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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
A61B3/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022208757
(22)【出願日】2022-12-26
(62)【分割の表示】P 2019078566の分割
【原出願日】2019-04-17
(65)【公開番号】P2023024761
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2018182249
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖川 滋
(72)【発明者】
【氏名】中島 将
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-047095(JP,A)
【文献】特開2018-019777(JP,A)
【文献】特開2018-042760(JP,A)
【文献】特開2018-110726(JP,A)
【文献】特開2015-016002(JP,A)
【文献】特開2004-166903(JP,A)
【文献】特開平07-222717(JP,A)
【文献】特開2003-102688(JP,A)
【文献】特開2011-224377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の被検眼の情報を取得する測定光学系と、
前記測定光学系に設けられ、前記被検眼の前記測定光学系の光軸上の前眼部画像を取得する画像取得部と、
前記被検眼の視線の固視を行わせるための固視標を前記測定光学系の光軸上で前記被検眼に呈示する視標投影系と、
前記測定光学系を、前記被検眼の眼球回旋軸を中心軸として回旋させる回旋駆動部と、
前記固視標を呈示した状態で前記画像取得部が取得した前記被検眼の前記前眼部画像から前記被検眼の瞳孔中心を検出する瞳孔中心検出部と、
前記測定光学系から前記被検眼に入射される前記光軸に平行な光線が前記被検眼内で結像して得られる点像に基づいて、前記被検眼の角膜反射の位置を検出する角膜反射位置検出部と、を備え、
前記回旋駆動部は、前記瞳孔中心と前記角膜反射の位置とが一致するように、前記測定光学系を、前記被検眼の前記眼球回旋軸を中心軸として回旋させることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記瞳孔中心の位置と前記角膜反射の位置との距離を算出し、この距離に基づいて前記回旋駆動部の回旋角度を算出する回旋角度算出部と、算出された前記回旋角度に基づいて、前記回旋駆動部を駆動して前記測定光学系を回旋させる駆動制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記回旋角度算出部は、前記回旋角度に基づいて、前記被検眼のプリズム基底方向及びプリズム度数を算出することを特徴とする請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記回旋駆動部は、前記測定光学系を、前記被検眼の眼球回旋点を通り鉛直方向に延びる眼球回旋軸を中心軸として回旋させることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記回旋駆動部は、前記測定光学系を、前記被検眼の眼球回旋点を通り水平方向に延びる眼球回旋軸を中心軸として回旋させることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記視標投影系が、前記被検者の左被検眼及び右被検眼に対応して一対設けられ、一対の前記視標投影系により、前記左被検眼及び前記右被検眼に前記固視標を呈示して、前記左被検眼及び前記右被検眼のいずれかに前記瞳孔中心の位置と前記角膜反射の位置とにずれが検出されたときに、前記ずれが検出された前記被検眼への前記固視標の呈示を停止し、他の前記被検眼に前記固視標を呈示した状態で、前記ずれが検出された前記被検眼に対応する前記測定光学系を、前記瞳孔中心と前記角膜反射の位置とが一致するように回旋させることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記視標投影系が、前記被検者の左被検眼及び右被検眼に対応して一対設けられ、一対の前記視標投影系により、前記左被検眼及び前記右被検眼に前記固視標を呈示して、前記瞳孔中心の位置と前記角膜反射の位置とにずれが検出されない前記被検眼を固視眼とし、前記ずれが検出された前記被検眼を非固視眼として前記測定光学系を、前記瞳孔中心と前記角膜反射の位置とが一致するように回旋させることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記前眼部画像における前記瞳孔中心及び前記点像の位置を示す模式図を表示する表示部を備えたことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項9】
前記被検眼の水平方向又は鉛直方向の断面に、前記瞳孔中心及び前記点像の位置に基づいて得られた視軸及び前記光軸を表記した模式図を表示する表示部を備えたことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項10】
前記前眼部画像を表示する表示部を設けたことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項11】
前記測定光学系の前記光軸とは異なる方向から前記被検眼の前記前眼部画像を撮影する1つ又は2以上の撮影部を備えたことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼に視標を呈示して眼特性を取得する場合、視標と被検眼との距離に応じて、被検眼が眼球回旋軸を中心に回旋する。つまり、被検眼を開散させたり、輻輳させたりすることで、遠用検査や近用検査を行うことができる。このような被検眼の回旋に対応して、測定光学系を、眼球回旋軸を中心に回旋させることが可能な眼科装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、被検眼に斜視や斜位があると、視標の固視ができず眼特性を正確に取得できないことがある。そのため、斜視、斜位を矯正した上で、眼特性を取得する必要がある。
【0004】
このような斜視、斜位の矯正は眼鏡(プリズム眼鏡)によって行われている。この矯正のための斜視、斜位の検査は、眼科の医師、視能訓練士、眼鏡店の店員が技量と経験を必要とするマニュアル検査により手動で行っているため、検査に時間がかかるとともに、被検者にも疲労感を与えてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5635976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、被検眼の斜視、斜位の検査を迅速かつ容易に行うことが可能な眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の眼科装置は、被検者の被検眼の情報を取得する測定光学系と、前記測定光学系に設けられ、前記被検眼の前記測定光学系の光軸上の前眼部画像を取得する画像取得部と、前記被検眼の視線の固視を行わせるための固視標を前記測定光学系の光軸上で前記被検眼に呈示する視標投影系と、前記測定光学系を、前記被検眼の眼球回旋軸を中心軸として回旋させる回旋駆動部と、前記固視標を呈示した状態で前記画像取得部が取得した前記被検眼の前記前眼部画像から前記被検眼の瞳孔中心を検出する瞳孔中心検出部と、前記測定光学系から前記被検眼に入射される前記光軸に平行な光線が前記被検眼内で結像して得られる点像に基づいて、前記被検眼の角膜反射の位置を検出する角膜反射位置検出部と、を備え、前記回旋駆動部は、前記瞳孔中心と前記角膜反射の位置とが一致するように、前記測定光学系を、前記被検眼の前記眼球回旋軸を中心軸として回旋させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成された眼科装置では、瞳孔中心と点像に基づく角膜反射とが一致するように回旋駆動部により測定光学系を回旋させている。これにより、被検眼に斜視、斜位がある場合でも、視軸と測定光学系の光軸とを一致させることができる。したがって、本発明の眼科装置によれば、被検眼の斜視、斜位の検査を迅速かつ容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る眼科装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】本実施の形態に係る眼科装置の右眼用測定光学系の詳細構成を示す図である。
図3】本実施の形態に係る眼科装置に用いられるロータリープリズムの一例を示す斜視図である。
図4】本実施の形態に係る眼科装置の全体構成を示すブロック図である。
図5】本実施の形態に係る眼科装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図6】被検眼の視軸及び瞳孔軸の関係を示す概要図である。
図7】点光源により被検眼内部に形成される点像を示す図である。
図8】斜視の類型を示す図である。
