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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/203 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
H01P1/203
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022545296
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2021011617
(87)【国際公開番号】W WO2022044406
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2020142046
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】上道 雄介
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-196402(JP,U)
【文献】米国特許第05343176(US,A)
【文献】実開平04-029203(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1主面及び第2主面を含む誘電体製の基板と、
前記第1主面側に設けられ、且つ、隣接する帯状導体同士が電磁気的に結合している複数の帯状導体と、
少なくとも前記第2主面側に設けられた地導体層と、を備え、
前記第1主面において隣接する帯状導体同士の間に介在する各領域を中間領域として、前記第2主面において当該中間領域の各々に対向する領域には、表面が前記地導体層により覆われた1又は複数の第1凹部が形成されており、
前記複数の帯状導体の各々について、前記第2主面には、平面視において当該帯状導体と重なり、且つ、表面が前記地導体層により覆われた1又は複数の第2凹部が形成されており、
前記複数の帯状導体の各々が延伸されている方向である長さ方向に沿ってみた場合に、前記第2凹部の各々は、長さが、平面視において当該第2凹部に重なっている帯状導体の長さを上回り、且つ、当該帯状導体を包含している、
ことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記1又は複数の第1の凹部の各々について、前記複数の帯状導体の各々が延伸されている方向である長さ方向に沿ってみた場合に、前記1又は複数の第1の凹部の各々の両端部は、当該第1の凹部に隣接する2つの帯状導体の両端部よりも突出している、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記第1凹部の深さが、前記第2凹部の深さよりも深い、
ことを特徴とする請求項に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記複数の帯状導体の各々について、平面視において当該帯状導体と当該第2凹部とが重なる領域に設けられ、且つ、当該帯状導体と前記地導体層とを短絡する1又は複数の導体ポストを更に備えている、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
対向する第1主面及び第2主面を含む誘電体製の基板と、
前記第1主面側に設けられ、且つ、隣接する帯状導体同士が電磁気的に結合している複数の帯状導体と、
少なくとも前記第2主面側に設けられた地導体層と、を備え、
前記第1主面において隣接する帯状導体同士の間に介在する各領域を中間領域として、前記第2主面において当該中間領域の各々に対向する領域には、表面が前記地導体層により覆われた1又は複数の第1凹部が形成されており、
前記複数の帯状導体の各々について、前記第2主面には、平面視において当該帯状導体と重なり、且つ、表面が前記地導体層により覆われた1又は複数の第2凹部が形成されており、
前記第2主面に設けられた前記地導体層を第1地導体層とし、前記1又は複数の第2凹部の前記表面を覆う前記地導体層を第2地導体層として、
前記複数の帯状導体の各々について、当該帯状導体の一方の端部は、平面視において当該帯状導体に重なっている第2凹部から突出しており、
前記複数の帯状導体の各々について、平面視において前記一方の端部と前記第1地導体層とが重なる領域に設けられ、且つ、前記一方の端部と前記第1地導体層とを短絡する1又は複数の導体ポストであって、前記第2地導体層のうち前記第2凹部の側面を覆う第2地導体層とともに二導体線路を構成する1又は複数の導体ポストを更に備えている、
ことを特徴とするフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図3及び図4には、誘電体製の基板(特許文献1においては、誘電体基板1)と、その基板の第1主面に設けられ、且つ、隣接する帯状導体同士が電磁気的に結合している複数の帯状導体(特許文献1においては、共振導体3~7)と、その基板の第2主面に設けられた地導体層(特許文献1においては、接地導体2)と、を備えたマイクロストリップ型のフィルタ装置(特許文献1においては、共振回路装置)が、従来例として図示されている。なお、複数の帯状導体の各々は、それぞれ、共振器として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国公開特許公報「特開平9-139605号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのうえで、特許文献1の図1には、基板のうち、平面視において前記複数の帯状導体(特許文献1の図1においては、共振導体5,6)の各々と重ならない領域に、それぞれ、第1主面に開口を有する凹部(特許文献1の図1においては、トレンチ11)が設けられたフィルタ装置が図示されている。この構成によれば、凹部内に充満している空気の比誘電率が基板を構成する誘電体の比誘電率よりも小さいことに起因して、隣接する帯状導体同士の間に生じる電磁気的な結合を弱めることができる。したがって、このフィルタ装置は、隣接する帯状導体同士に生じる結合の大きさが従来と同程度になるように設計した場合に、隣接する帯状導体同士の間隔を狭くすることができるので、フィルタ装置を小型化することができる。ただし、このようなフィルタ装置においては、更なる小型化が求められている。
