(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】作動デバイスを備えるデュワーデバイス
(51)【国際特許分類】
G04B 37/02 20060101AFI20230727BHJP
G04B 3/04 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
G04B37/02
G04B3/04 G
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022078083
(22)【出願日】2022-05-11
【審査請求日】2022-05-11
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ・ユメル
(72)【発明者】
【氏名】セルジュ・ドロー
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第3740944(US,A)
【文献】スイス国特許出願公開第716913(CH,A3)
【文献】米国特許第3759033(US,A)
【文献】実開昭62-84793(JP,U)
【文献】特開2016-114407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
G04G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕時計(3)の機械的及び/又は機能的部品(2)のためのデュワーデバイス(1)であって、前記
デュワーデバイス(1)は:
‐ブレスレット;
‐チャンバ(5)を備えるハウジング(4)であって、前記チャンバ(5)内には、前記腕時計(3)のケース(6)を、前記ケース(6)のガラスがチャンバ(5)を画定する前記ハウジング(4)の一連の要素(10a、10b、10c)のうちのガラス(10a)に対面して配設されるように、配置できる、ハウジング(4);
‐前記腕時計(3)ケース(6)を、このチャンバ(5)を画定する前記ハウジング(4)の前記要素(10a、10b、10c)全てから離間した状態に維持したまま、前記ハウジング(4)の前記チャンバ(5)内に固定する、少なくとも1つの固定デバイス(7);及び
‐
作動デバイス(19)であって、前記
作動デバイス(19)は、前記
作動デバイス(19)の少なくとも1つのレバー要素(15a、15b、15c、15d)の自由端(16a)の、前記ハウジング(4)に対する角運動(13)によって、少なくとも1つの押しボタンを作動させるためのものであり、前記少なくとも1つのレバー要素(15a、15b、15c、15d)は、前記ハウジング(4)に対して移動可能に固定された
他方の端部(16b)を有する、
作動デバイス(19)
を含む、デュワーデバイス(1)。
【請求項2】
前記作動デバイス(19)は、この前記少なくとも1つのレバー要素(15a、15b、15c、15d)の前記自由端(16a)の、前記ハウジング(4)に対する角運動(13)によって、前記少なくとも1つの押しボタンを作動させるよう構成された、前記少なくとも1つのレバー要素(15a、15b、15c、15d)を備え、前記少なくとも1つのレバー要素(15a、15b、15c、15d)は、前記ハウジング(4)に対して移動可能に固定された他方の端部(16b)を有することを特徴とする、請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのレバー要素(15a、15b)の前記他方の端部(16b)は、前記ハウジング(4)の1対のラグ(14)のうちの1つのラグに移動可能に固定されることを特徴とする、請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのレバー要素(15c、15d)の前記他方の端部(16b)は、前記ハウジング(4)のクラウン(20)に移動可能に固定されることを特徴とする、請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項5】
