IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スミダ・コンポーネンツ・アンド・モジュールズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許-誘導性部品 図1a
  • 特許-誘導性部品 図1b
  • 特許-誘導性部品 図2a
  • 特許-誘導性部品 図2b
  • 特許-誘導性部品 図2c
  • 特許-誘導性部品 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】誘導性部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20230727BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20230727BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
H01F30/10 H
H01F30/10 G
H01F37/00 G
H01F37/00 H
H01F27/32 101
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021575044
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2020066912
(87)【国際公開番号】W WO2020254480
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】102019208884.8
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507125295
【氏名又は名称】スミダ・コンポーネンツ・アンド・モジュールズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホフバウアー,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ピルスル,ライナー
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-340680(JP,A)
【文献】実開平05-041119(JP,U)
【文献】特開2018-067674(JP,A)
【文献】特開平11-297535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 37/00
H01F 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導性部品(100)であって、
磁気コア(10)と、
少なくとも1つの巻線(W)と、
前記少なくとも1つの巻線(W)で巻かれたコイル本体(30)であって、
前記少なくとも1つの巻線(W)への電気的接続のために、前記コイル本体(30)の接触ストリップ(33)に取り付けられた少なくとも1つの接触要素(50)と、
前記磁気コア(10)が部分的に受け入れられる磁気コアレセプタクル(31)と、
前記接触ストリップ(33)に形成され、前記磁気コアレセプタクル(31)に受け入れられた前記磁気コア(10)の下および前記少なくとも1つの接触要素(50)の上に延び、部分的にのみ前記接触ストリップ(33)に沿って前記接触ストリップ(33)の長手方向に延在する細長い凹部(32)と、を含む、コイル本体(30)と、
前記接触ストリップ(33)に取り付けられ、前記少なくとも1つの接触要素(50)に関して、前記少なくとも1つの接触要素(50)に面する前記磁気コア(10)の側面(14)を少なくとも部分的に覆う、電気絶縁材料から形成されたカバーキャップ(20)と、
を備え、
前記カバーキャップ(20)は、前記カバーキャップ(20)が、前記少なくとも1つの接触要素(50)に関して前記少なくとも1つの接触要素(50)に面する前記磁気コア(10)の前記側面(14)を少なくとも部分的に覆う第1の壁セクション(22)を含み、前記磁気コア(10)の前記側面(14)と垂直に延び、前記コイル本体(30)に形成された前記凹部(32)に挿入される第2の壁セクション(23)を含み、
前記第2の壁セクション(23)は、前記磁気コア(10)と、前記コイル本体(30)内の前記少なくとも1つの接触要素(50)との間に延び、
前記カバーキャップ(20)は、前記第1の壁セクションおよび前記第2の壁セクション(22、23)と垂直に配向された第3の壁セクション(25)および第4の壁セクション(27)をさらに含み、前記第3の壁セクション(25)および前記第4の壁セクション(27)は、互いに平行に、そしてそれぞれが前記第1の壁セクション(22)の縁に沿って延び、
前記コイル本体(30)内の前記凹部(32)は、3つの溝形状凹部セクション(32a、32b、32c)から形成され、これらのそれぞれは、前記第2の壁セクションから前記第4の壁セクション(23、25、27)を部分的に受け入れるように形成される、誘導性部品(100)。
【請求項2】
前記カバーキャップ(20)の前記第1の壁セクション(22)は、前記磁気コア(10)の前記側面(14)と垂直な方向に沿って、前記磁気コア(10)に向かって前記第1の壁セクション(22)から離れて延びる少なくとも1つのウェブセクション(24)を含む、請求項1に記載の誘導性部品(100)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのウェブセクション(24)は、エアギャップ(S)によって前記第2の壁セクション(2)から離間されている、請求項に記載の誘導性部品。
【請求項4】
誘導性部品(100)であって、
磁気コア(10)と、
少なくとも1つの巻線(W)と、
前記少なくとも1つの巻線(W)で巻かれたコイル本体(30)であって、
前記少なくとも1つの巻線(W)への電気的接続のために、前記コイル本体(30)の接触ストリップ(33)に取り付けられた少なくとも1つの接触要素(50)と、
前記磁気コア(10)が部分的に受け入れられる磁気コアレセプタクル(31)と、
を含むコイル本体(30)と、
電気絶縁材料から形成されたカバーキャップ(20)であって、前記少なくとも1つの接触要素(50)に関して、前記少なくとも1つの接触要素(50)に面する前記磁気コア(10)の側面(14)を前記カバーキャップ(20)の第1の壁セクション(22)によって少なくとも部分的に覆うカバーキャップ(20)と、
を備え、
前記カバーキャップ(20)の前記第1の壁セクション(22)は、前記磁気コア(10)の前記側面(14)と垂直な方向に沿って、前記磁気コア(10)に向かって前記第1の壁セクション(22)から離れて延び、かつ前記磁気コア(10)と物理的に接触する少なくとも1つのウェブセクション(24)を含み、前記ウェブセクション(24)は前記磁気コア(10)が前記カバーキャップ(20)の前記第1の壁セクション(22)の方向に滑って戻るのを防ぐスペーサとして働く、誘導性部品(100)。
【請求項5】