【0005】
本発明の一態様は、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的は、フィルタ装置を従来よりも小型化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係るフィルタ装置は、対向する第1主面及び第2主面を含む誘電体製の基板と、前記第1主面側に設けられ、且つ、隣接する帯状導体同士が電磁気的に結合している複数の帯状導体と、少なくとも前記第2主面側に設けられた地導体層と、を備え、前記第1主面において隣接する帯状導体同士の間に介在する各領域を中間領域として、前記第2主面において当該中間領域の各々に対向する領域には、表面が前記地導体層により覆われた1又は複数の第1凹部が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係るフィルタ装置は、フィルタ装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係るフィルタ装置の平面図である。(b)及び(c)は、(a)に示したフィルタ装置の断面図である。
図2図1に示したフィルタ装置の第1の変形例の断面図である。
図3】(a)及び(b)は、それぞれ、図1に示したフィルタ装置の第2の変形例の平面図及び断面図である。
図4図1に示したフィルタ装置の第3の変形例の断面図である。
図5】(a)は、本発明の第2の実施形態に係るフィルタ装置の平面図である。(b)及び(c)は、(a)に示したフィルタ装置の断面図である。
図6図5に示したフィルタ装置の第1の変形例の断面図である。
図7】(a)は、図5に示したフィルタ装置の第2の変形例の平面図である。(b)及び(c)は、(a)に示したフィルタ装置の断面図である。
図8図7に示したフィルタ装置の一変形例が備えている帯状導体の一方の端部の拡大平面図である。
図9】(a)は本発明の第1の実施例の構造、(b)は本発明の第2の実施例の構造、(c)は第2の比較例の構造を示す平面図である。
図10】(a)は本発明の第1の実施例~第3の実施例の構造の透過特性を示すグラフであり、(b)は第1の比較例及び第2の比較例の構造の透過特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係るフィルタ装置は、周波数がミリ波又はマイクロ波と呼ばれる周波数帯域に属する高周波信号のうち、所定の通過帯域に属する高周波信号を通過させ、それ以外の高周波信号を遮断するバンドパスフィルタとして機能する。以下で説明する第1の実施形態及び第2の実施形態では、通過帯域の中心周波数が25GHz帯に含まれているものとして説明する。ただし、通過帯域の中心周波数及び帯域幅は、限定されるものではなく、フィルタ装置の用途に応じて適宜設計することができる。
【0010】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係るフィルタ装置1について、図1を参照して説明する。図1の(a)は、フィルタ装置1の平面図である。図1の(b)及び(c)は、フィルタ装置1の断面図である。図1の(b)は、図1の(a)に示したA-A’線に沿った断面における断面図であり、図1の(c)は、図1の(a)に示したB-B’線に沿った断面における断面図である。
【0011】
<フィルタ装置の構成>
図1の(a)~(c)に示すように、フィルタ装置1は、基板11と、導体パターン12と、地導体層13と、を備えている。
【0012】
(基板)
基板11は、対向する主面111及び主面112を含む誘電体製の板状部材である。主面111は、特許請求の範囲に記載した第1主面の一例である。主面112は、特許請求の範囲に記載した第2主面の一例である。
【0013】
本実施形態において、基板11は、石英製である。ただし、基板11を構成する誘電体は、石英に限定されるものではなく、適宜選択することができる。この誘電体の例としては、石英以外のガラス、セラミックス、シリコンやGaAsなどに代表される半導体、及び、樹脂が挙げられる。
【0014】
本実施形態において、基板11の形状は、主面111の法線に沿った方向から主面111をみた場合に、長方形状である。ただし、基板11の形状は、長方形状に限定されるものではなく、適宜定めることができる。なお、以下において、主面111の法線に沿った方向から主面111をみることを平面視すると称する。
【0015】
本実施形態において、主面111には、後述する導体パターン12が設けられており、主面112には、後述する凹部11a1~11a2及び地導体層13が設けられている。ただし、導体パターン12は、基板11の主面111側に、間接的に設けられていてもよく、地導体層13は、基板11の主面112側に、間接的に設けられていてもよい。例えば、主面111と導体パターン12との間、及び、主面112と地導体層13との間の少なくとも何れかには、導電性が低い別の層(例えば誘電体層)が介在していてもよい。また、基板11の内部には、後述する導体ポスト11b1~11b3が設けられている。
【0016】
(導体パターン)
主面111に設けられた導体パターン12は、導体膜を所定の形状にパターニングすることによって得られる。本実施形態において、導体パターン12は、銅製である。ただし、導体パターン12を構成する導体は、銅に限定されるものではなく、適宜選択することができる。導体パターン12は、帯状導体12a1~12a3と、コプレーナ線路12bと、コプレーナ線路12cと、を含んでいる。また、本実施形態において、導体パターン12は、3つの帯状導体12a1~12a3により構成されているが、導体パターン12を構成する帯状導体の数は、3個に限定されるものでない。導体パターン12を構成する帯状導体の数は、少なくとも複数であればよく、3個以外の例としては、5個が挙げられる。
【0017】