前記作動デバイス(19)は、前記自由端(16a)を反時計回り方向に操作する際に、前記自由端(16a)の角運動(13)を制限するための、少なくとも1つの要素を備えることを特徴とする、請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのレバー要素(15a、15b、15c、15d)は、略直線状の形状を有する一体本体を備えることを特徴とする、請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのレバー要素(15a、15b、15c、15d)は、このレバー要素(15a、15b、15c、15d)の前記他方の端部(16b)の、前記ハウジング(4)のラグ又はクラウン(20)への移動可能な固定を保証できる、連結要素(24)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのレバー要素(15a、15b、15c、15d)は、特に前記自由端(16a)上に画定された作動ゾーン(21)を備え、前記作動ゾーン(21)は、前記ハウジング(4)の中間部(10c)の少なくとも1つの起動ゾーン(22)と接触することによって、前記腕時計(3)の前記押しボタンを起動できることを特徴とする、請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つのレバー要素(15a、15b、15c、15d)は、
前記自由端(16a)上に画定された作動ゾーン(21)を備え、前記作動ゾーン(21)は、前記ハウジング(4)の前記
要素(10c)の少なくとも1つの起動ゾーン(22)と接触することによって、前記腕時計(3)の前記押しボタンを起動でき、前記起動ゾーン(22)は、
摺動部材である押しボタンを備え、前記押しボタンは、前記少なくとも1つのレバー要素(15a、15b、15c、15d)によってこの起動ゾーン(22)の前記押しボタンに応力を印加するとすぐに、前記腕時計の前記押しボタンに接触できる、前記
要素(10c)に配設されることを特徴とする、請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項10】
前記ハウジング(4)の1つのラグ、又は前記ハウジング(4)の側部に画定された隆起部(20)に、それぞれ移動可能に固定された、2つのレバー要素(15a、15b、15c、15d)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項11】
前記チャンバ(5)は真空下又は準真空下にあることを特徴とする、請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕時計の機械的及び/又は機能的部品のためのデュワー(Dewar)デバイスに関し、上記デバイスは、このデュワーデバイスのチャンバ内に配設された腕時計の少なくとも1つの押しボタンを作動させるための、デバイスを備える。
【背景技術】
【0002】
腕時計、特に電子腕時計は従来、ブレスレットと、複数の電気又は電子部品を含む腕時計ケースとを備える。これらの部品のうちのいくつかは、極端な温度をサポートしておらず、このような温度では正常に機能しなくなることが、先行技術において公知である。典型的には、発光ダイオード又は水晶を用いるLCD(液晶ディスプレイ)は、およそ80℃(セルシウス度)未満かつ0℃以上の温度に耐える。しかしながら、例えば宇宙又は月面でのミッションといった特定の環境では、温度が実質的におよそ-150℃~+125℃の値に達することはしばしばあり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、腕時計、特に電子腕時計を、このような極端な温度となり得る環境で使用できる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、腕時計の機械的及び/又は機能的部品のためのデュワーデバイスに関し、上記デバイスは:ブレスレット;チャンバを備えるハウジングであって、上記チャンバ内には、上記腕時計のケースを、上記腕時計ケースのガラスがこのチャンバを画定する上記ハウジングの一連の要素のうちのガラスに対面して配設されるように、配置できる、ハウジング;上記腕時計ケースを、このチャンバを画定する上記ハウジング上記要素全てから離間した状態に維持しながら、上記ハウジングの上記チャンバ内に固定する、少なくとも1つの固定デバイス;及び上記デバイスの少なくとも1つのレバー要素の自由端の、上記ハウジングに対する角運動によって、少なくとも1つの押しボタンを作動させるためのデバイスであって、上記少なくとも1つのレバー要素は、上記ハウジングに対して移動可能に固定された別の端部を有する、デバイス
を含む。
【0005】
他の実施形態では:
‐上記作動デバイスは、上記少なくとも1つのレバー要素の上記自由端の、上記ハウジングに対する角運動によって、上記少なくとも1つの押しボタンを作動させるよう構成された、上記少なくとも1つのレバー要素を備え、上記少なくとも1つのレバー要素は、上記ハウジングに対して移動可能に固定された他方の端部を有し;
‐上記少なくとも1つのレバー要素の上記他方の端部は、上記ハウジングの1対のラグのうちの1つのラグに移動可能に固定され;
