(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】強化された抗炎症有効性を有する皮膚局所用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/185 20060101AFI20230727BHJP
A61K 36/899 20060101ALI20230727BHJP
A61K 31/164 20060101ALI20230727BHJP
A61K 31/4166 20060101ALI20230727BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20230727BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20230727BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230727BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230727BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230727BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20230727BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20230727BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20230727BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230727BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230727BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20230727BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230727BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20230727BHJP
A61K 135/00 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
A61K36/185
A61K36/899
A61K31/164
A61K31/4166
A61K31/045
A61K31/704
A61P29/00
A61P17/00
A61P43/00 121
A61K8/9789
A61K8/9794
A61K8/42
A61K8/49
A61K8/34
A61K8/60
A61Q19/00
A61K131:00
A61K135:00
(21)【出願番号】P 2022506257
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(86)【国際出願番号】 CN2020102862
(87)【国際公開番号】W WO2021017910
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】201910694270.X
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511203248
【氏名又は名称】浙江養生堂天然薬物研究所有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】魏 双 萍
(72)【発明者】
【氏名】王 莎 莎
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-291012(JP,A)
【文献】特開2006-131546(JP,A)
【文献】特開2008-074796(JP,A)
【文献】特表2019-519549(JP,A)
【文献】特表2019-520406(JP,A)
【文献】特開2007-320921(JP,A)
【文献】寺沢 実,おいしい水・天然100%樹液,食品工業,1995年,第39巻, 第2号,p.7-8
【文献】シムライズ株式会社,カラスムギ成分アベナンスラミドの化粧品への応用「DRAGO-CALM」,FRAGRANCE JOURNAL,2004年,第32巻, 第12号,p.107-109
