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特許7320643カーブコンベア、カーブベルト、及びカーブベルトの取り付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】カーブコンベア、カーブベルト、及びカーブベルトの取り付け方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/02 20060101AFI20230727BHJP
   B65G 39/071 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
B65G15/02
B65G39/071
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022030951
(22)【出願日】2022-03-01
(65)【公開番号】P2022180293
(43)【公開日】2022-12-06
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2021087220
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井 亮人
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-525276(JP,A)
【文献】特開2004-299857(JP,A)
【文献】特開平03-158306(JP,A)
【文献】特開2007-297155(JP,A)
【文献】特表平11-500399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/02
B65G 39/071
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射状に配列された回転可能な複数のローラに無端状のカーブベルトを巻き掛け、前記ローラの回転によって前記カーブベルトを走行させるカーブコンベアであって、
複数の前記ローラのうちの両端に位置する2つのローラの軸方向外端側の外周にスリーブをそれぞれ嵌装し、
前記各スリーブの軸方向内端側の端縁が前記カーブベルトの外周端縁から前記カーブベルトの幅の1%~50%の位置に一致するように前記各スリーブをそれぞれ配置し、
前記両端に位置する2つのローラのそれぞれの外周面に沿って第1の仮想線を延ばしたときに前記第1の仮想線が交わる第1の交点での前記第1の仮想線間の角度をθ1とし、前記第1の仮想線上の前記ローラの内周端から前記第1の交点までの距離をR1とし、前記カーブコンベアに装着していないときの扇状の前記カーブベルトの両端から第2の仮想線を延ばしたときに前記第2の仮想線が交わる第2の交点での前記第2の仮想線間の角度をθ2とし、前記第2の仮想線上の前記カーブベルトの内周端から前記第2の交点までの距離をR2とすると、R1<R2およびθ1>θ2の関係を満たす
カーブコンベア。
【請求項2】
放射状に配列された回転可能な複数のローラに無端状のカーブベルトを巻き掛け、前記ローラの回転によって前記カーブベルトを走行させるカーブコンベアであって、
複数の前記ローラのうちの両端に位置する2つのローラの少なくともいずれか一方の軸方向外端側の外周にスリーブを嵌装し、
前記スリーブの軸方向内端側の端縁が前記カーブベルトの外周端縁から前記カーブベルトの幅の1%~50%の位置に一致するように前記スリーブを配置し、
前記両端に位置する2つのローラのそれぞれの外周面に沿って第1の仮想線を延ばしたときに前記第1の仮想線が交わる第1の交点での前記第1の仮想線間の角度をθ1とし、前記第1の仮想線上の前記ローラの内周端から前記第1の交点までの距離をR1とし、前記カーブコンベアに装着していないときの扇状の前記カーブベルトの両端から第2の仮想線を延ばしたときに前記第2の仮想線が交わる第2の交点での前記第2の仮想線間の角度をθ2とし、前記第2の仮想線上の前記カーブベルトの内周端から前記第2の交点までの距離をR2とすると、R1<R2およびθ1>θ2の関係を満たす
カーブコンベア。
【請求項3】
前記スリーブの軸方向内端側の端縁が前記カーブベルトの外周端縁から前記カーブベルトの幅の5%~25%の位置に一致するように前記スリーブを配置した請求項1または2に記載のカーブコンベア。
【請求項4】
前記スリーブの厚さを前記カーブベルトの厚さの20%~300%とした請求項1~3の何れかに記載のカーブコンベア。
【請求項5】
前記カーブベルトの裏面と前記スリーブとの接触幅を前記カーブベルトの幅の1%~50%とした請求項1~4の何れかに記載のカーブコンベア。
【請求項6】
前記カーブベルトの裏面と前記スリーブとの接触幅を前記カーブベルトの幅の1%~25%とした請求項1~4の何れかに記載のカーブコンベア。
【請求項7】
前記スリーブと前記カーブベルトの裏面との接触部における摩擦係数を0.3~2.0とした請求項1~6の何れかに記載のカーブコンベア。
【請求項8】
前記カーブベルトが、繊維層が積層されることなく樹脂層のみで構成されている、請求項1~7の何れかに記載のカーブコンベア。
【請求項9】
前記ローラをテーパローラとした請求項1~8の何れかに記載のカーブコンベア。
【請求項10】
請求項1~9の何れかに記載のカーブコンベアの両端のローラに巻き掛けられる無端状のカーブベルト。
【請求項11】
