(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】移動体用の風力発電システム、及びこれを備えた移動体
(51)【国際特許分類】
F03D 9/32 20160101AFI20230727BHJP
F03D 1/06 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
F03D9/32
F03D1/06 B
(21)【出願番号】P 2022026080
(22)【出願日】2022-02-22
(62)【分割の表示】P 2017253963の分割
【原出願日】2017-12-28
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】520320022
【氏名又は名称】津田 訓範
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 訓範
(72)【発明者】
【氏名】古藤 芳久
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-087864(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009016899(DE,A1)
【文献】特許第7030511(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 9/32
F03D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状の風洞と、
風洞内に配置され、ハブ及び複数の羽根を有する羽根車と、
羽根車の回転によって発電する発電機とを備え、
ハブが、前端部側から後端部側に向かうにつれ径が大きくなる略円錐部または略裁頭円錐部を有し、
ハブの略円錐部または略裁頭円錐部の底面の直径が、
ハブが配置されている部分の風洞の内径と略等しく、
複数の羽根のそれぞれが、ハブの前端部近傍から後端部近傍にかけて、略円錐部または略裁頭円錐部の母線に対して斜めに所定の角度をなすように形成されている、
移動体用の風力発電システム。
【請求項2】
羽根が、略三角形状であり、略三角形状の斜辺に相当する部位と略円錐部または略裁頭円錐部の側面とが接するように形成されている、
請求項1に記載の移動体用の風力発電システム。
【請求項3】
羽根車の回転軸に垂直な任意の平面によって羽根車を切断した場合に、断面における羽根の長さが、略円錐部または略裁頭円錐部の底面の半径と、略円錐部または略裁頭円錐部の断面の半径との差と略等しい、
請求項1または2に記載の移動体用の風力発電システム。
【請求項4】
所定の角度が、25~45度である、
請求項1~3のいずれかに記載の移動体用の風力発電システム。
【請求項5】
任意の1の羽根に着目した場合、該1の羽根が、略円錐部または略裁頭円錐部の側面を1周することなく形成されている、
請求項1~4のいずれかに記載の移動体用の風力発電システム。
【請求項6】
風洞が、風洞の前端部と後端部との間であって、羽根車の後端部近傍に対応する位置に、風洞の前端部から流入した風を風洞の外へ排気するための開口部を有する、
請求項1~5のいずれかに記載の移動体用の風力発電システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の移動体用の風力発電システムを備えた、移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体用の風力発電システム、及びこれを備えた移動体。
【背景技術】
【0002】
近年、電気をエネルギー源として走行する電気自動車が注目を浴びている。電気自動車は、走行中に排気ガスを排出しない等の利点を有する一方、ガソリン自動車よりも航続距離が短く、また、充電に数時間かかるといった問題がある。
【0003】
このような問題を解決するため、電気自動車に小型の風力発電装置を取り付け、走行中に受ける風力を利用して走行しながら充電をおこなうことが提案されている。このような電気自動車用の風力発電装置として、例えば、特許文献1では、円錐台のドラムの表面上に小さい羽根を複数並べて配置した羽根車を用いた風力発電装置が提案されている。また、例えば、特許文献2では、螺旋羽根車を用いた風力発電装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-101275号公報