前記コイル本体(30)は、前記接触ストリップ(33)に形成され、前記磁気コアレセプタクル(31)に受け入れられた前記磁気コア(10)の下および前記少なくとも1つの接触要素(5)の上に延び、部分的にのみ前記接触ストリップ(33)に沿って前記接触ストリップ(33)の長手方向に延びる、細長い凹部(32)を含み、前記磁気コア(10)の前記側面(14)と垂直に延びる前記カバーキャップ(20)の第2の壁セクション(23)は、前記凹部(32)に挿入される、請求項に記載の誘導性部品(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのウェブセクション(24)は、エアギャップ(S)によって前記第2の壁セクション(2)から離間されている、請求項に記載の誘導性部品(100)。
【請求項7】
前記カバーキャップ(20)は、前記第1の壁セクションおよび前記第2の壁セクション(22、23)と垂直に配向された第3の壁セクション(25)および第4の壁セクション(27)をさらに含み、前記第3の壁セクション(25)および前記第4の壁セクション(27)は、前記少なくとも1つのウェブセクション(24)に平行に、そしてそれぞれが前記第1の壁セクション(22)の縁に沿って延びる、請求項またはに記載の誘導性部品(100)。
【請求項8】
前記凹部(32)は、3つの溝形状凹部セクション(32a、32b、32c)から形成され、これらのそれぞれは、前記第2の壁セクションから前記第4の壁セクション(23、25、27)を部分的に受け入れるように形成される、請求項に記載の誘導性部品(100)。
【請求項9】
2つ以上のウェブセクション(24、26)が複数のウェブセクションとして第1の壁セクション(22)上に形成される、請求項からのいずれか一項に記載の誘導性部品(100)。
【請求項10】
前記カバーキャップ(20)は、前記磁気コア(10)が少なくとも3つの側面で前記カバーキャップ(20)によって少なくとも部分的に囲まれるように前記コイル本体(30)に押し込められる、請求項1からのいずれか一項に記載の誘導性部品(100)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの接触要素(50)はガルウィング接触ピンとして構成され、前記誘導性部品(100)はSMD部品として提供される、請求項1から1のいずれか一項に記載の誘導性部品(100)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの接触要素(50)はTHD接触ピンとして構成され、前記誘導性部品(100)はTHD部品として提供される、請求項1から1のいずれか一項に記載の誘導性部品(100)。
【請求項13】
前記カバーキャップ(20)は、前記コイル本体(30)の高電圧側(HS)にのみ配置される、請求項1から1のいずれか一項に記載の誘導性部品(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、誘導性部品、特に非常にコンパクトな誘導性部品の絶縁要件への準拠に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器やチョークなどの誘導性部品は、様々な用途で使用されている。このための1つの用途例は、特にガス放電ランプまたはフィルターチョークの点火トランスとして誘導性部品が使用される自動車の電子機器である。自動車エレクトロニクスに関して自動車部門で追求されている広範な開発は、たとえば、自動車内のデータを表示するために使用される計器クラスターとして自動車内で使用するためのもの、点火システムまたは噴射システムを作動させることによりエンジン管理システムを制御するためのもの、アンチロックブレーキおよびビークルダイナミクス制御システム、エアバッグの制御、ボディコントロールユニット、運転支援システム、自動車警報システム、およびナビゲーションシステム、TVチューナーなどのマルチメディアデバイスなどの電子部品の数の急激な増加をもたらした。
【0003】
この開発に伴って増加する自動車の電子機器の数により、たとえば、自動車の電子機器がますます広範かつ複雑になっているにもかかわらず、車両構造によって決定される自動車の設置スペースに適合するために、それらの構造サイズに関して電子部品をさらに調整することが必要となる。一般に、自動車の電子機器には、堅牢性、温度範囲、振動および衝撃への耐性(車両運転中の振動による)などの要件があり、非常に多様な条件と状態の観点から電子機器の信頼性を長期間にわたって確保する必要がある。
【0004】
たとえば、電子部品が取り付けられるプリント回路基板などのキャリアで電子部品が最大限占有できる指定された最大取り付け領域としての特定の設置スペースに準拠するために、特に電子部品のよりコンパクトな設計に適合している部品サイズに関する用途関連の条件に加えて、電子部品の性能と品質を低下させることなく、一般に規定された安全基準を順守する必要がある。たとえば、統一された最小安全基準を実装するための安全仕様は、指定されたエアギャップと沿面距離への準拠、指定された絶縁耐力への準拠など、電子部品が満たす必要のある絶縁要件を決定する。
【0005】
一般に、エアギャップまたはクリアランスは、2つの導電性部品間の最短距離、特に、空気を介した、凹部およびギャップを横切る、および表面全体にわたって基板に接続されていないギャップのない絶縁アタッチメントを横切る最短の可能な接続を意味すると理解される。エアギャップは、とりわけ、印加される電圧に依存し、電子部品には指定された過電圧カテゴリが割り当てられる。接続(たとえば、電子部品の端子)を介して外部から電子部品に入る過電圧、および電子部品自体で生成されて端子で発生する過電圧を考慮する必要がある。空気を介した電圧破壊が、空気を介した最短接続を介して発生することは、事前定義されたエアギャップによって妨げられる。この意味で、エアギャップは空気中の可能な最大電界を制限するため、破壊は発生しない。
【0006】
対照的に、沿面距離は、2つの電位の間に配置された絶縁材料の表面上の2つの電位間の最短接続を表す。沿面距離は、一般に、電子部品の実効動作電圧に依存し、とりわけ、絶縁材料の表面の汚染の程度および/または水分の程度によって影響を受ける。たとえば、絶縁材料の沿面電流抵抗は、湿気および/または汚染の影響下での絶縁材料の表面の絶縁強度によって決定され、定義された試験装置の標準化された試験条件下で設定できる最大沿面電流を示すものとして理解することができる。沿面電流抵抗は、吸水能力と熱ひずみ下での絶縁材料の挙動に大きく依存する。
【0007】
さらに、絶縁距離は絶縁材料の厚さを意味すると理解されるため、この変数は絶縁材料の絶縁耐力を決定するために重要である。
【0008】
エアギャップ、沿面距離、および絶縁距離に要件を課す安全基準により、潜在的な安全上のリスクとしての電圧破壊(たとえば、電気アークまたは火花放電)および/または沿面電流を回避するために、寸法に応じて十分な絶縁のための電子部品に対する強制的な条件が存在する。たとえば、爆発の安全性の観点から、電気アークまたは火花放電としての電圧破壊を回避する必要があり、漏れ電流は、漏れ電流源に接触した場合のユーザの安全上のリスクを表す。
【0009】
