間撹拌しながら脱イオン水(およそ11
0mL)中のスラリーを形成した。得られたスラリーのpHは、pH7.73であった。
H2PtCl6・6H2O(0.40g)の脱イオン水(およそ10mL)溶液を炭素ス
ラリーに約15分間かけて滴下して添加した。得られたスラリーのpHは、白金溶液の添
加の終了時にpH3.48まで降下した。得られたスラリーをさらに35分間周囲温度で
撹拌し、スラリーのpHがpH4.03に上昇した。スラリーを、次いで、pHを1M
NaOH溶液の添加によって約pH4.00に維持しながら、およそ20分間かけて60
℃に加熱した。60℃の温度に達したら、スラリーのpHを1M NaOH溶液の添加に
よって5分毎に0.5の増加量で約pH6.00まで増加させた。スラリーの撹拌を60
℃及びpH6.0で10分間継続した。スラリーのpHを約pH6.5に再び増加させ、
さらに15分間維持し、次いで、およそ50℃未満に冷却した。NaBH4の14M N
aOH(12重量%、0.60g)溶液を脱イオン水で10mLに希釈し;希釈した溶液
を上記の調製したスラリーに15分間かけて滴下して添加した。添加が終了したら、スラ
リーを8.94の終了pHでおよそ52℃に加熱した。濾過後、湿潤ケーキを7.45の
最終pHで脱イオン水(約50℃で3×300mL、最後に周囲温度で1×300mL)
によって洗浄した。触媒ケーキを次いで真空下およそ110℃で10時間乾燥して、乾燥
した1重量%のPt/C触媒(15.3g)を得た。
【0100】
I.方法VIIIa
活性炭(15.7g)を懸濁して、スラリーを45℃に約40分間加熱しながら、撹拌
により、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)(1.19g)を含有する脱
イオン水(およそ110mL)中のスラリーを形成した。得られたスラリーのpHを1M
NaOH溶液の添加によってpH7.45に調整した。H2PtCl6・6H2O(0
.41g)の脱イオン水(およそ10mL)溶液を炭素スラリーに約43℃~44℃の温
度で約13分間かけて滴下して添加した。得られたスラリーのpHは、白金溶液の添加の
終了時にpH3.06まで降下した。スラリーのpHをpH3.50に調整し、得られた
スラリーを約43℃で5分間撹拌した。スラリーのpHをpH4.00に上昇させ、得ら
れたスラリーをさらに15分間、約43℃で撹拌した。スラリーを、次いで、pHを1M
NaOH溶液の添加によって約pH4.00で維持しながら、およそ10分間かけて6
0℃に加熱した。60℃の温度に達したら、スラリーのpHを1M NaOH溶液の添加
によって5分毎に0.5の増加量で約pH6.00まで増加させた。スラリーの撹拌を6
0℃及びpH6.0で10分間継続した。スラリーのpHを約pH6.5に再び増加させ
、さらに15分間維持し、次いで、およそ50℃未満に冷却した。NaBH4の14M
NaOH(12重量%、0.60g)溶液を脱イオン水で10mLに希釈し;希釈した溶
液を上記の調製したスラリーに16分間かけて滴下して添加した。添加が終了したら、ス
ラリーを8.76の終了pHでおよそ56℃に加熱した。濾過後、湿潤ケーキを脱イオン
水(約55℃で3×300mL、最後に周囲温度で1×300mL)で洗浄した。触媒ケ
ーキを次いで真空下およそ110℃で10時間乾燥して、乾燥した1重量%のPt/C触
媒(16.2g)を得た。
【0101】
J.方法VIIIb
活性炭(15.7g)を懸濁して、スラリーを70℃に約30分間加熱しながら、撹拌
により、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)(2.44g)を含有する脱
イオン水(およそ110mL)中のスラリーを形成した。得られたスラリーのpHを、ス
ラリーを41℃に冷却しながら、1M NaOH溶液の添加によってpH6.95に調整
した。1M NaOH溶液(約10滴)によって約pH1.4に予め調整した、H2Pt
Cl6・6H2O(0.41g)の脱イオン水(およそ10mL)溶液を、炭素スラリー
に約41℃~42℃の温度で約14分間かけて滴下して添加した。得られたスラリーのp
