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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】粘度指数向上剤組成物及び潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 161/00 20060101AFI20230727BHJP
   C10M 145/14 20060101ALN20230727BHJP
   C10M 149/06 20060101ALN20230727BHJP
   C10M 129/06 20060101ALN20230727BHJP
   C10M 129/90 20060101ALN20230727BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20230727BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20230727BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20230727BHJP
   C10N 30/18 20060101ALN20230727BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20230727BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20230727BHJP
   C10N 40/06 20060101ALN20230727BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
C10M161/00
C10M145/14
C10M149/06
C10M129/06
C10M129/90
C10N20:04
C10N30:02
C10N20:02
C10N30:18
C10N40:04
C10N40:25
C10N40:06
C10N40:08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022544023
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2021030641
(87)【国際公開番号】W WO2022039266
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2020139030
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】内藤 展洋
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘記
(72)【発明者】
【氏名】吉田 賢佑
(72)【発明者】
【氏名】萩原 宏紀
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/122721(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/101342(WO,A1)
【文献】特開2018-48328(JP,A)
【文献】特開2013-203849(JP,A)
【文献】特表2009-536685(JP,A)
【文献】特開2019-156953(JP,A)
【文献】特開2018-16798(JP,A)
【文献】特開2020-164497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される単量体(a)を必須単量体とする(共)重合体(A)、炭素数18~40の鎖状脂肪族アルコール(B)及び基油を含有する粘度指数向上剤組成物。
【化1】
[Rは水素原子又はメチル基;-X-は-O-又は-NH-で表される基;Rは炭素数2~4のアルキレン基;R及びRはそれぞれ独立に炭素数8~24の直鎖又は分岐アルキル基;pは0~20の整数であり、pが2以上の場合のRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記(共)重合体(A)が、更に炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b)を構成単量体として含む共重合体である請求項1に記載の粘度指数向上剤組成物。
【請求項3】
前記(共)重合体(A)の重量平均分子量が5,000~2,000,000である請求項1又は2に記載の粘度指数向上剤組成物。
【請求項4】
前記(共)重合体(A)と前記鎖状脂肪族アルコール(B)の重量比率(A/B)が10~10,000である請求項1~3のいずれかに記載の粘度指数向上剤組成物。
【請求項5】
前記基油の100℃における動粘度が1~15mm/sであり、かつ、前記基油の粘度指数が90以上である請求項1~4のいずれかに記載の粘度指数向上剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の粘度指数向上剤組成物と、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、油性向上剤、流動点降下剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、抗乳化剤、金属不活性剤及び腐食防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤とを含有してなる潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘度指数向上剤組成物及び潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省燃費性を高める手段として、潤滑油を低粘度化して粘性抵抗を低減することが行われている。しかし、潤滑油を低粘度化すると、油漏れ、焼付きなどの種々の問題が生じる恐れがある。
そこで、省燃費性を改善する手段として、粘度指数向上剤を用いる方法がある。粘度指数が高いと低温での潤滑油の粘性抵抗が低くなり、省燃費性の向上につながる。そこで潤滑油に粘度指数向上剤を添加して粘度の温度依存性を改善する方法が広く行われている。そのような粘度指数向上剤としては、メタクリル酸エステル共重合体(特許文献1~4)、オレフィン共重合体(特許文献5)及びマクロモノマー共重合体(特許文献6)等が知られている。
また、そのように省燃費性向上を目的に潤滑油の低粘度化を進めることによって潤滑油への負荷が高くなってしまう。その結果、キャビテーションなどの発泡が増大し、潤滑不良や機械損失、騒音の増加などといった問題が発生してしまう。それにより、潤滑油の低粘度化による省燃費性向上効果が失われてしまい、環境への負荷も増大することが懸念される。この問題についてはポリシロキサン系の消泡剤(特許文献7)を使用することが知られている。
【0003】
しかし、上記の潤滑油組成物は、粘度指数向上効果が未だ十分でないという問題がある。また、ポリシロキサン系の消泡剤は消泡性が未だ十分でなく、また、ポリシロキサン系の消泡剤はせん断安定性が悪いため、長期での消泡性能の維持が困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2732187号公報
【文献】特許第2941392号公報
【文献】特開平7-62372号公報
【文献】特開2004-307551号公報
【文献】特許第4283120号公報
【文献】特許第5376946号公報
【文献】特許第4220599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、粘度指数向上効果に優れ、消泡性及び消泡性の持続性に優れる潤滑油組成物を得ることができる粘度指数向上剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示される単量体(a)を必須単量体とする(共)重合体(A)、炭素数18~40の鎖状脂肪族アルコール(B)及び基油を含有する粘度指数向上剤組成物;該粘度指数向上剤組成物と、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、油性向上剤、流動点降下剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、抗乳化剤、金属不活性剤及び腐食防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤とを含有してなる潤滑油組成物である。
【0007】
【化1】
[Rは水素原子又はメチル基;-X-は-O-又は-NH-で表される基;Rは炭素数2~4のアルキレン基;R及びRはそれぞれ独立に炭素数8~24の直鎖又は分岐アルキル基;pは0~20の整数であり、pが2以上の場合のRは同一でも異なっていてもよい。]
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、粘度指数向上効果に優れ、消泡性及び消泡性の持続性に優れる潤滑油組成物を得ることができる粘度指数向上剤組成物を提供することができる。
