(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】沈降を低減するための高伝導性添加剤
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230727BHJP
C08K 7/16 20060101ALI20230727BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230727BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20230727BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K7/16
C08K3/22
C08K9/04
C08K3/04
(21)【出願番号】P 2021519690
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 US2019055514
(87)【国際公開番号】W WO2020077031
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-04-26
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507381329
【氏名又は名称】ロード コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】フォーンズ,ティモシー
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-342021(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0111111(US,A1)
【文献】特開平09-100394(JP,A)
【文献】特表2007-538135(JP,A)
【文献】特開2007-258015(JP,A)
【文献】特開2009-263405(JP,A)
【文献】特開2016-180089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
H01B 1/00-1/24
H01B 3/00-3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
前記組成物は:
反応性有機マトリクス;
前記組成物の総体積ベースで少なくとも50体積%を構成し、
及び少なくとも5マイクロメートルの粒径
を有し、及び少なくとも15W/mKの熱伝導率を有する、熱伝導性一次充填剤;並びに
不規則構造を有する最長寸法の測定値が400nm超の集合体を形成するように凝集する、粒径100nm未満の粒子で構成された、熱伝導性二次充填剤
を含む、組成物。
【請求項2】
前記一次充填剤は概ね球状の形状を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記二次充填剤の熱伝導率は少なくと
も10W/mKである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記一次充填剤
の粒径は少なくと
も25マイクロメートルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記一次充填剤の熱伝導率は少なくと
も20W/mKである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記一次充填剤は金属酸化物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記一次充填剤の表面積
は10m
2/g未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記二次充填剤は、前記組成物の総体積ベース
で1.0体積%未満の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記二次充填剤は、前記組成物の総体積ベース
で0.5体積%未満の量で存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記二次充填剤の表面積は少なくと
も100m
2/gである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記二次充填剤は
、粒径
が10ナノメートル
~50ナノメートルの粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記二次充填剤は、酸化マグネシウム又はグラファイト化カーボンブラックのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記反応性有機マトリクスは、エポキシ、アクリレート、ウレタン、又はシリコーンのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