Hは、白金溶液の添加の終了時にpH3.60まで降下し、スラリーをさらに6分間撹拌
し続けた。スラリーのpHをpH4.50に調整し、得られたスラリーを約41℃で5分
間撹拌した。スラリーのpHをpH5.50に上昇させた。スラリーを、次いで、pHを
1M NaOH溶液の添加によって約pH5.50に維持しながら、およそ10分間かけ
て60℃に加熱した。60℃の温度に達したら、スラリーのpHを約pH6.50に増加
した。スラリーの撹拌を60~62℃及びpH6.50で15分間継続し、次いで、溶液
をおよそ50℃未満に冷却した。NaBH4の14M NaOH(12重量%、0.60
g)溶液を脱イオン水で10mLに希釈し;希釈した溶液を上記の調製したスラリーに1
1分間かけて滴下して添加した。添加が終了したら、溶液を10分間撹拌し続け、次いで
、8.80の終了pHで10分間かけておよそ53℃に加熱した。濾過後、湿潤ケーキを
脱イオン水(約50℃で3×300mL)によって洗浄した。触媒ケーキを次いで真空下
およそ110℃で10時間乾燥して、乾燥した1重量%のPt/C触媒(17.1g)を
得た。
【0102】
K.方法IX
活性炭(15.7g)を懸濁して、スラリーを45℃に約30分間加熱しながら、撹拌
により、スクロース(1.20g)を含有する脱イオン水(およそ110mL)中のスラ
リーを形成した。得られたスラリーのpHを1M NaOH溶液の添加によってpH7.
63に調整した。H2PtCl6・6H2O(0.41g)の脱イオン水(およそ10m
L)溶液を炭素スラリーに約43℃~44℃の温度で約13分間かけて滴下して添加した
。得られたスラリーのpHは、白金溶液の添加の終了時にpH3.45まで降下した。約
44℃で、スラリーのpHを、5分間撹拌しながらpH3.50に調整し、次いで、10
分毎に0.5の増加量で約pH4.50まで増加させた。スラリーを、次いで、pHを1
M NaOH溶液の添加によって約pH4.50で維持しながら、およそ13分間かけて
60℃に加熱した。60℃の温度に達したら、スラリーのpHを7分間で約pH5.00
に、5分間でpH5.50に、10分間でpH6.00に、また、pH6.50に増加さ
せた。スラリーの撹拌をpH6.50で15分間継続し、次いで、溶液をおよそ50℃未
満に冷却した。NaBH4の14M NaOH(12重量%、0.60g)溶液を脱イオ
ン水で10mLに希釈し;希釈した溶液を上記の調製したスラリーに12分間かけて滴下
して添加した。添加が終了したら、溶液を10分間撹拌し続け、次いで、9.10の終了
pHで12分間かけておよそ56℃に加熱した。濾過後、湿潤ケーキを脱イオン水(約5
0℃で3×300mL、最後に周囲温度で1×300mL)によって洗浄した。触媒ケー
キを次いで真空下およそ110℃で10時間乾燥して、乾燥した1重量%のPt/C触媒
(16.2g)を得た。
【0103】
L.方法Xa
活性炭(15.6g)を懸濁させて、約27分間撹拌しながら脱イオン水(およそ11
0mL)中のスラリーを形成した。得られたスラリーのpHを1M NaOH溶液の添加
によってpH8.20に調整した。1M NaOH溶液(1.60g)によって約pH1
1.4に予め調整した、H2PtCl6・6H2O(0.41g)の脱イオン水(およそ
10mL)溶液を、炭素スラリーに、周囲温度で約18分間かけて滴下して添加した。得
られたスラリーのpHは、白金溶液の添加の終了時にpH7.69まで降下し、次いで、
スラリーを18分間撹拌し続けた。スラリーのpHをpH7.17からpH8.00まで
約28℃で調整し、2分間撹拌した。スラリーを、次いで、pHを1M NaOH溶液の
添加によって約pH8.00で維持しながら、およそ12分間かけて60℃に加熱した。
60℃の温度に達したら、スラリーの撹拌を15分間継続し、次いで、溶液をおよそ50
℃未満に冷却した。NaBH4の14M NaOH(12重量%、0.60g)溶液を脱
イオン水で10mLに希釈し;希釈した溶液を上記の調製したスラリーに11分間かけて
滴下して添加した。添加が終了したら、溶液を10分間撹拌し続け、次いで、9.54の
終了pHで10分間かけておよそ54℃に加熱した。濾過後、湿潤ケーキを脱イオン水(