なお、本発明において、消泡性の持続性とは、実用時に長時間運転後も消泡性を維持することができることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の粘度指数向上剤組成物は、下記一般式(1)で示される単量体(a)を必須単量体とする(共)重合体(A)、炭素数18~40の鎖状脂肪族アルコール(B)及び基油を含有する。
【化2】
[Rは水素原子又はメチル基;-X-は-O-又は-NH-で表される基;Rは炭素数2~4のアルキレン基;R及びRはそれぞれ独立に炭素数8~24の直鎖又は分岐アルキル基;pは0~20の整数であり、pが2以上の場合のRは同一でも異なっていてもよい。]
なお、本発明において、「(共)重合体」は「単独重合体及び/又は共重合体」を意味する。
【0010】
本発明において、(共)重合体(A)の必須構成単量体である単量体(a)は上記一般式(1)で表される。
一般式(1)におけるRは、水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのはメチル基である。
一般式(1)における-X-は、-O-又は-NH-で表される基である。
一般式(1)におけるRは炭素数2~4のアルキレン基である。炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基等が挙げられる。これらのうち、粘度指数向上の観点から、好ましいのはエチレン基である。
pはアルキレンオキサイドの付加モル数であり、0~20の整数であり、粘度指数向上効果の観点から、好ましくは0~4の整数、更に好ましくは0~2の整数である。pが2以上の場合のRは同一でも異なっていてもよく、(RO)部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
及びRはそれぞれ独立に炭素数8~24の直鎖又は分岐アルキル基である。炭素数8~24の直鎖又は分岐アルキル基としては、直鎖アルキル基{n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基、n-ヘンエイコシル基、n-ドコシル基、n-トリコシル基及びn-テトラコシル基等}、分岐アルキル基{イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、イソノニル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、2,4,6-トリメチルヘプチル基、2-メチルノニル基、イソデシル基、2-エチルノニル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、2-エチルドデシル基、2-エチルトリデシル基、2-メチルテトラデシル基、イソヘキサデシル基、2-オクチルノニル基、2-ヘキシルウンデシル基、2-エチルペンタデシル基、2-(3-メチルヘキシル)-7-メチル-ノニル基、イソオクタデシル基、1-ヘキシルトリデシル基、2-エチルヘプタデシル基、イソイコシル基、1-オクチルペンタデシル基及び2-デシルテトラデシル基等}等が挙げられる。これらのうち、粘度指数向上効果及びせん断安定性の観点から、炭素数8~20の直鎖又は分岐アルキル基が好ましく、さらに好ましくは炭素数10~18の直鎖又は分岐アルキル基である。
及びRの合計炭素数は、粘度指数向上効果の観点から、16~40が好ましく、さらに好ましくは20~38であり、特に好ましくは22~34である。
及びRの炭素数の組み合わせとしては、粘度指数向上効果の観点から、Rの炭素数=Rの炭素数+2の関係を満たすことが好ましい。
【0011】
単量体(a)として、具体的には、(メタ)アクリル酸2-n-オクチルドデシル、(メタ)アクリル酸2-n-オクチルテトラデシル、(メタ)アクリル酸2-n-デシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸2-n-ドデシルヘキサデシル、(メタ)アクリル酸2-n-テトラデシルオクタデシル及び(メタ)アクリル酸2-n-ヘキサデシルイコシル等が挙げられる。
単量体(a)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体(a)としては、粘度指数向上効果の観点から、(メタ)アクリル酸2-n-オクチルドデシル、(メタ)アクリル酸2-n-デシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸2-n-ドデシルヘキサデシル、(メタ)アクリル酸2-n-テトラデシルオクタデシル及び(メタ)アクリル酸2-n-ヘキサデシルイコシルが好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味する。
【0012】
本発明において、(共)重合体(A)は更に炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b)(以下、単量体(b)ともいう)を構成単量体とする共重合体であることが、粘度指数向上効果の観点から好ましい。
炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル及び(メタ)アクリル酸n-ブチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b)のうち、粘度指数向上効果の観点から、好ましいのは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル及び(メタ)アクリル酸n-ブチルであり、特に好ましいのは(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸n-ブチルである。
単量体(b)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
本発明において、(共)重合体(A)は更に、単量体(a)以外の炭素数8~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)(以下、単量体(c)ともいう)、単量体(a)以外の窒素原子含有単量体(d)、水酸基含有単量体(e)、リン原子含有単量体(f)、芳香環含有ビニル単量体(g)、不飽和基を2つ以上有する単量体(h)、ビニル化合物(i)(以下、単量体(i)ともいう)、エポキシ基含有単量体(j)、ハロゲン元素含有単量体(k)及び不飽和ポリカルボン酸のエステル(l)(以下、単量体(l)ともいう)からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体を構成単量体として含む共重合体であってもよい。
【0014】
炭素数8~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)において、炭素数8~18のアルキル基としては、直鎖アルキル基{n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基及びn-オクタデシル基等}、分岐アルキル基{イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、イソノニル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、2,4,6-トリメチルヘプチル基、2-メチルノニル基、イソデシル基、2-エチルノニル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、2-エチルドデシル基、2-エチルトリデシル基及び2-メチルテトラデシル基等}等が挙げられる。
炭素数8~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)として具体的には、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルウンデシル、(メタ)アクリル酸n-トリデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルドデシル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルトリデシル、(メタ)アクリル酸n-ペンタデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルテトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプタデシル及び(メタ)アクリル酸n-オクタデシル等が挙げられる。
単量体(c)のうち、粘度指数向上効果の観点から、炭素数10~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、さらに好ましくは10~18の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、特に好ましくは炭素数10~16の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