【文献】末木 一夫, 湯沢 正彦,化粧品におけるビタミンの効力,FRAGRANCE JOURNAL,1989年,第17巻, 第3号,p.96-100
【文献】5.0.8 α-ビサボロール,新しい化粧品素材の効能・効果・作用(下),株式会社シーエムシー,1998年,p.490-493
【文献】香栄興業株式会社,保湿原料「北海道産 シラカバ樹液」,FRAGRANCE JOURNAL,2009年,第37巻,p.121-122
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A61K 31/00-31/80
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗炎症有効性を有する皮膚局所用組成物であって、(A
)1.2~
8倍の濃縮度を有する濃縮カバノキ樹液、ならびに(B)カラスムギ(エンバク)穀粒抽出物、パンテノール、アラントイン、ビサボロールおよびグリチルリチン酸二カリウムからなる群から選択される1つまたは複数の活性物質を含
み、
前記皮膚局所用組成物がさらに添加される水を一切含まない、皮膚局所用組成物。
【請求項2】
前記濃縮カバノキ樹液が、1.2~4倍の濃縮度を有する、請求項1に記載の皮膚局所用組成物。
【請求項3】
前記濃縮カバノキ樹液が、1.2~2倍の濃縮度を有する、請求項2に記載の皮膚局所用組成物。
【請求項4】
前記構成成分(A)濃縮カバノキ樹液の含有量が、前記皮膚局所用組成物の総重量に対して、18~98
%である、請求項
1から3のいずれか1項に記載の皮膚局所用組成物。
【請求項5】
前記構成成分(B)の含有量が、前記皮膚局所用組成物の総重量に対して、0.01~10
%である、請求項
1から3のいずれか1項に記載の皮膚局所用組成物。
【請求項6】
前記皮膚局所用組成物が医薬組成物または化粧用組成物である、請求項
1から3のいずれか1項に記載の皮膚局所用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化された抗炎症有効性を有する皮膚局所用組成物であって、(A)約1.05~8倍、好ましくは約1.1~4倍、より好ましくは約1.2~2倍の濃縮度を有する濃縮カバノキ樹液、ならびに(B)カラスムギ(エンバク(Avena sativa))穀粒抽出物、パンテノール、アラントイン、ビサボロールおよびグリチルリチン酸二カリウムからなる群から選択される1つまたは複数の活性物質を含む、皮膚局所用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
社会経済学的なレベルが変化し、化粧品の種類および成分がより複雑なものとなるにつれて、敏感肌の可能性が現れ、刺激を受けることが増え、皮膚の健康および美的基準への人々の意識の改善とともに、敏感肌への注目が徐々に高まってきた。化粧品産業は敏感肌のための製品をますます重視し、敏感肌の様々な理由および反応のために、活性な抗アレルギー成分を開発してきた。既存の市場調査によると、一部の化粧品ブランドを除き、ほぼすべての化粧品ブランドが、一定数かつ異なる種類の敏感肌のための製品を発売している。海外のブランド、例えばAvene、Shiseidoおよび他の周知のブランドは、広範な製品を提供する。国内ブランドのHerboristは、近年の新たな化粧品ブランド、例えば純粋な植物機能性化粧品、例えばYuzeおよびWinonaの出現と相まって、「ハーブ医薬で皮膚に栄養を与える」という差別化されたブランドイメージを有する点でも独特である。これらの「鎮静」化粧品では、抗アレルギーおよび抗刺激効果を有するいくつかの植物抽出物、例えばスベリヒユ、カモミール、茶ポリフェノールおよびシベナガムラサキ油が、様々な程度で添加される。これらの成分は、抗アレルギーおよび抗外部刺激性能を有し、皮膚アレルギーを和らげ、皮膚に天然の保護バリアをもたらし、損傷した皮膚を有効に修復し、細胞タンパク質の生化学合成および細胞再生を促し、皮膚免疫系を再構築することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