図9】本実施の形態に係る眼科装置により取得される前眼部画像中の瞳孔中心及び角膜反射の位置を示す図である。
図10】表示部に表示する各種画像の関係を説明するための説明図である。
図11】瞳孔中心の位置に対する角膜反射の位置のずれを示す図である。
図12】瞳孔軸と測定光学系の光軸とのなす角度を説明するための図である。
図13】測定ヘッド制御部による測定ヘッドの回旋状態を説明するための図である。
図14】本実施の形態に係る眼科装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図15】本実施の形態に係る眼科装置の表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態に係る眼科装置を説明する。まず、本実施の形態に係る眼科装置10の全体構成を、図1図5を参照して説明する。本実施の形態の眼科装置10は、被検者が左右の両眼を開放した状態で、被検眼の特性測定を両眼同時に実行可能な両眼開放タイプの眼科装置である。なお、本実施形態の眼科装置では、片眼を遮蔽したり、固視標を消灯したりすることで、片眼ずつ検査等することも可能となっている。また、眼科装置が両眼開放タイプに限定されるものではなく、片眼ずつ特性測定する眼科装置にも本発明を適用することができる。
【0011】
本実施の形態の眼科装置10は、任意の自覚検査及び任意の他覚検査の少なくとも一方を行う。なお、自覚検査では、被検者に視標等を提示し、この視標等に対する被検者の応答に基づいて検査結果を取得する。この自覚検査には、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、視野検査等がある。また、他覚検査では、被検眼に光を照射し、その戻り光の検出結果に基づいて被検眼に関する情報(特性)を測定する。この他覚検査には、被検眼の特性を取得するための測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とが含まれる。さらに、他覚検査には、他覚屈折測定(レフ測定)、角膜形状測定(ケラト測定)、眼圧測定、眼底撮影、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:以下、「OCT」という)を用いた断層像撮影(OCT撮影)、OCTを用いた計測等がある。
【0012】
[眼科装置の全体構成]
本実施の形態の眼科装置10は、図1に示すように、基台11と検眼用テーブル12と支柱13とアーム14と駆動機構(駆動部)15と一対の測定ヘッド16とを備える。眼科装置10では、検眼用テーブル12と正対する被検者が、両測定ヘッド16の間に設けられた額当部17に当てた状態で、被検者の被検眼の情報を取得する。なお、本明細書を通じて図1に記すようにX軸、Y軸及びZ軸を取り、被検者から見て、左右方向をX方向とし、上下方向(鉛直方向)をY方向とし、X方向及びY方向と直交する方向(測定ヘッド16の奥行き方向)をZ方向とする。
【0013】
検眼用テーブル12は、後述する表示部兼検者用コントローラ(以下、単に「検者用コントローラ」という)27や被検者用コントローラ28を置いたり検眼に用いるものを置いたりするための机であり、基台11により支持されている。検眼用テーブル12は、Y方向での位置(高さ位置)を調節可能に基台11に支持されていてもよい。
【0014】
支柱13は、検眼用テーブル12の後端部でY方向に伸びるように基台11により支持されており、先端にアーム14が設けられている。アーム14は、検眼用テーブル12上で駆動機構15を介して両測定ヘッド16を吊り下げるもので、支柱13から手前側へとZ方向に伸びている。アーム14は、支柱13に対してY方向に移動可能とされている。なお、アーム14は、支柱13に対してX方向及びZ方向に移動可能とされていてもよい。アーム14の先端には、駆動機構15により吊り下げられて一対の測定ヘッド16が支持されている。
【0015】
測定ヘッド16は、被検者の左右の被検眼に個別に対応すべく対を為して設けられ、以下では個別に述べる際には左眼用測定ヘッド16L及び右眼用測定ヘッド16Rとする。左眼用測定ヘッド16Lは、被験者の左側の被検眼の情報を取得し、右眼用測定ヘッド16Rは、被験者の右側の被検眼の情報を取得する。左眼用測定ヘッド16Lと右眼用測定ヘッド16Rとは、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称な構成とされている。
【0016】
各測定ヘッド16には偏向部材であるミラー18が設けられ、ミラー18を通じて後述する測定光学系21により対応する被検眼の情報が取得される。
【0017】
各測定ヘッド16には、被検眼の眼情報を取得する測定光学系21(個別に述べる際には右眼用測定光学系21R及び左眼用測定光学系21Lとする)が設けられている。測定光学系21の詳細構成については後述する。
【0018】
両測定ヘッド16は、アーム14の先端から吊り下げられたベース部19に設けられた駆動機構15により移動可能に吊り下げられている。駆動機構15は、本実施の形態では、図4に示すように、左眼用測定ヘッド16Lに対応する左眼用駆動機構15Lと、右眼用測定ヘッド16Rに対応する右眼用駆動機構15Rと、を有している。左眼用駆動機構15Lは、左眼用鉛直駆動部22L、左眼用水平駆動部23L、左眼用X方向回旋駆動部(左眼用水平方向回旋駆動部)24L及び左眼用Y方向回旋駆動部(左眼用鉛直方向回旋駆動部)25Lを有している。右眼用駆動機構15Rは、右眼用鉛直駆動部22R、右眼用水平駆動部23R、右眼用X方向回旋駆動部(右眼用水平方向回旋駆動部)24R及び右眼用Y方向回旋駆動部(右眼用鉛直方向回旋駆動部)25Rを有している。
【0019】
左眼用測定ヘッド16Lに対応する各駆動部の構成と、右眼用測定ヘッド16Rに対応する各駆動部の構成とは、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称な構成とされている。以下では、個別に述べる時を除くときは単に、鉛直駆動部22、水平駆動部23、X方向回旋駆動部24及びY方向回旋駆動部25ということがある。左右に対称に設けられる他の構成部品についても同様である。
【0020】
駆動機構15では、図4に示すように、上方側から鉛直駆動部22、水平駆動部23、X方向回旋駆動部24、Y方向回旋駆動部25の順に配置されている。
【0021】
鉛直駆動部22は、アーム14の先端のベース部19に固定され、アーム14に対して水平駆動部23、X方向回旋駆動部24及びY方向回旋駆動部25をY方向(鉛直方向)に移動させる。水平駆動部23は、鉛直駆動部22に固定され、鉛直駆動部22に対してX方向回旋駆動部24及びY方向回旋駆動部25を、X方向およびZ方向(水平方向)に移動させる。
【0022】
鉛直駆動部22及び水平駆動部23は、例えばパルスモータのような駆動力を発生するアクチュエータと、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオン等のような駆動力を伝達する伝達機構とが設けられて構成される。水平駆動部23は、例えばX方向とZ方向とで個別にアクチュエータ及び伝達機構の組み合わせを設けることで、容易に構成できるとともに水平方向の移動の制御を容易なものにできる。
【0023】
X方向回旋駆動部24は、水平駆動部23に連結されている。X方向回旋駆動部24は、水平駆動部23に対して対応する測定ヘッド16及びY方向回旋駆動部25を、対応する被検眼Eの眼球回旋点O(図4に示す左眼球回旋点OL及び右眼球回旋点OR)を通り鉛直方向(Y方向)に延びる眼球回旋軸v(図4の左被検眼EL、右被検眼ERに一点鎖線で示すvL,vR)を中心(回旋軸)として、X方向(水平方向)に回旋させる。
【0024】
Y方向回旋駆動部25は、X方向回旋駆動部24に連結されている。このY方向回旋駆動部25に測定ヘッド16が吊り下げられている。Y方向回旋駆動部25は、X方向回旋駆動部24に対して対応する測定ヘッド16を、対応する被検眼Eの眼球回旋点O(左眼球回旋点OL及び右眼球回旋点OR、図4参照)を通り水平方向(X方向)に延びる眼球回旋軸h(図4の左被検眼EL、右被検眼ERに二点鎖線で示すhL,hR)を中心(回旋軸)として、Y方向(鉛直方向上下方向)に回旋させる。
【0025】
X方向回旋駆動部24及びY方向回旋駆動部25は、例えば、アクチュエータからの駆動力を受けた伝達機構が円弧状の案内溝に沿って移動する構成とすることができる。各案内溝の中心位置を、眼球回旋軸h(hL,hV),v(vL,vR)と一致させることで、X方向回旋駆動部24及びY方向回旋駆動部25によって被検眼Eの眼球回旋軸v(vL,vR),h(hL,hV)を中心に測定ヘッド16を回旋させることができる。
【0026】
なお、X方向回旋駆動部24は、自らに設けた回旋軸線回りに回旋可能にY方向回旋駆動部25及び測定ヘッド16を支持するとともに水平駆動部23と協働して、測定ヘッド16を支持する位置を変更しつつ回旋させる構成としてもよい。また、Y方向回旋駆動部25は、自らに設けた回旋軸線回りに回旋可能に測定ヘッド16を支持するとともに鉛直駆動部22と協働して、測定ヘッド16を支持する位置を変更しつつ回旋させる構成としてもよい。
【0027】
