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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】中空シリカ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20230727BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230727BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230727BHJP
   C08K 7/26 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
C08L101/00
C08K3/36
C08K7/26
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023524086
(86)(22)【出願日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2023001898
【審査請求日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2022008120
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星田 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】浜田 文哉
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-070592(JP,A)
【文献】国際公開第2021/172294(WO,A1)
【文献】特開2014-055084(JP,A)
【文献】特開2014-055082(JP,A)
【文献】特開2012-136363(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111232993(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
B01J 13/00-13/22
C08G 77/00-77/62
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下であり、粒子中のシリカの含有量に対するアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計含有量が50質量ppm以下である中空シリカ粒子の製造方法であって、
中空シリカ粒子の測定周波数5.8GHzにおける、比誘電率が2.5以下、かつ、誘電正接が0.0050以下であり、
以下の工程を含む、中空シリカ粒子の製造方法。
工程A:カチオン界面活性剤Aを用いて疎水性液体の水性エマルションを作成する工程
工程B:工程Aで得られた水性エマルションに、シラノール前駆体、アルカリ性物質、及びカチオン界面活性剤Bを添加し、中空シリカ粒子前駆体を生成する工程
工程C:工程Bで得られた中空シリカ粒子前駆体を1000℃を超え1200℃以下で1時間以上熱処理する工程
【請求項2】
工程Bが、工程Aで得られた水性エマルションとシラノール前駆体の存在下に、アルカリ性物質とカチオン界面活性剤Bとを添加し、中空シリカ粒子前駆体を生成する工程である、請求項1に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項3】
工程Bにおける添加工程が、シラノール前駆体を含む水性エマルションに、アルカリ性物質とカチオン界面活性剤Bの混合物を添加することにより行う、請求項1又は2に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項4】
工程Bにおける添加工程が、シラノール前駆体を含む水性エマルションに、カチオン界面活性剤Bと混合したアルカリ性物質と接触させることにより行う、請求項1又は2に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項5】
アルカリ性物質が第四級アンモニウムの水酸化物塩である、請求項1又は2に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項6】
カチオン界面活性剤Aとカチオン界面活性剤Bがいずれも第四級アンモニウムの塩である、請求項1又は2に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項7】
シラノール前駆体が、オルトケイ酸アルキルエステル及びピロケイ酸アルキルエステルから選ばれる、請求項1又は2に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項8】
平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下であり、粒子中のシリカの含有量に対するアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計含有量が50質量ppm以下である中空シリカ粒子であって、
測定周波数5.8GHzにおける、比誘電率が2.5以下、かつ、誘電正接が0.0050以下である、中空シリカ粒子。
【請求項9】
空孔率が50体積%以上80体積%以下である、請求項8に記載の中空シリカ粒子。
【請求項10】
BET比表面積が30m/g以下である、請求項に記載の中空シリカ粒子。
【請求項11】
平均粒子径の変動係数が15%以上300%以下である、請求項に記載の中空シリカ粒子。
【請求項12】
最大粒子径が5.0μm以下である、請求項に記載の中空シリカ粒子。
【請求項13】
請求項8~12のいずれかに記載の中空シリカ粒子を配合した樹脂組成物。
【請求項14】
測定周波数5.8GHzにおける、比誘電率が2.8以下、かつ、誘電正接が0.0090以下である、請求項13に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
線熱膨張係数が70ppm/℃以下である、請求項13に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
請求項13に記載の樹脂組成物を含む絶縁材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空シリカ粒子の製造方法、中空シリカ粒子及びこれを配合した樹脂組成物、並びに絶縁材料に関する。
【背景技術】
【0002】
5Gに代表される高速通信技術や自動運転等に用いられるレーダー等では数十GHzの高周波の使用が検討されている。このような、高周波の電波に対応する高周波回路においては、伝送損失や伝送遅延の低減のために、低誘電率、低誘電正接の絶縁材料が必要とされており、現在、熱特性改善のために絶縁材料に配合されているシリカ粒子に対しても、低誘電率、低誘電正接が求められている。また、高周波回路は微細化が望まれており、絶縁材料に配合されるシリカ粒子の小粒子径化も求められている。
現在、シリカ粒子の低誘電化として中空シリカ粒子を用いることが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、平均粒子径が8μm以下、平均球形度が0.85以上、平均中空率が20~70体積%である球状中空シリカが記載されている。
また、特許文献2には、無孔質の外殻シリカ層の内部に空洞を有し、空隙率が20~95体積%の範囲にあり、平均粒子径が0.1~50μmの範囲にあるシリカ系粒子が記載されている。