単量体(c)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
窒素原子含有単量体(d)としては、単量体(a)を除く、以下の単量体(d1)~(d4)が挙げられる。
アミド基含有単量体(d1):
(メタ)アクリルアミド、モノアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が1つ結合したもの;例えばN-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN-n-又はイソブチル(メタ)アクリルアミド等]、N-(N’-モノアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-(N’-メチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’-エチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’-イソプロピルアミノ-n-ブチル)(メタ)アクリルアミド及びN-(N’-n-又はイソブチルアミノ-n-ブチル)(メタ)アクリルアミド等]、ジアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したもの;例えばN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等]、N-(N’,N’-ジアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[アミノアルキル基の窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びN-(N’,N’-ジ-n-ブチルアミノブチル)(メタ)アクリルアミド等];N-ビニルカルボン酸アミド[N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルプロピオン酸アミド及びN-ビニルヒドロキシアセトアミド等]等が挙げられる。
【0016】
ニトロ基含有単量体(d2):
4-ニトロスチレン等が挙げられる。
【0017】
1~3級アミノ基含有単量体(d3):
1級アミノ基含有単量体{炭素数3~6のアルケニルアミン[(メタ)アリルアミン及びクロチルアミン等]、アミノアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレート等]};2級アミノ基含有単量体{モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1~6のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、炭素数6~12のジアルケニルアミン[ジ(メタ)アリルアミン等]};3級アミノ基含有単量体{ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1~6のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、窒素原子を有する脂環式(メタ)アクリレート[モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]、芳香族系単量体[N-(N’,N’-ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノスチレン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、N-ビニルピロール、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルチオピロリドン等]}、及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は低級アルキル(炭素数1~8)モノカルボン酸(酢酸及びプロピオン酸等)塩等が挙げられる。
【0018】
ニトリル基含有単量体(d4):
(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0019】
窒素原子含有単量体(d)のうち好ましいのは、アミド基含有単量体(d1)及び1~3級アミノ基含有単量体(d3)であり、更に好ましいのは、N-(N’,N’-ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートである。
単量体(d)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
水酸基含有単量体(e)
水酸基含有芳香族単量体(p-ヒドロキシスチレン等)、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル(ヒドロキシアルキル基の炭素数2~6)[(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-又は3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシイソブチル等]、モノ-又はビス-ヒドロキシアルキル(炭素数1~4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N-ビス(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等]、ビニルアルコール、炭素数3~12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1-オクテノール及び1-ウンデセノール等]、炭素数4~12のアルケンモノオール又はアルケンジオール[1-ブテン-3-オール、2-ブテン-1-オール及び2-ブテン-1,4-ジオール等]、ヒドロキシアルキル(炭素数1~6)アルケニル(炭素数3~10)エーテル(2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等)、多価(3~8価)アルコール(グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、糖類及び蔗糖等)のアルケニル(炭素数3~10)エーテル又は(メタ)アクリレート[蔗糖(メタ)アリルエーテル等]等;
ポリオキシアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2~4、重合度2~50)、ポリオキシアルキレンポリオール[上記3~8価のアルコールのポリオキシアルキレンエーテル(アルキレン基の炭素数2~4、重合度2~100)等]、ポリオキシアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンポリオールのアルキル(炭素数1~4)エーテルのモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(Mn:100~300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn:130~500)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(Mn:110~310)(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物(2~30モル)(メタ)アクリレート及びモノ(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン(Mn:150~230)ソルビタン等]等;が挙げられる。
【0021】
単量体(e)のうち、粘度指数向上効果の観点から、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル(ヒドロキシアルキル基の炭素数2~6)が好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル(ヒドロキシアルキル基の炭素数2~4)である。
特に(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましい。
単量体(e)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
リン原子含有単量体(f)としては、以下の単量体(f1)~(f2)が挙げられる。
【0023】
リン酸エステル基含有単量体(f1):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)リン酸エステル[(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート及び(メタ)アクリロイロキシイソプロピルホスフェート]及びリン酸アルケニルエステル[リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸プロペニル、リン酸イソプロペニル、リン酸ブテニル、リン酸ペンテニル、リン酸オクテニル、リン酸デセニル及びリン酸ドデセニル等]等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイロキシ」は、アクリロイロキシ又はメタクリロイロキシを意味する。