硬化剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記反応性有機マトリクスは硬化している、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記一次充填剤及び前記二次充填剤のうちの少なくとも一方は、電気伝導性粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
硬化した前記組成物の絶縁耐力は少なくとも3kV/mmである、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記二次
充填剤は表面処理されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記二次
充填剤は、ヘキサメチルジシルザン及びポリジメチルシロキサンのうちの少なくとも一方で処理されている、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月10日出願の米国仮特許出願第62/743,895号、発明の名称「沈降を低減するための高伝導性添加剤(HIGHLY CONDUCTIVE ADDITIVES TO REDUCE SETTLING)」からの、米国特許法第35条の下での優先権を主張するものであり、上記仮特許出願の開示は参照により本出願に援用される。
【0002】
本発明は、沈降しやすい大きな一次伝導性充填剤と、沈降に対する耐性を有する小さな二次伝導性充填剤とを含む、充填樹脂系に関する。充填剤の適切な選択及び組み合わせにより、高い熱伝導性を保持しながら沈降に対する耐性を有する、組成物を提供する。
【背景技術】
【0003】
封入剤、空隙充填剤、及び接着剤の熱伝導性を高めるために使用されるような(マイクロメートルサイズの)粒子の沈降は、このような材料の商業的な成功を制限する、偏在する課題である。沈降は、接着剤の保管及び輸送中に発生する場合があり、エポキシ又はウレタン等の特定の接着剤の化学組成では、これによって樹脂の粘度が低下するため、熱によって悪化する可能性がある。その結果、充填剤の不均一な分布を含む材料がもたらされ、これは、使用前に再均質化するのが極めて困難である場合があり、及び/又は使用中に急速に沈降する可能性がある。そのため、配合物に少量のヒュームドシリカを採用することが多く、これによって低いせん断粘度を高めて、沈降を大幅に低減する。残念ながら、このアプローチとのトレードオフとして、ヒュームドシリカが相対的に非伝導性であることによる、材料の熱伝導性の損失がある。このトレードオフは、元の配合物中の(マイクロメートルサイズの)伝導性粒子の濃度が高いほど顕著になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、従来技術の沈降防止助剤に関連するトレードオフを有しない、非沈降性の又は沈降が大幅に低減された伝導性配合物に対して、需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の実施形態では、反応性有機マトリクスと、多量の一次充填剤と呼ばれる大きな伝導性粒子と、少量の二次充填剤と呼ばれる大幅に小さな伝導性粒子とを含む、組成物が提供される。上記一次充填剤及び上記二次充填剤は、上記反応性有機マトリクス中に分散され、上記二次充填剤は、上記組成物の全体的な伝導性を損なうことなく、上記一次充填剤粒子の沈降を防止する、沈降防止特性を有する粒子を含む。
【0006】
本発明の別の実施形態では、反応性有機マトリクス、一次充填剤、及び二次充填剤を含む組成物が提供され、上記組成物は、上記一次充填剤の沈降の大幅な低減を示しながら、上記二次充填剤を含まない組成物に比べて、これに対応して伝導性を大幅に低下させることがない。このような結果は、粒径が上記一次充填剤よりもはるかに小さく、かつ表面積が上記一次充填剤よりもはるかに大きな、熱伝導性材料を含む少量の上記二次充填剤を用いることによって、達成される。この点に関して、一旦基板に塗布して硬化させると、例えば上記組成物を熱源とヒートシンクとの間に配置した場合に、上記組成物の第1の表面から第2の表面への、個々の充填剤粒子を通した直接の熱伝達経路が確立される。
【0007】
サイズが小さいものの表面積が極めて大きな二次伝導性充填剤は、組成物全体の伝導性を犠牲にすることなく、ヒュームドシリカ等の従来の沈降防止助剤を用いた場合と同等の、強化された沈降防止特性を組成物に提供する。更に上述の組み合わせは、比較的高いせん断速度における良好な流動と、組成物が硬化したときの比較的高い伝導性とを維持する。更にこのような添加剤により、白色又は黒色の外観を有する接着剤の製造が可能となり、この外観は、2パート式組成物の混合の程度の評価に特に有用である。本発明は、沈降を防止するものの熱伝導性に悪影響を及ぼす従来技術のヒュームドシリカ添加物を上回る、相当な利点を提供する。原則として、このような独自の添加物は、樹脂の化学組成にかかわらず、沈降の少なさ及び伝導性の高さが必要ないずれの充填配合物に使用してよい。
【0008】
本発明の好ましい一実施形態では、組成物が提供され、上記組成物は:反応性有機マトリクス;組成物の総体積ベースで少なくとも50体積%を構成し、少なくとも約5マイクロメートルの平均粒径、及び少なくとも約15W/mKの熱伝導率を有する、熱伝導性一次充填剤;並びに不規則構造を有する最長寸法の測定値が400nm超の集合体を形成するように凝集する、平均粒径100nm未満の粒子で構成された、熱伝導性二次充填剤を含む。