図1の(a)に示すように、帯状導体12a1~12a3の各々の形状は、長方形状である。以下において、各帯状導体12ai(iは、1以上3以下の整数)が延伸されている方向(すなわち、各帯状導体12aiの長辺に沿った方向)を長さ方向と呼ぶ。また、長さ方向に交わる方向(すなわち、各帯状導体12aiの短辺に沿った方向)を幅方向と呼ぶ。また、各帯状導体12aiにおいて、長さ方向に沿って測った場合の長さを長さと呼び、幅方向に沿って測った場合の長さを幅と呼ぶ。
【0018】
各帯状導体12aiは、それぞれの長辺が平行になるように配置されている。また、各帯状導体12aiは、隣接する帯状導体同士の間隔が所定の値になるように、配置されている。このように配置された各帯状導体12aiは、隣接する帯状導体と電磁気的に結合している。隣接する帯状導体同士の間隔は、隣接する帯状導体同士の結合量が所望の大きさとなるように適宜調整されている。
【0019】
各帯状導体12aiの長さ方向に沿ってみた場合に、各帯状導体12aiの長さは、通過帯域の中心周波数と、基板11の比誘電率と、に応じて、適宜定めることができる。本実施形態では、周波数が前記中心周波数である電磁波の実効波長の1/4になるように、各帯状導体12aiの長さを定めている。ただし、各帯状導体12aiの長さは、前記実効波長の1/4に限定されるものではなく、1/4の整数倍であってもよい。
【0020】
コプレーナ線路12bは、信号線12b1と、地導体パターン12b2,12b3とからなる。信号線12b1の一方の端部は、帯状導体12a1の一方の端部に電気的に接続されている。地導体パターン12b2,12b3の各々は、信号線12b1を挟み込むように配置されている。コプレーナ線路12bは、フィルタ装置1の入出力ポートとして機能する。
【0021】
コプレーナ線路12cは、信号線12c1と、地導体パターン12c2,12c3とからなる。信号線12c1の一方の端部は、帯状導体12a3の一方の端部に電気的に接続されている。地導体パターン12c2,12c3の各々は、信号線12c1を挟み込むように配置されている。コプレーナ線路12cは、フィルタ装置1の入出力ポートとして機能する。
【0022】
(凹部)
主面111において、隣接する帯状導体同士の間に介在する各領域を中間領域と称する。図1の(a)に示すように、フィルタ装置1は、3本の帯状導体12a1~12a3を備えているので、中間領域は、帯状導体12a1と帯状導体12a2との間、及び、帯状導体12a2と帯状導体12a3との間に存在する。凹部11a1,11a2の各々は、主面112において、当該中間領域の各々に対向する領域に設けられた凹部である。凹部11a1,11a2は、第1凹部の一例である。このように設けられた凹部11a1,11a2の各々は、平面視において、隣接する帯状導体12a1及び12a2の間、並びに、帯状導体12a2及び12a3の間に配置されている(図1の(a)参照)。
【0023】
また、各凹部11aj(jは1又は2)の表面を構成する底面及び側面は、後述する第2地導体層132により覆われている(図1の(b)参照)。
【0024】
本実施形態において、各凹部11ajは、帯状導体12aiの各々が延伸されている方向である長さ方向に沿ってみた場合に、凹部11ajの両端部は、当該凹部11ajに隣接する2つの帯状導体12aiの両端部よりも突出している。例えば、凹部11a1の両端部は、長さ方向に沿ってみた場合に、帯状導体12a1と帯状導体12a2のいずれの両端部よりも突出している。ただし、各凹部11ajの長さは、各帯状導体12aiの長さと等しくてもよいし、各帯状導体12aiの長さよりも短くてもよい。各凹部11ajは、長さ方向に沿ってみた場合に、各凹部11ajの少なくともその一部が隣接する帯状導体12aiの少なくとも一部に重なっていればよい。
【0025】
本実施形態において、各凹部11ajの形状は、直方体状である。ただし、各凹部11ajの形状は、直方体状に限定されるものではなく、適宜定めることができる。
【0026】
本実施形態において、各凹部11ajの幅は、各帯状導体12aiの幅と同程度である。ただし、各凹部11ajの幅は、各帯状導体12aiの幅より狭くてもよいし、各帯状導体12aiの幅と等しくてもよい。
【0027】
凹部11ajは、空気層を形成するため、誘電体製の基板11に比べて、電気力線が通りにくい。凹部11ajを設けることは、その部分の基板11の厚さが減少することとなり、凹部11ajの両側にある帯状導体12ai間に存在する電気力線が減少する。すなわち、凹部11ajの両側にある帯状導体12ai間の結合量(共振器間の結合係数)が低下する。従って、隣接する帯状導体同士に生じる結合の大きさが従来と同程度になるように設計した場合に、隣接する帯状導体同士の間隔を狭くすることができる。つまり、フィルタ装置1の大きさを小さくすることができる。
【0028】
なお、各凹部11ajの幅及び底面までの深さは、隣接する帯状導体12ai同士間の結合量が所望の大きさとなるように適宜調整されている。
【0029】
(地導体層)
地導体層13は、少なくとも主面112に設けられている。具体的には、図1の(b)に示すように、地導体層13は、第1地導体層131と第2地導体層132とにより構成されている。地導体層13のうち、第1地導体層131は、主面112に設けられた部分を指し、第2地導体層132は、各凹部11ajの表面を覆う部分を指す。
【0030】
地導体層13は、導体膜により構成されている。本実施形態において、地導体層13は、銅製である。ただし、地導体層13を構成する導体は、銅に限定されるものではなく、適宜選択することができる。
【0031】
図1の(b)に示すように、第1地導体層131と第2地導体層132とは、連続して形成されており、電気的にも接続されている。したがって、第1地導体層131と第2地導体層132とは、同電位となる。
【0032】
(導体ポスト)
導体ポスト11b1~11b3の各々は、それぞれ、帯状導体12a1~12a3の各々に対応している。各帯状導体12aiに対応する各導体ポスト11bi(iは、1以上3以下の整数)は、主面111を平面視した場合に、各帯状導体12aiの一方の端部と重なる領域に設けられており(図1の(a)参照)、且つ、各帯状導体12aiと第1地導体層131とを短絡している(図1の(c)に示した導体ポスト11b2参照)。
【0033】
