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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】汚泥再生用ミキサー
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20230727BHJP
   B01F 27/112 20220101ALI20230727BHJP
   B01F 27/2322 20220101ALI20230727BHJP
   B01F 27/701 20220101ALI20230727BHJP
【FI】
C02F11/00 Z ZAB
C02F11/00 C
B01F27/112
B01F27/2322
B01F27/701
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023052482
(22)【出願日】2023-03-28
【審査請求日】2023-03-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598067669
【氏名又は名称】株式会社熊野技建
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】小田原 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】木山 邦弘
(72)【発明者】
【氏名】海原 一仁
(72)【発明者】
【氏名】水口 智識
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-202266(JP,A)
【文献】中国実用新案第210846232(CN,U)
【文献】中国実用新案第209848768(CN,U)
【文献】中国実用新案第209752735(CN,U)
【文献】特開2020-075227(JP,A)
【文献】特開2002-036229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F11/00-20
B09B1/00-5/00
B09C1/00-10
B01F27/00-96、35/00-95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥の再資源化のため、汚泥を濃縮して脱水した後に残った固形の脱水ケーキを器内に設けた撹拌用の羽根を回転させて混練するミキサーであって、
前記ミキサーは、同一高さで水平に離間して延び回転自在の二本の軸周りに複数の撹拌用の羽根が設けられた二軸式で、前記器は、前記軸を中心軸として水平に延びる二つの円筒部の側面下部が連設されてなり、
前記器を構成する二つの円筒部のそれぞれの底部に開閉式の排出口を設けるとともに、前記排出口に網状スクリーンを前記器の内側から取付け、前記混練によりペースト状になった汚泥を、前記スクリーンを介して前記排出口から排出するようにしたことを特徴とする汚泥再生用ミキサー。
【請求項2】
汚泥の再資源化のため、汚泥を濃縮して脱水した後に残った固形の脱水ケーキを器内に設けた撹拌用の羽根を回転させて混練するミキサーであって、
前記ミキサーは、同一高さで水平に離間して延び回転自在の二本の軸周りに複数の撹拌用の羽根が設けられた二軸式で、前記器は、前記軸を中心軸として水平に延びる二つの円筒部の側面下部が連設されてなり、
前記器を構成する二つの円筒部のうち一方の円筒部の底部にだけ開閉式の排出口を設けるとともに、前記排出口に網状スクリーンを前記器の内側から取付け、前記混練によりペースト状になった汚泥を、前記スクリーンを介して前記排出口から排出するようにしたことを特徴とする汚泥再生用ミキサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥再生用ミキサーに関する。より詳細には、汚泥を濃縮して脱水した後に残った固形の脱水ケーキを混練する汚泥再生用ミキサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、汚泥の再資源化のため、汚泥を濃縮して脱水した後に残った固形の脱水ケーキ(「スラッジ」と呼ばれることもある)を、例えば、図6図8に示すような、ミキサー100の器10内に投入し、撹拌用の羽根20を回転させて混練してリサイクルする動きが見られる。
【0003】
このミキサー100は、「二軸式ミキサー」と呼ばれるもので、2本の水平軸11,12のまわりに取付けた撹拌用の羽根(撹拌ブレード及び補助ブレード)20によって、内容物は、器(混合槽)10の底部及び中央部より上部にすくい上げられた後、左右に押しやられ、さらに前後に移動させられるようにして練り混ぜられる。これによれば、高い練り混ぜ効果が発揮されることから、現在の生コンクリート製造工場で使用されているミキサーはこのタイプが主流である(例えば、特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-36229号公報