前記カーブベルトと、隣接した他のカーブコンベアのカーブベルトとの間に、搬送物を支持する支持板が設けられている、請求項1~9の何れかに記載のカーブコンベア。
【請求項12】
カーブコンベアの放射状に配列された回転可能な複数のローラに対して無端状のカーブベルトを巻き掛けるカーブベルトの取り付け方法であって、
複数の前記ローラのうちの両端に位置する2つのローラの少なくともいずれか一方の軸方向外端側の外周にスリーブを嵌装し、
前記ローラの軸方向内端側から軸方向外端側へ向けて、前記カーブベルトの外周端縁側から前記カーブベルトを前記ローラに嵌め込み、少なくとも前記スリーブの一部に前記カーブベルトが重なる位置で前記カーブベルトを張架させ、
前記ローラを回転させることにより、前記カーブベルトが回転方向に走行しながら前記ローラの軸方向に移動し、前記スリーブの軸方向内端側の端縁が前記カーブベルトの外周端縁から前記カーブベルトの幅の1%~50%の位置に、前記カーブベルトが自動的に位置決めされる、
前記両端に位置する2つのローラのそれぞれの外周面に沿って第1の仮想線を延ばしたときに前記第1の仮想線が交わる第1の交点での前記第1の仮想線間の角度をθ1とし、前記第1の仮想線上の前記ローラの内周端から前記第1の交点までの距離をR1とし、前記カーブコンベアに装着していないときの扇状の前記カーブベルトの両端から第2の仮想線を延ばしたときに前記第2の仮想線が交わる第2の交点での前記第2の仮想線間の角度をθ2とし、前記第2の仮想線上の前記カーブベルトの内周端から前記第2の交点までの距離をR2とすると、R1<R2およびθ1>θ2の関係を満たす
カーブベルトの取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物を曲線方向に搬送するためのカーブコンベア、カーブベルト、及びカーブベルトの取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にベルトコンベアは、各種物品(以下、「搬送物」と称する)を搬送するために広く用いられているが、搬送物を搬送するには必ずしも直線方向とは限らず、曲線方向に搬送する場合もある。このように搬送物を曲線方向に搬送するベルトコンベアとしてカーブコンベアが提案され、既に実用に供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記カーブコンベアは、放射状に配列された回転可能な複数のローラに無端状のカーブベルトを巻き掛け、前記ローラの回転によって前記カーブベルトを走行させて搬送物を曲線方向に搬送するものである。
【0004】
斯かるカーブコンベアにおいては、搬送物が載置された略扇状のカーブベルトの駆動中に該カーブベルトに中心方向に向かう向心力が作用し、このカーブベルトが蛇行する可能性がある。このようなカーブベルトの蛇行を抑制する手段として、例えば、特許文献2には、カーブベルトの外周縁に沿って合成樹脂製のビードを取り付け、このビードを一対の回転体(主としてベアリング)で上下から挟み込んでカーブベルトの中心方向(内周側)への移行を阻止するための蛇行防止手段(拘束具)を備えたカーブコンベアが提案されている。
【0005】
しかしながら、上記カーブコンベアにおいては、一対の回転体(ベアリング)は、フレームなどに固定されているため、カーブベルトをセットする際には、ビードを回転体(ベアリング)の間に斜め方向から無理やり差し込む必要があるため、その作業が大変で作業性が悪く、ビードが損傷し易いという問題がある。また、蛇行防止手段は、ビードや回転体(ベアリング)などによって構成されているため、部品点数が増え、コストアップを招くという問題がある。
【0006】
一方、搬送物を直線方向に搬送するベルトコンベアにおいてベルトの蛇行を防止するために、ローラの外周の一部にスリーブを装着することは一般的に行われており、このような構成をカーブコンベアにも適用することが特許文献3において提案されている。具体的には、カーブコンベアにおいて放射状に配置された複数のローラの外周側(軸方向外端側)の一部にスリーブ(トラッキング部材)をそれぞれ嵌装する構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-083946号公報
【文献】特開2011-251779号公報
【文献】特表2005-525276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3において提案されたような構成をカーブコンベアに適用した場合であっても、カーブコンベアにおいては、構造的にカーブベルトの内周側と外周側で周速差が生じ、この周速差によってカーブベルトに蛇行が発生し易いという問題がある。カーブベルトの周速差を考慮し、略扇形のカーブベルトの中心角度、ローラ径、カーブベルトの内周と外周の各曲率半径などによって幾何学的に規定されるカーブベルトを製作しても、ローラの配置角度、ローラ径、ローラとカーブベルトの相互位置のバラツキや、カーブベルトの製作精度に起因するズレなどからカーブベルトの走行が乱れてしまい、カーブベルトの蛇行を抑制することは困難である。
【0009】
発明者は、鋭意研究の結果、カーブコンベアにおいて蛇行防止手段としてローラの外周の一部にスリーブを嵌装する場合、スリーブとカーブベルトの寸法や相対位置、摩擦係数などと、カーブベルトの製法などを工夫することによって、カーブベルトの蛇行を効果的に防ぐことができることを見出した。
【0010】