コンパクトな誘導性部品を提供するための現在のアプローチは、コイル本体またはポット巻線に長距離にわたって安全クリアランスを実装することを提案している。ただし、これにより、長距離を提供する場合に必要なスペースが増えるという問題や、簡略化システムを使用したリフローアプリケーションでの問題が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の説明を考慮して、本開示の基礎となる目的は、特に指定されたエアギャップおよび/または沿面距離および/または絶縁距離をアンダーカットすることなく、指定された安全基準に準拠しながら、小さな設置スペースに取り付けられるコンパクトな設計を有する誘導性部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第1の態様では、磁気コア、少なくとも1つの巻線、少なくとも1つの巻線が巻かれたコイル本体、および電気絶縁材料から形成されたカバーキャップを含む誘導性部品が提供される。コイル本体は、少なくとも1つの巻線への電気的接続のためにコイル本体の接触ストリップに取り付けられた少なくとも1つの接触要素と、磁気コアが部分的に受け入れられる磁気コアレセプタクルと、接触ストリップ内に形成され、磁気コアレセプタクルに受け入れられた磁気コアの下および接触ストリップの長手方向に沿って少なくとも1つの接触要素の上に部分的にのみ延びる細長い凹部とを含む。カバーキャップは、接触ストリップに取り付けられ、少なくとも1つの接触要素に関して少なくとも1つの接触要素に面する磁気コアの側面を少なくとも部分的に覆い、カバーキャップは、カバーキャップが、少なくとも1つの接触要素に関して少なくとも1つの接触要素に面する磁気コアの側面を少なくとも部分的に覆う第1の壁セクションを含み、そして磁気コアの第1の側面まで延び、コイル本体に形成された凹部に挿入される第2の壁セクションを含む。したがって、第2の壁セクションは、磁気コアと少なくとも1つの接触要素との間で、部分的にのみ接触ストリップに沿って長手方向に延びる。接触ストリップの長手方向は、接触ストリップが最大の寸法を有する方向であると理解されるべきである。「細長い凹部」はまた、凹部、たとえば、深さ方向(すなわち、凹部が凹部として形成される材料への凹部の深さに沿った方向)を横切る伸長方向を有する溝または細長いノッチであると理解されるべきであり、伸長方向は、凹部が最大の寸法を有する方向である。凹部は、部分的にのみ接触ストリップの長手方向に沿って延びるので、凹部は、接触ストリップの片側表面にのみ形成される開口部を1つだけ有する。複数の接触要素が接触ストリップ上に提供される場合、接触ストリップの長手方向は、追加的または代替的に、複数の接触要素が接触ストリップに沿って配置される方向であると理解することができる。
【0012】
接触ストリップの細長い凹部により、接触ストリップのコイル本体はカバーキャップに対応するものとして構成され、カバーキャップとコイル本体との間で非常に信頼性の高い接続が得られる。カバーキャップにより、誘導性部品の寸法に関係なく、エアギャップと沿面距離の既存の要件に準拠することが可能であり、この点に関する安全基準は、小さな寸法のコンパクトな部品でも遵守される。
【0013】
本開示の第1の態様の様々な実施形態では、接触ストリップ上のコイル本体は、カバーキャップのネガティブ形状として部分的に形成され、これは、コイル本体およびカバーキャップが互いに一致する簡単な方法を表す。より正確には、接触ストリップ上のコイル本体は、カバーキャップの少なくとも1つの壁セクションのネガティブ形状として部分的に構成され、その結果、コイル本体とカバーキャップは、ポジティブフィット接続を可能にするために簡単な方法で互いに一致する。特に、カバーキャップとコイル本体との間のポジティブフィット接続は、接触ストリップの凹部が第2の壁セクションに関してネガティブ形状として構成されることで保証される。
【0014】
本開示の第1の態様の第2の実施形態では、カバーキャップは、第1の壁セクションおよび第2の壁セクションと垂直に配向された第3の壁セクションおよび第4の壁セクションをさらに含むことができる。第3の壁セクションおよび第4の壁セクションは、互いに平行に、そしてそれぞれが第1の壁セクションの縁に沿って延びる。この実施形態では、第3および第4の壁セクションは、磁気コアと少なくとも1つの追加の接触要素との間の絶縁および沿面距離をさらに増加させる。
【0015】
この第2の実施形態の例示的な構成では、コイル本体の凹部は、3つの溝形状凹部セクションから形成することができ、そのそれぞれは、第2から第4の壁セクションを部分的に受け入れるように構成される。この凹部の形状により、カバーキャップとコイル本体の間の非常に信頼性の高いプラグ接続が可能になる。
【0016】
本開示の第1の態様の第3の実施形態では、カバーキャップの第1の壁セクションは、磁気コアの側面と垂直な方向に沿って磁気コアに向かって延び、第1の壁セクションから離れる方向に延びる少なくとも1つのウェブセクションを含むことができる。たとえば、少なくとも1つのウェブセクションは、磁気コアと物理的に接触することができ、コイル本体内の磁気コアの位置はカバーキャップによって決定され、コイル本体内の磁気コアの変位は、カバーキャップが挿入されている場合防止される。さらに、少なくとも1つのウェブセクションは、接触要素に面する側面と第1の壁セクションとの間に距離を維持することを可能にし、特に、磁気コアがコイル本体内でカバーキャップの第1の壁セクションの方向に後方にスライドしないことを可能にする。それにより、コイル本体内のコアの所望の位置は、少なくとも1つのウェブセクションを介したカバーキャップによって簡単な方法で定義される。さらに、磁気コアに面するカバーキャップの第1の壁セクションの側面において、少なくとも1つのウェブセクションは、少なくとも1つのウェブセクション長さに応じて、磁気コアの側面と垂直な方向へのエアギャップおよび沿面距離の拡張を可能にするラビリンス構造を提供する。
【0017】
この第3の実施形態の例示的な構成では、少なくとも1つのウェブセクションは、エアギャップによって第2の壁セクションから離間することができる。次に、第1の壁セクションが接触ストリップに接触するまで、カバーキャップを凹部に挿入することができる。
【0018】
本開示の第2の態様では、磁気コア、少なくとも1つの巻線、少なくとも1つの巻線が巻かれたコイル本体を含む誘導性部品が提供される。本明細書において、コイル本体は、少なくとも1つの巻線への電気的接続のためにコイル本体の接触ストリップに取り付けられた少なくとも1つの接触要素と、磁気コアが部分的に受け入れられる磁気コアレセプタクルとを含む。誘導性部品は、少なくとも1つの接触要素に関してカバーキャップの第1の壁セクションによって少なくとも1つの接触要素に面する磁気コアの側面を少なくとも部分的に覆う電気絶縁材料で形成されたカバーキャップをさらに含み、カバーキャップの第1の壁セクションは、磁気コアの側面と垂直な方向に沿って磁気コアに向かって、第1の壁セクションから離れる方向に延びる少なくとも1つのウェブセクションを含む。本明細書では、少なくとも1つのウェブセクションが磁気コアと物理的に接触しているので、コイル本体内の磁気コアの位置は、カバーキャップによって定義される。これにより、カバーキャップを挿入したときに磁気コアがコイル本体内で変位するのを防ぐ。カバーキャップにより、誘導性部品の寸法に関係なく、エアギャップと沿面距離の要件に準拠することがさらに可能であり、この点に関する安全基準は、小さな寸法のコンパクトな部品でも遵守される。さらに、少なくとも1つのウェブセクションは、接触要素に面する側面と第1の壁セクションとの間に距離を維持することを可能にし、特に、磁気コアがコイル本体内でカバーキャップの第1の壁セクションの方向に後方にスライドしないことを可能にする。カバーキャップは、コイル本体内のコアの所望の位置が、少なくとも1つのウェブセクションによって簡単な方法で定義されることを可能にする。さらに、磁気コアに面するカバーキャップの第1の壁セクションの側面において、少なくとも1つのウェブセクションは、少なくとも1つのウェブセクション長さに応じて、磁気コアの側面と垂直な方向へのエアギャップおよび沿面距離の拡張を可能にするラビリンス構造を提供する。