【0024】
ホスホノ基含有単量体(f2):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)ホスホン酸[(メタ)アクリロイロキシエチルホスホン酸等]及びアルケニル(炭素数2~12)ホスホン酸[ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸及びオクテニルホスホン酸等]等が挙げられる。
【0025】
単量体(f)のうち好ましいのは(f1)であり、更に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)リン酸エステルであり、特に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェートである。
単量体(f)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
芳香環含有ビニル単量体(g):
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、4-エチルスチレン、4-イソプロピルスチレン、4-ブチルスチレン、4-フェニルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ベンジルスチレン、4-クロチルベンゼン、インデン及び2-ビニルナフタレン等が挙げられる。
単量体(g)のうち、粘度指数向上効果の観点から、好ましいのはスチレン及びα-メチルスチレンであり、更に好ましいのはスチレンである。
単量体(g)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
不飽和基を2つ以上有する単量体(h)としては、例えば、ジビニルベンゼン、炭素数4~12のアルカジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘプタジエン及び1,7-オクタジエン等)、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン、リモネン、エチレンジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキサイドグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、国際公開WO01/009242号公報に記載の、Mnが500以上の不飽和カルボン酸とグリコールとのエステル及び不飽和アルコールとカルボン酸のエステルなどが挙げられる。
単量体(h)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
ビニル化合物(ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類等)(i):
炭素数2~12の飽和脂肪酸のビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等)、炭素数1~12のアルキル、アリール又はアルコキシアルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビニル-2-メトキシエチルエーテル及びビニル-2-ブトキシエチルエーテル等)及び炭素数1~8のアルキル又はアリールビニルケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトン及びフェニルビニルケトン等)等が挙げられる。
単量体(i)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
エポキシ基含有単量体(j):
グリシジル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
単量体(j)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
ハロゲン元素含有単量体(k):
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル及びハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等が挙げられる。
単量体(k)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
不飽和ポリカルボン酸のエステル(l):
不飽和ポリカルボン酸のアルキル、シクロアルキル又はアラルキルエステル[不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸及びイタコン酸等)の炭素数1~8のアルキルジエステル(ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート及びジオクチルマレエート等)]等が挙げられる。
単量体(l)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
(共)重合体(A)の重量平均分子量(以下においてMwと略記する)と数平均分子量(以下においてMnと略記する)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下においてGPCと略記する)により後述する条件で測定する。
(共)重合体(A)のMwは、粘度指数向上効果、低温特性及び潤滑油組成物のせん断安定性の観点から、好ましくは5,000~2,000,000であり、より好ましくは5,000~700,000であり、更に好ましくは10,000~600,000、特に好ましくは15,000~550,000、最も好ましくは18,000~500,000である。
Mwが5,000以上であると粘度指数向上効果、低温特性及び潤滑油組成物のせん断安定性に優れる。また、粘度指数向上剤組成物の潤滑油組成物中への添加量が適度であるため、コスト面でも有利である。Mwが大きくなるとせん断安定性が悪くなる傾向があるところ、2,000,000以下であるとせん断安定性が良好である傾向がある。
【0033】
(共)重合体(A)のMnは、好ましくは2,500以上であり、更に好ましくは5,000以上であり、特に好ましくは7,500以上であり、最も好ましくは15,000以上である。また、好ましくは300,000以下であり、更に好ましくは250,000以下であり、特に好ましくは240,000以下であり、最も好ましくは225,000以下である。
Mnが2,500以上であると粘度温度特性の向上効果や粘度指数向上効果に優れる。また粘度指数向上剤組成物の潤滑油組成物中への添加量が適度であるため、コスト面でも有利である。Mnが300,000以下であるとせん断安定性が良好である傾向がある。
【0034】
<(共)重合体(A)のGPCによるMw、Mnの測定条件>
装置 :「HLC-8320GPC」[東ソー(株)製]
カラム :「TSKgelguardcolumnSuperHZM-M」
[東ソー(株)製]
「TSKgel SuperHZM-M」 3本
[東ソー(株)製]
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10.0μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TS 基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE))
12点(分子量:589、1,050、2,630、9,100、19,500、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,110,000、4,480,000)[東ソー(株)製]
【0035】
(共)重合体(A)は、潤滑油への溶解性の観点から、特定の溶解度パラメーター(以下、SP値と略記する)を有するものが好ましい。
(共)重合体(A)の重量平均に基づいて計算するSP値は、8.0~9.5(cal/cm1/2が好ましく、粘度指数向上効果及び潤滑油組成物への溶解性の観点から、さらに好ましくは8.5~9.5(cal/cm1/2、特に好ましくは8.8~9.4(cal/cm1/2、最も好ましくは8.9~9.3(cal/cm1/2である。
【0036】
なお、本明細書におけるSP値は、Fedors法(Polymer Engineering and Science,February,1974,Vol.14、No.2、147~154頁)の152頁(Table.5)に記載の数値(原子又は官能基の25℃における蒸発熱及びモル体積)を用いて、同153頁の数式(28)により算出される値である。具体的には、Fedors法のパラメータである下記表1に記載のΔe及びΔvの数値から、分子構造内の原子及び原子団の種類に対応した数値を用いて、下記数式に当てはめることで算出することができる。