カバノキは、カバノキ科の落葉樹であり、現在世界中に約100種が存在し、主に北温帯地域および冷温帯に分布する。これらのうち、約29種が中国に存在し、主に北東、北西および南西に分布する。これは、土壌侵食の防止、環境の改善ならびに風および砂の防止において重要な役割を果たす。カバノキの木は、主に、人の干渉がほぼなく、産業汚染がない、離れた山岳地域で成長する。カバノキ樹液(カバノキ液汁としても周知)は、切断されたカバノキの木皮からの、またはドリルで穴を開けられた幹からの新鮮な液汁である。カバノキ樹液は、無色または淡黄色であり、沈殿物も不純物も有さず、わずかなカバノキの芳香を有する。カバノキ樹液は、多数の化合物、例えば糖、アミノ酸、ビタミン、ビオチン、サイトカイニン、微量無機元素、芳香油、ベツリンおよびサポニンを含有し、良好な保湿、抗炎症、抗しわ、美白および他のスキンケアの有効性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、本発明は、強化された抗炎症有効性を有する皮膚局所用組成物における(A)濃縮カバノキ樹液と(B)カラスムギ(エンバク)穀粒抽出物、パンテノール、アラントイン、ビサボロールおよびグリチルリチン酸二カリウムらなる群から選択される1つまたは複数の活性物質との組合せの使用であって、濃縮カバノキ樹液が約1.05~8倍、好ましくは約1.1~4倍、より好ましくは約1.2~2倍の濃縮度を有する、使用に関する。
【0005】
別の態様では、本発明は、強化された抗炎症有効性を有する皮膚局所用組成物であって、(A)約1.05~8倍、好ましくは約1.1~4倍、より好ましくは約1.2~2倍の濃縮度を有する濃縮カバノキ樹液、ならびに(B)カラスムギ(エンバク)穀粒抽出物、パンテノール、アラントイン、ビサボロールおよびグリチルリチン酸二カリウムからなる群から選択される1つまたは複数の活性物質を含む、皮膚局所用組成物に関する。
【0006】
本発明に関与するカバノキ樹液は、ベツラ・アルバ(Betala alba)、ベツラ・プベセンス(Betula pubescens)、ベツラ・ペンドラ(Betula Pendula)およびベツラ・プラチフィラ(Betula platyphylla)の4つの変種を含む、カバノキ属カバノキ科(Betula Betulaceae)から得られる。カバノキ樹液は、雪が溶け始める時期から木が葉を出す時期までの、人工的な穿孔およびカバノキの木の幹の基部からの収集により得られる、無色透明であり、沈殿剤も不純物も有しない栄養に富む液汁である。カバノキ樹液は市販されており、そのまま使用され(この場合、カバノキ樹液原液(original fluid)と呼ばれる)、例えば、Daxinganling Chaoyue Wild Berry Development Co.,Ltd.から購入することができる。
【0007】
本発明による濃縮カバノキ樹液は、上述の市販のカバノキ樹液原液製品を濃縮することにより得られる。濃縮方法は当該技術分野において公知であり、例えば加熱濃縮、低温および真空濃縮、ならびに膜濃縮である。本発明では、濃縮は、好ましくは低温凍結濃縮または膜濃縮法により行われる。例えば、市販のカバノキ樹液原液は、異なる濃縮度を有する濃縮カバノキ樹液を得るための低温および真空濃縮法のために、低温乾燥デバイスに導入され、約-40~-70℃に冷却され、約0.1~30Paまで真空にされる。
【0008】
さらに、本発明者らは、濃縮カバノキ樹液の抗炎症有効性は、その濃縮度と単純な直線関係になく、濃縮度の増大に伴い、初めは増大するがその後に低減することも発見した。したがって、カバノキ樹液の濃縮度を調整することが重要である。本発明では、カバノキ樹液の濃縮度は、約1.05~8倍、好ましくは約1.1~4倍、より好ましくは約1.2~2倍に調整される。
【0009】
意外なことに、本発明者らは、濃縮カバノキ樹液、カラスムギ(エンバク)穀粒抽出物、パンテノール、アラントイン、ビサボロールまたはグリチルリチン酸二カリウム単独の使用と比較して、濃縮カバノキ樹液とカラスムギ(エンバク)穀粒抽出物、パンテノール、アラントイン、ビサボロールおよび/またはグリチルリチン酸二カリウムの組合せが、これらの付加効果よりもはるかに高い有意により良好な抗炎症有効性を有し、これらの間に相乗効果があることを示すことを発見した。
【0010】
構成成分(A)の濃縮カバノキ樹液の含有量は、皮膚局所用組成物の総重量に対して、約18~98%、好ましくは約20~95%、より好ましくは約22~90%、最も好ましくは約30~90%である。
【0011】
構成成分(B)カラスムギ(エンバク)穀粒抽出物、パンテノール、アラントイン、ビサボロールまたはグリチルリチン酸二カリウムは、すべて当該技術分野において公知であり、市販されている。
【0012】
構成成分(B)の含有量は、皮膚局所用組成物の総重量に対して、約0.01~10%、好ましくは0.1~6%、より好ましくは0.5~5%である。
