(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】少なくとも1つの半導体モジュールのための冷却用アッセンブリ、パワーモジュール、およびパワーモジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20230727BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20230727BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20230727BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230727BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H01L25/04 C
H02M7/48 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022019708
(22)【出願日】2022-02-10
【審査請求日】2023-05-31
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニコ・パブリチェク
(72)【発明者】
【氏名】リュイス・サントラリア
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・トゥルッセル
(72)【発明者】
【氏名】ヘルダー・マタ
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第1843392(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2524945(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/232112(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102019008611(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第0841843(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/29
H01L23/34 -23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/473
H01L25/00 -25/07
H01L25/10 -25/11
H01L25/16 -25/18
H02M 7/42 - 7/98
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体化された冷却構造体を備えるベースプレート(108)を有する少なくとも1つの半導体モジュール(104)のための冷却用アッセンブリ(105)であって、前記冷却用アッセンブリ(105)は、
- 第1の冷却器部(121)であって、少なくとも1つの開口(118)、および前記第1の冷却器部(121)の第1の側面上に配置される少なくとも1つの付着点を有し、前記少なくとも1つの開口(118)は、対応する半導体モジュール(104)の一体化された冷却構造体を受け入れるように構成され、前記半導体モジュール(104)のベースプレート(108)は、前記第1の冷却器部(121)の第1の側面上の前記少なくとも1つの付着点へ付着される、第1の冷却器部(121)と、
- 前記第1の冷却器部(121)の反対側の第2の側面上に配置される第2の冷却器部(122)と
を備え、
- 前記第1の冷却器部(121)および前記第2の冷却器部(122)は、繊維強化ポリマー材料から製造され、
成形または積層によって形成され、かつ前記第1の冷却器部(121)の前記第2の側面と前記第2の冷却器部(122)との間に冷却剤(116)用の空洞を形成するように
水密ジョイント(123)によって接合される、冷却用アッセンブリ(105)。
【請求項2】
前記第1の冷却器部(121)と前記第2の冷却器部(122)とのうちの少なくとも一方は、射出成形されたプラスチック製部品である、請求項1に記載の冷却用アッセンブリ(105)。
【請求項3】
前記第1の冷却器部(121)と前記第2の冷却器部(122)とのうちの少なくとも一方は、ガラス繊維によって強化された、ポリフェニレンスルフィドPPS、ポリカーボネートPCおよびアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンABSのうちの少なくとも1つを含む、請求項1または請求項2に記載の冷却用アッセンブリ(105)。
【請求項4】