各導体ポスト11biは、基板11のうち各帯状導体12aiの一方の端部に対応する領域に設けられた貫通孔の内壁に導体膜を形成することによって得られる。なお、各導体ポスト11biは、上記貫通孔に充填された導体により構成されていてもよい。
【0034】
導体ポスト11c1,11c2,11c3,11c4の各々は、平面視において、それぞれ、地導体パターン12b2,12b3,12c2,12c3と重なる領域に設けられている。導体ポスト11c1,11c2,11c3,11c4の各々は、それぞれ、地導体パターン12b2,12b3,12c2,12c3の各々と第1地導体層131とを短絡している。
【0035】
なお、フィルタ装置1において、各導体ポスト11biは、2本の導体ポストにより構成されている。ただし、各導体ポスト11biを構成する導体ポストの数は、限定されるものではなく、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。また、各導体ポスト11biを構成する導体ポストの横断面の形状は、円形状に限定されるものではない。
【0036】
以上の構成を備えるフィルタ装置1は、従来技術を用いた同じ結合量を有するフィルタ装置に比べて、小型化することができるという効果を奏する。
【0037】
<第1の変形例>
次に、図1に示したフィルタ装置1の第1の変形例であるフィルタ装置1Aについて、図2を参照して説明する。図2は、フィルタ装置1Aの断面図であり、フィルタ装置1における図1の(b)に対応する断面図である。なお、説明の便宜上、フィルタ装置1Aにおいて、フィルタ装置1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。これは、この後に説明する各変形例についても同様である。
【0038】
フィルタ装置1Aは、フィルタ装置1をベースにして、各凹部11ajの形状を直方体状からハーフパイプ状に変更することによって得られる。本実施形態におけるハーフパイプ状とは、横断面が楕円状であるパイプを、パイプの中心軸に沿って、且つ、楕円状の短軸に沿って二分割することによって得られる形状である。
【0039】
フィルタ装置1においては、各凹部11ajが直方体状であったため、各凹部11ajの底面及び側面の境界に不連続な角が形成されていた(図1の(b)参照)。しかし、本変形例のフィルタ装置1Aのように、各凹部11ajの底面と側面とが滑らかに接続されていてもよい。また、フィルタ装置1Aの更なる変形例においては、フィルタ装置1をベースにして、直方体である各凹部11aiの底面を円弧(例えば半円状)により構成することもできる。
【0040】
本変形例においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本変形例のように、凹部11ajの形状をハーフパイプ状とすることにより、凹部11ajの形状が直方体状である場合に比べて、凹部11ajの第2地導体層132の厚さを均一に形成しやすくなるという効果を更に得ることができる。
【0041】
<第2の変形例>
次に、図1に示したフィルタ装置1の第2の変形例であるフィルタ装置1Bについて、図3を参照して説明する。図3の(a)は、フィルタ装置1Bの平面図である。図3の(b)は、フィルタ装置1BのA-A’断面図であり、フィルタ装置1における図1の(b)に対応する断面図である。
【0042】
フィルタ装置1Bは、フィルタ装置1をベースにして、各凹部11ajの形状を、1つの直方体状から、幅を小さくした複数の直方体状に変更することによって得られる。したがって、本変形例では、1つの凹部11ajの形状について説明する。
【0043】
図3に示すように、フィルタ装置1Bの各凹部11ajは、左凹部11aj1、中凹部11aj2、右凹部11aj3により構成されている。なお、ここでいう「左」、「中」、「右」という用語は、単に1つの凹部11ajを構成する3つの凹部を区別するためだけのものであり、それ以外の意味は有しない。
【0044】
左凹部11aj1、中凹部11aj2、及び、右凹部11aj3の各々は、フィルタ装置1の各凹部11ajと同様に、直方体状である。ただし、左凹部11aj1、中凹部11aj2、及び、右凹部11aj3の各々は、フィルタ装置1の各凹部11ajと比較して、幅が約1/5に狭められている。そのうえで、左凹部11aj1、中凹部11aj2、及び、右凹部11aj3の各々は、等間隔になるように配置されている。なお、フィルタ装置1Bにおける各凹部11ajの幅は、フィルタ装置1における各凹部11ajの幅と等しい。
【0045】
本変形例においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本変形例のように、各凹部11ajを、複数の凹部に分割して構成することにより、1つの凹部で形成するよりも製造しやすいという効果が得られる。また、幅の狭い凹部を複数設けることにより、フィルタ装置1と比較して基板11の強度を高められるという効果を更に得ることができる。なお、本変形例においても、前述の第1の変形例を適用することが可能である。それにより、第1の変形例で得られる効果を併せて得ることができる。
【0046】
<第3の変形例>
【0047】
次に、図1に示したフィルタ装置1の第3の変形例であるフィルタ装置1Cについて、図4を参照して説明する。図4は、フィルタ装置1Cの断面図であり、フィルタ装置1における図1の(b)に対応する断面図である。
【0048】
フィルタ装置1Cは、図4に示すように、凹部11ajが、平面視において、複数の帯状導体12aiの各々の両側に配置されている。具体的には、平面視において、帯状導体12a1の両側に凹部11a1と凹部11a2が配置されている。また、帯状導体12a2の両側に凹部11a3と凹部11a4が配置されている。さらに、帯状導体12a3の両側に凹部11a5と凹部11a6が配置されている。
【0049】
なお、例えば2つの帯状導体12aiの間に配置される2つの凹部11ajを合わせた幅は、フィルタ装置1における1つの凹部11ajの幅と同程度である。
【0050】