約50℃で3×300mL)によって洗浄した。触媒ケーキを次いで真空下およそ110
℃で10時間乾燥して、乾燥した1重量%のPt/C触媒(15.0g)を得た。
【0104】
M.方法Xb
活性炭(15.7g)を懸濁して、スラリーを44℃に約34分間加熱しながら、撹拌
により、脱イオン水(およそ110mL)中のスラリーを形成した。得られたスラリーの
pHを1M NaOH溶液の添加によってpH8.34に調整した。H2PtCl6・6
H2O(0.41g)の脱イオン水(およそ10mL)溶液を、1M NaOH溶液(1
.79g)によって約pH11.8に予め調整した。得られた白金酸溶液を、スラリーの
pHを1M NaOH溶液によっておよそpH8.0で維持しながら、44~45℃の温
度で約20分間かけて炭素スラリーに滴下により添加した。得られたスラリーのpHは白
金溶液の添加の終了時にpH8.06で終了し、次いで、スラリーをpH8.00で20
分間撹拌し続けた。スラリーを、次いで、pHを1M NaOH溶液の添加によって約p
H8.00で維持しながら、およそ10分間かけて60℃に加熱した。60℃の温度に達
したら、スラリーの撹拌を20分間継続し、次いで、溶液をおよそ50℃未満に冷却した
。NaBH4の14M NaOH(12重量%、0.60g)溶液を脱イオン水で10m
Lに希釈し;希釈した溶液を上記の調製したスラリーに10分間かけて滴下して添加した
。添加が終了したら、溶液を10分間撹拌し続け、次いで、9.61の終了pHで10分
間かけておよそ54℃に加熱した。濾過後、湿潤ケーキを脱イオン水(約50℃で3×3
00mL)によって洗浄した。触媒ケーキを次いで真空下およそ110℃で10時間乾燥
して、乾燥した1重量%のPt/C触媒(15.2g)を得た。
【0105】
プロセスのパラメータを表5-A及び表5-Bにまとめる。
表5-A:活性炭上1%のPt触媒の調製(方法Ia~VII)のパラメータ
表5-B:活性炭上1%のPt触媒の調製(方法VIIIa~Xb、Ib)のパラメータ
【0106】
実施例8:活性炭支持体上の1重量%のPtの長期サイクル研究
実施例2を一連の反応サイクルにわたって(例えば、30または40サイクルにわたっ
て)1重量%のPt/C触媒を使用して繰り返した。第1触媒は、800℃で焼成した市
販のPt/C触媒であった。第2触媒もまた、800℃で焼成したPt/C触媒であった
。しかし、第2触媒は、実施例7における手順方法Iaに従って調製した。水素化反応の
各ランにおいて、およそ755mg(乾燥基準)の各触媒、及び150gの、酢酸中30
重量%の2,5-ジクロロニトロベンゼンを反応器内に投入した。水素を687kPa(
85psig)の圧力で反応器に仕込んだ。反応器を45℃の温度に加熱した。一連の反
応サイクルにわたるこれらのランの結果を表6に与える。
表6:サイクル対脱塩素
【0107】
両方の触媒が、長期使用後に良好な安定性を示した。結果は、好ましい脱塩素化合物2
-クロロアニリンへのより高い選択性が両方の触媒において一連のサイクルにわたって観
察されたことを確認している。これらの結果は、実施例6に提示されているものと一致し
ている。
【0108】
実施例9:活性炭支持体上の1重量%のPtの長期サイクル研究
実施例8から調製した触媒の触媒表面を、STEMを使用して、焼成後及び43の水素
化反応サイクルでの使用後に撮像した。
図6及び7は、焼成後の触媒表面の一連の画像を
表す。
図8及び9は、43の水素化反応サイクル後の触媒表面の一連の画像を表す。これ
らの画像は、触媒が、多数の反応サイクルにわたって安定である(例えば、浸出に対して
耐性がある)ことを示している。
【0109】
実施例10:活性炭支持体の分析
実施例9で1重量%のPt/C触媒において、及び実施例6で5重量%のPt/Cにお
いて使用した活性炭支持体を、ラングミュア窒素吸収法を使用して、物性、例えば表面積
について分析した。分析の結果を表7に与える。マイクロポア表面積は、2nm未満であ
るポアに起因している。外部表面積は、2nm超であるポアに起因している。
表7:選択した触媒の活性炭支持体の物性
1:実施例9で1重量%のPt/C触媒に使用した活性炭支持体。