前記第1の冷却器部(121)と前記第2の冷却器部(122)とのうちの少なくとも一方は、薄層状の炭素複合材部品である、請求項1に記載の冷却用アッセンブリ(105)。
【請求項5】
前記第1の冷却器部(121)と前記第2の冷却器部(122)とのうちの少なくとも一方は、予備含浸複合繊維を含む、請求項1または請求項4に記載の冷却用アッセンブリ(105)。
【請求項6】
前記第1の冷却器部(121)および前記第2の冷却器部(122)は、プラスチック溶接接合または接着結合接合によって接合される、請求項1~5のいずれか1項に記載の冷却用アッセンブリ(105)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの付着点は、ねじ(107)を取り付けるためのねじ付きインレイ(124)と接着結合ライン(127)を受け入れるように構成される連動構造体とのうちの少なくとも一方を備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の冷却用アッセンブリ(105)。
【請求項8】
- 前記第1の冷却器部(121)の前記第1の側面と前記ベースプレート(108)とのうちの一方に配置される溝(120)であって、前記溝(120)は、前記少なくとも1つの開口(118)および前記一体化された冷却構造体をそれぞれ囲む、溝(120)と、
- 前記第1の冷却器部(121)と前記少なくとも1つの付着点により前記冷却用アッセンブリ(105)へ付着される前記ベースプレート(108)との間にシールを形成するために前記溝(120)内に配置されるガスケットと、をさらに備える、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の冷却用アッセンブリ(105)。
【請求項9】
前記ガスケットは、フォームインプレースガスケット(119)または交換可能なガスケットの形態である少なくとも1つのガスケットを備える、請求項8に記載の冷却用アッセンブリ(105)。
【請求項10】
パワーモジュール(101)であって、
- 請求項1~9のいずれかに記載の冷却用アッセンブリ(105)と、
- 一体化された冷却構造体を備えるベースプレート(108)を有する少なくとも1つの半導体モジュール(104)と
を備え、
前記ベースプレート(108)は、前記一体化された冷却構造体が前記少なくとも1つの開口(118)を介して前記空洞内へ突き出すように、前記少なくとも1つの付着点で前記冷却用アッセンブリ(105)の
前記第1の冷却器部(121)の
前記第1の側面へ付着される、パワーモジュール(101)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの半導体モジュール(104)は、ハウジング(110)により封入される少なくとも1つのパワー半導体ダイ(112)と、前記少なくとも1つのパワー半導体ダイ(112)へ電気的に接続されかつ前記ハウジング(110)から突き出す複数のリード(113)と、を備える、請求項10に記載のパワーモジュール(101)。
【請求項12】
パワーモジュール(101)を製造するための方法であって、
- 第1の冷却器部(121)を繊維強化ポリマー材料から形成すること
を含み、前記第1の冷却器部(121)は、少なくとも1つの開口(118)と、前記第1の冷却器部(121)の第1の側面上に配置される少なくとも1つの付着点と、を有
し、前記第1の冷却器部(121)を形成することは、前記繊維強化ポリマー材料を用いて前記第1の冷却器部(121)を成形することまたは積層することを含み、前記方法はさらに、、
- 第2の冷却器部(122)を繊維強化ポリマー材料から形成する
ことを含み、前記第2の冷却器部(122)を形成することは、前記繊維強化ポリマー材料を用いて前記第2の冷却器部(122)を成形することまたは積層することを含み、前記方法はさらに、
- 前記第1の冷却器部(121)の反対側の第2の側面と前記第2の冷却器部(122)との間に冷却剤(116)用の空洞を形成するために、前記第1の冷却器部(121)と前記第2の冷却器部(122)とを
水密ジョイント(123)によって接合することと、
- 一体化された冷却構造体が前記少なくとも1つの開口(118)を介して冷却用アッセンブリ(105)の空洞内へ突き出すように、前記一体化された冷却構造体を備えるベースプレート(108)を有する少なくとも1つの半導体モジュール(104)を、前記少なくとも1つの付着点を用いて前記第1の冷却器部(121)の前記第1の側面へ付着することと
を含む、方法。
【請求項13】
前記第1の冷却器部(121)および前記第2の冷却器部(122)を接合することは、プラスチック溶接または接着結合プロセスによって接合することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも、