したがって、本発明は、拘束具(ビードや回転体)などを用いることなく、簡単な構成でカーブベルトの蛇行を効果的に防ぐことができるカーブコンベア、カーブベルト及びカーブベルトの取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、放射状に配列された回転可能な複数のローラに無端状のカーブベルトを巻き掛け、前記ローラの回転によって前記カーブベルトを走行させるカーブコンベアであって、複数の前記ローラのうちの両端に位置する2つのローラの軸方向外端側の外周にスリーブをそれぞれ嵌装し、前記各スリーブの軸方向内端側の端縁が前記カーブベルトの外周端縁から当該カーブベルトの幅の1%~50%の位置に一致するように前記各スリーブをそれぞれ配置する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、拘束具(ビードや回転体)などを用いることなく、簡単な構成でカーブベルトの蛇行を効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るカーブコンベアの破断平面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図2のB-B線断面図である。
図4】カーブコンベアの内周の曲率半径及び製作角度と、未装着時のカーブベルトの内周の曲率半径及び各製作角度とを示す模式的平面図である。
図5】本発明の変形例に係るカーブコンベアの破断平面図である。
図6】カーブコンベアの側断面図である。
図7】カーブベルトの取り付け工程(1)を説明するための概略図である。
図8】カーブベルトの取り付け工程(2)を説明するための概略図である。
図9】カーブベルトの取り付け工程の概念図であって(a)は従来の例を示す概念図であり、(b)は本実施の形態の例を示す概念図である。
図10】本発明の他の実施の形態のカーブコンベアの平面図である。
図11】本発明の他の実施の形態のカーブコンベアの平面図である。
図12】本発明の他の実施の形態のカーブコンベアの平面図である。
図13図12のG-G線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
(本実施の形態)
図1は本発明に係るカーブコンベアの破断平面図、図2図1のA-A線断面図、図3図2のB-B線断面図である。なお、以下の説明においては、図1の上側を「外周側」、下側を「内周側」とする。
【0016】
本発明に係るカーブコンベア1は、不図示の搬送物を曲線方向に搬送するものであって、図1に示すように、平面視で放射状に配列された回転可能な複数(図示例では、5本)のローラ2(2a~2e)に無端状のカーブベルト3を巻き掛け、ローラ2(2a~2e)の回転によってカーブベルト3を曲線方向に走行させる機能を果たすものである。
【0017】
上記複数のローラ2(2a~2e)は、径方向内外(図1の上下、図2の左右)に平行に配置された平面視円弧状のフレーム4,5に、その軸方向両端、つまり、軸方向内端(内周端)と軸方向外端(外周端)がそれぞれ回転可能に支持されている。これらのローラ2(2a~2e)は、図2に示すように、内周側(図2の右側)に向かって直線的に縮径する(先細となる)テーパローラであって、例えば、図1の左端に位置するローラ2aは、駆動ローラであって、この駆動ローラ2aは、不図示の電動モータなどの駆動源によって所定の速度で回転駆動される。また、右端に位置するローラ2eは、従動ローラであり、この従動ローラ2eと駆動ローラ2aとの間に配置された3本のローラ2b~2dは、アイドラローラであって、これらのローラ2b~2dと従動ローラ2eは、自由回転可能である。
【0018】
駆動ローラ2aと従動ローラ2e及びアイドラローラ2b~2dは、その軸方向内端部に互いに巻装された不図示の動力用丸ベルトによって互いに連結されており、電動モータなどの駆動源によって駆動ローラ2aが回転駆動されると、該駆動ローラ2aの回転が動力用丸ベルトによってアイドラローラ2b~2dと従動ローラ2eに伝達され、これらのアイドラローラ2b~2dと従動ローラ2eが同時に同一速度で且つ同方向に回転し、駆動ローラ2aとアイドラローラ2b~2d及び従動ローラ2eに巻き掛けられたカーブベルト3が走行する。具体的には、駆動ローラ2aが例えば図3の矢印方向(反時計回り方向)に回転駆動されると、カーブベルト3の上側の往路側部分(引張側部分)3aは、図3の矢印方向(左方向)に走行して引張力が作用し、下側の復路側部分(弛緩側部分)3bは、図3の矢印方向(右方向)に走行して圧縮力が作用する。
【0019】
なお、本実施の形態では、ローラ(2a~2e)は、ステンレス鋼(SUS)やアルミニウム合金などの金属によって構成されている。また、本実施の形態では、ローラ2(2a~2e)としてテーパローラを使用したが、これらのローラ2(2a~2e)に同一径のストレートローラを使用しても良い。さらに、本実施の形態では、5本のローラ2(2a~2e)を使用したが、ローラ2の数は5本に限らず、任意であって、5本未満或いは5本よりも多くても構わない。
【0020】