2:実施例6で5重量%のPt/0.5重量%のFe/C触媒に使用した活性炭支持体。
【0110】
実施例11:焼成した白金触媒による水素圧の効果
実施例2を、800℃で焼成した1重量%のPt/C触媒によって繰り返した。このラ
ンにおいて、水素圧を、同じ床の触媒を使用しながら、反応サイクル1~33における6
87kPa(85psig)から反応サイクル34~40における963kPa(125
psig)まで増加させた。酢酸中の2,5-ジクロロニトロベンゼン溶液(30重量%
)及び45℃の反応温度を使用した。異なるサイクルにおけるこの実験の結果を表8に与
える。
表8:焼成した白金触媒による水素圧対脱塩素
【0111】
結果は、より高い水素圧が反応をある程度加速したことを示している。また、水素圧の
増加は、3-CA/2-CAの比の増加によって示されているように、3-クロロアニリ
ン形成への脱塩素を僅かに好んだ。
【0112】
実施例12:水素化の際の触媒の白金浸出
実施例2を、1重量%のPt/C触媒(焼成せず)及び900℃で焼成した1重量%の
Pt/C触媒によって繰り返した。1重量%のPt/C触媒は市販のPt/C触媒であっ
た。水素化反応手順のこれらのランにおいて、およそ755mg(乾燥基準)の触媒、及
び150gの、酢酸中30重量%の2,5-ジクロロニトロベンゼンを反応器内に投入し
た。水素を687kPa(85psig)の圧力で反応器に仕込んだ。反応器を45℃の
温度に加熱した。水素化サイクル(サイクル1、2、及び3)の終わりに反応混合物を誘
導結合プラズマ(ICP)法による白金金属分析を介して白金浸出について評価した。白
金金属分析の結果を表9に与える。
表9:反応生成物混合物のICP金属分析
【0113】
触媒の焼成は、反応環境における白金浸出を明らかに減少させた。
【0114】
実施例13:種々の方法によって調製した触媒の性能
実施例2を、実施例10に記載されている活性炭支持体上の、実施例7に示されている
方法によって調製した様々な触媒によって繰り返した。触媒を、使用前に、高温(例えば
、800℃、825℃、もしくは850℃)で焼成し、または焼成しなかった。水素化反
応手順の各ランにおいて、およそ755mg(乾燥基準)の各触媒、及び150gの、酢
酸中30重量%の2,5-ジクロロニトロベンゼンを反応器内に投入した。水素を687
kPa(85psig)の圧力で反応器に仕込んだ。反応器を65℃の温度に加熱した。
これらのランの結果(第1及び第2サイクルの平均データ)を表10に与える。
表10:種々の方法によって調製した触媒の性能のまとめ
1:方法Iaの最初のpHをpH8.47に調整した;2:NaBH
4還元なし;3:5
%の水素ガスの存在下で焼成。
【0115】
2,5-ジクロロアニリンの脱塩素における2-及び3-クロロアニリンへの選択性損
失は、活性炭支持体の性質及び空隙率に依存している。炭素タイプA上に調製した触媒は
、脱塩素化された生成物をあまり付与しないようであった。
【0116】
同じタイプの活性炭上に種々のパラメータ、例えばpH及び温度によって調製した(例
えば、方法Ia、II、III、IV、V、VI、及びVII)触媒によって観察された
脱塩素選択性に有意な差は存在していない。
【0117】
2-及び3-クロロアニリンへの僅かに増加した脱塩素は、クロロ白金酸溶液のpHを
より高いpH(例えば、約pH11)に予め調整した、方法Xa及びXbによって調製し
た触媒によって観察された。
【0118】
より良好な脱塩素選択性は、白金前駆体を還元していない方法Ibによって調製した触
媒によって達成された。しかし、触媒の活性は、より長い反応時間を有すると表されてい
るように、より低いことが観察された。改良された選択性でのより低い活性は、水素化反
応の際に水素によってインサイチュ還元されて、結果として、過剰なオストワルド熟成型
の白金移動をもたらした、白金の過剰な凝集に起因した。より良好なアプローチは、高温
で不活性雰囲気において炭素上で未還元白金前駆体を焼成することである。金属酸化物は
、概して、支持体表面においてより高い移動度を有するため、不活性雰囲気における未還