【文献】特開2017-149168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されている風力発電装置は、高速での走行中に発電することを目的としたものである。特許文献1の羽根車は、羽根が小さく、また、羽根が軸方向に沿って並んでいるため、風力から回転エネルギーへの変換効率が十分なものではなく、例えば、低速での走行中は、羽根車の回転数を十分なものとすることが難しく、結果として、十分な発電量を得られないという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載されている風力発電装置は、螺旋羽根車を用いることで、風力から回転エネルギーへの変換効率を向上させているが、耐久性が十分なものではなかった。例えば、高速での走行中は、羽根車が気流から受ける力が非常に大きくなるため、羽根車が破損しやすいという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、風力から回転エネルギーへの変換効率および耐久性が高い、移動体用の風力発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は、以下の通りである。
【0009】
[1]風洞と、風洞内に配置され、ハブ及び複数の羽根を有する羽根車と、羽根車の回転によって発電する発電機とを備え、ハブが、前端部側から後端部側に向かうにつれ径が大きくなる略円錐部または略裁頭円錐部を有し、複数の羽根のそれぞれが、ハブの前端部近傍から後端部近傍にかけて、略円錐部または略裁頭円錐部の母線に対して斜めに所定の角度をなすように形成されている、移動体用の風力発電システム。
【0010】
[2]羽根が、略三角形状であり、略三角形状の斜辺に相当する部位と略円錐部または略裁頭円錐部の側面とが接するように形成されている、上記[1]に記載の移動体用の風力発電システム。
【0011】
[3]羽根車の回転軸に垂直な任意の平面によって羽根車を切断した場合に、断面における羽根の長さが、略円錐部または略裁頭円錐部の底面の半径と、略円錐部または略裁頭円錐部の断面の半径との差と略等しい、上記[1]又は[2]に記載の移動体用の風力発電システム。
【0012】
[4]所定の角度が、25~45度である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の移動体用の風力発電システム。
【0013】
[5]任意の1の羽根に着目した場合、該1の羽根が、略円錐部または略裁頭円錐部の側面を1周することなく形成されている、上記[1]~[4]のいずれかに記載の移動体用の風力発電システム。
【0014】
[6]風洞が、風洞の前端部と後端部との間であって、羽根車の後端部近傍に対応する位置に、風洞の前端部から流入した風を風洞の外へ排気するための開口部を有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載の移動体用の風力発電システム。
【0015】
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の移動体用の風力発電システムを備えた、移動体。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる風力発電システムによれば、羽根車がハブ及び複数の羽根を有し、ハブが前端部側から後端部側に向かうにつれ径が大きくなる略円錐部または略裁頭円錐部を有し、複数の羽根のそれぞれがハブの前端部近傍から後端部近傍にかけて略円錐部または略裁頭円錐部の母線に対して斜めに所定の角度をなすように形成されていることにより、羽根車による風力から回転エネルギーへの変換効率が高く、低速での走行中であっても十分な発電量を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる、風力発電システムの一例を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施の形態にかかる、風力発電システムの一例を示す側面図である。
【
図3】本発明の実施の形態にかかる、風力発電システムの一例を示す部分断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態にかかる、風力発電システムの吸気および排気を示す模式図である。
【
図5】本発明の実施の形態にかかる、羽根車の一例を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態にかかる、羽根車の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明するが、本発明は図面及び実施の形態に限定されるものではない。また、本発明は、以下に記載する好ましい数値や構成に限定されるものではない。
【0019】
本明細書において、「軸方向」とは、羽根車の回転軸に平行な方向のことをいう。また、「径方向」とは、羽根車の回転軸に垂直な方向のことをいう。
【0020】
[風力発電システム]
図1は、本発明の実施の形態にかかる風力発電システムの一例を示す正面図である。
図2は、本発明の実施の形態にかかる風力発電システムの一例を示す側面図であり、
図1に示す風力発電システムを真横から見た場合の図である。
図3は、本発明の実施の形態にかかる風力発電システムの一例を示す部分断面図であり、