‐上記少なくとも1つのレバー要素の上記他方の端部は、上記ハウジングのクラウンに移動可能に固定され;
‐上記作動デバイスは、上記自由端を反時計回り方向に操作する際に、上記自由端の各運動を制限するための、少なくとも1つの要素を備え;
‐上記少なくとも1つのレバー要素は、略直線状の形状を有する一体本体を備え;
‐上記少なくとも1つのレバー要素は、このレバー要素の上記他方の端部の、上記ハウジングの1つのラグ又は1つのクラウンへの移動可能な固定を保証できる、連結要素を備え;
‐上記少なくとも1つのレバー要素は、特に上記自由端上に画定された作動ゾーンを備え、上記作動ゾーンは、上記ハウジングの中間部の少なくとも1つの起動ゾーンと接触することによって、上記腕時計の上記押しボタンを起動でき;
‐上記起動ゾーンは、摺動部材、特に押しボタンを備え、これは、上記少なくとも1つのレバー要素によってこの起動ゾーンの上記押しボタンに応力を印加するとすぐに、上記腕時計の上記押しボタンに接触できる上記中間部に配設され;
‐上記デュワーデバイスは、上記ハウジングの1つのラグ、又は上記ハウジングの側部に画定された1つの隆起部に、それぞれ移動可能に固定された、2つのレバー要素を備え;
‐上記チャンバは真空下又は準真空下にある。
【0006】
他の特徴及び利点は、以下の添付の図面を参照して、限定を目的とせず例示として以下に提供される説明から、明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明のある実施形態による、腕時計の少なくとも1つの押しボタンを作動させるためのデバイスを備えた、腕時計の機械的及び/又は機能的部品のためのデュワーデバイスの断面図である。
【
図2】
図2、3は、本発明の上記実施形態による、作動デバイスの実装に関する様々な動作モードを説明する機能図である。
【
図3】
図2、3は、本発明の上記実施形態による、作動デバイスの実装に関する様々な動作モードを説明する機能図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、腕時計3の機械的及び/又は機能的部品2のための等温時計用デバイス1の概略図を示し、これは、「時計用デュワーデバイス」若しくは「保護デバイス」、又は本説明の残りの部分では更に簡単に「デュワーデバイス」とも呼ばれる。このようなデュワーデバイス1は、このデバイス1のハウジング4内にケース6が配設される腕時計3の機械的及び/又は機能的部品2に、特に良好な断熱を与えることに寄与できる。
【0009】
このデュワーデバイス1は、これらの機械的及び/又は機能的部品2のために適切な断熱を生成するために、そのハウジング4と、腕時計3のケース6との組み合わせによって形成される。この構成では、腕時計3のケース6はハウジング4のチャンバ5内に配設され、その一方で、このチャンバ5を画定するハウジング4の要素10a~10c、即ちこのハウジング4のガラス10a、中間部10cの内周壁12、及び裏板10bの全てから離間した状態に、又はこれらからある距離に、維持される。なお、この内周壁12は上記チャンバ5の内周壁でもある。
【0010】
従ってこの文脈において、このデバイス1はハウジング4を備え、これは、好ましくは2対のラグ14を備えた中間部10cを含み、上記ラグ14には、このデバイス1のユーザが例えば手首にこのデバイス1を装着できるようにするブレスレットが設置される。このハウジング4はまた、
図1~3で確認できるクラウン、ガラス10a、及び裏板10bを含む。このデバイス1において、ガラス10aは、腕時計3のケース6のガラス11よりも実質的に大きな、又は厳密に大きな表面を備えることが好ましいことに留意されたい。
【0011】
このハウジング4はまた、中間部10cに対して回転移動可能に設置できるベゼルを備える。このようなベゼルは略円形である。
【0012】
このデュワーデバイス1はまた、デュワーデバイス1のハウジング4のチャンバ5内に配設された腕時計3のケース6の少なくとも1つの押しボタンを作動させるための、デバイス19を備える。この作動デバイス19は、ハウジング4の少なくとも1つのレバー要素15a、15b、15c、15dを備え、これはこのハウジング4に移動可能に設置される。このようなレバー要素15a、15b、15c、15dは、腕時計3のケース6の上記押しボタンを作動させるために、ハウジング4に対する運動13を実行できる。
【0013】