SP値=(ΣΔe/ΣΔv1/2
【表1】
(共)重合体(A)の重量平均に基づいて計算するSP値は、(共)重合体(A)を構成する各単量体に由来する構成単位(ビニル基が重合反応により単結合となった構造)のSP値を前記の方法で算出し、仕込み時の各構成単量体の重量分率に基づいて相加平均した値を意味する。例えば、単量体がメタクリル酸メチルの場合、メタクリル酸メチルに由来する構成単位は、原子団として、CHが2個、CHが1個、Cが1個、COが1個なので、下記数式により、メタクリル酸メチルに由来する構成単位のSP値は9.933(cal/cm1/2であることが分かる。同様に計算を行うと、メタクリル酸エチルに由来する構成単位のSP値は9.721(cal/cm1/2であることがわかる。
ΣΔe=1125×2+1180+350+4300=8080
ΣΔv=33.5×2+16.1-19.2+18.0=81.9
δ=(8080/81.9)1/2=9.933(cal/cm1/2
共重合体がメタクリル酸メチル50重量%とメタクリル酸エチル50重量%との重合物である場合、共重合体のSP値は、下記数式の通り各単量体に由来する構成単位のSP値の重量分率に基づいて相加平均することにより算出される。
共重合体のSP値=(9.933×50+9.721×50)/100=9.827
(共)重合体(A)の重量平均に基づいて計算するSP値は、使用する単量体、使用する各単量体の重量分率を適宜調整することにより8.0~9.5(cal/cm1/2に調整することができる。
【0037】
(共)重合体(A)を構成する単量体(a)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、(共)重合体(A)の重量に基づいて、好ましくは10~90重量%であり、更に好ましくは15~80重量%、特に好ましくは17.5~70重量%、最も好ましいのは20~60重量%である。
(共)重合体(A)を構成する炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、(共)重合体(A)の重量に基づいて、好ましくは10~90重量%であり、更に好ましくは15~80重量%、特に好ましくは25~70重量%である。
(共)重合体(A)を構成する炭素数8~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、(共)重合体(A)の重量に基づいて、好ましくは0~80重量%であり、更に好ましくは5~50重量%、特に好ましくは5~45重量%である。
(共)重合体(A)を構成する窒素原子含有単量体(d)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、(共)重合体(A)の重量に基づいて、好ましくは0.1~10重量%であり、更に好ましくは1~7重量%、特に好ましくは2~5重量%である。
(共)重合体(A)を構成する水酸基含有単量体(e)の割合は、粘度指数向上効果の観点から、(共)重合体(A)の重量に基づいて、好ましくは0~10重量%であり、更に好ましくは1~7重量%、特に好ましくは2~5重量%である。
(共)重合体(A)を構成する単量体(f)~(l)の合計重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、(共)重合体(A)の重量に基づいて、好ましくは0~10重量%であり、更に好ましくは1~7重量%、特に好ましくは2~5重量%である。
【0038】
(共)重合体(A)は、公知の製造方法によって得ることができ、具体的には前記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下に溶液重合することにより得る方法等が挙げられる。
溶剤としては、トルエン、キシレン、炭素数9~10のアルキルベンゼン、メチルエチルケトン、鉱物油、合成油等及びこれらの混合物が挙げられる。
重合触媒としては、アゾ系触媒(2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等)、過酸化物系触媒(ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド及びラウリルパーオキサイド等)及びレドックス系触媒(ベンゾイルパーオキサイドと3級アミンの混合物等)等が挙げられる。
更に分子量調整のために必要により、公知の連鎖移動剤(炭素数2~20のアルキルメルカプタン等)を使用することもできる。
重合温度は、好ましくは25~140℃であり、更に好ましくは50~120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により(共)重合体(A)を得ることができる。
(共)重合体(A)が共重合体である場合の重合形態としては、ランダム付加重合体又は交互共重合体のいずれでもよく、また、グラフト共重合体又はブロック共重合体のいずれでもよい。
【0039】
本発明の粘度指数向上剤組成物は、炭素数18~40の鎖状脂肪族アルコール(B)(以下、鎖状脂肪族アルコール(B)ともいう。)を含有する。
鎖状脂肪族アルコール(B)を含有することにより、粘度指数向上剤組成物の製造時間を短縮することが可能である。これは、(共)重合体(A)を製造する際の未反応モノマーを留去する工程において、泡が溢れないように減圧度を長時間かけて徐々に上げる必要があるところ、本発明の粘度指数向上剤組成物は、前記(共)重合体(A)に加えて鎖状脂肪族アルコール(B)を含むことにより、短時間で減圧度を上げることができ、さらに未反応モノマーが気化して生じた泡を油面上に早く上昇させることができるため、粘度指数向上剤組成物の製造時間を短縮することができると推察される。
また、本発明の粘度指数向上剤組成物は、鎖状脂肪族アルコール(B)を含有することにより(共)重合体(A)の粘度指数向上効果を変化させることなく、潤滑油組成物に消泡性を付与することができ、潤滑油組成物の実用時に長時間運転後も消泡性を維持することができるという消泡性の持続性にも優れるものである。
鎖状脂肪族アルコール(B)と共重合体(A)との相溶性の観点から、共重合体(A)と鎖状脂肪族アルコール(B)とのSP値の差の絶対値が、好ましくは0.01~0.5(cal/cm1/2であり、さらに好ましくは0.01~0.4(cal/cm1/2である。
なお、鎖状脂肪族アルコール(B)のSP値は、分子構造及び前記Fedors法のパラメータを用いて算出することができる。
鎖状脂肪族アルコール(B)は消泡性の観点から、HLB値が好ましくは0.1~4.0であり、さらに好ましくは0.2~3.0である。HLB値が上記範囲だと、基油及び(共)重合体(A)との溶解性に優れ、潤滑油組成物の消泡性及び消泡性の持続性が良好である傾向がある。なお、鎖状脂肪族アルコール(B)のHLB値はグリフィン法によるものであり、下記数式により算出することができる。
HLB値=20×[水酸基の個数×17(式量)]÷[鎖状脂肪族アルコール(B)の分子量]
【0040】
鎖状脂肪族アルコール(B)としては、例えば、直鎖状飽和脂肪族モノアルコール{第一級モノアルコール(例えば、1-オクタデカノール、1-ノナデカノール、1-イコサノール、1-ドコサノール、1-テトラコサノール、1-ヘキサコサノール、1-オクタコサノール、1-トリアコンタノール、1-ドトリアコンタノール、1-テトラトリアコンタノール、1-ヘキサトリアコンタノール等)、第二級モノアルコール(例えば、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-、又は9-オクタデカノール、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-、又は10-イコサノール等)等}、分岐鎖状飽和脂肪族モノアルコール{第一級モノアルコール(例えば、2-アルキル(アルキル基の炭素数1~16)置換アルキル(アルキル基の炭素数12~30)-1-オール(2-メチルヘプタデカン-1-オール、2-メチルオクタデカン-1-オール、2,6-ジメチルオクタデカン-1-オール、2,6,10,14-テトラメチルヘプタデカン-1-オール、2-オクチル-1-ドデカノール、2-オクチル-1-テトラデカノール、2-デシル-1-テトラデカノール、2-ドデシル-1-ヘキサデカノール、2-テトラデシル-1-オクタデカノール、2-ヘキサデシル-1-エイコサノール、2-イソヘキサ-1-トリアコンタノール等)等)、第二級モノアルコール(例えば、3,7-ジメチルヘプタコサン-2-オール、3,7,15-トリメチルヘプタコサン-2-オール等)第三級モノアルコール等}、直鎖状不飽和脂肪族モノアルコール{例えば、オレイルアルコール、エルシルアルコール等}、分岐状不飽和脂肪族モノアルコール{例えば、3,7,11,15,19-ペンタメチル-2-イコセン-1-オール等}、2価以上の鎖状脂肪族アルコール等が挙げられる。
これらのうち、消泡性の観点から、炭素数18~40の直鎖状飽和脂肪族モノアルコール及び炭素数18~40の分岐鎖状飽和脂肪族モノアルコールが好ましく、更に好ましくは炭素数18~40の分岐鎖状飽和脂肪族モノアルコールであり、特に好ましくは炭素数18~40の分岐鎖状飽和脂肪族一級モノアルコールであり、最も好ましくは2-アルキル(アルキル基の炭素数10~16)置換アルキル(アルキル基の炭素数12~18)-1-オールである。