更に、特許文献3には、シリカを含むシェル層を備え、シェル層の内部に空間部を有する中空シリカであって、1GHzでの比誘電率が1.3~5.0であり、かつ、1GHzでの誘電正接が0.0001~0.05である中空シリカ粒子が記載されている。
更に、特許文献4には、下記工程1~3を有する中空シリカ粒子の製造方法が記載されている。工程1:70質量%以上の水を含む液Aに対して、疎水性有機物、親水性有機溶媒、及び界面活性剤を含有する液Bを添加し、疎水性有機物の量が水100質量部に対して1.0質量部以上20質量部以下の乳化物を得る工程。工程2:得られた乳化物にシリカ源を添加し、アルカリ性物質の存在下でシリカを含む外殻部を形成し、複合シリカ粒子を得る工程。工程3:複合シリカ粒子から疎水性有機物を除去し、中空シリカ粒子を得る工程。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-206436号公報
【文献】特開2013-103850号公報
【文献】国際公開第2021/172294号
【文献】特開2016-121060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の球状中空シリカは、シリカ微粒子を高温火炎中に供給することで様々な粒子径を有する球状中空シリカとして製造される。そのため、比誘電率が低い球状中空シリカは粒子径が大きく微細化された回路基板への使用は困難であり、粒子径の小さな球状中空シリカは空孔率が低いため、比誘電率は中実シリカと大きな差がないという問題を有している。
また、特許文献2に記載のシリカ系粒子は、ケイ酸アルカリ水溶液を噴霧乾燥した後に水熱処理することで製造される。そのため、得られたシリカ系粒子は、比誘電率は低いものの、水熱処理により生じた多数のシラノール基を有するため、誘電正接が高いという問題を有している。
更に、特許文献3には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属から選択される金属を含む中空シリカ粒子を焼成することで、焼成時にこれらの金属イオンがフラックスとして機能することで比表面積を低下させ、シラノール基の縮合を促進し、中空シリカ粒子に含まれるシラノール基を減らすことで誘電正接を低減させることが記載されている。しかしながら、例えば、特開2016-94527号公報に記載されるように、アルカリ金属は樹脂組成物の絶縁性を低下させることが知られており、特許文献3に記載の中空シリカ粒子は絶縁材料には使用できず、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の含有率を低減させると絶縁材料を十分に低誘電化できないという問題があった。
更に、特許文献4では、アルコキシシラン等のシリカ前駆体反応時において、水性エマルションに対し別途カチオン界面活性剤を添加して反応を制御させていないために、低誘電正接の粒子を得にくいものであった。
すなわち、本発明者らの知る限り、絶縁材料に使用できるような小さな粒子径と低いアルカリ金属およびアルカリ土類金属含有量を持つ中空シリカで、比誘電率および誘電正接が十分に低いものは今まで得られていなかった。
したがって、本発明は、平均粒子径が小さく、アルカリ金属とアルカリ土類金属が低含有量であっても比誘電率及び誘電正接が低い中空シリカ粒子の製造方法を提供すること、並びにそれによって得られた新しい中空シリカ粒子及びこれを配合した樹脂組成物、絶縁材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の〔1〕~〔4〕に関する。
〔1〕平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下であり、粒子中のシリカの含有量に対するアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計含有量が50質量ppm以下である中空シリカ粒子の製造方法であって、
中空シリカ粒子の測定周波数5.8GHzにおける、比誘電率が2.5以下、かつ、誘電正接が0.0050以下であり、
以下の工程を含む、中空シリカ粒子の製造方法。
工程A:カチオン界面活性剤Aを用いて疎水性液体の水性エマルションを作成する工程
工程B:工程Aで得られた水性エマルションに、シラノール前駆体、アルカリ性物質、及びカチオン界面活性剤Bを添加し、中空シリカ粒子前駆体を生成する工程
工程C:工程Bで得られた中空シリカ粒子前駆体を1000℃を超え1200℃以下で1時間以上熱処理する工程
〔2〕平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下であり、粒子中のシリカの含有量に対するアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計含有量が50質量ppm以下である中空シリカ粒子であって、
測定周波数5.8GHzにおける、比誘電率が2.5以下、かつ、誘電正接が0.0050以下である、中空シリカ粒子。
〔3〕前記〔2〕に記載の中空シリカ粒子を配合した樹脂組成物。
〔4〕前記〔3〕記載の樹脂組成物を含む絶縁材料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、平均粒子径が小さく、アルカリ金属とアルカリ土類金属が低含有量であり、比誘電率及び誘電正接が低い中空シリカ粒子の製造方法を提供することができ、今までにない中空シリカ粒子及びこれを配合した樹脂組成物、絶縁材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[中空シリカ粒子]
本発明の中空シリカ粒子は、平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下であり、該粒子中のシリカの含有量に対するアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計含有量が50質量ppm以下である中空シリカ粒子であって、測定周波数5.8GHzにおける、比誘電率が2.5以下、かつ、誘電正接が0.0050以下であることを特徴とする。
【0009】
中空シリカ粒子の平均粒子径は、樹脂組成物に配合した時の粘度を低くし、加工性を保つ観点から、体積平均粒子径で0.5μm以上、好ましく0.7μm以上、より好ましくは0.9μm以上であり、そして、樹脂組成物の外観を向上させる観点から、3.0μm以下、好ましくは2.5μm以下、より好ましくは2.0μm以下である。
また、中空シリカ粒子の平均粒子径の変動係数は、多くの中空シリカ粒子を樹脂組成物に配合し、樹脂組成物の比誘電率及び誘電正接を低減する観点から、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上であり、そして、好ましくは300%以下、より好ましくは200%以下、更に好ましくは100%以下、更に好ましくは75%以下、更に好ましく50%以下である。
中空シリカ粒子の最大粒子径は、樹脂組成物の外観を向上させる観点から、体積平均粒子径で、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは1.8μm以上、更に好ましくは2.0μm以上であり、そして、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは4.7μm以下、更に好ましくは4.5μm以下である。
中空シリカ粒子の体積平均粒子径は、実施例に記載の方法で求めることができる。
【0010】