【0013】
皮膚局所用組成物は、医薬組成物または化粧用組成物を含む。
皮膚局所用組成物は、さらに添加される水を一切含まないが、構成成分の各々に本質的に含有される水分を除外しない。
【0014】
好ましい一実施形態では、皮膚局所用組成物は、キレート化剤、例えばEDTA塩、リン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムおよびグルコン酸を含まない。
【0015】
構成成分(A)および(B)に加えて、皮膚局所用組成物は、場合により、(C)限定されるものではないが、ビヒクル、活性成分および賦形剤等を含む、皮膚局所用組成物に一般的に使用される成分を含んでもよい。構成成分(C)は、当該技術分野において公知である。当業者は、必要に応じて、その種類および量を選択することができる。例えば、構成成分(C)の総含有量は、通常、皮膚局所用組成物の総重量に対して約2~80%である。
【0016】
ビヒクルには、例えば希釈剤、分散剤または担体等が挙げられる。例には、限定されるものではないが、エタノール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール等が挙げられる。皮膚局所用組成物中のビヒクルの含有量は当該技術分野において公知であり、例えばこれは、典型的に構成成分(C)の総重量の約0.5~20%である。
【0017】
活性成分には、皮膚軟化剤、保湿剤、抗炎症活性成分等が挙げられる。
皮膚軟化剤の例には、限定されるものではないが、オリーブ油、マカデミアナッツ油、スイートアーモンド油、ブドウ種子油、アボカド油、トウモロコシ油、ゴマ油、大豆油、ピーナッツ油、メドウフォーム種子油、ベニバナ種子油、イヌバラ(rosa canina)果実油、アルガンノキ(argania spinosa)核油、ホホバ(simmondsia chinensis)種子油、ヒマワリ種子油、オオミテングヤシ(mauritia flexuosa)果実油、スクアラン、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、硬化ポリイソブチレン、イソセタン、イソドデカン、炭酸ジエチルヘキシル、炭酸ジオクチル、イソプロピルラウロイルサルコシネート、イソノナン酸イソノニル、硬化ポリデセン、トリエチルヘキサノイン、エチルヘキサン酸セチル、ビス-ジエトキシジグリコールシクロヘキサン1,4-ジカルボキシレート、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、エルカ酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデカノール、オクチルドデカノール、ポリジメチルシロキサン、オクチルポリメチルシロキサン、セチルジメチコン、シクロペンタジメチルシロキサン等の1つまたは複数が挙げられる。固形の皮膚軟化剤の例には、限定されるものではないが、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール、ベヘニルアルコール、スクアリルアルコール、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミツロウ、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ラノリン、オゾケライト、ホホバ種子ワックス、パラフィンワックス、微結晶ワックス、硬化米糠ワックス、硬化ココグリセリド、グリセリルベヘネート/エイコサジオエート、ミリスチルミリステート、ビス-ジグリセリルポリアシルアジペート-2、シアーバターノキ(butyrospermum parkii)(シアバター)およびアストロカリウム・ムルムル種子バターの1つまたは複数が挙げられる。皮膚局所用組成物中の皮膚軟化剤の含有量は当該技術分野において公知であり、例えばこれは、典型的に構成成分(C)の総重量に対して1~50%である。
【0018】