- 前記第1の冷却器部(121)を形成することは、少なくとも1つのねじ付き金属インサート(124)を前記第1の冷却器部(121)に埋め込むことを含み、または、
- 前記付着することは、前記少なくとも1つの半導体モジュール(104)を、前記ねじ付き金属インサート(124)にねじ込まれるねじ(107)を用いて前記第1の冷却器部(121)へクランプすることを含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも、
- 前記第1の冷却器部(121)を形成することは、前記第1の冷却器部(121)の前記第1の側面上に第1の連動構造体を形成することを含み、または、
- 前記付着することは、前記第1の冷却器部(121)と前記少なくとも1つの半導体モジュール(104)との間に接着結合を形成するために、前記第1の連動構造体と、前記少なくとも1つの半導体モジュール(104)の対応する第2の連動構造体との間に結合ライン(127)を置くことを含む、請求項12または13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一体化された冷却構造体を備えるベースプレートを有する少なくとも1つの半導体モジュールのための冷却用アッセンブリに関する。本開示は、さらに、このような冷却用アッセンブリと少なくとも1つの半導体モジュールとを備えるパワーモジュール、ならびにパワーモジュールを製造するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
米国登録特許第9,613,885号明細書は、複数の離散的モジュールとプラスチック製ハウジングとを含む冷却装置に関する。各モジュールは、成形コンパウンドにより封入される半導体ダイと、半導体ダイへ電気的に接続されかつ成形コンパウンドから突き出す複数のリードと、成形コンパウンドにより少なくとも部分的に覆われていない第1の冷却プレートと、を含む。プラスチック製ハウジングは、マルチダイモジュールを形成すべく各モジュールの周縁を取り囲む。
【0003】
米国特許出願公開第2011/0316143号明細書は、樹脂モールドにより作られる半導体ユニットを含む半導体モジュールに関する。樹脂モールドは、その内部に、樹脂モールド内に埋め込まれる半導体チップを冷却するために冷却剤が通って流れる冷却剤経路を形成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造および組立てが容易であって、軽量であり、かつパワー半導体ダイの効率的な冷却を可能にする、半導体モジュールのための改善された冷却用アッセンブリが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様によれば、一体化された冷却構造体を備えるベースプレートを有する少なくとも1つの半導体モジュールのための冷却用アッセンブリが提供される。冷却用アッセンブリは、第1の冷却器部であって、少なくとも1つの開口、および第1の冷却器部の第1の側面上に配置される少なくとも1つの付着点を有し、少なくとも1つの開口は、対応する半導体モジュールの一体化された冷却構造体を受け入れるように構成され、半導体モジュールのベースプレートは、第1の冷却器部の第1の側面上の少なくとも1つの付着点へ付着される、第1の冷却器部と、第1の冷却器部の反対側の第2の側面上に配置される第2の冷却器部と、を備える。第1および第2の冷却器部は、繊維強化ポリマー材料から作られ、かつ第1の冷却器部の第2の側面と第2の冷却器部との間に冷却剤用の空洞を形成するように密封式に接合される。
【0006】
上述の冷却用アッセンブリは、たとえば従来の射出成形プロセスにより、軽量のポリマーベース材料から容易に形成されることが可能である。繊維強化ポリマー材料の使用は、自動車用パワーエレクトロニクスなどの高出力用途で使用される冷却剤と適合する。同時に、一体化された開口および少なくとも1つの付着点は、モジュールの容易な組立てを促進する。たとえば、第1の冷却器部のみ、第2の冷却器部のみ、または第1の冷却器部および第2の冷却器部の双方が、射出成形されたプラスチック製部品である可能性もある。
【0007】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の冷却器部と第2の冷却器部とのうちの少なくとも一方は、ガラス繊維によって強化された、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)およびアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)のうちの少なくとも1つを含む。たとえば、第1の冷却器部のみ、第2の冷却器部のみ、または第1の冷却器部および第2の冷却器部の双方は、耐燃性であってそれぞれ200℃および140℃までの温度に耐えることができる、かつエチレングリコールなどの典型的な冷却剤と適合する、上述の材料のうちの1つまたはそれ以上を備える可能性もある。