【0041】
(共)重合体(A)中の単量体(a)と鎖状脂肪族アルコール(B)との組み合わせとしては、粘度指数向上効果、消泡性及び消泡性の持続性の観点から、単量体(a)の一般式(1)におけるR及びRの炭素数の合計が16~34であるもの、すなわち単量体(a)としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基部分の炭素数が18~36であるものと、鎖状脂肪族アルコール(B)の有する鎖状脂肪族基の炭素数が18~36であるものとの組み合わせが好ましい。
【0042】
本発明の粘度指数向上剤組成物は、基油を含有する。
基油としては特に限定されないが、例えば、溶剤精製油、高度水素化精製油、炭化水素系合成潤滑油、エステル系合成潤滑油、ナフテン油等が挙げられる。
基油としては、粘度指数向上効果の観点から、100℃における動粘度(ASTM D 445に準拠して測定したもの)が、1~15mm/sであるものが好ましく、さらに好ましくは1.2~5mm/sである。
基油の粘度指数(ASTM D 445の方法で40℃と100℃における動粘度を測定し、それらの値を用いASTM D2270の方法で計算したもの)は、粘度指数向上効果の観点から、90以上であることが好ましく、さらに好ましくは100以上である。
基油の曇り点(JIS-K2269に準拠して測定したもの)は、好ましくは-5℃以下であり、更に好ましくは-15℃以下である。基油の曇り点がこの範囲内であると潤滑油組成物の低温粘度が良好となる傾向がある。
基油のアニリン点(JIS-K2256(2013)に準拠して測定したもの)は、好ましくは70~140℃であり、さらに好ましくは90~130℃である。基油のアニリン点がこの範囲であると、共重合体(A)及び鎖状脂肪族アルコール(B)の基油への溶解性が良好となり、消泡性及び消泡性の持続性に優れる傾向がある。
【0043】
本発明の粘度指数向上剤組成物中の(共)重合体(A)の含有量は、粘度指数向上剤組成物の取扱性、粘度指数向上効果及びせん断安定性の観点から、粘度指数向上剤組成物の重量を基準として、10重量%以上が好ましく、更に好ましくは16重量%以上であり、70重量%以下が好ましく、更に好ましくは60重量%以下であり、好ましい一態様としては、10~70重量%、さらに好ましくは16~60重量%である。
本発明の粘度指数向上剤組成物中の鎖状脂肪族アルコール(B)の含有量は、粘度指数向上剤組成物の製造時間短縮、潤滑油組成物とした場合の消泡性及び消泡性の持続性の観点から、粘度指数向上剤組成物の重量を基準として、0.01重量%以上が好ましく、更に好ましくは0.05重量%以上であり、5重量%以下が好ましく、更に好ましくは3重量%以下であり、好ましい一態様としては、0.01~5重量%、さらに好ましくは0.05~3重量%である。鎖状脂肪族アルコール(B)の含有量が5重量%以下であると、潤滑油組成物に添加した際に鎖状脂肪族アルコール(B)の含有量が適度となり、潤滑油組成物の粘度特性(特に低温粘度)に影響を与えることなく、消泡性に優れる潤滑油組成物とすることができる。
本発明の粘度指数向上剤組成物中の基油の含有量は、粘度指数向上剤組成物の取扱性、得られる潤滑油組成物の低温粘度の観点から、粘度指数向上剤組成物の重量を基準として、25重量%以上が好ましく、更に好ましくは37重量%以上であり、89.99重量%以下が好ましく、更に好ましくは79.95重量%以下であり、好ましい一態様としては25~89.99重量%、更に好ましくは37~79.95重量%である。
【0044】
本発明において、(共)重合体(A)と鎖状脂肪族アルコール(B)との重量比率(A/B)は、粘度指数向上効果、消泡性及び消泡性の持続性の観点から、10~10,000であることが好ましく、さらに好ましくは30~5,000である。
粘度指数向上剤組成物中の(共)重合体(A)と鎖状脂肪族アルコール(B)との重量比率(A/B)が上記の範囲内であると、粘度指数向上剤組成物の製造時間を短縮できるので好ましい。また、本発明の粘度指数向上剤組成物を用いた潤滑油組成物中の(共)重合体(A)と鎖状脂肪族アルコール(B)との重量比率(A/B)も上記重量比率の範囲内となる傾向があるので、潤滑油組成物の粘度指数向上効果、消泡性及び消泡性の持続性が良好となる傾向がある。
【0045】
本発明の粘度指数向上剤組成物及び潤滑油組成物中の鎖状脂肪族アルコール(B)の含有量は以下の方法により測定することができる。
<粘度指数向上剤組成物及び潤滑油組成物中の鎖状脂肪族アルコール(B)の含有量の測定方法>
本発明の粘度指数向上剤組成物又は潤滑油組成物1gを、ソックスレー抽出器を用いて、ヘキサン溶剤300mlにより(共)重合体(A)成分とヘキサン溶剤に溶解するその他成分に分離抽出する。鎖状脂肪族アルコール(B)はヘキサンに溶解するので、抽出されたその他成分中に含まれる。抽出したその他成分を含む溶液中のヘキサン溶剤をエバポレーターにより減圧留去する。
留去せずに残ったその他成分抽出物の量X(mg)のうち10mgを精秤し、そこにシリル化試薬(BSTFA-TMCS(99:1)東京化成工業(株)製)を40mg加え、70℃で3時間反応させる。反応後の溶液をガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)により分析する。例えば炭素数24の鎖状脂肪族アルコール(分子量:355、シリル化後の分子量:428)の場合、MS分析による分子量427のピークがガスクロマトグラフにて保持時間が29.5分あたりに認められるので、用いた粘度指数向上剤組成物又は潤滑油組成物の量、その他成分抽出物の量X及びピーク面積比率から、組成物中の鎖状脂肪族アルコール(B)の含有量を算出することができる。
<GC-MS測定条件>
(GC測定条件)
装置 :「GC-2010」[(株)島津製作所製]
カラム :「ZB-5(カラム長:30m、カラム内径:0.25mm、膜厚:0.25μm)」[島津ジーエルシ―(株)製]
気化室温度 :250℃
圧力 :1000kPa
スプリット比:50
昇温条件 :40℃で5分保持、300℃まで昇温(10℃/分)、300℃で10分保持。
(MS測定条件)
装置 :「GCMS QP-2010 Plus」[(株)島津製作所製]
イオン源 :CI
イオン源温度 :170℃
インターフェース温度:250℃
導入試薬ガス :イソブタン
【0046】
本発明の潤滑油組成物は、本発明の粘度指数向上剤組成物と、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、油性向上剤、流動点降下剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、抗乳化剤、金属不活性剤、及び腐食防止剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤とを含有してなる。
本発明の潤滑油組成物は、粘度指数向上効果及びせん断安定性の観点から、(共)重合体(A)を潤滑油組成物の重量に基づいて0.1重量%以上となるように含有することが好ましく、20重量%以下となるように含有することが好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、消泡性及び消泡性の持続性の観点から、鎖状脂肪族アルコール(B)を潤滑油組成物合計の重量に基づいて0.001重量%以上となるように含有することが好ましく、1.0重量%以下となるように含有することが好ましい。鎖状脂肪族アルコール(B)の含有量が1.0重量%以下であると、潤滑油組成物の粘度特性(特に低温粘度)に影響を与えることなく、消泡性に優れる潤滑油組成物とすることができる傾向がある。
本発明の潤滑油組成物は、粘度指数、低温粘度、消泡性及び消泡性の持続性の観点から、基油を潤滑油組成物合計の重量に基づいて99.799重量%以下となるように含有することが好ましく、更に好ましくは99.599重量%以下となるように含有することであり、49重量%以上となるように含有することが好ましく、更に好ましくは59重量%以上となるように含有することである。
本発明の潤滑油組成物において、(共)重合体(A)と鎖状脂肪族アルコール(B)との重量比率(A/B)は、粘度指数向上効果、消泡性及び消泡性の持続性の観点から、10~10,000であることが好ましく、さらに好ましくは30~5,000である。
【0047】
本発明の潤滑油組成物は、各種添加剤を含有する。添加剤としては、以下のものが挙げられる。
(1)清浄剤:
塩基性、過塩基性又は中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート及びアルキルナフタレンスルフォネート等)の過塩基性又はアルカリ土類金属塩等]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類及びこれらの混合物;
(2)分散剤:
コハク酸イミド類(ビス-又はモノ-ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮合物及びボレート類等;
(3)酸化防止剤:
ヒンダードフェノール類及び芳香族2級アミン類等;
(4)油性向上剤:
長鎖脂肪酸及びそれらのエステル(オレイン酸及びオレイン酸エステル等)、長鎖アミン及びそれらのアミド(オレイルアミン及びオレイルアミド等)等;
(5)流動点降下剤
ポリアルキルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等;
(6)摩擦摩耗調整剤:
モリブデン系及び亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメート及びジンクジアルキルジチオフォスフェート等)等;
(7)極圧剤:
硫黄系化合物(モノ又はジスルフィド、スルフォキシド及び硫黄フォスファイド化合物)、フォスファイド化合物及び塩素系化合物(塩素化パラフィン等)等;
(8)抗乳化剤:
4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、硫酸化油及びフォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート等)、炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン、エチルベンゼン)等;
(9)金属不活性剤
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール等)、窒素原子含有キレート化合物(N,N’-ジサリチデン-1,2-ジアミノプロパン等)、窒素・硫黄原子含有化合物(2-(n-ドデシルチオ)ベンズイミダゾール等)等;
(10)腐食防止剤:
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール及び1,3,4-チオジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート等)等。
【0048】
これらの添加剤は1種だけ添加してもよいし、必要に応じて2つ以上の添加剤を添加することもできる。またこれらの添加剤を配合したものを性能添加剤、またはパッケージ添加剤と呼ぶこともあり、それを添加してもよい。
これらの添加剤のそれぞれの含有量は潤滑油組成物全量を基準として0.1~15重量%であることが好ましい。また各添加剤を合計した含有量は潤滑油組成物全量を基準として0.1~30重量%が好ましく、さらに好ましくは0.3~20重量%である。
【0049】
本発明の潤滑油組成物は、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF及びbelt-CVTF等]、エンジン油、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)等に好適に用いられる。
【実施例
【0050】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
<実施例1~17、比較例2~4>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、窒素導入管及び減圧装置を備えた反応容器に、表2―1、表2―2又は表3に記載の種類及び量の基油100重量部を投入し、別のガラス製ビーカーに、表2―1、表2―2又は表3に記載の種類及び量の鎖状脂肪族アルコール(B)又は比較用の化合物(B’)、並びに単量体配合物、連鎖移動剤、及び重合開始剤を投入し、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに投入した。反応容器の気相部の窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った後、密閉下系内温度を70~85℃に保ちながら、3時間かけて単量体溶液を滴下した。この時、反応溶液の液面の高さが反応容器の容量の70%になるように各原料を仕込んだ。滴下終了から2時間、90℃で熟成した後、120℃に昇温後、同温度で減圧度を0.027~0.040MPaになるまで、液面高さが反応容器の容量の90%を超えないように徐々に減圧し、その後、気泡の発生が完全に消失するまで未反応の単量体を除去した。
上記手順により、(共)重合体(A)及び鎖状脂肪族アルコール(B)又は比較用の化合物(B’)を含有する粘度指数向上剤組成物(R1)~(R17)、(S2)~(S4)を得た。得られた粘度指数向上剤組成物中の共重合体(A1)~(A6)及び(A’1)のMw、鎖状脂肪族アルコール(B)の含有量を上記の方法で測定した結果及び未反応の単量体の留去時間を表2-1、表2-2又は表3に示す。
【0052】
<実施例18~24及び比較例6>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、表2-2又は表3に記載の種類及び量の基油と、表2-2又は表3に記載の種類及び量の鎖状脂肪族アルコール(B)、単量体配合物、及び重合開始剤を投入した。この時、反応溶液の液面の高さが反応容器の70%になるように各原料を仕込んだ。窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った後、密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で4時間重合反応を行った。120℃に昇温後、同温度で減圧度を0.027~0.040MPaになるまで液面が反応容器の容量の90%を超えないように徐々に減圧し、その後、気泡の発生が完全に消失するまで未反応の単量体を除去した。
上記手順により、(共)重合体(A)及び鎖状脂肪族アルコール(B)を含有する粘度指数向上剤組成物(R18)~(R24)及び(S6)を得た。得られた粘度指数向上剤組成物中の共重合体(A7)~(A13)及び(A’2)のMw、鎖状脂肪族アルコール(B)の含有量を上記の方法で測定した結果及び未反応の単量体の留去時間を表2-2又は表3に示す。
【0053】
<比較例1>
実施例1において、鎖状脂肪族アルコール(B)を用いないこと以外は同様の条件で、共重合体(A1)を含有する粘度指数向上剤組成物(S1)を得た。得られた粘度指数向上剤組成物中の共重合体(A1)のMwを上記の方法で測定した結果及び未反応の単量体の留去時間を表3に示す。
【0054】
<比較例5>
実施例20において、鎖状脂肪族アルコール(B)を用いないこと以外は同様の条件で、共重合体(A9)を含有する粘度指数向上剤組成物(S5)を得た。得られた粘度指数向上剤組成物中の共重合体(A9)のMwを上記の方法で測定した結果及び未反応の単量体の留去時間を表3に示す。
【0055】
【表2-1】
【0056】
【表2-2】
【0057】
【表3】
【0058】
表2-1、表2-2及び表3に記載の鎖状脂肪族アルコール(B)、比較用の化合物(B’)、単量体(a)~(e)、連鎖移動剤、重合開始剤及び基油は下記のものを用いた。
(B1):ステアリルアルコール(1-オクタデカノール)(炭素数18)、HLB値=1.26
(B2):2-デシル-1-テトラデカノール(炭素数24)、HLB値=0.96
(B3):2-ドデシル-1-ヘキサデカノール(炭素数28)、HLB値=0.83
(B4):2-テトラデシル-1-オクタデカノール(炭素数32)、HLB値=0.73
(B5):2-イソヘキサ-1-トリアコンタノール(炭素数36)、HLB値=0.65
(B1’):ポリジメチルシロキサン(25℃動粘度=10,000mm/s)
(B2’):ラウリルアルコール(炭素数12)、HLB値=3.82
(a-1):メタクリル酸2-n-デシルテトラデシル(炭素数24)
(a-2):メタクリル酸2-n-ドデシルヘキサデシル(炭素数28)
(a-3):メタクリル酸2-n-テトラデシルオクタデシル(炭素数32)
(a-4):メタクリル酸2-n-ヘキサデシルイコシル(炭素数36)
(b-1):メタクリル酸メチル(炭素数1)
(b-2):メタクリル酸n-ブチル(炭素数4)
(c-1):メタクリル酸n-ドデシル(炭素数12)
(c-2):炭素数12~13の直鎖及び分岐アルキルメタクリレート混合物(Neodol23(シェルケミカルズ社製)とメタクリル酸とのエステル化物)(炭素数12~13)
(c-3):炭素数14~15の直鎖及び分岐アルキルメタクリレート混合物(Neodol45(シェルケミカルズ社製)とメタクリル酸とのエステル化物)(炭素数14~15)
(c-4):メタクリル酸n-ヘキサデシル(炭素数16)
(c-5):メタクリル酸n-オクタデシル(炭素数18)
(d-1):N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート
(d-2):N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート
(e-1):アクリル酸2-ヒドロキシエチル
(e-2):メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
連鎖移動剤
X-1:ドデシルメルカプタン