他方、カーブベルト3は、均等な厚さを有するシートによって平面視略扇状に成形されており、例えば、帆布などでなる繊維層が積層されることなく、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂でなる樹脂層のみで構成されたベルトを適用することが望ましい。特に、繊維層が積層されることなく樹脂層のみで構成されるカーブベルト3としては、例えば、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂でなる樹脂層と、熱可塑性樹脂に導電剤及び架橋剤が添加された樹脂製の導電層(他の樹脂層)と、が積層された多層構造の樹脂層を適用することが望ましい。ただし、カーブベルト3としては、これに限らず、例えば、熱可塑性樹脂でなる樹脂層と、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、芳香族ポリアミド繊維などからなる帆布心体とを積層させた構成のベルトなど、その他種々のカーブベルトを用いるようにしてもよい。
【0021】
以上のように構成されたカーブコンベア1においては、前述のように駆動ローラ2aを駆動源によって回転駆動すると、この駆動ローラ2aの回転が不図示の動力用丸ベルトを介してアイドラローラ2b~2dと従動ローラ2eに伝達され、全ローラ2(2a~2e)が同一方向に同速度で回転するため、これらのローラ2(2a~2e)に巻き掛けられたカーブベルト3が走行し、このカーブベルト3上に載置された不図示の搬送物が曲線方向(本実施の形態では、円弧曲線方向)に搬送される。
【0022】
ところで、従来のカーブコンベアにおいては、カーブベルトの駆動中に該カーブベルトに中心方向に向かう向心力が作用し、このカーブベルトが蛇行する可能性があることは前述の通りである。
【0023】
そこで、本実施の形態では、図1に示すように、複数(本実施の形態では、5本)のローラ2(2a~2e)のうち、最外端に位置する駆動ローラ2aと従動ローラ2eの軸方向外端側(外周側であって、図1の上側)の外周に円筒状のスリーブ6をそれぞれ嵌装している。なお、スリーブ6の材質には、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミドなどの熱可塑性樹脂を用いることができるが、本実施の形態のように、ローラ2としてテーパローラを使用する場合には、スリーブ6にゴムや樹脂の熱収縮チューブを用いれば、スリーブ6をローラ2のテーパ角度に沿ったものとすることができる。
【0024】
そして、本実施の形態では、図1及び図2に示すように、各スリーブ6は、その軸方向内端側の端縁がカーブベルト3の外周端縁から当該カーブベルト3の幅Wの1%~50%、望ましくは1~25%の位置に一致するように配置されている。つまり、図1及び図2に示すように、カーブベルト3の外周端縁から各スリーブ6の軸方向内端縁までの距離Lがカーブベルト3の幅Wの1%~50%(L/W=0.01~0.5)、望ましくは1%~25%(L/W=0.01~0.25)に設定されている。
【0025】
各スリーブ6をローラ2a,2eの外周に取り付ける位置は、カーブベルト3の外周部に近ければ近いほどクラウン効果によってカーブベルト3の走行が安定するが、各スリーブ6をカーブベルト3の外周部に近づけ過ぎると、カーブベルト3が各スリーブ6を外れた際にクラウン効果やスリーブ6とカーブベルト3の裏面間において所要の摩擦力を得ることができなくなってカーブベルト3がローラ2から外れてしまうという不具合が発生する。したがって、各スリーブ6のローラ2a,2eに対する取付位置を前述の範囲に設定することによって、カーブベルト3に高い走行安定性を確保することができることが実験的に実証された。
【0026】
また、カーブベルト3の走行安定性を高めるためには、図3に示す各スリーブ6の厚さtをカーブベルト3の厚さTの20%~300%(t/T=0.2~3.0)とすべきであることが実験的に確認された。スリーブ6の厚さtが厚い(t/Tが3.0を超える)と、カーブベルト3にシワが発生し易いが、逆にスリーブ6の厚さtが薄い(t/Tが0.2未満)と、クラウン効果やカーブベルト3のスリーブ6の部分での伸長率が低減し、カーブベルト3の走行安定性が低下する。
【0027】
さらに、本実施の形態においては、図2に示すように、カーブベルト3の裏面と各スリーブ6との接触幅bがカーブベルト3の幅Wの1~50%(b/W=0.01~0.5)、望ましくは5~20%(b/W=0.05~0.2)に設定されている。カーブベルト3の裏面と各スリーブ6との接触幅bが狭いと、カーブベルト3の自重やカーブベルト3上に搬送物が載置された場合のスリーブ6に生じる力が大きくなってしまう。この結果、カーブベルト3の裏面やスリーブ6に極度の摩耗の発生や、スリーブ6がローラ2a,2eから外れる可能性があり、カーブベルト3の走行位置を矯正することが困難になる。逆に、カーブベルト3の裏面と各スリーブ6との接触幅bが広過ぎると、クラウン効果がカーブベルト3の幅方向中央部よりも内側にも作用してしまい、カーブベルト3がローラ2の内周側を走行し、該カーブベルト3の走行位置が走行させたい位置から大きく外れてしまうという不具合が発生する。
【0028】
ところで、カーブベルト3の走行安定性を高めるには、該カーブベルト3の裏面の材質とスリーブ6の材質も重要となる。スリーブ6の材質は、摩擦係数の高いものを使用することによって、該スリーブ6とカーブベルト3との間の摩擦係数が高められ、カーブベルト3の走行位置が安定する。
【0029】