このレバー要素15a、15b、15c、15dは、略直線状の形状を有する一体の剛性本体を備える。このレバー要素15a、15b、15c、15dは、2つの端部16a、16bを備える。第1の端部16aは「自由端(free end)」と呼ばれ、ケース6の押しボタンと間接的に接触でき、また第2の端部16bは「取り付け端部(attachment end)」と呼ばれ、デュワーデバイス1のハウジング4に、固定軸Bの周りで回転運動できるように固定/設置される。このような固定軸Bは、ハウジング4へのレバー要素15a、15b、15c、15dの取り付けの地点18に画定され、この固定軸Bは、デュワーデバイス1のハウジング4の中心軸Oに対して平行又は略平行である。この第2の端部16bは、連結要素24を用いてこの取り付け地点18に移動可能に固定されることが理解される。
【0014】
これらの条件下では、腕時計3のケース6の押しボタンを起動させる目的でデュワーデバイス1のユーザがレバー要素15a、15b、15c、15dに応力を印加すると、このレバー要素15a、15b、15c、15dの自由端16aは、取り付け端部16bに対する角運動13を実行できることが理解される。換言すれば、レバー要素15a、15b、15c、15dは、この上記少なくとも1つのレバー要素15a、15b、15c、15dの第1の端部16aの、ハウジング4に対する、より詳細にはこのハウジング4の外周壁17に対する、従ってその中間部10cの外面23に対する、角運動13の実行中に、上記押しボタンを作動させるよう、構成される。
【0015】
図2では、この作動デバイス19は2つのレバー要素15a、15bを備え、これらはそれぞれ、腕時計3のケース6の1つの押しボタンを作動させることができる。この構成では、各レバー要素15a、15bの第2の端部16bは、上記ハウジング4の1対のラグ14のうちの1つのラグに、回転運動できるように固定/設置される。この構成では、これらのレバー要素15a、15bは、ハウジング4の1対のラグ14のうちの異なるラグに、移動可能に固定される。
【0016】
図3では、この作動デバイス19は2つのレバー要素15c、15dを備え、これらはそれぞれ、腕時計3のケース6の1つの押しボタンを作動させることができる。この構成では、各レバー要素15c、15dの第2の端部16bは、上記ハウジング4のクラウンに、回転運動できるように固定/設置される。この構成では、これらのレバー要素15c、15dは、上記中間部の、中心軸Oが通るハウジング4の中心に対して放射状に延在する隆起部を形成する部分20に、移動可能に固定される。換言すれば、この隆起部20はハウジング4の側部に画定される。これらのレバー要素15c、15dは好ましくは、この隆起部20の2つの異なる取り付け地点18に、移動可能に固定される。なお、この隆起部20は、この隆起部20の中心軸Aに対して平行な方向に沿った並進移動としてのみ可動であるクラウンとすることができる。この中心軸Aは、これらの条件下では中心軸Oに対して垂直又は略垂直である。
【0017】
各レバー要素15a、15b、15c、15dは、レバー要素15a、15b、15c、15dが、腕時計3のケース6の押しボタンの作動に関与しない位置に構成される、「非起動(deactivation)」状態と、レバー要素15a、15b、15c、15dが、この押しボタンの作動に関与する位置に構成される、「起動(activation)」状態とを、交互に切り替えることができる。
【0018】
更に作動デバイス19は、レバー要素15a、15b、15c、15dを非起動状態から起動状態に戻すことができる、少なくとも1つの復帰要素も備える。更に、作動デバイス19はこの構成において、このレバー要素15a、15b、15c、15dを例えば復帰要素によって反時計回りの運動方向に操作したときに、ハウジング4に対する、従ってこのハウジング4の中間部10cに対するレバー要素15a、15b、15c、15dの角運動13を制限するための、要素を備えることができることに留意されたい。
【0019】
この作動デバイス19では、レバー要素15a、15b、15c、15dは、ハウジング4の中間部10cの少なくとも1つの起動ゾーン22に接触することによって腕時計3の押しボタンを起動できる、作動ゾーン21を備える。この起動は、このレバー要素15a、15b、15c、15dを、中間部10cのこの起動ゾーン22に対する角運動13で操作するとすぐに実施され、この運動13は、時計回りに実行される。
【0020】
このような作動ゾーン21は、レバー要素15a、15b、15c、15dの外面の一部に画定される。この部分は、中間部10cの外面23の、起動ゾーン22が置かれる部分に対面するように配設される。この部分は、ハウジング4へのこのレバー要素15a、15b、15c、15dの取り付けの地点18と、その自由端との間(ただしこの範囲には上記自由端が含まれる)に含めることができる。例えばこの作動ゾーン21を、この自由端16aに画定してよい。