重合開始剤
Z-1:2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)
Z-2:2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)
基油1:SK社製「YUBASE2」、100℃の動粘度=2.4mm/s、粘度指数=96、アニリン点=101.0℃
基油2:S-Oil製「Ultra-S2」、100℃の動粘度=2.3mm/s、粘度指数=103、アニリン点=101.8℃
基油3:SK社製「YUBASE4」、100℃の動粘度=4.2mm/s、粘度指数=122、アニリン点=117.4℃
基油4:出光昭和シェル(株)製「ダイアナフレシアW-8」、100℃の動粘度=2.3mm/s、粘度指数=83、アニリン点=90.4℃
基油5:鉱物油、100℃の動粘度=1.5mm/s
基油6:GTL(Gas to Liquid)油、100℃の動粘度=1.3mm/s、アニリン点=97℃
基油7:GTL油、100℃の動粘度=2.0mm/s、アニリン点=105℃
基油8:GTL油、100℃の動粘度=2.7mm/s、粘度指数=118
基油9:GTL油、100℃の動粘度=4.1mm/s、粘度指数=126
【0059】
表2-1、表2-2及び表3の結果から、本発明の粘度指数向上剤組成物は、消泡性が優れており、未反応の単量体の留去時間を短縮することができることが分かる。特に、鎖状脂肪族アルコール(B)を含まない、又は鎖状脂肪族アルコール(B)を含まず比較用の化合物(B’)を含む比較例1~3と、鎖状脂肪族アルコール(B)を含む以外は同じ実施例1との比較、及び、比較例5と実施例20との比較から、粘度指数向上剤組成物製造時に鎖状脂肪族アルコール(B)を含むことで、減圧時の消泡性が高く、未反応の単量体の留去時間を短縮することができることが分かる。また、単量体(a)を用いていない比較例4と単量体(a)を用いている以外は同じ実施例1との比較、比較例6と実施例20との比較から、単量体(a)を構成単量体として含む(共)重合体(A)と鎖状脂肪族アルコール(B)とを用いることで、未反応の単量体の留去時間を短縮することができることが分かる。
【0060】
<実施例25~41及び比較例7~10(潤滑油組成物の評価)>
撹拌装置を備えたステンレス製容器において、基油1に添加剤1を10重量%溶解させた添加剤配合基油に、表4に記載の配合量で粘度指数向上剤組成物を添加して、100℃動粘度が5.00mm/sになるように潤滑油組成物を調製した。
得られた潤滑油組成物のせん断安定性、40℃動粘度、粘度指数、低温粘度(-40℃)、消泡性及び消泡性の持続性を以下の方法で測定した。結果を表4に示す。
【0061】
<実施例42~48及び比較例11~12(潤滑油組成物の評価)>
撹拌装置を備えたステンレス製容器において、基油3に添加剤2を10重量%添加した添加剤配合基油に、表5に記載の配合量で粘度指数向上剤組成物を添加して、150℃でのHTHS粘度が2.6mPa・sになるように潤滑油組成物を調製した。
得られた潤滑油組成物の高温でのせん断粘度(HTHS粘度(100℃))、せん断安定性、100℃動粘度、40℃動粘度、粘度指数、低温粘度(-40℃)、消泡性及び消泡性の持続性を以下の方法で測定した。結果を表5に示す。
【0062】
<実施例49~55及び比較例13~14(潤滑油組成物の評価)>
撹拌装置を備えたステンレス製容器において、基油3に添加剤2を10重量%添加した添加剤配合基油に、表6に記載の配合量で粘度指数向上剤組成物を添加して、150℃でのHTHS粘度が2.3mPa・sになるように潤滑油組成物を調製した。
得られた潤滑油組成物の高温でのせん断粘度(HTHS粘度(100℃))、せん断安定性、100℃動粘度、40℃動粘度、粘度指数、低温粘度(-40℃)、消泡性及び消泡性の持続性を以下の方法で測定した。結果を表6に示す。
【0063】
表4~表6に記載の添加剤は、以下に記載した通りである。
(添加剤1):金属系(TBN300mgKOH/gのカルシウムスルホネート系)清浄剤、無灰分残剤(コハク酸イミド)、摩擦調整剤(オレイルアミド)、摩耗防止剤(リン酸)、酸化防止剤(ジフェニルアミン)、金属不活性剤(チアジアゾール)及び硫黄系添加剤(硫化エステル)を含む添加剤
(添加剤2):パッケージ添加剤「P5741」(Infineum社製)
塩基価=84mgKOH/g、カルシウム含量=2.49%、窒素含量=0.68%、リン含量=0.78%、硫酸灰分=9.76%、亜鉛含量=0.86%。
【0064】
<潤滑油組成物の粘度指数の計算方法>
ASTM D 445の方法で40℃と100℃における動粘度を測定し、ASTM D 2270の方法で計算した。数値が大きいほど粘度指数向上効果が高いことを意味する。
【0065】
<潤滑油組成物のせん断安定性(Sonic SS)の測定方法及び計算方法>
JPI-5S-29-2006の超音波法に準拠して試験を行った。実施例25~41、比較例7~10は高出力法で行い、実施例42~55、比較例11~14は低出力法で行った。数値が小さいほどせん断安定性が高いことを意味する。
【0066】
<潤滑油組成物の低温粘度(-40℃)の測定方法>
JPI-5S-42-2004の方法で-40℃での粘度を測定した。数値が小さいほど低温粘度が低く、低温特性が高いことを意味する。
【0067】
<潤滑油組成物のせん断安定性(BOSCH SS)の測定方法及び計算方法>
ASTM D 6278の方法で測定し、ASTM D 6022の方法で計算した。
【0068】
<潤滑油組成物のHTHS粘度の測定方法>
ASTM D 5481の方法により、100℃及び150℃で測定した。100℃のHTHS粘度が低いほど、良好であることを意味する。
【0069】
<消泡性評価>
作製した直後の潤滑油組成物について、JIS-K2518の方法に準じてシーケンスII(試験温度93.5℃)で評価を行った。また、上記せん断安定性(Sonic SS)試験を行った後の潤滑油組成物についても同様に消泡性の評価を行った。また、試験直後及び10分後の泡層の厚さについて下記基準で評価した。
・試験直後
◎◎:15ml以下
◎:15mlを超え30ml以下
〇:30mlを超え50mL以下
×:50mlを超える
・10分後
〇:泡が消えている
×:泡が残っている
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
表4、表5及び表6の結果から、本発明の粘度指数向上剤組成物は粘度指数向上効果に優れており、消泡性及び消泡性の持続性に優れる潤滑油組成物を得ることができることが分かる。さらに、せん断安定性及び低温粘度にも優れることが分かる。
一方、鎖状脂肪族アルコール(B)を含有していない比較例1又は5の粘度指数向上剤組成物を用いた比較例7、11及び13の潤滑油組成物は、消泡性及び消泡性の持続性が劣っていることが分かる。また、従来用いられているポリジメチルシロキサンを用いた比較例2の粘度指数向上剤組成物を用いた比較例8の潤滑油組成物は、鎖状脂肪族アルコール(B)を含まず比較用の化合物(B’)を含む以外は同じ((共)重合体(A)が同じ)実施例25の潤滑油組成物と比較して、消泡性の持続性が極めて劣っており、さらにせん断安定性(Sonic SS)も劣っていることが分かる。また、炭素数が12の鎖状脂肪族アルコールを用いた比較例3の粘度指数向上剤組成物を用いた比較例9の潤滑油組成物についても同様に、鎖状脂肪族アルコール(B)の種類が違う以外は同じ実施例25の潤滑油組成物と比較して、試験直後の消泡性が劣っており、さらにせん断安定性(Sonic SS)も劣っていることが分かる。また、単量体(a)を構成単量体としていない共重合体を含む比較例4又は6の粘度指数向上剤組成物を用いた比較例10、12及び14の潤滑油組成物は、単量体(a)を用いている以外は同じ実施例25、44又は51の潤滑油組成物と比較して、粘度指数が低く、消泡性も劣っていることが分かる。
以上のことから、本発明の粘度指数向上剤組成物を含む潤滑油組成物は、単量体(a)を必須単量体とする(共)重合体(A)と、炭素数18~40の鎖状脂肪族アルコール(B)とを含むことにより、粘度指数が高く、消泡性及び消泡性の持続性に優れ、せん断安定性及び低温粘度にも優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の粘度指数向上剤組成物は、粘度指数向上効果に優れ、消泡性及び消泡性の持続性に優れるので、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF及びbelt-CVTF等]、エンジン油、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)等の粘度指数向上剤として好適に用いることができ、本発明の潤滑油組成物は、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF及びbelt-CVTF等]、エンジン油、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)等として好適に用いることができる。