図2に示す風力発電システムにおける風洞の内部の構造を示す模式図である。
【0021】
図1~3に示す風力発電システムは、略円筒状の風洞1と、風洞1を支持する台座2を備えている。また、風洞1の内部には、ハブ3及び羽根4を有する羽根車5、増速機7、出力軸8、発電機9、並びに制御装置10が備えられている。なお、
図3において、増速機7、出力軸8、発電機9、及び制御装置10は、それぞれの具体的な構造を示すものではなく、それぞれの配置を簡略的に示すものである。
【0022】
風洞1は、その内部に風を集束させるとともに、その内部に流れ込んだ風を増速させことによって、発電量および発電効率を向上させるものである。また、風洞1は、羽根車5や発電機9など、風洞1の内部に配置されたものを保護する役割を有する。
【0023】
風洞1は、
図2及び
図3に示すように、略円筒状の風洞前部1a、風洞連結部1b、及び略円筒状の風洞後部1cを備えていることが好ましい。風洞前部1aと風洞後部1cは所定の間隔をあけて配置されており、風洞前部1aと風洞後部1cとは、両者の間に開口部ができるように、風洞連結部1bによって連結されている。
【0024】
風洞前部1aの前端部は吸気口である。風洞前部1aは、移動体の移動によって発生する相対的な気流を、風洞前部1aの内部に集束させるとともに、内部に流れ込んだ気流を増速させる。その結果、内部に備えられた羽根車5に十分な風力を与えることが可能になり、発電量および発電効率を向上させることが可能になる。気流の集束効果を高めるという観点からは、
図3に示すように、風洞前部1aの前端部近傍は、風洞前部1aの内径が徐々に小さくなるように構成されていることが好ましい。
【0025】
風洞連結部1bは、風洞前部1aと風洞後部1cとの間に開口部ができるように両者を連結するものであれば、特に制限はされない。開口部は、風洞1の内部へ流入した気流や雨などを、風洞1の外へと排出するためのものである。
【0026】
図4は、本発明の実施の形態にかかる、風力発電システムの吸気および排気を示す模式図である。本実施の形態にかかる風力発電システムは、風洞前部1aの前端部から風洞前部1aの内部へと気流を吸気し、吸気した気流の少なくとも一部を開口部から排気することができる。そのため、風洞1内における羽根車5の後方で生じ得る気流の乱れを抑制することができ、結果として、発電量および発電効率を向上させることが可能になる。また、開口部の後方に配置された増速機7や発電機9などに衝突する気流を減らすことができ、結果として、増速機7や発電機9など、開口部の後方に配置されたものの破損を防止することが可能になる。
【0027】
また、開口部を備えることによって、例えば、風洞前部1aの内部へと入り込んだ雨やゴミなども風洞1の外へと排出することができるため、増速機7や発電機9など開口部の後方に配置されたものが雨やゴミなどによって破損する可能性を低下させることが可能になる。なお、上述のように、開口部からは風洞1の外へと気流が噴き出すため、開口部から風洞1の内部へ雨やゴミが侵入する可能性は少ない。
【0028】
開口部は、羽根車5の後端部近傍に対応する位置にあることが好ましい。本実施の形態にかかる羽根4は、羽根車5の前端部では受風面積が大きく、羽根車5の後端部へ向かうにつれ受風面積が小さくなるように構成されている。そのため、羽根車5の前端部では気流が羽根車5の回転に与える影響が大きいが、羽根車5の後端部では気流が羽根車5の回転に与える影響が少ないためである。開口部が羽根車5の後端部近傍に対応する位置にあることによって、羽根車5に十分な回転エネルギーを与え、かつ、開口部の後方に配置されたものの破損を防止することが可能になる。
【0029】
開口部の幅、すなわち、風洞前部1aの後端部と風洞後部1cの前端部との間の距離は、風洞前部1aの内部に流れ込んだ気流の少なくとも一部を排気できるものであれば、特に制限はされない。
【0030】
風洞後部1cの内部には、増速機7、出力軸8、発電機9、及び制御装置10が配置されている。風洞後部1cは、内部に配置されたものを保護する役割を有する。風洞後部1cの形状や大きさは特に制限されず、発電機9の形状や大きさに応じて適宜決定することができ、例えば、風洞前部1aと異なっていても良い。
【0031】
台座2は、風洞1を支持する。台座2の形状や大きさは、特に制限はされず、移動体の種類や大きさ、移動体に取り付ける位置に応じて、適宜決定することができる。
【0032】
羽根車5は、羽根車5の後端部近傍が風洞1の開口部に対応する位置に配置され、その他の部分が風洞前部1aの内部に位置するよう配置されている。羽根車5は、ハブ3と、複数の羽根4と、回転軸とを備えている。
【0033】
ハブ3は、ハブ3の前端部側から後端部側に向かうにつれ径が大きくなる略円錐部または略裁頭円錐部を有する。ハブ3の前端部側の径が小さいことにより、ハブ3の前端部近傍では、羽根4の径方向の長さを長くすることができる。そのため、羽根4が受ける気流を効率よく回転エネルギーに変換することができ、例えば、低速(例えば、時速10km程度)で移動する場合であっても、十分な発電量を得ることが可能になる。