【0021】
この構成では、レバー要素15a、15b、15c、15dによる腕時計3のケース6の押しボタンの起動は、間接的なものである。実際のところ、作動ゾーン21は、中間部10cの起動ゾーン22を介して腕時計3の押しボタンに間接的に接触することによって、腕時計3の押しボタンを起動できる。
【0022】
この起動ゾーン22は作動デバイス19に含まれており、またレバー要素15a、15b、15c、15dと相互作用するよう構成される。このような起動ゾーン22は、摺動部材、特に押しボタンを備え、これは中間部10cに配設され、また、レバー要素15a、15b、15c、15dの作動ゾーン21によってこのボタンに応力が印加されるとすぐに、腕時計3の押しボタンと接触できる。ある代替例では、この起動ゾーン22は、中間部10cの、変形することによって腕時計3の押しボタンと接触できる部分とすることができる。
【0023】
図2、3を参照すると、デュワーデバイス1は、腕時計3のケース6の2つの別個の押しボタンを起動するために設けられた、2つのレバー要素15a、15b、15c、15dを備える。これら2つのレバー要素15a、15b、15c、15dは、これらが間接的に協働するよう設計された、ケース6の対応する押しボタンの付近又は近傍に配設される。例えば第1及び第2の押しボタンは、腕時計3のケース6の中間部の、それぞれ「2時」及び「4時」のゾーンに配設される。
【0024】
更に、以上より、腕時計3の押しボタンを作動させるためのこのデバイス19は、ハウジング4の中間部10cに設けられた起動ゾーン22に対する、レバー要素15a、15b、15c、15d上に設けられた作動ゾーン21の角運動13を用いて、レバー要素15a、15b、15c、15dによって起動されることが理解される。
【0025】
特にこのデバイス1のユーザが、このデバイス1の操作を可能とするユーザの身体の一部についてあまり器用でない場合に、このような作動デバイス19がデュワーデバイス1の使用を改善できることが理解される。このような器用さの欠如は、障害に起因するものである場合も、又はこのユーザが手に分厚いグローブをはめているため、このデュワーデバイス1を指で正確に操作できなくなることによるものである場合もある。この文脈では、このようなデュワーデバイス1は特に、宇宙服を着用した宇宙飛行士、又はより一般的には、例えば圧力、温度、湿度等に関して極端な条件の環境で動作するスーツを着たユーザ/冒険家による使用に、特に適していることに留意されたい。
【0026】
上述のように、腕時計3のケース6は、ハウジング4のチャンバ5内に配設され、その一方で、このハウジング4の要素10a~10cの全てから離間した状態に、又はこれらからある距離に、維持される。このような離間又は距離又は分離は、ハウジング4内に設けられた腕時計3のケース6を固定するための少なくとも1つのデバイス7を用いて、構成される。換言すれば、固定デバイス7は、上記ケース6と、このハウジング4の上記チャンバ5を形成するハウジング4の要素10a、10b、10cの全てとの間の、分離を実行する、又は分離を維持するよう構成される。この固定デバイス7は、中間部10cの内周壁12及び/又は裏板10b及び/又はガラス10aと、腕時計3のケース6、特にこのケース6の外面全体との間のいずれの熱伝導の、削減、又は排除にさえ寄与する。この外面全体(outer global face)は、この腕時計3のケース6のガラス11を含む上面と、上記ケース6の裏板を含む下面と、このケース6の中間部の外周壁とを含む。上記下面及び上記上面は互いに対向していることが理解される。なお、固定デバイス7は、ハウジング4のチャンバの内周壁12上に配設される。この構成では、固定デバイス7は、特に可逆的な様式で、腕時計3のケース6を、ハウジング4のチャンバの内周壁12に機械的に接続する。更に、デュワーデバイス1は、チャンバ内に配設された2つの固定デバイス7を、互いに対向した状態で備えることができる。
【0027】
なお、このようなケース6は、例えばクオーツ式腕時計である電子腕時計、又は機械式腕時計であってよい、腕時計3が備えるものである。
【0028】
上述の腕時計3の機械的及び/又は機能的部品2は、限定的かつ包括的なものではないが、ヒゲゼンマイ、歯車、時報機構、文字盤、針、リング、ジョイント、並びに/又は電子及び/若しくは電気部品2といった、ムーブメントの機械的要素を含む。特にこのような電子及び/又は電気部品2は、例えばディスプレイデバイス、プロセッサ、目盛り、エネルギ貯蔵用部品、モータ、集積回路、及び電子発振器等を含むことに留意されたい。
【0029】