【0009】
従って、以下の「発明を実施するための形態」をより良好に理解できるよう、及び当該技術分野への本発明の寄与をより良好に理解できるよう、本発明の更に重要な特徴をかなり広く概説した。これ以降に記載される、本明細書に添付の特許請求の範囲の主題を形成する本発明の更なる特徴が存在することは明らかである。この点に関して、本発明の複数の実施形態を詳細に説明する前に、本発明はその適用において、以下の説明に記載されている又は図面に図示されている詳細及び構成、並びに部品の配置に限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、様々な方法で実践及び実行できる。
【0010】
また、本明細書中の表現及び用語は、説明を目的としたものであり、いかなる点においても限定的なものとみなすべきではないことを理解されたい。本開示のベースとなる概念、並びに上記概念を、本発明の開発の複数の目的を実行するための他の構造、方法、及びシステムの設計の基礎として容易に利用できることは、当業者には理解されるだろう。重要な点として、特許請求の範囲は、このような同等の構成が本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、これらを含むものとみなされる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の実施形態では、反応性有機マトリクス、伝導性一次充填剤、及び伝導性二次充填剤を含む組成物が提供される。上記一次充填剤は、一次バルク熱(又は電気)伝導性を上記組成物に提供する。これらの一次充填剤は典型的には金属、セラミック、及びガラスである。最も一般的には、上記充填剤は、酸化アルミニウム、アルミニウム三水和物(若しくは水酸化アルミニウム)、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化ベリリウム、及び窒化ホウ素のうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
本発明の別の実施形態では、上記一次充填剤は、最大寸法において約1~約100マイクロメートルの平均粒径を有するが、上記一次充填剤は好ましくは、球体を近似した形状を有する。本発明の最も好ましい実施形態では、上記一次充填剤は、少なくとも約25マイクロメートルかつ約75マイクロメートル未満の直径、及び対応する約0.1~0.2m2/gの表面積を有する、球形粒子を含む。更に本発明のある実施形態では、上記一次充填剤の熱伝導率は、少なくとも約20W/m・K、好ましくは少なくとも約30W/m・Kである。
【0013】
本発明の別の実施形態では、2つの別個の粒径分布、即ち比較的大きな一次充填剤及び比較的小さな一次充填剤を有する、上記一次充填剤が含まれる。上記2つの粒径分布の間を効率的に埋めるために、上記比較的大きな一次充填剤は概ね球形であり、上記比較的小さな一次充填剤の約10倍の大きさである。このようにすると、上記比較的大きな一次充填剤の平均粒径は約25~約75マイクロメートルであり、上記比較的小さな一次充填剤の平均粒径は約2.5~約7.5マイクロメートルである。
【0014】
本発明の更なる実施形態では、上記二次充填剤の表面積は、少なくとも約100m2/g、好ましくは少なくとも約150m2/g、最も好ましくは約200m2/g超である。上記二次充填剤の大きな表面積は、樹脂系との十分な相互作用を提供し、これにより、樹脂系との二次結合機序(例えば水素結合、ファンデルワールス力等)によって粘度を上昇させる、即ち増粘する。特定の状況では、上記二次充填剤は、二次充填剤粒子の相互接続ネットワークの形成による粘度の上昇によって、会合性増粘剤として作用できる。増粘のレベルは、粒子の上記表面積及びサイズの小ささ(まとめると、量)によって強化される。増粘は、接着性配合物の保管又は輸送中等にせん断応力が存在しないか、又はせん断応力が少量である場合に、最も顕著となる。この増粘は、このような条件下における一次充填剤粒子の沈降を大幅に低減するか、又は防止する。更に、二次充填剤粒子の二次結合及び/又は関連するネットワークは、高いせん断速度において容易に破壊でき、これにより接着剤は、接着剤分注操作中に容易に流動する。本発明の一実施形態では、上記二次充填剤の熱伝導率は、少なくとも約10W/m・K、好ましくは少なくとも約20W/m・K、最も好ましくは少なくとも約50W/m・Kである。
【0015】
本発明のある好ましい実施形態では、上記二次充填剤は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、及びグラファイト含有量が高い炉グレードカーボンブラック等の伝導性カーボンブラック又はグラファイトのうちの少なくとも1つを含む。
【0016】