保水剤の例には、限定されるものではないが、グリセリン、ジグリセリン、ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、ポリエチレングリコール-8、ポリエチレングリコール-32、メチルグルセス-10、メチルグルセス-20、PEG/PPG-17/6コポリマー、グリセレス-7、グリセレス-26、グリセリルグルコシド、PPG-10メチルグルコースエーテル、PPG-20メチルグルコースエーテル、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセロール、スクロース、トレハロース、ラムノース、マンノース、ラフィノース、ベタイン、エリスリトール、キシリトール、尿素、グリセレス-5ラクテート、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム、ポリグルタミン酸ナトリウム、加水分解スクレロチウムガム、プルラン、トレメラム(tremellam)および、タマリンド種子多糖体、1,2-ヘキサンジオール、天然保湿剤、セラミド2、セラミド3、コレステロール、リン脂質等の1つまたは複数が挙げられる。皮膚局所用組成物中の保水剤の含有量は当該技術分野において公知であり、例えばこれは、典型的に構成成分(C)の総重量の約1~30%である。
【0019】
抗炎症活性成分の例には、限定されるものではないが、スベリヒユ(PORTULACA OLERACEA)抽出物、生物学的シュガーガム-1(biological sugar gum-1)、β-グルカン、フルクタン、コガネバナ(SCUTELLARIA BAICALENSIS)根抽出物、セイヨウトチノキ(AESCULUS HIPPOCASTANUM)抽出物、4-tert-ブチルシクロヘキサノール、硬化レシチン、スペインカンゾウ(GLYCYRRHIZA GLABRA)抽出物、加水分解ロイヤルゼリータンパク質、オリザノール、フィトスフィンゴシン、ケルセチン、ショウガ根抽出物、ローズマリー葉抽出物等の1つまたは複数が挙げられる。皮膚局所用組成物中の抗炎症活性成分の含有量は当該技術分野において公知であり、例えばこれは、通常構成成分(C)の総重量の約0.01~10%である。
【0020】
賦形剤には、例えば乳化剤、増粘剤、保存剤、香料等が挙げられる。
乳化剤の例には、これらに限定されるものではないが、オリーブ油脂肪酸セテアリル、オリーブ油脂肪酸ソルビタン、ポリソルベート-60、ポリソルベート-80、セスキステアリン酸メチルグルコース、セスキステアリン酸PEG-20メチルグルコース、PEG-40硬化ヒマシ油、PPG-26-ブテス-26、ステアリン酸PEG-4ポリグリセリル-2、PEG-60硬化ヒマシ油、ステアレス-2、ステアレス-21、PPG-13-デシルテトラデセス-24、セテアリルグルコシド、ステアリン酸PEG-100、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリルSE、ココグルコシド、セテアレス-25、ステアリン酸PEG-40、ジステアリン酸ポリグリセリル-3メチルグルコース、クエン酸ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ジオレイン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-10、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-6、ミリスチン酸ポリグリセリル-6、ステアリン酸スクロースおよびポリステアリン酸スクロースの1つまたは複数が挙げられる。皮膚局所用組成物中の乳化剤の含有量は当該技術分野において公知であり、例えばこれは、典型的に構成成分(C)の総重量の0.5~10%である。
【0021】
増粘剤の例には、限定されるものではないが、高分子ポリマー、例えばカルボマー、アクリレートおよびその誘導体、キサンタンガム、アラビアガム、ポリエチレングリコール-14M、ポリエチレングリコール-90M、スクシニル多糖、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースの1つまたは複数が挙げられる。皮膚局所用組成物中の増粘剤の含有量は当該技術分野において公知であり、例えばこれは、典型的に構成成分(C)の総重量の0.1~10%である。
【0022】
保存剤の例には、限定されるものではないが、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾリジニル尿素、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、クロロフェネシン(chlorophenesin)、デヒドロ酢酸ナトリウム、カプリルヒドロキサム酸、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、p-ヒドロキシアセトフェノン、カプリリルグリコール、カプリル酸グリセリル、ウンデシレン酸グリセリル、カプリル酸ソルビタン、エチルヘキシルグリセロール、シャクヤク根抽出物等の1つまたは複数が挙げられる。皮膚局所用組成物中の保存剤の含有量は当該技術分野において公知であり、例えばこれは、典型的に構成成分(C)の総重量の0.01~2%である。