中空シリカ粒子中のシリカの含有量に対するアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計含有量は、絶縁材料に好適に使用できる観点から、50質量ppm以下、好ましくは30質量ppm以下、より好ましくは20質量ppm以下、更に好ましくは15質量ppm以下であり、そして中空シリカ粒子の生産性の観点から好ましくは1質量ppb以上、より好ましくは5質量ppb以上である。
中空シリカ粒子中のアルカリ金属の含有量及びアルカリ土類金属の含有量は、US EPA METHOD 3051Aに記載の方法で測定することができる。中空シリカ粒子中のリチウム、ルビジウム、及びセシウムについても、US EPA METHOD 3051Aに記載の方法で測定することができる。
【0011】
中空シリカ粒子の測定周波数5.8GHzにおける比誘電率が、2.5以下であることで、中空シリカ粒子を配合した樹脂組成物の比誘電率を十分に低くすることができる。測定周波数5.8GHzにおける比誘電率は、中空シリカの強度の観点から好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.3以上であり、そして、樹脂組成物の比誘電率を十分低くする観点から、好ましくは2.2以下、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.8以下である。
中空シリカ粒子の比誘電率は、実施例に記載の方法で求めることができる。
【0012】
中空シリカ粒子の測定周波数5.8GHzにおける誘電正接が0.0050以下であることで、中空シリカ粒子を配合した樹脂組成物の誘電正接を十分に低くすることができる。測定周波数5.8GHzにおける誘電正接は、中空シリカの強度の観点から、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.0005以上、更に好ましくは0.001以上であり、そして、樹脂組成物の誘電正接を十分低くする観点から、好ましくは0.0048以下、より好ましくは0.0046以下、更に好ましくは0.0044以下である。
中空シリカ粒子の誘電正接は、実施例に記載の方法で求めることができる。
【0013】
中空シリカ粒子の空孔率は、中空シリカ粒子の比誘電率を低くする観点から、好ましくは50体積%以上、より好ましくは55体積%以上、更に好ましくは60体積%以上であり、中空シリカ粒子が十分な強度を有する観点から、好ましくは80体積%以下、より好ましくは77体積%以下、更に好ましくは74体積%以下である。
中空シリカ粒子の空孔率は、実施例に記載の方法で求めることができる。
【0014】
中空シリカ粒子のBET比表面積は、中空シリカの空孔率を高くして比誘電率を低くする観点から、好ましくは5m/g以上、7m/g以上、8.5m/g以上であり、そして、中空シリカ粒子の誘電正接を低くする観点、及び樹脂に配合する際に表面処理剤の使用量を低減し、樹脂組成物の誘電正接を低くする観点から、好ましくは30m/g以下、より好ましくは25m/g以下、更に好ましくは20m/g以下である。
中空シリカ粒子のBET比表面積は、実施例に記載の方法で求めることができる。
【0015】
[中空シリカ粒子の製造方法]
本発明の中空シリカ粒子の製造方法は、平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下であり、粒子中のシリカの含有量に対するアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計含有量が50質量ppm以下である中空シリカ粒子の製造方法であって、中空シリカ粒子の測定周波数5.8GHzにおける、比誘電率が2.5以下、かつ、誘電正接が0.0050以下であり、以下の工程を含む。
工程A:カチオン界面活性剤Aを用いて疎水性液体の水性エマルションを作成する工程
工程B:工程Aで得られた水性エマルションに、シラノール前駆体、アルカリ性物質、及びカチオン界面活性剤Bを添加し、中空シリカ粒子前駆体を生成する工程
工程C:工程Bで得られた中空シリカ粒子前駆体を1000℃を超え1200℃以下で1時間以上熱処理する工程
【0016】
本発明の中空シリカ粒子が平均粒子径が小さく、アルカリ金属とアルカリ土類金属が低含有量であっても比誘電率及び誘電正接が低い理由は定かではないが、次のように考えられる。
本発明の中空シリカ粒子の製造において、まず、疎水性液体の水性エマルションに、シラノール前駆体を加え、アルカリ性物質とカチオン界面活性剤Bを添加することにより、疎水性液体の液滴の表面をシラノール前駆体で被覆する。その後、シラノール前駆体を加水分解して得られたシラノールを縮合することにより中空シリカ粒子前駆体が得られる。疎水性液体の水性エマルションを作成する際に、疎水性液体の液滴の粒子径を十分に小さくすることができるため、中空シリカ粒子前駆体の粒子径を所望の粒子径とすることができる。また、疎水性液体の水性エマルションを作成する際にカチオン界面活性剤Aを用い、更にシラノール前駆体とアルカリ性物質とカチオン界面活性剤Bを添加することで、カチオン界面活性剤ミセルと縮合したシラノールが複合体を形成し、中空シリカ粒子前駆体の外殻に取り込まれると考えられる。
中空シリカ前駆体内部に取込まれた疎水性液体は、乾燥時または焼成の初期段階で外殻に取込まれたカチオン界面活性剤とシリカの隙間を通して揮散するため、乾燥又は焼成時に疎水性液体の揮散によって中空シリカ前駆体外殻に大きなサイズの孔が生成することはない。
次に、中空シリカ粒子前駆体を1000℃を超え1200℃以下で熱処理を行う。その際に、まず初期段階で中空シリカ粒子前駆体の外殻に取り込まれているカチオン界面活性剤が分解・揮発することで、外殻に均一な数nmサイズの細孔を形成する。細孔サイズが数nmと非常に小さいために、フラックスとなるアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有していなくても、焼成後期の高温状態で容易に該細孔が消滅することで、中空シリカ粒子の外殻は均一で緻密となり、誘電正接が低くなると考えられる。また、中空シリカ粒子前駆体の外殻に大きな孔がなく緻密であるため、熱処理時における収縮を低減することができ、中空シリカ粒子の空孔率が高くなった結果、比誘電率が低くなると考えられる。
【0017】
〔工程A〕
工程Aでは、水を含む液Aに対して、カチオン界面活性剤A及び疎水性液体を混合・撹拌し、疎水性液体液滴が分散された、疎水性液体の水性エマルションを作成する。疎水性液体の水性エマルションの作成は、一般的な方法により行うことができる。
【0018】
液Aの含む水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、超純水等が挙げられる。また、液Aは、疎水性液体の乳化をより均一で安定に生成させるという観点から、水と相溶性のある有機溶媒を含有していてもよい。水と相溶性のある有機溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール類やアセトンが挙げられる。
液A中の水の含有量は、疎水性液体の液A中での溶解度を瞬時に低下させる観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは98質量%以上であり、また、更に好ましくは100質量%である。
【0019】
(カチオン界面活性剤A)