本発明のある実施形態では、上記二次充填剤は、平均粒径が約100nm未満、好ましくは約10nm~約50nmの、複数の概ね球形の個別の粒子を含む。これらの個別の粒子は、「集合して(clump)、又は凝集して、上述の大きな表面積を有する粒子集合体を形成する。更に上記個別の粒子は、互いの中へと物理的に結合/埋入/融合して、この集合体の構成を形成してよい。本発明の一実施形態では、上記集合体は不規則形状であり、最大寸法が約200nm~約600nmであるが、その不規則な形状により、様々な寸法における上記集合体の長さには大きなばらつきがある場合がある。本発明のある好ましい実施形態では、上記集合体は、最大寸法が約400nm超である。
【0017】
このようにして、上記集合体は、「ブドウの房状の(grape bunch‐like)」構造を呈し、これは、上記個別の粒子間の熱伝導性を向上させ、これは更に、上記一次充填剤と上記二次充填剤との組み合わせによって提供された上記組成物を通る、及び上記組成物の間の、連続した又は略連続した経路が存在する場合に、上記一次充填剤粒子間の熱伝導性を向上させる。
【0018】
本発明の別の実施形態では、上記二次充填剤は、上記二次充填剤の不規則性を増すために、少なくとも2つの粒子形状、例えば長いロッド又はプレート/平坦な形状と球形との混合物を含む。上記ロッド/プレートは典型的には、長さが約50nm~約数百ナノメートルである。異なる形状の粒子の混合物を使用することによって、全体的な効果は、ロッド/プレートと球形との凝集となり、これは極めて大きな表面積の、分岐した鎖状の非晶質構造を形成する。
【0019】
本発明の更なる一実施形態では、上記二次充填剤を処理して、上記充填剤の表面化学組成を変更する。典型的には、上記二次充填剤を処理して、上記二次充填剤と上記反応性有機マトリクスとの間の相互作用を刺激する。これは、上記二次充填剤を物理的に会合させて、上記反応性有機マトリクス全体に均一に分散させるのではなく、上記反応性有機マトリクス内でネットワークを形成する、機序を提供する。これは、個別の二次粒子間の、及び上記一次充填剤と上記二次充填剤との間の、より多くの接触を促進して、組成物の伝導性を更に向上させる。本発明のある具体的実施形態では、上記二次充填剤を、疎水性シラン、疎水性有機チタン酸塩、ヘキサメチルジシルザン、及びポリジメチルシロキサンのうちの少なくとも1つで処理する。
【0020】
本発明の一実施形態では、上記一次充填剤は、上記組成物の体積の大部分として存在する。従って上記一次充填剤は、上記組成物の総体積ベースで50体積%超、より好ましくは60体積%超、最も好ましくは約65体積%超の量で存在する。
【0021】
本発明の別の実施形態では、上記二次充填剤は、上記組成物の体積のかなり小さな部分として存在する。従って上記二次充填剤は、上記組成物の総体積ベースで約1.0体積%未満、好ましくは約0.5体積%未満、より好ましくは約0.1体積%未満の量で存在する。二次充填剤を添加しすぎると、接着剤の分注が実施される比較的高いせん断速度において、望ましくない粘度の上昇が発生する。
【0022】
本発明の一実施形態では、上記組成物は熱伝導性であるが電気絶縁性である。熱伝導性組成物の典型的な用途は、上記熱伝導性組成物が電気絶縁性であり、少なくとも3、好ましくは少なくとも5、最も好ましくは少なくとも10kV/mmの絶縁耐力を有することを必要とすることが多い。従って本発明のある実施形態では、上記二次充填剤は、組成物全体が電気絶縁性のままであれば、電気伝導性の充填剤を含んでよい。従って、組成物全体の絶縁耐力が少なくとも3kV/mmである限り、銀等の高電気伝導性二次充填剤を用いてよい。
【0023】
対照的に、一部の用途は組成物に電気伝導性を要求するため、本発明の更なる実施形態では、上記一次充填剤は、銀、アルミニウム等といった電気伝導性充填剤を含む。
【0024】
上記一次及び二次充填剤材料を反応性有機マトリクスに組み込んで、上記組成物に伝導性を提供する。上記反応性有機マトリクスは、熱硬化性又は熱可塑性材料であってよく、多様な市販の樹脂及びエラストマ、例えばポリウレタン、ポリイミド、ナイロン、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ、ポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトン、シリコーン、フルオロシリコーン、熱可塑性エラストマ、アクリル、並びにこれらのコポリマー及びブレンドから選択できる。
【0025】
本発明のある好ましい実施形態では、上記反応性有機マトリクスはエポキシ樹脂を含むが、他の樹脂及びポリマー化学物質上に構築された系も、同じ充填剤の組み合わせを利用して同様の特性を得ることができる。典型的には、上記反応性有機マトリクスは、組成物の総体積ベースで50体積%未満、好ましくは40体積%未満、より好ましくは約35体積%未満の量で存在する。
【0026】
本発明の別の実施形態では、上記組成物は更に、硬化剤、及び任意に触媒を含む。エポキシ系のための好ましい硬化剤はアミン無水物を含み、触媒はイミダゾールを含む。
【0027】