【0005】
内容物は練り混ぜられた後は、器10の下部に設けられた排出機構30を作動させることにより器10の底部に設けられたゲート15を開放させて排出口18から下方に排出される。
排出機構30は、図8に示すように、エアシリンダー31によってゲート開閉用駆動軸32を回転させることで、ゲート15を開閉させるものである。
【0006】
そうしたミキサー100を使用する上での特徴としてバッチ式を採用していることが挙げられる。
バッチ式とは、一回毎(1バッチ毎)に予め規定された量の材料を投入し撹拌(練り混ぜ)、そして排出する方式のことである。すなわち、撹拌混合の都度排出用のゲート15を開放して内容物を入れ替えるやり方である。
【0007】
このようなミキサー100は、水も漏らさぬように緻密に設計されていて、内容物を練り混ぜるには最適であるが、これらは混ぜることを目的に造られているため、固形化した内容物の分解には適するものではなく、長い時間を掛けて撹拌しても固形物を完全に分解することは殆ど不可能であることが判っている。
汚泥由来の固形物にはある程度の水分が含まれているため、これを撹拌すると練り返しにより物体がペースト状に変化する。撹拌中にミキサー100の器10や撹拌用の羽根20(いずれも硬い鉄素材であることが多い)に触れることによってそれぞれの個体(固形物)が擦り減り、それ自体が徐々に小さくなっていくが、この状態が進行すると、擦り減りによって小さくなった固形物はペーストの中を遊泳するだけとなる。従って、どんなに練り混ぜても「粒」が残ってしまう。
【0008】
この「粒」の弊害は輸送配管を閉塞させるところにもある。
つまり、次工程に据えた造粒ミキサーまでの輸送ルートを詰まらせるのである。プラントの構造上、登り勾配になっている部分(ルート)があるが、ペースト状のものと比較して比重の重い固形物たる粒がそこに詰り配管を閉塞させるという不具合を生じさせていた。
【0009】
これを防止するために採られた措置は、二軸式ミキサー100の底部にある排出口18の下(本体の直下)にスクリーン(金網)を設けることであった。
撹拌によってペースト状になったのを確認した後にゲート15を開放し、そこに含まれている粒を下方から網でキャッチするという極めて単純な手法に頼らざるを得なかった。さらに、スクリーン(金網)に残った粒は人力によって拾い集めるが、これもいかにも原始的なやり方である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的とするところは、簡易な設備で汚泥の再生を効率的に実施しうる汚泥再生用ミキサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の汚泥再生用ミキサーは、汚泥の再資源化のため、汚泥を濃縮して脱水した後に残った固形の脱水ケーキを器(10)内に設けた撹拌用の羽根(20)を回転させて混練するミキサー(100)であって、
前記ミキサー(100)は、同一高さで水平に離間して延び回転自在の二本の軸(11,12)周りに複数の撹拌用の羽根(20)が設けられた二軸式で、前記器(10)は、前記軸(11,12)を中心軸として水平に延びる二つの円筒部(10A,10B)の側面下部が連設されてなり、
前記器(10)を構成する二つの円筒部(10A,10B)のそれぞれの底部に開閉式の排出口(18)を設けるとともに、前記排出口(18)に網状スクリーン(50)を前記器(10)の内側から取付け、前記混練によりペースト状になった汚泥を、前記スクリーン(50)を介して前記排出口(18)から排出するようにしたことを特徴とする。
【0013】
また本発明の汚泥再生用ミキサーは、汚泥の再資源化のため、汚泥を濃縮して脱水した後に残った固形の脱水ケーキを器(10)内に設けた撹拌用の羽根(20)を回転させて混練するミキサー(100)であって、
前記ミキサー(100)は、同一高さで水平に離間して延び回転自在の二本の軸(11,12)周りに複数の撹拌用の羽根(20)が設けられた二軸式で、前記器(10)は、前記軸(11,12)を中心軸として水平に延びる二つの円筒部(10A,10B)の側面下部が連設されてなり、
前記器(10)を構成する二つの円筒部(10A,10B)のうち一方の円筒部(10B)の底部にだけ開閉式の排出口(18)を設けるとともに、前記排出口(18)に網状スクリーン(50)を前記器(10)の内側から取付け、前記混練によりペースト状になった汚泥を、前記スクリーン(50)を介して前記排出口(18)から排出するようにしたことを特徴とする。