本変形例においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、本変形例においても、前述の第1の変形例を適用することが可能である。それにより、第1の変形例で得られる効果を併せて得ることができる。また、フィルタ装置1Cは、凹部11ajが設けられていない場合と比較して、インピーダンスの制御という観点から小型化の効果が期待できる。これは、インピーダンスを整合させた場合に、各帯状導体12aiの幅を、凹部11ajが設けられていない場合よりも狭くすることができるためである。
【0051】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係るフィルタ装置2について、図5を参照して説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図5の(a)は、フィルタ装置2の平面図である。図5の(b)及び(c)は、フィルタ装置2の断面図である。図5の(b)は、図5の(a)に示したA-A’線に沿った断面における断面図であり、図5の(c)は、図5の(a)に示したB-B’線に沿った断面における断面図である。フィルタ装置2は、図1に示したフィルタ装置1の一変形例であるともいえる。したがって、説明の便宜上、フィルタ装置2において、フィルタ装置1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。これは、この後に説明する各変形例についても同様である。
【0052】
(更なる凹部)
図5に示すように、フィルタ装置2は、フィルタ装置1をベースにして、主面112に、凹部11a1~11a2に加えて、凹部11d1~11d3を有する。凹部11d1~11d3は、第2凹部の一例である。
【0053】
主面112に設けられた凹部11d1~11d3の各々は、それぞれ、対向する帯状導体12a1~12a3の各々に対応している。各帯状導体12aiに対応する各凹部11diは、主面111を平面視した場合に各帯状導体12aiと重なるように設けられている(図5の(a)参照)。本実施形態において、各凹部11diは、各帯状導体12aiを包含するように設けられている。ただし、各凹部11diは、少なくともその一部が各帯状導体12aiの少なくとも一部に重なっていればよい。
【0054】
凹部11diの深さは、凹部11ajの深さと同等である。また、各凹部11diの表面を構成する底面及び側面は、凹部11ajと同様に、第2地導体層132により覆われている(図5の(b)参照)。
【0055】
本実施形態において、各凹部11diの形状は、直方体状である。ただし、各凹部11diの形状は、直方体状に限定されるものではなく、適宜定めることができる。
【0056】
本実施形態において、各凹部11diの幅は、対応する各帯状導体12aiの幅を上回る。ただし、各凹部11diの幅は、各帯状導体12aiの幅より狭くてもよいし、各帯状導体12aiの幅と等しくてもよい。
【0057】
なお、各帯状導体12aiと各凹部11diの底面との間隔は、各帯状導体12aiと各凹部11diの底面に設けられた第2地導体層132との結合量が所望の大きさとなるように適宜調整されている。
【0058】
本実施形態においては、各帯状導体12aiの各々が延伸されている方向である長さ方向に沿ってみた場合に、各凹部11diの長さは、平面視においてその凹部11diに重なっている帯状導体12aiの長さを上回る(図5の(c)参照)。また、各帯状導体12aiの長さ方向に沿ってみた場合に、各凹部11diは、その凹部11diに重なっている帯状導体12aiを包含している(図5の(c)参照)。ただし、各凹部11diの長さは、その凹部11diに重なっている帯状導体12aiの長さと等しくてもよいし、その凹部11diに重なっている帯状導体12aiの長さよりも短くてもよい。なお、各凹部11diは、平面視において、少なくともその一部が、当該凹部11diに対応する帯状導体12aiの少なくとも一部と重なっていればよい。
【0059】
(導体ポスト)
本実施形態においては、導体ポスト11b1~11b3の各々は、それぞれ、帯状導体12a1~12a3の各々に対応している。各帯状導体12aiに対応する各導体ポスト11biは、主面111を平面視した場合に、各帯状導体12aiと各凹部11diとが重なる領域(本実施形態においては、一方の端部)に設けられており(図5の(a)参照)、且つ、各帯状導体12aiと第2地導体層132とを短絡している(図5の(c)に示した導体ポスト11b2参照)。また、凹部11diの底面のうち、1又は複数の導体ポスト11biを包含する領域と、111主面との間隔は、一定である。
【0060】
なお、本実施形態においては、主面111を平面視した場合に、各凹部11diが各帯状導体12aiを包含している。そのため、平面視において、各導体ポスト11biは、各凹部11diの内部に位置している。ただし、各導体ポスト11biが設けられる位置は、各凹部11diの内部に限定されるものではなく、各凹部11diの外部(すなわち第1地導体層)であってもよいし、各凹部11diの外縁(すなわち側面)上であってもよい。
【0061】
第2の実施形態においては、凹部11a1~11a2に加えて、凹部11d1~11d3を有する。凹部11d1~11d3を設けることにより、複数の帯状導体12aiの各々と、各帯状導体12aiに最も近接する地導体層13(第2地導体層132)との間隔が狭くなることに起因して、当該帯状導体12aiと当該地導体層13との間に生じる電気力線が、主面111の法線方向に集中し、主面111の面内方向に広がりにくくなる。従って、隣接する帯状導体12ai同士間の結合を弱めることができる。そのため、第2の実施形態に係るフィルタ装置2では、隣接する帯状導体12ai同士に生じる結合の大きさが従来と同程度になるように設計した場合に、フィルタ装置1よりもさらに隣接する帯状導体12ai同士の間隔を狭くすることができる。つまり、フィルタ装置2の大きさをさらに小さくすることができる。
【0062】
なお、第2の実施形態においても、凹部11a1~11a2及び凹部11d1~11d3の少なくともいずれかに対して、第1の実施形態の第1の変形例及び第2の変形例の少なくともいずれかを組み合わせることができる。その場合、各変形例に応じた効果を併せて得ることができる。