【0019】
第2の態様の有利な第1の実施形態では、コイル本体は細長い凹部を含み、細長い凹部は、接触ストリップに形成され、磁気コアレセプタクルに受け入れられた磁気コアの下および少なくとも1つの接触要素の上に延び、部分的にのみ接触ストリップに沿って接触ストリップの長手方向に延び、磁気コアの側面と垂直に延びるカバーキャップの第2の壁セクションは、凹部に挿入される。本明細書において、接触ストリップの長手方向は、接触ストリップが最大の寸法を有する方向であると理解されるべきである。「細長い凹部」はここでも、凹部、たとえば、深さ方向(すなわち、凹部が凹部として形成される材料への凹部の深さに沿った方向)を横切る伸長方向を有する溝または細長いノッチであると理解されるべきであり、伸長方向は、凹部が最大の寸法を有する方向である。凹部は、部分的にのみ接触ストリップの長手方向に沿って延びるので、凹部は、接触ストリップの片側表面にのみ形成される開口部を1つだけ有する。複数の接触要素が接触ストリップ上に提供される場合、接触ストリップの長手方向は、追加的または代替的に、複数の接触要素が接触ストリップに沿って配置される方向であると理解することができる。
【0020】
第1の実施形態によって、カバーキャップが、少なくとも1つの接触要素を有する側の第1および第2の壁セクションによって磁気コアを取り囲むことが保証され、その結果、本明細書では、少なくとも1つの接触要素と磁気コアとの間の安全距離を増加させるためにコイル本体の寸法を増加させることなく、導電性部品の有利なシーリングまたは絶縁が達成される。さらに、コイル本体上のカバーキャップの機械的に再現可能な位置決めは、たとえば、巻線とカバーキャップを有するコアを備えたコイル本体との機械的アセンブリのための利点を可能にする凹部によって達成される。凹部は、部分的にのみ接触ストリップの長手方向に沿って延び、特に接触ストリップを完全には貫通せず、複数の側面で開いているという事実により、カバーキャップは、第2の壁セクション経由で凹部によってコイル本体に確実に取り付けることができる。カバーキャップとコイル本体との間のポジティブフィット接続は、接触ストリップの凹部が第2の壁セクションに関してネガティブ形状として構成されることで保証される。
【0021】
本開示の第2の態様の第3の実施形態の有利な構成では、少なくとも1つのウェブセクションは、エアギャップによって第2の壁セクションから離間することができる。これにより、磁気コアが少なくとも1つの接触要素を有する側に面する側のカバーキャップによって適切に絶縁され、カバーキャップがウェブセクションとは無関係にコイル本体に十分深く挿入され得ることが保証され得る。
【0022】
本開示の第2の態様の第1の実施形態のさらに有利な構成では、カバーキャップは、第1の壁セクションおよび第2の壁セクションと垂直に配向された第3の壁セクションおよび第4の壁セクションをさらに含むことができる。第3の壁セクションおよび第4の壁セクションはさらに、少なくとも1つのウェブセクションに平行に、そしてそれぞれが第1の壁セクションの縁に沿って延びることができる。結果として、カバーキャップは、コイル本体上の少なくとも1つの接触要素に関して巻線および磁気コアを有利にシールする。本明細書では、カバーキャップは、少なくとも1つの接触要素からコイル本体に受け入れられたコアの機械的に安定した被覆を可能にする、ポット型またはボウル型の絶縁体として提供することができる。例示的な例によれば、凹部は、3つの溝形状凹部セクションから形成することができ、そのそれぞれは、第2から第4の壁セクションを部分的に受け入れるように構成される。結果として、カバーキャップの3つの壁セクションは、部分的に凹部によって有利に受け入れることができ、これは、磁気コアが少なくとも1つの接触要素から確実にシールされることを可能にし得る。その結果、巻線に関する安全基準への準拠も保証できる。
【0023】
本開示の第2の態様の有利な第2の実施形態において、および第1の態様の第3の実施形態の有利な構成によれば、2つ以上のウェブセクションを複数のウェブセクションとして第1の壁セクション上に形成することができる。複数のウェブセクションは、第1の壁セクションから磁気コアに向かって突出し、複数のウェブセクションのうちの少なくとも1つは、磁気コアと物理的に接触している。これにより、カバーキャップの第1の壁セクションの、磁気コアに面する側にラビリンス構造が提供されるため、エアギャップおよび沿面距離がさらに拡張される。
【0024】
本開示の第2の態様の有利な第3の実施形態において、および第1の態様の第3の実施形態の有利な構成によれば、磁気コアが少なくとも3つの側面でカバーキャップによって少なくとも部分的に囲まれるように、カバーキャップをコイル本体に押し込むことができる。本明細書では、カバーキャップは、少なくとも1つの接触要素からコイル本体に受け入れられたコアの機械的に安定した被覆を可能にする、ポット型またはボウル型の絶縁体として提供することができる。
【0025】
第2の態様の第3の実施形態の有利な構成において、および本開示の第1の態様の有利な構成によれば、コイル本体上の少なくとも1つの接触要素は、ガルウィング接触ピンとして構成することができる。これにより、接触要素とカバーキャップの構造構成が可能になり、SMD(表面実装デバイス)構造に誘導性部品をSMD部品として実装できるようになる。これらの構造のカバーキャップは、安全基準への準拠を保証する。あるいは、少なくとも1つの接触要素は、THT(スルーホール技術)構造のための接触ピンとして構成することができ、その結果、誘導性部品は、THT部品としてスルーホール実装のために提供される。THTのスルーホール実装(「ピンインホール」またはPIH技術とも呼ばれる)は、組み立ておよび接続技術での有線電子部品の実装を意味すると理解され、これは、表面実装とは対照的に、部品はワイヤ接続を有し、組み立て中にプリント回路基板の接触ホールに挿入され、次にはんだ付け(従来の手はんだ付け、ウェーブはんだ付け、選択的はんだ付けなど)によって1つまたは複数の導体トラックに接続される「有線部品」として形成される。一方、SMD実装では、ワイヤ接続は提供されないが、SMD部品は、はんだ付け可能な接続面を使用して、フラット部品としてプリント回路基板に直接はんだ付けされる。
【0026】
本開示の第2の態様の有利な第4の実施形態かつ、第1の態様の有利な構成によれば、少なくとも1つの接触要素をコイル本体の高電圧側に配置することができる。これにより、誘導性部品の高電圧側で安全基準に準拠することが保証される。
【0027】