【0034】
また、ハブ3の後端部側の径が大きいことにより、ハブ3の後端部近傍では、径の大きさが羽根4の径方向の長さの数倍になる。そのため、本実施の形態にかかる羽根車5は、十分な強度と耐久性を有し、例えば、高速で移動する場合に強い気流に受けたとしても、破損する恐れが少ない。
【0035】
ハブ3の略円錐部または略裁頭円錐部の底面の直径は、特に制限はされないが、風洞前部1aの内部に流入した気流を効率良く回転エネルギーに変換するという観点からは、例えば、風洞前部1aの内径と略等しいことが好ましい。
【0036】
回転軸は、略円錐部の頂点と底面の円の中心とを結ぶ線分上、または略裁頭円錐部の上面の円の中心と底面の円の中心とを結ぶ線分上に設けられている。回転軸は、ハブ3と一体的に形成されていても良いし、ハブ3と独立して形成し、ハブ3に嵌合させても良い。羽根車5の回転に連動して回転軸が回転し、その回転が増速機7に入力されることになる。
【0037】
複数の羽根4のそれぞれは、ハブ3の前端部近傍から後端部近傍にかけて、略円錐部または略裁頭円錐部の母線に対して斜めに所定の角度をなすように形成されており、尚且つ風洞前部1aの内径に近い直径(羽根径)を有している。このような構成により、羽根4が受ける受風面積が大きくなり、また、風洞前部1a内に流入するほぼ全ての気流を複数の羽根4のいずれかで受けることができるため、羽根車に十分な回転エネルギーを与え、十分な回転数を得ることが可能になる。
【0038】
前記所定の角度としては、特に制限はされないが、例えば、25度以上が好ましく、また、40度以下が好ましい。前記所定の角度が25度未満の場合、例えば、羽根4と気流とが衝突しにくくなり、羽根車の回転数が低下する恐れがある。また、前記所定の角度が40度を越える場合、例えば、羽根4と気流とが衝突した後に気流の乱れが発生しやすくなり、羽根車の回転数が低下する恐れがある。
【0039】
また、羽根4は、略円錐部または略裁頭円錐部の側面を1周以上するような、いわゆる螺旋状に形成されていても良いが、隣り合う2つの羽根4の間の空間で気流の乱れを生じにくくするという観点からは、略円錐部または略裁頭円錐部の側面を1周することなく形成されていることが好ましい。
【0040】
図1に示す正面図では、複数の羽根4それぞれが、ハブ3の前端部近傍(略裁頭円錐部の上面近傍の側面)から放射状に、風洞1の内壁近傍まで伸びている。ハブ3の前端部近傍において、羽根4が十分な長さを有することにより、風洞前部1aの内部に流入した気流を効率良く回転エネルギーに変換することができる。
【0041】
以下、
図5および
図6を用いて、本実施の形態にかかる羽根車についてさらに説明をする。
図5は、本発明の実施の形態にかかる、羽根車の一例を示す斜視図である。
図6は、本発明の実施の形態にかかる、羽根車の一例を示す模式図であり、理解を容易にするため、羽根車の一部を簡略化して示している。そのため、
図5と整合がとれていない部分があるが、整合がとれていない部分は、
図5に従って解釈されることが正しい。
【0042】
図5及び
図6に示す羽根車5は、略裁頭円錐部を有するハブ3と、複数の羽根4と、回転軸6とを備えている。また、
図6に示すハブ3は、略裁頭円錐部の上面の円の中心と底面の円の中心とを結ぶ線分を含む平面によってハブ3を切断した場合の断面を模式的に表したものである。また、羽根4は、対向する位置にある2枚のみを簡略的に示し、その他の羽根4は省略している。正確には、
図6における上側の羽根4は、羽根車5の前端部では図の奥側に位置し、羽根車5の後端部では図の手前側に位置するものである。また、
図6における下側の羽根4は、羽根車5の前端部では図の手前側に位置し、羽根車5の後端部では図の奥側に位置するものである。なお、
図5および
図6に示すハブ3、複数の羽根4、羽根車5、および回転軸6に関しては、
図1~4などを用いて上述した内容を適宜援用することができるため、重複する説明は省略する。
【0043】
図5に示すように、径方向における羽根4の長さは、例えば、ハブ3の前端部近傍では長く、ハブ3の後端部近傍では短くなっていることが好ましい。また、羽根車5の回転軸に垂直な任意の平面によって羽根車5を切断した場合に、その断面における羽根4の長さが、略円錐部または略裁頭円錐部の底面の半径と、略円錐部または略裁頭円錐部の断面の半径との差と略等しいことが好ましい。これらのような構成により、風力から回転エネルギーへの変換効率をより高めることができ、例えば、移動体が低速で移動するような場合であっても、十分な発電量を得ることが可能になる。
【0044】
同様の観点から、羽根4の形状としては、例えば、略三角形状が好ましく、略直角三角形状がより好ましい。羽根4の形状を略三角形状または略直角三角形状とする場合、斜辺に相当する部位と略円錐部または略裁頭円錐部の側面とが接するように羽根車5を構成することが好ましい。