カチオン界面活性剤Aは、後述の工程Bにおいて縮合したシラノールとの複合体の形成し易くさせる観点、及び後述の工程Cにおいて分解・揮発させる観点から、好ましくは第四級アンモニウムの塩であり、より好ましくはアルキルトリメチルアンモニウム塩、及びジアルキルジメチルアンモニウム塩から選ばれる少なくとも一種、更に好ましくは下記一般式(1)又は一般式(2)で示される第四級アンモニウムの塩からなる群から選択される少なくとも1種類である。
[R N] (1)
[R N] (2)
【0020】
一般式(1)及び一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数4~22の直鎖状又は分岐状アルキル基を示し、Rは、炭素数1~3のアルキル基を示し、複数のRはそれぞれ異なる基であってもよく、Xは1価陰イオンを示す。
炭素数4~22のアルキル基としては、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種エイコシル基等が挙げられる。
炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。一般式(1)及び一般式(2)中、Rは、メチル基であることが好ましい。
【0021】
一般式(1)及び(2)におけるXは、焼成時に容易に分解・揮散する観点から、好ましくはハロゲンイオン、水酸化物イオン、硝酸化物イオン等の1価陰イオンから選ばれる少なくとも一種である。Xとしては、より好ましくはハロゲン化物イオンであり、更に好ましくは塩化物イオンである。
【0022】
一般式(1)で表されるアルキルトリメチルアンモニウム塩としては、ブチルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド(ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド)、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ブチルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ラウリルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、ベヘニルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
【0023】
一般式(2)で表されるジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、ジブチルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキシルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキシルジメチルアンモニウムブロミド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロミド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロミド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
【0024】
第四級アンモニウムの塩は、工程Bにおいて縮合したシラノールとの複合体の形成し易くする観点、及び工程Cにおいて分解・揮発させ易くする観点から、好ましくはラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、及びベヘニルトリメチルアンモニウムクロリドであり、より好ましくはステアリルトリメチルアンモニウムクロリド及びベヘニルトリメチルアンモニウムクロリドである。
【0025】
(疎水性液体)
疎水性液体は、好ましくは、水中で乳化滴(乳化油滴)を形成できるものである。また、分散媒として水を含む液Aを使用する点、及び、疎水性液体の利用効率の向上の点から、液体状態にある温度域が0~100℃であることが好ましく、20~90℃であることがより好ましい。
疎水性液体としては、具体的には、特開2016-121060号公報の段落〔0015〕~〔0023〕に記載のものが挙げられる。これらの中でも、炭素数6~18の炭化水素が好ましく、炭素数8~14の炭化水素がより好ましく、ドデカンがより好ましい。
【0026】
工程Aにおいて、水に対する疎水性液体の質量比[疎水性液体/水]は、得られる疎水性液体の液滴の粒子径を適度な範囲とする観点から、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.35以上、更に好ましくは0.4以上であり、そして、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.75以下、更に好ましくは0.7以下である。
【0027】
工程Aにおいて、疎水性液体に対するカチオン界面活性剤Aの質量比[カチオン界面活性剤A/疎水性液体]は、疎水性液体を液Aに分散させる観点から、好ましくは0.0005以上、より好ましくは0.001以上、更に好ましくは0.0015以上であり、そして、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.04以下、更に好ましくは0.035以下である。
【0028】
工程Aにおいて、撹拌速度、温度等を適宜調整することにより、得られる疎水性液体を含む液滴の粒子径を適度な範囲とすることができる。工程Aは、15℃~80℃の温度で行われることが好ましい。
疎水性液体を含む液滴の体積平均粒子径は、中空シリカ粒子の平均粒子径を上記範囲とする観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、更に好ましくは0.4μm以上であり、そして、好ましくは2.5μm以下、より好ましくは2.0μm以下、更に好ましくは1.5μm以下である。
疎水性液体を含む液滴の体積平均粒子径は、実施例に記載の方法で求めることができる。
【0029】
〔工程B〕
工程Bでは、工程Aで得られた水性エマルションに、シラノール前駆体、アルカリ性物質、及びカチオン界面活性剤Bを添加し、中空シリカ粒子前駆体を生成する。詳しくは、まず、疎水性液体の液滴の表面に存在させたシラノール前駆体をアルカリ性物質の存在下で加水分解してシラノールが得られる。そして、得られたシラノールが、アルカリ性物質の存在により縮合することで、疎水性液体の液滴の表面にシリカ及びカチオン界面活性剤Bを含む外殻部を有し、内部に疎水性液体を含む中空シリカ粒子前駆体を形成する。
水性エマルションへの、シラノール前駆体、アルカリ性物質、及びカチオン界面活性剤Bの添加は、水性エマルションに、シラノール前駆体とカチオン界面活性剤Bを同時に又は別々に添加してもよく、シラノール前駆体とカチオン界面活性剤Bのいずれか一方に水性エマルションを添加した後に、残りの一方を添加してもよい。
【0030】
工程Bは、中空シリカ粒子前駆体の形成後、工程Cの前に、中空シリカ粒子前駆体を単離する工程、及び中空シリカ粒子前駆体を乾燥する工程を含んでいてもよい。中空シリカ粒子の単離は、例えば、ろ過により行うことができる。また、中空シリカ粒子前駆体の乾燥は、中空シリカ粒子前駆体が含む疎水性液体の沸点が100℃より高ければ、例えば、100℃以上疎水性液体の沸点以下の温度に加熱することで行うことができる。中空シリカ粒子前駆体が含む疎水性液体の沸点が100℃以下である場合は、例えば、凍結乾燥等により中空シリカ粒子前駆体を乾燥することができる。
【0031】
(シラノール前駆体)
シラノール前駆体は、アルコキシシラン等の加水分解によりシラノール化合物を生成する化合物であり、好ましくはオルトケイ酸アルキルエステル及びピロケイ酸アルキルエステルから選ばれる。具体的には、下記一般式(3)~(7)で示される化合物、又はこれらの組合せを挙げることができる。