本発明の更なる実施形態では、反応性有機マトリクスとしての使用に好適な樹脂材料は、ポリシロキサン、フェノール、ノボラック樹脂、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエステル、マレイミド樹脂、シアネートエステル、ポリイミド、ポリ尿素、シアノアクリレート、及びこれらの組み合わせを含む。硬化の化学反応は、化合物中で使用されるポリマー又は樹脂に依存することになる。例えばシロキサンマトリクスは、付加反応硬化性マトリクス、縮合反応硬化性マトリクス、過酸化物反応硬化性マトリクス、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0028】
本発明の更なる実施形態では、上記組成物は、溶媒、希釈剤、難燃剤、着色剤、硬化阻害剤、更なる粘度改変剤等の任意の材料を含む。
【0029】
本発明の一実施形態では、上記組成物は、パートA及びパートBを含む2パートキットで提供される。配合後、ハンドヘルドコーキングガンを用いた、又はプログレッシブキャビティ若しくは容積式計量システム等の自動分注設備による、後の反応性計量混合処理に使用するために、2つのパートを別個に保管する。適用の直前、これらの成分を混合して、反応性混合物として基板へと送達し、その場で硬化させる。
【0030】
上述の2パート系の代わりに、1パート系を、例えば大気中の水分によって活性化される加水分解性多官能性シラン若しくはシロキサン、又は室温に加熱すると反応する冷凍/低温保蔵組成物を含むものとして、提供してよい。
【0031】
特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これらの実施形態は、本発明の原理の単なる例示であることを認識されたい。本発明の組成物、装置、及び方法を、他の方法及び実施形態で構築及び実装してもよいことは、当業者には理解されるだろう。従って本明細書中の説明は、本発明を限定するものとして読んではならない。というのは、他の実施形態も、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内となるためである。
【実施例】
【0032】
実施例のリスト
・表1:具体的な「二次充填剤」を含む沈降防止充填剤のリスト
・エポキシ/酸化アルミニウム(一次充填剤)の実施例:
○表2:沈降防止充填剤を含まないAサイド(ベースライン)
○表3:ベースライン+ヒュームドシリカ(従来技術)
○表4:ベースライン+MgO(二次充填剤)
○表5:ベースライン+HGCB(二次充填剤)
○表6:表2~5に列挙された全てのAサイド配合物の硬化に使用される、Bサイド
○表7:結果の概要
・ポリウレタン/酸化アルミニウム(一次充填剤)の実施例:
○表8:沈降防止充填剤を含まないポリオールAサイド(ベースライン)
○表9:ポリオールベースライン+ヒュームドシリカ(従来技術)
○表10:ポリオールベースライン+HGCB(二次充填剤)
○表11:沈降防止充填剤を含まないイソシアネートBサイド(ベースライン)
○表12:イソシアネートベースライン+ヒュームドシリカ(従来技術)
○表13:イソシアネートベースライン+HGCB(二次充填剤)
○表14:結果の概要
・シリコーン/酸化アルミニウム(一次充填剤)の実施例:
○表15:沈降防止充填剤を含まないビニルシリコーンAサイド(ベースライン)
○表16:ビニルベースライン+ヒュームドシリカ(従来技術)
○表17:ビニルベースライン+HGCB(二次充填剤)
○表18:沈降防止充填剤を含まない水素化物シリコーンBサイド(ベースライン)
○表19:水素化物ベースライン+ヒュームドシリカ(従来技術)
○表20:水素化物ベースライン+HGCB(二次充填剤)
○表21:結果の概要
・シリコーン/アルミニウム三水和物酸化物(一次充填剤)の実施例:
○表22:沈降防止充填剤を含まないビニルシリコーンAサイド(ベースライン)
○表23:ビニルベースライン+ヒュームドシリカ(従来技術)
○表24:ビニルベースライン+HGCB(二次充填剤)
○表25:沈降防止充填剤を含まない水素化物シリコーンBサイド(ベースライン)
○表26:水素化物ベースライン+ヒュームドシリカ(従来技術)
○表27:水素化物ベースライン+HGCB(二次充填剤)
○表28:結果の概要
・絶縁耐力の概要
【0033】
【0034】
【0035】
表2は、エポキシ樹脂、黒色顔料、及び一次充填剤(合計~65体積%)を含有するベースライン配合物(Aサイド)である。この配合物は、特にこの配合物の分注が行われる典型的な温度、即ち≧60℃において、有意な沈降を示す。
【0036】
表3~5は、同一のベースラインに由来する配合物であるが、それぞれ、表1に記載されている極めて少量のシリコーン処理済みヒュームドシリカ、MgO、及びHGCBを含有する。なお、配合物をそれぞれ白色及び黒色に着色する能力を実証するために、ベースライン配合物中の黒色顔料(80重量%のビスフェノールAのジグリシジルエーテル中の20重量%のカーボンブラックの分散物)を、最後の2つの配合物からは除去した。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
表6は、表2~5に記載の各Aサイドの硬化に使用されるBサイド配合物を示す。AとBとの混合比は重量で1:1であった。全ての配合物及び表6の配合物との組み合わせは、DAC800 Hauschildを用いて真空下で成分を混合することによって調製した。Aサイドの沈降の程度は、60℃に設定した予熱済みオーブン中に1時間静置した後に配合物を検査することによって監視した。混合後の配合物の熱伝導率は、90℃で2時間、及びそれに続いて160℃で2時間硬化させた試料に関して、Netzsch LFA 447 Nanoflash熱テスターを用いて、ASTM E1461に従って測定した。