【0023】
本発明による強化された抗炎症有効性を有する皮膚局所用組成物は、当該技術分野において公知の好適な方法のいずれかにより調製することができる。例えば、これは、化粧品の分野において一般的に使用されるデバイス、例えば溶解タンク、乳化ポット、分散機、移送ポンプ等を使用して調製することができる。調製中、水溶性物質を水相溶解ケトルに装入し、油溶性物質を油相溶解ケトルに装入し、2つのケトルをそれぞれ約80℃に加熱し、容易に凝集する原料については、分散機を使用して事前に分散させることができる。溶解が完了したら、油相および水相を乳化ポットに移し、約5~15分均質化および乳化する。乳化が完了したら、バルクを室温に冷却し、場合により芳香剤、保存剤等を添加し、必要に応じて生成物のpHを調整する。
【0024】
上記の調製方法は、剤形の要件に応じて変更または調整することができる。本発明の皮膚局所用組成物は、必要に応じて、様々な剤形、例えば軟膏、クリーム、エマルション、ローション、エッセンス、スプレー、ゲルに調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を、実施例を参照して、以下にさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例および比較例は、本発明を具体的に例示するためのみに使用されることが理解されるべきであり、どのような形であっても本発明の添付の特許請求の範囲を限定するものと理解されるべきではない。
実施例1:刺激性接触皮膚炎に対する異なる物質系の効果
この実施例では、刺激性接触皮膚炎マウスモデルをベースとして、カバノキ樹液原液、濃縮カバノキ樹液、カラスムギ(エンバク)穀粒抽出物および/またはパンテノールの抗炎症有効性を評価した。
【0026】
1.実験動物:ICRマウス、雄
2.実験材料:10%ドデシル硫酸ナトリウム溶液(SDS)、脱毛クリーム、カバノキ樹液、カラスムギ(エンバク)穀粒抽出物、パンテノール
3.実験方法:ICRマウスを、それらの体重により各群中12匹のマウスで無作為に群分けし、正常群、モデル群、処方群へと分けた。モデリングの1日前に、各群中のマウスを脱毛クリームを用いて処置して、マウスの腹部の約2×2cmの面積の毛を除去した。モデル群および処方群について:モデリングの日、50μLの10%ラウリル硫酸ナトリウム溶液を、ピペットを使用して吸引し、マウス腹部の露出した皮膚に5日連続で均一に塗布した。各処方群の溶液を、同じエアロゾル瓶を用いて噴霧し、各マウスに各回に2回、1日3回、2日連続で均一に噴霧した。正常群では、同じ方法によりマウスの毛を腹部から除去し、対照とするために7日給餌した。実験の7日目に、各群中の実験マウスの皮膚の状態を観察し、マウスの血清を採取して、炎症因子IL-1αの含有量を決定した。
【0027】
処方は以下のとおりであった:
【0028】
【0029】
1.2倍、4倍および9倍濃縮のカバノキ樹液を、カバノキ樹液原液を濃縮することにより得た。濃縮方法は以下のとおりであった:Daxinganling Chaoyue Wild Berry Development Co.,Ltd.から購入した新鮮なカバノキ(ベツラ・アルバ)樹液原液を、低温乾燥デバイスに供給し、-65℃に冷却し、0.1Paに真空化し、それぞれ1.2倍、4倍および9倍に濃縮した。
【0030】
4.異なる処方系を用いた処置の後、マウス血清の炎症因子IL-α含有量を以下の表に示した:
【0031】
【0032】
上記の表の結果は、カラスムギ(エンバク)穀粒抽出物またはパンテノールとカバノキ樹液との組合せが、刺激性接触皮膚炎を有するマウスの血清中のIL-αの発現を有意に阻害することを示した。さらに、1.2倍濃縮カバノキ樹液との組合せは、より良好な有効性を示した。
実施例2:アレルギー性接触皮膚炎に対する異なる化粧用組成物系の効果
1.実験動物:ICRマウス、雄
2.実験材料:1%DNFBアセトンオリーブ油溶液(4:1)、脱毛クリーム、カバノキ樹液、アラントイン、ビサボロール