SiY (3)
SiY (4)
SiY (5)
SiY (6)
Si-O-SiY (7)
【0032】
一般式(3)~(7)中、Rはそれぞれ独立して、ケイ素原子に直接炭素原子が結合している有機基を示し、Yは加水分解によりヒドロキシ基になる1価の加水分解性基を示す。
【0033】
一般式(4)~(6)において、Rは、それぞれ独立して、好ましくは水素原子の一部がフッ素原子に置換していてもよい炭素数1~22の炭化水素基であり、疎水性有機物の利用効率の向上の点から、好ましくは炭素数1~22、より好ましくは炭素数4~18、更に好ましくは炭素数8~16のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基である。
一般式(3)~(7)において、Yは、好ましくは炭素数1~8のアルコキシ基またはフッ素を除くハロゲン基であり、より好ましくは炭素数2~4のアルコキシ基である。Yが炭素数1のアルコキシ基及びフッ素を除くハロゲン基である場合、加水分解の反応速度が速すぎるため、中空シリカ前駆体の外殻が緻密になりづらく、焼成時の収縮が大きくなるため、中空シリカ粒子の比誘電率、誘電正接が高くなる傾向がある。逆に炭素数5以上のアルコキシ基は加水分解速度が遅くなる。
【0034】
シラノール前駆体は、好ましくは一般式(3)及び一般式(7)で示される化合物から選ばれる。金属腐食性の酸の生成を抑制する観点、及び加水分解の反応性の観点から、シラノール前駆体は、好ましくはYが炭素数2~4のアルコキシ基である一般式(3)及び一般式(7)で示される化合物から選ばれ、より好ましくはYがエトキシ基である一般式(3)及び一般式(7)で示される化合物から選ばれる。シラノール前駆体は単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0035】
疎水性液体に対するシラノール前駆体の質量比[シラノール前駆体/疎水性液体]は、中空シリカ粒子の空孔率を適度な範囲とする観点から、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは25以上であり、そして、好ましくは90以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは75以下である。
【0036】
(カチオン界面活性剤B)
カチオン界面活性剤Bとしては、工程Aに示したカチオン界面活性剤Aと同様のカチオン界面活性剤Bを用いることができる。カチオン界面活性剤Bとしては、縮合したシラノールとの複合体を形成し易くする観点、及び工程Cにおいて分解・揮発させ易くする観点から、好ましくは第四級アンモニウムの塩であり、より好ましくはラウリルトリメチルアンモニウムクロリド(ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド)、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、及びベヘニルトリメチルアンモニウムクロリドであり、更に好ましくはラウリルトリメチルアンモニウムクロリドである。
本工程で用いるカチオン界面活性剤Bは、工程Aで用いたカチオン界面活性剤Aと同じでも異なっていてもよい。また、カチオン界面活性剤Bは単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0037】
カチオン界面活性剤Bに対するシラノール前駆体の質量比[シラノール前駆体/カチオン界面活性剤B]は、中空シリカ粒子前駆体の分散性の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である。
【0038】
(アルカリ性物質)
シラノール前駆体はアルカリ性物質によりシラノールへと加水分解され、更に脱水縮合されシリカとなる。
アルカリ性物質としては、具体的には、特開2016-121060号公報の段落〔0014〕に記載のものが挙げられる。これらの中でも、第四級アンモニウムの水酸化物塩が好ましい。第四級アンモニウムの水酸化物塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド(コリン)、テトラエタノールアンモニウムヒドロキシド、メチルトリエタノールアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド等が挙げられ、中空シリカ粒子前駆体の外殻を緻密にする観点から、好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、及びメチルトリエタノールアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシドであり、より好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシドである。
【0039】
アルカリ性物質に対するシラノール前駆体の質量比[シラノール前駆体/アルカリ性物質]は、中空シリカ粒子前駆体の外殻を緻密にする観点から、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上であり、そして、シラノール前駆体の縮合反応を効率よく行う観点から、好ましくは100以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは70以下である。
【0040】
アルカリ性物質は、上記第四級アンモニウムの水酸化物塩の他に、例えばアルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩等を含んでいてもよいが、得られる中空シリカ粒子中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量を低減させるために、シラノール前駆体に対するアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計含有量が、シリカ(SiO)換算で、50質量ppm以下である。更に、その含有量は好ましくは30質量ppm以下、より好ましくは10質量ppm以下である。
【0041】
アルカリ性物質は、カチオン界面活性剤Bと混合してシラノール前駆体に接触させることで、最大粒子径が小さく、適度な変動係数を有する中空シリカ粒子を得ることができる。アルカリ性物質とカチオン界面活性剤Bの混合物と、シラノール前駆体との接触は、シラノール前駆体を含む反応系にアルカリ性物質とカチオン界面活性剤Bの混合物を添加してもよく、アルカリ性物質とカチオン界面活性剤Bの混合物含む反応系にシラノール前駆体を添加してもよいが、空孔率を高くするとともに、合成濃度を高くして生産性を上げる観点から、シラノール前駆体を含む反応系にアルカリ性物質とカチオン界面活性剤Bの混合物を添加するのが好ましい。
【0042】
工程Bを行う温度は、用いるシラノール前駆体及びアルカリ性物質の種類や量により適宜調整でき、中空シリカ粒子前駆体の外殻を緻密にする観点から、好ましくは0℃以上100℃以下である。例えば、シラノール前駆体として、オルトケイ酸エチルエステルやピロケイ酸エチルエステルを用いる場合は、20℃以上45℃以下であることが好ましく、オルトケイ酸メチルエステルやピロケイ酸メチルエステルを用いる場合は、0℃以上20℃以下であることが好ましい。中でも、反応の制御の点からオルトケイ酸エチルエステルやピロケイ酸エチルエステルを用いることが好ましい。
【0043】