【0042】
【0043】
表7は、ベースラインAサイド配合物にシリコーン処理済みヒュームドシリカを添加すると、室温及び60℃において酸化アルミニウム一次充填剤の沈降がなくなるが、熱伝導率が大幅に低下することを示している。一方、表面積が大きく高伝導性の二次充填剤MgO又はHGCBを使用すると、一次充填剤の沈降もなくしながら、伝導率が改善される。最後にこれら2つの添加剤は、Aサイド配合物上に、完全な白色又は黒色を生成できる。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
全てのAサイド及びBサイド配合物は、DAC800 Hauschildを用いて真空下で成分を混合することによって調製した。Aサイドの沈降の程度は、60℃に設定した予熱済みオーブン中に1時間静置した後に配合物を検査することによって監視した。沈降後の材料の上部の流体層の高さの測定値。昇温下でのイソシアネートの反応性により、Bサイド配合物について沈降は測定しなかった。混合後の配合物の熱伝導率は、室温で5日間硬化させた試料に関して、Hot Disk TPS 2500S熱伝導率テスターを用いて、ISO22007‐2に従って測定した。混合後の配合物は、A及びBサイドを体積比1:1のカートリッジから分注することによって調製した。
【0051】
【0052】
表14は、沈降防止添加剤を含有しない、ヒュームドシリカを含有する、及びHGCBをベースとする二次充填剤を含有する、ポリオール/酸化アルミニウム(Aサイド)の沈降挙動、並びに混合及び硬化後の配合物の熱伝導率を比較する。ヒュームドシリカ及びHGCBはいずれもAサイドの沈降を低減しているが、ヒュームドシリカはベースラインの熱伝導率を低下させており、一方でHGCBは、沈降防止添加剤を含有しないベースラインの伝導率を維持している。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
全てのAサイド及びBサイド配合物は、DAC800 Hauschildを用いて真空下で成分を混合することによって調製した。Aサイド及びBサイドベースライン配合物はいずれも沈降しやすかった。沈降の程度は、60℃に設定した予熱済みオーブン中に1時間静置した後に配合物を検査することによって監視した。混合後の配合物の熱伝導率は、100℃で1時間硬化させた試料に関して、Hot Disk TPS 2500S熱伝導率テスターを用いて、ISO22007‐2に従って測定した。混合後の配合物は、DAC800 Hauschildを用いて真空下でA及びBサイドを重量比1:1で混合することによって調製した。
【0060】
【0061】
表21は、酸化アルミニウム一次充填剤を含有し、かつ沈降防止添加剤を含有しない(ベースライン)、ヒュームドシリカを含有する、又はHGCBをベースとする二次充填剤を含有する、シリコーンAサイド及びBサイド配合物の沈降挙動、並びに混合及び硬化後の配合物の熱伝導率を比較する。ヒュームドシリカ及びHGCBはいずれもAサイドの沈降をなくしているが、ヒュームドシリカはベースラインの熱伝導率を低下させており、一方でHGCBは、沈降防止添加剤を含有しないベースラインの伝導率を維持している。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
全てのAサイド及びBサイド配合物は、DAC800 Hauschildを用いて真空下で成分を混合することによって調製した。Aサイド及びBサイドベースライン配合物はいずれも沈降しやすかった。沈降の程度は、60℃に設定した予熱済みオーブン中に1時間静置した後に配合物を検査することによって監視した。混合後の配合物の熱伝導率は、100℃で1時間硬化させた試料に関して、Hot Disk TPS 2500S熱伝導率テスターを用いて、ISO22007‐2に従って測定した。混合後の配合物は、DAC800 Hauschildを用いて真空下でA及びBサイドを重量比1:1で混合することによって調製した。
【0069】
【0070】
表28は、アルミニウム三水和物一次充填剤を含有し、かつ沈降防止添加剤を含有しない(ベースライン)、ヒュームドシリカを含有する、又はHGCBをベースとする二次充填剤を含有する、シリコーンAサイド及びBサイド配合物の沈降挙動、並びに混合及び硬化後の配合物の熱伝導率を比較する。ヒュームドシリカ及びHGCBはいずれもAサイドの沈降をなくすか、最小限に抑えているが、ヒュームドシリカはベースラインの熱伝導率を低下させており、一方でHGCBは、沈降防止添加剤を含有しないベースラインの伝導率を維持している。
【0071】
【0072】
表29は、ヒュームドシリカ(従来技術)及び二次充填剤を含有する硬化済みの配合物に関する、ASTM D149に従って測定された絶縁耐力をまとめたものである。全ての場合において、二次充填剤は、絶縁耐力3kV/mm超の電気絶縁特性を提供する。実施例は電気伝導性のHGCBを含有しているため、この効果は特に注目に値する。