上記観点から、本実施の形態では、スリーブ6とカーブベルト3の裏面との接触部における摩擦係数を0.3~2.0とした。摩擦係数が0.3未満である場合には、カーブベルト3とスリーブ6との間に十分な摩擦力が発生せず、カーブベルト3が安定して走行しない。カーブベルト3が走行したとしても、当該カーブベルト3上に搬送物が載置されるといった外部からの力が作用した場合には、カーブベルト3の走行が不安定となって、該カーブベルト3が偏行してしまう。スリーブ6とカーブベルト3の裏面との接触部における摩擦係数を大きくするためにカーブベルト3の裏面やスリーブ6の硬度を下げると、これらのカーブベルト3の裏面とスリーブ6の摺動による摩耗が進行し、これらのカーブベルト3やスリーブ6の耐久性が低下する。耐久性の点からはカーブベルト3の裏面とスリーブ6の硬度は、互いに近い値であることが望ましく、カーブベルト3とスリーブ6の何れか一方の硬度が他方の硬度に対して著しく高いと、硬度が低い方の摩耗が激しくなって耐久性が低下する。
【0030】
また、摩擦係数が2.0を超える場合には、カーブベルト3の裏面とスリーブ6の何れか一方、または両方の硬度が低くなるため、カーブベルト3の裏面とスリーブ6の摺動による摩耗が進行し、これらのカーブベルト3やスリーブ6の耐久性が低下する。また、摩耗が進行することで、摩耗粉が発生し、摩擦係数が低下する。
【0031】
上記の点からカーブベルト3の裏面とスリーブ6の硬度は、互いに近いことが望ましく、カーブベルト3とスリーブ6の何れか一方の硬度が他方の硬度に対して著しく高いと、硬度の低い方の摩耗が激しくなって耐久性が低下する。
【0032】
以上の観点から、カーブベルト3とスリーブ6に高い耐久性を確保しつつ、カーブベルト3の走行安定性を高めるには、前述のようにスリーブ6とカーブベルト3の裏面との接触部における摩擦係数を0.3~2.0に設定することが望ましい。
【0033】
また、カーブベルト3の走行安定性を高めるためには、カーブベルト3のスリーブ6に接触する部分は、スリーブ6によって0.2%以上伸長されていることが望ましい。カーブベルト3の伸長率が不十分であると、当該カーブベルト3の裏面とスリーブ6との間の摩擦力が小さくなってしまい、カーブベルト3の自重や重量物がカーブベルト3の表面部に載った際に生じる該カーブベルト3の偏行を矯正することができない。
【0034】
ここで、図4は、カーブコンベア1の内周の曲率半径R1及び製作角度θ1と、未装着時のカーブベルト3の内周の曲率半径R2及び製作角度θ2とを模式的に示す。カーブコンベア1の製作角度θ1とは、カーブコンベア1の両端に配置されたローラ2の外周面に沿って仮想線を延ばしてゆき、当該仮想線が交わる交点О1での仮想線間の角度であり、カーブコンベア1の内周の曲率半径R1とは、仮想線上のローラ2の内周端から交点О1までの距離である。カーブコンベア1に装着していないとき(未装着時)のカーブベルト3とは、カーブコンベア1のローラ2に掛け渡していない状態のカーブベルト3である。カーブベルト3の製作角度θ2とは、平面視において未装着時の扇状のカーブベルト3の両端から仮想線を延ばしてゆき、当該仮想線が交わる交点О2での仮想線間の角度であり、未装着時のカーブベルト3の内周の曲率半径R2とは、仮想線上にあるカーブベルト3の内周端から交点О2までの距離である。カーブベルト3のスリーブ6に接触しない部分(内周側)の伸長率を抑制し、かつ、カーブベルト3のスリーブ6に接触する部分(外周側)の伸長率を大きくするには、カーブベルト3の内周の曲率半径R2を当該カーブコンベア1の内周(フレーム5の内周)の曲率半径R1よりも大きく(R1<R2)設定するとともに、カーブベルト3の製作角度θ2を当該カーブコンベア1の製作角度θ1よりも小さく(θ1>θ2)すれば良い。このようにすることによって、カーブコンベア1にカーブベルト3を装着した際に、カーブベルト3の内周側の伸長率が変わらずに、スリーブ6が設けられた外周側の伸長率が大きくなるカーブベルト3を製作することができる。
【0035】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、カーブベルト3の蛇行防止手段として、駆動ローラ2aと従動ローラ2eの外周の一部にスリーブ6をそれぞれ嵌装するだけの簡単な構成を採用したため、ビードや回端体などの拘束具を用いることなく、簡単な構成でカーブベルト3の蛇行を効果的に防ぐことができるという効果が得られる。
【0036】
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。例えば、図5に示すように、駆動ローラ2aと従動ローラ2eの外周にそれぞれ装着されるスリーブ6の一部をカーブベルト3の外周端縁から所定量だけ突出させても良い。
【0037】
(両端に位置するローラのうち、一方のローラにだけスリーブを取り付ける構成について)
また、例えば、図1及び図5では、放射状(扇状)に配置した5本のローラ2のうち、両端に位置するローラ2a,2eにスリーブ6を取り付ける構成としたが、本発明はこれに限らず、例えば、両端に位置するローラ2a及びローラ2eのうち、いずれか一方にだけ、前述の伸長率を有した、所定の厚みのスリーブ6を取り付ける構成としてもよい。両端に位置するローラ2a及びローラ2eのうち、いずれか一方にだけスリーブ6を取り付ける場合には、1つのスリーブ6でカーブベルト3を十分に伸長させる必要があるため、両端に位置するローラ2a及びローラ2eの両方にスリーブ6を取り付ける場合よりも、スリーブ6の厚みを厚くすることが望ましい。ただし、スリーブ6の厚みを厚くすることによってカーブベルト3の表面に段差が生じ、カーブベルト3の走行が不安定になる可能性もある。このため、ローラ2a及びローラ2eの一方にだけスリーブ6を取り付ける場合には、カーブベルト3の走行安定性が維持できるように、スリーブ6の厚みを選定することが望ましい。