【0008】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の冷却器部と第2の冷却器部とのうちの少なくとも一方は、薄層状の炭素複合材である。たとえば、第1の冷却器部のみ、第2の冷却器部のみ、または第1の冷却器部および第2の冷却器部の双方は、予備含浸複合繊維を含む可能性もある。このような材料は、強力かつ軽量であって、脱オートクレーブの複合材製造などの新規処理技術を用いて製造されることが可能である。
【0009】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の冷却器部および第2の冷却器部は、プラスチック溶接接合または接着結合接合によって接合される。あるいは、加熱結合が使用される場合もある。このような接合部は、製造が容易であって、冷却用アッセンブリからの冷却剤の漏れを防止する。同時に、冷却用アッセンブリを異なる2つの冷却器部から製造することは、比較的複雑なハウジング構造の提供を見込んでいる。
【0010】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの付着点は、ねじを取り付けるための少なくとも1つのねじ付きインレイを備える。ねじ付きインレイを第1の冷却器部内へ、たとえば金属インサート成形を用いて埋め込むことは、金属材料から作られる従来の冷却用アッセンブリに十分に適合する冷却用アッセンブリの製造を可能にする。
【0011】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの付着点は、接着結合ラインを受け入れるように構成される連動構造体を備える。接着結合ラインと組み合わせた連動構造体の使用は、第1の冷却器部と少なくとも1つの半導体モジュールとの間の横方向および垂直方向のミスアラインメントの補償を可能にする。同時に、冷却用アッセンブリの第1の冷却器部と、これに付着される半導体モジュールとの間の密閉式接続が形成可能であって、これらの2つの部分間における別個のガスケットの必要性が排除される。
【0012】
少なくとも1つの実施形態によれば、冷却用アッセンブリは、さらに、第1の冷却器部の第1の側面とベースプレートとのうちの一方に配置される溝であって、該溝は、少なくとも1つの開口および一体化された冷却構造体をそれぞれ囲む、溝と、第1の冷却器部と少なくとも1つの付着点により冷却用アッセンブリへ付着されるベースプレートとの間にシールを形成するために溝内に配置されるガスケットと、を備える。これは、たとえば従来の半導体モジュールを本開示の冷却用アッセンブリへ付着する場合に、従来のOリングガスケットまたは新規のフォームインプレース(FIP)ガスケットの使用を可能にする。
【0013】
本開示の第2の態様によれば、パワーモジュールは、第1の態様による冷却用アッセンブリと、一体化された冷却構造体を備えるベースプレートを有する少なくとも1つの半導体モジュールとを備え、ベースプレートは、一体化された冷却構造体が少なくとも1つの開口を介して空洞内へ突き出すように、少なくとも1つの付着点で冷却用アッセンブリへ付着される。このようなパワーモジュールは、軽量かつ製造が容易である。
【0014】
第3の態様によれば、パワーモジュールを製造するための方法が開示される。本方法は、
- 第1の冷却器部を繊維強化ポリマー材料から形成するステップであって、第1の冷却器部は、少なくとも1つの開口と、第1の冷却器部の第1の側面上に配置される少なくとも1つの付着点と、を有する、形成するステップと、
- 第2の冷却器部を繊維強化ポリマー材料から形成するステップと、
- 第1の冷却器部の反対側の第2の側面と第2の冷却器部との間に冷却剤用の空洞を形成するために、第1の冷却器部と第2の冷却器部とをプラスチック溶接または接着結合プロセスによって接合するステップと、
- 一体化された冷却構造体が少なくとも1つの開口を介して冷却用アッセンブリの空洞内へ突き出すように、一体化された冷却構造体を備えるベースプレートを有する少なくとも1つの半導体モジュールを、少なくとも1つの付着点を用いて第1の冷却器部の第1の側面へ付着するステップと、を含む。
【0015】
上述のステップは、成形プロセスを用いる軽量なパワーモジュールの製造を可能にする。
【0016】