本開示の第2の態様の第4の実施形態の有利な構成かつ、第1の態様の第3の実施形態の有利な構成によれば、少なくとも1つの接触要素をコイル本体の高電圧側に配置することができる。これにより、コイル本体の高電圧側で十分な安全距離が確保される。
【0028】
本開示の第1および第2の態様の有利な構成では、コイル本体は、プリント回路基板のSMDポピュレーション用に構成することができ、誘導性部品は、SMD部品として提供される。たとえば、コンパクトなチョッパートランスを実装できる。あるいは、コイル本体は、プリント回路基板のTHDポピュレーション用に構成することができ、誘導性部品は、THD部品として提供される。対応する部品は、必要なエアギャップと沿面距離に準拠した小さな寸法で提供できる。
【0029】
本開示の文脈において、カバーキャップは、たとえば、ポッティングを必要とせずに、誘導性部品の寸法に関係なく、安全かつ信頼できる方法で十分なエアギャップおよび沿面距離を保証する。本明細書では、カバーキャップは、沿面距離および絶縁距離の改善が必要とされるコイル本体上の点に単に取り付けられている。また、たとえば、メンテナンス作業などの過程で、既存の部品にカバーキャップで簡単に後付けしたり、既存のカバーキャップを交換したりすることも可能である。様々な実施形態に関して上記および以下に記載されるように、誘導性部品は、カバーキャップの簡単な取り付けおよび取り外しを可能にし、キャップは、コイル本体の接触ストリップにのみ取り付けられる。結果として、本開示は、コイル本体の設計を大幅に変更する必要なしに、SMTおよびTHTに有利に適用することができる。
【0030】
実施形態では、接触要素に面している磁気コアの側面セクションは、カバーキャップの壁セクションによって少なくとも部分的に覆われ、それによって漏れ電流を非常に効率的に抑制することができる。カバーキャップを使用すると、コイル本体に加えて絶縁本体を個別に提供でき、これにより、誘導性部品をモジュール化し、エアギャップと沿面距離を後付けで調整できる。カバーキャップとコイル本体は、機械的に取り外し可能な方法で結合でき、その結果、誘導性部品の沿面距離の拡張を簡単な方法で得ることができ、必要に応じて、個々の部品を交換および後付けすることができる。エアギャップおよび沿面距離の拡張は、ウェブセクションの数とその幾何学的構成によって指定でき、ラビリンス構造は、磁気コアに面するカバーキャップの壁セクションに実装される。さらに、ウェブセクションは、磁気コアが少なくとも1つの接触要素の方向に滑って戻るのを防ぐスペーサとして機能し、この有利な手段に基づいて、コイル本体上のコアの位置も設定する。さらに、カバーキャップは、たとえば射出成形技術を使用して製造するのが容易であり、大量に安価に製造することができる。
【0031】
たとえば、本明細書に記載の実施形態の少なくともいくつかでは、コイル本体の凹部に、凹部が形成される接触ストリップの側面と実質的に垂直にカバーキャップを挿入することによって、カバーキャップ20の信頼できる取り付けを可能にすることが有利であり、その結果、カバーキャップを、信頼性が高く再現性のある方法で、磁気コアに対してコイル本体に取り付けることができる。この取り付けは、カバーキャップが挿入されるだけという点で取り外し可能であり得るか、または接着剤などによるコイル本体へのカバーキャップの恒久的な取り付けであり得る。本明細書では、カバーキャップをコイル本体の接触ストリップのみに取り付けることができ、その結果、カバーキャップを接触ストリップ、または動作中に高電圧が印加される接触要素、またはコイル本体の高電圧側など、沿面距離と絶縁距離の増加が望まれる少なくとも1つの接触要素上にのみ、省スペースでコンパクトな形で配置できることも有利である。
【0032】
本開示のさらなる利点および特徴は、添付の図の文脈で以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1a】本開示の実施形態による誘導性部品のカバーキャップを斜視図で概略的に示す。
図1b図1aのカバーキャップを上面図で概略的に示す。
図2a】本開示の実施形態による誘導性部品のコイル本体を斜視側面図で概略的に示す。
図2b図2aのコイル本体を図2aに対して回転した側面図で概略的に示す。
図2c図2aのコイル本体を下から見た図で概略的に示す。
図3】本開示の実施形態による誘導製部品を上から部品を見た図で概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
誘導性部品のカバーキャップ20を、本開示の上記の第1および第2の態様に対応する本開示のいくつかの例示的な実施形態によって、図1aおよび1bを参照して以下に説明する。カバーキャップ20は、電気絶縁材料で形成されている。たとえば、カバーキャップ20は、射出成形プロセスを使用して製造することができる。
【0035】
カバーキャップ20は、たとえば、ポット型またはボウル型の断熱体として提供することができ、カバーキャップ20は、それぞれが縁に沿って互いに接続されている第1の壁セクション22、第2の壁セクション23、第3の壁セクション25、および第4の壁セクション27によって形成され、これによりカバーキャップ20は、幾何学的に、たとえば、2つの隣接する開いた側面を有する直方体を表す。カバーキャップ20の第2から第4の壁セクション23、25、27は、第1の壁セクション22の3つの側縁に沿って第1の壁セクション22に機械的に接続され、第1の壁セクション22の表面法線の方向に沿って第1の壁セクション22から離れるように延びる。第2の壁セクション23は、第1の壁セクション22、第3の壁セクション25、および第4の壁セクション27のそれぞれと垂直に配向されている。第3の壁セクション25および第4の壁セクション27は、互いに平行に配向されている。結果として、第1の壁セクション22の上の体積は、第2から第4の壁セクション23、25、27によって3つの側面が横方向に囲まれている。
【0036】
図1aおよび1bに示されるように、カバーキャップ20は、2つのウェブセクション24、26を含み、これらは、第1の壁セクション22上に形成され、第1の壁セクション22の表面法線の方向に沿って第1の壁セクション22から離れるように延びる。ウェブセクション24、26は、互いに平行に、第3および第4の壁セクション25、27に平行に、そして第1および第2の壁セクション22、23と垂直に配向されている。
【0037】
図1aの図によれば、ウェブセクション24、26は、エアギャップSによって第2の壁セクション22から離間することができる。言い換えれば、ウェブセクション24、26は、第1の壁セクション22にのみ機械的に接続することができる。さらに、ウェブセクション24、26が第1の壁セクションから突出する方向に沿ったウェブセクション24、26の長さは、この方向に沿った第2から第4の壁セクション23、25、27の長さ以下であり得る。第2から第4の壁セクション23、25、27がこの方向に沿って等しくない長さを有する場合、この方向に沿ったウェブセクションの長さは、この方向に沿った第2から第4の壁セクション23、25、27の長さの最大値以下であり得る。
【0038】
ここで、誘導性部品のコイル本体0を、本開示の第1および第2の態様に対応するいくつかの例示的な実施形態によって、図2aから2cを参照して説明する。