【0038】
(スリーブの取り付け位置について)
また、前述の実施の形態においては、各スリーブ6の軸方向内端側の端縁がカーブベルト3の外周端縁からカーブベルト3の幅Wの1%~50%の位置に一致するように各スリーブ6をそれぞれ配置する構成について説明したが、より詳細には、スリーブ6の軸方向内端側の端縁がカーブベルト3の外周端縁から当該カーブベルト3の幅Wの5%~25%、さらには10~20%の位置に一致するようにスリーブ6を配置することが望ましい。つまり、図1及び図2に示すように、カーブベルト3の外周端縁から各スリーブ6の軸方向内端縁までの距離Lがカーブベルト3の幅Wの5%~25%(L/W=0.05~0.25)、さらには10%~20%(L/W=0.10~0.20)に設定することが望ましい。このような位置にスリーブ6を配置させることで、カーブベルト3の走行安定性がより向上することを実験的に確認した。
【0039】
各スリーブ6をローラ2a,2eの外周に取り付ける位置は、カーブベルト3の外周部に近ければ近いほどクラウン効果によってカーブベルト3の走行が安定するが、各スリーブ6をカーブベルト3の外周部に近づけ過ぎると、カーブベルト3が各スリーブ6を外れた際にクラウン効果やスリーブ6とカーブベルト3の裏面間において所要の摩擦力を得ることができなくなってカーブベルト3がローラ2から外れてしまうという不具合が発生する。検証試験を行った結果、各スリーブ6のローラ2a,2eに対する取り付け位置を、前述のL/W=0.05~0.25、さらにはL/W=0.10~0.20の範囲に設定することによって、カーブベルト3の高い走行安定性を一段と確実に確保することができることが確認できた。
【0040】
(接触幅bについて)
さらに、前述の実施の形態においては、カーブベルト3の裏面と各スリーブ6との接触幅bがカーブベルト3の幅Wの1~50%(b/W=0.01~0.5)に設定されている構成について説明したが、より詳細には、カーブベルト3の裏面と各スリーブ6との接触幅bがカーブベルト3の幅Wの1~25%(b/W=0.01~0.25)に設定されている構成が望ましい。そして、さらには、前述の実施の形態で説明したように、カーブベルト3の裏面と各スリーブ6との接触幅bがカーブベルト3の幅Wの5~20%(b/W=0.05~0.2)に設定されている構成が最も望ましい。検証試験を行った結果、カーブベルト3の裏面と各スリーブ6との接触幅bをb/W=0.01~0.25、さらにはb/W=0.05~0.2の範囲に限定することで、カーブベルト3の走行安定性が一段と確実に向上することが確認できた。
【0041】
具体的には、このように、カーブベルト3の裏面と各スリーブ6との接触幅bをb/W=0.01~0.25、さらにはb/W=0.05~0.2の範囲に設定することで、カーブベルト3の自重や、カーブベルト3上に搬送物が載置された場合のスリーブ6に生じる力を抑制することができる。この結果、カーブベルト3の裏面やスリーブ6に極度の摩耗の発生や、スリーブ6がローラ2a,2eから外れる可能性を低減させ、カーブベルト3の走行位置を矯正できることが、検証試験で確認できた。また、カーブベルト3の裏面と各スリーブ6との接触幅bをb/W=0.01~0.25、さらにはb/W=0.05~0.2の範囲に設定することにより、クラウン効果がカーブベルト3の幅方向中央部よりも内側にも作用したり、カーブベルト3がローラ2の内周側を走行し、該カーブベルト3の走行位置が走行させたい位置から大きく外れてしまったりすることを抑制できることが、検証試験で確認できた。
【0042】
(カーブベルトの取り付け方法)
次に、平面視扇状に配置した複数のローラ2に対して、平面視扇状に形成された無端状のカーブベルト3を取り付ける方法について説明する。図6は、ローラ2にカーブベルト3を取り付けたカーブコンベア1の側断面構成を示した側断面図である。ここで、図6に示す本実施の形態に係るカーブコンベア1は、本来はカーブベルト3を巻き掛けることなく、ローラ2上に直接、搬送物を載置させ、当該ローラ2を回転させることで当該搬送物を搬送することを想定して設計されたものである。このようなカーブコンベア1では、カーブベルト3を複数のローラ2に巻き掛けた際に、ローラ2の位置を任意に変化させ、隣接するローラ2の間隔Iを広げるなどしてカーブベルト3に張力を与えるテンション機構を有しない構成となる。そのため、このようなテンション機構を有しない複数のローラ2に対して、無端状のカーブベルトを巻き掛けるには、通常、伸縮性のある柔らかいカーブベルトを使用する必要がある。
【0043】
これに対して、本実施の形態のカーブベルト3の取り付け方法では、テンション機構がなく、間隔Iが固定されている複数のローラ2に対して、例えば、伸縮性が乏しく剛性が高い無端状のカーブベルト3を巻き掛けることで、複数のローラ2に無端状のカーブベルト3を取り付けることも可能である。具体的には、例えば、芯材として帆布を使用したカーブベルト3などのように、樹脂のみで形成されるカーブベルトと比較して、伸縮性が乏しく剛性が高い無端状のカーブベルト3を、テンション機構がなく間隔Iが固定されている複数のローラ2に対して巻き掛けることができる。
【0044】
図7及び図8は、カーブベルト3の取り付け工程を説明するための概略図である。まず、平面視円弧状のフレーム4,5間にローラ2を装着する前に、平面視扇状に配置する複数のローラ2(2a~2e)のうち、両端に位置するローラ2a及びローラ2eの外周端側に、円筒状のスリーブ6をそれぞれ嵌装させる。