先に詳述したように、本開示は、幾つかの態様およびその実施形態を含む。態様およびその実施形態のうちの1つに関連して記載される特徴は、悉く、本明細書において、その個々の特徴が特定の態様の文脈において明示的に言及されていない場合であっても、他の態様にも関連して開示される。さらに、第1の特徴Aと第2の特徴Bとのうちの少なくとも一方を含むものとして複数の実施形態が開示される場合、第1の実施形態は、第1の特徴Aのみを含んでもよく、別個の第2の実施形態は、第2の特徴Bのみを含んでもよく、かつ別個の第3の実施形態は、第1の特徴Aと、第2の特徴Bとを含んでもよいことが開示される。
【0017】
添付の図面は、さらなる理解を提供するために包含されている。諸図において、構造および/または機能が同じであるエレメントは、同じ参照符号で参照され得る。図示されている実施形態が、例示的に表現されたものであって、必ずしも一定の縮尺で描かれたものでないことは、理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来のパワーモジュールの第1の断面を示す略図である。
【
図2】
図1のパワーモジュールの第2の断面を示す略図である。
【
図3】本開示の一実施形態によるパワーモジュールの第1の断面を示す略図である。
【
図4】
図3のパワーモジュールの第2の断面を示す略図である。
【
図5】本開示の別の実施形態によるパワーモジュールの断面を示す略図である。
【
図6】パワーモジュールを製造するための方法を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、様々な変更および代替形態を受け入れるものであるが、諸図はその明細を例として示したものであり、以後、これらについて詳述する。しかしながら、説明する特定の実施形態に本発明を限定する意図のないことは、理解されるべきである。反対に、その意図は、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲に含まれる全ての変更、同等物および代替形態を包含することにある。
【0020】
本開示の理解を助けるために、まず、
図1および
図2を参照して、アルミニウム合金冷却器アッセンブリを有する従来のパワーモジュール1について説明する。
【0021】
図1は、パワーモジュール1の第1の断面を略示していて、冷却剤は、
図1に示す平面に流入し、または該平面から流れ出る。
図2は、同じパワーモジュール1の第2の垂直断面を示し、冷却剤は、
図2の左側に示されている第1のポート2から右側に示される第2のポート3へ流れる。
【0022】
このパワーモジュール1は、冷却用アッセンブリ5へ付着される2つの半導体モジュール4を備える。
図2から分かるように、半導体モジュール4は、各半導体モジュール4のベースプレート8を冷却用アッセンブリ5の上面9に締め付けるクランプ6および対応するねじ7によって、冷却用アッセンブリ5へ付着される。
【0023】
ベースプレート8は、金属材料から製造され、成形体10に埋め込まれる。成形体10は、基板11も埋め込んでいて、その上に、パワーモジュール1のパワーコンポーネントを形成する実際の半導体ダイ12が形成される。基板11の裏側には、幾つかの導電リード13が付着される。リード13は、成形体10の外部の終端14まで延びる。
【0024】
冷却用アッセンブリ5は、エチレングリコール-水混合物などの冷却剤16を第1のポート2から第2のポート3へ、またはその逆で案内するために使用される中空のアルミニウム合金本体部15から作られる。第1のポート2から第2のポート3へ向かう途中で、液体冷却剤16は、ピンフィン17のアレイを通過する。ピンフィン17は、ベースプレート8から延びて、アルミニウム合金本体部15内の対応する開口18を介して冷却剤16の流れの中へ突き出し、よって、冷却剤16に曝露されるベースプレート8の表面積が著しく増える。動作において、半導体ダイ12により放散される熱は、ベースプレート8およびピンフィン17のアレイを介して冷却剤16へと伝導され、よって、冷却装置の熱伝達係数が大幅に高められる。これにより、一体化された冷却構造体を持たない半導体パワーモジュールに比べて、半導体ダイ12から離れる熱流が増える。
【0025】
ある自動車用途において、冷却用アッセンブリ5の第1および第2のポート2および3は、車両の汎用冷却システムへ接続されることが可能である。半導体モジュール4と冷却用アッセンブリ5との間の液密シールを保持するために、図示の冷却装置では、冷却用アッセンブリ5の開口18を取り囲む個々の溝20内にOリングガスケット19が配置されている。
【0026】
上述のパワーモジュール1および冷却用アッセンブリ5は、異なる用途シナリオにおいて確実に機能する。しかしながら、アルミニウム合金などの金属材料から冷却用アッセンブリ5を形成すると、パワーモジュール1の全体重量が増す。さらに、このような多重部品で部分的に金属製であるパワーモジュール1を組み立てることは、結果として製造コストを比較的高くし、かつ部品点数を多くする。したがって、このようなパワーモジュールの重量およびコンポーネント数をさらに減じる必要がある。