元白金前駆体の高温焼成は、白金を炭素によって高温(例えば、800℃)で還元する前
にさらなる白金凝集をもたらす。このことは、観察された良好な脱塩素選択性(すなわち
、0.16mol%)の結果と一致しているが、より長い反応時間(すなわち、69.9
分)とは一致していない。
【0119】
概して、水素雰囲気下での触媒の高温処理は、白金表面上への炭素質材料の起こり得る
スピルオーバーに起因する触媒活性を低減した。
【0120】
実施例14:種々の方法によって調製した触媒の性能
実施例13の実験13.15(すなわち、触媒をNaBH
4還元によらずに調製した)
からの触媒表面を、STEMを使用して、焼成前及び(800℃で)焼成後に撮像した。
図10及び11は、焼成前の触媒表面の一連の画像を表す。
図12及び13は、800℃
で焼成後の触媒表面の一連の画像を表す。これらの画像は、触媒が、高温(例えば、80
0℃)における炭素上の未還元白金前駆体の焼成後に白金凝集をもたらすことを示してい
る。実験13.17からの触媒表面もまた、STEMを使用して、(750℃において5
%の水素ガスの存在下で)焼成後に撮像した。
図14及び15は、750℃において5%
の水素ガスの存在下で焼成後の触媒表面の一連の画像を表す。これらの画像は、水素雰囲
気下での触媒の高温処理が、炭素上への未還元白金前駆体の白金凝集を低減することを示
している。
【0121】
実施例15:種々の反応溶媒における水素化パラメータ
実施例2を、活性炭(実施例10のタイプB)上に実施例7の方法Vによって調製した
触媒によって繰り返し、この触媒を、焼成せずに合成したまま使用し;反応溶媒をラン間
で変化させた。水素化反応手順のこれらのランにおいて、およそ755mg(乾燥基準)
の触媒、及び150gの、溶媒(すなわち、酢酸、イソプロパノール、またはメタノール
)中30重量%の2,5-ジクロロニトロベンゼンを反応器内に投入した。反応器に仕込
む水素の量は、酢酸またはイソプロパノールのいずれかにおけるランでは687kPa(
85psig)であり、メタノールにおけるランでは584kPa(70psig)であ
った。反応器の温度を、(酢酸もしくはイソプロパノールのいずれかにおけるランでは)
65℃、(イソプロパノールにおけるランでは)55℃、または(メタノールにおけるラ
ンでは)45℃で変動させた。9反応サイクル後のこれらのランの結果を表11に与える
。
表11:種々の溶媒における反応パラメータ
【0122】
酢酸中で触媒が同様の性能を有するために、反応パラメータ(すなわち、反応温度及び
水素圧)をイソプロパノールまたはメタノールのいずれかにおけるラン用に調整した。イ
ソプロパノール(55℃、85psig H2)またはメタノール(45℃、70psi
g H2)のいずれかにおける2-及び3-クロロアニリンへの脱塩素は、表11に示さ
れている、酢酸(65℃、85psig H2)におけるものと同様である。平均反応時
間は、酢酸(65℃で、85psig H2)、イソプロパノール(65℃で、85ps
ig H2)、イソプロプナオール(isopropnaol)(55℃で、85psi
g H2)、及びメタノール(45℃で、70psig H2)で、それぞれ、36.9
、36.6、39.9及び41.0分の時点で全ての条件下で同様であった。
【0123】
本発明またはその好ましい実施形態(複数可)の要素を導入するとき、冠詞「1つの(
a)」、「1つの(an)」、「上記(the)」及び「上記(said)」は、1以上
のかかる要素が存在することを意味することが意図される。用語「含む(compris
ing)」、「含む(including)」及び「有する(having)」は、包括
的であり、また、列挙されている要素以外のさらなる要素が存在していてよいことを意味
することが意図される。
【0124】
上記に鑑みて、本発明のいくつかの目的が達成され、他の有利な結果が達成されている
ことが分かる。
【0125】
上記の触媒及びプロセスにおいて発明の範囲から逸脱することなく種々の変更がなされ
得るように、上記の詳細な説明に含まれ、また、添付の図(複数可)に示されている全て
の事項が、例示的であり、また、限定的な意味ではないと解釈されることが意図される。