3.実験方法:ICRマウスを、それらの体重により各群中12匹のマウスで無作為に群分けし、正常群、モデル群、処方群へと分けた。モデリングの1日前に、各群中のマウスを、脱毛クリームを用いて処置して、マウスの腹部の約2×2cmの面積の毛を除去した。モデル群および処方群について:モデリングの日、1%DNFBを含有する100μLのアセトンオリーブ油溶液を吸引し、マウス腹部の露出した皮膚に均一に塗布して感作し、マウスにおけるアレルギー性接触皮膚炎のモデルの確立を促した。2日連続で塗布し、5日目に、20μLの1%DNFBアセトンオリーブ油溶液を、刺激のためにマウスの内耳および外耳に均一に塗布した。正常群のマウスの腹部および耳に、対照とするためにアセトンおよびオリーブ油溶液(4:1)を均一に塗布した。
【0033】
投与を刺激の12時間後に開始し、各処方群に、同じエアロゾル瓶を用いて、実験マウスの内耳および外耳に、各耳の内耳および外耳に1回、1日3回、2日連続で均一に噴霧した。モデル群に、蒸留水を2日連続で1日3回噴霧し、内耳および外耳を綿棒で約5秒繰り返しこすった。
【0034】
処方は以下のとおりであった:
【0035】
【0036】
4.評価の指標:
耳の厚さの指標:マウスの耳の厚さを、刺激の12時間および48時間後に測定し、耳の平均値をとった。
【0037】
耳の重量の指標:投与2日後、各実験マウスの左耳のディスクを、パンチを用いて採取し、秤量した。
【0038】
炎症指標の決定:投与2日後、マウス血清を採取し、マウス耳組織中の炎症因子IFN-γ、IL-4およびトリプターゼ含有量を、ELISAキットを用いて検出し、IFN-γ/IL-4を算出した。
【0039】
5.実験結果
【0040】
【0041】
上記の結果は、カバノキ樹液とアラントインまたはビサボロールとの組合せが、有意に炎症を阻害し、血清中のIFN-γ/IL-4の比の均衡を保つことを示した。さらに、1.2倍濃縮カバノキ樹液との組合せは、より良好な有効性を示した。
実施例3:マスト細胞の脱顆粒化に対するカバノキ樹液の効果
この実施例では、カバノキ樹液およびグリチルリチン酸二カリウムの抗炎症有効性を実証するために、マスト細胞の脱顆粒化に対するカバノキ樹液とグリチルリチン酸二カリウムとの組合せの効果を、ゼブラフィッシュ若齢アレルギーモデルを使用することにより、試験および比較した。
【0042】
実験方法は以下のとおりであった。
1.実験動物:ゼブラフィッシュ。
【0043】
2.実験ステップは以下のとおりであった:AB野生型ゼブラフィッシュ胚を収集し、28.5℃のインキュベーター中でE3緩衝液とともに5dpf(受精後の日数)まで培養し、緩衝液を毎日交換し、5dpfのゼブラフィッシュを、48ウェル細胞培養プレートに、ウェルあたり10尾の群、群あたり4つの複製ウェルで、以下のように群分けして無作為に移した:
モデル群:RO水+15μg/ml SP
陽性群:ケトチフェン+15μg/ml SP
試験される試料群:
【0044】
【0045】
SPを有する上記の脱顆粒化群と対応して、SPを有しない陰性対照群を、群あたり4つの複製ウェルで確立し、SPを導入した脱顆粒化群およびSPを有しない陰性対照群と対応して、バックグラウンド対照群(ゼブラフィッシュ幼生なし)を、群あたり2つの複製ウェルで確立した。各群のウェルに残存するE3緩衝液を吸収し、各群に対応する250μlの溶液を添加し、暗所で28.5℃のインキュベーター中で60分反応させた。60分後、各群の200μlの上清を96ウェル細胞培養プレートに入れ、酵素反応基質BAPNAをそれぞれ添加し、400μg/mlの濃度を達成した。96ウェルプレートを暗所で覆い、28.5℃のインキュベーター中に入れ、2時間反応させた。全部のプレートを2時間後に405nmでの光吸収値について測定し、値は、ゼブラフィッシュのマスト細胞中のトリプターゼ放出を反映する。
【0046】
ゼブラフィッシュ若齢マスト細胞保護モデルの実験結果を、以下の表に記録した。
【0047】
【0048】
上記の表の結果は、カバノキ樹液とグリチルリチン酸二カリウムとの組合せが、マスト細胞の脱顆粒化を有意に阻害することを示した。さらに、1.2倍濃縮カバノキ樹液との組合せは、より良好な有効性を示した。
実施例4:抗炎症顔用クリーム組成物
抗炎症顔用クリーム組成物の処方を以下のとおりに示した:
【0049】
【0050】
抗炎症顔用クリーム組成物を、以下のとおりに調製した:
1.原料4を、原料11とともに均一に分散させた;
2.原料7を加熱し、原料10により溶解した;
3.原料1および25を水相ポットに装入し、原料12とともに撹拌しながら拡散させ、原料12が完全に溶解した後に原料2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および25を添加し、最大80℃に加熱した;