【0027】
図3および
図4は、本開示の第1の実施形態によるパワーモジュール101の断面を示す略図である。
図3および
図4に示す断面は、各々、
図1および
図2に示すパワーモジュール1の断面に対応する。
図3および
図4に示す実施形態の説明に当たっては、説明を容易にするために、対応する参照符号を用いる。
【0028】
記載の本開示によるパワーモジュール101は、2つの半導体モジュール104と、共通の冷却用アッセンブリ105とを備える。当然ながら、さらなる半導体モジュール104を、または単一の半導体モジュール104のみを備えるパワーモジュールも可能である。パワーモジュール101は、たとえば、液冷式インバータの一部であってもよい。
【0029】
半導体モジュール104は、先に詳述したように、冷却用アッセンブリ105の上面109へ、クランプ106およびねじ107によって付着される。別の実施形態において、各半導体モジュール104は、冷却用アッセンブリ105の上面109へ、ねじ107(不図示)だけによって付着される。たとえば、ねじ107は、各半導体モジュール104の対応する孔またはスリットを貫通されてもよい。あるいは、別個のクランプ部品の必要性をなくすために、十分な大きさのヘッドを有するねじ107の使用が可能である。各半導体モジュール104は、射出成形ハウジングおよび/またはゲルなどの絶縁材料で充填されるハウジングなどの、たとえば成形体または他のタイプのプラスチックハウジングであるハウジング110を備える。ハウジング110内へは、1つまたは幾つかの半導体ダイ112を担持する基板111が埋め込まれる。たとえば、半導体ダイ112は、インバータの電力スイッチング段のIGBT、ダイオードまたはMOSFETであってもよい。半導体ダイ112および/または基板111は、リード113によって終端114から接触されることが可能である。ハウジング110は、半導体ダイ112と熱接続する金属製ベースプレート108をも部分的に封入する。金属製ベースプレート108は、ベースプレート108から半導体ダイ112とは反対側へ延びる幾つかのピンフィン117の形態である、一体型の冷却構造体を有する。
【0030】
図1および
図2に示す冷却用アッセンブリ5とは対照的に、
図3および
図4に示す冷却用アッセンブリ105は、繊維強化ポリマー材料から製造される。たとえば、ガラス繊維強化ポリマーまたは炭素繊維強化ポリマーが使用されてもよい。冷却用アッセンブリ105を形成するに当たっては、2つの別個の冷却器部である第1の冷却器部121および第2の冷却器部122が水密ジョイント123によって接合される。記載の実施形態において、第1の冷却器部121および第2の冷却器部122は、成形によって形成され、かつ冷却剤116が通って第1のポート102から第2のポート103へ、またはその逆へ流れることができる空洞を含む。第1の冷却器部121および第2の冷却器部122は、併せてプラスチック製の本体部115を形成する。
【0031】
ガラス繊維強化ポリマーは、標準的な射出成形プロセスによって製造されることが可能である。繊維は、典型的には短く、特定の方向に配向されない。材料としては、たとえばSolvay RytonまたはCovestro Bayblendといった異なる多くのものが市販されている。このような冷却用アッセンブリ105および対応するパワーモジュール101は、幾つかの効果的な特性を有する。たとえば、強化ポリマー材料の使用は、冷却用アッセンブリ105の比較的低い重量およびコストをもたらす。同時に、多くの熱可塑性ポリマー材料、たとえばPPSを含むSolvay RytonまたはPCおよびABSの配合物を含むCovestro Bayblend、は、たとえば自動車パワーモジュールの分野で必要とされる、UL94 V-0の難燃性要件を満たし、かつ耐熱性は、各々200℃および140℃までである。さらに、Rytonは、特に、様々な水系冷却器の冷却システムに使用される不凍成分であるエチレングリコールとの適合性があるとされている。さらに、ポリマー射出成形技術は、従来の金属機械加工またはダイカスト技術よりフレキシブルであり、よって、プラスチック製本体部115のより複雑な設計の製造が見込まれる。
【0032】