【0016】
なお、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、固形の脱水ケーキを器内に設けた撹拌用の羽根を回転させて混練するミキサーの器の底部に開閉式の排出口を設けるとともに、排出口に網状スクリーンを器の内側から取付け、混練によりペースト状になった汚泥を、スクリーンを介して排出口から排出するようにしたので、脱水ケーキの混練時に器内に発生する「粒」は排出口から排出されることなく器内に残る。
器内に残った「粒」は、排出口を開放した状態で、脱水ケーキを器内に連続的に投入しつつ羽根を回転させて混練することによって、徐々に小さくなりやがてペースト化して排出口から排出される。それと同時に新たに投入された脱水ケーキにより新たな「粒」も発生するが、同様に脱水ケーキを連続的に投入することによってその「粒」も小さくなりペースト化して排出される。このような工程を繰り返すことにより、器内には、「粒」は残るがその量は一定量を超えない。
【0018】
このように、「粒」はミキサーから排出されないので、例えば、次工程に据えた造粒ミキサーまでの輸送ルートを詰まらせるといった心配はない。また、プラントの構造上、登り勾配になっている部分(ルート)があるが、ペースト状のものと比較して比重の重い固形物たる「粒」がそこに詰り配管を閉塞させるという不具合を生じさせることもない。
また、「粒」を下方から網でキャッチしたり、あるいは、スクリーン(金網)に残った「粒」を人力によって拾い集めるといった作業も不要となる。
このように本発明によれば、開閉式の排出口に器内からスクリーンを設けるといった極めて簡易な設備で、汚泥の再生を効率的に実施することができる。
【0019】
また本発明によれば、汚泥再生用ミキサーを、同一高さで水平に離間して延び回転自在の二本の軸周りに複数の撹拌用の羽根が設けられた二軸式で、器は、軸を中心軸として水平に延びる二つの円筒部の側面下部が連設されてなるものとした場合、開閉式の排出口を、器を構成する二つの円筒部のそれぞれの底部に設けてもよく、また、二つの円筒部のうち一方の円筒部の底部にだけに設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る汚泥再生用ミキサーの概略を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る汚泥再生用ミキサーで排出口が閉鎖した状態を示す、図1のB-B線断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る汚泥再生用ミキサーで排出口が開放した状態を示す、図1のB-B線断面図である。
図4図2及び図3に示すスクリーンの拡大斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る別の汚泥再生用ミキサーの概略を示す斜視図である。
図6】従来例に係る汚泥再生用ミキサーの概略を示す平面図である。
図7】従来例に係る汚泥再生用ミキサーで排出口が閉鎖した状態を示す、図6のA-A線断面図である。
図8】従来例に係る汚泥再生用ミキサーで排出口が開放した状態を示す、図6のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1乃至図3を参照して、本発明の実施形態に係る汚泥再生用ミキサー100について説明する。なお、従来例と同様の構成には同一の符号を付した。
【0023】
本実施形態に係る汚泥再生用ミキサー100は、汚泥の再資源化のため、汚泥を濃縮して脱水した後に残った固形の脱水ケーキ(図示を省略)を、図1に示すように、器10内に設けた撹拌用の羽根20を回転させて混練するために使用される。
ミキサー100は、図2及び図3に示すように、同一高さで水平に離間して延び回転自在の二本の軸11,12の周りに複数の撹拌用の羽根20が設けられた二軸式で、器10は、軸11,12を中心軸として水平に延びる二つの円筒部10A,10Bの側面下部が連設されてなる。
【0024】
器10を構成する二つの円筒部10A,10Bのそれぞれの底部には開閉式の排出口18を設けている。排出口18は断面形状が円弧状で長手方向に延びる開口部で、その外側(下側)に開閉式のゲート15を設けている。
ゲート15は、エアシリンダー31,ゲート開閉用駆動軸32などからなる排出機構30によって開閉される。すなわち、エアシリンダー31によってゲート開閉用駆動軸32を回転させることで、ゲート15は、図2に示す閉鎖状態から、図3に示すような開放状態にされる。
【0025】
そして、2つの排出口18には器10の内側から網状のスクリーン50がそれぞれ取付けられている。