【0039】
図2aから2cの図によれば、コイル本体0は、2つの接触ストリップ33、35を含み、これらは、接続セクション31’によって互いに接続されている。接触ストリップ33、35は、たとえば、中空の円筒形を有することができる接続セクション31’の両端に形成されている。接触ストリップ33、35は、コイル本体0の細長い要素であり、これは、それらがそれぞれ、接触ストリップ33、35がそれぞれ最大の寸法を有する長手方向を有することを意味する。
【0040】
いくつかの例示的な例では、接続セクション31’は、接続セクション31’の両側に配置された端部に2つの開口部を含むことができ、接触ストリップ33、35はそれぞれ、これらの端部の1つに配置されている。結果として、磁気コアレセプタクル31が提供され、それによって、磁気コア(図2aから2cには示さず)をコイル本体30によって部分的に受け入れることができる。たとえば、磁気コアの脚(図2aから2cには示さず)は、コイル本体30の磁気コアレセプタクル31に部分的に受け入れることができる。
【0041】
図2bを参照すると、接触ストリップ33はコイル本体30の高電圧側HSに配置され、接触ストリップ35はコイル本体の低電圧側NSに配置されている。さらに、コイル本体30は、少なくとも1つの巻線(図2aから2cには示さず)への電気的接続のために、コイル本体30のHS側上の接触ストリップ33に取り付けられた少なくとも1つの接触要素50を含む。少なくとも1つの巻線(図2aから2cには示さず)への電気的接続のための少なくとも1つのさらなる接触要素52もまた、コイル本体30のNS側の接触ストリップ35に提供され得る。追加的または代替的に、接触ストリップ33上の接触要素に関しても、接触ストリップ33の「長手方向」は、以下のように定義することができる。たとえば、複数の接触要素50が接触ストリップ上に提供される場合、接触ストリップ33の長手方向は、複数の接触要素50が接触ストリップ33に沿って配置される方向として定義することができる。
【0042】
いくつかの例示的な実施形態によれば、コイル本体30のNS側は、誘導性部品の低電圧側(図2aから2cには示さず)を表すことができ、コイル本体30のHS側は、高電圧側を表すことができる。コイル本体30のNS側の低電圧側とコイル本体30のHS側の高電圧側とは、コイル本体30のHS側の接触ストリップ33が、コイル本体のNS側の接触ストリップ35に対してより広い幅を有するという点で区別することができる(すなわち、コイル本体30が磁気コアを備えている場合、磁気コア(図2aから2cには示さず)がコイル本体30の磁気コアレセプタクル31に受け入れられる方向における接触ストリップ33の寸法は、接触ストリップ35と比較して大きい)。
【0043】
本開示の例示的な実施形態では、コイル本体30は、カバーキャップ20の対応物として、コイル本体30の接触ストリップ33上に形成されている。たとえば、図2aおよび2cに示すように、コイル本体30は、HS側に細長い凹部32を有する。細長い凹部32は、部分的にのみ接触ストリップ33に沿って長手方向に延び、かつ接触ストリップ33内で少なくとも1つの接触要素50の上を走るように接触ストリップ33に形成された、溝形状の凹部を表すことができる。「細長い凹部」はここでは、凹部、たとえば、深さ方向(すなわち、凹部32が凹部として形成される接触ストリップ33の材料への凹部の深さに沿った方向)を横切る伸長方向を有する溝または細長いノッチであると理解されるべきであり、伸長方向は、凹部32が最大の寸法を有する方向である。凹部32は、部分的にのみ接触ストリップ33に沿って長手方向に延びるので、凹部32は、コイル本体30上の少なくとも1つの接触要素50が露出する接触ストリップ33の片側表面にのみ形成される長手方向の開口部を1つだけ有する。
【0044】
本開示の実施形態では、凹部32は、カバーキャップ、たとえば、図1aおよび1bに示すカバーキャップ20が、その中に部分的に受け入れられ、その結果、キャップとコイル本体との間にポジティブフィット接続が確立されるように構成されている。この場合、凹部32は、カバーキャップ20のセクションのネガティブ形状を表すことができ、その結果、接触ストリップ33上のコイル本体30は、カバーキャップ20のネガティブ形状として部分的に形成される。たとえば、図1aおよび1bに示すカバーキャップ20の第2の壁セクション23は、第2の壁セクション23が部分的に凹部32に受け入れられるように凹部32に挿入することができ、接触ストリップ33は、カバーキャップ20の第2の壁セクション23のネガティブ形状として部分的に形成される。この目的のために、凹部32は、たとえば、単に図2aに示す長手方向溝32aの形で、長手方向溝として構成することができる。長手方向溝32aは、少なくとも1つの接触要素50の上を接触ストリップ33の長手方向に平行に走ることができ、接触ストリップ33の長手方向は、上記のように、接触ストリップ33の最長の幾何学的寸法を表す。長手方向溝32aは、部分的にのみ接触ストリップ33に沿って接触ストリップ33の長手方向に延びる。接触ストリップ33の長手方向に沿った接触ストリップ33の端部の長手方向溝32aには、開口部がない。これにより、カバーキャップ20を側面14と実質的に垂直に向けられた長手方向溝32aに挿入することによってカバーキャップ20を確実に取り付けることができ、その結果、カバーキャップ20を、信頼性が高く再現性のある方法で、磁気コア10に対してコイル本体30に取り付けることができる。この取り付けは、カバーキャップ20が挿入されるだけという点で取り外し可能であり得るか、またはさらに、接着剤などによるコイル本体30へのカバーキャップ20の恒久的な取り付けであり得る。カバーキャップ20をコイル本体30の接触ストリップのみに取り付けることができ、その結果、カバーキャップ20を接触ストリップ33、または動作中に高電圧が印加される接触要素50、またはコイル本体30の高電圧側など、沿面距離と絶縁距離の増加が望まれる少なくとも1つの接触要素50上にのみ、省スペースでコンパクトな形で配置できることも有利である。
【0045】
凹部32の特別な例示的な構成は、図1aと併せて図2aを参照して説明され、これによれば、凹部32は、3つの溝形状凹部セクション32a、32b、32cから形成され、これらのそれぞれは、図1aに示されるカバーキャップ20の第2から第4の壁セクション23、25、27を部分的に受け入れるように形成され、接触ストリップ33は、カバーキャップ20の第2から第4の壁セクション23、25、27のネガティブ形状として部分的に形成される。たとえば、3つの溝形状凹部セクション32a、32b、32cのそれぞれは、互いに接続され、かつ図2aに示される凹部32に対応する単一の端から端までの凹部を実現する長手方向溝として形成される。ここで、溝形状凹部セクション32bおよび32cは、溝形状凹部セクション32aと垂直に配向され、溝形状凹部セクション32bおよび32cは、互いに平行に走っている。凹部32は、3つの溝形状凹部セクション32a、32b、32cを介して、図1aに示されるカバーキャップ20の第2から第4の壁セクション23、25、27を3つの溝形状凹部セクション32a、32b、32cに挿入できるように、特に3つの溝形状凹部セクション32a、32b、32cに部分的に受け入れられるように提供することができる。