以上の構成により、駆動機構15は、各測定ヘッド16を個別にまたは連動させて、X方向、Y方向及びZ方向に移動させることができるとともに、被検眼の眼球回旋軸v,hを中心にX方向及びY方向に回旋させることができる。なお、本実施の形態の眼科装置10では、制御部26からの制御信号を受けて、駆動機構15の各駆動部22~25を駆動させて各測定ヘッド16を移動及び回旋させる。さらに、検者等による手動操作を受けて、各駆動部22~25を手動で駆動させて、各測定ヘッド16を移動及び回旋させることもできる。
【0028】
また、左眼用X方向回旋駆動部24L及び右眼用X方向回旋駆動部24Rによって、左眼用測定ヘッド16Lと右眼用測定ヘッド16RとをX方向(左右方向)に回旋させることで、被検眼Eを開散(開散運動)させたり輻輳(輻輳運動)させたりすることができる。また、左眼用Y方向回旋駆動部25L及び右眼用Y方向回旋駆動部25Rによって、左眼用測定ヘッド16Lと右眼用測定ヘッド16RとをY方向(上下方向)に回旋させることで、被検眼Eの視線を下方向に向けさせたり、元の位置に戻したりすることができる。これにより、眼科装置10では、開散運動及び輻輳運動のテストを行うことや、両眼視の状態で遠用検査や近用検査を行って両被検眼の各種特性を測定することができる。
【0029】
図1又は図5に示すように、基台11には、眼科装置10の各部を統括的に制御する制御部26が設けられている。また、眼科装置10には、検者が眼科装置10を操作するために用いられる検者用コントローラ27と、被検眼の各種の眼情報の取得の際に、被検者が応答するために用いられる被検者用コントローラ28とを備えている。
【0030】
検者用コントローラ27は、例えばタブレット端末、スマートフォン等、制御部26と近距離通信可能な情報処理装置である。なお、検者用コントローラ27がタブレット端末等に限定されることはなく、ノート型パーソナルコンピュータ、デスクトップ型パーソナルコンピュータ等であってもよい。また、眼科装置10専用のコントローラであってもよい。
【0031】
本実施の形態の眼科装置10では、検者用コントローラ27は携帯可能に構成されており、検眼用テーブル12上に配置された状態で操作されてもよく、また、検者が手に持って操作されてもよい。
【0032】
被検者用コントローラ28は、例えばキーボード、マウス、ジョイスティック等の入力装置を備える。被検者用コントローラ28は、制御部26と有線または無線の通信路を介して接続されている。
【0033】
[測定光学系]
左眼用測定光学系21L及び右眼用測定光学系21Rは、それぞれ提示する視標を切り替えながら視力検査を行う視力検査装置、矯正用レンズを切換え配置しつつ被検眼の適切な矯正屈折力を取得するフォロプタ、屈折力を測定するレフラクトメータや波面センサ、眼底の画像を撮影する眼底カメラ、網膜の断層画像を撮影する断層撮影装置、角膜内皮画像を撮影するスペキュラマイクロスコープ、角膜形状を測定するケラトメータ、眼圧を測定するトノメータ等が、単独又は複数組み合わされて構成されている。
【0034】
図2は本実施の形態である眼科装置のうち右眼用測定光学系21Rの詳細構成を示す図である。図2ではミラー18Rを省略している。なお、左眼用測定光学系21Lの構成は右眼用測定光学系21Rと同一であるので、その説明は省略することとし、以下では右眼用測定光学系21Rについてのみ説明する。
【0035】
右眼用測定光学系21Rは、図2に示すように、観察系31、視標投影系32、眼屈折力測定系33、アライメント系35、アライメント系36及びケラト系37を有する。
【0036】
観察系31は被検眼Eの前眼部を観察し、視標投影系32は被検眼Eに視標を呈示し、眼屈折力測定系33は眼屈折力の測定を行う。眼屈折力測定系33は、本実施形態では、被検眼Eの眼底Efに所定の測定パターンを投影する機能と、眼底Efに投影した測定パターンの像を検出する機能とを有する。
【0037】
アライメント系35及びアライメント系36は、被検眼Eに対する光学系の位置合わせ(アライメント)を行う。アライメント系35は、観察系31の光軸に沿う方向(前後方向、Z方向)のアライメントを、アライメント系36が当該光軸に直交する方向(上下方向及び左右方向;Y方向及びX方向)のアライメントをそれぞれ行う。
【0038】
観察系31は、対物レンズ31a、ダイクロイックフィルタ31b、ハーフミラー31c、リレーレンズ31d、ダイクロイックフィルタ31e、結像レンズ31f及び画像取得部としての撮像素子(CCD)31gを有する。
【0039】
観察系31では、被検眼E(前眼部)で反射された光束を、対物レンズ31aを経て結像レンズ31fにより撮像素子31g上に結像する。これにより、撮像素子31g上には、後述するケラトリング光束やアライメント光源35aの光束やアライメント光源36aの光束(輝点像Br)が投光(投影)された前眼部画像E′が形成される。観察系31の撮像素子31gはこの前眼部画像E′を撮影する。制御部26は、撮像素子31gから出力される画像信号に基づく前眼部画像E′等を検者用コントローラ27の表示部30の表示面30aに表示させる。
【0040】
対物レンズ31aの前方には、ケラト系37が設けられている。ケラト系37は、ケラト板37a及びケラトリング光源37bを有する。ケラト板37aは、観察系31の光軸に関して同心状のスリットが設けられた板状を呈し、対物レンズ31aの近傍に設けられている。ケラトリング光源37bは、ケラト板37aのスリットに合わせて設けられている。
【0041】
ケラト系37では、点灯したケラトリング光源37bからの光束がケラト板37aのスリットを経ることで、被検眼E(角膜Ec)に角膜形状の測定のためのケラトリング光束(角膜曲率測定用リング状視標)を投光(投影)する。ケラトリング光束は、被検眼Eの角膜Ecで反射されることで、観察系31により撮像素子31g上に結像される。これにより、撮像素子31gがリング状のケラトリング光束の像(画像)を検出(受像)し、制御部26が、その測定パターンの像を表示部30の表示面30aに表示させ、かつ当該画像(撮像素子31g)からの画像信号に基づき角膜形状(曲率半径)を周知の手法により測定する。
【0042】
なお、本実施の形態では、角膜形状測定系として、リングスリットが1重から3重程度で角膜の中心付近の曲率測定を行うケラト板37aを用いる例(ケラト系37)を示しているが、角膜形状を測定するものであれば、多重のリングを有し角膜全面の形状を測定可能なプラチド板を用いるものでもよく、他の構成でもよく、本実施の形態の構成に限定されない。
【0043】
ケラト系37(ケラト板37a)の後方にはアライメント系35が設けられている。アライメント系35は、一対のアライメント光源35a及び投影レンズ35bを有し、各アライメント光源35aからの光束を各投影レンズ35bで平行光束とし、ケラト板37aに設けたアライメント用孔を通して被検眼Eの角膜Ecに当該平行光束を投光(投影)する。
【0044】
制御部26又は検者は、角膜Ecに投光(投影)された輝点(輝点像)に基づき、測定ヘッド16を前後方向に移動させることで、観察系31の光軸に沿う方向(前後方向)のアライメントを行う。この前後方向のアライメントは、撮像素子31g上のアライメント光源35aによる2個の点像の間隔とケラトリング像の直径の比を所定範囲内とするように測定ヘッド16の位置を調整して行う。
【0045】
なお、本実施形態では、測定光学系21の光軸は、ミラー18によって折り曲げられており、測定光学系21のミラー18に対する鏡像の位置では、測定光学系21の光軸がZ軸と略一致するように構成されている。このため、測定光学系21の光軸方向におけるアライメントは、Z方向へのアライメントに相当する。
【0046】
ここで、制御部26は、当該比率からアライメントのずれ量を求めて、このアライメントのずれ量を表示面30aに表示させても良い。なお、前後方向のアライメントは、後述するアライメント光源36aによる輝点像Brのピントが合うように測定ヘッド16Rの位置を調整することで行ってもよい。
【0047】
また、観察系31にはアライメント系(平行光学系)36が設けられている。アライメント系36はアライメント光源36a及び投影レンズ36bを有し、ハーフミラー31c、ダイクロイックフィルタ31b及び対物レンズ31aを観察系31と共用する。
【0048】
アライメント系36は、アライメント光源(点光源)36aからの光束を、対物レンズ31aを経て平行光束として被検眼Eの角膜Ecに投光(投影)する。アライメント系36から被検眼Eの角膜Ecに投影された平行光束は、角膜頂点Eptと角膜の曲率中心Rの略中間位置に、アライメント光の輝点Qを形成する(図7参照)。制御部26又は検者は、角膜Ecに投光(投影)された輝点Qの像(輝点像)Brに基づき、測定ヘッド16を前後方向に移動させることで、観察系31の光軸に直交する方向(上下方向、左右方向)のアライメントを行う。
【0049】
このとき、制御部26は、輝点像Brが形成された前眼部画像E′に加えて、アライメントマークの目安となるアライメントマークALを表示面30aに表示させる。制御部26は、アライメントが完了すると測定を開始するように制御する構成としてもよい。
【0050】
アライメント光源36aは、アライメント系36によるアライメント動作中にこのアライメント光源36aを被検者が視認することを抑止するために、赤外光(例えば940nm)を発光する発光ダイオードとされる。
【0051】
視標投影系32は、被検眼Eを固視、雲霧させる為に視標を投影し、眼底Efに呈示する光学系である。視標投影系32は、ディスプレイ32a、ロータリープリズム32A、32B、結像レンズ32b、移動レンズ32c、リレーレンズ32d、フィールドレンズ32f、ミラー32h及びダイクロイックフィルタ32iを有し、ダイクロイックフィルタ31b及び対物レンズ31aを観察系31と共用する。