工程Bを行う時間は、中空シリカ粒子前駆体の外殻を緻密にする観点から、好ましくは30分間以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは2時間以上であり、製造効率の観点から、好ましくは24時間以下、より好ましくは20時間以下、更に好ましくは16時間以下である。
【0044】
(中空シリカ粒子前駆体)
中空シリカ粒子前駆体は、シリカを含む外殻を備え、かつ外殻の内部に疎水性液体を含む複合シリカ粒子である。外殻には、カチオン界面活性剤を鋳型とした細孔が粒子中心方向に向かって放射方向に形成されている。
【0045】
〔工程C〕
工程Cでは、工程Bで得られた中空シリカ粒子前駆体を1000℃を超え1200℃以下で1時間以上熱処理することで、中空シリカ粒子前駆体の外殻に存在するカチオン界面活性剤を分解・揮発させ、内部の疎水性液体を揮発させた後に、外殻に存在する細孔を焼成により塞ぎ、均一な外殻を有する中空シリカ粒子を得る。
【0046】
工程Cの熱処理温度は、中空シリカ粒子表面のシラノール基を低減する観点から、好ましくは1010℃以上、より好ましくは1030℃以上、更に好ましくは1050℃以上であり、中空シリカ粒子の凝集を避ける観点から、1200℃以下、好ましくは1190℃以下、より好ましくは1180℃以下、更に好ましくは1160℃以下である。
【0047】
工程Cの熱処理時間は、中空シリカ粒子表面のシラノール基を低減する観点から、好ましくは15分間以上、より好ましくは30分間以上、更に好ましくは45分間以上であり、中空シリカ粒子の凝集を避ける観点から、好ましくは3時間以下、より好ましくは2時間以下、更に好ましくは1.5時間以下である。
【0048】
[樹脂組成物]
本発明の中空シリカ粒子を樹脂に配合することで、樹脂組成物とすることができる。
中空シリカを配合する樹脂としては特に限定されないが、樹脂組成物の低誘電性のために、ポリパラフェニレン樹脂、液晶ポリマー樹脂、エステルやエーテル系の硬化剤、酸無水物系の硬化剤、及びイミダゾール系の硬化剤から選ばれる硬化剤を使用したエポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、シクロオレフィン樹脂、フッ素系樹脂等の比誘電率、誘電正接が低い樹脂やこれら樹脂の誘導体であることが好ましい。
【0049】
樹脂組成物中の中空シリカ粒子の配合量は、樹脂組成物の比誘電率及び誘電正接を低くする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、樹脂組成物の粘度及び加工性の観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
【0050】
本発明の樹脂組成物は、高周波回路基板の絶縁材料として好適に使用できる観点から、測定周波数5.8GHzにおける比誘電率が好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.3以上であり、そして、好ましくは2.8以下であり、より好ましくは2.5以下である。
樹脂組成物の比誘電率は、実施例に記載の方法で求めることができる。
本発明の樹脂組成物は、高周波回路基板の絶縁材料として好適に使用できる観点から、測定周波数5.8GHzにおける誘電正接が好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.0005以上、更に好ましくは0.001以上であり、そして、好ましくは0.0090以下であり、より好ましくは0.0089以下であり、更に好ましくは0.0088以下である。
樹脂組成物の誘電正接は、実施例に記載の方法で求めることができる。
【0051】
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物の熱安定性の観点から、線熱膨張係数が好ましくは70ppm/℃以下であり、より好ましくは65ppm/℃以下であり、より好ましくは60ppm/℃以下である。
樹脂組成物の線熱膨張係数は、実施例に記載の方法で求めることができる。
【0052】
[絶縁材料]
絶縁材料が本発明の樹脂組成物を含むことで、伝送損失や伝送遅延を低減できる絶縁材料とすることができる。絶縁材料は、例えば、ビルドアップ絶縁フィルム、銅張積層板の絶縁層、プレプリグ、封止材、コネクターの絶縁部材、電線の被覆材等に用いることができる。
【実施例
【0053】
後述する実施例及び比較例において、中空シリカ粒子、樹脂組成物の各種測定は、以下の方法により行った。
【0054】
[測定方法]
(中空シリカ粒子の平均粒子径の測定)
中空シリカ粒子の平均粒子径は、コールターカウンター法により、Multisizer 3(ベックマン・コールター株式会社製、20μmアパチャーチューブを使用)を用いて測定した。
体積基準で平均粒子径及び粒子径の標準偏差を求め、変動係数は以下の式にて計算した。
(変動係数)(%)=(粒子径の標準偏差)/(平均粒子径)×100
また、最大粒子径は累積頻度分布99%となる粒子径とした。
【0055】
(中空シリカ粒子中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量の測定)
100mgの中空シリカ粒子を白金るつぼに投入し、そこへ3mLの濃硝酸および1mLの濃フッ化水素酸及び1mLの濃塩酸を添加し、加温して蒸発乾固した後、るつぼ内の残渣を塩酸にて希釈し、誘導結合プラズマ質量分析装置(アジレント・テクノロジー株式会社製、商品名:Agilent 8900)にて測定した。
【0056】
(中空シリカ粒子の比誘電率及び誘電正接の測定)
中空シリカ粒子の比誘電率及び誘電正接は、ネットワーク・アナライザー(アジレント・テクノロジー株式会社製、商品名:N5221A)に、株式会社関東電子応用開発製の摂動法空洞共振器(CP-580)を接続した装置を使用し、空洞共振器摂動法(CP-MA 誘電率測定ソフトウェア、株式会社関東電子応用開発製)にて、温度25℃、周波数5.8GHzで測定を行った。
テフロンチューブ(中興化成株式会社製:PTFEチューブ、内径1.5mm、外径2.5mm)内部に、中空シリカ粒子が全て測定範囲内(底部から6.75mmから36.35mm)に入るように充填し、測定用サンプルを作成した。中空シリカ粒子の充填前後の重量測定より中空シリカ粒子の充填重量を計算し、中空シリカ粒子の充填重量と比重よりテフロンチューブに充填した中空シリカ粒子の体積を求めた。
比誘電率及び誘電正接は、中空シリカ粒子が充填されていない空のテフロンチューブの測定値をブランクとして、中空シリカ粒子を充填したテフロンチューブの測定値との差から求めた。
【0057】
(中空シリカ粒子のBET比表面積の測定)
比表面積測定装置(株式会社島津製作所製、商品名「フローソーブIII2305」)を使用し、中空シリカ粒子のBET比表面積を測定した。試料は、200℃で15分加熱する前処理を行った。
【0058】
(中空シリカ粒子の空孔率の測定)
密度測定装置(Quantachrome社製:ULTRAPYCNMETER1200e)を用いて、窒素を測定ガスとして測定した密度により、下記式により算出した。シリカ粒子の真密度は2.2g/cmとした。
空孔率(%)=[1-(中空シリカ粒子の真密度/シリカ粒子の真密度)]×100
【0059】
(樹脂組成物の比誘電率及び誘電正接の測定)
樹脂組成物の誘電率及び誘電正接は、樹脂組成物を直径2.5mm長さ4mmに成形し、「中空シリカ粒子の比誘電率及び誘電正接の測定」と同様に空洞共振器摂動法にて周波数5.8GHzで測定を行った。
【0060】
(樹脂組成物の線熱膨張係数の測定)