【0063】
<第4の変形例>
次に、図5に示したフィルタ装置2の第1の変形例(本発明の第4の変形例)であるフィルタ装置2Aについて、図6を参照して説明する。図6は、フィルタ装置2Aの断面図であり、フィルタ装置2における図5(b)に対応する断面図である。
【0064】
フィルタ装置2Aは、図6に示すように、凹部11ajの深さL1が、凹部11diの深さL2よりも大きい(深い)。具体的には、フィルタ装置2に比べて、凹部11ajの深さL1をより深くしている。これにより、凹部11ajの深さL1と凹部11diの深さL2とが同じ場合よりも、隣接する帯状導体12ai同士に生じる結合の大きさをさらに小さくすることができる。なお、第4の変形例においても、凹部11a1~11a2及び凹部11d1~11d3の少なくともいずれかに対して、第1の変形例及び第2の変形例の少なくともいずれかを組み合わせることができる。
【0065】
<第5の変形例>
次に、図5に示したフィルタ装置2の第2の変形例(本発明の第5の変形例)であるフィルタ装置2Bについて、図7を参照して説明する。図7の(a)は、フィルタ装置2Bの平面図である。図7の(b)及び(c)は、フィルタ装置2Bの断面図である。図7の(b)は、図7の(a)に示したA-A’線に沿った断面における断面図であり、図7の(c)は、図7の(a)に示したB-B’線に沿った断面における断面図である。
【0066】
(凹部)
フィルタ装置2Bは、フィルタ装置2をベースにして、第2凹部11d1~11d3の長さを短くすることによって得られる。そのため、フィルタ装置2Bにおいては、各帯状導体12aiの一方の端部が、平面視において当該帯状導体12aiに重なっている第2凹部11diから突出している(図7の(a)及び(c)参照)。
【0067】
なお、各帯状導体12aiの長さ方向に沿ってみた場合(図7の(c)参照)に、各第2凹部11diを設ける位置は、各導体ポスト11biと、各導体ポスト11biに近接する第2地導体層132との間隔が、各帯状導体12aiと各第2凹部11diの底面との間隔と同程度になるように定められている。より詳しくは、各第2凹部11diを設ける位置は、各導体ポスト11biと当該導体ポスト11biに近接する第2地導体層132(第2凹部11diの側面のうち導体ポスト11bi側の側面を覆う第2地導体層132)との間に生じる結合量が、各帯状導体12aiと各第2凹部11diの底面に設けられた第2地導体層132との間に生じる結合量と同程度になるように定められている。
【0068】
(導体ポスト)
フィルタ装置2Bの導体ポスト11b1~11b3の各々は、フィルタ装置2の導体ポスト11b1~11b3の各々と同様に、それぞれ、帯状導体12a1~12a3の各々に対応している。各帯状導体12aiに対応する各導体ポスト11biは、主面111を平面視した場合に、各帯状導体12aiの一方の端部であって、各第2凹部11diから突出している一方の端部と、第1地導体層131とが重なる領域に設けられている。各導体ポスト11biは、前記一方の端部と、第1地導体層131とを短絡している。各導体ポスト11biは、当該導体ポスト11biに近接する第2地導体層132との間に所定の結合量を有するので、当該第2地導体層132とともに二導体線路を構成する。
【0069】
このようにフィルタ装置2Bにおいては、各帯状導体12aiに加えて各導体ポスト11biが二導体線路の信号線として機能するため、各帯状導体12aiの長さを、フィルタ装置2の各帯状導体12aiの長さよりも基板11の厚さ分だけ短くすることができる。
【0070】
なお、本実施形態において、各導体ポスト11biは、2本の導体ポストにより構成されている。ただし、各導体ポスト11biを構成する導体ポストの本数は、限定されるものではない。なお、各帯状導体12aiの幅と、各導体ポスト11biの実効的な幅との差を小さくするために、(1)各導体ポスト11biを構成する導体ポスト同士が離間している場合、各導体ポスト11biを構成する導体ポストの直径の合計値は、各帯状導体12aiの幅に近いことが好ましく、(2)各導体ポスト11biを構成する導体ポスト同士が一体となっている場合、各導体ポスト11biの幅(各帯状導体12aiの幅方向に沿った各導体ポスト11biの長さ)は、各帯状導体12aiの幅に近いことが好ましい。
【0071】
<第6の変形例>
図7に示したフィルタ装置2Bの一変形例であるフィルタ装置2Cについて、図8を参照して説明する。図8は、フィルタ装置2Cが備えている帯状導体の1つである帯状導体12a2の一方の端部の拡大平面図である。なお、説明の便宜上、フィルタ装置2Cにおいて、フィルタ装置2Bにて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0072】
フィルタ装置2Cは、フィルタ装置2Bをベースにして、各導体ポスト11biの形状を変更することによって得られる。図8においては、各導体ポスト11biの一例として導体ポスト11b2を示しているが、他の導体ポスト11b1,11b3も導体ポスト11b2と同一に構成されている。
【0073】
具体的には、フィルタ装置2Bの各導体ポスト11biは、各導体ポストの横断面形状が円形状である2本の導体ポストにより構成されていた。それに対して、フィルタ装置2Cの各導体ポスト11biは、各導体ポストの横断面形状が円形状である8本の導体ポストにより構成されており、且つ、隣接する導体ポスト間の中心間距離が各導体ポストの直径よりも狭くなるように構成されている。その結果、各帯状導体12aiの幅方向に沿ってみた場合に、フィルタ装置2Cの各導体ポスト11biの幅は、各帯状導体12aiの幅と同程度になっている。
【0074】
なお、本実施形態において、各導体ポスト11biの幅は、各帯状導体12aiの幅の92.5%である。ただし、各導体ポスト11biの幅は、これに限定されるものではない。なお、各帯状導体12aiと各導体ポスト11biとの連続性を高めるために、各帯状導体12aiの幅に帯する各導体ポスト11biの幅の割合は、80%以上120%以下であることが好ましい。
【0075】
〔実施例〕