【0045】
そして、外周側に位置するフレーム4に対して、複数のローラ2の外周端をそれぞれ回転可能に支持する。次いで、無端状でなる平面視扇状のカーブベルト3を準備し、手作業によって、カーブベルト3の外周端縁を広げて、ローラ2の内周端(軸方向内端)側から外周端(軸方向外端)側に向けて、当該ローラ2をカーブベルト3の外周端縁内に挿入してゆき、手作業でカーブベルト3をローラ2に巻き掛け可能な位置まで嵌め込み仮装着させる。この際、図7に示すように、カーブベルト3がスリーブ6に対して接触幅cで示すように、少なくともスリーブ6の一部にカーブベルト3が重なる位置まで、当該カーブベルト3をローラ2に嵌め込み張架させる。
【0046】
次いで、内周側に位置するフレーム5に対して、複数のローラ2の内周端をそれぞれ回転可能に支持する。これにより、図7に示すように、フレーム4,5間において、両端に位置するローラ2a及びローラ2eにそれぞれ嵌装させたスリーブ6の一部にカーブベルト3が重なるようにして、当該カーブベルト3をローラ2に対して仮装着させる。このようにカーブベルト3をローラ2に仮装着させた状態において、ローラ2を回転させると、カーブベルト3は矢印の方向に走行を開始する。
【0047】
この際、カーブベルト3は、カーブベルト3の裏面とスリーブ6の表面との間に生じる摩擦力や、カーブベルト3の裏面とローラ2との間に生じる摩擦力によってローラ2の回転方向に向けて走行する。カーブベルト3は、ローラ2の回転方向に走行を開始すると、摩擦力とクラウン効果とによって、ローラ2の軸方向に沿って徐々にローラ2の外周端側に向かって移動してゆく。そして、カーブベルト3は、摩擦力と垂直抗力とが釣り合う位置に達すると、ローラ2の外周端側(図8の内周側から外周側へ向かう矢印の方向)へ移動しなくなり、ローラ2の所定位置で安定的に走行する。これにより、スリーブ6の内周端側の端縁がカーブベルト3の外周端縁からカーブベルト3の幅Wの1%~50%の位置に、カーブベルト3が自動的に位置決めされ、当該位置にてカーブベルト3が安定して走行する。
【0048】
なお、スリーブ6の軸方向内端側の端縁がカーブベルト3の外周端縁から当該カーブベルト3の幅Wの1~50%の位置としては、例えば、スリーブ6の嵌装位置や厚み、軸方向長さなどを調整することにより、望ましくは5%~25%、より望ましくは10%~20%の位置にカーブベルト3が自動的に位置決めされることが好ましい 。このように、カーブベルト3は、手作業で仮装着させた後、ローラ2を回転させるだけで、当該ローラ2の回転力によって、カーブベルト3が安定的に走行可能な位置まで自動的に案内され、当該位置に巻き掛けられた状態で安定的に走行する。なお、図7及び図8では、スリーブ6は、ローラ2のうちの両端に位置する2つのローラ2a,2eの軸方向外端側の外周に嵌装されているが、ローラ2a,2eの少なくともいずれか一方の軸方向外端側の外周に嵌装されていればよい。
【0049】
ここで、スリーブ6をローラ2に取り付けていない場合のカーブベルト3の移動がどのようになるかについて、図9(a)に示す概念図を用いて説明する。ローラ2にスリーブ6を嵌装させていない場合でも、手作業によってローラ2に対してカーブベルト3を嵌め込み仮装着させた後に、当該ローラ2を回転させると、カーブベルト3とローラ2との間に生じる摩擦力によって当該ローラ2の回転方向にカーブベルト3が走行を開始する。カーブコンベア1では、隣のローラ2がピッチ角度分ずれているため、カーブベルト3の走行が内側に偏りやすくなる。このため、ローラ2の外周側の位置にカーブベルト3を仮装着させたとしても、ローラ2を回転させて当該ローラ2の回転方向にカーブベルト3を走行させると、回転方向側に位置する末端のローラ2においてローラ2の外周端から内周端の方向(図中、矢印Cの方向)に向けて働く力により、カーブベルト3が回転方向に走行するに従い矢印Dに示すようにローラ2の内周端側の方向に偏ってくる。このため、走行当初、ローラ2の外周端側に位置していたカーブベルト3は、走行するに従い、ローラ2に対して相対的に内周端側(破線で示される位置)に移動してしまう。
【0050】
一方、本実施の形態に係るカーブコンベア1では、図9(b)に示すように、平面視扇状に配置した複数のローラ2のうち、末端にあるローラ2の外周端側の所定位置にスリーブ6を嵌装させたことで、末端のローラ2の外周端側の径がその分大きくなっている。これにより、カーブベルト3には、ローラ2の回転方向に走行する際に、当該カーブベルト3の内周側と外周側とで走行速度差や、張力差が発生し、カーブベルト3をスリーブ6に引き寄せる矢印Eの方向へ力が働く。この結果、カーブベルト3は、ローラ2がピッチ角度分ずれていることによる、ローラ2の内周端側に偏る矢印Dの方向への力と、スリーブ6を設けたことによる、カーブベルト3をスリーブ6に引き寄せる矢印Eの方向へ働く力とが相殺し合う位置にて、安定して走行することができる。
【0051】
上述したように、従来、テンション機構を有さないローラコンベアに対して手作業でカーブベルト3を巻き掛けるためには、カーブベルト3が伸縮性のある柔らかい材料で構成されていることが望ましいとされていた。これに対して、図7及び図8に示した取り付け工程によれば、ローラ2の回転力を用いてカーブベルト3を自動的に最適な位置に巻き掛けることができる。このため、樹脂のみで形成されるカーブベルトと比較して、伸縮性が乏しく剛性が高い無端状のカーブベルト3についても、テンション機構がないローラ2に巻き掛けることが可能となる。これにより、カーブベルト3の走行安定性が向上したカーブコンベア1を提供することができる。また、剛性が高い無端状のカーブベルト3を適用するカーブコンベア1では、ローラ2の間に搬送物が沈み込むことを効果的に抑制することができる。