【0052】
ディスプレイ32aは、他覚検査及び自覚検査を実施する際に、固視及び雲霧を行う風景チャートの他、ランドルト環やE文字視標等、検眼視標等を表示する。
【0053】
このディスプレイ32aとして、EL(エレクトロルミネッセンス)や液晶ディスプレイ(LCD)等の電子表示デバイスを用いることができ、制御部26の制御下で任意の画像を表示する。ディスプレイ32aは、視標投影系32の光路上において被検眼Eの眼底Efと共役となる位置に光軸に沿って移動可能に設けられている。
【0054】
ロータリープリズム32A、32Bは、斜位検査においてプリズム度数及びプリズム基底方向を調整するために用いられる。ロータリープリズム32A、32Bは、パルスモータ等の駆動によってそれぞれ独立に回転される。図3に示すように、ロータリープリズム32A、32Bは、互いに逆方向に回転されるとプリズム度数が連続的に変更され、同じ方向に一体的に回転されるとプリズム基底方向が連続的に変更される。
【0055】
移動レンズ32cは、駆動モータにより光軸に沿って進退駆動される。移動レンズ32cを被検眼E側に移動させることで、屈折力をマイナス側に変位させることができるとともに、移動レンズ32cを被検眼Eから離反する方向に移動させることで、屈折力をプラス側に変位させることができる。従って、移動レンズ32cの進退駆動により、ディスプレイ32aに表示された視標の呈示距離を変更可能、即ち視標像の呈示位置を変更可能であるとともに、被検眼Eを固視、雲霧させることができる。
【0056】
眼屈折力測定系33は、被検眼Eの眼底Efにリング状の測定パターンを投影するリング状光束投影系33A、及び眼底Efからのリング状の測定パターンの反射光を検出(受像)するリング状光束受光系33Bを有する。
【0057】
リング状光束投影系33Aは、レフ光源ユニット部33a、リレーレンズ33b、瞳リング絞り33c、フィールドレンズ33d、穴開きプリズム33e及びロータリープリズム33fを有し、ダイクロイックフィルタ32iを視標投影系32と共用し、ダイクロイックフィルタ31b及び対物レンズ31aを観察系31と共用する。レフ光源ユニット部33aは、例えばLEDを用いたレフ測定用のレフ測定光源33g、コリメータレンズ33h、円錐プリズム33i及びリングパターン形成板33jを有し、それらが制御部26の制御下で眼屈折力測定系33の光軸上を一体的に移動可能とされる。
【0058】
リング状光束受光系33Bは、穴開きプリズム33eの穴部33p、フィールドレンズ33q、反射ミラー33r、リレーレンズ33s、合焦レンズ33t及び反射ミラー33uを有し、対物レンズ31a、ダイクロイックフィルタ31b、ダイクロイックフィルタ31e、結像レンズ31f及び撮像素子31gを観察系31と共用し、ダイクロイックフィルタ32iを視標投影系32と共用し、ロータリープリズム33f及び穴開きプリズム33eをリング状光束投影系33Aと共用する。
【0059】
次に、眼屈折力測定モードの際の動作について説明する。制御部26はレフ測定光源33gを点灯させ、かつリング状光束投影系33Aのレフ光源ユニット部33aとリング状光束受光系33Bの合焦レンズ33tとを光軸方向に移動させる。リング状光束投影系33Aでは、レフ光源ユニット部33aがリング状の測定パターンを出射し、その測定パターンをリレーレンズ33b、瞳リング絞り33c及びフィールドレンズ33dを経て穴開きプリズム33eに進行させ、その反射面33vで反射し、ロータリープリズム33fを経てダイクロイックフィルタ32iに導く。リング状光束投影系33Aでは、その測定パターンをダイクロイックフィルタ32i及びダイクロイックフィルタ31bを経て対物レンズ31aに導くことで、被検眼Eの眼底Efにリング状の測定パターンを投影する。
【0060】
リング状光束受光系33Bでは、眼底Efに形成されたリング状の測定パターンを対物レンズ31aで集光し、ダイクロイックフィルタ31b、ダイクロイックフィルタ32i及びロータリープリズム33fを経て穴開きプリズム33eの穴部33pに進行させる。リング状光束受光系33Bでは、その測定パターンをフィールドレンズ33q、反射ミラー33r、リレーレンズ33s、合焦レンズ33t、反射ミラー33u、ダイクロイックフィルタ31e及び結像レンズ31fを経ることで、撮像素子31gに結像させる。これにより、撮像素子31gがリング状の測定パターンの像を検出し、制御部26は、その測定パターンの像を表示面25aに表示させ、その画像(撮像素子31g)からの画像信号に基づき、眼屈折力としての球面度数、円柱度数、軸角度を周知の手法により測定する。
【0061】
また、眼屈折力測定モードでは、制御部26は、視標投影系32においてディスプレイ32aに固定固視標を表示させる。ディスプレイ32aからの光束は、ロータリープリズム32A、32B、結像レンズ32b、移動レンズ32c、リレーレンズ32d、フィールドレンズ32f、ミラー32h、ダイクロイックフィルタ32i、ダイクロイックフィルタ31b、対物レンズ31aを経て、被検眼Eの眼底Efに投光(投影)する。検者または制御部26は、呈示した固定固視標を被検者に固視させた状態でアライメントを行い、眼屈折力(レフ)の仮測定の結果に基づいて被検眼Eの遠点に移動レンズ32cを移動させた後にさらに雲霧状態として、調節休止時の眼屈折力を測定する。
【0062】
なお、眼屈折力測定系33、アライメント系35、アライメント系36及びケラト系37等の構成や、眼屈折力(レフ)、自覚検査及び角膜形状(ケラト)の測定原理等は、公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0063】
[眼科装置の制御系]
図5を参照して、本実施の形態の眼科装置10の制御部26の機能構成について説明する。制御部26には、図5に示すように、上記した左眼用測定光学系21Lと、右眼用測定光学系21Rと、左眼用駆動機構15Lの左眼用鉛直駆動部22L、左眼用水平駆動部23L、左眼用X方向回旋駆動部24L及び左眼用Y方向回旋駆動部25Lと、右眼用駆動機構15Rの右眼用鉛直駆動部22R、右眼用水平駆動部23R、右眼用X方向回旋駆動部24R及び右眼用Y方向回旋駆動部25Rと、に加えて、検者用コントローラ27と、被検者用コントローラ28と、記憶部29と、が接続されている。
【0064】
制御部26は、内部メモリ26aと、検者用コントローラ27や被検者用コントローラ28と近距離無線通信可能な通信部26bと、を有している。
【0065】
検者用コントローラ27は、タッチパネルディスプレイからなる表示部30を備えている。この表示部30は、画像等が表示される表示面30aと、この表示面30a上に重畳して配置されたタッチパネル式の入力部27aとを備えている。検者用コントローラ27は、制御部26から送出される表示制御信号に基づいて所定の画面を表示面30aに表示させる。また、検者用コントローラ27は、制御部26と近距離通信可能な通信部27bを有している。入力部27aが受け入れた操作入力信号は、通信部27bを介して制御部26に送出される。
【0066】
表示部30は、撮像素子31gで取得した前眼部画像E′を表示面30aに表示する。また、表示部30は、左被検眼EL及び右被検眼ERに固視させる固視標を表示する。さらに、表示部30は、左被検眼EL及び右被検眼ERの水平方向又は鉛直方向の断面に、左被検眼EL及び右被検眼ERの視軸及び測定光学系21の光軸を表記した断面図を表示する。また、表示部30は、前眼部画像E′における瞳孔中心PC及び角膜反射Brの位置を示す模式図を表示面30aに表示する。表示部30により表示面30a表示される画面の詳細については後述する。
【0067】
制御部26は、接続された記憶部29又は内蔵する内部メモリ26aに記憶したプログラムを例えばRAM上に展開することにより、適宜検者用コントローラ27や被検者用コントローラ28に対する操作に応じて、眼科装置10の動作を統括的に制御する。さらに、制御部26は、瞳孔中心検出部26c、角膜反射位置検出部26d、回旋角度算出部26e及び測定ヘッド制御部(駆動制御部)26fとして機能する。本実施形態では、内部メモリ26aはRAM等で構成され、記憶部29は、ROMやEEPROM等で構成される。
【0068】
瞳孔中心検出部26cは、観察系31の撮像素子31gが取得した左被検眼EL及び右被検眼ERの前眼部画像E′(EL′,ER′)から、これら左被検眼EL及び右被検眼ERの瞳孔中心PCを検出する。角膜反射位置検出部26dは、アライメント系36のアライメント光源36aからの平行光束K(図7参照)が左被検眼EL及び右被検眼ER内で結像して得られる輝点Qに基づいて、これら左被検眼EL及び右被検眼ERの角膜反射、すなわち輝点Qの像である輝点像Brの位置を検出する。図7に示すように、アライメント光源36aからの平行光束Kが眼球に入射すると、角膜Ec内部の位置Q(角膜の曲率半径rの半分、r/2)にスポット状の像(プルキンエ像)、すなわち角膜反射Brが形成される。
【0069】