次に、本発明の第1の実施例~第3の実施例と、第1の比較例及び第2の比較例とについて、図9及び図10を参照して説明する。図9の(a)は、本発明の第1の実施例の構造を示す平面図であり、図9の(b)は、本発明の第2の実施例の構造を示す平面図であり、図9の(c)は、第2の比較例の構造を示す平面図である。図10の(a)は、本発明の第1の実施例~第3の実施例の構造の透過強度の周波数依存性を示すグラフであり、図10の(b)は、第1の比較例及び第2の比較例の構造の透過強度の周波数依存性を示すグラフである。なお、以下において、透過強度の周波数依存性のことを透過特性と称する。
【0076】
各実施例及び各比較例の構造は、石英ガラス製の基板と、基板の一方の主面である第1主面に、互いに平行に設けられた2つの帯状導体A1,A2と、基板の他方の主面である第2主面に設けられた地導体層とを備えている。
【0077】
各実施例及び各比較例の構造と、各実施形態に係るフィルタ装置との対応関係を、図9の(a)に示した第1の実施例の構造と、図3に示した第2の変形例のフィルタ装置1Bとを用いて説明すれば以下の通りである。すなわち、第1の実施例の構造における基板、帯状導体、及び地導体層の各々は、それぞれ、フィルタ装置1Bにおける基板11、帯状導体12ai(iは、1,2,3のうち連続する2つ)、及び地導体層13に対応する。このように、各実施例及び各比較例の構造は、複数の帯状導体を備えたフィルタ装置の構造から結合する複数の帯状導体の最小構成である2本の帯状導体を抜き出した構造といえる。なお、図9の(a)~(c)においては、基板の外縁及び地導体層の図示を省略している。
【0078】
各実施例及び各比較例では、基板として、比誘電率3.82、厚さ400μmである石英ガラスを採用し、帯状導体A1,A2の形状を以下のように定めた(図9の(a)~(c)参照)。帯状導体A1,A2の形状として、幅が350μm、長さが1550μmである長方形状を採用し、帯状導体A1と帯状導体A2との間隔として350μmを採用した。なお、帯状導体A1,A2に関係するサイズについては、図9の(a)のみに図示し、サイズが共通する図97の(b)及び(c)においては図示を省略する。また、各実施例及び第2の比較例に設けられている凹部については、後述する。
【0079】
各実施例及び各比較例では、このように構成された構造を計算モデルとして用いて透過強度の周波数依存性をシミュレーションした結果を図10に示す。
【0080】
なお、各実施例及び各比較例の構造のように、電磁気的に結合した2つの帯状導体においては、隣接する帯状導体間の結合係数kが次の式(1)で表されることが知られている。なお、2つの帯状導体の各々は、共振器として振る舞う。
【数1】
【0081】
ここで、結合係数kは、共振器間の結合の強さを示す指標であり、結合係数kが大きいほど共振器間の結合が強いことを示す。式(1)中、fは周波数が大きい側の共振周波数、fは周波数が小さい側の共振周波数である。
【0082】
(第1の実施例)
図9の(a)に示すように、第1の実施例の構造においては、基板の第2主面の帯状導体A1,A2に対向していない領域のうち、隣接する帯状導体A1,A2同士の間の領域に凹部B1が設けられている。凹部B1は、第1の凹部の一例である。フィルタ装置1Bの各凹部11ajは、3つの凹部11aj1,11aj2,11aj3により構成されていたが、本実施例の凹部B1は、2つの凹部B11,B12により構成されている。凹部B11,B12の形状は、それぞれ、幅が100μm、長さが1550μm、深さ250μmである直方体状である。また、凹部B11と凹部B12との間隔は、100μmである。また、平面視した場合に、帯状導体A1と凹部B11との間隔、及び、凹部B12と帯状導体A2との間隔は、それぞれ25μmである。
【0083】
(第2の実施例)
図9の(b)に示すように、第2の実施例の構造は、第1の実施例の構造をベースにして、基板の第2主面のうち、平面視において帯状導体A1と重なる領域に凹部C1を設け、平面視において帯状導体A2と重なる領域に凹部C2を設けることによって得られる。凹部C1,C2は、第2の凹部の一例である。凹部C1は、凹部C11,C12により構成されており、凹部C2は、凹部C21,C22により構成されている。凹部C11,C12,C21,C22の形状は、それぞれ、幅が100μm、長さが1550μm、深さ250μmである直方体状である。凹部C11と凹部C12との間隔、及び、凹部C21と凹部C22との間隔は、100μmである。帯状導体A1の長辺から凹部C1及び凹部C2の各々までの距離は、何れも25μmである。第2の実施例の構造は、図5に示したフィルタ装置2の凹部11a1,11a2,11d1,11d2,11d3を変形したものともいえる。
【0084】
(第3の実施例)
第3の実施例の構造は、図9の(b)に示した第2の実施例の構造をベースにして、凹部C1,C2の深さを250μmから300μmに変更することによって得られる。したがって、平面視において、第3の実施例の構造は、第2の実施例の構造と一致する。
【0085】
(第1の比較例)
第1の比較例の構造は、図9の(a)に示した第1の実施例をベースにして、凹部B1を省略することによって得られる。第1の比較例においては、基板の第1主面及び第2主面の何れにも凹部は形成されていない。
【0086】
(第2の比較例)
図9の(c)に示すように、第2の比較例の構造は、第1の比較例の構造をベースにして、基板の第1主面の帯状導体A1,A2が設けられていない領域のうち、隣接する帯状導体A1,A2同士の間の領域に凹部D1を設けることによって得られる。第2の比較例の構造は、特許文献1の図1に示された構造に対応する。
【0087】
図10の(a)に示された第1の実施例、第2の実施例、及び第3の実施例の各々の透過特性から得られた結合係数kは、それぞれ、0.0864、0.0621、及び0.0466であった。
【0088】
一方、図10の(b)に示された第1の比較例及び第2の比較例の各々の透過特性から得られた結合係数kは、それぞれ、0.185及び0.149であった。
【0089】