4.原料13、14、15、16、17、18、19、20、21、22を油相ポットに装入し、80℃に加熱した;
5.水相ポット中の原料を乳化ポットにポンプ注入し、高速で5分均質化した;
6.油相ポット中の原料を乳化ポットにポンプ注入し、高速で5分均質化し、10分保持した;
7.撹拌しながら50℃に冷却し、原料23および原料24を装入し、ゆっくりと3分均質化した;
8.撹拌しながら40℃に冷却した;
9.生成物を、排出する前に試験した。
【0051】
敏感肌および顔の炎症を有する39名の対象を選択し、3群に分けた:第1群は、顔用クリーム組成物で連続的に処置した:第2群は、カバノキ樹液を有しない対照製品A(処方は上記の表において記載されているものとちょうど同じであるが、すべてのカバノキ樹液を水と置き換えた)で処置した;第3群は対照製品B(処方は上記の表において記載されているものとちょうど同じであるが、すべてのアラントイン、パンテノールおよびカラスムギ(エンバク)穀粒抽出物を水と置き換えた)で処置した。
【0052】
4週後の結果は、2つの対照製品と比較して、顔用クリーム組成物が有意に患者の顔の炎症反応を改善し、皮膚安定性を強化することを示した。
実施例5:抗炎症エキス組成物
抗炎症エキス組成物の処方は、以下のとおりであった:
【0053】
【0054】
抗炎症エキス組成物を、以下のとおりに調製した:
1.原料3を、原料11とともに均一に分散させた;
2.原料1を乳化ポットに装入し、原料14および15を撹拌しながら拡散させ、原料14および15が完全に膨張した後に原料2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12および13を添加し、撹拌しながら最大80℃に加熱し、高速で5分均質化し、10分保持した;
3.撹拌しながら50℃に冷却し、原料16、17および18を添加し、高速で5分均質化した;
4.撹拌しながら50℃に冷却し、原料19および20を添加した;
5.撹拌しながら40℃に冷却した;
6.生成物を、排出する前に試験した。
【0055】
この実施例では、敏感肌および顔の炎症を有する39名の対象を選択し、3群に分けた:第1群は、エキス組成物で連続的に処置した:第2群は、カバノキ樹液を有しない対照製品A(処方は上記の表において記載されているものとちょうど同じであるが、すべてのカバノキ樹液を水と置き換えた)で処置した;第3群は対照製品B(処方は上記の表において記載されているものとちょうど同じであるが、すべてのビサボロールおよびカラスムギ(エンバク)穀粒抽出物を水と置き換えた)で処置した;
4週後の結果は、2つの対照製品と比較して、エキス組成物が、有意に患者の顔の炎症反応を改善し、皮膚安定性を強化することを示した。
実施例6:抗炎症ローション組成物
抗炎症ローション組成物の処方は、以下のとおりであった:
【0056】
【0057】
抗炎症ローション組成物を、以下のとおりに調製した:
1.原料4を、原料9とともに均一に分散させた;
2.原料1を乳化ポットに装入し、原料11を撹拌しながら拡散させ、原料11が完全に膨張した後に原料2、3、4、5、6、7、8、9、10、17を添加した。
【0058】
3.撹拌しながら80℃に加熱し、高速で5分均質化し、10分保持した。
4.原料12を添加し、高速で5分均質化し、10分保持した。
【0059】
5.撹拌しながら60℃に冷却し、原料13を添加した。
6.50℃に冷却し、原料14および15を添加し、ゆっくりと3分均質化した。
【0060】
7.撹拌しながら40℃に冷却した;
8.生成物を、排出する前に試験した。
【0061】
この実施例では、敏感肌および顔の炎症を有する39名の対象を選択し、3群に分けた:第1群は、ローション組成物で連続的に処置した:第2群は、カバノキ樹液を有しない対照製品A(処方は上記の表において記載されているものとちょうど同じであるが、すべてのカバノキ樹液を水と置き換えた)で処置した;第3群は対照製品B(処方は上記の表において記載されているものとちょうど同じであるが、すべてのグリチルリチン酸二カリウムおよびアラントインを水と置き換えた)で処置した;
4週後の結果は、2つの対照製品と比較して、ローション組成物が、有意に患者の顔の炎症反応を改善し、皮膚安定性を強化することを示した。
【0062】
上述の実施例の技術的解決法は、本発明の好ましい実施形態であった。いくつかの改善および変更を、本発明の原理から逸脱することなく行うことができ、これらの改善および変更も、本発明の保護範囲内に当てはまると考えられるべきである。