回旋角度算出部26eは、左被検眼EL及び右被検眼ERの瞳孔中心PCと角膜反射Brの位置とに基づいて、それぞれの瞳孔中心PCと角膜反射Brとの距離dを算出し、この距離dと角膜の曲率半径rに基づいて、瞳孔軸PXと測定光学系21の光軸とのなす角度θを算出し、この角度θに基づいて、視軸VXと光軸とのなす角度θを算出する。この角度θを左右の測定ヘッド16L,16RのX方向及びY方向への回旋角度とする(図12参照)。さらに、回旋角度算出部26eは、算出した左被検眼EL及び右被検眼ERの回旋角度に基づいて、左被検眼EL及び右被検眼ERのプリズム基底方向及びプリズム度数を算出し、これらを表示部30に表示してもよい。
【0070】
測定ヘッド制御部26fは、算出された回旋角度に基づいて、X方向回旋駆動部24又はY方向回旋駆動部25を駆動して、瞳孔中心と角膜反射の位置とが一致するように、測定ヘッド16を眼球回旋軸v,hを中心にX方向又はY方向に回旋させる。
【0071】
また、本実施の形態に係る眼科装置10では、表示部30に左被検眼EL及び右被検眼ERの前眼部画像EL′,ER′を表示させている(図15参照)。そのため、検者がこれらを視認することで、例えば、アライメントや検査がうまくできなかった原因等を把握することができる。つまりアライメント等がうまくできない原因として、例えば、固視ができていない、両眼視ができていない、斜視や斜位がある、眼瞼下垂がある、抑制がある、瞳孔の縮瞳がある、頭部が傾いている、などが挙げられる。アライメント等の実行中に、表示部30に表示される左被検眼EL及び右被検眼ERの前眼部画像EL′,ER′を視認することで、検者はアライメント等ができない原因を明確に把握することが可能となる。そして、頭部の位置を修正したり、被検者に注意を促したりして、迅速に対策を講じることができ、再度のアライメント等の成功率を向上できる。
【0072】
(原理)
次に、図6図13を用いて、本実施の形態に係る眼科装置10の測定原理について説明する。
【0073】
本実施の形態に係る眼科装置10は、被検眼Eの前眼部画像E′を解析して、瞳孔像Epの瞳孔中心PCと輝点像Brとが一致するように測定ヘッド16を回旋させる装置である。さらに、本実施の形態に係る眼科装置10は、回旋角度に基づいて斜視を定量的に算出してもよい。
【0074】
前眼部画像E′中の瞳孔中心PCと輝点像Brとが不一致となる原因としては、例えば斜視や斜位がある。ここで、斜視とは、左被検眼EL及び右被検眼ERの視線が異なる場所に向かっていることである。斜視のない被検眼Eであれば、左被検眼EL及び右被検眼ERにより共通の固視標を固視すると、左被検眼EL及び右被検眼ERの視線は略前方の共通の場所(固視標)に向かう。しかしながら、斜視等のある被検眼Eであると、左被検眼EL及び右被検眼ERの一方の視線は固視標に向かわず、従って、左被検眼EL及び右被検眼ERの視線は異なる場所に向かう。一方、斜位とは、通常は左被検眼EL及び右被検眼ERの視線が一致しているが、一方の被検眼Eを遮蔽したときに、遮蔽された被検眼Eの視線が異なる場所に向かうことであり、潜伏性斜視とも呼ばれる。
【0075】
本実施の形態に係る眼科装置10では、斜視、斜位により左被検眼EL及び右被検眼ERのいずれかの視線が固視標に向かわないときに、その視線が固視標に向かうように測定ヘッド16を回旋させた上で、斜視等の検査を行う。
【0076】
図6は、右被検眼ERを上方から見た場合の水平断面図である。図6において左側が前方、右側が後方にあたる。右被検眼ERが固視をしている固視標(固視点)と瞳孔中心PCとを結ぶ軸が、右被検眼ERがどこを見ているかを示す視軸VXである。一方、瞳孔中心PCから角膜Ecと垂直方向に出る軸は、右被検眼ERが向いている方向を示す瞳孔軸PXである。斜視のない被検眼Eであっても、視軸VXは瞳孔軸PXよりもやや鼻側(図6において下方)にずれている。視軸VXと瞳孔軸PXとのなす角度をラムダ角(図中λで示す)と称する。このラムダ角は、斜視のない正常な被検眼Eでも個体差があるが、平均値は+5°である。測定ヘッド16を回旋させるときは、このラムダ角λを加味した回旋角度で回旋させる必要がある。
【0077】
被検眼Eにおける視軸VXは、アライメント光源36aに基づく輝点像Br(以下、これを「角膜反射Br」と称する)の位置から知ることができる。また、被検眼Eにおける瞳孔軸PXは、瞳孔中心PCの位置から知ることができる。視軸VX、瞳孔軸PXの詳細な算出方法については後述する。
【0078】
図8は、様々な斜視における瞳孔の瞳孔中心PCと角膜反射Brとの位置関係を示す図である。図8に示すように、斜視のある被検眼E(図8に示す例では右被検眼ER)において、角膜反射Brの位置が瞳孔中心PCからずれていることがわかる。そこで、本実施の形態に係る眼科装置10では、瞳孔中心PCと角膜反射Brとの距離d(ずれ量)を算出し、この距離dと角膜の曲率半径rに基づいて、瞳孔軸PXと測定光学系21の光軸とのなす角度θを算出する(図12参照)。この角度θ、及び瞳孔軸PXと視軸VXとのなすラムダ角λに基づいて、視軸VXと光軸とのなす角度θを求め、この角度θを回旋角度とする。この回旋角度θに応じて測定ヘッド16を回旋させ、瞳孔中心PCと角膜反射Brとを一致させる。すなわち、被検眼Eの視軸VXと測定光学系21の光軸とを一致させる。この一致は厳密であることが望ましいが、概略一致させればよく、その後自覚検査によって微調整することができる。
【0079】
本実施の形態である眼科装置10では、例えば、ヒルシュベルグ(Hirschberg)法に基づいて瞳孔中心PCと角膜反射Brとのずれ(距離d)を求めるが、この手法に限定されるものではない。ヒルシュベルグ法では、光源を被検者の被検眼Eから33cmの距離に置き、被検者にこの光源を固視するように指示した上で、光源と同軸の位置にある検者が瞳孔中心と角膜反射の位置との関係を測定し、他覚的な定量検査を行っている。
【0080】
本実施の形態に係る眼科装置10では、角膜反射Brをもたらすアライメント光源36aと観察系31の撮像素子31gとは同一光軸上にある。そのため、この撮像素子31gで撮像した前眼部画像E′から瞳孔中心PCを求め、また、前眼部画像E′における角膜反射Brの位置を求めることで、測定ヘッド16の回旋角度を算出し、この回旋角度に応じて測定ヘッド16を回旋させることで、ヒルシュベルグ法に則った他覚的な斜視の定量検査を行うことができる。
【0081】
図9は、特定の視点(固視点)を固視するように指示した状態で観察系31の撮像素子31gにより撮像された前眼部画像E′の一例を示す図である。この図9中、Brは角膜反射を示し、Epは瞳孔像を示し、PCは瞳孔像Epの瞳孔中心を示し、Irは虹彩像を示す。図9(a)は、特定の視点(固視点)を固視するように指示した状態における斜視のない被検眼Eの前眼部画像E′である。既に説明したように、斜視のない被検眼Eであれば、前眼部画像E′中の瞳孔像Epの中心すなわち瞳孔中心PCと角膜反射Brとは同一位置にある。
【0082】
一方、図9(b)は特定の視点(固視点)を固視するように指示した状態における斜視のある被検眼Eの前眼部画像E′である。斜視のある被検眼Eの視線は固視点を向いておらず、従って、これも既に説明したように、前眼部画像E′における角膜反射Brの位置は瞳孔中心PCからずれる。
【0083】
以下、固視点を固視するように指示した状態における斜視のない被検眼Eを固視眼又は優位眼、同様に固視点を固視するように指示した状態における斜視のある被検眼Eを非固視眼又は非優位眼と称することがある。
【0084】
本実施の形態である眼科装置10では、制御部26は、眼科装置10の視標投影系32のディスプレイ32aに固視標を表示させる。次いで、制御部26の測定ヘッド制御部26fは、駆動機構15L,15RのX方向回旋駆動部24L,24Rを駆動して測定ヘッド16L、16Rを左被検眼EL及び右被検眼ERの鉛直方向に延びる眼球回旋軸vL,vRを中心として回旋させ、被検眼Eの前方に呈示される固視標を固視するように指示する。これにより、右被検眼ER及び左被検眼ELを輻輳させて固視標を注視させる。
【0085】
この状態で制御部26の瞳孔中心検出部26c及び角膜反射位置検出部27dは、前眼部画像E′における瞳孔像Epの瞳孔中心PCと角膜反射Brの位置とをそれぞれ求める。そして、回旋角度算出部26eは、瞳孔中心検出部27c及び角膜反射位置検出部27dが算出した瞳孔中心PCと角膜反射Brとの位置に基づいて、瞳孔中心PCと角膜反射Brの位置との距離d(ずれ量)を算出し、この距離dと角膜の曲率半径rに基づいて、瞳孔軸PXと測定光学系21の光軸とのなす角度θを算出する。この角度θ、及び瞳孔軸PXと視軸VXとのなすラムダ角λに基づいて、視軸VXと光軸とのなす角度θを求め、この角度θを回旋角度とする。
【0086】
さらに、回旋角度算出部26eは、前眼部画像E′に対する視軸VXと測定光学系21の光軸(測定軸)とを示す模式図、及び前眼部画像E′における瞳孔中心PCと角膜反射Brの位置とを示す模式図を作成し、検者用コントローラ27の表示部30の表示面30aに表示させる。
【0087】
図10を参照して、表示部30に表示する各種画像の関係を説明する。図10には左被検眼ELが内斜視(図8参照)である被検眼Eの各種画像が示されている。図10中の画像Aは、左右の前眼部画像EL′,ER′であり、虹彩像Ir、瞳孔像Ep、その瞳孔中心PC及び角膜反射Brが観察される。この画像Aにより、瞳孔像Epの瞳孔中心PCと角膜反射Brとの位置関係がわかる。
【0088】