以上の結果より、凹部が設けられていない第1の比較例の構造と比較して、第2の比較例の構造は、結合係数kを小さくすることができるが、第1の実施例、第2の実施例、及び第3の実施例の各々は、何れも、第2の比較例よりも結合係数kを小さくできることがわかった。つまり、従来技術と同じ結合係数を有するフィルタ装置を製造する場合、本発明の一態様に係るフィルタ装置は、従来技術のフィルタ装置よりも小型化できることがわかった。
【0090】
〔まとめ〕
本発明の第1の態様に係るフィルタ装置は、対向する第1主面及び第2主面を含む誘電体製の基板と、前記第1主面側に設けられ、且つ、隣接する帯状導体同士が電磁気的に結合している複数の帯状導体と、少なくとも前記第2主面側に設けられた地導体層と、を備え、前記第1主面において隣接する帯状導体同士の間に介在する各領域を中間領域として、前記第2主面において当該中間領域の各々に対向する領域には、表面が前記地導体層により覆われた1又は複数の第1凹部が形成されている。
【0091】
上記の構成によれば、基板に凹部が設けられていないフィルタ装置(例えば、特許文献1の図3に記載されたフィルタ装置)と比較して、隣接する帯状導体同士に生じる結合の大きさが減少する。そのため、隣接する帯状導体同士に生じる結合の大きさを従来と同程度になるように設計した場合に、隣接する帯状導体同士の間隔を狭くすることができるので、フィルタ装置を従来よりも小型化することができる。これは、隣接する帯状導体同士の間の基板に凹部が設けられていないフィルタ装置と比較して、隣接する帯状導体同士の間の基板に凹部という空気層が形成されることにより、隣接する帯状導体同士の間の電気力線が減少するためである。
【0092】
また、本発明の第2の態様に係るフィルタ装置は、上述した第1の態様に係るフィルタ装置の構成に加えて、前記1又は複数の第1の凹部の各々について、前記複数の帯状導体の各々が延伸されている方向である長さ方向に沿ってみた場合に、前記1又は複数の第1の凹部の各々の両端部は、当該第1の凹部に隣接する2つの帯状導体の両端部よりも突出している、構成が採用されている。
【0093】
上記の構成によれば、凹部の底面に設けられた地導体層は、マイクロストリップライン線路を構成する地導体層として十分な大きさを有する。
【0094】
また、本発明の第3の態様に係るフィルタ装置は、上述した第1の態様又は第2の態様に係るフィルタ装置の構成に加えて、前記複数の帯状導体の各々について、前記第2主面には、平面視において当該帯状導体と重なり、且つ、表面が前記地導体層により覆われた1又は複数の第2凹部が形成されている、構成が採用されている。
【0095】
上記の構成によれば、複数の帯状導体の各々と、各帯状導体に最も近接する地導体層との間隔を狭くなることに起因して、当該帯状導体と当該地導体層との間に生じる電気力線が、第1主面の法線方向に集中し、第1主面の面内方向に広がりにくくなるため、隣接する帯状導体同士間の結合をさらに弱めることができる。
【0096】
また、本発明の第4の態様に係るフィルタ装置は、上述した第3の態様に係るフィルタ装置の構成に加えて、前記第1凹部の深さが、前記第2凹部の深さよりも深い、構成が採用されている。
【0097】
上記の構成によれば、隣接する帯状導体同士間の結合をさらに弱めることができる。
【0098】
また、本発明の第5の態様に係るフィルタ装置は、上述した第3の態様又は第4の態様に係るフィルタ装置の構成に加えて、前記複数の帯状導体の各々が延伸されている方向である長さ方向に沿ってみた場合に、前記第2凹部の各々は、長さが、平面視において当該第2凹部に重なっている帯状導体の長さを上回り、且つ、当該帯状導体を包含している、構成が採用されている。
【0099】
上記の構成によれば、凹部の底面に設けられた地導体層は、マイクロストリップライン線路を構成する地導体層として十分な大きさを有する。
【0100】
また、本発明の第6の態様に係るフィルタ装置は、上述した第1の態様から第5の態様のいずれか一態様に係るフィルタ装置の構成に加えて、前記複数の帯状導体の各々について、平面視において当該帯状導体と当該第2凹部とが重なる領域に設けられ、且つ、当該帯状導体と前記地導体層とを短絡する1又は複数の導体ポストを更に備えている、構成が採用されている。
【0101】
上記の構成によれば、帯状導体と第2凹部とを短い導体ポストで短絡できるので、リアクタンスを最小限に抑えた片端ショートストリップ共振器を実現できる。
【0102】
また、本発明の第7の態様に係るフィルタ装置は、上述した第3の態様又は第4の態様に係るフィルタ装置の構成に加えて、前記第2主面に設けられた前記地導体層を第1地導体層とし、前記1又は複数の第2凹部の前記表面を覆う前記地導体層を第2地導体層として、前記複数の帯状導体の各々について、当該帯状導体の一方の端部は、平面視において当該帯状導体に重なっている第2凹部から突出しており、前記複数の帯状導体の各々について、平面視において前記一方の端部と前記第1地導体層とが重なる領域に設けられ、且つ、前記一方の端部と前記第1地導体層とを短絡する1又は複数の導体ポストであって、前記第2地導体層のうち前記第2凹部の側面を覆う第2地導体層とともに二導体線路を構成する1又は複数の導体ポストを更に備えている、構成が採用されている。
【0103】
上記の構成によれば、各帯状導体と、第2凹部の底面に設けられた第2地導体層とが二導体線路として機能することに加えて、1又は複数の導体ポストと、第2凹部の側面に設けられた第2地導体層とが二導体線路として機能する。したがって、第6の態様に係るフィルタ装置は、各帯状導体の長さ方向における長さを短くすることができるので、フィルタ装置を長さ方向においても小型化することができる。
【0104】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1 フィルタ装置
11 基板
111,112 主面(第1主面,第2主面)
11a1~11a2 第1凹部
11b1~11b3,11c1~11c4 導体ポスト
11d1~11d3 第2凹部
12 導体パターン
12a1~12a3 帯状導体
12b,12c コプレーナ線路
12b1,12c1 信号線
12b2,12b3,12c2,12c3 地導体パターン
13 地導体層
131,132 第1地導体層,第2地導体層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10