【0046】
いくつかの例示的な実施形態によれば、図1aおよび1bに示されるカバーキャップ20は、カバーキャップが凹部に挿入される範囲で、図2aから2cに示されるコイル本体に取り付けることができる。次に、カバーキャップ20は、コイル本体30のHS側上で、コイル本体30の磁気コアレセプタクル31の開口部と少なくとも1つの接触要素50との間に配置される。
【0047】
図2aから2cを参照すると、少なくとも1つの接触要素50は、ガルウィング接触ピンとして構成され、接触ストリップ33に取り付けられ得る。同様に、少なくとも1つの接触要素52はまた、ガルウィング接触ピンとして構成され、接触ストリップ35に取り付けられ得る。次に、コイル本体30を、プリント回路基板のSMDポピュレーション用に構成することができる(図には示さず)。たとえば、コイル本体30は、チョッパー変圧器に関連する用途に適している。
【0048】
図2cの図によれば、コイル本体30は、その下側にラビリンス構造Lを有することができる。ラビリンス構造Lは、接触ストリップ33上に提供され、ウェブセクションL1、L2、L3、L4と、接触ストリップ33の下側に形成された溝セクションN1、N2、N3とによって形成される。溝セクションN1、N2、N3のうちの1つは、ウェブセクションL1、L2、L3、L4の2つの隣接するウェブセクションのそれぞれの間に形成され、その結果、2つの隣接するウェブセクションは、それぞれの溝セクションによって互いに離間されている。溝セクションN1、N2、N3は、コイル本体の上に提供される巻線のワイヤセクション(図2aから2cには示さず)を少なくとも1つの接触要素50に供給するために提供され得る。複数の接触要素の場合、それぞれ接触要素に供給されるワイヤセクションは、ウェブセクションL1およびL3によって互いに分離することができる。それぞれのラビリンス構造はまた、接触ストリップ35の下側に提供され得る。
【0049】
溝N1からN3に対する少なくとも1つの接触要素50のオフセットが、図2cをさらに参照して示され、少なくとも1つの接触要素は、ウェブセクションL1からL4のうちの1つに形成される。
【0050】
本開示の実施形態による誘導性部品100は、本開示の第1および第2の態様に従って、図3に示される平面図を参照して以下に説明される。誘導性部品100は、図1aおよび1bを参照して上で説明したカバーキャップ20と、図2aから2cを参照して上で説明したコイル本体30とを含む。
【0051】
図3の図によれば、誘導性部品100は、磁気コア10と、コイル本体30の上に提供される少なくとも1つの巻線Wとをさらに含む。いくつかの例示的な実施形態では、誘導性部品100の磁気コア10は、モジュール式磁気コアとして構成することができる。たとえば、磁気コア10は、コイル本体30の磁気コアレセプタクル31(図2aおよび2b)に部分的に受け入れられるUコア、ダブルUコア、またはU-Iコアであり得る。あるいは、磁気コア10は、コイル本体の磁気コアレセプタクル31に挿入されるIコアのみであり得る。図示されていない別の代替案によれば、EコアまたはダブルEコアを提供することができ、コイル本体は、中央脚を受け入れるようにそれぞれ構成でき、側脚の支持面で形成することができる。
【0052】
図2aから2cを参照して上で説明したように、コイル本体30は、コイル本体30のHS側に取り付けられた少なくとも1つの接触要素50を含む。少なくとも1つの巻線Wへの電気的接続のために、少なくとも1つの接触要素が提供される。
【0053】
図1aおよび1bを参照して上で説明したように、カバーキャップ20は、電気絶縁材料で形成されている。カバーキャップ20は、コイル本体30に押し付けられることによって取り付けられ、第2の壁セクション23は凹部に挿入される。カバーキャップ20は、コイル本体30のHS側上の少なくとも1つの接触要素50に関して、コイル本体30に受け入れられた磁気コア10の側面14を覆う。特に、カバーキャップ20は、磁気コア10の側面14とコイル本体上の少なくとも1つの接触要素50との間に配置されている。さらに、コイル本体30のHS側上の磁気コア10は、カバーキャップ20の第3および第4の壁セクション25、27によって、少なくとも1つの接触要素50に関してシールドすることができる。いくつかの例示的な実施形態では、カバーキャップ20の第3および第4の壁セクション25、27は、図2aを考慮して上で説明したように、凹部32に部分的に受け入れることができる。
【0054】
図3に示されるように、コイル本体30のHS側に面し、それによって少なくとも1つの接触要素50で接触ストリップ33に面する磁気コア10の側面14は、カバーキャップ20の第1の壁セクション22によって少なくとも部分的に覆われる。
【0055】
図2aから2cに関して上で説明したように、本開示のいくつかの例示的な実施形態では、コイル本体30のHS側は、誘導性部品100の高電圧側を表すことができ、コイル本体30のNS側は、誘導性部品100の低電圧側を表すことができる。コイル本体30のNS側の低電圧側とコイル本体30のHS側の高電圧側とは、カバーキャップ20が誘導性部品100内のコイル本体30のHS側に配置されているという点で区別することができ、磁気コア10の側面14、すなわちコイル本体のHS側に面する磁気コア10の側面は、コイル本体30のHS側の接触ストリップ33上の少なくとも1つの接触要素50に関してカバーキャップ20によって覆われる。
【0056】
例示的な例によれば、少なくとも1つの接触要素50は、壁セクション24に対してコイル本体30からそれと垂直な方向に延びることができる。
【0057】
図1a、2aおよび3を参照すると、カバーキャップ2は、図1aに関して上で説明したように、ウェブセクション24および26を第2の壁セクション23から分離するエアギャップSを含む。エアギャップは、第1の壁セクション22が接触ストリップ33に対してウェブセクション24、26の下に当接するまで第2の壁セクション23を凹部32に挿入することによって、ウェブセクション24および26とは独立してカバーキャップ20をコイル本体30に押し込むことができるように十分に大きく形成される。次に、磁気コア10の第1の壁セクション22と側面14との間の距離は、ウェブセクション24および26を介して設定することができる。
【0058】
図3に示す誘導性部品100は、コイル本体30に少なくとも1つの巻線Wを巻くことと、コイル本体30に磁気コア10を受け入れることと、カバーキャップ20を磁気コア10に取り付けることとを含む方法によって製造することができる。磁気コア10は、コイル本体30の磁気コアレセプタクル3に部分的に受け入れられている。コイル本体30は、磁気コア10とは独立して巻かれ、磁気コア10は、たとえば、時間的に別々に、または同時にコイル本体30に取り付けられ得る。磁気コア10はまた、たとえば、モジュラー磁気コア10の場合、個々のコアセグメントがコイル本体30に受け入れられるという点で、コイル本体0に受け入れられ得る。これにより、誘導性部品100を製造するための自動化された製造方法を提供することが可能になる。コイル本体30上の磁気コア10の位置は、カバーキャップ20を介して設定することができ、コイル本体30の磁気コア10への取り付け前、取り付け中、または取り付け後にカバーキャップ20をコイル本体30に取り付けることができる。