【0045】
なお、ハブ3の後端部近傍では径が大きくなっているため、ハブ3の後端部近傍では、羽根車5における気流が通過するスペースが小さくなり、気流の圧力が増加する。気流の圧力を増加させた状態で、気流を風洞1に設けられた開口部へ導くことによって、開口部からの排気を効率的に行うことができ、風洞後部1cの内部に配置されたものが破損する可能性を低下させることが可能になる。
【0046】
図3の説明に戻る。増速機7は、羽根車5と発電機9との間に配置される。増速機7は、羽根車5の回転軸(入力軸)6から入力された回転数を増加させ、出力軸8を介して発電機9へと伝える。増速機7を備えることで、移動体の移動速度が遅く、羽根車の回転数が不十分な場合でも、十分な発電量および発電効率を得ることが可能になる。増速機7としては、特に制限はされず、例えば、要求される発電量または発電機9の種類などに応じて、従来公知のものを適宜採用することができる。
【0047】
発電機9は、出力軸8を介して伝達された回転エネルギーを電気エネルギーに変換する。発電機としては、特に制限はされず、例えば、移動体に備えられた蓄電池の種類などに応じて、従来公知のものを適宜採用することができる。発電機9としては、直流発電機でも良いし、交流発電機でもよいが、例えば、発生した電流を蓄電池に蓄電させる場合、直流発電機、または整流器を備えた交流発電機(例えば、オルタネータ)が好ましい。
【0048】
発電機9によって得られた電気エネルギーは、移動体に備えられた蓄電池(図示せず)において蓄電される。蓄電池としては特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、鉛蓄電池など従来公知のものを適宜採用することができる。また、いわゆる全固体電池であっても良い。移動体が動力源として蓄電池を備えている場合は、動力源である蓄電池に蓄電されることが好ましい。
【0049】
制御装置10は、ケーブル等(図示せず)を介して、発電機9と電気的に接続されている。制御装置10は、発電機9によって得られた電気エネルギーを蓄電池に蓄電する際の制御を行う。制御装置10は、例えば、蓄電池がリチウムイオン電池の場合等に過充電などが起きないよう、蓄電池への出力電圧の制御などを行う。なお、蓄電池が鉛蓄電池の場合など、蓄電池への出力電圧の制御が不要な場合は、制御装置10を備えていなくても良い。制御装置10は、風洞後部1cの内部ではなく、例えば、蓄電池の近傍に備えられていても良い。
【0050】
[移動体]
次に、本発明の実施の形態にかかる、移動体について説明をする。移動体とは、例えば、陸上、海上、または空中を、風力発電が可能な所定の速度(例えば、10km/時)以上で移動可能なものをいう。移動体の具体例としては、自転車、バイク、自動車、船舶、無人航空機(例えば、ドローン)などが挙げられる。
【0051】
移動体の動力源は、人力、ガソリン、電力など、特に制限はされないが、電力が好ましい。例えば、蓄電池に備えられた電力を動力源とする移動体であれば、移動によって消費した電力を風力発電システムによって発電した電力で補うことができるので、航続距離を伸ばすことが可能になる。電力を動力源とする移動体の具体例としては、電動自転車、電動バイク、電気自動車、ドローンなどが挙げられる。なお、移動体の動力源が電力でない場合でも、発電した電力を蓄電池に蓄え、他の用途に使用することができるため、有用である。
【0052】
風力発電システムの取り付け位置は、移動によって発生する相対的な気流を受けることができる位置であれば、特に制限はされない。風力発電システムの取り付け位置は、移動体の内部であっても外部であっても良く、移動体の種類や大きさに応じて、適宜決定すればよい。移動体が電気自動車の場合、例えば、スポイラーなどのエアロパーツを取り付ける位置や、ボンネットの中などが挙げられる。ボンネットの中に取り付ける場合は、例えば、フロントグリルから流入する気流によって発電を行う。また、電気自動車のボディに専用の取り付けスペースを設け、風力発電システムの吸気口に気流が流れこめる態様にてボディに埋め込んでも良い。破損する可能性を低下できるという観点からは、ボンネットに配置する、又はボディに埋め込む態様で配置することが好ましい。
【0053】
移動体に取り付ける風力発電システムの数は、特に制限はされず、要求される発電量に応じて、適宜決定すれば良い。上述した実施の形態にかかる風力発電システムは、従来の風力発電所に設置されている風力発電装置と比べて非常に小型かつ軽量であるため、移動体への取り付けが容易であり、また、複数取り付けた場合でも移動体の重量的な負担が少ない。
【符号の説明】
【0054】
1 風洞
1a 風洞前部
1b 風洞連結部
1c 風洞後部
2 台座
3 ハブ
4 羽根
5 羽根車
6 回転軸(入力軸)
7 増速機
8 出力軸
9 発電機
10 制御装置