スクリーン50は、図4に示すように、網部材51を上下から枠52,53で挟み込んだ基本構成となっていて(図4では部分的に示している)、長手方向に延びる排出口18を器10の内側から完全に覆う大きさに形成されている。網部材51の升目は希望するサイズのものに任意に設定することができ、場合によっては網部材51を二枚、あるいはそれ以上の複数重ねて強度を保持させるようにすることもできる。
【0026】
次に、このように構成された汚泥再生用ミキサー100を使用して汚泥を再生処理する方法について説明する。
【0027】
先ず、ミキサー100の初動時には、排出口18を閉鎖した状態で脱水ケーキを器10内に投入して混練を開始する。
これは、使用するスクリーン50の升目(網目)の大きさにもよるが、初動の衝撃加重を考慮し、網の破損を予防するための措置として排出口18を閉めたのである。また、固形物は天候や養生時の状態によって硬軟様々であり、硬い固形物がスクリーン50を直撃して網を破損させることも十分あり得ることから初動時には既設の頑丈なゲート15によって排出口18を閉めて撹拌を開始することとした。
【0028】
投入された脱水ケーキは、最初はそれらの個体がゴロゴロという表現が相応しい程度に転がっていき移動を始めるが、撹拌の衝撃等によって分割、細分化され、やがてペースト状になっていく。数分から10分間程度でペースト状となる。
ある程度ペースト状になったのを確認後、ゲート15を開いて既設の排出口18を開放した状態とし、脱水ケーキを器10内に連続的に投入する。
【0029】
ミキサー100の羽根20の回転により、分割、細分化された脱水ケーキは、当初はスクリーン50を目詰まりさせることもあるが、時間の経過と共に目詰まりが解消し、やがてペースト状になった液状物体が順次、開放状態の排出口18から排出されていく。
このとき、ミキサー100の内部(鉄素材)との接触や固形物同士の衝突、擦り減りで分割、細分化された固形物たる脱水ケーキはやがて「粒」となり、それら障害物との接触が少なくなるとペーストの中を遊泳するようになり、それ以上の細分化、ペースト化は望めなくなるか、或いは著しく困難になる。
【0030】
器10内に残った「粒」は、連続的に投入された脱水ケーキを、回転する羽根20で混練するときに徐々に小さくなりやがてペースト化して排出口18から排出されるが、それと同時に新たに投入された脱水ケーキにより新たな「粒」も発生し、このような工程を繰り返すことにより、器10内に「粒」は残るがその量は一定量を超えない。
作業終了後、最終的には僅かな粒がミキサー100内に残るが、排出口18から排出されたペーストの中に粒の混入はない。なお、ミキサー100内に残った粒はそのまま残置し、翌日のペースト原材料とする。
【0031】
得られたペースト状の汚泥の使途は様々である。造粒固化による「疑似石化」も可能であるし、含水率が30%程度であることから薄く延ばしながら加熱することで粉状にすることもできる。粉にしたものは「フィラー」と呼ばれる材料にも適用可能である。その他応用にも期待が出来る。また、ペースト状の汚泥を別の連続式ミキサーに投入して再生骨材原料として活用することもできる。
【0032】
なお、本実施形態では、器10を構成する二つの円筒部10A,10Bにそれぞれ設けられた排出口18にスクリーン50を設けるようにしたが、一方の円筒部10Bの底部にだけに開閉式の排出口18を設けるようにしてもよい。
【0033】
また、様々なミキサーに適用することができ、例えば、図5に示すように、パン型の混練ミキサー(遊星歯車式パン型ミキサーであってもよい)100の底部に排出口18を設け、器10の内側から排出口18を完全に覆うようにスクリーン50を設け、排出口18を開放した状態で脱水ケーキを器10の上から連続的に投入するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 器
10A 円筒部
10B 円筒部
11 水平軸
12 水平軸
15 ゲート
18 排出口
20 羽根
30 排出機構
31 エアシリンダー
32 ゲート開閉用駆動軸
50 スクリーン
51 網部材
52,53 枠
100 ミキサー
【要約】
【課題】簡易な設備で汚泥の再生を効率的に実施しうる汚泥再生用ミキサー及び汚泥再生処理方法を提供する。
【解決手段】汚泥の再資源化のため、汚泥を濃縮して脱水した後に残った固形の脱水ケーキを器10内に設けた撹拌用の羽根20を回転させて混練するミキサー100であって、器10の底部に開閉式の排出口18を設けるとともに、排出口18に網状スクリーン50を器10の内側から取付け、混練によりペースト状になった汚泥を、スクリーン50を介して排出口18から排出するようにした。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8