熱応力歪測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、商品名「TMA7100」)を用いて、直径4mm、長さ12mmの円柱型サンプルを窒素雰囲気下1分間に5℃の割合で温度を上昇させて膨張圧縮モードで荷重を9.8gで計測した。
線熱膨張係数は50℃から100℃までの温度範囲での平均線熱膨張係数を算出して得た。
【0061】
(樹脂組成物の外観の評価)
目視にて、樹脂組成物の表面における粒状形状の有無を確認した。表2には、樹脂組成物の表面に粒状形状を確認しなかったものを「〇」、粒状形状をわずかに確認したものを「△」、粒状形状を確認したものを「×」として示した。
【0062】
(エマルション中の疎水性液体を含む液滴の平均粒子径の測定)
エマルションAを、光路長10mmの角型セルに約1mL入れ、光散乱装置「ゼータサイザーナノZS」(マルバーン・パナリティカル社製)を用いて疎水性液体を含む液滴の粒子径を測定することで、体積平均粒子径を求めた。
【0063】
〔中空シリカ粒子の製造〕
実施例1
イオン交換水342.2g、ドデカン(キシダ化学株式会社製:1級n-ドデカン)150g、コータミン2285E(花王株式会社製:ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリドを58質量%含む)7.8gを混合撹拌しエマルションAを得た。得られたエマルションA中の粒子の体積平均粒子径は0.5μmであった。
反応槽にイオン交換水13146.5g、エマルションAを184.1g、コータミン24P(花王株式会社製:ラウリルトリメチルアンモニウムクロリドを27.5質量%含む)125.6g、オルトケイ酸エチルエステル(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製:TEOS999)3120.8gを入れ撹拌しながら40℃に加温した後、10分間撹拌し調製液Bを得た。次にAH212-CS(四日市合成株式会社製:ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシドを50質量%含む)221.5gとコータミン24Pの711.6gを均一に混合し調製液Cを得た。調製液Bに調製液Cを定速で添加し、その後、40℃で3時間撹拌し、白濁液Dを得た。次いで、得られた白濁液Dを5Cのろ紙(アドバンテック東洋株式会社製)を用いてろ別し、水洗いした後、110℃で乾燥することにより白色の中空シリカ粒子前駆体を得た。
得られた中空シリカ粒子前駆体を1100℃で1時間焼成することで、中空シリカ粒子を得た。得られた中空シリカ粒子の物性を表1に示す。
【0064】
実施例2
イオン交換水388.6g、ドデカン(キシダ化学株式会社製:1級n-ドデカン)200g、コータミン86W(花王株式会社製:ステアリルトリメチルアンモニウムクロリドを28質量%含む)11.4gを混合撹拌し、エマルションAを得た。得られたエマルションA中の粒子の体積平均粒子径は0.9μmであった。
イオン交換水の量を13192.5g、エマルションAの量を138.1gにした以外は、以降の操作を実施例1と同様にして中空シリカ粒子を得た。得られた中空シリカ粒子の物性を表1に示す。
【0065】
実施例3
イオン交換水298.4g、ドデカン(キシダ化学株式会社製:1級n-ドデカン)200g、コータミン86W(花王株式会社製:ステアリルトリメチルアンモニウムクロリドを28質量%含む)1.6gを混合撹拌しエマルションAを得た。得られたエマルションA中の粒子の体積平均粒子径は0.9μmであった。
反応槽にイオン交換水1214.4g、エマルションAを25.6g、コータミン86Wを8.9g、オルトケイ酸エチルエステル(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製:TEOS999)146gを入れ20℃で10分間撹拌し白濁液Bを得た。次にテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(昭和電工株式会社製:工業用TMAH、含有量25質量%)17.5gとコータミン86W60.9gを均一に混合し調製液Cを得た。調製液Bに調製液Cを定速で添加し、その後、20℃で15時間撹拌し、白濁液Dを得た。次いで、得られた白濁液Bを5Cのろ紙(アドバンテック東洋株式会社製)を用いてろ別し、水洗いした後、110℃で乾燥することにより白色の中空シリカ粒子前駆体を得た。
得られた中空シリカ粒子前駆体を1100℃で1時間焼成することで、中空シリカ粒子を得た。得られた中空シリカ粒子の物性を表1に示す。
【0066】
比較例1
撹拌機のついた反応槽(耐圧硝子工業株式会社製:TEM-D1500M)に、シリカ(株式会社アドマテックス製:アドマファインSO-C2)200g、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%水溶液(セイケムアジア株式会社製:pH14)640g、及び、イオン交換水160gを入れて撹拌しながら、1時間30分かけて180℃まで昇温し、その後、180℃で1時間撹拌することにより、シリカ溶解液(シリカ濃度:20質量%、シリカ/有機アルカリ(モル比)=1.9)を得た。
次に調製したシリカ溶解液1000gとイオン交換水1000gを均一になるまで混合し、シリカ溶解液の希釈液を得た。得られたシリカ溶解液の希釈液を噴霧乾燥機(藤崎電機株式会社製:マイクロミストスプレードライヤー)を用いて噴霧乾燥し(噴霧乾燥条件:熱風入口温度:130℃、ノズル流量:100L/min、噴霧液量25mL/分)、乾燥粉末を得た。次いで、噴霧乾燥により得られた乾燥粉末を1100℃で1時間焼成することで、中空シリカ粒子を得た。得られた中空シリカ粒子の物性を表1に示す。
【0067】
比較例2
メタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製、特級)2000gに対し、カチオーゲンTML(第一工業製薬株式会社製:ドデシルトリメチルアンモニウムクロリドを30質量%含む)91g、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%水溶液(セイケムアジア株式会社製:pH14)17g、ヘキサン(富士フイルム和光純薬株式会社製、特級)20gを入れて撹拌し、疎水性有機物と親水性有機溶媒を含む溶液相を調製した。溶液相1体積部に対してイオン交換水を1体積部の比率で同時に流出させて混合し、乳化液を得た。得られた乳化液に対して1500gのイオン交換水を加えた。イオン交換水を加えた後の乳化液に対して、オルトケイ酸メチルエステル(テトラメトキシシラン)(多摩化学工業株式会社製)18gを加えて25℃で10分間撹拌し、白濁溶液を得た。得られた白濁溶液を5Cのろ紙(アドバンテック東洋株式会社製)によりろ別し、100℃で乾燥することにより複合シリカ粒子を得た。得られた複合シリカ粒子を、1000℃で38時間焼成し、中空シリカ粒子を得た。得られた中空シリカ粒子の物性を表1に示す。
【0068】
比較例3
実施例1において焼成温度を1000℃にした以外は、実施例1と同様にして中空シリカ粒子を得た。得られた中空シリカ粒子の物性を表1に示す。
【0069】
比較例4
実施例2においてAH212-CS(四日市合成株式会社製:ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシドを50質量%含む)221.5gの代わりに、水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)の11.9質量%水溶液221.5gを用いた以外は、実施例2と同様にして中空シリカ粒子を得た。得られた中空シリカ粒子の物性を表1に示す。