図10中の画像Bは、被検眼EL,ERに対する視軸VXと測定光学系21の光軸(測定軸)とを示す模式図である。画像B中、d1は被検眼EL,ERの水平方向の断面図であり、d2,d3は、それぞれ視軸VXと測定光学系21の光軸を模式的に示したものである。右被検眼ERの視軸d2(VX)は光軸d3と略一致している。一方、左被検眼ELの視軸d2(VX)は光軸d3に対して傾いており、一致していない。なお、この画像Bはイメージ図であり、実際の視軸d2はラムダ角λだけずれている。
【0089】
また、図10の画像Cは、前眼部画像EL′,ER′における瞳孔中心PCと角膜反射Brの位置とを示す模式図である。内側の円C1は瞳孔像Epの縁部を示し、外側の円C2は虹彩像Ir(角膜Ec)の縁部を示す。この画像Cでは、角膜反射Brの位置は×で示している。右被検眼ERの前眼部画像ER′の角膜反射Brの位置は瞳孔中心PCの中心と略一致している。一方、左被検眼ELの前眼部画像EL′の角膜反射Brの位置は瞳孔中心PCと一致していない。実際には虹彩像Ir(角膜Ec)の縁部にまで至っている。
【0090】
さらに、表示部30には、図10の画像Dに示すように、被検眼Eの鉛直方向の断面図e1と、視軸VX(e2)と測定光学系21の光軸(e3)とを示す模式図を表示してもよい。これにより、例えば、被検眼Eが上斜視や下斜視の場合の視軸VXの上下方向のずれを把握し易くなる。図10の例では、被検眼EL,ERに上下の斜視はないので、e2とe3とは一致している。
【0091】
瞳孔中心検出部26cによる前眼部画像E′における瞳孔中心PCの位置を求める手法は周知のものから適宜選定すればよい。一例として、瞳孔中心検出部26cは、前眼部画像E′から瞳孔像Epの縁部を検出し、この瞳孔像Epの境界座標を算出する。瞳孔像Epの縁部は、例えば、前眼部画像E′における瞳孔Epと虹彩との間の明度の差に基づいて検出することが可能である。
【0092】
次に、瞳孔中心検出部26cは、瞳孔Epの境界座標を楕円近似して、瞳孔近似楕円の中心を算出する。まず、瞳孔中心検出部27cは、瞳孔の境界座標から、最小自乗法により、次式(1)に示す楕円の一般式における係数a、b、c、d及びhを求める。
【数1】
【0093】
そして、瞳孔中心検出部26cは、楕円の一般式(1)における係数から、瞳孔近似楕円の中心座標を次式(2)により求める。下記式(2)により求められた瞳孔近似楕円の中心座標が瞳孔中心PCの座標である。
【数2】
【0094】
また、角膜反射位置検出部26dは、前眼部画像E′における角膜反射Brの位置座標を求める。本実施の形態である眼科装置10では、アライメント光源36aが赤外光であるので、撮像素子31gの出力信号から赤外光領域の信号のみを取り出すことで、アライメント光源36aからの反射光に基づく角膜反射Brの位置を簡易にかつ正確に求めることができる。
【0095】
回旋角度算出部26eは、求められた瞳孔中心PCの座標及び角膜反射Brの位置座標に基づき、瞳孔中心PCの位置に対する角膜反射Brの位置のずれ量を求める。
【0096】
例えば、図11(a)に示すような模式図で示される瞳孔中心PCの位置座標及び角膜反射Brの位置座標が求められたものとする。図11(a)に示す例では、左被検眼ELが外斜視及び下斜視である。そこで、回旋角度算出部26eは、瞳孔中心PCの位置と角膜反射Brの位置との距離として、図11(b)に示すように、図中水平方向(つまりX方向)の距離dx及び垂直方向(つまりY方向)の距離dyを算出する。
【0097】
次いで、回旋角度算出部26eは、この距離d(dx及びdyを区別せずに説明する場合は距離dとして説明する)と角膜の曲率半径rから、瞳孔軸PXと測定光学系21の光軸とのなす角度θを求める。この角度θ及びラムダ角λに基づいて、視軸VXと光軸とのなす角度θを求め、この角度θを回旋角度とする。図12(a)は斜視のない被検眼Eにおけるアライメント光源36aの輝点Qの位置を示し、図12(b)は斜視のある被検眼Eの輝点Qの位置を示す。既に説明したように、輝点Qの位置は前眼部画像E′における角膜反射Brの位置として求められる。
【0098】
ところで、角膜の曲率半径r(つまり角膜曲率中心R0から角膜頂点Eptまでの距離)と、角膜頂点Eptの位置と角膜反射Brの位置との距離dと、図12(b)に示す瞳孔軸PXと測定光学系21のなす角度θとは、次式(3)のような関係式で表される。
【0099】
sinθ = d/r ・・・(3)
【0100】
上記式(3)に、距離dと曲率半径rを代入することで、角度θを算出することができる。角膜の曲率半径rは、ケラト測定により取得された値を用いることが可能である。または、角膜の曲率半径rは、初期値として平均値(7.7mm)を用いてもよい。
【0101】
しかし、本実施形態では、瞳孔中心PCの位置に対する角膜反射Brの位置のずれ量(距離dと、角膜曲率中心Rから瞳孔中心PCまでの距離rを用いて、次式(3-1)に基づいて、角度θを求める。これにより、前眼部画像E′に基づいて、より効率的に角度θ等を算出できる。
【0102】
sinθ = d/r ・・・(3-1)
【0103】
上記式(3-1)に、先に求めた距離dを代入することにより、角度θを算出できる。距離rは、例えば平均値を用いることができる。具体的には、距離rは、角膜の曲率半径rから、角膜頂点Eptと瞳孔中心PCとの距離r’を差分することで求められる。rの平均値=7.7mm、r’の平均値=3.6mm(ただし、瞳孔中心PCを水晶体の前面とした場合の平均値)とした場合、距離r=(7.7-3.6)mm=4.1mmとなる。
【0104】
なお、瞳孔中心PCと角膜反射Brの各位置は、角膜の屈折作用の影響を受け易く、また距離rには個人差がある。そのため、図12(a)のような斜視のない被検眼Eの瞳孔軸PXや、他の様々な方向を向いた被検眼Eの瞳孔軸PXに関する、距離d、距離rを収集し、これらの連立方程式に基づいて、距離rを最適化してもよい。または、ケラト測定により取得された角膜の曲率半径rの実測値から、距離rを最適化してもよい。
【0105】
また、上記(3)または(3-1)を用いた算出手順に代えて、次式(4)によっても、角度θを算出できる。次式(4)中、Lは角膜頂点Eptから眼球回旋点Oまでの距離を示し、Dは角膜頂点Eptの位置と眼球回旋点Oの位置との距離を示す。なお、角膜頂点Eptから眼球回旋点Oまでの距離Lは予め決められた値(例えば、平均的な値である13mm)であってよい。あるいは、別の機器による測定において、実距離が既知である場合にはこの値を入力可能としてもよい。またこの場合も、距離Lに代えて瞳孔中心PCから眼球回旋点Oまでの距離を用い、距離Dに代えて、前眼部画像E′における瞳孔中心PCの位置と眼球回旋点Oの位置との距離を用いて算出してもよい。
【0106】
sinθ = D/L ・・・(4)
【0107】
さらに異なる角度θの算出手法として、例えば、角膜反射Brの変位Δ(図12(b)参照)を用いることもできる。変位Δは、ずれが検出された被検眼Eのみに固視標を固視させて、図12(a)の状態での各数値を求め、眼球回旋点Oからの角膜反射Brのずれ量として表すことができる。
【0108】
角膜頂点Eptから眼球回旋点Oまでの距離をLとし、角膜の曲率半径をrとすると、図12(b)に示す角膜反射Brの変位Δは、次式(5)のように表される。この場合も、角膜頂点Eptから眼球回旋点Oまでの距離Lは予め決められた値(例えば、平均的な値である13mm)であってよい。あるいは、別の機器による測定において、実距離が既知である場合にはこの値を入力可能としてもよい。角膜の曲率半径rは、ケラト測定により取得された値又は平均値(7.7mm)を用いることが可能である。
【0109】
Δ=(L - r)・sinθ・・・(5)
【0110】
(眼科装置の動作例)
上述のような構成の本実施の形態の眼科装置10の動作の一例を、図14のフローチャートに従って説明する。図14のフローチャートでは、両眼視での検眼の際に、いずれかの被検眼Eにおいて斜視が発見された場合、この被検眼Eに対応する測定ヘッド16の位置を適切な位置に回旋させた後、被検眼Eの他覚検査及び自覚検査を眼科装置10により行う場合について説明する。
【0111】
まず、ステップS1では、固視標の呈示位置を所定位置とすべく、測定ヘッド制御部26fがX方向回旋駆動部24を駆動して、測定ヘッド16をX方向へ回旋させる。次に、ステップS2では、視標投影系32がそのディスプレイ32aの中央位置に固視標(例えば、点光源視標)を表示させる。この状態で、検者は被検者に対して固視標を固視するように指示する。
【0112】
ステップS3では、左右の測定光学系21の撮像素子31gによって、左右の被検眼EL,ERの前眼部の撮影が開始される。制御部26は、図15に示すように、撮像素子31gから出力される画像信号に基づく左右の被検眼EL,ERの前眼部像(正面像)EL′,ER′を表示面30aに表示する。また、制御部26は、現在ディスプレイ32aにより呈示されている固視標40R、40Lを表示面30aに表示する。
【0113】
表示部30に表示された前眼部画像EL′,ER′を検者が視認することで、固視の適否、両眼視の適否、斜視、斜位、眼瞼下垂、抑制、瞳孔の縮瞳、頭部の傾き等を確認することができる。これにより、例えば眼瞼下垂に対しては検者が瞼を手で開く、頭部の傾きに対しては被検者に注意喚起する等の対策を講じることができる。
【0114】
ステップS4では、被検者に固視標を固視させた状態で、前述したような動作によってアライメント系35がZ方向のアライメンを行い、アライメント系36がX方向及びY方向のアライメントを行う。
【0115】