あるいは、射出成形プラスチック部品を用いる代わりに、第1の冷却器部121および/または第2の冷却器部122を予備含浸複合繊維、たとえば炭素繊維、から形成することも可能である。炭素繊維強化ポリマーは、典型的には、製造がより高価であって、高い強度重量比が必須である航空宇宙またはスポーツ機器から知られている。その繊維は、長く、織られていて、かつ/または特定の方向に配向されている。これらの繊維は、たとえばポリアクリロニトリルまたはレーヨンのような合成ポリマーから製造される。所定の用途の場合、エポキシが繊維に予備含浸されているシートは、「プリプレグ」 とも呼ばれる。このような高性能部品は、加熱された圧力室を備えるオートクレーブにおいて製造されることが可能である。より最近では、層状の炭素繊維シートから部品を製造するために、オートクレーブを使用しない成形を用いることが可能であり、これを「脱オートクレーブ」製造と呼ぶ。樹脂トランスファ成形または平衡圧力流体成形に基づく脱オートクレーブ複合体製造は、その大量生産を比較的低コストで可能にする。
【0033】
2つの冷却器部121および122間の水密ジョイント123は、たとえば、超音波またはレーザベースのプラスチック溶接または適切な接着結合を用いて形成されることが可能であって、2つの冷却器部間の別個のシールの必要性が軽減される。またこれは、冷却剤116の温度および化学組成に起因する経年変化後のシール不良による漏れリスクも減らす。
【0034】
既に述べたように、ベースプレート108の下面上に形成されるピンフィン117のアレイは、冷却用アッセンブリ105の開口118を介して突き出す。記載の実施形態では、2つの半導体パワーモジュール104に対応する2つの開口118が第1の冷却器部121内に形成されている。
【0035】
図1および
図2に示す実施形態とは異なり、冷却用アッセンブリ105の上面109への半導体モジュール104の付着および密封は、異なる様式で実装される。強化ポリマー材料内へは、ねじ付きの金属製インレイ124が埋め込まれ、これにより、ねじ107およびクランプ106を用いて半導体モジュール104を第1の冷却器部121へクランプすることができる。これは、たとえば、インレイ124を、金属インサート成形とも呼ばれる第1の冷却器部121の成形に使用される形態にすることにより、達成されることが可能である。
【0036】
さらには、第1の冷却器部121の開口118を取り囲む溝120内へ直に、いわゆるフォームインプレース(FIP)ガスケット119が形成される。したがって、
図3および
図4に示す実施形態では、Oリングまたは他のカスタマイズされた形態のガスケットなどの別個の部品が不要である。プラスチック製冷却器部121と金属製ベースプレート108との間にFIPガスケット119を施すことにより、別個のOリングガスケットを設ける必要性が軽減される。とはいえ、別の実施形態では、
図3および
図4に示すアセンブリにおいて、従来のOリングガスケット19またはカスタマイズされた形状を有する他の交換可能なガスケットも使用されることが可能である。
【0037】
図5は、本開示の第2の実施形態によるパワーモジュール101の断面を示す略図である。この場合も、
図5に示す第2の実施形態に関連して、対応する参照符号が使用される。したがって、ここでは、簡潔さを期して、対応する部分についての説明を省く。
【0038】
図4に示す第1の実施形態の断面に対する、
図5に示す断面から分かるように、冷却用アッセンブリ105の上面109への個々の半導体モジュール104の付着は、さらに単純化されている。インレイ124へ付着される別個のクランプ106および/またはねじ107を用いる代わりに、ベースプレート108および第1の冷却器部121は、各々、連動突起125および溝126を提供する。半導体モジュール104を第1の冷却器部121へ機械的に接合しかつ封止するために、第1の冷却器部121の溝126内に、接着剤ラインおよび場合によりシール結合ライン127が形成される。図示されていない一代替実施形態では、溝126がベースプレート108内に形成されて、冷却器の第1の冷却器部121上に連動突起125が形成される。
【0039】
半導体モジュール104と冷却用アッセンブリ105との間の連結を形成するためには、他の多くの連動機構も使用可能であるという事実に注目されたい。開示している連動機構の形状および相対配置は、保護の範囲を限定することを意図するものではない。
【0040】
この例示的な実施形態において、半導体モジュール104と冷却用アッセンブリ105との間の接着結合は、シリコーン接着剤を基礎とする。結合されるべき部位上の表面エネルギーは、45mN/mより大きい。その表面粗さRaは、4μm~6μmであってもよい。
【0041】
図5に示す実施形態には、結合ライン127が第1の冷却器部121の製造中に容易に付けられ得る、という追加の利点がある。さらに、
図5の拡大部に示すように、結合ライン127は、ベースプレート108および/または第1の冷却器部121の表面の幾何学的形状変化を、これらの部品上に残留応力を生じさせることなく吸収する、という能力を有する。最後に、結合ライン127は、様々な材料の熱膨張をも、ジョイントの構造的連結または水密性を損なうことなく吸収することができる。
【0042】