【0070】
比較例5
イオン交換水298.4g、ドデカン(キシダ化学株式会社製:1級n-ドデカン)200g、コータミン86W(花王株式会社製:ステアリルトリメチルアンモニウムクロリドを28質量%含む)1.6gを混合撹拌しエマルションAを得た。得られたエマルションA中の粒子の体積平均粒子径は1.2μmであった。
反応槽にイオン交換水1138.7g、エマルションAを102.3g、コータミン24P(花王株式会社製:ラウリルトリメチルアンモニウムクロリドを27.5質量%含む)69.8g、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(昭和電工株式会社製:工業用TMAH、含有量25質量%)18.8gを入れ15℃で10分間撹拌した。
続いて、オルトケイ酸エチルエステル(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製:TEOS999)260.1gを入れ25℃で15時間撹拌し白濁液Bを得た。次いで、得られた白濁液Bを5Cのろ紙(アドバンテック東洋株式会社製)を用いてろ別し、水洗いした後、110℃で乾燥することにより白色の中空シリカ粒子前駆体を得た。
得られた中空シリカ粒子前駆体を1100℃で1時間焼成することで、中空シリカ粒子を得た。得られた中空シリカ粒子の物性を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1の結果に示されるように、本発明の製造方法で製造した中空シリカ粒子は、平均粒子径を小さくし、中空シリカ粒子中のシリカの含有量に対するアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計含有量を低減しても、測定周波数5.8GHzにおける、比誘電率及び誘電正接を小さくすることができた。
一方、噴霧乾燥により製造した比較例1の中空シリカ粒子は、平均粒子径を小さくすることができず、誘電正接が高くなった。また、比較例2及び比較例3では、焼成温度が低いため、比較例2及び比較例3の中空シリカ粒子は誘電正接が高くなった。なお、比較例2では、25℃でシラノール前駆体としてのテトラメトキシシランの加水分解及び縮合を行ったため、緻密な外殻が形成されなかった結果、空孔率が低くなったと考えられる。比較例4では、触媒として水酸化ナトリウムを用いたため、中空シリカ粒子中のアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計含有量が多く、その結果として、耐熱性が下がり、空孔率が低くなると共に比誘電率が高くなった。比較例5では、工程Aで得られた水性エマルションに、カチオン界面活性剤B及びアルカリ性物質を添加した後、最後にシラノール前駆体を添加してシラノール前駆体の加水分解を行ったため、比表面積が大きくなると共に誘電正接が大きくなった。
【0073】
〔樹脂組成物の製造〕
実施例4
エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製:jER(商標)828)23.7g、酸無水物系硬化剤(三菱ケミカル株式会社製:YH-306)28.8g、イミダゾール系硬化剤(三菱ケミカル株式会社製:EMI24)0.3gを混錬機(株式会社シンキー社製:Planetary Vacuum Mixer)を用いて、大気圧下で1400rpmで1分間、0.3kPa減圧下で2000rpmで5分間混錬しエポキシ樹脂混錬液を得た。
得られたエポキシ樹脂混錬液2gと実施例1で得られた中空シリカ粒子1.2gを混錬機(株式会社シンキー社製:Planetary Vacuum Mixer)にて大気圧で1400rpmで1分間、0.3kPa減圧下で2000rpmで5分間混錬しエポキシ樹脂中空シリカ粒子混錬液を得た。
得られたエポキシ樹脂中空シリカ粒子混錬液を160℃で6時間硬化処理を行い樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性を表2に示す。
【0074】
実施例5
実施例1で得られた中空シリカ粒子にかえて、実施例2で得られた中空シリカ粒子を用いた以外は、実施例4と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性を表2に示す。
【0075】
実施例6
実施例1で得られた中空シリカ粒子にかえて、実施例3で得られた中空シリカ粒子を用いた以外は、実施例4と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性を表2に示す。
【0076】
比較例6
実施例1で得られた中空シリカ粒子1.2gにかえて、比較例1で得られた中空シリカ粒子2.7gを用いた以外は、実施例4と同様にして樹脂組成物を得た。
【0077】
比較例7
実施例1で得られた中空シリカ粒子1.2gにかえて、中実のシリカ粒子(株式会社アドマテックス製:アドマファインSO-C2)4gを用いた以外は、実施例4と同様にして樹脂組成物を得た。
【0078】
比較例8
中空シリカ粒子を混錬しなかった以外は、実施例4と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0079】
比較例9
実施例1で得られた中空シリカ粒子1.2gにかえて、比較例4で得られた中空シリカ粒子2.4gを用いた以外は、実施例4と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性を表2に示す。
【0080】
比較例10
実施例1で得られた中空シリカ粒子1.2gにかえて、比較例5で得られた中空シリカ粒子1.7gを用いた以外は、実施例4と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性を表2に示す。
【0081】
なお、実施例4~6及び比較例6~7、9~10において、樹脂と中空シリカ粒子又は中実のシリカ粒子の体積比率はすべて同じである。
【0082】
【表2】
【0083】
表2の結果に示されるように、本発明の中空シリカ粒子を含む樹脂組成物は、測定周波数5.8GHzにおける、比誘電率及び誘電正接を低くすることができた。
一方、比較例1~3の中空シリカ粒子を含む比較例6~8の樹脂組成物は比誘電率が高く、比較例6及び8の樹脂組成物は誘電正接も高くなった。比較例4の中空シリカ粒子を含む比較例9の樹脂組成物は、誘電正接が高くなった。比較例5の中空シリカ粒子を含む比較例10の樹脂組成物は、誘電正接が高くなったほか、外観が悪くなった。
以上のことから、本発明の樹脂組成物を含む絶縁材料は、高周波の電波に対応する高周波回路における絶縁材料として用いることが可能であると考えられる。

【要約】
平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下であり、粒子中のシリカの含有量に対するアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計含有量が50質量ppm以下である中空シリカ粒子の製造方法であって、中空シリカ粒子の測定周波数5.8GHzにおける、比誘電率が2.5以下、かつ、誘電正接が0.0050以下であり、以下の工程を含む、中空シリカ粒子の製造方法。
工程A:カチオン界面活性剤Aを用いて疎水性液体の水性エマルションを作成する工程
工程B:工程Aで得られた水性エマルションに、シラノール前駆体、アルカリ性物質、及びカチオン界面活性剤Bを添加し、中空シリカ粒子前駆体を生成する工程
工程C:工程Bで得られた中空シリカ粒子前駆体を1000℃を超え1200℃以下で1時間以上熱処理する工程