ステップS5では、前眼部画像EL′,ER′を解析する。つまり、瞳孔中心検出部26cが前眼部画像EL′,ER′中の瞳孔中心PCの位置を検出し、角膜反射位置検出部26dが前眼部画像E′中の角膜反射Brの位置を検出する。そして、回旋角度算出部26eが瞳孔中心PCの位置と角膜反射Brの位置に基づいて、瞳孔中心PCと角膜反射Brとの距離dを算出し、この距離dと角膜の曲率半径rに基づいて、瞳孔軸PXと測定光学系21の光軸とのなす角度θを算出し、この角度θ及びラムダ角λに基づいて視軸VXと光軸とのなす角度θを算出する。なお、何点かの固視点を被検者に提示し、問題なく固視しているか自覚判断を行い、この自覚判断に基づいて角度θを補正してもよい。また、これらの平均補正値を実装してもよい。
【0116】
ステップS6では、瞳孔中心検出部26c及び角膜反射位置検出部26dの検出結果に基づいて、図15に示すように、被検眼Eの水平方向の断面図と、視軸VXと測定光学系21の光軸(測定軸)とを示す模式図41L,41R及び前眼部画像EL′,ER′における瞳孔中心PCと角膜反射Brの位置とを示す模式図42L,42Rを、前眼部画像EL′,ER′の上下に並べて表示面30aに表示する。なお、被検眼Eが上斜視や下斜視の場合を考慮して、模式図41L,41Rと並べて、又は模式図41L,41Rに代えて、被検眼Eの鉛直方向の断面図と、視軸VXと測定光学系21の光軸(測定軸)とを示す模式図を表示してもよい(図10の画像D参照)。
【0117】
ステップS7では、ステップS5において算出された距離d又は角度θに基づいて、左右の被検眼EL,ERに斜視があるか否かを判定する。具体的には、距離d又は角度θが閾値未満であるか否かを判定する。この閾値は任意に設定可能であるが、斜視のない被検眼Eにおけるラムダ角(+5°)を加味して角度θの閾値を設定することが好ましい。
【0118】
左右いずれの被検眼EL,ERも距離d又は角度θが閾値未満である場合は、被検眼EL,ERに斜視がないと判定し(ステップS7の判定がNO)、ステップS10の他覚検査へと進む。これに対して、左右いずれかの被検眼EL,ERの距離d又は角度θが閾値以上である場合は、斜視があると判定し(ステップS7の判定がYES)、ステップS8に進む。図10図15の例では、左被検眼ELに斜視が検出されている。
【0119】
ステップS8では、斜視のない固視眼に対して所定の固視標を呈示する。このとき、斜視があるとされた非固視眼に対しては、ディスプレイ32aを消灯して固視標を非呈示とする。しかし、これに限定されるものではなく、非固視眼に対して、固視眼と同じ固視標を呈示してもよいし、一部が同じ固視標を呈示してもよい。
【0120】
ステップS9では、ステップS5において算出された角度θ(回旋角度)に基づいて、瞳孔中心PCと角膜反射Brとが一致するように、測定ヘッド制御部26fが非固視眼に対応する測定ヘッド16を回旋させる。左右方向(X方向)に斜視がある場合は、X方向回旋駆動部24を駆動して、鉛直方向に延びる眼球回旋軸vを中心として測定ヘッド16をX方向へ回旋させる(図13(a)参照)。また、上下方向(Y方向)に斜視がある場合は、Y方向回旋駆動部25を駆動して、水平方向に延びる眼球回旋軸hを中心として測定ヘッド16をY方向へ回旋させる(図13(b)参照)。
【0121】
このステップS9の動作により、瞳孔中心PCと角膜反射Brとを一致させ、視軸VXを測定光学系21の光軸と一致させることができる。その後、ステップS10に進み、検者による他覚検査モードの選択を受けて(又は自動で)、眼屈折力測定系33による眼屈折力(レフ)測定、ケラト系37による角膜形状(ケラト)測定等の他覚検査を実行する。
【0122】
次いで、ステップS11では、検者による自覚検査モードの選択を受けて(又は自動)で、被検眼Eの自覚検査を実行する。このとき、斜視がある場合は、検者は被検者に対して、視標投影系32により呈示される固視標が右被検眼ER及び左被検眼ELでずれて(ブレて)いるか否かを質問する。この質問に対する被検者の応答に従って、検者は検者用コントローラ27の入力部27a等を操作して、ロータリープリズム32A、32Bの回転駆動を指示し、ロータリープリズム32A、32Bにより与えられるプリズム基底方向及びプリズム度数の微調整を行う。そして、最終的に固視標がずれて検出されない状態での左被検眼EL又は右被検眼ERの斜視の度合いをプリズム基底方向及びプリズム度数として求めることができる。
【0123】
このように、斜位のある被検眼Eに対応して、測定ヘッド16をX方向又はY方向に回旋させて視軸と測定光学系21の光軸とを一致させているので、プリズム基底方向及びプリズム度数の微調整をより迅速かつ効率的に行うことができ、プリズム検査の検査時間を短縮することができる。その後、このプリズム基底方向及びプリズム度数に基づいて、遠用検査、近用検査、その他の自覚検査を迅速に実行することができる。
【0124】
(変形例)
次に、変形例として、片眼視で検眼する眼科装置について説明する。上記実施形態では、測定光学系21に視標投影系32を備えている。この構成では、片眼視での検眼の場合、斜視のある被検眼Eにディスプレイ32aの固視標を固視させた状態で測定ヘッド16を回旋させると、固視標も回旋方向に移動するため、固視標を視認する被検眼Eも追随して回旋してしまうことがある。そのため、瞳孔中心PCと角膜反射Brとを一致させるのが困難となる。
【0125】
よって、測定ヘッド16を回旋させる際には固視標は移動しない構成とすることが望ましい。そこで、変形例の眼科装置として、視標投影系32又はこれとは別の視標投影系(又は固視標のみでもよい)を、測定光学系21の外に設け、測定ヘッド16を回旋させたときに、視標投影系32を移動させずに固視標の位置を固定する構成とする。これにより、斜視のある被検眼Eに固視標を固視させた状態で、被検眼Eの瞳孔中心PCと角膜反射Brとの距離dに応じて測定ヘッド16のみを回旋させることができる。
【0126】
また、他の変形例として、上記実施形態のように測定光学系21内に視標投影系32を設けた測定ヘッド16を用い、ディスプレイ32aへの固視標の表示を適宜制御してもよい。この測定ヘッド16を回旋させる際に、この回旋方向とは反対方向に、回旋量及び回旋速度に応じた距離及び移動速度で、ディスプレイ32a上の固視標を移動させる。この制御により、被検眼Eに対して、相対的に固視標の位置が固定され、測定ヘッド16の回旋に追随した被検眼Eの回旋を防止することができる。
【0127】
さらに異なる変形例として、片眼視タイプの検眼装置に、測定ヘッド16に対峙させる被検眼Eとは異なる他の被検眼Eに固視標を呈示する第2の視標投影系(又は固視標)を設ける。この構成の眼科装置において、検眼対象の被検眼Eを測定ヘッド16に対峙させ、被検眼Eに視標投影系32により固視標を呈示し、検眼対象ではない他の被検眼Eに第2の視標投影系により固視標を呈示する。検眼対象の被検眼Eに斜視が確認されたら、ディスプレイ32aを消灯させて、この被検眼E(非固視眼)への固視標の呈示を停止し、検眼対象ではない他の被検眼E(固視眼)のみに固視標を固視させる。この状態で、測定ヘッド16を回旋させることで、非固視眼が追随して回旋することなく、非固視眼の瞳孔中心PCと角膜反射Brとを一致させることができる。
【0128】
(検眼装置の作用効果)
以下、本実施の形態の眼科装置10の作用効果を説明する。本実施の形態の眼科装置10は、被検者の被検眼Eの情報を取得する測定光学系21と、測定光学系21に設けられ、固視標を呈示した状態での被検眼Eの測定光学系21の光軸上の前眼部画像E′を取得する画像取得部(撮像素子31g)と、被検眼Eの視線の固視を行わせるための固視標を測定光学系21の光軸上で被検眼Eに呈示する視標投影系32と、測定光学系21を、被検眼Eの眼球回旋軸vを中心軸として回旋させる回旋駆動部24,25(X方向回旋駆動部24、Y方向回旋駆動部25)と、前記固視標を呈示した状態で画像取得部が取得した被検眼Eの前眼部画像E′から被検眼Eの瞳孔中心PCを検出する瞳孔中心検出部26cと、測定光学系21から被検眼Eに入射される光軸に平行な光線(平行光束K)が被検眼E内で結像して得られる点像に基づいて、被検眼Eの角膜反射Brの位置を検出する角膜反射位置検出部26dと、を備える。回旋駆動部は、瞳孔中心PCの位置と角膜反射Brの位置とが一致するように、測定光学系21を、被検眼Eの眼球回旋軸vを中心軸として回旋させる。
【0129】
上記構成により、被検眼Eに固視標を呈示した状態において、瞳孔中心検出部26c及び角膜反射位置検出部26dがそれぞれ検出した瞳孔中心PCの位置及び角膜反射Brの位置に基づいて、角膜反射Brの位置が瞳孔中心PCと一致するように、回旋駆動部が測定光学系21を、眼球回旋軸vを中心軸として回旋させている。これにより、被検眼に斜視、斜位がある場合でも、視軸を測定光学系21の光軸に略一致させることができる。したがって、被検眼の斜視、斜位の検査を迅速かつ容易に行うことが可能な眼科装置10を提供することができる。その結果、被検者の負担も軽減することができる。
【0130】
また、上記実施の形態では、瞳孔中心PCの位置と角膜反射Brの位置との距離dを算出し、この距離dに基づいて回旋駆動部の回旋角度を算出する回旋角度算出部26eと、算出された回旋角度に基づいて、回旋駆動部を駆動して測定光学系21を回旋させる駆動制御部(測定ヘッド制御部26f)と、を備えている。この構成により、被検眼Eの視線と光軸とを、自動で一致させることができ、より迅速かつ自動的に被検眼の斜視、斜位の検査を行うことができる。
【0131】