【0052】
(他の実施の形態)
前述した実施の形態においては、1つのカーブコンベア1に着目して説明したが、例えば、図10に示すようにカーブコンベア1の一方の端部と、隣接する他のカーブコンベア1の一方の端部とを連設した構成としてもよい。この場合、一方のカーブコンベア1と他方のカーブコンベア1との間には、一方のカーブコンベア1のカーブベルト3と他方のカーブコンベア1のカーブベルト3との間に形成される隙間を埋めるように支持板12を設けることが望ましい。
【0053】
この場合、支持板12は、棒状の軸心9と、板状部13を備え、軸心9の両端がそれぞれフレーム4,5に固定されており、板状部13の面部が水平状に配置されている。この場合、板状部13の形状は、隣接する平面視扇状のカーブベルト3間の隙間形状に合わせて、内周側から外周側へ向かって広がるような台形状を有している。より詳細には、板状部13の形状は、内周側の隙間の幅と略等しい辺dが、外周側の隙間の幅と略等しい辺eよりも寸法が小さくなるように形成されている。
【0054】
支持板12は、一方のカーブコンベア1のカーブベルト3と、他方のカーブコンベア1のカーブベルト3との間で段差が形成されることを抑制し得、例えば、一方のカーブコンベア1のカーブベルト3から、他方のカーブコンベア1のカーブベルト3へと搬送物が搬送される際に、段差による搬送物の跳ね上げなどを防止し、搬送物をスムーズに搬送させることができる。
【0055】
また、図11に示すように、支持板12には、搬送物が板状部13上を通過したか否かを検知する光電センサの光が通過可能な貫通孔14a,14b,14cを板状部13に設けるようにしてもよい。この場合、支持板12の裏面側には、貫通孔14a,14b,14cと対向する位置に反射板16が設けられている。反射板16は、所定位置に設けられた投受光器(図示せず)からの光を投受光器へと反射させて反射光を投受光器に受光させる。図11に示す例では、3つの貫通孔14a,14b,14cが支持板12の外周側から内周側に向けて直線的に並んで形成されている。これら3つの貫通孔14a,14b,14cは、投受光器から反射板16へ照射されるレーザ光の光路上の位置に、例えばプレス加工によって形成され、支持板12が適切な剛性を維持可能な程度の面積を有している。
【0056】
また、他の実施の形態に係るカーブコンベアとしては、例えば、図12に示すように、隣接するローラ2の間に形成された隙間にそれぞれ支持板12を設け、ローラ2と支持板12とを交互に配置した構成にて、ローラ2aからローラ2eに亘ってカーブベルト3を巻き掛けたカーブコンベア1bとしてもよい。なお、図12に示すカーブコンベア1bは、前述した実施の形態のカーブコンベア1とは、隣接するローラ2の間の隙間にそれぞれ支持板12a,12b,12c,12dを設けた点が異なるのみで、その他の構成はカーブコンベア1と同一であることから、同一構成については詳細な説明は省略する。なお、カーブコンベア1bでは、支持板12の表面にカーブベルト3の裏面が摺接することから、カーブベルト3として、例えば、帆布などのように、支持板12の表面に対して滑り易く、摩耗し難い材質により裏面が形成されているカーブベルト3を適用することが望ましい。
【0057】
図13は、図12のG-G断面図である。図13に示すように、例えば、支持板12bは、ローラ2b及びローラ2cの間の隙間において、板状部13の上面が、ローラ2の湾曲頂上面の高さ位置Pと略一致するようにして水平状に配置されている。支持板12は、一方の端面fがローラ2bの表面に近接し、他方の端面gがローラ2cの表面に近接するように形成されており、一方の側面fとローラ2bの表面との間と、他方の側面gとローラ2cの表面との間とに、それぞれわずかな隙間S3,S4が形成される。このように、支持板12bを配置した場合には、支持板12bとローラ2b,2cとの間にそれぞれ隙間S3,S4が生じるものの、隙間S3,S4の大きさは、ローラ2b及びローラ2cの隙間よりも小さく抑えることが可能となる。
【0058】
このように、この実施の形態では、隣接するローラ2間に支持板12を設けた構成とすることで、支持板12によってもカーブベルト3を裏面から支持し得、カーブベルト3の走行安定性が向上したカーブコンベア1bを提供することができる。なお、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
1 カーブコンベア
2 ローラ
2a 駆動ローラ
2b~2d アイドラローラ
2e 従動ローラ
3 カーブベルト
4,5 フレーム
6 スリーブ
9 軸心
12 支持板
13 板状部
14 貫通孔
16 反射板
b カーブベルトとスリーブとの接触幅
L カーブベルトの外端縁からスリーブの内端縁までの距離
R1 カーブコンベアの曲率半径
R2 カーブベルトの曲率半径
t スリーブの厚さ
T カーブベルトの厚さ
W カーブベルトの幅
θ1 カーブコンベアの製作角度
θ2 カーブベルトの製作角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13