よって、この構成では、このデュワーデバイス1は、従来技術において公知のデュワーチューブ/フラスコと同一の特性及び特徴を有することが理解される。上述のように、このデュワーデバイス1の特性及び特徴は、このようなデバイス1が置かれる可能性がある外部環境に存在し得る特に極端な温度に対して、良好な断熱を与えることに寄与する。
【0030】
上述のように、このデバイス1のガラス10a、中間部10c、及び裏板10bは、腕時計3のケース6を受け入れることができるこのハウジング4のチャンバ5を画定する。ハウジング4のこれら3つの要素10a~10c、即ち中間部10c、ガラス10a、及び裏板10bは、一体に接合されてこのチャンバ5を構築する、別個の要素とすることができる。あるいは、ハウジング4の中間部10c及び裏板10bが一体部品を形成でき、上記一体部品が、裏板10bに対向する開口を画定し、この開口をガラス10aによって、可逆的に及び密閉状態に閉鎖できる。ある代替例では、腕時計3のハウジング4の中間部10c及びガラス10aが一体部品を形成でき、上記一体部品が、ガラス10aに対向する開口を画定し、この開口を裏板10bによって、これもまた可逆的に及び密閉状態に閉鎖できる。
【0031】
中間部10c又は裏板10bは、ガラス10aと同様に、デュワーデバイス1のハウジング4の透明要素とすることもできる。このような構成では、中間部10cの周壁12、及び裏板10bの内面は、例えば銀の層等の、金属製反射性コーティング等でコーティングされていてよい。
【0032】
しかしながら、中間部10c又は裏板10bは好ましくは、限定的かつ包括的なものではないが、金属材料製、又はカーボンファイバー若しくはガラスファイバーで補強された熱硬化性若しくは熱可塑性ポリマー樹脂製、又はセラミック材料製であることに留意されたい。
【0033】
更にデバイス1は、ハウジングの外面全体、即ちこの腕時計3のケース6の中間部10cの外周壁並びに/又はガラス10a及び裏板10bの外面に配設された、干渉フィルタを備えることができる。この干渉フィルタは、ハウジングの外面全体にコーティングを形成する、グリッド又はネットとすることができる。このグリッド又はネットのメッシュは、典型的には可視範囲の波長である所定の波長の電磁スペクトルのみを通過させるような寸法を有する。
【0034】
更に、デバイス1を、空気を含む環境での使用のために提供する場合、腕時計ケース6を含むハウジング4のチャンバ5は、真空下又は準真空下である。換言すれば、このチャンバ内では、このケース6と、中間部10cの内周壁12、裏板10b、及びガラス10aとの間に画定される空間は、物質を含まないか又は略含まない。なお、このデバイス1を、空気を含まない又は略含まない環境で使用する場合、そのチャンバを真空下としないこともでき、又は対照的に真空下若しくは準真空下とすることもできる。
【0035】
その使用又は操作が上記作動デバイスによって促進される、このようなデュワーデバイス1は、腕時計ケース6内に配設された部品の放射による熱損失を長期間にわたって低減する、又は防止さえすることによって、腕時計3の機械的及び/又は機能的部品2に、外部環境に対する極めて良好な断熱を提供することに寄与する。よって、デバイス1の外側の温度が極端な値、典型的にはおよそ-125~+125℃に達する場合、チャンバ5内の温度は、腕時計3のケース6がハウジング4内に配設されている間、腕時計3のケース6内に存在する温度、典型的にはおよそ20℃に略等しいままとなる。なお、デュワーデバイス1の環境に存在する温度条件にかかわらず、腕時計3のケース6内に存在する温度は、腕時計3の適切な動作を妨げない温度である。この温度は、上述のような特に極端な温度が存在するような環境内に直接配置されている間(即ちデュワーデバイスのハウジングの外側に置かれている間)に、このような腕時計3のケースがその部品2の動作温度を保持できる期間よりも、5~18倍長い期間にわたって維持される。よって、このような構成が、腕時計3の機械的及び/又は機能的部品2を保護できること、並びに極端な外部温度条件における最適な様式での上記部品2の動作の保証に寄与できることが理解される。
【符号の説明】
【0036】
1 デュワーデバイス
2 機械的及び/又は機能的部品
3 腕時計
4 ハウジング
5 チャンバ
6 ケース
7 固定デバイス
10a ハウジング4の要素、ガラス
10b ハウジング4の要素、裏板
10c ハウジング4の要素、中間部
13 ハウジングに対する自由端の角運動
14 ラグ
15a、15b、15c、15d レバー要素
16a レバー要素の自由端
16b レバー要素の別の端部
19 デバイス、作動デバイス
20 クラウン、隆起部
21 作動ゾーン
22 起動ゾーン
24 連結要素