また、上記実施の形態において、回旋角度算出部26eは、回旋角度に基づいて、被検眼Eのプリズム基底方向及びプリズム度数を算出する構成とすれば、斜視、斜位の矯正のためのデータを容易に得ることができ、プリズム検査に要する時間をより短縮することができる。
【0132】
また、上記実施の形態では、回旋駆動部(X方向回旋駆動部24)は、測定光学系21を、被検眼Eの眼球回旋点Oを通り鉛直(Y方向)に延びる眼球回旋軸vを中心軸として回旋させる構成である。この構成により、内斜視、外斜視がある被検眼Eに対応して、測定光学系21を回旋させて、適切な位置に配置することができる。
【0133】
また、上記実施の形態において、回旋駆動部(Y方向回旋駆動部25)は、測定光学系21を、被検眼Eの眼球回旋点Oを通り水平方向(Y方向)に延びる眼球回旋軸vを中心軸として回旋させる構成である。この構成により、上斜視、下斜視がある被検眼Eに対応して、測定光学系21を回旋させて、適切な位置に配置することができる。
【0134】
また、上記実施の形態では、視標投影系32が、被検者の左被検眼EL及び右被検眼ERに対応して一対設けられている。一対の視標投影系32により、左被検眼EL及び右被検眼ERに固視標を呈示して、左被検眼EL及び右被検眼ERのいずれかに瞳孔中心PCの位置と角膜反射Brの位置とにずれが検出されたときに、ずれが検出された被検眼E(非固視眼)への固視標の呈示を停止し、他の被検眼E(固視眼)に固視標を呈示した状態で、ずれが検出された被検眼Eに対応する測定光学系21を、瞳孔中心PCと角膜反射Brの位置とが一致するように回旋させる構成である。の構成により、測定光学系21の回旋に追随して、非固視眼が回旋してしまうのを防止して、瞳孔中心PCと角膜反射Brの位置とを一致させることができる。また、視標投影系32が、被検者の左被検眼EL及び右被検眼ERに対応して一対設けられ、一対の視標投影系32により、左被検眼EL及び右被検眼ERに固視標を呈示して、瞳孔中心PCの位置と角膜反射Brの位置とにずれが検出されない被検眼Eを固視眼とし、ずれが検出された被検眼Eを非固視眼として測定光学系216を、瞳孔中心PCと角膜反射Brの位置とが一致するように回旋させる構成である。この構成により、非固視眼のずれを精度よく検出することができ、瞳孔中心PCと角膜反射Brの位置とを一致させての測定や、プリズム度数等の算出を、精度よく行うことができる。
【0135】
また、上記実施の形態において、前眼部画像E′における瞳孔中心PC及び点像(角膜反射Br)の位置を示す模式図を表示する表示部30を設けている。この構成により、瞳孔中心PCと角膜反射Brとのずれを、検者が視覚によって明確に把握できる。さらには、表示部30に被検眼Eの水平方向又は鉛直方向の断面に、瞳孔中心PC及び点像(角膜反射Br)の位置に基づいて得られた視軸VX及び光軸を表記した模式図を表示する構成とすることで、光軸に対する視軸VXのずれを、検者が視覚によって明確に把握できる。
【0136】
また、上記実施の形態において、表示部30に前眼部画像E′を表示する構成とすることで、被検眼Eに斜視、斜位があることを、検者が四角によって明確に把握できる。さらには、固視や両眼視の適否、眼瞼下垂、抑制、瞳孔の縮瞳及び頭部の傾きの有無等も把握することができる。よって、アライメントや各種検査のために、適切な対応を図ることができ、アライメントや各種検査の成功率を向上できる。
【0137】
以上、本発明の眼科装置を実施の形態に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0138】
例えば、上記実施の形態では、回旋角度算出部26eを備え、この回旋角度算出部26eにより算出したずれ量を回旋角度とし、この回旋角度に基づいて、測定ヘッド制御部26fが測定ヘッド16をX方向やY方向に自動で回旋させている。しかし、この構成に限定されるものではなく、瞳孔中心検出部26c、角膜反射位置検出部26d、回旋角度算出部26eを設けることなく、測定ヘッド16を回旋させる構成としてもよい。
【0139】
すなわち、他の異なる実施の形態として、測定光学系21と、画像取得部(撮像素子31g)と、視標投影系32と、回旋駆動部(X方向回旋駆動部24、Y方向回旋駆動部25)を備えて構成し、回旋駆動部が、固視標を呈示した状態で画像取得部が取得した前眼部画像E′中の瞳孔中心PCと、測定光学系21から被検眼Eに入射される光軸に平行な光線(平行光束K)が被検眼内で結像して得られる点像(輝点像Br)とが一致するように、測定光学系21を、被検眼Eの眼球回旋軸(v,h)を中心軸として回旋させる構成としてもよい。この構成により、被検眼Eの瞳孔中心PCや角膜反射Brの位置を検出することなく、簡易に測定光学系21を回旋させることができる。
【0140】
この場合、例えば、検者用コントローラ27の表示部30の表示面30aに測定ヘッド16を上下左右に回旋させるアイコンを表示し、各アイコンをタッチ操作することで、そのタッチ操作の長さ(時間)に応じて、測定ヘッド制御部26fが駆動機構15を駆動して、測定ヘッド16を自動でX方向やY方向に回旋させる構成としてもよい。そして、検者が表示部30に表示された前眼部画像E′等を視認しつつ、点像が瞳孔中心に一致するように、アイコンをタッチ操作して測定ヘッド16を回旋させてもよい。または、測定ヘッド制御部26fの制御やアイコンのタッチ操作によらず、検者が測定ヘッド16を把持して、回旋させてもよい。これにより、瞳孔中心と点像との位置を検出する工程、回旋角度を算出する工程を省くことができ、より簡易な眼科装置10を提供できる。
【0141】
また、他の異なる実施の形態として、前述した演算処理によって被検眼Eの瞳孔中心PCと角膜反射Brとの距離d(dx及びdy)をずれとして算出し、測定ヘッド制御部26fが駆動機構15を駆動して、このずれを打ち消すような位置に測定ヘッド16を回旋させる構成であってもよい。より詳細には、前眼部画像E′を解析しながら、X方向回旋駆動部24を駆動して、dxを打ち消すように(dxが0又は閾値以下となるまで)、鉛直方向に延びる眼球回旋軸Vを中心として測定ヘッド16をX方向へ回旋させる(図13(a)参照)。また、Y方向回旋駆動部25を駆動して、dyを打ち消すように(dyが0又は閾値以下となるまで)、水平方向に延びる眼球回旋軸hを中心として測定ヘッド16をY方向へ回旋させる(図13(b)参照)。この構成によっても、被検眼Eの視軸と測定光学系21の光軸とを容易かつ迅速に一致させることができる。
【0142】
さらに、異なる実施形態として、上記アイコンのタッチ操作又は手動操作による測定ヘッド16のX方向及びY方向への回旋角度を制御部26が検出し、この回旋角度に基づいて、斜視眼のプリズム基底方向及びプリズム度数リズムを算出してもよい。この構成によっても、斜視眼のプリズム基底方向及びプリズム度数リズムの微調整を効率的に行って、プリズム検査の検査時間を短縮することができる。
【0143】
また、上記実施の形態では、被検眼Eの前眼部画像E′を取得する画像取得部として、観察系31の撮像素子31gを兼用しているが、これに限定されるものではない。他の異なる実施形態として、画像取得部を、被検眼Eの前眼部を、測定光学系21の撮像素子31gとは別個に設けた撮影部(カメラ)で、測定光学系21とは異なる方向から前眼部を撮影してもよい。
【0144】
具体的には、測定光学系21と交差する方向(光軸の上下左右いずれでもよい)に1台のカメラ(撮像部)を配置する。このカメラで斜め方向から前眼部を撮影して得られた前眼部画像E′に対して台形補正等の画像処理を施し、瞳孔中心及び角膜反射を検出する。
【0145】
また、このようなカメラが1台に限定されることはなく、測定光学系21の光軸を挟んで前後又は上下に、2台又は3台以上のカメラ(撮像部、ステレオカメラ)を設けた構成としてもよい。ステレオカメラは、眼科装置10に新たに設けてもよいし、ステレオカメラを備えた眼科装置10であれば、そのステレオカメラを撮像部として兼用してもよい。
【0146】
このようなステレオカメラで取得した複数の前眼部画像E′から、部分画像を抽出し、これらを合成し、必要に応じて台形補正等の画像処理を施して、一つの前眼部画像E′を生成する。このようにして合成により生成した前眼部画像E′を用いることで、瞳孔中心や角膜反射の位置を、より高精度に検出することができる。
【0147】
以上のように、1台又は2台以上のカメラで前眼部画像E′を撮影する構成では、測定光学系21の撮像素子31gが眼底と共役の位置にある場合などであっても、カメラにより前眼部画像E′を取得することができる。また、カメラによって撮影した前眼部画像E′を表示部30に表示することで、検者が被検眼Eの状態を常時確認しつつアライメントや測定等を実行することができ、エラーの回避や処理時間の短縮化を図ることができる。
【符号の説明】
【0148】
10 眼科装置 21 測定光学系 24 X方向回旋駆動部(回旋駆動部)
25 Y方向回旋駆動部(回旋駆動部) 26c 瞳孔中心検出部
26d 角膜反射位置検出部 26e 回旋角度算出部
26f 測定ヘッド制御部(駆動制御部) 30 表示部
31g 撮像素子(画像取得部) 32 視標投影系
Br 角膜反射 E 被検眼 EL 左被検眼 ER 右被検眼
PC 瞳孔中心 E′ 前眼部画像 O 眼球回旋点
VX 視軸 v 眼球回旋軸 h 眼球回旋軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15