【0059】
上記の誘導性部品100は、図3を参照して本開示のいくつかの例示的な実施形態に開示され、コイル本体30上の少なくとも1つの接触要素50は、ガルウィング接触ピンとして構成することができる。ただし、これは制限ではなく、他の接触ピンを提供することができる。
【0060】
上記の誘導性部品100は、図3を参照して本開示のいくつかの例示的な実施形態に開示され、少なくとも1つの接触要素50は、コイル本体30の高電圧側に配置することができる。これは、本開示の制限ではなく、追加的または代替的に、少なくとも1つの接触ピンをコイル本体30の低電圧側に配置することができる。
【0061】
上記の誘導性部品100は、図3を参照して本開示のいくつかの例示的な実施形態に開示され、コイル本体30は、プリント回路基板(図示せず)のSMDポピュレーション用に構成することができる。これは制限ではなく、誘導性部品100を代替的にTHTポピュレーション用に構成することができる。
【0062】
図を参照すると、2つのウェブセクション24、26がカバーキャップ20に示されている。これは制限ではなく、カバーキャップに1つのウェブセクションのみ、または3つ以上のウェブセクションを代替的に提供することができる。
【0063】
図を参照して、カバーキャップ20を、コイル本体30の側HSの接触ストリップ33に、凹部32を通して押し込むことができることを説明する。これは本開示の制限ではなく、凹部32に対応する凹部をコイル本体のNS側に代替的に形成することもでき、その結果、カバーキャップ20をNS側でもコイル本体30に追加的または代替的に押し込むことができる。
【0064】
カバーキャップ20は図を参照して説明され、4つの壁セクションによって形成されているのがわかる。これは開示の制限ではなく、カバーキャップは、第1および第2の壁セクション22および23によってのみ、または合計5つの壁セクションによって形成することができ、説明した第1から第4の壁セクション22、23、25、27に加えて第5の壁セクションが提供され、第1の壁セクション22上の第2の壁セクションの反対側に配置され、第2の壁セクション23に平行に延びる。
【0065】
図3に示される誘導性部品100を用いたいくつかの特定の例示的な実施形態は、図1から3を参照して説明される。そこにある誘導性部品100は、図示の磁気コア10、少なくとも1つの図示の巻線W、および少なくとも1つの巻線Wで巻かれた図示のコイル本体30を含む。コイル本体30は、少なくとも1つの巻線Wへの電気的接続のためのコイル本体30の図示の接触ストリップ33に取り付けられた少なくとも1つの図示の接触要素50、磁気コア10が部分的に受け入れられる図示の磁気コアレセプタクル31、および磁気コア10の下の図示の凹部32を含む。誘導性部品100は、電気絶縁材料から形成され、かつ接触ストリップ33に取り付けられた図示のカバーキャップ20をさらに含む。カバーキャップ20は、少なくとも1つの接触要素50に関して少なくとも1つの接触要素50に面する磁気コア10の側面14を少なくとも部分的に覆う。カバーキャップ20は、カバーキャップ20が、少なくとも1つの接触要素50に関して少なくとも1つの接触要素50に面する磁気コア10の側面14を少なくとも部分的に覆う第1の壁セクション22と、磁気コア10の側面14と垂直に延び、かつ凹部32に挿入される第2の壁セクション23とを含む。カバーキャップ20の第1の壁セクション22は、磁気コア10の側面14と垂直な方向に沿って、磁気コア10に向かって第1の壁セクション22から離れて延びる少なくとも1つの図示のウェブセクション24を含む。少なくとも1つのウェブセクション24は、エアギャップSによって第2の壁セクション22から離間されている。
【0066】
他の特定の例示的な実施形態では、上記の実施形態に加えて、またはその代替として、図1から3に示される誘導性部品100は、図示の磁気コア10、図示の少なくとも1つの巻線W、および少なくとも1つの巻線Wで巻かれた図示のコイル本体30を含む。コイル本体30は、少なくとも1つの巻線Wへの電気的接続のためのコイル本体30の図示の接触ストリップ33に取り付けられた少なくとも1つの接触要素50と、磁気コア10が部分的に受け入れられる図示の磁気コアレセプタクル31とを含む。誘導性部品100は、電気絶縁材料から形成され、かつ磁気コア10の図示の側面14を少なくとも部分的に覆い、少なくとも1つの接触要素50に関してキャップ20の図示の第1の壁セクション22によって少なくとも1つの接触要素50と位置合わせされている図示のカバーキャップ20をさらに含む。カバーキャップ20の第1の壁セクション22は、磁気コア10の側面14と垂直な方向に沿って、磁気コア10に向かって第1の壁セクション22から離れて延びる少なくとも1つの図示のウェブセクション24を含む。これらの特定の例示的な実施形態によれば、コイル本体30は、プリント回路基板上のSMDアセンブリまたはTHDアセンブリ用に構成される。これは、少なくとも1つの接触要素50が、それぞれ、THT接触要素またはSMT接触要素として構成されていることを意味する。言い換えれば、少なくとも1つの接触要素50は、プッシュスルー接触ピンまたはガルウィング接触として構成される。
【0067】
要約すると、本開示の範囲内で、たとえば、Uコア、ダブルUコア、Iコア、およびU-Iコアの用途において、迷路状のエアギャップおよび沿面距離の拡張が提案される。例示的な実施形態によれば、これは、カバーキャップと、カバーキャップの対応物としてコイル本体の接触ストリップ上に構成されたコイル本体との組み合わせによって達成され、たとえば、接触ストリップ上のコイル本体が、関連するカバーキャップのネガティブ形状として部分的に形成される。コアの背面で閉じるように構成されたカバーキャップが、対応物として意図されたネガティブ形状に配置されている場合、接触ストリップに関連付けられた少なくとも1つの接触要素からカバーキャップで密閉された磁気コアへのエアギャップおよび沿面距離が増加する。この原則は、両側にも適用できる。例示的な例では、カバーキャップは、内側にウェブセクションを備えて形成されている。それらはスペーサとして使用でき、誘導性部品内の磁気コアがカバーキャップの後壁の方向に滑って戻るのを防ぐことができる。コイル本体上の磁気コアの位置を定義するこの方法により、エアギャップおよび沿面距離をウェブセクションの長さに応じてさらに拡張することができる。
【0068】
本開示の目的の1つの効果は、欧州規格61558-2-16+A1に従って、基本絶縁または強化絶縁に必要な安全距離を同時に維持しながら、誘導性部品のサイズを大きくせずに、好ましくは小さくすることができることである。シャーシまでの安全距離も観察される。
【0069】
SMD部品の用途に関していくつかの実施形態が説明されているが、これは制限ではなく、本開示の実施形態は、コイル本体の接触ストリップ上の接触要素をTHTアセンブリの接触ピンとして設計することによって、THT用途に関連して使用することもできる。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3