図示されていないが、各半導体モジュール104を冷却器の第1の冷却器部121に対して横方向に位置合わせするためのアラインメント機構が使用可能である。これにより、溝126内の横方向の結合ライン厚さ制御が向上する。加えて、または代替として、結合ライン127の垂直厚さを制御するために、溝126の外側のスペーサの使用が可能である。
【0043】
図6は、ステップS1~S5を用いてパワーモジュール101を製造するための方法を略示している。ステップS1~S5は、異なる順序で、かつ/または並行して実行され得るという事実に注目されたい。たとえば、第2の冷却器部122は、第1の冷却器部121より先に形成されてもよい。また、半導体モジュール104は、第2の冷却器部122へ接合される前に第1の冷却器部121へ付着されてもよい。
【0044】
ステップS1では、第1の冷却器部121が繊維強化ポリマー材料から形成され、第1の冷却器部121は、少なくとも1つの開口118と、第1の冷却器部121の第1の側面上に配置される少なくとも1つの付着点と、を有する。たとえば、先に述べたように、ガラス繊維強化ポリマー部を形成するために射出成形が使用されてもよく、または、炭素繊維強化複合体部を形成するために樹脂トランスファ成形または平衡圧力流体成形が使用されてもよい。プラスチック材料が型枠に入れられる前に、ねじ付きの金属製インレイ125などの追加コンポーネントが型枠内に置かれてもよく、その後、完成したプラスチック部品内に適宜埋め込まれる。型枠は、ガスケットまたは接着剤および場合によりシール結合ライン127を収容するための任意の所望される溝120または126および/または突起125を生成するように設計されることが可能である。さらに、第1の冷却器部121を形成するために、積層プロセスも使用されることがある。
【0045】
ステップS2では、第2の冷却器部122が繊維強化ポリマー材料から形成される。ステップS1に関連して先に述べたものと同様の材料および方法の使用が可能である。
【0046】
ステップS3では、第1の冷却器部121と第2の冷却器部122との間に冷却剤116用の空洞を形成するために、第1の冷却器部121と第2の冷却器部122とがプラスチック溶接または接着結合プロセスによって接合される。たとえば、先に説明したように、レーザ溶接または超音波溶接を使用して水密溶接シームが形成されてもよい。
【0047】
任意選択のステップS4では、第1の冷却器部121へガスケットが付着されてもよい。たとえば、第1の冷却器部121の表面上の溝120内に、従来のOリングガスケット19またはFIPガスケット119が置かれてもよい。
【0048】
ステップS5では、一体化された冷却構造体を備えるベースプレート108を有する少なくとも1つの半導体モジュール104が、第1の冷却器部121の第1の側面へ、少なくとも1つの付着点を用いて付着される。その結果、一体化された冷却構造体は、少なくとも1つの開口118を介して冷却用アッセンブリ105の空洞内へ突き出す。先に詳述したように、これは、半導体モジュール104を第1の冷却器部121の上面109へねじ107を用いてクランプすることを含んでもよい。あるいは、半導体モジュール104のベースプレート108の第1の連動構造体は、第1の冷却器部121の対応する第2の連動構造体へ、接着剤および場合によりシール結合ライン127を用いて接着されてもよい。
【0049】
図1~
図6に示す実施形態は、先に述べたように、改善された冷却用アッセンブリ105およびパワーモジュール101の例示的な実施形態を表していて、その製造に必要なステップについても詳述している。これらは、本開示による全ての実施形態を網羅的に記載するものではない。実際の冷却用アッセンブリおよびパワーモジュールならびにそれらの製造方法は、上述の実施形態に関連して示されている実施形態とは異なる場合がある。
【符号の説明】
【0050】
符号の説明
1 パワーモジュール
2 第1のポート
3 第2のポート
4 半導体モジュール
5 冷却用アッセンブリ
6 クランプ
7 ねじ
8 ベースプレート
9(上)面
10 成形体
11 基板
12 半導体ダイ
13 リード
14 終端
15 アルミニウム合金本体部
16 冷却剤
17 ピンフィン
18 開口
19 Oリングガスケット
20 溝
101 パワーモジュール
102 第1のポート
103 第2のポート
104 半導体モジュール
105 冷却用アッセンブリ
106 クランプ
107 ねじ
108 ベースプレート
109(上)面
110 ハウジング
111 基板
112 半導体ダイ
113 リード
114 終端
115 プラスチック製本体部
116 冷却剤
117 ピンフィン
118 開口
119 FIPガスケット
120 溝
121 第1の冷却器部
122 第2の冷却器部
123 ジョイント
124 インレイ
125 突起
126 溝
127 結合ライン